(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123936
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240905BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240905BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240905BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/60
A61Q19/00
A61K8/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031774
(22)【出願日】2023-03-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.エアロバイク
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】照沼 絵美
(72)【発明者】
【氏名】讃岐 僚太
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD531
4C083BB04
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD08
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE10
4C083EE11
(57)【要約】
【課題】冷涼感持続性および復活冷涼感の強さの少なくとも一方が高いことに加えて、乾きやすさやべたつき感のなさ、刺激感のなさのバランスの良い皮膚化粧料を提供する。
【解決手段】本発明に係る皮膚化粧料は、次の成分(A)~(C):
(A)エタノール 15.0~90.0質量%
(B)冷感剤 0.03~4.0質量%
(C)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、マルチトール、スクロース、およびグルコースから選ばれる少なくとも1種 0.1~7.0質量%
を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C):
(A)エタノール 15.0~90.0質量%
(B)冷感剤 0.03~4.0質量%
(C)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、マルチトール、スクロース、およびグルコースから選ばれる少なくとも1種 0.1~7.0質量%
を含有する皮膚化粧料。
【請求項2】
更に、(D)HLB値が4~7であり、25℃で液状で、グリセリル基を有する非イオン性界面活性剤を0.005~1.0質量%含有する請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
更に、(E)シリコーン系界面活性剤を0.05~5.0質量%含有する請求項1または2記載の皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肌や髪に潤いを与える保湿化粧料や、肌や髪を清潔に維持し、健やかに保つためのデオドラント商品、パール剤などで美しく魅せる化粧料等、多くの商品が上市されている。これらの製品は化粧水タイプのものや軟膏タイプ、固形状のものやスプレーやシート状のものまで、様々な剤型が提案されている。また、近年では、それらの化粧料による効果の持続を意識した商品が開発されている。
特許文献1には、特定の非イオン性界面活性剤と特定分子量のポリエチレングリコール、及びエタノールを組み合わせることで、肌上での化粧料の残留・持続性を向上させた皮膚化粧料が記載されている。
【0003】
使用時の快適な感触を付与するために、冷感成分が配合された化粧料も開発されている。例えば、特許文献2には、メントール及び/又はメントール誘導体を含む油性成分を内相とした水中油型エマルションタイプの涼感剤組成物が記載されている。特許文献2においては、エマルション径を微細にすることで、涼感成分を増量せずに涼感効果を高め、塗布後、皮膚上で汗等の水分を得た場合に涼感効果を再び生じるという効果が得られている。
【0004】
また、特許文献3には、メントール又はメントール誘導体の冷涼感が持続し、皮膚刺激がなく、安定性に優れた化粧料が記載されている。特許文献3の化粧料は、エタノールの不使用、メントールの減量を図ったものであり、メントール複合ニオソームを配合することにより、冷涼感向上、冷涼感持続、優れた安定性が達成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-205664号公報
【特許文献2】特開2014-201525号公報
