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特開2024-123950試験装置、試験方法、および試験プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123950
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】試験装置、試験方法、および試験プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/36 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G06F11/36 188
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031799
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下澤 昌史
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042HH07
5B042HH12
5B042HH49
(57)【要約】
【課題】試験の合否判定精度の向上を図ること。
【解決手段】試験装置は、試験対象に動作を実行させる命令および前記命令の順序と、動作に要求される第1期待値と、が規定された試験シナリオに従って、試験対象の試験を実行し、順序と対応付けられた動作に関する時系列な第1測定値である第1時系列データを試験対象から取得し、第1時系列データと、試験シナリオに従って動作に関する順序と対応付けられた時系列な第2測定値が規定された第2時系列データとに基づいて、第1測定値の第1測定時間と第2測定値の第2測定時間との対応関係を特定し、第1測定時間と第2測定時間との時間差に基づいて、第1測定時間を調整し、調整後の第1測定時間に対応する第1測定値と、調整後の第1測定時間での順序に対応する第1期待値と、に基づいて、試験対象についての試験の合否を判定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する試験装置であって、
前記プロセッサは、
試験対象に動作を実行させる命令および前記命令の順序と、前記動作に要求される第1期待値と、が規定された試験シナリオに従って、前記試験対象の試験を実行する試験処理と、
前記試験処理によって得られた前記順序と対応付けられた前記動作に関する時系列な第1測定値である第1時系列データを、前記試験対象から取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得された第1時系列データと、前記試験シナリオに従って前記動作に関する前記順序と対応付けられた時系列な第2測定値が規定された第2時系列データとに基づいて、前記第1測定値の第1測定時間と前記第2測定値の第2測定時間との対応関係を特定し、前記第1測定時間と前記第2測定時間との時間差に基づいて、前記第1測定時間を調整する調整処理と、
前記調整処理による調整後の第1測定時間に対応する前記第1測定値と、前記調整後の第1測定時間での前記順序に対応する前記第1期待値と、に基づいて、前記試験対象についての試験の合否を判定する判定処理と、
前記判定処理による判定結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試験装置であって、
前記判定結果は、前記調整後の第1測定時間に対応する前記第1測定値と前記調整後の第1測定時間での前記動作の前記順序に対応する前記第1期待値との第1比較結果と、前記時間差と、を含む、
ことを特徴とする試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載の試験装置であって、
前記試験シナリオには、前記順序に従った前記第1期待値の配列に要求される第2期待値と、が規定されており、
前記調整処理では、前記プロセッサは、前記第1時系列データと前記第2時系列データとの類似度を算出し、
前記判定処理では、前記プロセッサは、前記調整処理によって算出された類似度と、前記第2期待値と、に基づいて、前記試験の合否を判定する、
ことを特徴とする試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の試験装置であって、
前記判定結果は、前記類似度と前記第2期待値との第2比較結果を含む、
ことを特徴とする試験装置。
【請求項5】
請求項1に記載の試験装置であって、
前記調整処理では、前記プロセッサは、動的時間伸縮法に基づいて、前記対応関係を特定する、
ことを特徴とする試験装置。
【請求項6】
請求項3に記載の試験装置であって、
前記調整処理では、前記プロセッサは、動的時間伸縮法に基づいて、前記類似度を算出する、
