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▶ 太平洋セメント株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123933
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240905BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20240905BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20240905BHJP
   C09K 17/08 20060101ALI20240905BHJP
   C04B 7/02 20060101ALI20240905BHJP
   C04B 7/14 20060101ALI20240905BHJP
   C04B 28/04 20060101ALI20240905BHJP
   C04B 28/10 20060101ALI20240905BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C09K17/10 P
C09K17/06 P
C09K17/08 P
C04B7/02
C04B7/14
C04B28/04
C04B28/10
C04B28/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031768
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆人
(72)【発明者】
【氏名】森 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】黒川 大亮
(72)【発明者】
【氏名】早川 隆之
【テーマコード(参考)】
2D040
4G112
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB03
2D040CA01
2D040CA03
2D040CA04
2D040CA10
4G112PA21
4G112PC11
4H026CA01
4H026CA04
4H026CA05
4H026CB02
4H026CB05
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】泥炭を含む未改良土に供給すべきセメント系固化材を簡易に選択することができ、強度に優れた固化改良土を得ることができる地盤改良方法を提供する。
【解決手段】未改良土の試料を採取する試料採取工程と、未改良土の含水比を測定する含水比測定工程と、乾燥後の試料とアルカリ水溶液を混合して混合物を得た後、該混合物のCODを測定するCOD測定工程と、セメント系固化材を1種以上用意するセメント系固化材準備工程と、含水比、COD、及び1種以上のセメント系固化材の(セメント系固化材のSOの含有率+セメント系固化材のAlの含有率)/セメント系固化材のCaOの含有率)で表される含有率比、並びに、予め定めた判定式を用いて、未改良土に供給すべきセメント系固化材を選択する選択工程と、未改良土に対して選択されたセメント系固化材を供給し混合して、固化改良土を得る固化処理工程を含む地盤改良方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥炭を含む未改良土に対して、セメント系固化材を供給し、混合して、固化改良土を得る地盤改良方法であって、
上記未改良土から、上記未改良土の試料を採取する試料採取工程と、
上記試料を用いて、上記未改良土の含水比を測定する含水比測定工程と、
上記試料を乾燥させ、乾燥後の上記試料とアルカリ水溶液を混合して混合物を得た後、該混合物のCOD(化学的酸素要求量)を測定するCOD測定工程と、
上記セメント系固化材の候補を1種以上用意するセメント系固化材準備工程と、
上記含水比、上記COD、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材の下記式(1)で表される含有率比、並びに、予め定めた判定式を用いて、上記未改良土に供給すべきセメント系固化材を選択する選択工程と、
上記未改良土に対して、上記選択工程で選択されたセメント系固化材を供給し、混合して、上記固化改良土を得る固化処理工程、
を含むことを特徴とする地盤改良方法。
(セメント系固化材のSOの含有率+セメント系固化材のAlの含有率)/セメント系固化材のCaOの含有率) ・・・(1)
【請求項2】
上記COD測定工程において、上記乾燥は、上記試料を30~60℃の条件下で10時間以上静置することによって行われ、かつ、上記混合は、乾燥後の上記試料と0.2~0.8mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を、上記試料と上記水酸化ナトリウム水溶液の質量比(試料/水酸化ナトリウム水溶液)が0.005~0.10となる量で混合した後、10~30℃の条件下で30分間以上静置することによって行われるものである請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
