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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123929
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】半導体製造装置用温調装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 13/00 20060101AFI20240905BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240905BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240905BHJP
   F25B 41/26 20210101ALI20240905BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F25B13/00 S
F25B1/00 304H
H01L21/302 101G
F25B41/26 Z
F25B1/00 399Y
F25B49/02 540
F25B1/00 304S
F25B1/00 311C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031758
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】新美 寛人
(72)【発明者】
【氏名】坂口 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】武井 信平
【テーマコード(参考)】
3L092
5F004
【Fターム(参考)】
3L092AA02
3L092FA36
5F004BB15
5F004BB25
5F004BB26
5F004CA04
(57)【要約】
【課題】低温側から高温側までの広い温度範囲において、熱負荷の温調をより応答性良く迅速に実現することが可能で、環境への負荷も抑制可能な半導体製造装置用温調装置を提供する。
【解決手段】冷凍回路1A,1Bを、圧縮機2と、圧縮機から冷媒を送り出す送出流路3と、温調後の冷媒を圧縮機に戻す戻り流路4と、熱負荷Wに冷媒を循環的に供給する第1及び第2循環流路5,6と、これら循環流路と送出流路及び戻り流路との間の連通状態を変化させて、冷媒を熱負荷に送り出す循環流路と熱負荷から受け入れる循環流路とを、第1及び第2循環流路の間で相互に切り換える切換回路10A,10Bと、第1循環流路に設けた第1膨張弁5cと、第1循環流路と切換回路との間に接続した熱交換器7とで構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置における熱負荷を所定の温度に温度調節するための温調装置であって、
前記温調装置は、高温高圧の冷媒を生成する冷凍圧縮機と、該圧縮機に接続されて該圧縮機から冷媒を送り出す送出流路と、該圧縮機に接続されて該圧縮機へと冷媒を戻す戻り流路と、熱負荷に接続する接続口をそれぞれ有して熱負荷に対して冷媒を循環的に供給するための第1循環流路及び第2循環流路と、これら第1及び第2循環流路と前記送出流路及び戻り流路との連通状態を変化させることにより、冷媒を熱負荷に対して送り出すための循環流路と冷媒を熱負荷から受け入れるための循環流路とを、該第1及び第2循環流路の間で相互に切り換える切換回路と、前記第1循環流路と前記切換回路との間を接続する冷媒熱交換流路を備えた熱交換器とを有する冷凍回路;前記熱交換器において前記冷媒熱交換流路の冷媒と熱交換する放熱水が流れる放熱水熱交換流路と、該放熱水熱交換流路に対して放熱水を給排する放熱水給排流路とを有する放熱水回路;前記冷凍回路及び前記放熱水回路を制御するプロセッサを有する制御部;を含んでおり、
前記第1循環流路は、冷媒を断熱膨張させる膨張弁を有しており、
前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節するときには、前記第1循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出すと共に、前記第2循環流路の接続口を通じて熱負荷からの冷媒を受け入れ、逆に、熱負荷を加熱により温度調節するときには、前記第2循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出すと共に、前記第1循環流路の接続口を通じて熱負荷からの冷媒を受け入れるように、前記切換回路を制御する、
ことを特徴とする半導体製造装置用温調装置。
【請求項2】
前記切換回路は、第1流量制御弁を有して前記送出流路と前記熱交換器との間を接続する第1接続流路と、第2流量制御弁を有して前記送出流路と前記第2循環流路との間を接続する第2接続流路と、第3流量制御弁を有して前記第2循環流路と前記戻り流路との間を接続する第3接続流路と、第4流量制御弁を有して前記熱交換器と前記戻り流路との間を接続する第4接続流路とを含んでおり、
前記プロセッサは、熱負荷の温度調節を加熱から冷却に切り換えた時には、前記第2流量制御弁及び第4流量制御弁の開度を連続的に減少させると共に、前記第1流量制御弁及び第3流量制御弁の開度を連続的に増大させることで、前記第1循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出し、逆に、熱負荷の温度調節を冷却から加熱に切り換えた時には、前記第1流量制御弁及び第3流量制御弁の開度を連続的に減少させると共に、前記第2流量制御弁及び第4流量制御弁の開度を連続的に増大させることで、前記第2循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出すように、これら第1-第4流量制御弁を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項3】
前記戻り流路は第1温度センサ及び第1圧力センサを有し、前記放熱水給排流路は放熱水制御弁を有しており、
