(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123938
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240905BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240905BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240905BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20240905BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/02 B
H01L21/68 N
H01L21/304 611Z
B23K26/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031776
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 貞俊
【テーマコード(参考)】
4E168
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AE05
4E168CB03
4E168CB07
4E168DA02
4E168DA23
4E168DA32
4E168DA36
4E168DA39
4E168JA12
5F057AA34
5F057BA19
5F057CA02
5F057CA14
5F057DA19
5F057DA22
5F131AA02
5F131BA31
5F131BA53
5F131CA32
5F131EC42
5F131EC64
5F131EC72
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】一つの実施形態は、レーザー剥離のスループットを向上できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】一つの実施形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。半導体装置の製造方法は、2次元的に分布する複数の凸部が形成された第1の基板を用意することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の基板の複数の凸部に第1の膜を積層することを含む。半導体装置の製造方法は、第2の基板に第2の膜を積層することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の膜における第1の基板の反対側の主面と第2の膜における第2の基板の反対側の主面とを接合することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の基板の側からレーザー光を照射することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の基板を剥離することを含む。レーザー光のスポット領域の直径は、第1の基板の主面における凸部の平均配置ピッチより大きい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元的に分布する複数の凸部が形成された第1の基板を用意し、
前記第1の基板の前記複数の凸部に第1の膜を積層し、
第2の基板に第2の膜を積層し、
前記第1の膜における前記第1の基板の反対側の主面と前記第2の膜における前記第2の基板の反対側の主面とを接合し、
前記第1の基板の側からレーザー光を照射し、
前記第1の基板を剥離する、
ことを備え、
前記レーザー光のスポット領域の直径は、前記第1の基板の主面における前記凸部の平均配置ピッチより大きい
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記レーザー光のスポット領域は、前記第1の基板の主面に垂直な方向から透視した場合に前記複数の凸部のうちの2以上の凸部に重なる
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記レーザー光のスポット領域は、前記第1の基板の主面に垂直な方向から透視した場合に前記2以上の凸部を内側に含む
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記複数の凸部は、
前記第1の基板の主面を加工して形成される、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記複数の凸部は、
前記第1の基板の主面に第3の膜を堆積し、
前記第3の膜を加工して形成される、
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1の基板の熱膨張係数は、前記第1の膜の熱膨張係数より大きい
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
第1の基板に第1の膜を積層し、第2の基板に第2の膜を積層し、
前記第1の膜における前記第1の基板の反対側の主面と前記第2の膜における前記第2の基板の反対側の主面とを接合し、
前記第1の基板の側からレーザー光を照射し、
前記第1の基板を剥離する、
ことを備え、
Kを2以上の整数とするとき、前記照射は、軌道に沿ったK回の分割照射で行い、
前記K回の分割照射のパターンは、開始位置が1照射のスポット領域の寸法に相当する距離で互いにずれており、且つ、それぞれにおいて1照射のスポット領域の寸法のK倍に相当するピッチで前記軌道に沿ってスポット領域が並ぶ
半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記軌道は、前記第1の基板の主面に垂直な方向から透視した場合にらせん状である
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記軌道は、前記第1の基板の主面に垂直な方向から透視した場合にライン状である
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記レーザー光のスポット領域は、円形状を有する
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記レーザー光のスポット領域は、ライン形状を有する
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記レーザー光のスポット領域は、リング形状を有する
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第1の基板の熱膨張係数は、前記第1の膜の熱膨張係数より大きい
請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を製造する際に、2つの基板を接合し、その後、レーザー光を照射することで2つの基板のうち一方の基板を剥離(レーザー剥離)することがある。このレーザー剥離のスループットを向上することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-103725号公報
【特許文献2】特開2021-106197号公報
【特許文献3】国際公開第2020/213478号
【特許文献4】国際公開第2021/010284号
【特許文献5】国際公開第2021/131710号
【特許文献6】国際公開第2021/131711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、レーザー剥離のスループットを向上できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態によれば、半導体装置の製造方法が提供される。半導体装置の製造方法は、2次元的に分布する複数の凸部が形成された第1の基板を用意することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の基板の複数の凸部に第1の膜を積層することを含む。半導体装置の製造方法は、第2の基板に第2の膜を積層することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の膜における第1の基板の反対側の主面と第2の膜における第2の基板の反対側の主面とを接合することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の基板の側からレーザー光を照射することを含む。半導体装置の製造方法は、第1の基板を剥離することを含む。レーザー光のスポット領域の直径は、第1の基板の主面における凸部の平均配置ピッチより大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示すフローチャート。
【
図2】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図3】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す拡大断面図。
【
図4】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す平面図。
【
図5】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図6】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す拡大断面図。