上記セメント系固化材が、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、及び石膏粉末を含む請求項1または2に記載の地盤改良方法。
【請求項4】
上記選択工程において、上記判定式が以下の式(2)であり、かつ、上記含水比、上記COD、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比、並びに、以下の式(2)を用いて算出された値が、0よりも大きいセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択し、該値が0以下であるセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択しない請求項1又は2に記載の地盤改良方法。
-AXa-Blog10Xb+CXc ・・・(2)
(上記式(2)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比であり、Aは0.59~0.65の数、Bは54~60の数、Cは1,490~1,550の数である。)
【請求項5】
上記選択工程において、上記判定式が以下の式(3)であり、かつ、上記含水比、上記COD、上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材のブレーン比表面積、並びに、以下の式(3)を用いて算出された値が、0よりも大きいセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択し、該値が0以下であるセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択しない請求項1又は2に記載の地盤改良方法。
-DXa-Elog10Xb+FXc+GXd ・・・(3)
(上記式(3)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比、Xdは上記候補である1種以上のセメント系固化材のブレーン比表面積(cm/g)であり、Dは0.58~0.62の数、Eは54~57の数、Fは520~570の数、Gは0.04~0.05の数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の改良に用いるための様々な土質改良材が提案されている。
熱帯性泥炭等の高有機質土、マリンクレイ等の高含水土等の固化、改良処理に用いられるセメント系固化材として、例えば、特許文献1には、普通セメント、高炉セメント、早強セメント、アーウイン系セメントの1種または2種以上を100重量部および石膏を3~100重量部含むことを特徴とするセメント系固化材が記載されている。
また、有機酸の含有量、及び、含水比が高い高有機質土を固化できる固化材として、特許文献2には、セメントと高炉スラグ微粉末と無水石こうとを含む高有機質土または腐植土用固化材であって、前記セメントと高炉スラグ微粉末と無水石こうとの合計量に対する前記高炉スラグ微粉末と無水石こうの合計量が15~40質量%であり、かつ前記セメントと高炉スラグ微粉末と無水石こうとの合計量に対して高炉スラグ微粉末を10質量%以上含むことを特徴とする高有機質土または腐植土用固化材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-137950号公報
【特許文献2】特開2018-193515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメント系固化材を用いて土(地盤)を改良(固化)する場合において、土に有機物である腐植物質が含まれていると、セメント系固化材による土の固化が阻害されるという問題がある。腐植物質の成分のうち、特にフミン酸は土の固化を阻害する原因となるため、フミン酸が多く含まれる土を改良する場合には、より水和反応性に優れたセメント系固化材を用いることが好ましい。しかし、土に含まれるフミン酸の量を測定するためには、複雑な手順、試薬、及び設備等が必要である。
また、土に含まれている有機物の量を評価する指標として、強熱減量があるが、強熱減量によって評価される有機物の量には、フミン酸以外の有機物の量も含まれるため、強熱減量を用いて、セメント系固化材による土の固化の阻害の程度を正確に評価することは難しい。
本発明の目的は、強度に優れた固化改良土を得ることができるような、未改良土に供給すべきセメント系固化材を、固化処理の対象となる未改良土に応じて、簡易に選択することができ、強度に優れた固化改良土を得ることができる地盤改良方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、未改良土から試料を採取する工程と、未改良土の含水比を測定する工程と、試料とアルカリ水溶液を混合して混合物を得た後、該混合物のCODを測定する工程と、セメント系固化材の候補を1種以上用意する工程と、含水比、COD、及びセメント系固化材のSO及びAlの含有率の合計とCaOの含有率の含有率比、並びに、予め定めた判定式を用いて、セメント系固化材を選択する工程と、未改良土に対して、選択されたセメント系固化材を供給し、混合して、固化改良土を得る工程を含む地盤改良方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供するものである。
