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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123927
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240905BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240905BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240905BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61B5/055 320
A61B5/055 370
G10K11/16 160
F16F15/02 A
F16F15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031752
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 広基
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀和
【テーマコード(参考)】
3J048
4C096
5D061
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048AD12
3J048BC01
3J048BE02
3J048BE03
3J048CB01
3J048CB21
3J048EA07
4C096AB47
4C096AD08
4C096AD09
4C096AD23
4C096CA67
4C096CB19
5D061GG05
5D061GG07
(57)【要約】
【課題】傾斜磁場コイルの振動による騒音を抑制すること。
【解決手段】実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、静磁場磁石と、傾斜磁場コイルと、防振材と、振動低減手段とを備える。静磁場磁石は、円筒形状であり、静磁場を発生する。傾斜磁場コイルは、円筒形状であり、静磁場磁石の内側に設置され、傾斜磁場を発生する。防振材は、静磁場磁石と傾斜磁場コイルとの間に配置される。また、防振材は、バネ要素及びダンピング要素の対からなる防振材要素を静磁場磁石の円筒の円周方向、かつ、円筒の高さ方向に複数設ける。振動低減手段は、実行されるパルスシーケンスの種類に応じて、防振材要素を構成するバネ要素及びダンピング要素のうち少なくとも一方を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静磁場を発生する円筒形状の静磁場磁石と、
前記静磁場磁石の内側に設置され、傾斜磁場を発生する円筒形状の傾斜磁場コイルと、
前記静磁場磁石と前記傾斜磁場コイルとの間に配置された防振材であって、バネ要素及びダンピング要素の対からなる防振材要素を前記静磁場磁石の円筒の円周方向、かつ、前記円筒の高さ方向に複数設ける防振材と、
実行されるパルスシーケンスの種類に応じて、前記防振材要素を構成する前記バネ要素及び前記ダンピング要素のうち少なくとも一方を制御する振動低減手段と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記振動低減手段は、実行されるパルスシーケンスの種類に応じて定まる前記傾斜磁場コイルの振動の腹と節の位置に応じて、前記防振材要素を構成する前記バネ要素及び前記ダンピング要素のうち少なくとも一方の硬軟を制御する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
静磁場を発生する円筒形状の静磁場磁石と、
前記静磁場磁石の内側に設置され、傾斜磁場を発生する円筒形状の傾斜磁場コイルと、
前記静磁場磁石と前記傾斜磁場コイルとの間に配置された防振材であって、前記静磁場磁石の円筒の円周方向、かつ、前記円筒の高さ方向に防振材要素を複数設ける防振材と、
実行されるパルスシーケンスの種類に応じて定まる前記傾斜磁場コイルの振動の腹と節の位置に応じて、前記防振材要素の硬軟を制御する振動低減手段と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号(MR(Magnetic Resonance)信号)を再構成して画像を生成する撮像装置である。磁気共鳴イメージング装置では、被検体からの磁気共鳴信号を非侵襲で収集することができる。
【0003】
磁気共鳴イメージング装置の傾斜磁場コイルには傾斜磁場電源が接続される。そして、磁気共鳴イメージング装置において、パルスシーケンスに応じて、静磁場下にある傾斜磁場コイルに大きな電流を流し、さらに高速でスイッチングする。そのため、傾斜磁場コイルにローレンツ力が作用し、傾斜磁場コイルが激しく振動する。その振動が傾斜磁場コイルから静磁場磁石に伝搬して静磁場磁石が振動し騒音が大きくなるという問題がある。そのため、磁気共鳴イメージング装置では、傾斜磁場コイルの支持方法を用いた騒音対策が重要になる。