ことを特徴とする試験装置。
【請求項7】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する試験装置による試験方法であって、
前記プロセッサは、
試験対象に動作を実行させる命令および前記命令の順序と、前記動作に要求される第1期待値と、が規定された試験シナリオに従って、前記試験対象の試験を実行する試験処理と、
前記試験処理によって得られた前記順序と対応付けられた前記動作に関する時系列な第1測定値である第1時系列データを、前記試験対象から取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得された第1時系列データと、前記試験シナリオに従って前記動作に関する前記順序と対応付けられた時系列な第2測定値が規定された第2時系列データとに基づいて、前記第1測定値の第1測定時間と前記第2測定値の第2測定時間との対応関係を特定し、前記第1測定時間と前記第2測定時間との時間差に基づいて、前記第1測定時間を調整する調整処理と、
前記調整処理による調整後の第1測定時間に対応する前記第1測定値と、前記調整後の第1測定時間での前記順序に対応する前記第1期待値と、に基づいて、前記試験対象についての試験の合否を判定する判定処理と、
前記判定処理による判定結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする試験方法。
【請求項8】
プロセッサに、
試験対象に動作を実行させる命令および前記命令の順序と、前記動作に要求される第1期待値と、が規定された試験シナリオに従って、前記試験対象の試験を実行する試験処理と、
前記試験処理によって得られた前記順序と対応付けられた前記動作に関する時系列な第1測定値である第1時系列データを、前記試験対象から取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得された第1時系列データと、前記試験シナリオに従って前記動作に関する前記順序と対応付けられた時系列な第2測定値が規定された第2時系列データとに基づいて、前記第1測定値の第1測定時間と前記第2測定値の第2測定時間との対応関係を特定し、前記第1測定時間と前記第2測定時間との時間差に基づいて、前記第1測定時間を調整する調整処理と、
前記調整処理による調整後の第1測定時間に対応する前記第1測定値と、前記調整後の第1測定時間での前記順序に対応する前記第1期待値と、に基づいて、前記試験対象についての試験の合否を判定する判定処理と、
前記判定処理による判定結果を出力する出力処理と、
を実行させることを特徴とする試験プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験対象を試験する試験装置、試験方法、および試験プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動試験を行う際には、事前に試験シナリオを作成する必要があり、試験シナリオには操作手順、並びに判定に用いる期待値、判定ポイントを記述する必要がある。上記試験シナリオを試験対象に入力し、時系列な出力波形データを取得し、出力波形データと該当する判定ポイント(時間)における期待値とを比較し、試験合否結果を出力する。
【0003】
特許文献1は、内燃機関において失火が発生したことを検知する失火検知方法を開示する。この失火検知方法は、内燃機関の排気温度を測定する測定工程と、測定工程によって測定された排気温度の対象波形と予め定められた参照波形とを相互相関が高くなるように同期させる同期工程と、該同期後の対象波形を同期後の参照波形に対して動的時間伸縮法に基づいてアライメントし、該アライメント後の対象波形と参照波形との差異に基づいて失火の有無を判定する判定工程とを有する。
【0004】
特許文献2は、装置において実行されるプログラムの動作を検証する検証システムを開示する。この検証システムでは、試験者は、UMLモデリングツール50(以下、ツール)を介して、検証方法を表すテスト仕様を例えばシーケンス図の形式で視覚的に認識可能に作成することができる。ツールを介して試験者により作成されたシーケンス図を表す情報は、ツールにおけるスクリプトの生成機能により、CANバスモニタが認識及び実行可能なテストスクリプトに変換される。CANバスモニタは、検証対象であるECUの動作を監視し、そのECUの実際の動作が、テストスクリプトが表すテスト仕様に合致するか否かを判断し、判断結果を表すテストレポートを外部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-97603号公報