[1] 泥炭を含む未改良土に対して、セメント系固化材を供給し、混合して、固化改良土を得る地盤改良方法であって、上記未改良土から、上記未改良土の試料を採取する試料採取工程と、上記試料を用いて、上記未改良土の含水比を測定する含水比測定工程と、上記試料を乾燥させ、乾燥後の上記試料とアルカリ水溶液を混合して混合物を得た後、該混合物のCOD(化学的酸素要求量)を測定するCOD測定工程と、上記セメント系固化材の候補を1種以上用意するセメント系固化材準備工程と、上記含水比、上記COD、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材の下記式(1)で表される含有率比、並びに、予め定めた判定式を用いて、上記未改良土に供給すべきセメント系固化材を選択する選択工程と、上記未改良土に対して、上記選択工程で選択されたセメント系固化材を供給し、混合して、上記固化改良土を得る固化処理工程、を含むことを特徴とする地盤改良方法。
(セメント系固化材のSOの含有率+セメント系固化材のAlの含有率)/セメント系固化材のCaOの含有率) ・・・(1)
【0006】
[2] 上記COD測定工程において、上記乾燥は、上記試料を30~60℃の条件下で10時間以上静置することによって行われ、かつ、上記混合は、乾燥後の上記試料と0.2~0.8mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を、上記試料と上記水酸化ナトリウム水溶液の質量比(試料/水酸化ナトリウム水溶液)が0.005~0.10となる量で混合した後、10~30℃の条件下で30分間以上静置することによって行われるものである前記[1]に記載の地盤改良方法。
[3] 上記セメント系固化材が、ポルトランドセメント、高炉スラグ微粉末、及び石膏粉末を含む前記[1]または[2]に記載の地盤改良方法。
【0007】
[4] 上記選択工程において、上記判定式が以下の式(2)であり、かつ、上記含水比、上記COD、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比、並びに、以下の式(2)を用いて算出された値が、0よりも大きいセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択し、該値が0以下であるセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択しない前記[1]~[3]のいずれかに記載の地盤改良方法。
-AXa-Blog10Xb+CXc ・・・(2)
(上記式(2)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比であり、Aは0.59~0.65の数、Bは54~60の数、Cは1,490~1,550の数である。)
[5] 上記選択工程において、上記判定式が以下の式(3)であり、かつ、上記含水比、上記COD、上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材のブレーン比表面積、並びに、以下の式(3)を用いて算出された値が、0よりも大きいセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択し、該値が0以下であるセメント系固化材を上記未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択しない前記[1]~[3]のいずれかに記載の地盤改良方法。
-DXa-Elog10Xb+FXc+GXd ・・・(3)
(上記式(3)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比、Xdは上記候補である1種以上のセメント系固化材のブレーン比表面積(cm/g)であり、Dは0.58~0.62の数、Eは54~57の数、Fは520~570の数、Gは0.04~0.05の数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明の地盤改良方法によれば、強度に優れた固化改良土を得ることができるような、未改良土に供給すべきセメント系固化材を、固化処理の対象となる未改良土に応じて、簡易に選択することができ、強度に優れた固化改良土を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の地盤改良方法は、 泥炭を含む 未改良土(以下、単に「未改良土」ともいう。)に対して、セメント系固化材を供給し、混合して、固化改良土を得る地盤改良方法であって、未改良土から、未改良土の試料を採取する試料採取工程と、試料を用いて、未改良土の含水比を測定する含水比測定工程と、試料を乾燥させ、乾燥後の試料とアルカリ水溶液を混合して混合物を得た後、該混合物のCOD(化学的酸素要求量)を測定するCOD測定工程と、セメント系固化材の候補を1種以上用意するセメント系固化材準備工程と、含水比、COD、及び候補である1種以上のセメント系固化材の下記式(1)で表される含有率比(「SAC含有比率」ともいう)、並びに、予め定めた判定式を用いて、未改良土に供給すべきセメント系固化材を選択する選択工程と、未改良土に対して、選択工程で選択されたセメント系固化材を供給し、混合して、固化改良土を得る固化処理工程、を含むものである。