【0004】
傾斜磁場コイルの支持方法の一つに、磁石内筒支持がある。磁石内筒支持では、静磁場磁石と傾斜磁場コイルとの間に防振材を配置している。また、傾斜磁場コイルから静磁場磁石への振動伝搬を減衰させるように防振材の物性、配置を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/115239号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、傾斜磁場コイルの振動による騒音を抑制することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、静磁場磁石と、傾斜磁場コイルと、防振材と、振動低減手段とを備える。静磁場磁石は、円筒形状であり、静磁場を発生する。傾斜磁場コイルは、円筒形状であり、静磁場磁石の内側に設置され、傾斜磁場を発生する。防振材は、静磁場磁石と傾斜磁場コイルとの間に配置される。また、防振材は、バネ要素及びダンピング要素の対からなる防振材要素を静磁場磁石の円筒の円周方向、かつ、円筒の高さ方向に複数設ける。振動低減手段は、実行されるパルスシーケンスの種類に応じて、防振材要素を構成するバネ要素及びダンピング要素のうち少なくとも一方を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の全体構成を示すブロック図。
図2図2は、比較例に係る磁気共鳴イメージング装置の磁石架台の断面図。
図3図3は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の磁石架台の断面図。
図4図4は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の機能を示すブロック図。
図5図5は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置において、変位と防振材要素の硬軟との関係を示す図。
図6図6は、実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置において、変位と防振材要素の硬軟との関係を示す図。
図7図7は、実施形態の変形例に係る磁気共鳴イメージング装置の磁石架台の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る高周波コイルユニットを備えたMRI装置の全体構成を示すブロック図である。
【0011】
図1は、実施形態に係るMRI装置1を示す。MRI装置1は、磁石架台10と、ローカルコイル20(例えば、胸部コイル20a)と、寝台30と、制御キャビネット40と、画像処理装置(例えば、コンソール)50とを備える。磁石架台10と、ローカルコイル20と、寝台30とは、通常、シールドルームとしての検査室に配置される。一方、制御キャビネット40は、例えば、機械室と呼ばれる部屋に配置され、コンソール50は操作室に配置される。
【0012】
図1において、MRI装置1が、被検体、例えば患者Uの頭部側から磁石架台10に挿入される方式(Head First)を採用する場合について図示するがその場合に限定されるものではない。例えば、MRI装置1は、患者Uの足部側から磁石架台10に挿入される方式(Foot First or Feet First)を採用してもよい。
【0013】
磁石架台10は、静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12と、WB(Whole Body)コイル13等を備える。磁石架台10の静磁場磁石11は、磁石が円筒形状の磁石構造であるトンネルタイプと、撮像空間を挟んで上下に一対の磁石が配置された開放型(オープン型)とに大別される。ここでは、静磁場磁石11がトンネル型である場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。
【0014】
静磁場磁石11は、概略円筒形状をなしており、患者Uが搬送されるボア内に静磁場を発生する。ボアとは、磁石架台10の円筒内部の空間のことである。静磁場磁石11は、例えば、液体ヘリウムを保持するための筐体と、液体ヘリウムを極低温に冷却するための冷凍機と、筐体内部の超伝導コイルとによって構成される。なお、静磁場磁石11は、永久磁石によって構成されてもよい。以下、静磁場磁石11が、超伝導コイルを有する場合について説明する。
【0015】