【
図7】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す平面図。
【
図8】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図9】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図10】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図11】第1の実施形態における応力の発生を示す断面図。
【
図12】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図13】第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す拡大断面図。
【
図14】第1の実施形態の第1の変形例にかかる半導体装置の製造方法を示す平面図。
【
図15】第1の実施形態の第2の変形例にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図16】第1の実施形態の第3の変形例にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図17】第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示すフローチャート。
【
図18】第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図19】第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図20】第2の実施形態における分割照射パターンを示す平面図。
【
図21】第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図22】第2の実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図。
【
図23】第2の実施形態の第1の変形例における分割照射パターンを示す平面図。
【
図24】第2の実施形態の第2の変形例における分割照射パターンを示す平面図。
【
図25】第2の実施形態の第2の変形例における応力の発生を示す平面図。
【
図26】第2の実施形態の第3の変形例における分割照射パターンを示す平面図。
【
図27】第2の実施形態の第3の変形例における応力の発生を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる半導体装置の製造方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態にかかる半導体装置の製造方法では、2つの基板が接合され、その後、レーザー光を照射することで2つの基板のうち一方の基板が剥離(レーザー剥離)されるが、このレーザー剥離が効率的に行われるための工夫が施される。
【0009】
以下では、接合される2つの基板のうち剥離されずに残る他方の基板を基準とし、他方の基板の主面に垂直な方向をZ方向とし、Z方向に垂直な面内で互いに直交する2方向をX方向及びY方向とする。
【0010】
【0011】
半導体装置1の製造方法では、
図1に示すように、下基板の処理(S1~S2)と上基板の処理(S3~S5)とが、たとえば、並行して行われる。下基板は、接合すべき2つの基板のうち接合時に-Z側に配される基板である。上基板は、接合すべき2つの基板のうち接合時に+Z側に配される基板である。
【0012】
下基板の準備(S1)では、
図2(a)に示すように、基板(下基板)2が準備される。基板2は、実質的に不純物を含まない半導体(例えば、シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。
【0013】
成膜(S2)では、
図2(b)に示すように、基板2の主面2a側(+Z側)に、所定のデバイス構造が形成される。
【0014】
例えば、
図3(a)に示すような周辺回路構造PHCが形成されてもよい。基板2の+Z側の主面2a近傍に不純物が導入され半導体領域SRが形成される。基板2の主面2aに導電パターンGTが形成される。これにより、それぞれが半導体領域SR及び導電パターンGTを含む複数のトランジスタTRが形成される。複数のトランジスタTRを含む周辺回路構造PHCは、後述するメモリセルアレイ構造MARに対する周辺回路として機能する。
【0015】
所定のデバイス構造が形成された後、CVD法等により、膜3が形成される。例えば、層間絶縁膜40は、絶縁物を主成分とする材料で形成されてもよく、半導体酸化物(例えば、酸化シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。また、層間絶縁膜40の堆積とともに層間絶縁膜40にホールが加工され導電物が埋め込まれたり導電パターンが形成されたりすることで、トランジスタTRに電気的に接続される配線構造WRが形成される。層間絶縁膜40の+Z側の主面40aには、メッキ等により、配線構造WRに電気的に接続される電極PD1が形成される。
図2(b)以降では、簡略化のため、導電パターンGT、配線構造WR、電極PD1、層間絶縁膜40を含む膜を膜3として図示及び説明を行う。また、膜3は、体積的に層間絶縁膜40が大部分を占めるため、半導体酸化物(例えば、酸化シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよいものとして扱う。なお、
図3(a)に示すデバイス構造は一例であり、特に限定されない。
【0016】
上基板の準備(S3)では、
図2(c)に示すように、基板(上基板)100が準備される。基板100は、実質的に不純物を含まない半導体(例えば、シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。
【0017】
凸部形成(S4)では、
図2(d)に示すように、基板100の主面100bが加工される。基板100の主面100b側(-Z側)に、RIE法等のドライエッチングにより、複数の凸部101が形成される。例えば、基板100の主面100bに感光剤を塗布し、露光・現像により、主面100bにおける複数の凸部101に対応する複数の領域を選択的に覆うレジストパターンRP(図示せず)を形成する。レジストパターンRPをマスクとして、RIE法等により、異方性エッチングの条件でエッチング加工を行い、基板100の主面100bに複数の凸部101を形成する。
【0018】
図4に示すように、複数の凸部101は、主面100bにおいて、XY方向に分布するように形成される。複数の凸部101の配置方向は、XY面内でランダムな方向であってもよい。
【0019】
複数の凸部101における互いに隣接する凸部101の中心間のXY距離を配置ピッチと呼ぶことにする。複数の凸部101の配置ピッチPは、ほぼ一定であってもよいし、所定の範囲内で変動してもよい。
図4では、複数の凸部101の配置ピッチP_1~P_kが第1の範囲内で変動するレイアウト構成が例示される。凸部101の平均配置ピッチPは、第2の範囲(例えば、0.1μm~10μm)内の値であってもよい。凸部101の平均配置ピッチPは、複数の凸部101の配置ピッチP_1~P_kを加算平均した値であってもよい。
【0020】
各凸部101の先端面における主面100bからのZ距離を高さと呼ぶことにする。各凸部101の高さhは、ほぼ一定であってもよいし、第3の範囲内で変動してもよい。
図2(d)では、各凸部101の高さhがほぼ一定である構成が例示される。凸部101の平均高さhは、第4の範囲内の値であってもよい。凸部101の平均高さhは、複数の凸部101の高さhを加算平均した値であってもよい。
【0021】
各凸部101の先端面におけるXY方向の最大幅を先端幅と呼ぶことにする。各凸部101の先端幅Wは、ほぼ一定であってもよいし、第5の範囲内で変動してもよい。
図4では、各凸部101の先端幅Wがほぼ一定である構成が例示される。凸部101の平均先端幅Wは、第6の範囲内の値であってもよい。凸部101の平均先端幅Wは、複数の凸部101の先端幅Wを加算平均した値であってもよい。
【0022】
凸部101の高さhを先端幅Wで割った値をアスペクト比h/Wと呼ぶことにする。各凸部101のアスペクト比h/Wは、ほぼ一定であってもよいし、第7の範囲内で変動してもよい。
図2(d)では、各凸部101のアスペクト比h/Wがほぼ一定である構成が例示される。凸部101の平均アスペクト比h/Wは、第8の範囲(例えば、0.01~100)内の値であってもよい。凸部101の平均アスペクト比h/Wは、凸部101の平均高さhを凸部101の平均先端幅Wで除算した値であってもよい。
【0023】
成膜(S5)では、
図2(e)に示すように、CVD法等により、基板100の主面100bに、複数の凸部101を覆う膜4を形成する。
【0024】
例えば、
図3(b)に示すようなメモリセルアレイ構造MARを含む膜4が形成されてもよい。基板100の主面100bに、複数の凸部101を覆う絶縁膜60を堆積した後、導電膜を堆積し、導電膜をパターニングして、導電層SLを形成する。絶縁膜60は、シリコン酸化物等の絶縁物で形成され得る。導電層SLは、不純物を含むポリシリコン等の導電性が付与された半導体で形成され得る。その後、導電層SLの+Z側に、絶縁層と犠牲層(図示せず)とを交互に複数回堆積して積層体LMを形成する。絶縁層は、シリコン酸化物等の絶縁物で形成され得る。犠牲層は、シリコン窒化物等の絶縁層との間でエッチング選択比を確保可能な絶縁物で形成され得る。各絶縁層及び各犠牲層は、概ね同様な膜厚で堆積され得る。
