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特開2024-123926プログラムおよび財務指標提示システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123926
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】プログラムおよび財務指標提示システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240905BHJP
【FI】
G06Q10/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031751
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 守弘
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
(57)【要約】
【課題】財務データや事業運営データが開示されていない企業の経営状況の客観的な把握を支援する。
【解決手段】プログラムは、コンピュータに、財務情報と非財務情報とを、企業ごとに取得することと、因子関数を生成することと、生成された因子関数と、企業ごとの非財務情報とに基づいて、企業ごとの因子スコアを算出することと、算出された因子スコアと、財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルを生成することと、生成された予測モデルに対して、企業の経営結果を示す非財務情報を与えることによって得られる財務業績指標である推定財務業績指標と当該企業の経営結果を示す財務情報に基づく財務業績指標である実績財務業績指標との相関関係を提示することと、提示された相関関係に対する承認操作を受け付けることと、承認操作が受け付けられた相関関係を算出した予測モデルを承認済み予測モデルとして記憶させることとを実行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報と、前記数値情報のうち前記財務情報以外の情報である非財務情報とを、企業ごとに取得することと、
取得された前記非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを、前記非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す因子関数を生成することと、
生成された前記因子関数と、企業ごとの前記非財務情報とに基づいて、企業ごとの因子スコアを算出することと、
算出された前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用することによって得られる前記予測モデルを生成することと、
生成された前記予測モデルに対して、企業の経営結果を示す前記非財務情報を与えることによって得られる財務業績指標である推定財務業績指標と、当該企業の経営結果を示す前記財務情報に基づく財務業績指標である実績財務業績指標と、の相関関係を提示することと、
提示された前記相関関係に対する承認操作を受け付けることと、
前記承認操作が受け付けられた前記相関関係を算出した前記予測モデルを承認済み予測モデルとして記憶させることと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記機械学習モデルには複数の種類があり、当該種類ごとに適用の優先度が付されており、
前記優先度に基づいた前記機械学習モデルを適用して、前記予測モデルを生成する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記機械学習モデルには、木構造による第1種類のモデルと、木構造以外による第2種類のモデルとが含まれ、
前記第1種類のモデルの優先度が、前記第2種類のモデルの優先度よりも高い
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記推定財務業績指標と、前記実績財務業績指標との相関関係を、数値形式またはグラフ形式のうち少なくとも一つの形式によって提示する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記相関関係を提示する際に、前記予測モデルの生成に用いられた前記機械学習モデルの種類を提示しない
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
コンピュータに、
判定対象の企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される財務情報以外の情報である対象企業非財務情報を、前記判定対象の企業ごとに取得することと、
非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す関数である因子関数が記憶されている記憶部から、前記因子関数を取得することと、
前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用して予め生成された承認済み予測モデルが記憶されている記憶部から、前記承認済み予測モデルを取得することと
取得された前記対象企業非財務情報と、取得された前記因子関数とに基づいて、前記判定対象の企業ごとの因子スコアである判定対象因子スコアを算出することと、
取得された前記承認済み予測モデルと、算出された前記判定対象因子スコアとに基づいて、前記判定対象の企業の財務業績指標の推定値である判定対象財務業績指標を算出することと、
算出された前記判定対象財務業績指標を提示することと、
を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報と、前記数値情報のうち前記財務情報以外の情報である非財務情報とを、企業ごとに取得する数値情報取得部と、
取得された前記非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを、前記非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す因子関数を生成する因子分析部と、
生成された前記因子関数と、企業ごとの前記非財務情報とに基づいて、企業ごとの因子スコアを算出する因子スコア算出部と、
算出された前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用することによって得られる前記予測モデルを生成する予測モデル生成部と、
生成された前記予測モデルに対して、企業の経営結果を示す前記非財務情報を与えることによって得られる財務業績指標である推定財務業績指標と、当該企業の経営結果を示す前記財務情報に基づく財務業績指標である実績財務業績指標と、の相関関係を提示する相関関係提示部150と、