前記プロセッサは、前記第1温度センサで検出した冷媒の温度と前記第1圧力センサで検出した冷媒の圧力とに基づいて冷媒の過熱度を算出し、熱負荷を加熱により温度調節している状態において、前記冷媒の過熱度が、第1設定過熱度よりも低い場合には前記放熱水制御弁の開度を増大させ、逆に、該冷媒の過熱度が、前記第1設定過熱度と同じかそれよりも大きい第2設定過熱度よりも高い場合には前記放熱水制御弁の開度を減少させるように、前記放熱水制御弁を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項4】
前記送出流路は第2圧力センサを有し、前記放熱水給排流路は放熱水制御弁を有しており、
前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節している状態において、前記第2圧力センサで検出した冷媒の圧力が、第1設定圧力よりも高い場合には前記放熱水制御弁の開度を増大させ、逆に、該冷媒の圧力が、前記第1設定圧力と同じかそれよりも小さい第2設定圧力よりも低い場合には前記放熱水制御弁の開度を減少させるように、前記放熱水制御弁を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項5】
圧縮機冷却用の冷媒を前記圧縮機に供給する冷却流路が、前記第1循環流路から分岐されて該圧縮機に接続されている、
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項6】
前記冷却流路は、前記膨張弁よりも前記熱交換器寄りの位置から分岐されて第1開閉制御弁を有する第1分岐流路と、該膨張弁よりも前記第1循環流路の接続口寄りの位置から分岐されて第2開閉制御弁を有する第2分岐流路と、冷媒を断熱膨張させるインジェクション弁を有していて、これら第1分岐流路及び第2分岐流路が、前記インジェクション弁を通じて前記圧縮機に接続されており、
前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節している状態においては、前記第1開閉制御弁を開くと共に前記第2開閉制御弁を閉じ、逆に、熱負荷を加熱により温度調節している状態においては、前記第1開閉制御弁を閉じると共に前記第2開閉制御弁を開くように、前記第1及び第2開閉制御弁を制御する、
ことを特徴とする請求項5に記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項7】
前記送出流路は、前記圧縮機から送り出される冷媒の温度を検出する第2温度センサを有しており、
前記プロセッサは、前記第2温度センサで検出した冷媒の温度が、第1設定温度よりも高い場合には、前記インジェクション弁の開度を増大させ、逆に、該冷媒の温度が、前記第1設定温度と同じかそれより小さい第2設定温度よりも低い場合には、前記インジェクション弁の開度を減少させるように、前記インジェクション弁を制御する、
ことを特徴とする請求項6に記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項8】
前記第1及び第2循環流路は、緊急時に、これら循環流路の前記接続口から冷媒が出入りするのを遮断する緊急遮断弁をそれぞれ有しており、
前記緊急遮断弁がノーマルクローズ型の電磁弁である、
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項9】
前記温調装置は、熱負荷の温度を検出するための第3温度センサを有し、
前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節している状態において、前記第3温度センサで検出した熱負荷の温度が、第1熱負荷設定温度よりも高い場合には前記膨張弁の開度を増大させ、逆に、該熱負荷の温度が、該第1熱負荷設定温度と同じかそれよりも小さい第2熱負荷設定温度よりも低い場合には前記膨張弁の開度を減少させるように、前記膨張弁を制御する、
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の半導体製造装置用温調装置。
【請求項10】
前記戻り流路は第1温度センサ及び第1圧力センサを有しており、
前記プロセッサは、前記第1温度センサで検出した冷媒の温度と前記第1圧力センサで検出した冷媒の圧力とに基づいて冷媒の過熱度を算出し、熱負荷を加熱により温度調節している状態において、前記冷媒の過熱度が、第3設定過熱度よりも低い場合には前記膨張弁の開度をさせ、逆に、該冷媒の過熱度が、前記第3設定過熱度と同じかそれよりも大きい第4設定よりも高い場合には前記膨張弁の開度をさせるように、前記膨張弁を制御する、
ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の半導体製造装置用温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に半導体製造装置における熱負荷を所定の温度に温度調節するための温調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置等の熱負荷を所定の温度に調節するための温調装置としては、例えば特許文献1に開示されているように、恒温液循環回路を流れる恒温液を、冷凍回路を流れる冷媒との熱交換等によって、設定された温度に制御し、その温度制御された恒温液を熱負荷に対して循環的に供給することで、該熱負荷を所定の温度に調節するものが広く知られている。
【0003】
ところで、昨今、半導体プロセスの微細化により、半導体製造装置における精度の向上や生産効率の向上が急務とされているが、上述のような従来の恒温液循環装置においては、恒温液の温度制御が冷凍回路の冷媒との熱交換によって行なわれている。そのため、恒温液の設定温度を変更した際に、その恒温液が変更後の設定温度に安定的に制御された状態に至るまでには、ある程度の時間を要していた。そこで、熱負荷の温度調節をより応答性良く迅速に実現することが可能な温調装置の開発が望まれている。
【0004】