静磁場磁石11は、超伝導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超伝導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石11は、励磁モードにおいて静磁場電源から供給される電流を超伝導コイルに印加することで静磁場を発生する。その後、永久電流モードに移行すると、静磁場電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石11は、長時間、例えば1年以上に亘って、静磁場を発生し続ける。
【0016】
傾斜磁場コイル12は、静磁場磁石11と同様に概略円筒形状をなし、静磁場磁石11の内側に設置される。傾斜磁場コイル12は、後述する傾斜磁場電源41から供給される電流(電力)により傾斜磁場を発生し患者Uに印加する。傾斜磁場コイル12は、X軸方向について傾斜磁場を発生させるXchコイルと、Y軸方向について傾斜磁場を発生させるYchコイルと、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるZchコイルとを備える。ここで、Z軸方向は静磁場に沿った方向、Y軸方向は垂直方向、X軸方向はZ軸とY軸それぞれに直交する方向である。
【0017】
ここで、傾斜磁場の生成に伴って発生する渦電流により発生する渦磁場がイメージングの妨げとなることから、傾斜磁場コイル12として、例えば、渦電流の低減を目的としたASGC(Actively Shielded Gradient Coil)が用いられてもよい。ASGCは、X軸、Y軸、及びZ軸方向の各傾斜磁場をそれぞれ形成するためのメインコイルの外側に、漏れ磁場を抑制するためのシールドコイルを設けた傾斜磁場コイルである。
【0018】
WBコイル13は、全身用コイルとも呼ばれ、傾斜磁場コイル12の内側に患者Uを取り囲むように概略円筒形状に設置されている。WBコイル13は、送信コイルとして機能する。つまり、WBコイル13は、後述するRF送信器42から伝送されたRFパルス信号に従ってRFパルスを患者Uに向けて送信する。一方、WBコイル13は、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能に加え、受信コイルとしての機能を備える場合もある。その場合、WBコイル13は、受信コイルとして、原子核の励起によって患者Uから放出されるMR信号を受信する。なお、WBコイル13は、RFコイルの一例である。
【0019】
MRI装置1は、WBコイル13の他、ローカルコイル20を備える場合もある。ローカルコイル20は、患者Uの体表面に近接して配置される。ローカルコイル20は、複数のコイル要素を備えてもよい。これら複数のコイル要素をアレイ状に配列したコイルは、PAC(Phased Array Coil)と呼ばれることもある。
【0020】
ローカルコイル20には幾つかの種別がある。例えば、ローカルコイル20には、図1に示すように患者Uの胸部(又は、腹部、脚部)に設置されるボディコイル(Body Coil)や、患者Uの背側に設置されるスパインコイル(Spine Coil)といった種別がある。この他、ローカルコイル20には、患者Uの頭部を撮像するための頭部コイル(Head Coil)や、足を撮像するためのフットコイル(Foot Coil)といった種別もある。また、ローカルコイル20には、手首を撮像するためのリストコイル(Wrist Coil)、膝を撮像するためのニーコイル(Knee Coil)、肩を撮像するためのショルダーコイル(Shoulder Coil)といった種別もある。なお、本実施形態では、ローカルコイル20が、胸部コイル20aである場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。
【0021】
ローカルコイル20は、受信コイルとして機能する。つまり、ローカルコイル20は、前述のMR信号を受信する。ただし、ローカルコイル20は、MR信号を受信する受信コイルとしての機能に加え、RFパルスを送信する送信コイルとしての機能を備える送受信コイルでもよい。例えば、ローカルコイル20としての頭部コイル及びニーコイルの中には、送受信コイルも存在する。つまり、ローカルコイル20は、送信専用、受信専用、送受信兼用の種別を問わない。本明細書では、ローカルコイル20が、胸部コイル20aである場合について説明するが、その場合に限定されるものではない。なお、ローカルコイル20は、RFコイルの一例である。
【0022】
本明細書において、ローカルコイル20はMRI装置1の構成品の1つであるものとして説明するが、ローカルコイル20がMRI装置1の構成に含まれない場合もあり得る。この場合、ローカルコイル20はMRI装置1の構成には含まれないものの、ローカルコイル20とMRI装置1とは互いに接続可能に構成されている。より具体的には、ローカルコイル20と、MRI装置1の寝台天板32とが互いに接続可能に構成される。
【0023】