【特許文献3】特開2022-110471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
冷涼感を付与する皮膚化粧料は従来から存在していたものの、冷涼感の持続性等に対する要求は、より高いものとなっている。皮膚に塗布後には、乾きが早くべたつき感が少ないことに加え、低刺激であることもまた、皮膚化粧料に求められる要件である。こうした要件を全て備えた皮膚化粧料は、未だ得られていない。
【0007】
本発明は、冷涼感持続性および復活冷涼感の強さの少なくとも一方が高いことに加えて、乾きやすさやべたつき感のなさ、刺激感のなさのバランスの良い皮膚化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次の成分(A)~(C):
(A)エタノール 15~90質量%、
(B)冷感剤 0.03~4.0質量%、
(C)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、マルチトール、スクロース、およびグルコースから選ばれる少なくとも1種 0.1~7.0質量%
を含有する皮膚化粧料に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る皮膚化粧料は、冷涼感持続性および復活冷涼感の強さの少なくとも一方が高いことに加えて、乾きやすさやべたつき感のなさ、刺激感のなさのバランスが良い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の皮膚化粧料は、所定の成分(A)、成分(B)、および成分(C)を含有する。以下、各成分について説明する。
【0011】
本発明の皮膚化粧料において、成分(A)のエタノールは、冷涼感付与に寄与するのに加えて、塗布後の乾きやすさを高めてべたつき感を低減する。また、エタノールは、塗膜形成能(製剤均一性)にも影響を及ぼす。エタノールの含有量が少なすぎると、メントールなどの冷感剤が可溶化せずに分離するおそれがある。
【0012】
エタノールの含有量は、冷涼感付与、復活冷涼感強度、乾きやすさの観点から、全組成中に15質量%以上であり、20質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。また、刺激感のなさの観点から、エタノールの含有量は、全組成中に、90質量%以下であり、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。また、エタノールの含有量は、全組成中に15~90質量%であり、20~85質量%が好ましく、60~80質量%がより好ましい。
【0013】
本明細書において、復活冷涼感強度とは、皮膚化粧料を塗布後、いったん冷涼感が失われた場合でも、再度発揮される冷涼感の程度をさす。冷感剤であるメントールは、一般的には塗布後しばらくすると、冷涼感を失ってしまう。本発明の皮膚化粧料におけるメントールは、化粧料塗布後、乾燥して形成される塗膜中に保持され、発汗などの水分の増加により塗膜から溶出して再び経皮吸収される。こうしたメカニズムによって、冷涼感を再度感じることができる。
【0014】
成分(B)の冷感剤としては、例えば、メントール、3-(L-メントキシ)プロパン-1,2-ジオール、乳酸メンチル等が挙げられる。中でも、冷涼感付与、復活冷涼感強度の観点から、メントールおよび乳酸メンチルが好ましい。
上述した冷感剤は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
冷感剤の含有量は、冷涼感付与、冷涼感持続性、復活冷涼感強度の観点から、全組成中に0.03質量%以上であり、0.05質量%以上が好ましく、0.4質量%以上がより好ましい。冷感剤の含有量は、刺激感のなさの観点から、全組成中に、4.0質量%以下であり、3.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましい。また、冷感剤の含有量は、全組成中に0.03~4.0質量%であり、0.05~3.0質量%が好ましく、0.4~1.0質量%がより好ましい。冷感剤が多いほど、皮膚への刺激が増大する傾向となる。
【0016】
成分(C)は、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、マルチトール、スクロース、およびグルコースから選ばれる少なくとも1種である。ポリオキシアルキレンアルキルグルコシドとしては、具体的には、PPG-20メチルグルコース、PPG-10メチルグルコース、メチルグルセス-20、メチルグルセス-10、およびPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン等が挙げられる。
上述した化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