提示された前記相関関係に対する承認操作を受け付ける操作受付部と、
前記承認操作が受け付けられた前記相関関係を算出した前記予測モデルを承認済み予測モデルとして記憶させるモデル確定部と、
を備える推定情報生成装置と、
判定対象の企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報以外の非財務情報である対象企業非財務情報を、前記判定対象の企業ごとに取得する非財務情報取得部と、
非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す関数である因子関数が記憶されている記憶部から、前記因子関数を取得する因子関数取得部と、
前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用して予め生成された承認済み予測モデルが記憶されている記憶部から、前記承認済み予測モデルを取得する予測モデル取得部と、
取得された前記対象企業非財務情報と、取得された前記因子関数とに基づいて、前記判定対象の企業ごとの因子スコアである判定対象因子スコアを算出する判定対象因子スコア算出部と、
取得された前記承認済み予測モデルと、算出された前記判定対象因子スコアとに基づいて、前記判定対象の企業の財務業績指標の推定値である判定対象財務業績指標を算出する判定対象財務業績指標算出部と、
算出された前記判定対象財務業績指標を提示する結果提示部と、
を備える財務指標提示装置と、
を備える財務指標提示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラムおよび財務指標提示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一例として、企業、または、当該企業の一部の事業(なお、以下の説明において企業と記載した場合には、当該企業の一部事業のことも含む。)に対する投資や取引開始の局面において、対象企業の経営状況を客観的に把握したいというニーズが存在する。
従来、企業の営業利益などの財務情報に基づいて、当該企業の業績予測をする技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-052882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、すべての企業において財務諸表(決算報告書、あるいは単に決算書ともいう。)が開示されているとは限らない。例えば、財務諸表の開示義務がない企業もあり、このような企業の場合、過去の財務データや事業運営データの入手が困難である。財務諸表が開示されていない企業については、投資や取引開始の局面において、当該企業の経営状況を客観的に把握することが難しいという問題があった。
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、財務データや事業運営データが開示されていない企業の経営状況の客観的な把握を支援するプログラムおよび財務指標提示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、コンピュータに、企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報と、前記数値情報のうち前記財務情報以外の情報である非財務情報とを、企業ごとに取得することと、取得された前記非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを、前記非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す因子関数を生成することと、生成された前記因子関数と、企業ごとの前記非財務情報とに基づいて、企業ごとの因子スコアを算出することと、算出された前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用することによって得られる前記予測モデルを生成することと、生成された前記予測モデルに対して、企業の経営結果を示す前記非財務情報を与えることによって得られる財務業績指標である推定財務業績指標と、当該企業の経営結果を示す前記財務情報に基づく財務業績指標である実績財務業績指標と、の相関関係を提示することと、提示された前記相関関係に対する承認操作を受け付けることと、前記承認操作が受け付けられた前記相関関係を算出した前記予測モデルを承認済み予測モデルとして記憶させることと、を実行させるためのプログラムである。
【0006】
本発明の一実施形態は、上述のプログラムにおいて、前記機械学習モデルには複数の種類があり、当該種類ごとに適用の優先度が付されており、前記優先度に基づいた前記機械学習モデルを適用して、前記予測モデルを生成する。
【0007】
本発明の一実施形態は、上述のプログラムにおいて、前記機械学習モデルには、木構造による第1種類のモデルと、木構造以外による第2種類のモデルとが含まれ、前記第1種類のモデルの優先度が、前記第2種類のモデルの優先度よりも高い。
【0008】
本発明の一実施形態は、上述のプログラムにおいて、前記推定財務業績指標と、前記実績財務業績指標との相関関係を、数値形式またはグラフ形式のうち少なくとも一つの形式によって提示する。
【0009】
本発明の一実施形態は、上述のプログラムにおいて、前記相関関係を提示する際に、前記予測モデルの生成に用いられた前記機械学習モデルの種類を提示しない。
【0010】
本発明の一実施形態は、コンピュータに、
判定対象の企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報以外の非財務情報である対象企業非財務情報を、前記判定対象の企業ごとに取得することと、非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す関数である因子関数が記憶されている記憶部から、前記因子関数を取得することと、前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用して予め生成された承認済み予測モデルが記憶されている記憶部から、前記承認済み予測モデルを取得することと取得された前記対象企業非財務情報と、取得された前記因子関数とに基づいて、前記判定対象の企業ごとの因子スコアである判定対象因子スコアを算出することと、取得された前記承認済み予測モデルと、算出された前記判定対象因子スコアとに基づいて、前記判定対象の企業の財務業績指標の推定値である判定対象財務業績指標を算出することと、算出された前記判定対象財務業績指標を提示することと、を実行させるためのプログラムである。