(セメント系固化材のSOの含有率+セメント系固化材のAlの含有率)/セメント系固化材のCaOの含有率) ・・・(1)
以下、工程ごとに詳しく説明する。
【0010】
[試料採取工程]
本工程は、泥炭を含む未改良土(改良(固化)処理を行っていない、泥炭土壌)から、該未改良土の試料を採取する工程である。
試料が採取される泥炭を含む未改良土とは、本発明において固化処理(改良処理)の対象となる未改良土である。
未改良土に含まれる泥炭の例としては、熱帯泥炭、及び木質泥炭等が挙げられる。中でも、有機物の含有率が大きい等、従来の方法では、セメント系固化材の適切な選択が難しい熱帯泥炭は、本発明の地盤改良方法の対象として好適である。
なお、熱帯泥炭とは、熱帯に分布する熱帯泥炭土壌(熱帯泥炭地)に含まれる泥炭であり、枯れた樹木等の植物遺骸が腐らずに、有機物のかたまりとして堆積したものである。
泥炭は、通常、有機物(例えば、腐植物質)を含んでいる。ここで、「腐植物質」とは、土壌中の動植物等の遺体が、微生物による分解を経て形成された最終生成物をいい、様々な有機化合物を含むものである。
腐植物質を構成する成分としては、ヒューミン(アルカリ及び酸に溶けない成分)、フミン酸(アルカリに溶け、酸に溶けない成分)、及びフルボ酸(アルカリ及び酸に溶ける成分)が挙げられる。
【0011】
[含水比測定工程]
本工程は、試料採取工程で採取された試料を用いて、未改良土の含水比を測定する工程である。
未改良土の含水比は、特に限定されるものではないが、好ましくは100%以上、より好ましくは110~1,000%、さらに好ましくは120~700%、さらに好ましくは125~500%、特に好ましくは130~400%である。
一般的に、未改良土の含水比が100%以上であると、未改良土に供給、混合されるセメント系固化材の強度発現性が小さくなるため、十分な強度を有する固化改良土を得ることが困難となる場合がある。しかし、本発明の方法によれば、含水比が100%以上であるような未改良土であっても、強度に優れた固化改良土を得ることができるようなセメント系固化材を簡易に選択して、十分な強度を有する固化改良土を得ることができる。
なお、「含水比」(単位:%)とは、未改良土に含まれる固体の質量に対する、未改良土に含まれる水の質量の百分率((水/固体)×100%)をいう。
【0012】
[COD測定工程]
本工程は、試料採取工程で採取された試料を乾燥させ、乾燥後の試料とアルカリ水溶液を混合して混合物(懸濁液)を得た後、該混合物のCOD(化学的酸素要求量:Chemical Oxygen Demand)を測定する工程である。
乾燥は、例えば、試料を30~60℃(好ましくは35~50℃、より好ましくは40~50℃)の条件下で10時間以上(好ましくは12~24時間、より好ましくは15~20時間)静置することによって行われる。30℃以上の条件下で試料を静置することで、より短い時間で、試料に含まれている水分を十分に除去し、より正確に混合物のCODを測定することができる。また、60℃以下の条件で試料を静置することで、試料に含まれている有機物が高温によって変質することをより防いで、より正確に混合物のCODを測定することができる。
また、乾燥は、混合物のCODをより正確に測定する観点から、乾燥後の試料の含水比が、25%以下(好ましくは20%以下)になるまで行われることが好ましい。
【0013】
アルカリ水溶液としては、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等が挙げられる。中でも、入手の容易性等の観点から、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
アルカリ水溶液のpHは、好ましくは12以上、より好ましくは12.5~13.5である。上記pHが12以上であれば、より正確に混合物のCODを測定することができる。
混合は、例えば、乾燥後の試料と0.2~0.8mol/リットル(好ましくは0.3~0.7mol/リットル、より好ましくは0.4~0.6mol/リットル)のアルカリ水溶液(例えば、水酸化ナトリウム)を、試料とアルカリ水溶液の質量比(試料/アルカリ水溶液)が0.005~0.10(好ましくは0.008~0.05、より好ましくは0.010~0.03)となる量で混ぜた後、10~30℃(好ましくは12~28℃、より好ましくは15~25℃)の条件下で30分間以上(好ましくは45分間~5時間、より好ましくは1~2時間)静置することによって行われる。
このような条件下で混合を行うことによって、より正確に混合物のCODを測定することができる。
なお、上記静置には、スターラー等を用いて、混合(撹拌)を継続する場合も含まれるものとする。
【0014】
混合物のCODを測定する前に、不純物を除去する目的で混合物を適宜ろ過してもよい。また、測定方法に応じて、混合物を適宜希釈してもよい。
CODの測定は、例えば、「JIS K 0806-1997(化学的酸素消費量(COD)自動計測器)」に規定される規格を満たす、市販のCOD測定装置等を用いて行うことができる。
なお、含水比測定工程、及び、COD測定工程は、試料採取工程と選択工程の間に行われればよく、その順序は特に限定されるものではない。