【0025】
Y方向に延びるライン状に開口されたレジストパターンを積層体の-Z側に形成する。レジストパターンをマスクとしてRIE(Reactive Ion Etching)法などの異方性エッチングを行い、積層体LMをYZ方向に貫通する溝を形成する。そして、溝に分断膜(図示せず)が埋め込まれる。分断膜は、絶縁物(例えば、シリコン酸化物)を主成分とする材料で形成され得る。分断膜は、積層体LMの-X側でYZ方向に延びる。分断膜は、積層体LMを-X側の他の積層体LMから分断する。各積層体LMでは、絶縁層及び犠牲層が交互に複数回積層されている。各積層体LMは、XY平面視でY方向を長手方向とする略矩形状を有する。
【0026】
メモリホールの形成位置が開口されたレジストパターンを各積層体-Z側に形成する。レジストパターンをマスクとしてRIE法などの異方性エッチングを行い、積層体LMを貫通し導電層SLに到達するメモリホールを形成する。
【0027】
メモリホールの側面及び底面に、ブロック絶縁膜、電荷蓄積膜、トンネル絶縁膜が順に堆積される。ブロック絶縁膜は、シリコン酸化物等の絶縁物で形成され得る。トンネル絶縁膜におけるメモリホールの底面の部分が選択的に除去される。
【0028】
メモリホールの側面及び底面に半導体膜が堆積される。半導体膜は、半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成され得る。そして、メモリホールにコア部材が埋め込まれる。コア部材は、シリコン酸化物等の絶縁物で形成され得る。これにより、積層体LMをZ方向にそれぞれ貫通する複数の柱状体PLが形成される。複数の柱状体PLは、XY方向に配列されるように形成される。
【0029】
積層体LMの犠牲層が除去される。除去によって形成された空隙の露出された面にブロック絶縁膜が形成される。ブロック絶縁膜は、アルミニウム酸化物等の絶縁物で形成され得る。空隙には、さらに、導電層WLが埋め込まれる。導電層WLは、導電物(例えば、タングステンなどの金属)を主成分とする材料で形成され得る。これにより、導電層WLと絶縁層とが交互に繰り返し積層された積層体LMが形成される。導電層WLと柱状体PLの半導体膜とが交差する位置にメモリセルが形成される。すなわち、複数のメモリセルが3次元的に配列されたメモリセルアレイ構造MARが形成される。
【0030】
また、積層体LMを覆う層間絶縁膜50がさらに形成される。レジストパターンの形成及びスリミングとエッチング加工を繰り返すことなどにより、積層体LMのY方向両側に階段状に導電層WLが引き出された階段構造を形成する。層間絶縁膜50にホールを形成し導電物を埋め込むことなどにより、各導電層WLに電気的に接続される導電プラグCCを形成する。また、層間絶縁膜50の堆積とともに層間絶縁膜50にホールが加工され導電物が埋め込まれたり導電パターンが形成されたりすることで、導電プラグCCに電気的に接続される配線構造WR2が形成される。層間絶縁膜50の-Z側の主面50aには、メッキ等により、配線構造WR2に電気的に接続される電極PD2が形成される。
図2(e)以降では、簡略化のため、メモリセルアレイ構造MAR、導電プラグCC、配線構造WR2、電極PD2、層間絶縁膜50,60を含む膜を膜4として図示及び説明を行う。また、膜4は、本実施形態で注目する部分が層間絶縁膜60であるため、膜4の材料は主に層間絶縁膜60の材料であるものとして扱う。なお、
図3(b)に示すデバイス構造は一例であり、特に限定されない。また、
図3(b)においてメモリセルアレイ構造MARが1つ示されているが、複数あってもよい。
【0031】
膜4は、基板100より赤外光の吸収率が大きい任意の材料で形成され得る。膜4は、膜4がレーザー吸収層として機能するのに適したレーザー波長(たとえば、9200nm以上、10800nm以下など)の吸収率が基板100より大きい任意の材料で形成されてもよい。膜4は、絶縁物を主成分とする材料で形成されてもよく、半導体酸化物(例えば、酸化シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。
【0032】
図1に示すように、下基板の処理(S1~S2)と上基板の処理(S3~S5)とがいずれも完了すると、上基板と下基板とが接合される(S6)。膜3の+Z側の主面3a(
図2(b)参照)と膜4の-Z側の主面4b(
図2(e)参照)とがそれぞれプラズマ照射等により活性化され、
図2(f)に示すように、主面3a及び主面4bが向き合うように、基板2及び基板100がZ方向に対向配置される。
図2(f)、
図5(a)及び
図6に示すように、主面3aにおける電極PD1のXY位置と主面4bにおける電極PD2のXY位置とが対応するように、基板2のXY位置と基板100のXY位置とがアライメントされる。
図5(a)及び
図6に示すように、基板2及び基板100がZ方向に互いに近付けられ、基板2側の主面3aと基板100側の主面4bとが直接接合で接合される。このとき、主面3aの原子と主面4bの原子とは水素結合等で結合され、基板2及び基板100が仮接合された状態である。
【0033】
そのため、
図1に示すように、比較的低温度での熱処理(アニール)が行われる(S7)。熱処理(アニール)では、
図5(b)に点線の矢印で示すように、基板2及び基板100が全体的に加熱される。熱処理では、例えば基板2及び基板100がそれぞれ比較的低温度(すなわち、デバイス構造の許容温度、例えば、200℃程度)に所定時間で加熱される。このとき、界面から水分子が抜けることなどにより、主面3aの原子と主面4bの原子とは共有結合等で結合され、基板2及び基板100が本接合された状態になる。これにより、基板2及び基板100の接合体CBが形成される。このとき、電極PD1と電極PD2とが直接接合で接合され、周辺回路構造PHCとメモリセルアレイ構造MARとが電気的に接続され得る。
【0034】
図1に示すS7が完了すると、焦点が膜4の近傍に位置するように基板100の側からレーザー光200を照射する(S8)。
【0035】
なお、本実施形態において、1回のレーザー光200の照射とは、基板全面への1照射目のレーザー光200の照射からN照射目のレーザー光200の照射までを含むものとする。Nは、任意の2以上の整数である。
【0036】
レーザー光の照射は、レーザー吸収層である膜4の光吸収率が基板100よりも大きい波長帯(レーザー吸収層がシリコン酸化膜の場合は、好ましくは1117nm以上、より好ましくは9300nm近傍又は10600nm近傍など)になるレーザー光200で行う。レーザー光200は、パルスレーザーが用いられる。レーザー光200は、赤外レーザーが用いられてもよい。レーザー光200は、炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)が用いられてもよい。レーザー光200の吸収は、基板又は膜の吸収係数と厚みに依存して起こり、本構造では、レーザー吸収層となる膜4で最もレーザー吸収が起きる。
【0037】
このとき、レーザー光200の照射は、
図7に示すように、凸部101の平均配置ピッチPより大きな直径のスポット領域201で膜4内に2次元的に分布するように行われる。これにより、スポット領域201の直径が凸部101の平均配置ピッチPと均等である場合に比べて、1回のレーザー光200の照射における照射数Nを低減でき、基板100を剥離するまでに要するレーザー照射工程の時間を短縮できる。
【0038】
スポット領域201は、レーザー光200の焦点面におけるビームが照射される領域を意味する。
図7では、スポット領域201が一点鎖線で囲って示される。
【0039】
レーザー光200のスポット領域201は、XY平面視で略円形状を有してもよい。スポット領域201が略円形状を有する場合、スポット領域201の直径をスポット径と呼ぶことにする。レーザー光200のスポット径Dは、基板100の主面100bにおける凸部101の平均配置ピッチP(
図4参照)より大きい。各スポット領域201のスポット径Dは、ほぼ一定であってもよいし、第9の範囲内で変動してもよい。
図7では、各スポット領域201のスポット径Dがほぼ一定である照射パターンが例示される。スポット領域201の平均スポット径Dは、第10の範囲(例えば、10μm~1000μm)内の値であってもよい。スポット領域201の平均スポット径Dは、複数のスポット領域201のスポット径Dを加算平均した値であってもよい。
【0040】
複数のスポット領域201における互いに隣接するスポット領域201の中心間のXY距離を照射ピッチと呼ぶことにする。複数のスポット領域201の照射ピッチLPは、ほぼ一定であってもよいし、第11の範囲内で変動してもよい。
図7では、複数のスポット領域201の照射ピッチLP_1~LP_nがほぼ一定であるような照射パターンが例示される。スポット領域201の平均照射ピッチLPは、第12の範囲(例えば、10μm~1000μm)内の値であってもよい。スポット領域201の平均照射ピッチLPは、複数のスポット領域201の照射ピッチLP_1~LP_nを加算平均した値であってもよい。
【0041】
レーザー光200のスポット領域201は、Z方向から透視した場合に2以上の凸部101に重なる。レーザー光200のスポット領域201は、Z方向から透視した場合に2以上の凸部101を内側に含んでもよい。複数のスポット領域201のそれぞれに含まれる凸部101の個数は、ほぼ一定であってもよいし、第13の範囲内で変動してもよい。