【0011】
本発明の一実施形態は、企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報と、前記数値情報のうち前記財務情報以外の情報である非財務情報とを、企業ごとに取得する数値情報取得部と、取得された前記非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを、前記非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す因子関数を生成する因子分析部と、生成された前記因子関数と、企業ごとの前記非財務情報とに基づいて、企業ごとの因子スコアを算出する因子スコア算出部と、算出された前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用することによって得られる前記予測モデルを生成する予測モデル生成部と、生成された前記予測モデルに対して、企業の経営結果を示す前記非財務情報を与えることによって得られる財務業績指標である推定財務業績指標と、当該企業の経営結果を示す前記財務情報に基づく財務業績指標である実績財務業績指標と、の相関関係を提示する相関関係提示部150と、提示された前記相関関係に対する承認操作を受け付ける操作受付部と、前記承認操作が受け付けられた前記相関関係を算出した前記予測モデルを承認済み予測モデルとして記憶させるモデル確定部と、を備える推定情報生成装置と、判定対象の企業の経営状況を数値で示す数値情報のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報以外の非財務情報である対象企業非財務情報を、前記判定対象の企業ごとに取得する非財務情報取得部と、非財務情報を因子分析して得られる因子の値である因子スコアを非財務情報の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す関数である因子関数が記憶されている記憶部から、前記因子関数を取得する因子関数取得部と、前記因子スコアと、前記財務情報が示す財務業績指標との関係を示す予測モデルであって、前記因子スコアを説明変数とし前記財務業績指標を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用して予め生成された承認済み予測モデルが記憶されている記憶部から、前記承認済み予測モデルを取得する予測モデル取得部と、取得された前記対象企業非財務情報と、取得された前記因子関数とに基づいて、前記判定対象の企業ごとの因子スコアである判定対象因子スコアを算出する判定対象因子スコア算出部と、取得された前記承認済み予測モデルと、算出された前記判定対象因子スコアとに基づいて、前記判定対象の企業の財務業績指標の推定値である判定対象財務業績指標を算出する判定対象財務業績指標算出部と、算出された前記判定対象財務業績指標を提示する結果提示部と、を備える財務指標提示装置と、を備える財務指標提示システムである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、財務データや事業運営データが開示されていない企業の経営状況の客観的な把握を支援するプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の財務指標提示システムの一例を示す図である。
図2】本実施形態の財務情報の一例を示す図である。
図3】本実施形態の非財務情報の一例を示す図である。
図4】本実施形態の推定情報生成装置の動作の流れの一例を示す図である。
図5】本実施形態の因子関数の一例を示す図である。
図6】本実施形態の因子係数の一例を示す図である。
図7】本実施形態の指標テーブルの一例を示す図である。
図8】本実施形態の予測モデルの一例を示す図である。
図9】本実施形態の更新後の指標テーブルの一例を示す図である。
図10】本実施形態の承認画面の一例を示す図である。
図11】本実施形態の財務指標提示装置の動作の流れの一例を示す図である。
図12】本実施形態の非財務情報データベースに記憶されている判定候補非財務情報の一例を示す図である。
図13】本実施形態の判定結果情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の財務指標提示システム1は、財務諸表などの過去の財務データや事業運営データが開示されておらず、その経営状況が把握しづらい企業についても、財務諸表に掲載される情報によらずに、財務諸表には通常掲載されない情報に基づいて財務データに相当する情報を生成することにより、その経営情報の把握を支援する。以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の財務指標提示システム1の一例を示す図である。財務指標提示システム1は、いずれもコンピュータ装置である推定情報生成装置10と、財務指標提示装置60とを含んで構成される。まず、推定情報生成装置10の構成について説明し、次に財務指標提示装置60の構成について説明する。
【0016】
[推定情報生成装置10の機能構成と動作の流れ]
推定情報生成装置10は、財務諸表が開示されている企業について、財務情報と非財務情報との相関を分析することにより、非財務情報から財務情報を推定するための推定情報を生成する。
【0017】
推定情報生成装置10は、例えば、パーソナルコンピュータやクラウドサーバとして実装される。推定情報生成装置10は、そのソフトウエア機能部として、数値情報取得部110と、因子分析部120と、因子スコア算出部130と、予測モデル生成部140と、相関関係提示部150と、操作受付部160と、モデル確定部170とを備える。
これら各部は、例えば、推定情報生成装置10が備える記憶装置(不図示)や、クラウドサーバ内の記憶装置(不図示)に記憶されたソフトウエア(コンピュータプログラム)として実装される。
【0018】
数値情報取得部110は、企業情報データベース20から、企業の経営状況を数値で示す情報を取得する。
【0019】
[財務情報210と非財務情報220について]
企業情報データベース20とは、例えば、信用調査企業などが運営する商用のデータベースや、財務指標提示システム1を導入する組織が自前で用意したデータベースである。企業情報データベース20には、財務諸表などの企業の経営状況を示す情報が、企業ごとに記憶されている。ここでいう財務諸表には、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)のいわゆる財務三表や、当該企業が開示すべきと判断した種々の情報が含まれる。
なお、本実施形態でいう「財務諸表に掲載される情報」とは、当該企業の年次の決算の際に開示される情報のみならず、例えば、四半期ごとや随時開示される情報も含む。