【特許文献2】特開2010-15240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リアルタイムシミュレーション(特にハードウェアを含めたリアルタイムシミュレーション)の場合、全く同じ試験シナリオを実施したとしても、取得した出力波形データは完全に一致はしない。理由としては、ハードウェア要因であるレイテンシ、並びにシナリオを実行する処理精度(リアルタイム性能)による処理遅延が発生するためである。そのため、期待した判定ポイントからのズレが生じることで試験結果の不合格が発生してしまう。
【0007】
現状では、不合格となってしまった試験は再度試験シナリオの見直し(判定ポイントの調整)を行い、再度自動試験を実施することになる。または、不合格理由の原因説明を行い正しく試験として問題ないことを立証する必要がある。
【0008】
また、上記判定ポイントでの試験では、波形の特徴(形状)を自動試験項目に含めることができない。現状では、波形の特徴(形状)を含めた試験を行う際は取得したデータを可視化し、目視で波形の形状を判定することとなる。
【0009】
本発明は、試験の合否判定精度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明の一側面となる試験装置は、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する試験装置であって、前記プロセッサは、試験対象に動作を実行させる命令および前記命令の順序と、前記動作に要求される第1期待値と、が規定された試験シナリオに従って、前記試験対象の試験を実行する試験処理と、前記試験処理によって得られた前記順序と対応付けられた前記動作に関する時系列な第1測定値である第1時系列データを、前記試験対象から取得する取得処理と、前記取得処理によって取得された第1時系列データと、前記試験シナリオに従って前記動作に関する前記順序と対応付けられた時系列な第2測定値が規定された第2時系列データとに基づいて、前記第1測定値の第1測定時間と前記第2測定値の第2測定時間との対応関係を特定し、前記第1測定時間と前記第2測定時間との時間差に基づいて、前記第1測定時間を調整する調整処理と、前記調整処理による調整後の第1測定時間に対応する前記第1測定値と、前記調整後の第1測定時間での前記動作の前記順序に対応する前記第1期待値と、に基づいて、前記試験対象についての試験の合否を判定する判定処理と、前記判定処理による判定結果を出力する出力処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の代表的な実施の形態によれば、試験の合否判定精度の向上を図ることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、試験装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2図2は、試験装置の機能的構成例を示すブロック図である。
図3図3は、第1自動試験実行判定プロセスの一例を示す説明図である。
図4図4は、第1試験シナリオの一例を示す説明図である。
図5図5は、時系列データの一例を示す説明図である。
図6図6は、第1試験結果の一例を示す説明図である。
図7図7は、第2自動試験実行判定プロセスの一例を示す説明図である。
図8図8は、第2試験シナリオの一例を示す説明図である。
図9図9は、参照時系列データの一例を示す説明図である。
図10図10は、第2試験結果の一例を示す説明図である。
図11図11は、DTWによるデータマッピング例を示すグラフである。
図12図12は、試験装置による参照時系列データ生成処理手順例を示すフローチャートである。
図13図13は、試験装置による時系列データ生成処理手順例を示すフローチャートである。
図14図14は、試験装置による自動判定ポイント調整試験実行処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<試験装置のハードウェア構成例>
図1は、試験装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。試験装置100は、プロセッサ101と、記憶デバイス102と、入力デバイス103と、出力デバイス104と、通信インターフェース(通信IF)105と、を有する。プロセッサ101、記憶デバイス102、入力デバイス103、出力デバイス104、および通信IF105は、バス106により接続される。プロセッサ101は、試験装置100を制御する。記憶デバイス102は、プロセッサ101の作業エリアとなる。また、記憶デバイス102は、各種プログラムやデータを記憶する非一時的なまたは一時的な記録媒体である。記憶デバイス102としては、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリがある。入力デバイス103は、データを入力する。入力デバイス103としては、たとえば、キーボード、マウス、タッチパネル、テンキー、スキャナ、マイク、センサがある。出力デバイス104は、データを出力する。出力デバイス104としては、たとえば、ディスプレイ、プリンタ、スピーカがある。通信IF105は、ネットワークと接続し、データを送受信する。