図7では、複数のスポット領域201のそれぞれに含まれる凸部101の個数がほぼ一定(例えば、3個)である照射パターンが例示される。スポット領域201に含まれる凸部101の平均個数は、第14の範囲(例えば、100~1000)内の値であってもよい。スポット領域201に含まれる凸部101の平均個数は、複数のスポット領域201のそれぞれに含まれる凸部101の個数を加算平均した値であってもよい。凸部101のピッチPは一定であることが好ましく、それに応じて、一定個数の凸部101がスポット領域201に含まれるようにスポット領域201が重なりながら移動してもよい。
【0042】
レーザー光200の照射は、そのスポット領域201が
図7に点線で示すらせん状の軌道OBに沿って移動しながら行われてもよい。ステージ及び光源を有するレーザー照射装置(図示せず)において、基板2及び基板100の接合体CB(
図5(b)参照)がステージに載置され、ステージが回転されながら光源が基板の外周位置から中心位置に徐々に移動することで、らせん状の軌道OBに沿って外周位置から中心位置に向かうスポット領域201の照射パターンを実現可能である。
【0043】
なお、ステージ及び光源を有するレーザー照射装置において、ステージが回転されながら光源が基板の中心位置から外周位置に徐々に移動してもよい。この場合、らせん状の軌道OBに沿って中心位置から外周位置に向かうスポット領域201の照射パターンを実現可能である。
【0044】
例えば、
図8(a)に示すように、1照射目のレーザー光200-1を照射すべきXY平面位置が決められ、レーザー光200-1の焦点が膜4内に位置するように調整される。照射すべきXY平面位置は、らせん状の軌道OB(
図7参照)の開始位置であってもよい。膜4のレーザー光200-1の吸収率は、基板100のレーザー光200-1の吸収率より大きい。これにより、基板100を通して膜4に照射されたレーザー光200-1は、効率的に膜4内の照射箇所で吸収され、そのXY平面位置で膜4を局所発熱(局所加熱)させる。
【0045】
膜4の局所発熱は、
図8(b)に示すように、膜4と基板100との界面に伝達される。基板100の熱膨張係数は膜4の熱膨張係数より大きく、このため、そのXY平面位置で基板100が膜4の側へ膨張する。
【0046】
このとき、
図9(c)に示すように、膜4と基板100との界面において、スポット領域201内に複数の凸部101が含まれている。凸部101の先端部は-Z側及びXY方向外周側で膜4に立体的に接触しているが、凸部101の周辺に位置する凹部102の底面は-Z側で膜4に平面的に接触している。
図9(c)に点線の矢印で示すように、膜4から凸部101の先端部へ伝達される熱量は、膜4から凹部102の底面へ伝達される熱量に比べて多くなっている。
【0047】
図9(d)に示すように、凸部101aの先端部が膜4の側へ膨張する膨張量Δh
101は、凹部102の底面が膜4の側へ膨張する膨張量Δh
102より大きくなる。これにより、凸部101aの先端部と膜4との界面には圧縮応力が発生するが、凹部102の底面と膜4との界面には引張応力が発生する。
【0048】
膨張量Δh101と膨張量Δh102との差は、スポット領域201内でXY方向における複数個所で発生する。これにより、凹部102の底面と膜4との界面の引張応力は、スポット領域201内でXY方向における複数個所で発生する。
【0049】
また、スポット領域201内の凸部101aの高さhaは、スポット領域201外の凸部101の高さhに比べて、高くなる(ha>h)。
【0050】
図8(c)に示すように、2照射目のレーザー光200-2を照射すべきXY平面位置が
図8(a)のXY平面位置からXY平面方向にシフトした位置に決められ、レーザー光200-2の焦点が膜4内に位置するように調整される。
図8(a)のXY平面位置からXY平面方向にシフトした位置は、らせん状の軌道OB(
図7参照)に沿ってその開始位置からシフトした位置であってもよい。膜4のレーザー光200-2の吸収率は、基板100のレーザー光200-2の吸収率より大きい。これにより、基板100を通して膜4に照射されたレーザー光200-2は、効率的に膜4内の照射箇所で吸収され、そのXY平面位置で膜4を局所発熱(局所加熱)させる。
【0051】
膜4の局所発熱は、
図10(a)に示すように、膜4と基板100との界面に伝達される。基板100の熱膨張係数は膜4の熱膨張係数より大きく、このため、そのXY平面位置で基板100が膜4の側へ膨張する。
【0052】
このとき、
図9(c)に示すように、膜4と基板100との界面において、スポット領域201内に複数の凸部101が含まれている。凸部101の先端部は-Z側及びXY方向外周側で膜4に立体的に接触しているが、凸部101の周辺に位置する凹部102の底面は-Z側で膜4に平面的に接触している。
図9(c)に点線の矢印で示すように、膜4から凸部101の先端部へ伝達される熱量は、膜4から凹部102の底面へ伝達される熱量に比べて多くなっている。
【0053】
図9(d)に示すように、凸部101aの先端部が膜4の側へ膨張する膨張量Δh
101は、凹部102の底面が膜4の側へ膨張する膨張量Δh
102より大きくなる。これにより、凸部101aの先端部と膜4との界面には圧縮応力が発生するが、凹部102の底面と膜4との界面には引張応力が発生する。
【0054】
膨張量Δh101と膨張量Δh102との差は、スポット領域201内でXY方向における複数個所で発生する。これにより、凹部102の底面と膜4との界面の引張応力は、スポット領域201内でXY方向における複数個所で発生する。
【0055】
また、スポット領域201内の凸部101aの高さhaは、スポット領域201外の凸部101の高さhに比べて、高くなる(ha>h)。
【0056】
図10(b)に示すように、N照射目のレーザー光200-Nを照射すべき最終のXY平面位置が決められ、レーザー光200-Nの焦点が膜4内に位置するように調整される。最終のXY平面位置は、らせん状の軌道OB(
図7参照)に沿ったその最終位置であってもよい。膜4のレーザー光200-Nの吸収率は、基板100のレーザー光200-Nの吸収率より大きい。これにより、基板100を通して膜4に照射されたレーザー光200-Nは、効率的に膜4内の照射箇所で吸収され、最終のXY平面位置で膜4を局所発熱(局所加熱)させる。
【0057】
膜4の局所発熱は、
図10(c)に示すように、膜4と基板100との界面に伝達される。基板100の熱膨張係数は膜4の熱膨張係数より大きく、このため、最終のXY平面位置で基板100が膜4の側へ膨張する。
【0058】
このとき、
図9(c)に示すように、膜4と基板100との界面において、スポット領域201内に複数の凸部101が含まれている。凸部101の先端部は-Z側及びXY方向外周側で膜4に立体的に接触しているが、凸部101の周辺に位置する凹部102の底面は-Z側で膜4に平面的に接触している。
図9(c)に点線の矢印で示すように、膜4から凸部101の先端部へ伝達される熱量は、膜4から凹部102の底面へ伝達される熱量に比べて多くなっている。
【0059】
図9(d)に示すように、凸部101aの先端部が膜4の側へ膨張する膨張量Δh
101は、凹部102の底面が膜4の側へ膨張する膨張量Δh
102より大きくなる。これにより、凸部101aの先端部と膜4との界面には圧縮応力が発生するが、凹部102の底面と膜4との界面には引張応力が発生する。
【0060】
膨張量Δh101と膨張量Δh102との差は、スポット領域201内でXY方向における複数個所で発生する。これにより、凹部102の底面と膜4との界面の引張応力は、スポット領域201内でXY方向における複数個所で発生する。
【0061】
また、スポット領域201内の凸部101aの高さhaは、膨張前の高さhに比べて、高くなる(ha>h)。
【0062】
膜4内に複数のスポット領域201が2次元的に分布するようにレーザー光200の照射が行われたことにより、
図11に点線の矢印で示すように、2次元的に分布する複数の凹部102の底面で引張応力が発生する状態になる。
【0063】
これにより、膜4及び基板100の界面で剥離が行われる(S9)。剥離では、
図12(a)に示すように、基板2に膜3、膜4が積層された積層体6から基板100が剥離される。例えば、2次元的に分布する複数の凹部102の底面で引張応力が発生しているため、複数の凹部102の底面を起点として、積層体6から基板100が容易に剥離される。
【0064】
その後の加工等を考慮し、積層体6は、
図1に示すように、剥離面が処理される(S10)。積層体6では、
図12(b)に示すように、膜4の+Z側の主面4aにおいて、複数の凸部4a2がXY方向に分布している。CMP法等により、主面4aを研磨して平坦化する。
【0065】
これにより、
図12(c)に示すように、基板2に膜3、膜4が積層され、膜4の主面4aが平坦化された半導体装置1が得られる。
【0066】
例えば、
図13に示すように、平坦化後に、層間絶縁膜60の+Z側の主面60aにホールを形成し導電物を埋め込むことなどにより、導電層SLに電気的に接続される導電プラグPGを形成する。メッキ等により、層間絶縁膜60の主面60aに、導電プラグPGに電気的に接続される電極パターンELを形成する。また、図示しないが、層間絶縁膜60の主面60aに、メモリセルアレイ構造MARをバイパスして周辺回路構造PHCに接続される電極パターンELも形成される。これにより、メモリセルアレイ構造MAR及び周辺回路構造PHCに外部から電源、信号等を供給可能である。
【0067】