【0020】
また、企業情報データベース20には、財務諸表に掲載されない種類の情報も含まれている。例えば、企業によっては、環境対応の観点、企業の社会的責任の観点、または企業ガバナンスの観点から、種々の情報を開示している場合がある。これらの環境対応・社会的責任・企業ガバナンスに関する情報(以下、ESG情報ともいう。)の中には、数値化された情報も含まれる。例えば、ESG情報には、社外取締役比率、女性管理職割合、CO2排出削減など環境対策への取り組みの有無などが含まれる。なお、社内制度の有無や取り組みなどの有無は、いわゆるダミー変数(例えば、有りは1、無しは0、当該情報が得られない場合は9などとする数値)で表現することで、数値化されていてもよい。
【0021】
すなわち、企業の経営状況を数値で示す情報には、「財務諸表に掲載される情報」と、「財務諸表に掲載されない情報」とがある。本実施形態において、前者の「財務諸表に掲載される情報」のことを財務情報210ともいい、後者の「財務諸表に掲載されない情報」のことを非財務情報220ともいう。また、本実施形態において、これら財務情報210と、非財務情報220とを総称して数値情報200ともいう。
【0022】
図2は、本実施形態の財務情報210の一例を示す図である。上述したように、財務情報210とは、企業の経営状況を数値で示す数値情報200のうち、財務諸表に掲載される情報である。
具体的には、財務情報210とは、例えば、資産の額、負債の額、純資産の額、売上高、税引後当期純利益など、企業の経営状況を数値で示す情報である。
また、財務情報210とは、これらの数値を組み合わせることで算出される数値であってもよい。例えば、財務情報210とは、投下資本利益率(ROIC;Return On Invested Capital)なども含まれる。ROICは、投下資本(有利子負債と株主資本との合計値)に対する税引後営業利益の割合として算出される。
投資や取引開始の検討の際に、対象企業から開示された財務諸表に記載された財務情報210に基づいて算出したROICを、投資や取引開始の判断指標として利用することができれば、対象企業の経営状況を客観的に判断することができる。
【0023】
以下の説明において、財務情報210が示す数値のことを財務業績指標211ともいう。同図に示すROICは、財務業績指標211の一例である。
なお、本実施形態において投資や取引開始の判断指標としてROICを用いることは一例である。例えば、ROI(Return On Investment)、ROE(Return On Equity)など、一般的に財務指標として用いられている指標、あるいは財務諸表に掲載される情報から導出できる指標であれば、どのような指標が用いられてもよい。
【0024】
図3は、本実施形態の非財務情報220の一例を示す図である。上述したように、非財務情報220とは、企業の経営状況を数値で示す数値情報200のうち、財務情報210以外の情報である。以下の説明において、非財務情報220が示す数値のことを非財務指標221ともいう。同図に示す指標a1~指標anは、非財務指標221の一例である。例えば、指標a1は、上述した社外取締役比率に相当し、指標a2は、上述した女性管理職割合に相当する。
【0025】
図1に戻り、企業情報データベース20には、数値情報200(つまり、財務情報210および非財務情報220)が、企業ごとに記憶されている。
以下、図1図4を参照しつつ、推定情報生成装置10の構成と動作とについて、説明する。
【0026】
図4は、本実施形態の推定情報生成装置10の動作の流れの一例を示す図である。
(ステップS110)数値情報取得部110は、企業情報データベース20から数値情報200を取得する。上述したように、数値情報200には、財務情報210と非財務情報220とが含まれる。
【0027】
すなわち、数値情報取得部110は、企業の経営状況を数値で示す数値情報200のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報210と、数値情報200のうち財務情報210以外の情報である非財務情報220とを、企業ごとに取得する。
【0028】
なお、企業情報データベース20によっては、非財務情報220が図3に示したような多変量データ形式になっていない場合もあり得る。この場合には、数値情報取得部110は、企業情報データベース20から取得した非財務情報220に対して、項目ごとに、項目と数値を対応付けてダミー変数化や正規化などの処理を施すことにより、図3に示した多変量データ形式に整理する機能を有していてもよい。
【0029】
(ステップS120)因子分析部120は、取得された非財務情報220について、因子分析を行う。より具体的には、因子分析部120は、ステップS110において数値情報取得部110が取得した非財務情報220(つまり、多変量データ)について、既知の手法によって、多変量データの裏に潜む共通因子を抽出する。非財務情報220は、抽出した複数の因子のそれぞれについて、非財務情報220の項目ごとに重みづけされた多項式である因子関数310を生成する。
【0030】
図5は、本実施形態の因子関数310の一例を示す図である。因子分析部120は、因子分析によって得られた複数(この一例では、m個)の因子(因子F1~因子Fm)について、因子係数312と非財務指標221との積を項とする多項式を、因子関数310として生成する。ここで、因子係数312は、因子の種類ごと、かつ、非財務指標221の種類ごとに算出される定数である。
【0031】
図6は、本実施形態の因子係数312の一例を示す図である。因子分析部120は、因子の種類ごと、かつ、非財務指標221の種類ごとに因子係数312を算出する。
図5に戻り、本実施形態において、因子関数310の値(同図の例では、FC1~FCm)を、因子スコア311ともいう。
【0032】
すなわち、因子分析部120は、取得された非財務情報220を因子分析して得られる因子の値である因子スコア311を非財務情報220の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す、因子関数310を生成する。
【0033】
(ステップS130)因子スコア算出部130は、ステップS110において取得された非財務情報220に基づいて、指標テーブル300を生成する。
【0034】
図7は、本実施形態の指標テーブル300の一例を示す図である。指標テーブル300の生成の第1段階において、因子スコア算出部130は、ステップS110において取得された非財務情報220に基づいて、企業ごとに、企業名および企業IDと、非財務指標221とを対応付けることにより、指標テーブル300を生成する。なお、この一例において、第1段階の指標テーブル300は、図3に示した非財務情報220と同一である。