【0014】
<試験装置100の機能的構成例>
図2は、試験装置100の機能的構成例を示すブロック図である。試験装置100は、自動試験実行部201と、判定部202と、第1通信部203と、試験シナリオ204と、時系列データ205と、試験結果206と、参照時系列データ207と、を有する。試験装置100は、試験対象210のシミュレーション動作の遅延を考慮に入れた判定ポイントを自動調整し、期待している判定ポイントで試験判定が可能な自動判定ポイント調整機能を有する。
【0015】
自動試験実行部201、判定部202および第1通信部203は、具体的には、たとえば、図1に示した記憶デバイス102に記憶されたプログラムをプロセッサ101に実行させることにより実現される機能である。試験シナリオ204、時系列データ205、試験結果206、および参照時系列データ207は、記憶デバイス102に記憶されるデータである。
【0016】
また、試験対象210は、試験装置100により試験される装置である。試験対象210は、経時的に動作する装置であればよい。試験対象210は、たとえば、自動車などの移動体である。本実施例では、自動車のシミュレーション動作試験を例に挙げて説明する。試験対象210は、試験対象210をシミュレーション動作させるソフトウェア211と、第2通信部212と、を有する。
【0017】
<第1自動試験実行判定プロセス>
図3は、第1自動試験実行判定プロセスの一例を示す説明図である。第1自動試験実行判定プロセス310は、試験装置100により実行されるプロセスであるが、上述した自動判定ポイント調整機能を適用しない場合のプロセスである。具体的には、たとえば、試験装置100は、第1自動試験実行判定プロセス310により、試験シナリオ実行処理311と、第1通信処理312と、時系列データ取得処理313と、試験判定処理314と、を実行する。
【0018】
試験シナリオ実行処理311は、自動試験実行部201により、第1試験シナリオ304を読み込んで、試験対象210を第1試験シナリオ304に記述された命令どおりに実行する処理である。
【0019】
第1通信処理312は、通信IF106である第1通信部203により、試験対象210と通信する処理である。
【0020】
時系列データ取得処理313は、試験シナリオ実行処理311により、試験対象210から第1通信処理312に受信された時系列データ205を取得する処理である。
【0021】
試験判定処理314は、判定部202により、時系列データ205と該当する判定ポイント(時間)における期待値とを比較して試験の合否を判定し、時系列データ205と第1試験結果306とを出力する処理である。
【0022】
試験対象環境320は、試験対象210における試験環境であり、ソフトウェア211により、通信IFである第2通信部212を制御して、第1通信部203との第2通信処理321を実行する。
【0023】
<第1試験シナリオ304>
図4は、第1試験シナリオ304の一例を示す説明図である。第1試験シナリオ304は、自動判定ポイント調整機能に対応していない試験シナリオである。第1試験シナリオ304は、試験対象210に動作を実行させる命令および命令の順序と、動作に要求される期待値と、が規定されたデータである。
【0024】
第1試験シナリオ304は、フィールドとして、シーケンスNo.401と、指示402と、設定値403と、期待値404と、を有する。
【0025】
シーケンスNo.401は、試験対象210に実行させる動作の順序を示す昇順の番号であり、昇順に指示402が実行される。シーケンスNo.401の値#(#は1以上の整数)を「シーケンス(#)」と表記する場合がある。なお、「s」は秒(sec)の略である(他の図も同様)。
【0026】
指示402は、試験対象210に動作を実行させる命令である。設定値403は、指示402において試験対象210に設定される値である。期待値404は、設定値403で指示402が与えられた場合に期待される値である。本例では、期待値404は、シーケンス(5)の指示402である故障を引き起こす命令(Fail_Injection)で故障発生の有無をFail_flagで示す。「0」は故障が発生していないことを示し、「1」は故障が発生したことを示す。
【0027】
第1試験シナリオ304をシーケンスNo.401順に説明する。
【0028】
シーケンス(1)
試験装置100は、試験対象210のIGN(イグニッション)をONにする。
【0029】
シーケンス(2)