成分(C)の含有量は、冷涼感持続性、復活冷涼感強度の観点から、全組成中に0.1質量%以上であり、0.8質量%以上が好ましく、1.4質量%以上がより好ましい。成分(C)の含有量は、べたつき感のなさの観点から、全組成中に、7.0質量%以下であり、5.0質量%以下が好ましく、3.5質量%以下がより好ましい。また、成分(C)の含有量は、全組成中に0.1~7.0質量%であり、0.8~3.5質量%が好ましく、1.4~3.5質量%がより好ましい。
【0018】
成分(C)は、皮膚内部に浸透せず表面に塗膜を形成するのに加え、冷感剤との相溶性が高い。このため、皮膚が乾燥している際には、塗膜中に冷感剤を保持して、冷感剤が皮膚内部に浸透するのを抑制する浸透抑制剤として作用する。また、成分(C)は、高い水溶性を有しているので、発汗など水分の存在により溶解して冷感剤を放出することができる。これによって、冷感剤は皮膚内部に浸透可能となり、冷涼感が持続的に付与されることとなる。
【0019】
本発明の皮膚化粧料において、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、冷涼感持続性、復活冷涼感強度、べたつき感のなさの点から、0.03以上が好ましく、0.20以上がより好ましく、0.30以上が更に好ましく、8.50以下が好ましく、6.00以下がより好ましく、1.50以下が更に好ましい。また、成分(B)と成分(C)の質量比((B)/(C))は、0.03~8.50が好ましく、0.20~6.00がより好ましく、0.30~1.50が更に好ましい。
【0020】
本発明の皮膚化粧料は、更に成分(D)HLB値が4~7である非イオン性界面活性剤を含有することができる。HLBが7以下であることで、水や汗に溶解し難くなり、発汗した肌にも残留しやすくなる。成分(D)は、冷涼感持続性、復活冷涼感強度を更に向上させる働きをする。
【0021】
ここで、HLB値は、親水性-親油性のバランス(Hydrophile Lipophile Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村らによる次式を用いて算出した値を用いている。
【0022】
【0023】
また、成分(D)の非イオン性界面活性剤は、25℃で液状で、グリセリル基を有するものである。
25℃で液状とは、25℃での粘度が10万mPa・s以下のものをいう。
かかる非イオン性界面活性剤としては、炭素数8~22の分岐のアルキル基又はアルケニル基を有し、グリセリル基とエーテル結合若しくはエステル結合したもの、又は、アルキレンオキサイド基を介して結合しているものが好ましい。
【0024】
成分(D)の非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル等から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。中でも、成分(B)とのコンプレックスの形成しやすさ、或いは、得られたコンプレックスの柔軟性、コンプレックスの耐汗性、耐磨耗性の点から、アルキルグリセリルエーテル、グリセリン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、更にはアルキルグリセリルエーテルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0025】
このような成分(D)としては、例えば、イソステアリルグリセリルエーテル(HLB 5.4)、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(HLB 7)、モノイソステアリン酸グリセリル(HLB 6)、モノイソステアリン酸(重合度2)ポリグリセリル(HLB 5.5)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油(HLB 4)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(HLB 5)、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン(15)硬化ヒマシ油(HLB 7)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(HLB 4)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(15)硬化ヒマシ油(HLB 5)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(HLB 6)、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油(HLB 7)などが挙げられる。