なお、この場合、因子スコア算出部130は、ステップS110において取得した非財務情報220を指標テーブル300にする、ともいえる。
【0035】
指標テーブル300の生成の第2段階において、因子スコア算出部130は、企業ごとの因子スコア311を算出する。より具体的には、因子スコア算出部130は、ステップS120において生成された因子関数310に対して、ステップS110において取得された企業ごとの非財務情報220を代入することにより、企業ごとの因子スコア311を算出する。因子スコア算出部130は、算出した因子スコア311を、第1段階において生成した指標テーブル300に対応付ける。この結果、指標テーブル300は、同図に示す第2段階の状態になる。
【0036】
すなわち、因子スコア算出部130は、生成された因子関数310と、企業ごとの非財務情報220とに基づいて、企業ごとの因子スコア311を算出する。
【0037】
指標テーブル300の生成の第3段階において、因子スコア算出部130は、ステップS110において取得された財務業績指標211を、第2段階の指標テーブル300に対応付ける。この結果、指標テーブル300は、同図に示す第3段階の状態になる。
【0038】
(ステップS140)図4に戻り、予測モデル生成部140は、予測モデル400を生成する。予測モデル400とは、因子スコア311を説明変数とし、財務業績指標211を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用することによって得られるモデルである。本実施形態の予測モデル生成部140は、財務業績指標211のうち、ROICを目的変数として予測モデル400を得ている。予測モデル400の生成には、種々の機械学習モデルを適用することができる。
【0039】
図8は、本実施形態の予測モデル400の一例を示す図である。この一例では、予測モデル生成部140は、機械学習モデルのうち木構造による学習モデルであるM5P(線形回帰式を葉に持つモデル木)を適用することによって、予測モデル400を得ている。
【0040】
一般に、機械学習モデル(特に、教師データあり機械学習モデル)には、
・回帰を用いるもの(線形回帰、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン(SVM)など)
・ニューラルネットワークを用いるもの(畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、パーセプトロンなど)
・ベイズ推定を用いるもの
・木構造を用いるもの(決定木、回帰木、ランダムフォレスト(RF)、M5Pなど)
など、多数の種類がある。
【0041】
これらの機械学習モデルの種類の中には、説明変数が連続的に変化する場合に適した種類と、説明変数が離散的に変化する場合に適した種類とがある。本実施形態の推定情報生成装置10においては、説明変数が因子スコア311である。上述したように因子スコア311は、ESG情報を因子分析して求められている。ESG情報には、本来数値化しにくいもの(例えば、社内制度の有無や取り組みの有無など)や、数値の大きさに意味がないもの(有りは1、無しは0、当該情報が得られない場合は9などとするダミー変数)で表現されたものがある。したがって、因子スコア311は、数値の大小関係に意味がなかったり、数値どうしが離散的に表現される傾向が生じる。
このように、説明変数である因子スコア311が離散的に表現される傾向がある場合には、機械学習モデルは、木構造以外の種類のモデルよりも、離散的な変化に適した木構造を用いることの方がよい場合がある。
【0042】
そこで、本実施形態の予測モデル生成部140は、機械学習モデルの種類ごとに付された優先度に基づいた機械学習モデルを適用して、予測モデル400を生成する。
この場合、機械学習モデルには複数の種類があり、当該種類ごとに適用の優先度が付されている。
【0043】
ここで、木構造による機械学習モデルを第1種類のモデルとし、木構造以外による機械学習モデルを第2種類のモデルとすれば、第1種類のモデル(つまり、木構造による機械学習モデル)の優先度が、第2種類のモデル(つまり、木構造以外による機械学習モデル)の優先度よりも高くされていてもよい。
すなわち、予測モデル生成部140は、第1種類のモデルのほうが、第2種類のモデルのよりも高く設定されている優先度に基づいて機械学習モデルを選択することにより、予測モデル400を生成する。
【0044】
このように構成された推定情報生成装置10によれば、複数の種類の機械学習モデルの中から、説明変数の特性(特に、非財務指標221のように数値が離散的であること)に応じた機械学習モデルを適用して、予測モデル400を生成することができる。
【0045】
なお、図8に示す一例では、予測モデル生成部140は、因子1~因子nについて、それぞれの因子の因子スコア311が閾値th以下であるか否かによって分岐する二分木による予測モデル400を生成している。一例として、同図には、予測モデル400において、因子1の因子スコア311が閾値th1以下、かつ、因子2の因子スコア311が閾値th2以下、…である場合を示している。この場合において、因子nの因子スコア311が閾値thn以下である場合には、予測式LM1が選択され、因子nの因子スコア311が閾値thnを超える場合には、予測式LM2が選択される。
【0046】
予測モデル生成部140は、上述のようにして、生成した予測モデル400に識別子である予測モデルIDを付して、第3段階の指標テーブル300に対応付けることにより、指標テーブル300を更新する。
【0047】
図9は、本実施形態の更新後の指標テーブル300の一例を示す図である。予測モデル生成部140が、指標テーブル300に予測モデルIDを対応付けることにより、指標テーブル300は、同図に示す第4段階の状態に更新される。
【0048】
なお、予測モデル生成部140は、複数の機械学習モデルを順に適用して、機械学習モデルの種類に応じた予測モデル400を順次生成する。すなわち、予測モデル400は、機械学習モデルの種類ごとに生成される。予測モデル生成部140は、機械学習モデルの種類ごとに生成した予測モデル400に対して、互いに異なる識別子(予測モデルID)を付して、指標テーブル300を更新する。
【0049】
(ステップS150)図4に戻り、相関関係提示部150は、指標テーブル300の情報に基づいて、ステップS140において生成された複数の予測モデル400のそれぞれに対して、因子スコア311を与える。上述したように、予測モデル400は、財務業績指標211を目的変数にして学習されている。したがって、複数の予測モデル400のそれぞれに対して、因子スコア311が与えられた場合、企業ごと、かつ、予測モデル400ごとに、財務業績指標211(例えば、ROIC)が算出される。