5秒待機する。
【0030】
シーケンス(3)
アクセルペダルの踏み込み量を40%増加させる。
【0031】
シーケンス(4)
5秒待機する。
【0032】
シーケンス(5)
故障を引き起こす命令(Fail_Injection)をONにして、試験対象210に故障を発生させる。
【0033】
シーケンス(6)~(8)
JudgePointは、試験装置100が、設定値403に記述した累積時間の経過後に、故障を引き起こす命令(Fail_Injection)により試験対象210に故障が発生したか否かを判定する機能である。
【0034】
シーケンス(6)において、故障を引き起こす命令(Fail_Injection)がONになってから0.1秒経過後の期待値404を「0」とする。シーケンス(7)において、故障を引き起こす命令(Fail_Injection)がONになってから0.2秒経過後の期待値404は「1」とする。シーケンス(8)において、故障を引き起こす命令(Fail_Injection)がONになってから0.3秒経過後の期待値404は「0」とする。
【0035】
このように、第1試験シナリオ304は、シーケンス(5)の指示402である故障を引き起こす命令(Fail_Injection)がON(設定値403)になってから0.2秒後に、Fail_flagが0.1秒間で「1」となることを確認するための試験シナリオである。
【0036】
<時系列データ205>
図5は、時系列データ205の一例を示す説明図である。時系列データ205は、シーケンス(#)と対応付けられた指示402および設定値403による試験対象210の動作に関する時系列な測定値である。時系列データ205は、第1試験シナリオ304が試験対象210に入力された結果得られるログである。時系列データ205は、フィールドとして、シミュレーション時間501と、シーケンスNo.401と、判定値502と、を有する。
【0037】
シミュレーション時間501は、試験の開始からの現実の経過時間である。判定値502は、故障を引き起こす命令(Fail_Injection)による故障発生の有無(Fail_flag)を示す測定値である。
【0038】
時系列データ205は、シミュレーション時間501が10.5(s)~10.7(s)の0.3秒間で、シーケンス(5)の指示402である故障を引き起こす命令(Fail_Injection)がON(設定値403)になったことを示している(符号510)。
【0039】
また、時系列データ205は、シミュレーション時間501が10.5(s)以降で判定値502が「1」になるまでの期間を示している(符号520)。
【0040】
すなわち、時系列データ205では、試験対象210でのシーケンス(5)に処理遅延が発生したために、シーケンス(5)の指示402である故障を引き起こす命令(Fail_Injection)の処理に0.3(s)かかってしまったことを示している。そのため、時系列データ205は、期待値404とは異なるデータとなる。
【0041】
<第1試験結果306>
図6は、第1試験結果306の一例を示す説明図である。第1試験結果306は、フィールドとして、シーケンスNo.401と、指示402と、設定値403と、第1判定結果600と、を有する。第1判定結果600は、期待値404と判定値502とを比較した結果を示す。
【0042】
「-」は、指示402が「JudgePoint」ではないため、期待値404と判定値502との比較が行われていないことを示す。
【0043】
「OK」は、判定値502と期待値404とが一致したことを示す。「NG x(y)」は、判定値502と期待値404とが不一致であることを示す。「x」は判定値502を示し、「(y)」は期待値404を示す。
【0044】
すなわち、シーケンス(7)では、判定値502が「0」で期待値404が「1」であるため、不一致になったことを示し、シーケンス(8)では、判定値502が「1」で期待値404が「0」であるため、不一致になったことを示す。このため、試験結果は不合格となる。
【0045】
<第2自動試験実行判定プロセス>
図7は、第2自動試験実行判定プロセスの一例を示す説明図である。第2自動試験実行判定プロセス710は、試験装置100により実行されるプロセスであり、上述した自動判定ポイント調整機能を適用する場合のプロセスである。具体的には、たとえば、試験装置100は、第2自動試験実行判定プロセス710により、試験シナリオ実行処理311と、第1通信処理312と、時系列データ取得処理313と、自動判定ポイント調整処理711と、試験判定処理314と、を実行する。
【0046】
試験シナリオ実行処理311は、自動試験実行部201により、第2試験シナリオ704を読み込んで、試験対象210を第2試験シナリオ704に記述された命令どおりに実行する処理である。
【0047】