さらに、半導体製造装置においては、低温側から高温側までより広い範囲での温度調節が要求されることから、従来の温調装置においては、恒温液としてフッ素化液が好適に用いられてきたが、環境への負荷を考慮するとフッ素化液の使用は可及的に抑制することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4582473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明の技術的課題は、低温側から高温側までの広い温度範囲において、熱負荷の温度調節をより応答性良く迅速に実現することが可能なばかりでなく、環境への負荷を抑制することが可能な半導体製造装置用の温調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、半導体製造装置における熱負荷を所定の温度に温度調節するための温調装置であって、前記温調装置は、高温高圧の冷媒を生成する冷凍圧縮機と、該圧縮機に接続されて該圧縮機から冷媒を送り出す送出流路と、該圧縮機に接続されて該圧縮機へと冷媒を戻す戻り流路と、熱負荷に接続する接続口をそれぞれ有して熱負荷に対して冷媒を循環的に供給するための第1循環流路及び第2循環流路と、これら第1及び第2循環流路と前記送出流路及び戻り流路との連通状態を変化させることにより、冷媒を熱負荷に対して送り出すための循環流路と冷媒を熱負荷から受け入れるための循環流路とを、該第1及び第2循環流路の間で相互に切り換える切換回路と、前記第1循環流路と前記切換回路との間を接続する冷媒熱交換流路を備えた熱交換器とを有する冷凍回路;前記熱交換器において前記冷媒熱交換流路の冷媒と熱交換する放熱水が流れる放熱水熱交換流路と、該放熱水熱交換流路に対して放熱水を給排する放熱水給排流路とを有する放熱水回路;前記冷凍回路及び前記放熱水回路を制御するプロセッサを有する制御部;を含んでおり、前記第1循環流路は、冷媒を断熱膨張させる膨張弁を有しており、前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節するときには、前記第1循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出すと共に、前記第2循環流路の接続口を通じて熱負荷からの冷媒を受け入れ、逆に、熱負荷を加熱により温度調節するときには、前記第2循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出すと共に、前記第1循環流路の接続口を通じて熱負荷からの冷媒を受け入れるように、前記切換回路を制御することを特徴としている。
【0008】
ここで、本発明において、好ましくは、前記切換回路は、第1流量制御弁を有して前記送出流路と前記熱交換器との間を接続する第1接続流路と、第2流量制御弁を有して前記送出流路と前記第2循環流路との間を接続する第2接続流路と、第3流量制御弁を有して前記第2循環流路と前記戻り流路との間を接続する第3接続流路と、第4流量制御弁を有して前記熱交換器と前記戻り流路との間を接続する第4接続流路とを含んでおり、前記プロセッサは、熱負荷の温度調節を加熱から冷却に切り換えた時には、前記第2流量制御弁及び第4流量制御弁の開度を連続的に減少させると共に、前記第1流量制御弁及び第3流量制御弁の開度を連続的に増大させることで、前記第1循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出し、逆に、熱負荷の温度調節を冷却から加熱に切り換えた時には、前記第1流量制御弁及び第3流量制御弁の開度を連続的に減少させると共に、前記第2流量制御弁及び第4流量制御弁の開度を連続的に増大させることで、前記第2循環流路の接続口から冷媒を熱負荷に送り出すように、これら第1-第4流量制御弁を制御する。
【0009】
そして、本発明において、好ましくは、前記戻り流路は第1温度センサ及び第1圧力センサを有し、前記放熱水給排流路は放熱水制御弁を有しており、前記プロセッサは、前記第1温度センサで検出した冷媒の温度と前記第1圧力センサで検出した冷媒の圧力とに基づいて冷媒の過熱度を算出し、熱負荷を加熱により温度調節している状態において、前記冷媒の過熱度が、第1設定過熱度よりも低い場合には前記放熱水制御弁の開度を増大させ、逆に、該冷媒の過熱度が、前記第1設定過熱度と同じかそれよりも大きい第2設定過熱度よりも高い場合には前記放熱水制御弁の開度を減少させるように、前記放熱水制御弁を制御する。
【0010】
また、好ましくは、前記送出流路は第2圧力センサを有し、前記放熱水給排流路は放熱水制御弁を有しており、前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節している状態において、前記第2圧力センサで検出した冷媒の圧力が、第1設定圧力よりも高い場合には前記放熱水制御弁の開度を増大させ、逆に、該冷媒の圧力が、前記第1設定圧力と同じかそれよりも小さい第2設定圧力よりも低い場合には前記放熱水制御弁の開度を減少させるように、前記放熱水制御弁を制御する。
【0011】
さらに、本発明において、好ましくは、圧縮機冷却用の冷媒を前記圧縮機に供給する冷却流路が、前記第1循環流路から分岐されて該圧縮機に接続されている、
ここで、より好ましくは、前記冷却流路は、前記膨張弁よりも前記熱交換器寄りの位置から分岐されて第1開閉制御弁を有する第1分岐流路と、該膨張弁よりも前記第1循環流路の接続口寄りの位置から分岐されて第2開閉制御弁を有する第2分岐流路と、冷媒を断熱膨張させるインジェクション弁を有していて、これら第1分岐流路及び第2分岐流路が、前記インジェクション弁を通じて前記圧縮機に接続されており、前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節している状態においては、前記第1開閉制御弁を開くと共に前記第2開閉制御弁を閉じ、逆に、熱負荷を加熱により温度調節している状態においては、前記第1開閉制御弁を閉じると共に前記第2開閉制御弁を開くように、前記第1及び第2開閉制御弁を制御する。
また、さらに好ましくは、前記送出流路は、前記圧縮機から送り出される冷媒の温度を検出する第2温度センサを有しており、前記プロセッサは、前記第2温度センサで検出した冷媒の温度が、第1設定温度よりも高い場合には、前記インジェクション弁の開度を増大させ、逆に、該冷媒の温度が、前記第1設定温度と同じかそれより小さい第2設定温度よりも低い場合には、前記インジェクション弁の開度を減少させるように、前記インジェクション弁を制御する。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記第1及び第2循環流路は、緊急時に、これら循環流路の前記接続口から冷媒が出入りするのを遮断する緊急遮断弁をそれぞれ有しており、前記緊急遮断弁がノーマルクローズ型の電磁弁である。