相関関係提示部150は、算出された財務業績指標211(例えば、ROIC)を指標テーブル300に対応付ける。この結果、指標テーブル300は、図9に示す第5段階の状態に更新される。
【0050】
ここで、予測モデル400が算出する財務業績指標211は、企業の実際の経営結果に基づく指標ではなく、企業の非財務指標221に基づいて予測された財務業績指標211である。
以下の説明において、企業の実際の経営結果に基づく財務業績指標211と、予測モデル400が推定した当該企業の財務業績指標211とを互いに区別するため、ステップS150において算出された財務業績指標211のことを、推定財務業績指標450という。また、ステップS110において取得された財務業績指標211、すなわち、企業の実際の経営結果に基づく財務業績指標211のことを、実績財務業績指標451という。
【0051】
すなわち、相関関係提示部150は、生成された予測モデル400に対して、企業の経営結果を示す非財務情報220を与えることによって得られる財務業績指標211である推定財務業績指標450と、当該企業の経営結果を示す財務情報210に基づく財務業績指標211である実績財務業績指標451と、の相関関係を提示する。
【0052】
具体的には、相関関係提示部150は、推定財務業績指標450と、実績財務業績指標451との相関関係を表示装置30を介して財務指標提示システム1の利用者に提示する。
【0053】
図10は、本実施形態の承認画面500の一例を示す図である。表示装置30は、例えば、液晶ディスプレイを備えており、推定情報生成装置10の演算結果を財務指標提示システム1の利用者に提示する提示装置として機能する。
相関関係提示部150は、表示装置30に承認画面500を表示する。この承認画面500には、数値形式の相関関係501とグラフ形式の相関関係502とのいずれか(または両方)と、承認ボタン503および他のモデルボタン504の画像が含まれる。
【0054】
すなわち、相関関係提示部150は、推定財務業績指標450と、実績財務業績指標451との相関関係を、数値形式の相関関係501またはグラフ形式の相関関係502の相関関係502のうち少なくとも一つの形式によって提示する。
【0055】
ここで、推定財務業績指標450と、実績財務業績指標451との相関関係とは、企業の実際の経営結果に基づく財務業績指標211と、当該企業について予測モデル400が予測した財務業績指標211との相関の程度、あるいは乖離の程度をいう。これら2つの指標の相関の程度(例えば、相関値)が高ければ、予測モデル400による推定精度が比較的高く、2つの指標の相関の程度(例えば、相関値)が低ければ、予測モデル400による推定精度が比較的低いことを示している。
【0056】
財務指標提示システム1の利用者は、表示装置30に表示された承認画面500を見て、予測モデル400による予測の精度に満足すれば、承認ボタン503を操作する。財務指標提示システム1の利用者は、表示装置30に表示された承認画面500を見て、予測モデル400による予測の精度に満足しなければ、他のモデルボタン504を操作する。
利用者による操作の結果は、操作装置40(たとえば、タッチパネル、キーボード、マウスなど)を介して、推定情報生成装置10の操作受付部160が取得する。
【0057】
ここで、相関関係提示部150は、承認画面500において相関関係を提示する際に、予測モデル400の生成に用いられた機械学習モデルの種類を提示しないようにすることもできる。
利用者は、機械学習モデルの種類(例えば、ランダムフォレスト、ニューラルネットワークなど)による、機械学習の特性や傾向を把握している場合がある。この場合において、表示装置30に、予測モデル400の生成に用いられた機械学習モデルの種類(例えば、ランダムフォレスト、ニューラルネットワークなど)が提示されると、同時に提示されている相関関係について、機械学習モデルの種類に応じた特性や傾向の先入観をもって評価することになる。このため、表示装置30に、予測モデル400の生成に用いられた機械学習モデルの種類が提示されない場合に比べて、予測モデル400の性能の評価の客観性が低下する場合がある。
本実施形態の推定情報生成装置10は、承認画面500において相関関係を提示する際に、予測モデル400の生成に用いられた機械学習モデルの種類を提示しないため、利用者による予測モデル400の性能の評価の客観性を高めることができる。
【0058】
さらに、相関関係提示部150は、承認画面500において相関関係を提示する際に、予測モデル400の生成に用いられた機械学習モデルの種類を提示するか、しないかを利用者による初期設定によって選択できるように構成することもできる。
また、相関関係提示部150は、承認画面500において相関関係を提示する際に、予測モデル400の生成に用いられた機械学習モデルの種類を提示しなかった場合に、利用者の操作によって、生成に用いられた機械学習モデルの種類を提示することに切り替えるように構成することもできる。
このように構成された推定情報生成装置10によれば、承認画面500において相関関係を提示する際に、予測モデル400の生成に用いられた機械学習モデルの種類を提示しないようにして利用者による予測モデル400の性能の評価の客観性を高めるとともに、必要に応じて機械学習モデルの種類を提示することで利用者の利便性を向上させることができる。
【0059】
なお、財務業績指標211は、企業の経営状況の変化に応じて、公表時期ごと(例えば、決算期ごと。すなわち、指標の算出対象期間ごと)に、その数値が変動する。したがって、実績財務業績指標451の算出対象期間と、推定財務業績指標450の算出対象期間とが互いにずれていると、企業の経営状況の変化の程度によっては、正しい相関関係を得ることが困難になる。そこで、相関関係提示部150は、実績財務業績指標451の算出対象期間と、推定財務業績指標450の算出対象期間とを一致させて、各指標を算出する。このように構成された推定情報生成装置10によれば、実績財務業績指標451と推定財務業績指標450との相関関係の算出精度を向上させることができる。
【0060】
また、推定情報生成装置10は、指標の算出対象期間ごとに、実績財務業績指標451と推定財務業績指標450との相関関係を算出してもよい。例えば、推定情報生成装置10は、直近10年間の決算期ごとに、相関関係を算出してもよい。また、推定情報生成装置10は、相関関係を算出する対象期間を利用者が指定可能に構成されていてもよい。
【0061】
(ステップS160)図4に戻り、操作受付部160は、操作装置40を介して、利用者の操作結果を取得する。利用者が他のモデルボタン504を操作した場合には、操作受付部160は、相関関係提示部150に対して、他の予測モデル400による推定財務業績指標450を算出させる。相関関係提示部150は、他の予測モデル400による推定財務業績指標450と実績財務業績指標451との相関関係を提示する。