寝台30は、寝台本体31と寝台天板32とを備える。寝台本体31は寝台天板32を上下方向及び水平方向に移動可能であり、撮像前に寝台天板32に載った被検体を所定の高さまで移動させる。その後、撮像時には寝台天板32を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。
【0024】
制御キャビネット40は、傾斜磁場電源41(X軸用41x、Y軸用41y、Z軸用41z)と、RF送信器42と、RF受信器43と、シーケンスコントローラ44とを備える。
【0025】
傾斜磁場電源41は、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とについて傾斜磁場を発生するコイルそれぞれを駆動する各チャンネル用の傾斜磁場電源41x,41y,41zを備える。傾斜磁場電源41x,41y,41zは、シーケンスコントローラ44の指令により、必要な電流を各チャンネル独立に出力する。それにより、傾斜磁場コイル12は、X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とにおける傾斜磁場(「勾配磁場」とも呼ばれる)を患者Uに印加することができる。
【0026】
RF送信器42は、シーケンスコントローラ44からの指示に基づいてRFパルス信号を生成する。RF送信器42は、生成したRFパルス信号をRFコイル(WBコイル13又はローカルコイル20)に伝送する。
【0027】
WBコイル13やローカルコイル20で受信したMR信号、より具体的には、ローカルコイル20内の各コイル要素で受信したMR信号は、RF受信器43に伝送される。各コイル要素の出力線路や、WBコイル13の出力線路はチャンネルと呼ばれる。このため、各コイル要素やWBコイル13から出力されるMR信号をそれぞれチャンネル信号と呼ぶこともある。WBコイル13で受信したチャンネル信号もRF受信器43に伝送される。
【0028】
RF受信器43は、WBコイル13やローカルコイル20からのチャンネル信号、すなわち、MR信号をAD(Analog to Digital)変換して、シーケンスコントローラ44に出力する。デジタルに変換されたMR信号は、生データ(Raw Data)と呼ばれることもある。
【0029】
シーケンスコントローラ44は、コンソール50による制御により、傾斜磁場電源41と、RF送信器42と、RF受信器43とをそれぞれ駆動することによって患者Uの撮像を行う。撮像によってRF受信器43から生データを受信すると、シーケンスコントローラ44は、その生データをコンソール50に送信する。
【0030】
シーケンスコントローラ44は、処理回路(図示を省略)を具備する。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
【0031】
続いて、コンソール50の説明に移る。コンソール50は、処理回路51と、メモリ52と、入力インターフェース53と、ディスプレイ54とを備える。
【0032】
処理回路51は、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processor Unit)等のプロセッサの他、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び、プログラマブル論理デバイス等の処理回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:Simple Programmable Logic Device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:Complex Programmable Logic Device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の回路が挙げられる。処理回路51は、メモリ52に記憶された、又は、処理回路51内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで、シーケンスコントローラ44の動作を制御し、パルスシーケンスに従った撮像を実行してMR画像を生成する機能を実現する。なお、処理回路51は、処理部の一例である。
【0033】
また、処理回路51は、単一の処理回路によって構成されてもよいし、複数の独立した処理回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、複数のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムをそれぞれ記憶するものであってもよいし、1個のメモリ52が複数の処理回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0034】