自動判定ポイント調整処理711は、判定部202により、参照時系列データ207を用いて時系列データ205における判定ポイント(時間)を自動調整する処理である。
【0048】
試験判定処理314は、判定部202により、自動判定ポイント調整処理711による調整結果に基づいて、時系列データ205と該当する判定ポイント(時間)における期待値とを比較して試験の合否を判定し、時系列データ205と第2試験結果706とを出力する処理である。
【0049】
<第2試験シナリオ704>
図8は、第2試験シナリオ704の一例を示す説明図である。第2試験シナリオ704は、自動判定ポイント調整機能に対応する試験シナリオである。第2試験シナリオ704は、フィールドとして、シーケンスNo.401と、指示402と、設定値403と、期待値404と、DTW期待値805と、を有する。第2試験シナリオ704におけるシーケンスNo.401、指示402、設定値403および期待値404の値は、第1試験シナリオ304と同一である。
【0050】
DTW期待値805は、設定値403で指示402が与えられた場合のシーケンスNo.401に従ったFail_flagの経時的変化を示す波形に供給される期待値である。DTWは、Dynamic Time Warping(動的時間伸縮法)の略称である。
【0051】
本例では、DTW期待値805が「0」であるため、参照時系列データ207におけるFail_flagの経時的変化を示す波形と第2試験シナリオ704におけるFail_flagの経時的変化を示す波形とが一致することが要求される。DTW期待値805は、0以上1以下の範囲で設定される。
【0052】
<参照時系列データ207>
図9は、参照時系列データ207の一例を示す説明図である。参照時系列データ207は、たとえば、事前に、第2試験シナリオ704と同一の試験シナリオで試験対象210をシミュレーションした結果得られた時系列データである。また、過去に合格と判定された試験結果が得られた時の時系列データでもよい。
【0053】
参照時系列データ207は、フィールドとして、シミュレーション時間501と、シーケンスNo.401と、参照判定値902と、を有する。
【0054】
参照判定値902は、参照時系列データ207の生成時において、故障を引き起こす命令(Fail_Injection)による故障発生の有無(Fail_flag)を示す測定値である。
【0055】
参照時系列データ207は、シーケンス(5)において処理遅延が発生していない。このため、シーケンス(5)が実行されたシミュレーション時間501である10.5(s)(符号910)から0.2秒後の10.7(s)に、参照判定値902が「1」になっている(符号920)。
【0056】
<第2試験結果706>
図10は、第2試験結果706の一例を示す説明図である。第2試験結果706は、フィールドとして、シーケンスNo.401と、指示402と、設定値403と、第2判定結果1000と、DTW判定結果1001と、を有する。第2判定結果1000は、期待値404と自動判定ポイント調整処理711による調整済みの判定値502とを比較した結果を示す。
【0057】
「OK(zs)」は、自動判定ポイント調整処理711による調整済みの判定値502と期待値404とが一致したことを示す。「z」は、時系列データ205に基づいてDTWによって補正されたJudgePointでの調整時間(s)である。
【0058】
すなわち、図5の時系列データ205において、シミュレーション時間501の10.6(s)、10.7(s)、10.8(s)の判定値502(0,0,1)(符号520)が期待値404と比較されたが、DTWの補正により、シミュレーション時間501の10.7(s)、10.8(s)、10.9(s)の判定値502(0,1,0)(符号530)で期待値404と比較される。本例の場合、シーケンス(6)~(8)において、DTWの補正によりJudgePointの判定タイミングが0.1(s)増加したため、第2判定結果1000に「z」(=+0.1)が調整時間(s)として追記されることになる。
【0059】
図6の第1試験結果306ではシーケンス(7)、(8)のJudgePointの第1判定結果600は「NG」であるが、第2試験結果706では、「OK」になる。
【0060】
DTW判定結果1001は、DTW値が第2試験シナリオ704のDTW期待値805と一致するか否かを示す指標値である。たとえば、DTW期待値805は「0」であるため、DTW値が「0」であれば、DTW判定結果1001は「OK」、DTW値が「0」よりも大きい値であれば、DTW判定結果1001は「NG」となる。
【0061】