また、利用者が承認ボタン503を操作した場合には、操作受付部160は、利用者の承認操作を受け付ける。
【0062】
すなわち、操作受付部160は、提示された相関関係に対する承認操作を受け付ける。
【0063】
(ステップS170)モデル確定部170は、操作受付部160が承認操作を受け付けると、当該予測モデル400(つまり、承認操作が受け付けられた相関関係を算出した予測モデル400)を承認済み予測モデル410として、記憶部50に記憶させる。
また、モデル確定部170は、ステップS120において生成された因子関数310を記憶部50に記憶させる。
【0064】
この結果、記憶部50には、図9に例示した指標テーブル300と、図5に例示した因子関数310とが記憶される。ここで、図9に例示した指標テーブル300には、承認済み予測モデル410を示す予測モデルIDが含まれている。
すなわち、推定情報生成装置10は、企業の非財務指標221を与えることにより、当該企業の財務業績指標211の推定値、つまり推定財務業績指標450を算出する承認済み予測モデル410を生成する。
この承認済み予測モデル410は、複数の種類の機械学習モデルを順次試行して得られた推定財務業績指標450と実績財務業績指標451との相関関係について、利用者が妥当であると判定した(つまり、承認した)予測モデル400である。
【0065】
一般に、新規の投資先や取引先の選定過程では、取引先候補企業との意見交換や交渉を通じて、非財務的な情報(例えば、社外取締役・女性管理職の割合、CO2排出量削減等の環境対策の状況)を得る機会がありうる。
【0066】
本実施形態の推定情報生成装置10によれば、財務データや事業運営データが開示されていない企業であっても、非財務指標221が得られる企業であれば、その財務業績指標(例えば、ROIC)の推定値を算出することができる。さらに、本実施形態の推定情報生成装置10によれば、財務業績指標(例えば、ROIC)の推定値の算出に用いる予測モデル400が、複数の種類の予測モデル400の中から利用者が妥当であると判定した承認済み予測モデル410であるため、企業の経営状況を示す客観的な指標として妥当な指標を提供することができる。すなわち、本実施形態の推定情報生成装置10によれば、財務データや事業運営データが開示されていない企業の経営状況の客観的な把握を支援することができる。
【0067】
[財務指標提示装置60の機能構成と動作の流れ]
次に、財務指標提示装置60の機能構成と動作の流れについて、図1および図11を参照して説明する。
【0068】
図11は、本実施形態の財務指標提示装置60の動作の流れの一例を示す図である。
財務指標提示装置60は、推定情報生成装置10によって生成された因子関数310と承認済み予測モデル410とに基づいて、利用者が評価の対象とする企業の推定財務業績指標450を算出する。
【0069】
財務指標提示装置60は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)やクラウドサーバとして実装される。財務指標提示装置60は、そのソフトウエア機能部として、非財務情報取得部610と、因子関数取得部620と、予測モデル取得部630と、判定対象因子スコア算出部640と、財務業績指標算出部650と、結果提示部660とを備える。
これら各部は、例えば、財務指標提示装置60が備える記憶装置(不図示)や、クラウドサーバ内の記憶装置(不図示)に記憶されたソフトウエア(コンピュータプログラム)として実装される。
【0070】
(ステップS610)非財務情報取得部610は、非財務情報データベース70から非財務指標221を取得する。
非財務情報データベース70とは、例えば、信用調査企業などが運営する商用のデータベースや、財務指標提示システム1を導入する組織が自前で用意したデータベースである。
上述した企業情報データベース20とは異なり、非財務情報データベース70には、財務諸表などの経営状況を示す情報を開示していない企業の非財務指標221を含んだ、判定候補非財務情報700が記憶されている。
【0071】
図12は、本実施形態の非財務情報データベース70に記憶されている判定候補非財務情報700の一例を示す図である。同図には、財務諸表などの経営状況を示す情報を開示していない企業の一例として、企業ID“2452”の企業の非財務指標221が記憶されている。
【0072】
財務指標提示装置60の利用者は、非財務情報データベース70に記憶されている複数の企業の中から、判定対象の企業を選択する。例えば、利用者は、財務指標提示装置60の操作部(例えば、タッチパネル、キーボード、マウスなど。不図示)を使用して、判定対象の企業の企業名や企業IDを入力する。
非財務情報取得部610は、入力された企業名や企業IDを検索キーにして、非財務情報データベース70の非財務指標221を検索する。非財務情報取得部610は検索の結果、ヒットした非財務指標221を取得する。
【0073】
一例として、利用者が企業ID“2452”の企業を判定対象の企業として非財務情報データベース70を検索した場合、企業ID“2452”の企業が判定対象の企業であり、企業ID“2452”の企業の非財務指標221が、対象企業非財務指標701となる。
非財務情報取得部610は、検索の結果、ヒットした企業ID“2452”の企業の非財務指標221を、対象企業非財務指標701として取得する。
【0074】
すなわち、非財務情報取得部610は、判定対象の企業の経営状況を数値で示す数値情報200のうち、財務諸表に掲載される情報である財務情報210以外の非財務情報220である判定候補非財務情報700を、判定対象の企業ごとに取得する。
【0075】
非財務情報取得部610は、取得した対象企業非財務指標701を、判定結果情報800として、財務指標提示装置60の記憶部(不図示)に記憶させる。
【0076】
図13は、本実施形態の判定結果情報800の一例を示す図である。同図の一例において、判定結果情報800には、企業ID“2452”と、当該企業の対象企業非財務指標701とが対応付けられて記憶されている。
【0077】
(ステップS620)図11に戻り、因子関数取得部620は、記憶部50から因子関数310を取得する。上述したように、因子関数310は、推定情報生成装置10の因子分析部120が生成する(図5を参照)。記憶部50には、因子分析部120が生成した因子関数310が記憶されている。因子関数310とは、非財務情報220を因子分析して得られる因子の値である因子スコア311を、非財務情報220の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す関数として生成された関数である。