また、好ましく記温調装置は、熱負荷の温度を検出するための第3温度センサを有し、前記プロセッサは、熱負荷を冷却により温度調節している状態において、前記第3温度センサで検出した熱負荷の温度が、第1熱負荷設定温度よりも高い場合には前記膨張弁の開度を増大させ、逆に、該熱負荷の温度が、該第1熱負荷設定温度と同じかそれよりも小さい第2熱負荷設定温度よりも低い場合には前記膨張弁の開度を減少させるように、前記膨張弁を制御する。
さらに、好ましくは、前記戻り流路は第1温度センサ及び第1圧力センサを有しており、前記プロセッサは、前記第1温度センサで検出した冷媒の温度と前記第1圧力センサで検出した冷媒の圧力とに基づいて冷媒の過熱度を算出し、熱負荷を加熱により温度調節している状態において、前記冷媒の過熱度が、第3設定過熱度よりも低い場合には前記膨張弁の開度をさせ、逆に、該冷媒の過熱度が、前記第3設定過熱度と同じかそれよりも大きい第4設定よりも高い場合には前記膨張弁の開度をさせるように、前記膨張弁を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る半導体製造装置用温調装置によれば、冷凍回路により低温又は高温に温度制御された冷媒を、半導体製造装置の熱負荷に対して選択的に直接供給することで、該熱負荷を温度調節することができるため、低温側から高温側までの広い温度範囲において、熱負荷の温度調節をより応答性良く迅速に実現することが可能なばかりでなく、環境への負荷も可及的に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体製造装置用温調装置の回路図であって、半導体製造装置の熱負荷を冷却により温度調節している状態を示している。
図2】本発明の第1実施形態に係る半導体製造装置用温調装置の回路図であって、半導体製造装置の熱負荷を加熱により温度調節している状態を示している。
図3】本発明の第2実施形態に係る半導体製造装置用温調装置の回路図であって、半導体製造装置の熱負荷を冷却により温度調節している状態を示している。
図4】本発明の第2実施形態に係る半導体製造装置用温調装置の回路図であって、半導体製造装置の熱負荷を加熱により温度調節している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2は、本発明に係る半導体製造装置用温調装置の第1実施形態を示すものである。この温調装置T1は、半導体製造装置Sにおける例えば半導体ウェハの載置台等の熱負荷Wを冷却または加熱により温度調節(以下、略して「温調」という。)するためのものである。
そして、この温調装置T1は、温調対象である前記半導体製造装置Sの熱負荷Wに対して、温度制御した冷媒を循環的に供給するための冷凍回路1Aと、該冷凍回路1Aに設けた熱交換器7に対して、該冷凍回路1Aの冷媒と熱交換させる放熱水を供給するための放熱水回路20と、これら冷凍回路及び放熱水回路20を制御するプロセッサ8aを含む制御部8を有している。ここで前記冷媒としては、、低温から高温まで幅広い温度範囲で温度制御できるものが好適に用いられる。
【0016】
前記冷凍回路1Aは、高温高圧で気相の冷媒を生成する冷凍圧縮機2と、該圧縮機2に一端が接続され、前記圧縮機2で生成された冷媒を該圧縮機2から送り出す送出流路3と、該圧縮機2に一端が接続され、熱負荷Wから送り戻された温調後の冷媒を該圧縮機2へと戻す戻り流路4と、熱負荷Wに接続するための接続口5a,6aをそれぞれ一端に有し、該接続口5a,を通じて熱負荷Wに対して冷媒を循環的に供給するための第1循環流路5及び第2循環流路6と、これら第1及び第2循環流路5,6と前記送出流路3及び戻り流路4との間の連通状態を変化させることにより、冷媒を熱負荷Wに対して送り出すための循環流路と冷媒を熱負荷Wから受け入れるための循環流路とを、該第1及び第2循環流路5,6の間で相互に切り換える切換回路10Aと、前記第1循環流路5と前記切換回路10Aとの間を接続する冷媒熱交換流路7aを備えた前記熱交換器7とを有している。
【0017】
そして、前記第1流路5には、該流路を流れる冷媒を断熱膨張させる第1膨張弁5cが設けられている。この第1膨張弁5cは前記制御部8に電気的に接続されており、該制御部8のプロセッサ8aによりその開度を制御することができるようになっている。
また、この冷凍回路1Aには、前記圧縮機2に冷却用の冷媒を供給する冷却流路15が設けられており、この冷却流路15は前記第1循環流路から分岐されて前記圧縮機2に接続されている。
【0018】
前記放熱水回路20は、常温の水道水などを放熱水として流すもので、前記熱交換器7において前記冷媒熱交換流路7aの冷媒と前記放熱水とを熱交換させる放熱水熱交換流路21と、該放熱水熱交換流路21に対して該放熱水を給排する放熱水給排流路22,23とを有している。
【0019】
このような構成を有する温調装置T1によれば、前記プロセッサ8aで前記切換回路10Aを制御して、前記第1及び第2循環流路5,6と前記送出流路3及び戻り流路4との間の連通状態を変化させることにより、熱負荷Wを冷却する場合には、図1に示すように、前記圧縮機2から吐出された冷媒を、送出流路3を通じて凝縮器としての熱交換器7で冷却すると共に、前記第1膨張弁5cにて断熱膨張させ、前記第1循環流路5の接続口5aから冷却用冷媒として、熱負荷Wに対して供給する。そして、熱負荷Wを温調した後の冷媒を前記第2循環流路6の接続口6aから受け入れ、前記戻り流路4を通じて前記圧縮機2に戻すことができる。
【0020】
逆に、熱負荷Wを加熱する場合には、図2に示すように、前記圧縮機2から吐出された冷媒を、送出流路3を通じて前記第2循環流路6の接続口6aから、加熱用冷媒として熱負荷Wに対して供給する。そして、熱負荷Wを温調した後の冷媒を前記第1循環流路5の接続口5aから受け入れ、第1膨張弁5cで断熱膨張させると共に蒸発器としての熱交換器7で加熱し、前記戻り流路4を通じて前記圧縮機2に戻すことができる。
なお、このような切換回路10Aの切換制御は、半導体製造装置Sからの切換信号によって実行しても良いし、温調装置T1や熱負荷Wに設けた各種温度センサや圧力センサの検出結果に基づいて実行しても良い。
【0021】
より具体的に説明すると、前記切換回路10Aは、前記送出流路3の他端と前記熱交換器7における冷媒熱交換流路7aの一端との間を接続する第1接続流路11と、前記送出流路3の他端と前記第2循環流路6の他端との間を接続する第2接続流路12と、前記第2循環流路6の他端と前記戻り流路の他端との間を接続する第3接続流路と、前記熱交換器7における冷媒熱交換流路7aの一端と前記戻り流路4の他端との間を接続する第4接続流路とを有しており、これら4つの接続流路を環状に接続することによって形成されている。