メモリ52は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、及び光ディスク等を備える。メモリ52は、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアを備えてもよい。メモリ52は、処理回路51において用いられる各種処理プログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(Operating System)等も含まれる)や、プログラムの実行に必要なデータや、医用画像を記憶する。また、OSに、操作者に対するディスプレイ54への情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力インターフェース53によって行うことができるGUI(Graphical User Interface)を含めることもできる。なお、メモリ52は、記憶部の一例である。
【0035】
入力インターフェース53は、操作者によって操作が可能な入力デバイスと、入力デバイスからの信号を入力する入力回路とを含む。入力デバイスは、トラックボール、スイッチ、マウス、キーボード、操作面に触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力デバイス、及び音声入力デバイス等によって実現される。操作者により入力デバイスが操作されると、入力回路はその操作に応じた信号を生成して処理回路51に出力する。なお、入力インターフェース53は、入力部の一例である。
【0036】
ディスプレイ54は、例えば液晶ディスプレイやOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等の一般的な表示出力装置により構成される。ディスプレイ54は、処理回路51の制御に従って各種情報を表示する。なお、ディスプレイ54は、表示部の一例である。
【0037】
コンソール50は、処理回路51による制御の下、シーケンスコントローラ44から送信される生データをk空間に配置し、メモリ52に記憶する。コンソール50は、処理回路51による制御の下、メモリ52に記憶されたk空間データに対して、逆フーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、患者U内の所望のMR画像を生成する。そして、コンソール50は、処理回路51による制御の下、生成した各種MR画像をメモリ52に格納する。
【0038】
ここで、実行されるパルスシーケンスに応じて、静磁場下にある傾斜磁場コイル12に大きな電流を流し、さらに高速でスイッチングする。そのため、傾斜磁場コイル12にローレンツ力が作用し、傾斜磁場コイル12が激しく振動する。その振動が傾斜磁場コイル12から静磁場磁石11に伝搬して静磁場磁石11が振動し騒音が大きくなるという問題がある。そのため、傾斜磁場コイル12の支持方法を用いた騒音対策が重要になる。
【0039】
傾斜磁場コイル12の支持方法の一つに、磁石内筒支持がある。磁石内筒支持では、静磁場磁石11と傾斜磁場コイル12との間に防振材V(図2に図示)を配置している。図2の左側は、比較例に係る磁石架台Wの横断面(x-y断面)図である。図2の右側は、比較例に係る磁石架台Wの縦断面(y-z断面)図である。
【0040】
図2は、磁石架台Wの静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12とを示す。そして、傾斜磁場コイル12は、磁石内筒支持されている。また、静磁場磁石11と傾斜磁場コイル12との間に、防振材Vが配置される。
【0041】
防振材Vは設計段階で物性や配置を決めるが、減衰対象となる周波数や部位が限定される。一方、MRIのパルスシーケンスは多岐にわたり、傾斜磁場コイル12に流す電流の駆動周波数、すなわちローレンツ力による傾斜磁場コイル12の振動周波数も多様である。その結果、傾斜磁場コイル12は様々な振動パターン(複数時相に亘る波の腹や節の3次元位置などを含む)を持ちうる。そのため、あるパルスシーケンスで発生する振動を抑制できるような防振材Vの配置や特性(減衰定数)で設計された支持系だと、別のパルスシーケンスで発生する振動モードの振動の抑制が不十分になってしまうという問題がある。
【0042】
そこで、MRI装置1は、図3に示すように、静磁場磁石11と傾斜磁場コイル12との間に、防振材60を配置する。図3の左側は、磁石架台10の横断面(x-y断面)図である。図3の右側は、磁石架台10の縦断面(y-z断面)図である。図3は、磁石架台10の静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12とを示す。そして、傾斜磁場コイル12は、磁石内筒支持されている。
【0043】