これらのうち、肌への残留性の観点から、イソステアリルグリセリルエーテル、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、モノイソステアリン酸グリセリルが好ましく、冷涼感持続性および復活冷涼感強度の観点から、イソステアリルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0026】
成分(D)の含有量は、冷涼感持続性、復活冷涼感強度の観点から、全組成中に0.005質量%以上であり、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。成分(D)の含有量は、べたつき感のなさの観点から、全組成中に、1質量%以下であり、0.7質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。また、成分(D)の含有量は、全組成中に0.005~1質量%であり、0.01~0.7質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。
【0027】
本発明の皮膚化粧料は、更に成分(E)シリコーン系界面活性剤を含有することができる。シリコーン系界面活性剤はとしては、具体的には、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体等が挙げられ、信越化学工業社から販売されている「KF-6015」(PEG-3ジメチコン)(HLB4.5)、「KF-6019」(PEG-9ジメチコン)(HLB4.5)、東レ・ダウコーニング・シリコーン社から販売されている「SH-3775M」(PEG-12ジメチコン)(HLB5)、「SH-3773M」(PEG-12ジメチコン)(HLB8)、「KF-6011」(PEG-11メチルエーテルジメチコン)(HLB12.0)、「KF-6012」(PEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン)(HLB7.0)、「KF-6017」(PEG-10ジメチコン)(HLB5.0)等の市販品を用いることができる。シリコーン系界面活性剤は、塗布後のべたつき感を更に低減することができる。
【0028】
成分(E)の含有量は、べたつき感のなさの観点から、全組成中に0.05質量%以上であり、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。成分(E)の含有量は、乾きやすさの観点から、全組成中に、5.0質量%以下であり、3.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。また、成分(E)の含有量は、全組成中に0.05~5.0質量%であり、0.1~3.0質量%が好ましく、0.3~1.5質量%がより好ましい。
【0029】
本発明の皮膚化粧料は、前記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常の化粧料に用いられるその他の成分を含有することができる。例えば、液体油、ポリオール、有機酸、皮膜形成剤、ノニオン界面活性剤、カルボン酸又はその塩、水溶性高分子、粘土鉱物、虫よけ成分、保湿剤、温感剤、収斂剤、消臭剤、抗炎症剤、美白剤、紫外線防御剤、血行促進剤、殺菌剤、抗菌剤、制汗剤、酸化防止剤、防腐剤、粉体、香料等が挙げられる。
本発明の皮膚化粧料の調製に当たっては、まず、成分(C)以外を成分(A)に加えて室温(25℃)で均一に溶解して溶解液を得る。溶解液を撹拌しつつ、成分(C)を加えて均一に溶解することで、本発明の皮膚化粧料を調製することができる。
【0030】
本発明の皮膚化粧料は、適量を手に取り、顔、身体、手足等の皮膚に直接塗布することができる。あるいは、織物や不織布等に含ませて、塗布してもよい。また更に、スプレータイプの皮膚化粧料として、噴霧することもできる。皮膚化粧料を噴霧して用いる際には、噴霧粒子径が小さいほど塗布後に乾きやすくなるので、ノズル口径は小さいほうが望ましい。スプレータイプの皮膚化粧料を充填するスプレー容器は特に限定されないが、例えばディスペンサー式スプレー容器、トリガー式スプレー容器、加圧ガスを必要とするエアゾールタイプのスプレー容器等が挙げられる。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態を例示して説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の範囲には限定されない。上記各実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0032】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の皮膚化粧料を開示する。
【0033】
<1>
次の成分(A)~(C):