【0022】
ここで、前記送出流路3は、前記圧縮機2から送り出される冷媒の温度を検出する第2温度センサ3aと、該冷媒の圧力を検出する第2圧力センサ3bと、該冷媒の圧力が高圧側の閾値に達したことを検知して温調装置T1の動作を停止させる高圧遮断圧力スイッチ3cとを有している。前記戻り流路4は、熱負荷Wの温調に供された後の前記圧縮機2へと戻される冷媒の温度を検出する第1温度センサ4aと、該冷媒の圧力を検出する第1圧力センサ4bとを有している。そして、前記第1及び第2温度センサ4a,3a、前記第1及び第2圧力センサ4b,3b、並びに、前記高圧遮断圧力スイッチ3cは、何れも前記制御部に電気的に接続されている。
さらに、前記半導体製造装置Sの熱負荷Wには、熱負荷Wの温度を検出するための第3温度センサ30が取り付けられ、該第3温度センサ30を前記制御部8に電気的に接続するなどして、該温度センサ30における検出温度が前記制御部8に伝送されるようになっている。
【0023】
また、前記切換回路10Aの第1接続流路11は第1流量制御弁11aを有し、前記第2接続流路12は第2流量制御弁12aを有記第3接続流路13は第3流量制御弁13aを有し、前記第4接続流路14は第4流量制御弁14aを有している。そして、これら流量制御弁11a,12a,13a,14aは前記制御部8に電気的に接続されており、該制御部8の前記プロセッサ8aでその開度を制御し、それにより、前記各接続流路11,12,13,14を流れる冷媒の流量を個別に連続的に変化させることができるようになっている。
【0024】
前記冷却流路15は、前記第1循環流路5における前記第1膨張弁5cよりも前記熱交換器7寄り(他端寄り)の位置から分岐された第1分岐流路16と、該第1膨張弁5cよりも該循環流路5の接続口5a寄り(一端寄り)の位置から分岐された第2分岐流路17と、一端に前記第1分岐流路16及び第2分岐流路17が接続され、他端に前記圧縮機2が接続された本流路18とを有している。そして、該冷却流路15は、前記本流路18にインジェクション弁18aを有しており、前記熱交換器7での冷却や熱負荷Wの加熱により凝縮されて液相となった高圧の冷媒の一部を、前記第1循環流路5から分流し、該インジェクション弁18aにおける断熱膨張によってより低温低圧で気液二相の冷媒にした上で、前記圧縮機2に供給するようになっている。
【0025】
ここで、前記第1分岐流路16は電磁弁等から成る第1開閉制御弁16aを有し、前記第2分岐流路は電磁弁等から成る第2開閉制御弁17aを有しており、これら第1及び第2開閉制御弁16a,17a並びに前記インジェクション弁18aは、前記制御部8に電気的に接続されている。そして、前記制御部8のプロセッサ8により、前記第1開閉制御弁16aを開閉して前記第1分岐流路16を選択的に遮断又は開通させたり、前記第2開閉制御弁17aを開閉して前記第2分岐流路17を選択的に遮断又は開通させたり、また、前記インジェクション弁18aの開度を制御したりすることができるようになっている。
【0026】
前記第1循環流路5は、その他端が前記冷媒熱交換流路7aの他端に接続され、その前記一端に設けられた接続口5a近傍に、安全対策として、電磁弁等の開閉制御弁から成る第1緊急遮断弁5bを有している。また、前記第2循環流路6も、同じくその一端に設けられた接続口6aの近傍に、安全対策として、電磁弁等の開閉切換弁から成る第2緊急遮断弁6bを有している。ここで、これら第1及び第2緊急遮断弁5b6bは、前記制御部8に電気的に接続されており、例えば、高圧遮断圧力スイッチ3cが作動したとき等の緊急時にOFF状態(閉鎖状態)にして、前記第1及び第2循環流路5,6における冷媒の流れを遮断(すなわち、前記接続口5a,6aから冷媒が出入りするのを遮断)することにより、温調装置T1と熱負荷との間における冷媒の循環を停止させることができるようになっている。また、本実施形態においては、前記第1及び第2緊急遮断弁は5b,6bは、停電時等に自動的にOFF状態となるように、ノーマルクローズ型の電磁弁が用いられている。
【0027】
さらに、前記放熱水回路20においては、前記放熱水熱交換流路21が前記冷媒熱交換流路7aに沿うように配されている。そして、前記放熱水給排流路22,23は、放熱水熱交換流路21の一端に接続されて放熱水を熱交換器7に供給する供給流路22と、その他端に接続されて熱交換後の放熱水を熱交換器7から排出する排出流路23とによって構成されている。このとき、これら放熱水の供給流路22及び排出流路23は、前記冷媒熱交換流路7a内を冷媒が前記圧縮機2側から前記第1循環流路5側へと流れて凝縮器として機能している時(すなわち、冷媒による熱負荷Wの冷却時)に、それとは逆方向に該放熱水熱交換流路内の放熱水が流れるように、該放熱水熱交換流路に対して接続されている。
【0028】
ここで、前記供給流路22は、熱交換機7に供給される放熱水の温度を検出するための第4温度センサ22aを有し、前記排出流路23は、熱交換機7に供給される放熱水の流量を調節するための放熱水制御弁(第5流量制御弁)23aを有しており、これら第4温度センサ22a及び第5流量制御弁23aは電気的に前記制御部8に接続されている。そして、該制御部8の前記プロセッサ8aで前記第5流量制御弁23aの開度を制御し、それにより、前記放熱水回路20内を流れる放熱水の流量を調節することができるようになっている。
【0029】
次に、図1及び図2を用いて前記温調装置T1の動作について具体的に説明する。
なお、図1及び図2において、斜線を付した流量制御弁は、実質的に閉鎖された状態又は完全に閉鎖された状態(以下、双方の状態を併せて「閉状態」という。)を示しており、斜線を付していない流量制御弁は、実質的に開放された状態又は完全に開放された状態(以下、双方の状態を併せて「開状態」という。)を示している。また、斜線を付した開閉制御弁は、OFF状態(閉鎖状態)を示しており、斜線を付していない開閉制御弁は、ON状態(開放状態)を示している。
【0030】
図1は、熱負荷Wを冷却により温度調節している状態(冷却モード)を示している。この冷却モードでは、前記プロセッサ8aにより、前記切換回路10Aは、前記第1接続流路11の第1流量制御弁11aが「開状態」、前記第2接続流路12の第2流量制御弁12aが「閉状態」、前記第3接続流路13の第3流量制御弁13aが「開状態」、前記第4接続流路14の第4流量制御弁14aが「閉状態」となるように制御されている。また、前記冷却流路15においては、前記第1分岐流路16の第1開閉制御弁16aはON状態に制御され、前記第2分岐流路17の第2開閉制御弁17aはOFF状態に制御されている。