防振材60は、静磁場磁石11の円筒の円周方向(θ=θ1,θ2,…)、かつ、円筒の高さ方向(つまり、z軸方向、z=z1,z2,…)に、複数の防振材要素60aを設ける。つまり、複数の防振材要素60aの位置Pはそれぞれ、円筒の円周方向の位置(θ)と高さ方向の位置(z)とにより、P[θ,z]で表すことができる。また、1つの防振材要素60aは、1つのバネ要素(エアバッグなど)61aと1つのダンピング要素(オイルバッグなど)62aとの対からなる。そして、コンソール50(後述する振動低減機能F2)は、実行されるパルスシーケンスに応じてバネ要素61a及びダンピング要素62aを同時に又はいずれか一方をダイナミックに制御する。
【0044】
また、複数のバネ要素61aはすべてエアポンプPに繋がっており、複数のバネ要素61aのそれぞれの内圧は個別に変更可能である。なお、図3において、エアポンプPに繋がっていないバネ要素61aが便宜上存在するが、全てのバネ要素61aがエアポンプPに繋がっているものとする。エアポンプPで送り込む量を大きくして空気圧を高める(バネ定数を大きくする)ことで、防振材要素の硬度を高く(硬く)することができる。
【0045】
他方、ダンピング要素62aはすべてオイルチャンバCと繋がっており、コンソール50が可変オリフィス弁を制御することで複数のダンピング要素62aのそれぞれの減衰率を個別に設定可能である。なお、図3において、オイルチャンバCに繋がっていないダンピング要素62aが便宜上存在するが、全てのダンピング要素62aがオイルチャンバCに繋がっているものとする。オイルチャンバC内のベンの穴(オリフィス)の径を小さくすることで粘性を高める(減衰定数を大きく)ことで、防振材要素の硬度を高く(硬く)することができる。
【0046】
そして、コンソール50は、実行されるパルスシーケンスに基づいて、傾斜磁場コイルの振動パターンを特定して複数のバネ要素61aの内圧と複数のダンピング要素62aの減衰率とのうち少なくとも一方を制御する(図4に示す振動低減機能F2)。
【0047】
処理回路51は、メモリ52に記憶された、又は、処理回路51内に直接組み込まれたコンピュータプログラムを読み出して実行することで、図4に示すように、撮像機能F1と、振動低減機能F2とを実現する。以下、機能F1,F2がコンピュータプログラムの実行によりソフトウェア的に機能する場合を例に挙げて説明するが、機能F1,F2の全部又は一部の機能は、ASIC等の回路により実現されてもよい。
【0048】
撮像機能F1は、シーケンスコントローラ44を介して磁石架台10と、ローカルコイル20と、寝台30等を制御することにより、設定されたパルスシーケンスに基づいて患者Uの撮像部位に関する撮像を実行させ、ローカルコイル20からのMR信号に基づいて患者U内の所望のMR画像を生成する。ここで、撮像は、位置決め撮像(又は、プリスキャン)や、1又は複数のパルスシーケンスに沿った撮像を意味し、寝台天板32の移動(ボアへの挿入/ボアからの退避)動作をも含み得る。
【0049】
振動低減機能F2は、実行されるパルスシーケンスの種類に応じて、防振材要素60aを構成するバネ要素61a及びダンピング要素62aのうち少なくとも一方を制御する機能を含む。具体的には、振動低減機能F2は、実行されるパルスシーケンスに基づいて、傾斜磁場コイル12の振動パターンを特定する。そして、振動低減機能F2は、特定された振動パターンに対して位置P[θ,z]毎に、要素61aのバネ定数及びダンピング要素62aの減衰定数の少なくとも一方を算出し、各位置P[θ,z]のバネ要素61a及びダンピング要素62aのうち少なくとも一方の圧力をダイナミックに制御する。
【0050】
例えば、振動低減機能F2は、傾斜磁場コイル12の節となる位置に対応する位置の防振材要素60aの硬度を高く(高圧)するように制御する一方で、腹となる位置に対応する位置の防振材要素60aの硬度を低く(低圧)するように制御する。図5(A)に、第1の振動パターンのうちある時相における傾斜磁場コイル12の節と腹の位置を示す。図5(A)の左側は傾斜磁場コイル12の横断面(左側省略)を示し、右側は傾斜磁場コイル12の縦断面を示す。
【0051】
図5(B)に、円筒の円周方向の各位置P[θ]の硬度と、円筒の深さ方向の位置P[z]の硬度を示す。図5(A)に示す節(図中の矢印)に対応する図5(B)の位置が高圧になるように制御されることで、傾斜磁場コイル12から静磁場磁石11への振動伝搬を減衰する。つまり、振動低減機能F2は、変位の大きい箇所に対応する位置P[θ,z]のバネ要素61a及びダンピング要素62aの少なくとも一方を柔らかくする。変位の大きい箇所に対応する位置P[θ,z]のバネ要素61a及びダンピング要素62aがいずれも硬いと反力が磁石に伝わってしまうので好ましくないからである。
【0052】
また、図6(A)に、第2の振動パターンのうちある時相における傾斜磁場コイル12の節と腹の位置を示す。図6(A)の左側は傾斜磁場コイル12の横断面(左側省略)を示し、右側は傾斜磁場コイル12の縦断面を示す。
【0053】