【0015】
[セメント系固化材準備工程]
本工程は、固化処理工程(後述)において未改良土に供給されるセメント系固化材の候補を1種以上用意する工程である。
本明細書中、セメント系固化材とは、セメントを含み、かつ、任意に配合可能な混和材(セメント混和材)を含む粉体状のものをいう。
セメント系固化材に用いられるセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメントや、エコセメントや、白色セメントや、超速硬セメント等が挙げられる。
中でも、入手の容易性や強度発現性等の観点から、各種ポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
セメント系固化材中のセメントの割合は、好ましくは20~90質量%、より好ましくは25~70質量%である。上記割合が20質量%以上であれば、固化改良土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)をより大きくすることができる。また、上記割合が90質量%以下であれば、材料にかかるコストをより低減し、廃棄物由来の原料の使用量をより多くすることができる。
【0016】
また、固化処理工程においてセメント系固化材を供給する際の作業性がより向上する観点から、混和材として石膏粉末を含むセメント系固化材が好ましい。セメント系固化材中の石膏粉末の割合は、無水物換算で、好ましくは1~35質量%、より好ましくは5~30質量%である。
なお、上記石膏粉末の割合には、セメントに含まれている石膏粉末は含まれないものとする。
石膏粉末に用いられる石膏の例としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
セメント系固化材は、固化改良土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)をより大きくする観点や、材料にかかるコストを低減し、高炉スラグ微粉末の利用を促進する等の観点から、混和材として、高炉スラグ微粉末を含んでいてもよい。セメント系固化材100質量%中の高炉スラグ微粉末の割合は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは10~65質量%である。上記割合が70質量%以下であれば、相対的にセメントの量が多くなるため、固化改良土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)をより大きくすることができる。
なお、セメント系固化材に含まれるセメントが高炉セメントである場合、高炉セメントに含まれる高炉スラグ微粉末は、上記割合に含まれないものとする。
【0018】
石膏及び高炉スラグ微粉末以外の混和材の例としては、生石灰、消石灰、フライアッシュ、石灰石微粉末、及びシリカフューム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメント系固化材中の石膏及び高炉スラグ微粉末以外の混和材(二種以上の混和材を含むものは、その合計)の割合は、相対的にセメントの割合が多くなり、固化改良土の強度をより大きくすることができる等の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは0.1~10質量%、特に好ましくは1~5質量%である。
【0019】
セメント系固化材のSOの含有率は、未改良土に含まれる有機物の種類及び量、並びに、未改良土の含水比等によっても異なるが、好ましくは0.5~20.0質量%、より好ましくは1.0~18.0質量%、特に好ましくは2.0~15.0質量%である。上記含有率が0.5質量%以上であれば、固化改良土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)をより大きくすることができる。上記含有率が20.0質量%以下であれば、セメント系固化材を供給し、混ぜた後、固化改良土を得るまでの時間をより短くすることができる。
セメント系固化材のブレーン比表面積は、好ましくは2,000~8,000cm/g、より好ましくは2,500~7,000cm/g、特に好ましくは3,000~6,000cm/gである。上記ブレーン比表面積が2,000cm/g以上であれば、セメント系固化材の強度発現性が向上する。上記ブレーン比表面積が8,000cm/g以下のセメント系固化材は、より容易に入手可能なものである。
用意されるセメント系固化材の種類は、1種以上、好ましくは2~10種、より好ましくは3~5種である。配合やブレーン比表面積等が異なる複数の種類のセメント系固化材を用意することで、未改良土に供給すべきセメント系固化材をより適切に選択することができる。
なお、セメント系固化材準備工程は、選択工程の前に行われればよく、その順序は特に限定されるものではない。
【0020】
[選択工程]
本工程は、含水比測定工程で測定された未改良土の含水比、COD測定工程で測定された混合物のCOD、及び、セメント系固化材準備工程で用意された候補である1種以上のセメント系固化材の下記式(1)で表される含有率比、並びに、予め定めた判定式を用いて、未改良土に供給すべきセメント系固化材を選択する工程である。
(セメント系固化材のSOの含有率+セメント系固化材のAlの含有率)/セメント系固化材のCaOの含有率) ・・・(1)