【0031】
前記切換回路10Aをこのように制御することにより、前記圧縮機2から吐出された高温高圧で気相の冷媒が、前記送出流路3及び第1接続流路11を順次通って前記冷媒熱交換流路7aへと導かれ、その冷媒は、熱交換機7での冷却により凝縮されて高圧で液相の冷媒となり、前記第1循環流路5へと導かれる。そして、この第1循環流路5へと導かれた冷媒は、その一部が前記冷却流路15の第1分岐流路16へと分流されて前記本流路18へと導かれ、前記インジェクション弁18aでの断熱膨張によって、より低温低圧で気液二相の冷媒となり、前記圧縮機2の冷却に供される。一方、該第1流路5へと導かれた冷媒の他の残りは、前記第1膨張弁5cでの断熱膨張によって、より低温低圧で気液二相の冷媒となり、一方の接続口5aを通じて半導体製造装置Sの熱負荷Wに対して送り出され、冷却による該熱負荷Wの温調に供される。その際、該冷媒は、熱負荷Wから熱を奪って高温低圧で気相の冷媒となる。
【0032】
このようにして熱負荷Wの温調に供された後の冷媒は、他方の接続口6aから、前記第2循環流路6及び第3接続流路を順次通って、前記戻り流路4へと導かれ前記圧縮機2へと戻される。そして、該圧縮機2でより高温高圧とされた気相の冷媒は、再び前記送出流路3へと吐出される。このような冷媒の還流を繰り返すことにより、冷却用の低温冷媒を熱負荷Wに対して循環的に供給することができる。
【0033】
その一方で、図2は、熱負荷Wを加熱により温度調節している状態(加熱モード)を示している。この加熱モードでは、前記プロセッサ8aにより、前記切換回路10Aは、前記第1接続流路11の第1流量制御弁11aが「閉状態」、前記第2接続流路12の第2流量制御弁12aが「開状態」、前記第3接続流路13の第3流量制御弁13aが「閉状態」、前記第4接続流路14の第4流量制御弁14aが「開状態」となるように制御されている。また、前記冷却流路15においては、前記第1分岐流路16の第1開閉制御弁16aはOFF状態に制御され、前記第2分岐流路17の第2開閉制御弁17aはON状態に制御されている。
【0034】
前記切換回路10Aをこのように制御することにより、前記圧縮機2から吐出された高温高圧で気相の冷媒が、前記送出流路3及び第2接続流路12を順次通って前記第2循環流路6へと導かれる。そして、この第2循環流路6へと導かれた冷媒は、他方の接続口6aを通じて半導体製造装置Sの熱負荷Wに対して送り出され、加熱による該熱負荷Wの温調に供される。その際、該冷媒は、熱負荷Wから熱を奪われて凝縮され低温高圧で液相の冷媒となる。
【0035】
このようにして熱負荷Wの温調に供された後の冷媒は、前記一方の接続口5aから前記第1循環流路5へと導入される。そして、その第1循環流路5へと導かれた冷媒は、その一部が前記冷却流路15の第2分岐流路17へと分流されて前記本流路18へと導かれ、前記インジェクション弁18aでの断熱膨張によって、より低温低圧で気液二相の冷媒となり、前記圧縮機2の冷却に供される。一方、該第1流路5へと導かれた冷媒の他の残りは、前記第1膨張弁5cでの断熱膨張によって、より低温低圧で気液二相の冷媒となって前記冷媒熱交換流路7aへと導かれ、その冷媒は、熱交換機7での加熱により高温低圧で気相の冷媒となり、前記第4接続流路14を通じて戻り流路4へと導かれ前記圧縮機2へと戻される。そして、該圧縮機2でより高温高圧とされた気相の冷媒は、再び前記送出流路3へと吐出される。このような冷媒の還流を繰り返すことにより、加熱用の高温冷媒を熱負荷Wに対して循環的に供給することができる。
【0036】
このような切換回路10Aを有する冷凍回路1Aにおいて、図2に示す前記加熱モードから図1に示す前記冷却モードへの切り換え時には、前記プロセッサ8aにより、前記第2流量制御弁12a及び第4流量制御弁14aの開度が連続的に徐々に減少する共に、前記第1流量制御弁11a及び第3流量制御弁13aの開度が連続的に徐々に増大するように、これら流量制御弁が制御される。すると、第1循環流路5内の冷媒の圧力が徐々に上昇して第2循環流路6の接続口6aから熱負荷Wに送り出される加熱用冷媒の流量が徐々に減少していく。そして、前記第2流量制御弁12a及び第4流量制御弁14aが前記「閉状態」となると共に、前記第1流量制御弁11a及び第3流量制御弁13aが前記「開状態」となると、前記冷媒の流れ方向が逆転して前記第1循環流路5の接続口5aから冷却用冷媒が熱負荷Wに送り出され冷却モードになる。
【0037】
逆に、図1に示す前記冷却モードから図2に示す前記加熱モードへの切り換え時には、前記プロセッサ8aにより、前記第1流量制御弁11a及び第3流量制御弁13aの開度が連続的に徐々に減少する共に、前記第2流量制御弁12a及び第4流量制御弁14aの開度が連続的に徐々に増大するように、これら流量制御弁が制御される。すると、第2循環流路6内の冷媒の圧力が徐々に上昇して第1循環流路5の接続口5aから熱負荷Wに送り出される冷却用冷媒の流量が徐々に減少していく。そして、前記第1流量制御弁11a及び第3流量制御弁13aが前記「閉状態」となると共に、前記第2流量制御弁12a及び第4流量制御弁14aが前記「開状態」となると、前記冷媒の流れ方向が逆転して前記第2循環流路6の接続口6aから加熱用冷媒が熱負荷Wに送り出され加熱モードになる。
【0038】
このように、上記冷凍回路1Aにおいては、冷却モードと加熱モードとの間での切り換えが4つの流量制御弁によって連続的に徐々に行なわれるため、モードの切り換えに伴う熱負荷Wにおける冷媒の圧力や温度の急激な変化を抑制することができる。その結果、このような急激な冷媒の圧力や温度の変化によって生じる、熱負荷Wを構成する材料の急激な膨張や収縮を抑制することができ、半導体製造装置における加工精度を確保することが可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態に係る半導体製造装置用温調装置T1おいては、上述した各種センサやスイッチの出力結果に基づいて、前記制御部8のプロセッサ8aにより、前記温調装置T1の冷凍回路1A及び放熱回路20が以下のように制御される。