なお、メモリセルアレイ構造MARを含む膜4はメモリセルアレイ用のチップ領域とみなすことができ、周辺回路構造PHCを含む膜3及び基板2は周辺回路用のチップ領域とみなすことができる。半導体装置1は、メモリセルアレイ用のチップ領域と周辺回路用のチップ領域との直接接合で得られた構造を有する。この構造は、CBA(CMOS directly Bonded to Array)とも呼ばれる。CBAにおいて、周辺回路用のチップ領域の+Z側に接合されるメモリセルアレイ用のチップ領域の個数は、1個に限定されず、2個以上であってもよい。
【0068】
一方、剥離された基板100は、
図1に示すように、再利用される(S11)。基板100は、
図2に実線の矢印で示すように、上基板100として再利用されてもよい。
【0069】
剥離直後の基板100は、
図12(d)に示すように、-Z側の主面100bにおいて、複数の凸部101aがXY方向に分布している。CMP法等により、主面100bを研磨して平坦化する。これにより、
図12(e)に示すように、主面100bが平坦化された基板100が得られる。
図12(e)に示す基板100は、主面100bが平坦化されているので、例えば上基板100としての再利用が容易である。
【0070】
なお、剥離された基板100は、上基板100として再利用される代わりに、
図1に点線の矢印で示すように、下基板2として再利用されてもよい。
【0071】
以上のように、第1の実施形態では、半導体装置1の製造方法において、上基板100の主面100bに2次元的に分布する複数の凸部が形成される。その後、レーザー光200の照射は、凸部101の平均配置ピッチPより大きな直径のスポット領域201で膜4内に2次元的に分布するように行われ、剥離が行われる。これにより、レーザー光200の照射により、凸部の先端部とその周辺の凹部の底面とで熱膨張量の差を発生でき、凹部の底面における引張応力を効率的に発生できる。また、1回のレーザー光の照射でスポット領域201内の複数個所で熱膨張量の差及びそれによる引張応力を発生できるので、スポット領域201の直径が平均配置ピッチPと均等である場合に比べて、1回のレーザー光200における照射数Nを低減でき、基板100を剥離するまでに要するレーザー照射工程の時間を短縮できる。したがって、レーザー剥離のスループットを効率的に向上できる。
【0072】
また、第1の実施形態によれば、1回のレーザー光200における照射数Nを低減できる。これにより、基板100を剥離するまでのレーザー照射工程おいて、膜4及び/又は膜3内のデバイス構造(例えば、
図6に示すデバイス構造)へ到達する熱量を低減でき、デバイス構造への熱ダメージを抑制できる。
【0073】
例えば、比較例として、半導体装置1の製造方法において、
図9(a)に示すように、レーザー光900の照射前に、上基板800の主面800aに2次元的に分布する複数の凸部を形成しない場合を考える。この場合、所望の複数箇所のそれぞれと均等なサイズのスポット径のレーザー光900を所望の複数箇所それぞれに照射することにより、
図9(b)に示すように、照射数と略同じ個数の凸部901が形成される。凸部901の先端部と膜704との界面では圧縮応力が発生するが、凸部901の周辺に位置する凹部902と膜704との界面では引張応力が発生する。すなわち、引張応力を発生させたい箇所の個数と同じ照射数のレーザー光900の照射が行われることになるため、基板800を剥離するまでに要するレーザー照射工程の時間が長時間化しやすい。
【0074】
これに関して、検討したところ、レーザー光900の照射数の増加に応じてレーザー光900の照射の時間間隔を短くする(又は照射の周波数を上げる)と、レーザー光900が照射された複数箇所間の熱的な干渉等により基板が冷却されにくく、各箇所で膜704側へ膨張する形状の周期性が崩れ、凹部902が形成されにくい傾向にある。この場合、基板900と膜704との界面にほとんど引張応力が発生しないため、基板800を剥離すること自体が困難になる。すなわち、レーザー光900の照射の時間間隔を短くすることによるレーザー照射工程の短時間化は困難である。
【0075】
一方、第1の実施形態では、
図9(c)に示すように、レーザー光200の照射前に、上基板100の表面に2次元的に分布する複数の凸部が形成される。これにより、
図9(c)、
図9(d)に示すように、1照射のレーザー光の照射でスポット領域201内の複数個所で熱膨張量の差及びそれによる引張応力を発生できる。これにより、引張応力を発生させたい箇所の個数より少ない照射数のレーザー光900の照射で済む。例えば、引張応力を発生させたい箇所が5箇所である場合、
図9(a)では、5照射のレーザー光900-1~900-5の照射を行うが、
図9(c)では、2照射のレーザー光200-1,200-2の照射で済む。この結果、レーザー光200の照射数Nを低減でき、基板100を剥離するまでに要するレーザー照射工程の時間を短縮できる。
【0076】
また、半導体装置1の製造方法において、レーザー光900の照射前に、上基板800の表面に2次元的に分布する複数の凸部が形成されない場合、
図9(a)に点線の矢印で示すように、レーザー光900の照射時に基板800へ伝達される熱量が限られる。このため、
図9(b)に示すように、凸部901の先端部の熱膨張量Δh
901と凹部902の底面の熱膨張量(≒0)との差が比較的小さくなり、凹部の底面における引張応力が小さくなりやすい。
【0077】
一方、第1の実施形態では、
図9(d)に示すように、上基板100の表面に2次元的に分布する複数の凸部101が形成されているため、凸部101aの先端部の膨張量Δh
101と凹部102の底面の膨張量Δh
102の差を大きく確保しやすい。これにより、凹部102の底面に引張応力を効率的に発生できる。
【0078】
(第1の実施形態の第1の変形例)
第1の実施形態の第1の変形例として、レーザー光200のスポット領域201の形状は、XY平面視で略円形状以外の形状であってもよく、レーザー剥離に適した任意の形状を含む。レーザー光200pのスポット領域201pの形状は、1回のレーザー光200pの照射において一定でなくてもよく、1照射目のレーザー光200pの照射からN照射目のレーザー光200pの照射までの間において変化してもよい。
【0079】
例えば、Nが3の倍数であるとすると、
図14に示すように、1照射目のレーザー光200p-1~(1/3)N照射目のレーザー光200p-(1/3)Nのスポット領域201pが比較的大きな略台形状であり、{(1/3)N+1}射目のレーザー光200p-(1/3)N+1~(2/3)N照射目のレーザー光200p-(2/3)Nのスポット領域201pがやや小さな略台形状であり、{(2/3)N+1}射目のレーザー光200p-(2/3)N+1~N照射目のレーザー光200p-Nのスポット領域201pが小さな略三角状であってもよい。
図14に示す場合、1回のレーザー光200pの照射を、スポット領域201pが効率的に基板100に敷き詰められる形で行うことができる。
【0080】
(第1の実施形態の第2の変形例)
第1の実施形態の第2の変形例として、凸部形成(S4)は、基板100の主面100bの加工で行われる代わりに、
図15に示すように、基板100に配される膜5の加工で行われてもよい。
図15(a)~
図15(f)は、第1の実施形態の第2の変形例にかかる半導体装置1の製造方法を示すYZ断面図である。
【0081】
図15(a)に示す下基板の準備(S1)、
図15(b)に示す成膜(S2)は、第1の実施形態と同様に行われる。
【0082】
上基板の準備(S3)では、
図15(c)に示すように、基板(上基板)100が準備され、基板100の主面100bに、CVD法等により、膜5を堆積する。膜5は、半導体窒化物(例えば、窒化シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよいし、半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。あるいは、膜5は、基板100の主面100bに、膜5をエピタキシャル成長させてもよい。膜5は、半導体(例えば、シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。
【0083】
凸部形成(S4)では、
図15(d)に示すように、膜5を加工することで行われてもよい。膜5に、RIE法等のドライエッチングにより、複数の凸部51を形成する。例えば、膜5の主面5bに感光剤を塗布し、露光・現像により、主面5bにおける複数の凸部51に対応する複数の領域を選択的に覆うレジストパターンRP(図示せず)を形成する。レジストパターンRPをマスクとして、RIE法等により、異方性エッチングの条件でエッチング加工を行い、基板100の主面100bに複数の凸部51を形成する。
【0084】
複数の凸部51が、
図4に示すように、主面100bにおいてXY方向に分布するように形成される点は、第1の実施形態と同様である。
【0085】
成膜(S5)では、
図15(e)に示すように、CVD法等により、複数の凸部51を覆う膜4を堆積する。
【0086】
下基板の処理(S1~S2)と上基板の処理(S3~S5)とがいずれも完了すると、上基板と下基板とが接合される(S6)。膜3の+Z側の主面3aと膜4の-Z側の主面4bとがそれぞれプラズマ照射等により活性化され、
図15(f)に示すように、主面3a及び主面4bが向き合うように、基板2及び基板100がZ方向に対向配置される。
図5(a)に示すように、基板2及び基板100がZ方向に互いに近付けられ、基板2側の主面3aと基板100側の主面4bとが接合される。
【0087】
そして、
図1に示すS7以降の処理が第1の実施形態と同様に行われる。
【0088】
このような処理によっても、上基板100の主面100bに2次元的に分布する複数の凸部51が形成され得る。