なお、本工程において、セメント系固化材準備工程で用意された候補である1種以上のセメント系固化材の各々について、上記式(1)で表される含有率比の数値(判定式として式(3)を用いる場合には、さらに、セメント系固化材のブレーン比表面積)を求め、得られた数値と、上記含水比の数値、上記CODの数値、及び予め定めた判定式を用いることで、1種以上のセメント系固化材の各々について、未改良土に供給すべきセメント系固化材か否かを選択(判断)することができる。
予め定めた判定式を用いて、未改良土に供給すべきセメント系固化材を選択する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
【0021】
[判定式として式(2)を用いてセメント系固化材を選択する方法]
選択工程において、上記含水比の数値、上記CODの数値、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比の数値、並びに、以下の式(2)を用いて算出された値が、0よりも大きいセメント系固化材を未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択し、該値が0以下であるセメント系固化材を未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択しない方法。
-AXa-Blog10Xb+CXc ・・・(2)
(上記式(2)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比であり、Aは0.59~0.65(好ましくは0.59~0.64、より好ましくは0.60~0.63、特に好ましくは0.60)の数、Bは54~60(好ましくは54~58、より好ましくは55~56、特に好ましくは55)の数、Cは1,490~1,550(好ましくは1,500~1,525、より好ましくは1,500)の数である。)
【0022】
[判定式として式(3)を用いてセメント系固化材を選択する方法]
また、候補であるセメント系固化材のブレーン比表面積の数値を考慮し、より高い精度で、未改良土に供給すべきセメント系固化材を簡易に選択する観点から、判定式として、以下の式(3)を用いてもよい。
具体的には、選択工程において、上記含水比の数値、上記CODの数値、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比の数値、及び上記候補である1種以上のセメント系固化材のブレーン比表面積、並びに、以下の式(3)を用いて算出された値が、0よりも大きいセメント系固化材を未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択し、該値が0以下であるセメント系固化材を未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択しない方法。
-DXa-Elog10Xb+FXc+GXd ・・・(3)
(上記式(3)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記候補である1種以上のセメント系固化材の上記式(1)で表される含有率比、Xdは上記候補である1種以上のセメント系固化材のブレーン比表面積(cm/g)であり、Dは0.58~0.62(好ましくは0.59~0.61、より好ましくは0.60)の数、Eは54~57(好ましくは54~56、より好ましくは55)の数、Fは520~570(好ましくは540~560、より好ましくは550)の数、Gは0.04~0.05(好ましくは0.05の数である。)
【0023】
セメント系固化材準備工程において、2種以上のセメント系固化材を用意した場合、セメント系固化材ごとに、判定式(2)及び(3)の少なくともいずれか一方を用いて数値を算出し、0よりも大きい数値が得られたセメント系固化材を未改良土に供給すべきセメント系固化材として選択する。0よりも大きい数値が得られたセメント系固化材が複数ある場合、いずれのセメント系固化材を選択してもよいが、強度発現性等の観点からは、最も大きな数値が得られたセメント系固化材を選択することが好ましい。
また、0よりも大きい数値が得られたセメント系固化材がない場合には、セメント系固化材準備工程に戻り、新たな種類のセメント系固化材を用意し、再度選択工程を行ってもよい。
【0024】
[固化処理工程]
本工程は、未改良土に対して、選択工程で選択されたセメント系固化材を供給し、混合して、固化改良土を得る工程である。
セメント系固化材は、粉体の状態で添加し、混合してもよく(ドライ添加方法)、スラリーの状態で添加し、混合してもよい(スラリー添加方法)。
セメント系固化材をスラリーの状態で用いる場合、水粉体比(水と粉体(セメント系固化材)の質量比(水/粉体)を百分率で表したもの)は、固化改良土の強度をより大きくすることや、未改良土との混合の容易性等の観点から、好ましくは50~200%、より好ましくは60~150%、特に好ましくは70~120%である。
未改良土1mに対するセメント系固化材の供給量は、対象となる未改良土の性状、施工条件、並びに、処理後に得られる固化改良土に求められる強度等によっても異なるが、未改良土1mに対して、好ましくは200kg以上、より好ましくは250~500kg、特に好ましくは300~400kgである。