まず、前記戻り流路4の第1温度センサ4aで検出した戻り冷媒の温度と前記第1圧力センサ4bで検出した該戻り冷媒の圧力とに基づいて該戻り冷媒の過熱度を算出し、加熱モードにおいて、前記戻り冷媒の過熱度が第1設定過熱度よりも低い場合には、前記放熱水制御弁であるところの第5流量制御弁23aを制御してその開度を増大させ、それにより、戻り流路4を通じて圧縮機2に戻される戻り冷媒の過熱度を上昇させる。逆に、該冷媒の過熱度が第2設定過熱度よりも高い場合には、前記第5流量制御弁23aを制御してその開度を減少させ、それにより、戻り流路4を通じて圧縮機2に戻される戻り冷媒の過熱度を降下させる。ここで、前記第2設定過熱度は、前記第1設定過熱度と同じかそれよりも大きい値に設定されている。
【0040】
また、冷却モードにおいて、前記送出流路3の第2圧力センサ3bで検出した送出冷媒の圧力が第1設定圧力よりも高い場合には、前記第5流量制御弁23aを制御してその開度を増大させ、それにより、前記圧縮機2から吐出される冷媒の圧力を降下させる。逆に、該送出冷媒の圧力が、第2設定圧力よりも低い場合には前記第5流量制御弁を制御してその開度を減少させ、それにより、前記圧縮機2から吐出される送出冷媒の圧力を上昇させる。ここで、前記第2設定圧力は、前記第1設定圧力と同じかそれよりも小さい値に設定されている。
【0041】
また、前記送出流路3の第2温度センサ3aで検出した送出冷媒の温度が第1設定温度よりも高い場合には、前記インジェクション弁18aを制御してその開度を増大させ、それにより、前記圧縮機2の温度を降下させて該圧縮機2から吐出される冷媒の温度を降下させる。逆に、該送出冷媒の温度が前記第2設定温度よりも低い場合には、前記インジェクション弁を制御してその開度を減少させ、それにより、前記圧縮機2の温度を上昇させて該圧縮機2から吐出される送出冷媒の温度を上昇させる。ここで、前記第2設定温度は、前記第1設定温度と同じかそれよりも小さい値に設定されている。
【0042】
また、冷却モードにおいて、前記第3温度センサで検出した熱負荷Wの温度が第1熱負荷設定温度よりも高い場合には、前記第1膨張弁5cを制御してその開度を増大させ、それにより、熱負荷Wの温度を降下させる。逆に、該熱負荷Wの温度が第2熱負荷設定温度よりも低い場合には、前記第1膨張弁5cを制御してその開度を減少させ、それにより、熱負荷Wの温度を上昇させる。ここで、前記第2熱負荷設定温度は、前記第1熱負荷設定温度と同じかそれよりも小さい値に設定されている。
【0043】
さらに、加熱モードにおいて、前記戻り流路4を流れる戻り冷媒の前記過熱度が第3設定過熱度よりも低い場合には、前記第1膨張弁5cを制御してその開度を減少させ、それにより、前記戻り流路4を通じて圧縮機2に戻される戻り冷媒の過熱度を上昇させる。逆に、前記戻り流路4の戻り冷媒の前記過熱度が第4設定よりも高い場合には、前記第1膨張弁5cを制御してその開度を増大させ、それにより、前記戻り流路4を通じて圧縮機2に戻される戻り冷媒の過熱度を降下させる。ここで、前記第4設定過熱度は、前記第3設定過熱度と同じかそれよりも大きい値に設定されている。なお、前記第3設定過熱度が前記第1設定過熱度と同じ値で、前記第4設定過熱度が前記第2設定過熱度と同じ値であっても良い。また、これら第1-第4設定過熱度の値が全て同じであっても良い。
【0044】
続いて、図3及び図4に基づき、本発明に係る半導体製造装置用温調装置の第2実施形態について説明する。ただし、ここでは、前記第1実施形態の温調装T1と同じ構成部分及びそれに伴う作用効果については、重複記載を避けるため、原則として図に同じ符号を付して説明を省略することとする。
この第2実施形態の温調装置T2と前記第1実施形態の温調装置T1との主な相違は、切換回路の構成と、該切換回路10Bと前記第1循環流路5とを直接接続するバイパス流路9の有無にある。
【0045】
この第2実施形態の温調装置T2における切換回路10Bは、前記制御部8に電気的に接続された四方切換制御弁40と、該四方切換制御弁40と前記熱交換器7との間を接続する第5接続流路41と、該四方切換制御弁40と戻り流路4との間を接続する第6接続流路42とを有している。ここで、前記四方切換制御弁40は、第1ポート40a、第2ポート40b、第3ポート40c及び第4ポートを有している。そして、前記送出流路3の前記他端が前記第1ポート40aに接続され、前記第5接続流路41の一端が前記第2ポート40bに接続されると共に、その他端が前記冷媒熱交換流路7aの前記一端に接続され、前記第6接続流路42の一端が前記第3ポート40cに接続されると共に、その他端が前記戻り流路4の前記他端に接続され、前記第2循環流路6の前記他端が前記第4ポート40dに接続されている。
【0046】
また、この四方切換制御弁40は、前記プロセッサ8aにより、第1ポート40aと第2ポート40b同士及び第3ポート40cと第4ポート40d同士が互いに連通された第1切換状態と、第1ポート40aと第4ポート40d同士及び第2ポート40bと第3ポート40c同士が互いに連通された第2切換状態との間で、選択的に切り換えることができるようになっている。
【0047】
さらに、前記バイパス流路9は、その一端側が前記第5接続流路41から分岐されると共に、その他端が前記第1循環流路5における前記第1膨張弁5cよりも接続口5a寄りの位置であって、しかも、前記第1緊急遮断弁5bよりも第1膨張弁5c寄りの位置に接続されている。また、該バイパス流路9には、該流路を流れる冷媒を断熱膨張させる第2膨張弁9aが設けられている。この第2膨張弁9aは前記制御部8に電気的に接続されており、該制御部8のプロセッサ8aによりその開度を制御することができるようになっている。
【0048】
このような構成を有する温調装置T2によれば、前記プロセッサ8aで前記切換回路10Bを制御して、前記第1及び第2循環流路5,6と前記送出流路3及び戻り流路4との間の連通状態を変化させることにより、熱負荷Wを冷却により温度調節する冷却モード(図3)、又は、熱負荷Wを加熱により温度調節する加熱モード(図4)に選択的に切り換えることができる。具体的には、前記プロセッサ8aで前記切換回路10Bの四方切換制御弁40を、前記第1切換状態又は前記第2切換状態に選択的に切換制御して、前記送出流路3と前記第1循環流路5とが連通されると共に前記第2循環流路6と前記戻り流路4とが連通された前記冷却モードと、前記送出流路3と前記第2循環流路6とが連通されると共に前記第1循環流路5と前記戻り流路4とが連通された前記加熱モードとの間で、選択的に切り換えることができる。