図6(B)に、円筒の円周方向の各位置P[θ]の硬度と、円筒の深さ方向の位置P[z]の硬度を示す。図6(A)に示す節(図中の矢印)に対応する図6(B)の位置が高圧になるように制御されることで、傾斜磁場コイル12から静磁場磁石11への振動伝搬を減衰する。つまり、振動低減機能F2は、変位の大きい箇所に対応する位置P[θ,z]のバネ要素61a及びダンピング要素62aの少なくとも一方を柔らかくする。
【0054】
なお、振動低減機能F2は、振動周波数によって、防振材要素60aを構成するバネ要素61a及びダンピング要素62aの両方を制御する場合、振動周波数によって、バネ要素とダンピング要素との両方を併せて位置P[θ,z]における防振材要素60aの硬軟を制御してもよいし、バネ要素とダンピング要素とのうち1つを用いて位置P[θ,z]における防振材要素60aの硬軟を制御してもよい。例えば、ある列ではエアを完全に抜き、その隣の列ではオイルを完全に抜くことにより、バネ要素61aとダンピング要素62aを並列配置に変更することもできる。
【0055】
以上のように、MRI装置1によれば、パルスシーケンスの種類に応じて防振材要素60aの硬軟を制御することで傾斜磁場コイル12から静磁場磁石11への振動伝搬を減衰させることができるので、傾斜磁場コイル12の振動による騒音を効果的に抑制することができる。具体的には、複数の防振材要素60aにより位置P[θ,z]による硬軟の制御が可能であるし、各防振材要素60aが要素61a,62aを有することで変位量に応じた細かな硬軟の制御が可能である。
【0056】
(変形例)
上述のMRI装置1において、静磁場磁石11と傾斜磁場コイル12との間に2層の防振材60を配置する場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。静磁場磁石11と傾斜磁場コイル12との間に1層の防振材70を配置する場合であってもよい。その場合について図7を用いて説明する。
【0057】
図7の左側は、磁石架台10の横断面(x-y断面)図である。図7の右側は、磁石架台10の縦断面(y-z断面)図である。図7は、磁石架台10の静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12とを示す。そして、傾斜磁場コイル12は、磁石内筒支持されている。
【0058】
防振材70は、静磁場磁石11の円筒の円周方向(θ=θ1,θ2,…)、かつ、円筒の高さ方向(つまり、z軸方向、z=z1,z2,…)に、複数の防振材要素(例えば、バネ要素)70aを設ける。つまり、複数のバネ要素70aの位置Pはそれぞれ、円筒の円周方向の位置(θ)と高さ方向の位置(z)とにより、P[θ,z]で表すことができる。そして、コンソール50(後述する振動低減機能F2)は、実行されるパルスシーケンスに応じてバネ要素70aをダイナミックに制御する。
【0059】
また、複数のバネ要素70aはすべてエアポンプPに繋がっており、複数のバネ要素70aのそれぞれの内圧は個別に変更可能である。なお、図7において、エアポンプPに繋がっていないバネ要素70aが便宜上存在するが、全てのバネ要素70aがエアポンプPに繋がっているものとする。
【0060】
そして、コンソール50(図4に示す振動低減機能F2)は、実行されるパルスシーケンスに基づいて、傾斜磁場コイルの振動パターンを特定して複数のバネ要素70aの内圧(又は、複数のダンピング要素62aの減衰率)を制御する。振動低減機能F2は、実行されるパルスシーケンスの種類に応じて定まる傾斜磁場コイル12の振動の腹と節の位置に応じて、バネ要素70aの硬軟を制御する。
【0061】
以上のように、MRI装置1の変形例によれば、パルスシーケンスの種類に応じて防振材要素70aの硬軟を制御することで傾斜磁場コイル12から静磁場磁石11への振動伝搬を減衰させることができるので、傾斜磁場コイル12の振動による騒音を効果的に抑制することができる。具体的には、複数の防振材要素70aにより位置P[θ,z]による硬軟の制御が可能である。
【0062】
なお、撮像機能F1は、撮像手段の一例である。振動低減機能F2は、振動低減手段の一例である。
【0063】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、傾斜磁場コイルの振動による騒音を抑制することができる。
【0064】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1…磁気共鳴イメージング(MRI)装置
10…磁石架台
11…静磁場磁石
12…傾斜磁場コイル
50…コンソール
51…処理回路
60,70…防振材
60a,70a…防振材要素
61a…バネ要素
62a…ダンピング要素
F1…撮像機能
F2…振動低減機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7