上記供給量が200kg以上であれば、固化改良土の強度をより大きくすることができる。上記供給量が500kg以下であれば、コストの過度な増加を防ぐことができる。
本発明の地盤改良方法によれば、泥炭を含む未改良土であっても、有機物(特に、フミン酸)の種類やその量を測定することなく、簡易な方法で、適切なセメント系固化材を選択し、十分な強度を有する固化改良土を得ることができる。
【実施例0025】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)未改良土A~C(熱帯泥炭土壌A~C)
(2)セメント系固化材A;ポルトランドセメントを20~90質量%、高炉スラグ微粉末を5~50質量%、石膏粉末を5~30質量%の割合で含むもの
(3)セメント系固化材B;ポルトランドセメントを20~90質量%、高炉スラグ微粉末を5~50質量%、石膏粉末を5~30質量%の割合で含むもの
(4)セメント系固化材C;ポルトランドセメントを20~90質量%、高炉スラグ微粉末を5~50質量%、石膏粉末を5~30質量%の割合で含むもの
セメント系固化材A~Cについて、「JIS R 5204:2019(セメントの蛍光X線分析方法)」に準拠して、SOの含有率(質量%)、Alの含有率(質量%)、及びCaOの含有率(質量%)を測定し、これらの数値から得られた上記式(1)で表される含有率比を表1に示す。
【0026】
[未改良土A~Cの含水比の測定]
未改良土A~Cの含水比を、「JIS A 1203:2020(土の含水比試験方法)」に準拠して測定した。
[CODの測定]
未改良土A~Cの各々について、以下の手順で混合物を作製し、混合物のCODを測定した。
未改良土を、45℃の環境下で18時間静置して乾燥させて、含水比が20%以下の、乾燥後の試料を得た。
乾燥後の試料と、0.5mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液(pH:13.4)を、上記試料と水酸化ナトリウム水溶液の質量比(試料/水酸化ナトリウム水溶液)が0.02となる量で混合した後、20℃の環境下で1時間静置して混合物を作製した。
混合物のCODを、共立理化学研究所の商品名「パックテスト」を用いて測定した。
なお、未改良土Aを用いた混合物のpHは13.3、未改良土Bを用いた混合物のpHは13.0、未改良土Aを用いた混合物のpHは12.5であった。
各々の結果を表1に示す。
【0027】
[実施例1]
表1に示す種類の未改良土に表1に示す種類のセメント系固化材を添加(供給)し、混合して固化改良土1~9を作製した。セメント系固化材は、水粉体比(水と粉体(セメント系固化材)の質量比)が80%をなるように水と混合したスラリー状のものを添加した。また、セメント系固化材の添加量は、未改良土1mに対して300kgとなる量にした。
固化改良土の材齢28日における一軸圧縮強さを、「JIS A 1216:2020(土の一軸圧縮試験方法)」に準拠して測定した。
材齢28日における一軸圧縮強さが1,000kN/mm以上の場合を「〇」、一軸圧縮強さが1,000kN/mm未満の場合を「×」と評価した。
【0028】
未改良土の含水比(%)、未改良土から得られた混合物のCOD(mg/リットル)、及び、上記含有率比の各数値、並びに、以下の判定式(a)を用いて、値を算出した。
-0.60Xa-55log10Xb+1500Xc ・・・(a)
(上記式(a)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記含有率比である。)
また、未改良土の含水比(%)、未改良土から得られた混合物のCOD(mg/リットル)、上記含有率比、及びセメント系固化材のブレーン比表面積(cm/g)の各数値、並びに、以下の判定式(b)を用いて、値を算出した。
-0.60Xa-55log10Xb+550Xc+0.05Xd ・・・(b)
(上記式(b)中、Xaは上記含水比(%)、Xbは上記COD(mg/リットル)、Xcは上記含有率比、Xdは上記セメント系固化材のブレーン比表面積(cm/g)である。)
一軸圧縮強さの測定値、式(a)及び式(b)を用いて算出した値を表1に示す。なお、表1において、固化改良土が十分に固化せず、試料を型枠から脱型した際に破損した場合を「測定できず」と示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から、式(a)及び式(b)を用いて算出した値が0よりも大きい固化改良土1~3、5~6、9は、一軸圧縮強さの大きいもの(1,020~1,890kN/m)であることがわかる。
一方、式(a)及び式(b)を用いて算出した値が0以下である固化改良土4、7~8は、一軸圧縮強さの小さいもの(53~85kN/m)、又は、固化せず、一軸圧縮強さが測定できないものであることがわかる。
これらの結果から、未改良土Aに供給すべきセメント系固化材として、セメント系固化材A~Cのいずれかを、未改良土Bに供給すべきセメント系固化材として、セメント系固化材B~Cのいずれかを、未改良土Cに供給すべきセメント系固化材として、セメント系固化材Cを、それぞれ選択すれば、強度に優れた固化改良土を得ることができることがわかる。