【0089】
(第1の実施形態の第3の変形例)
第1の実施形態の第3の変形例として、凸部形成(S4)は、基板100の主面100bの加工で行われる代わりに、
図16に示すように、基板100に膜7を介して配される膜5の加工で行われてもよい。
図16(a)~
図16(g)は、第1の実施形態の第3の変形例にかかる半導体装置1の製造方法を示すYZ断面図である。
【0090】
図16(a)に示す下基板の準備(S1)、
図16(b)に示す成膜(S2)は、第1の実施形態と同様に行われる。
【0091】
上基板の準備(S3)では、
図16(c)に示すように、基板(上基板)100が準備され、基板100の主面100bに、CVD法等により、膜7を堆積する。膜7は、半導体窒化物(例えば、窒化シリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。
【0092】
図16(d)に示すように、膜7の主面7bに、CVD法等により、膜5を堆積する。膜5は、半導体(例えば、ポリシリコン)を主成分とする材料で形成されてもよい。
【0093】
凸部形成(S4)では、
図16(e)に示すように、膜5を加工することで行われてもよい。膜5に、RIE法等のドライエッチングにより、複数の凸部51を形成する。例えば、膜5の主面5bに感光剤を塗布し、露光・現像により、主面5bにおける複数の凸部51に対応する複数の領域を選択的に覆うレジストパターンRP(図示せず)を形成する。レジストパターンRPをマスクとして、RIE法等により、異方性エッチングの条件でエッチング加工を行い、膜7の主面7bに複数の凸部51を形成する。
【0094】
複数の凸部51が、
図4に示すように、主面100bにおいてXY方向に分布するように形成される点は、第1の実施形態と同様である。
【0095】
成膜(S5)では、
図16(f)に示すように、CVD法等により、膜7の主面7bに、複数の凸部51を覆う膜4を堆積する。
【0096】
下基板の処理(S1~S2)と上基板の処理(S3~S5)とがいずれも完了すると、上基板と下基板とが接合される(S6)。膜3の+Z側の主面3aと膜4の-Z側の主面4bとがそれぞれプラズマ照射等により活性化され、
図16(g)に示すように、主面3a及び主面4bが向き合うように、基板2及び基板100がZ方向に対向配置される。
図5(a)に示すように、基板2及び基板100がZ方向に互いに近付けられ、基板2側の主面3aと基板100側の主面4bとが接合される。
【0097】
そして、
図1に示すS7以降の処理が第1の実施形態と同様に行われる。
【0098】
このような処理によっても、上基板100の主面100b側に2次元的に分布する複数の凸部51が形成され得る。
【0099】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態にかかる半導体装置1の製造方法について説明する。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0100】
前述のように、
図9(a)に示すようなレーザー光900の照射数の増加に応じてレーザー光900の照射の時間間隔を短くすると、レーザー光900が照射された複数箇所間の熱的な干渉等により基板が冷却されにくく、各箇所で膜704側へ膨張する形状の周期性が崩れ、凹部902が形成されにくい傾向にある。この場合、基板900と膜704との界面にほとんど引張応力が発生しないため、基板800を剥離すること自体が困難になる。
【0101】
そこで、第2の実施形態では、後述する
図20に示すように、レーザー光200iの照射を軌道OB1に沿った分割照射で行うことで、照射箇所間の熱的な干渉を抑制しながらレーザー剥離のスループット向上を目指す。
【0102】
なお、本実施形態において、1回のレーザー光200iの照射とは、基板全面への1照射目のレーザー光200の照射からK×N照射目のレーザー光200の照射までを含むものとする。Kは、任意の2以上の整数である。Nは、任意の2以上の整数である。分割照射とは、1回のレーザー光200iの照射を、それぞれが基板全面への1照射目のレーザー光200の照射からN照射目のレーザー光200の照射までを含むK回のレーザー光の照射に分割することを意味する。
【0103】
例えば、半導体装置1の製造方法が、
図17~
図22に示すように、次の点で第1の実施形態と異なる。
図17は、半導体装置1の製造方法を示すフローチャートである。
図18(a)~
図18(f)、
図19(a)~
図19(b)、
図21(a)~
図21(c)、
図22は、半導体装置1の製造方法を示すYZ断面図である。
図20(a)~
図20(c)は、分割照射パターンを示すXY平面図である。
【0104】
半導体装置1の製造方法では、
図17に示すように、S4(
図1参照)が省略され、S8(
図1参照)に代えてS21~S22が追加されている。
【0105】
図18(a)に示す下基板の準備(S1)、
図18(b)に示す成膜(S2)は、第1の実施形態と同様に行われる。
【0106】
図18(c)に示す上基板の準備(S3)は第1の実施形態と同様に行われるが、成膜(S5)が、
図18(d)に示すように、基板100の平坦な主面100bに膜4を堆積する点で、第1の実施形態と異なる。
【0107】
下基板の処理(S1~S2)と上基板の処理(S3~S5)とがいずれも完了すると、上基板と下基板とが接合される(S6)。膜3の+Z側の主面3aと膜4の-Z側の主面4bとがそれぞれプラズマ照射等により活性化され、
図18(e)に示すように、主面3a及び主面4bが向き合うように、基板2及び基板100がZ方向に対向配置される。
図19(a)に示すように、基板2及び基板100がZ方向に互いに近付けられ、基板2側の主面3aと基板100側の主面4bとが接合される。
【0108】
その後、
図1に示すように、比較的低温度での熱処理(アニール)が行われる(S7)。熱処理(アニール)では、
図19(b)に点線の矢印で示すように、基板2及び基板100が全体的に加熱される。これにより、基板2及び基板100の接合体CBが形成される。
【0109】
図17に示すS7が完了すると、焦点が膜4の近傍に位置するように基板100の側からレーザー光200iを照射する(S21)。
【0110】
このとき、レーザー光200iの照射は、軌道OB1に沿ったK回の分割照射で行われてもよい。Kは、2以上の整数である。分割照射の回数をカウントするためのパラメータを用意してもよい。例えば、1回目の分割照射であれば、パラメータに初期値1をセットしておき、分割照射の回数が増えるたびにパラメータをインクリメントしてもよい。
【0111】
K回の分割照射のパターンは、開始位置が1照射のスポット領域の寸法に相当する距離で互いにずれており且つそれぞれにおいて1照射のスポット領域の寸法のK倍に相当するピッチで軌道OB1に沿ってスポット領域が並ぶようなパターンであってもよい。軌道OB1は、Z方向から透視した場合にらせん状であってもよい。
【0112】
例えば、K=3である場合、
図20(a)~
図20(c)に示すような照射パターンが実現されてもよい。
図20(a)は、1回目の分割照射パターンを例示し、
図20(b)は、2回目の分割照射パターンを例示し、
図20(c)は、3回目の分割照射パターンを例示する。
図20(a)~
図20(c)では、各スポット領域201iが円形状を有する場合が例示される。
【0113】
図20(a)~
図20(c)に示すように、1回目の分割照射パターン、2回目の分割照射パターン、3回目の分割照射パターンは、開始位置が1照射のスポット領域201iのスポット径Diに相当する距離で互いにずれている。
【0114】
図20(a)に示すように、1回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット径Diの3倍に相当するピッチで軌道OB1に沿ってスポット領域201iが並ぶ。
図20(b)に示すように、2回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット径Diの3倍に相当するピッチで軌道OB1に沿ってスポット領域201iが並ぶ。
図20(c)に示すように、3回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット径Diの3倍に相当するピッチで軌道OB1に沿ってスポット領域201iが並ぶ。
【0115】
これにより、各回の分割照射において、時間的に隣接するスポット領域201iの空間的な距離を離すことができるため、時間的に隣接するスポット領域201i間の熱的な干渉を抑制しながらレーザー光900の照射の時間間隔を短くする(又は照射の周波数を上げる)ことができる。
【0116】
各回の分割照射パターンに含まれるレーザー光200iの照射数N(すなわち、スポット領域201iの個数N)は、互いに均等であってもよい。また、らせん状の軌道OB1に沿って外周位置から中心位置に向かうスポット領域201iの照射パターンを例示するが、せん状の軌道OB1に沿って中心位置から外周位置に向かうスポット領域201iの照射パターンであってもよい。
【0117】
例えば、
図21(a)に示すように、1照射目のレーザー光200i-1を照射すべきXY平面位置が決められ、レーザー光200i-1の焦点が膜4内に位置するように調整される。照射すべきXY平面位置は、1回目の分割照射パターンであれば、
図20(a)に示す開始位置であってもよい。2回目の分割照射パターンであれば、
図20(b)に示す開始位置であってもよい。3回目の分割照射パターンであれば、