【0078】
すなわち、因子関数取得部620は、非財務情報220を因子分析して得られる因子の値である因子スコア311を、非財務情報220の項目ごとに重みづけされた多項式によって示す関数である因子関数310が記憶されている記憶部50から、因子関数310を取得する。
【0079】
(ステップS630)予測モデル取得部630は、記憶部50から承認済み予測モデル410を取得する。上述したように、推定情報生成装置10の予測モデル生成部140は、因子スコア311を説明変数とし財務業績指標211を目的変数として予測モデル400を生成する。承認済み予測モデル410は、予測モデル生成部140が生成した予測モデル400について、利用者が承認操作を行った後、モデル確定部170によって記憶部50に記憶される(図9を参照)。つまり、記憶部50には、承認済み予測モデル410が記憶されている。
【0080】
すなわち、予測モデル取得部630は、因子スコア311と、財務情報210が示す財務業績指標211との関係を示す予測モデル400であって、因子スコア311を説明変数とし財務業績指標211を目的変数として所定の種類の機械学習モデルを適用して予め生成された承認済み予測モデル410が記憶されている記憶部50から、承認済み予測モデル410を取得する。
【0081】
(ステップS640)判定対象因子スコア算出部640は、ステップS610で取得した対象企業非財務指標701と、ステップS620で取得した因子関数310とに基づいて、因子スコア311を算出する。
【0082】
すなわち、判定対象因子スコア算出部640は、取得された判定候補非財務情報700と、取得された因子関数310とに基づいて、判定対象の企業ごとの因子スコア311である判定対象因子スコア702を算出する。なお、因子スコア311の算出の具体的な手順については、ステップS130において説明した手順と同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
判定対象因子スコア算出部640は、算出した因子スコア311を、判定対象因子スコア702として、上述した判定結果情報800に対応付けて不図示の記憶部に記憶させる。この結果、図13に示すように、判定結果情報800は、企業ID“2452”と、当該企業の対象企業非財務指標701と、当該企業の判定対象因子スコア702とが対応付けられた状態に更新される。
【0084】
(ステップS650)図11に戻り、財務業績指標算出部650は、判定結果情報800に記憶されている、判定対象企業の判定対象因子スコア702と、ステップS630において取得された承認済み予測モデル410とに基づいて、企業の財務業績指標211の推定値である判定対象財務業績指標801(例えば、ROIC)を算出する。なお、判定対象財務業績指標801の算出の具体的な手順については、ステップS150において説明した財務業績指標211の算出手順と同様であるので、その説明を省略する。
【0085】
財務業績指標算出部650は、算出した判定対象財務業績指標801を、上述した判定結果情報800に対応付けて不図示の記憶部に記憶させる。
この結果、図13に示すように、判定結果情報800は、企業ID“2452”と、当該企業の対象企業非財務指標701と、当該企業の判定対象因子スコア702と、判定対象財務業績指標801とが対応付けられた状態に更新される。
【0086】
(ステップS660)図11に戻り、結果提示部660は、判定結果情報800に含まれる判定対象財務業績指標801を、表示装置80に出力することにより、利用者に提示して、一連の動作を終了する。
【0087】
以上説明したように、本実施形態の財務指標提示装置60は、経営状況の判定対象の企業が財務情報210を開示していない企業であったとしても、当該企業の非財務情報220と、上述した承認済み予測モデル410とに基づいて財務指標(例えば、ROIC)を推定する。
【0088】
すなわち、本実施形態の財務指標提示装置60によれば、財務データや事業運営データが開示されていない企業であっても、非財務指標221が得られる企業であれば、その財務業績指標(例えば、ROIC)の推定値を算出することができる。さらに、本実施形態の財務指標提示装置60によれば、財務業績指標(例えば、ROIC)の推定値の算出に用いる予測モデル400が、複数の種類の予測モデル400の中から利用者が妥当であると判定した承認済み予測モデル410であるため、企業の経営状況を示す客観的な指標として妥当な指標を提供することができる。すなわち、本実施形態の財務指標提示装置60によれば、財務データや事業運営データが開示されていない企業の経営状況の客観的な把握を支援することができる。
【0089】
なお、推定情報生成装置10と財務指標提示装置60とは、一体化されたコンピュータ装置あるいは同一のコンピュータ装置として構成されてもよいし、別々のコンピュータ装置として構成されてもよい。
例えば、推定情報生成装置10は財務指標提示システム1のサービス提供者(運営者)が操作するコンピュータ装置であり、財務指標提示装置60は財務指標提示システム1のサービス受益者が操作するコンピュータ装置であってもよい。
【0090】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【0091】
なお、上記の実施形態における各装置が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0092】
なお、各装置が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0093】
また、各装置が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、制御部が備える各部による処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0094】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…財務指標提示システム、10…推定情報生成装置、110…数値情報取得部、120…因子分析部、130…因子スコア算出部、140…予測モデル生成部、150…相関関係提示部、160…操作受付部、170…モデル確定部、60…財務指標提示装置、610…非財務情報取得部、620…因子関数取得部、630…予測モデル取得部、640…判定対象因子スコア算出部、650…財務業績指標算出部、660…結果提示部
310…因子関数、400…予測モデル、410…承認済み予測モデル、801…判定対象財務業績指標
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13