(A)エタノール 15.0~90.0質量%
(B)冷感剤 0.03~4.0質量%
(C)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、マルチトール、スクロース、およびグルコースから選ばれる少なくとも1種 0.1~7.0質量%
を含有するスプレータイプ皮膚化粧料。
<2>
更に、(D)HLB値が4~7であり、25℃で液状で、グリセリル基を有する非イオン性界面活性剤を0.005~1.0質量%含有する前記<1>記載のスプレータイプ皮膚化粧料。
<3>
前記非イオン性界面活性剤は、イソステアリルグリセリルエーテルである前記<2>記載のスプレータイプ皮膚化粧料。
<4>
更に、(E)シリコーン系界面活性剤を0.05~5.0質量%含有する前記<1>乃至<3>のいずれか記載のスプレータイプ皮膚化粧料。
<5>
次の成分(A)~(C):
(A)エタノール 15.0~90.0質量%
(B)冷感剤 0.03~4.0質量%
(C)ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、マルチトール、スクロース、およびグルコースから選ばれる少なくとも1種 0.1~7.0質量%
を含有する皮膚化粧料を噴霧塗布する冷涼感付与方法。
【実施例0034】
次に、本発明の実施例について説明するが、これにより本発明が限定されるものではない。
【0035】
皮膚化粧料の製造に用いる各成分を、原料名および製造元ととともに以下に示す。
成分(A)
エタノール
成分(B)冷感剤
メントール
乳酸メンチル
【0036】
成分(C)
PPG-20メチルグルコース(マクビオブライドMG-20P 日油株式会社製)
PPG-10メチルグルコース(マクビオブライドMG-10P 日油株式会社製)
メチルグルセス-20(マクビオブライドMG-20E 日油株式会社製)
メチルグルセス-10(マクビオブライドMG-10E 日油株式会社製)
PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン
(ウィルブライドS-753D 日油株式会社製)
マルチトール
スクロース
グルコース
【0037】
成分(C)の比較成分
ソルビトール
トレハロース
エリスリトール
【0038】
成分(D)
イソステアリルグリセリルエーテル(ペネトールGE-IS 花王株式会社製)
成分(E)シリコーン系界面活性剤
PEG-11メチルエーテルジメチコン(シリコーン KF-6011 信越化学工業株式会社製)
PEG-10ジメチコン(シリコーン KF-6017P 信越化学工業株式会社製)
【0039】
上述の原料を用いて、実施例1~18、比較例1~9の皮膚化粧料を調製した。調製にあたっては、まず、成分(B)、(D)および(E)を成分(A)に加え、室温(25℃)で10分間攪拌(プロペラ150rpm)し均一溶解して、溶解液を得た。更に、この溶解液を攪拌プロペラ150rpm)しつつ、成分(C)を水とともに加えて10分間保持することにより均一溶解させることで、皮膚化粧料を調製した。
【0040】
実施例および比較例の皮膚化粧料の組成を、下記表1~5に示す。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
実施例および比較例の皮膚化粧料について、冷涼感持続性、復活冷涼感強度、塗布後の乾きやすさ、噴霧液滴粒径、塗布直後のべたつき感のなさ、塗布直後の刺激感のなさ、および塗膜形成能を評価した。その結果を、下記表6~10にまとめる。塗膜形成能は、各皮膚化粧料をガラス基板へ0.5mL滴下し、乾燥後の塗膜の状態を目視により評価した。不溶物や分離がなく、均一な膜が形成されていれば“〇”とした。
【0047】
(評価方法)
(1)15分後の冷涼感強度(冷涼感持続性):
専門パネラー4名による官能評価を行った。具体的には、各皮膚化粧料を、ノズル口径0.26mmのトリガースプレーを用いて、パネラーの前腕内側に1回噴霧(約0.5mL)した。15分後の冷涼感を以下の基準で評価し、結果を4名の平均値で示した。
スコア付けは、次の通りとした。
5:強い冷涼感がある。
4:冷涼感がある。
3:やや冷涼感がある。
2:わずかに冷涼感を感じる。
1:冷涼感を感じない。
【0048】
(2)復活冷涼感強度:
専門パネラー4名による官能評価を行った。具体的には、各皮膚化粧料4gをパネラーの上半身に塗布し、気温30℃湿度50%下の環境下で15分間馴化した。その後、30W60rpmの条件で10分間のエアロバイク運動を実施して、強制的に発汗させた。その時の冷涼感を、以下の基準で官能評価し、結果を4名の平均値で示した。
5:強い冷涼感がある。
4:冷涼感がある。
3:やや冷涼感がある。
2:わずかに冷涼感を感じる。
1:冷涼感を感じない。
【0049】
(3)塗布後の乾きやすさ:
専門パネラー4名による官能評価を行った。具体的には、各皮膚化粧料を、ノズル口径0.26mmのトリガースプレーを用いて、パネラーの前腕内側に1回噴霧(約0.5mL)した。その際の乾きやすさを以下の基準で評価し、結果を4名の平均値で示した。
5:とても早く乾く。
4:早く乾く。
3:どちらともいえない。
2:やや乾きが遅い。
1:乾きが遅い。
【0050】
(4)噴霧時の平均粒子径:
噴霧液滴粒径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(Malvern Panalytical社製)により測定した。各皮膚化粧料を、レーザーから15cm離れた場所からレーザーに向かって、ノズル口径0.26mmのトリガースプレーを用いて1回噴霧(約0.5mL)した。その際の噴霧液滴の平均粒子径(μm)を測定した。
【0051】
(5)塗布直後のべたつき感のなさ:
専門パネラー4名による官能評価を行った。具体的には、各皮膚化粧料を、ノズル口径0.26mmのトリガースプレーを用いてパネラーの前腕内側に1回噴霧(約0.5mL)した。塗布直後のべたつき感のなさを以下の基準で評価し、結果を4名の平均値で示した。
5:全くべたつき感がない。
4:わずかにべたつき感がある。
3:べたつき感が少ない。
2:ややべたつき感がある。
1:べたつき感がある。
【0052】
(6)塗布直後の刺激感のなさ:
専門パネラー4名による官能評価を行った。具体的には、各皮膚化粧料を、ノズル口径0.26mmのトリガースプレーを用いて、パネラーの前腕内側に1回噴霧(約0.5mL)した。塗布直後の刺激感のなさを以下の基準で評価し、結果を4名の平均値で示した。
5:全く刺激がない。
4:少し刺激を感じる。
3:はっきりとした刺激を感じる。
2:強い刺激を感じる。
1:我慢できないくらいの強い刺激を感じる。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
上記表に示されるように、実施例の皮膚化粧料は、成分(A)~(C)を所定の量で含有しているので、いずれの項目も2.5以上の評価であり、冷涼感持続性に加えて復活冷涼感強度が優れている。しかも、乾きが早く、べたつき感が少なく、刺激も低減されている。成分(E)が含有されることによって、べたつき感のなさが更に向上し、成分(D)および成分(E)が含有された場合には、復活冷涼感強度が更に向上することが示されている。
【0059】
これに対し、比較例の皮膚化粧料は、成分(A)~(C)の少なくとも1種の含有量が所定の範囲外であるので、所望の特性を備えた皮膚化粧料が得られない。成分(A)のエタノールが含有されない場合(比較例1)は、乾きが遅く、べたつき感があり、冷涼感持続性、復活冷涼感強度も劣っている。成分(B)の冷感剤が含有されない場合(比較例2)は、冷涼感持続性、復活冷涼感強度が得られない。成分(C)が含有されない場合(比較例3)は、冷涼感持続性、復活冷涼感強度が不十分である。
【0060】
成分(A)のエタノールが含有量が少なすぎる場合(比較例4)は、乾きやすさ、べたつき感のなさに加え、冷涼感持続性、復活冷涼感強度が劣っている。成分(B)の冷感剤が少なすぎる場合(比較例5)には、冷涼感持続性、復活冷涼感強度が劣り、冷感剤が多すぎる場合(比較例6)には、過度の刺激を伴ってしまう。成分(C)が少なすぎる場合(比較例7)には、冷涼感持続性、復活冷涼感強度が不十分であり、多すぎる場合(比較例8)には、べたつき感がある。また、成分(A)のエタノールは、塗膜形成能(製剤均一性)にも寄与することが示されている。
【0061】
成分(D)および成分(E)を含有しても、成分(C)を含有しない場合(比較例9)には、十分な冷涼感持続性や復活冷涼感強度は得られないことが、実施例14との比較からわかる。
成分(C)の代わりに、ソルビトール、トレハロース、またはエリスリトールを配合したところで、マルチトール、スクロース、またはグルコースを配合した場合(実施例11,12,13)に匹敵する復活冷涼感強度は得られないことが、比較例10,11,12に示されている。
【0062】
次に、トリガースプレーにおけるノズル口径を変更して皮膚化粧料を噴霧し、前述と同様の評価を行った。用いた皮膚化粧料の組成は下記表に示すとおりであり、本発明の皮膚化粧料である。
【0063】
【0064】
用いたノズル口径は、0.2mm、0.25mm、0.26mm、0.3mm、0.45mm、および0.55mmである。皮膚化粧料の評価結果を、下記表に示す。同一組成の皮膚化粧料を用いたので、いずれも塗膜形成能は“〇”である。
【0065】
【0066】
ノズル口径が大きいほど、噴霧粒子径が大きくなり、冷涼感持続性や復活冷涼感強度も高くなる。ノズル口径が0.45以下であれば、冷涼感持続性を保ちながら、早く乾かすことができる。ノズル口径が0.30以下の場合には、さらに、とても早く乾かすことができるので、効果のバランスが良くなる。