図20(c)に示す開始位置であってもよい。膜4のレーザー光200-1の吸収率は、基板100のレーザー光200-1の吸収率より大きい。これにより、基板100を通して膜4に照射されたレーザー光200-1は、効率的に膜4内の照射箇所で吸収され、そのXY平面位置で膜4を局所発熱(局所加熱)させる。
【0118】
膜4の局所発熱は、
図21(b)に示すように、膜4と基板100との界面に伝達される。基板100の熱膨張係数は膜4の熱膨張係数より大きく、このため、そのXY平面位置で基板100が膜4の側へ膨張する。これにより、基板100の主面100bには、そのXY平面位置において、-Z側に突出した凸部101iが形成される。この結果、凸部101iの先端部と膜4との界面には圧縮応力が発生するが、凸部101iの周辺に位置する凹部102iの底面と膜4との界面には引張応力が発生する。
【0119】
図21(c)に示すように、2照射目のレーザー光200i-2を照射すべきXY平面位置が
図21(a)のXY平面位置からXY平面方向にシフトした位置に決められ、レーザー光200i-2の焦点が膜4内に位置するように調整される。
図21(a)のXY平面位置からXY平面方向にシフトした位置は、1回目の分割照射パターンであれば、
図20(a)に示す開始位置から軌道OB1に沿ってスポット径Diの3倍に対応するピッチでシフトした位置であってもよい。2回目の分割照射パターンであれば、
図20(b)に示す開始位置から軌道OB1に沿ってスポット径Diの3倍に対応するピッチでシフトした位置であってもよい。3回目の分割照射パターンであれば、
図20(c)に示す開始位置から軌道OB1に沿ってスポット径Diの3倍に対応するピッチでシフトした位置であってもよい。膜4のレーザー光200i-2の吸収率は、基板100のレーザー光200i-2の吸収率より大きい。これにより、基板100を通して膜4に照射されたレーザー光200i-2は、効率的に膜4内の照射箇所で吸収され、そのXY平面位置で膜4を局所発熱(局所加熱)させる。
【0120】
膜4の局所発熱は、
図21(d)に示すように、膜4と基板100との界面に伝達される。基板100の熱膨張係数は膜4の熱膨張係数より大きく、このため、そのXY平面位置で基板100が膜4の側へ膨張する。
【0121】
このとき、
図21(d)のXY平面位置は、
図21(b)のXY平面位置からスポット径Diの3倍に対応するピッチで離れており、
図21(b)のXY平面位置からの熱的な干渉が抑制されている。
【0122】
これに応じて、
図21(d)のXY平面位置で基板100が膜4の側へ膨張し、基板100の主面100bには、そのXY平面位置において、-Z側に突出した凸部101iが形成される。これにより、凸部101iの先端部と膜4との界面には圧縮応力が発生するが、凸部101iの周辺に位置する凹部102iの底面と膜4との界面には引張応力が発生する。
【0123】
同様にして、N回目までレーザー光200iの照射が行われると、現在の分割照射がK回目の分割照射であるか否かが判断される(S22)。例えば、分割照射の回数をカウントするためのパラメータが確認され、パラメータの値がK未満であれば、現在の分割照射がK回目の分割照射でない(S22でNo)として、処理がS21に戻される。
【0124】
膜4内に複数のスポット領域201iが2次元的に分布するようにK回目の分割照射でレーザー光200iの照射が行われたことにより、
図22に点線の矢印で示すように、2次元的に分布する複数の凹部102iの底面で引張応力が発生する状態になる。
【0125】
例えば、分割照射の回数をカウントするためのパラメータが確認され、パラメータの値がK以上であれば、現在の分割照射がK回目の分割照射である(S22でYes)として、膜4及び基板100の界面で剥離が行われる(S9)。剥離は、第1の実施形態と同様に行われる。
【0126】
一方、剥離された基板100は、
図17に示すように、再利用される(S11)。基板100は、
図17に実線の矢印で示すように、上基板100として再利用されてもよい。再利用は、第1の実施形態と同様に行われる。
【0127】
なお、剥離された基板100は、上基板100として再利用される代わりに、
図17に点線の矢印で示すように、下基板2として再利用されてもよい。
【0128】
以上のように、第2の実施形態では、半導体装置1の製造方法において、レーザー光200iの照射を起動OB1に沿った分割照射で行う。これにより、照射箇所間の熱的な干渉を抑制しながらレーザー光200iの照射の時間間隔を短くする(又は照射の周波数を上げる)ことができる。この結果、レーザー剥離のスループットを向上できる。
【0129】
なお、
図20(a)~
図20(c)に示すように、らせん状の軌道OB1では、外周位置から中心位置に近付くにつれて、その半径が小さくなっていくことなどにより、時間的に近い(例えば、1~3回前の)スポット領域201iとのXY距離が近くなっていく傾向にある。これに伴い、外周位置から中心位置に近付くにつれて、レーザー光200iの照射の時間間隔を一定にしながら短くしにくく、レーザー光200iの照射の時間間隔の制御が複雑化する可能性がある。
【0130】
(第2の実施形態の第1の変形例)
その点を考慮し、第2の実施形態の第1の変形例として、K回の分割照射は、
図23に示すように、ライン状の軌道OB2を用いて行われてもよい。
図23は、第2の実施形態の第1の変形例における分割照射パターンを示すXY平面図である。
【0131】
例えば、K=3である場合、
図23(a)~
図23(c)に示すような照射パターンが実現されてもよい。
図23(a)は、1回目の分割照射パターンを例示し、
図23(b)は、2回目の分割照射パターンを例示し、
図23(c)は、3回目の分割照射パターンを例示する。
図23(a)~
図23(c)では、各スポット領域201iが円形状を有する場合が例示される。
【0132】
図23(a)~
図23(c)に示すように、K回の分割照射には、複数の軌道OB2-1~OB2-Mが用いられる。Mは、任意の2以上の整数である。複数の軌道OB2-1~OB2-Mは、互いに略平行に延び、その延びる方向と垂直な方向に略一定間隔で配列される。
図23(a)~
図23(c)の場合、各軌道OB2-1~OB2-Mは、Y方向に延びる。複数の軌道OB2-1~OB2-Mは、X方向に略一定間隔で配列される。複数の軌道OB2-1~OB2-Mの配列の間隔は、スポット領域201iのスポット径Diに対応していてもよい。
【0133】
レーザー光200iの照射は、一方向に軌道OB2-1~OB2-Mを順に沿いながら行われてもよい。
図23(a)~
図23(c)では、レーザー光200iの照射が各軌道OB2を+Y側から-Y側に沿って行われる場合が例示されるが、レーザー光200iの照射が各軌道OB2を-Y側から+Y側に沿って行われてもよい。
【0134】
図23(a)~
図23(c)に示すように、1回目の分割照射パターン、2回目の分割照射パターン、3回目の分割照射パターンは、開始位置が1照射のスポット領域201iのスポット径Diに相当する距離で互いにずれている。
【0135】
図23(a)に示すように、1回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット径Diの3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201iが並ぶ。
図23(b)に示すように、2回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット径Diの3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201iが並ぶ。
図23(c)に示すように、3回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット径Diの3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201iが並ぶ。
【0136】
これによっても、各回の分割照射において、時間的に隣接するスポット領域201iの空間的な距離を離すことができるため、時間的に隣接するスポット領域201i間の熱的な干渉を抑制しながらレーザー光200iの照射の時間間隔を短くする(又は照射の周波数を上げる)ことができる。
【0137】
(第2の実施形態の第2の変形例)
あるいは、第2の実施形態の第2の変形例として、K回の分割照射は、
図24に示すように、ライン状の軌道OB2を用いてライン状のスポット領域201jで行われてもよい。
図24は、第2の実施形態の第2の変形例における分割照射パターンを示すXY平面図である。
【0138】
例えば、K=3である場合、
図24(a)~
図24(c)に示すような照射パターンが実現されてもよい。
図24(a)は、1回目の分割照射パターンを例示し、
図24(b)は、2回目の分割照射パターンを例示し、
図24(c)は、3回目の分割照射パターンを例示する。
図24(a)~
図24(c)では、各スポット領域201jがライン形状を有する場合が例示される。なお、
図24に示すライン形状の照射パターンの大きさは一例であり、例えば、ライン形状の長手方向における長さは、
図23に示すスポット径と略同じか、該スポット径より大きくてもよい。
【0139】
図24(a)~
図24(c)に示すように、K回の分割照射には、複数の軌道OB2-1~OB2-Mが用いられる。Mは、任意の2以上の整数である。複数の軌道OB2-1~OB2-Mは、互いに略平行に延び、その延びる方向と垂直な方向に略一定間隔で配列される。
図24(a)~