【0049】
次に、図3及び図4を用いて前記温調装置T2の動作について具体的に説明する。
なお、図3及び図4において、斜線を付した開閉制御弁は、OFF状態(閉鎖状態)を示しており、斜線を付していない開閉制御弁は、ON状態(開放状態)を示している。
【0050】
図3は、本実施形態における冷却モードでの運転状態を示している。この冷却モードでは、前記プロセッサ8aにより、前記切換回路10Bの四方切換制御弁40が前記第1切換状態に切り換えられた状態にある。また、前記冷却流路15においては、前記第1分岐流路16の第1開閉制御弁16aはON状態に制御され、前記第2分岐流路17の第2開閉制御弁17aはOFF状態に切換制御されている。
【0051】
前記四方切換制御弁40をこのように前記第1切換状態とすることにより、前記圧縮機2から吐出された高温高圧で気相の冷媒は、前記送出流路3及び第5接続流路41を順次通って熱交換器7へと導かれ、該熱交換機7での冷却により凝縮されて前記第1循環流路5へと導かれる。その際、一部の冷媒は、前記第5接続流路41から前記バイパス流路9に分流され、第2膨張弁9aで断熱膨張されて高温低圧で気相の冷媒とされた上で、前記第1循環流路5に直接導入される。一方、前記熱交換器7を通じて第1循環流路5へと導かれた冷媒は、前記第1実施形態と同様に、その一部が前記冷却流路15を通じて前記圧縮機2の冷却に供される。そして、他の残りの冷媒は、前記第1膨張弁5cで断熱膨張された上で、前記バイパス流路9の冷媒と共に、前記一方の接続口5aを通じて熱負荷Wに対して送り出され、冷却による該熱負荷Wの温調に供される。
【0052】
このようにして熱負荷Wの温調に供された後の冷媒は、他方の接続口6aから、前記第2循環流路6及び第6接続流路42を順次通って、前記戻り流路4へと導かれ前記圧縮機2へと戻される。そして、該圧縮機2でより高温高圧とされた気相の冷媒は、再び前記送出流路3へと吐出される。このような冷媒の還流を繰り返すことにより、冷却用の低温冷媒を熱負荷Wに対して循環的に供給することができる。
【0053】
続いて、図4は、本実施形態における加熱モードでの運転状態を示している。この加熱モードでは、前記プロセッサ8aにより、前記切換回路10Bの四方切換制御弁40が前記第2切換状態に切り換えられた状態にある。また、前記冷却流路15においては、前記第1分岐流路16の第1開閉制御弁16aはOFF状態に制御され、前記第2分岐流路17の第2開閉制御弁17aはON状態に切換制御されている。
【0054】
前記四方切換制御弁40をこのように前記第2切換状態とすることにより、前記圧縮機2から吐出された高温高圧で気相の冷媒は、前記送出流路3前記第2循環流路6へと導かれる。そして、この第2循環流路6へと導かれた冷媒は、他方の接続口6aを通じて熱負荷Wに対して送り出され、加熱による該熱負荷Wの温調に供される。
【0055】
このようにして熱負荷Wの温調に供された後の冷媒は、前記一方の接続口5aから前記第1循環流路5へと導入される。そして、その第1循環流路5へと導かれた冷媒は、先ず、その一部が前記バイパス流路9に分流され、前記第2膨張弁9aでの断熱膨張よって低温低圧で気液二相の冷媒とされた上で、前記第5接続流路41に直接導入されている。続いて、その残りのうちの一部が、前記第1実施形態と同様に、前記冷却流路15を通じて前記圧縮機2の冷却に供される。一方、該第1流路5へと導かれた冷媒の他の残りは、前記第1膨張弁5cで断熱膨張された上で、前記熱交換器7へと導かれ、該熱交換機7での加熱により蒸発する。
【0056】
そして、その蒸発した冷媒は、前記バイパス流路9の冷媒と共に、前記第5接続流路41及び第6接続流路42を通って戻り流路4へと導かれ、前記圧縮機2へと戻される。そして、該圧縮機2でより高温高圧とされた冷媒は、再び前記送出流路3へと吐出される。このような冷媒の還流を繰り返すことにより、加熱用の高温冷媒を熱負荷Wに対して循環的に供給することができる。なお、前記バイパス流路9を通じて前記第5接続流路41に直接導入された冷媒は上述のように気液二相で液体を含んでいるが、その液体は、前記熱交換器7を通じて該第5接続流路41に導かれた高温低圧で気相の冷媒への混入により、蒸発してしまうようになっている。
【0057】
ここで、前記冷却モード及び加熱モードにおいて、前記戻り流路4の第1圧力センサ4bで検出した戻り冷媒の圧力が第3設定圧力よりも低い場合には、前記第2膨張弁9aを制御してその開度を増大させ、それにより、戻り流路4における冷媒の圧力を上昇させる。逆に、該戻り冷媒の圧力が、第4設定圧力よりも高い場合には、前記第2膨張弁9aを制御してその開度を減少させ、それにより、戻り流路4における冷媒の圧力を降下させる。ここで、前記第4設定圧力は、と同じかそれよりも大きい値に設定されている。
【0058】
なお、前記第3設定圧力が前記第1設定圧力と同じ値で、前記第4設定圧力が前記第2設定圧力と同じ値であっても良い。また、これら第1-第4設定圧力の値が全て同じであっても良い。
【符号の説明】
【0059】
T1,T2 半導体製造装置用温調装置
1A,1B 冷凍回路
2 冷凍圧縮機
3 送出流路
3a 第2温度センサ
3b 第2圧力センサ
3c 高圧遮断圧力スイッチ
4 戻り流路
4a 第1温度センサ
4b 第1圧力センサ
5 第1循環流路
5b 第1緊急遮断弁
5c 第1膨張弁
6 第2循環流路
6b 第2緊急遮断弁
5a,6a 接続口
7 熱交換器
7a 冷媒熱交換流路
8 制御部
8a プロセッサ
9 バイパス流路
9a 第2膨張弁
10A,10B 切換回路
11 第1接続流路
11a 第1流量制御弁
12 第2接続流路
12a 第2流量制御弁
13 第3接続流路
13a 第3流量制御弁
14 第4接続流路
14a 第4流量制御弁
15 冷却流路
16 第1分岐流路
16a 第1開閉制御弁
17 第2分岐流路
17a 第2開閉制御弁
18 本流路
18a インジェクション弁
20 放熱水回路
21 放熱水熱交換流路
22 供給流路
22a 第4温度センサ
23 排出流路
23a 第5流量制御弁(放熱水制御弁)
30 第3温度センサ
40 四方切換制御弁
40a 第1ポート
40b 第2ポート
40c 第3ポート
40d 第4ポート
41 第5接続流路
42 第6接続流路
W 熱負荷
S 半導体製造装置

図1
図2
図3
図4