図24(c)の場合、各軌道OB2-1~OB2-Mは、Y方向に延びる。複数の軌道OB2-1~OB2-Mは、X方向に略一定間隔で配列される。スポット領域201jは、X方向に延びる。複数の軌道OB2-1~OB2-Mの配列の間隔は、スポット領域201jのY方向幅に対応していてもよい。
【0140】
レーザー光200jの照射は、一方向に軌道OB2-1~OB2-Mを順に沿いながら行われてもよい。
図24(a)~
図24(c)では、レーザー光200jの照射が各軌道OB2を+Y側から-Y側に沿って行われる場合が例示されるが、レーザー光200jの照射が各軌道OB2を-Y側から+Y側に沿って行われてもよい。
【0141】
図24(a)~
図24(c)に示すように、1回目の分割照射パターン、2回目の分割照射パターン、3回目の分割照射パターンは、開始位置が1照射のスポット領域201jのY方向幅に相当する距離で互いにずれている。スポット領域201jのY方向幅は、引張応力を発生させたい2つの箇所に対応していてもよい。
【0142】
図24(a)に示すように、1回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット領域201jのY方向幅の3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201jが並ぶ。
図24(b)に示すように、2回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット領域201jのY方向幅の3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201jが並ぶ。
図24(c)に示すように、3回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット領域201jのY方向幅の3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201jが並ぶ。
【0143】
例えば、
図25に示すように、X方向にライン状に延びるスポット領域201jが、軌道OB2-2に沿ってX方向に、スポット領域201jのY方向幅の3倍に対応するピッチで並ぶ照射パターンを考える。
【0144】
任意のk照射目のレーザー光200j-kのスポット領域201jを照射すると、基板100の主面100bにおいて、
図25に点線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201jに重なる領域で圧縮応力が発生する。kは、任意の整数である。基板100の主面100bにおいて、
図25に一点鎖線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201jにY方向両側で隣接する領域で引張応力が発生する。
【0145】
k+1照射目のレーザー光200j-(k+1)のスポット領域201jを照射すると、基板100の主面100bにおいて、
図25に点線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201jに重なる領域で圧縮応力が発生する。基板100の主面100bにおいて、
図25に一点鎖線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201jにY方向両側で隣接する領域で引張応力が発生する。
【0146】
k+4照射目のレーザー光200j-(k+4)のスポット領域201jを照射すると、基板100の主面100bにおいて、
図25に点線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201jに重なる領域で圧縮応力が発生する。基板100の主面100bにおいて、
図25に一点鎖線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201jにY方向両側で隣接する領域で引張応力が発生する。
【0147】
これによっても、各回の分割照射において、時間的に隣接するスポット領域201jの空間的な距離を離すことができるため、時間的に隣接するスポット領域201j間の熱的な干渉を抑制しながらレーザー光200jの照射の時間間隔を短くする(又は照射の周波数を上げる)ことができる。
【0148】
(第2の実施形態の第3の変形例)
あるいは、第2の実施形態の第3の変形例として、K回の分割照射は、
図26に示すように、ライン状の軌道OB2を用いてリング状のスポット領域201nで行われてもよい。
図26は、第2の実施形態の第3の変形例における分割照射パターンを示すXY平面図である。
【0149】
例えば、K=3である場合、
図26(a)~
図26(c)に示すような照射パターンが実現されてもよい。
図26(a)は、1回目の分割照射パターンを例示し、
図26(b)は、2回目の分割照射パターンを例示し、
図26(c)は、3回目の分割照射パターンを例示する。
図26(a)~
図26(c)では、各スポット領域201nがリング形状を有する場合が例示される。なお、
図26に示すリング形状の照射パターンの大きさは一例であり、例えば、リング形状の外径は、
図23に示すスポット径と略同じか、該スポット径より大きくてもよい。
【0150】
図26(a)~
図26(c)に示すように、K回の分割照射には、複数の軌道OB2-1~OB2-Mが用いられる。Mは、任意の2以上の整数である。複数の軌道OB2-1~OB2-Mは、互いに略平行に延び、その延びる方向と垂直な方向に略一定間隔で配列される。
図26(a)~
図26(c)の場合、各軌道OB2-1~OB2-Mは、Y方向に延びる。複数の軌道OB2-1~OB2-Mは、X方向に略一定間隔で配列される。複数の軌道OB2-1~OB2-Mの配列の間隔は、スポット領域201jのスポット径Dnに対応していてもよい。
【0151】
レーザー光200nの照射は、一方向に軌道OB2-1~OB2-Mを順に沿いながら行われてもよい。
図26(a)~
図26(c)では、レーザー光200nの照射が各軌道OB2を+Y側から-Y側に沿って行われる場合が例示されるが、レーザー光200nの照射が各軌道OB2を-Y側から+Y側に沿って行われてもよい。
【0152】
図26(a)~
図26(c)に示すように、1回目の分割照射パターン、2回目の分割照射パターン、3回目の分割照射パターンは、開始位置が1照射のスポット領域201nのスポット径Dnに相当する距離で互いにずれている。スポット領域201nのスポット径Dnは、引張応力を発生させたい2つの箇所に対応していてもよい。
【0153】
図26(a)に示すように、1回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット領域201nのスポット径Dnの3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201nが並ぶ。
図24(b)に示すように、2回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット領域201nのスポット径Dnの3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201nが並ぶ。
図24(c)に示すように、3回目の分割照射パターンでは、1照射のスポット領域201nのスポット径Dnの3倍に相当するピッチで軌道OB2に沿ってスポット領域201nが並ぶ。
【0154】
例えば、
図25に示すように、リング状のスポット領域201nが、軌道OB2-2に沿ってX方向に、スポット領域201nのスポット径Dnの3倍に対応するピッチで並ぶ照射パターンを考える。
【0155】
2照射目のレーザー光200n-2のスポット領域201nを照射すると、基板100の主面100bにおいて、
図27に点線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201nに重なる領域で圧縮応力が発生する。基板100の主面100bにおいて、
図27に一点鎖線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201nにXY方向内側で隣接する領域とXY方向外側で隣接する領域とで引張応力が発生する。
【0156】
3照射目のレーザー光200n-3のスポット領域201nを照射すると、基板100の主面100bにおいて、
図27に点線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201nに重なる領域で圧縮応力が発生する。基板100の主面100bにおいて、
図27に一点鎖線で囲って示すように、Z方向から透視した場合、スポット領域201nにXY方向内側で隣接する領域とXY方向外側で隣接する領域とで引張応力が発生する。
【0157】
これによっても、各回の分割照射において、時間的に隣接するスポット領域201nの空間的な距離を離すことができるため、時間的に隣接するスポット領域201n間の熱的な干渉を抑制しながらレーザー光200nの照射の時間間隔を短くする(又は照射の周波数を上げる)ことができる。
【0158】
上述の実施形態1,2及びそれぞれの変形例は、それぞれ互いに組み合わせておこなわれてよい。
【0159】
また、上述の実施形態1,2及びそれぞれの変形例は、貼合(接合)基板の剥離技術を用いた半導体装置1を製造する場合を例に示したが、貼合(接合)基板の剥離方法を、SOI(Silicon On Insulator)基板等の製造に用いてもよい。
【0160】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
1 半導体装置、2,100,800 基板、3~5,7,704 膜。