なお、DTW期待値805は「0」に限定されず、0.0≦DTW期待値805<しきい値thのような範囲であってもよい。DTW値は0.0以上の値をとるため、しきい値thは0.0以上の任意の値を設定できるが、DTW値が0.0に近い値である場合も、DTW判定結果1001を「OK」にするために、しきい値thは0.5以下の値に設定するのが好ましい。
【0062】
ここで、DTW値の計算について説明する。2つの時系列データをx,yとし、時刻t(1≦t≦T)における時系列データx,yの値x,yで波形を表現することとする。時系列データxの時刻t=wと時系列データyの時刻t=wがアライメントによって対応することをw=(w,w)とし、波形のアライメント全体をK個の対応関係の集合をワーピングパスW={w,w,…,w}で表す。ここでw=(w ,w )(kは1≦k≦Kを満たす整数)とおくと、DTW値は下記式(1)で定義される。
【0063】
【数1】
【0064】
DTW値は、時系列データx,yの類似度を示す。DTW値は、DTW期待値805と同様、0以上1以下の範囲を取る。2つの時系列データx,yを、参照時系列データ207におけるFail_flag(参照判定値902)と、第2試験シナリオ704におけるFail_flag(判定値502)と、にすることにより、DTW値が算出される。
【0065】
DTW期待値805が小さくなるほど、参照時系列データ207におけるFail_flag(参照判定値902)の経時的変化を示す波形と第2試験シナリオ704におけるFail_flag(判定値502)の経時的変化を示す波形とが類似する。
【0066】
<DTWによるデータマッピング>
図11は、DTWによるデータマッピング例を示すグラフである。グラフ1100は、横軸1110と、第1縦軸1121と、第2縦軸1122と、を有する。横軸1110は、シミュレーション時間501である。第1縦軸1121は、参照時系列データ207の参照判定値902である。第2縦軸1122は、時系列データ205の判定値502である。丸図形近傍の(#)tt.tsは、シーケンス(#)のシミュレーション時間501の値tt.tを示す。たとえば、(5)10.6sは、シーケンス(5)のシミュレーション時間501の値10.6sを示す。
【0067】
第1波形W1および第2波形W2の重なりを避けるため、便宜的に第2波形W2を第1縦軸1121の方向にずらして表示する。
【0068】
第1波形W1は、参照時系列データ207における参照判定値902の経時的変化を示す。第1波形W1は、調整元の波形である。第2波形W2は、時系列データ205における判定値502の経時的変化を示す。第2波形W2は、調整先の波形である。第1波形W1および第2波形W2において、同一の丸図形で囲まれた点どうしがマッピングされる。
【0069】
DTWの実行により、具体的には、たとえば、第1波形W1における値が「0」のシーケンス(6)10.6sと第2波形W2における値が「0」のシーケンス(5)10.7sとの対応関係と、その時間差+1.0s(=10.7s-10.6s)と、が特定される。
【0070】
また、第1波形W1における値が「1」のシーケンス(7)10.7sと第2波形W2における値が「1」のシーケンス(6)10.8sとの対応関係と、その時間差+1.0s(=10.8s-10.7s)と、が特定される。
【0071】
また、第1波形W1における値が「0」のシーケンス(8)10.8sと第2波形W2における値が「0」のシーケンス(7)10.9sとの対応関係と、その時間差+1.0s(=10.8s-10.7s)と、が特定される。
【0072】
また、上記式(1)を用いて、シミュレーション時間501が横軸1110で示す9s~12sの区間内でのDTW値を計算すると、DTW値はDTW=0になる。
【0073】
このように、DTWを適用することにより、試験装置100は、第1波形W1および第2波形W2内の点の対応関係や第1波形W1および第2波形W2に関するDTW値を取得することができる。
【0074】
<参照時系列データ生成処理>
図12は、試験装置100による参照時系列データ生成処理手順例を示すフローチャートである。図12は、第2自動試験実行判定プロセスにおいて、試験装置100が、試験シナリオ実行処理311、第1通信処理312、時系列データ取得処理313により、シミュレーションで参照時系列データ207を生成する処理である。シミュレーション実行前の参照時系列データ207のエントリは空の状態である。
【0075】
試験装置100は、第2試験シナリオ704を読み込み、シーケンスNo.401、指示402および設定値403の解析(スクリプトファイルへの変換)を実行する(ステップS1201)。
【0076】
試験装置100は、自動試験の判定で用いる測定信号、本例では参照判定値902(Fail_flag)の測定を開始する(ステップS1202)。
【0077】
試験装置100は、シーケンスNo.401のすべてのシーケンスの実行が終了したか否かを判断する(ステップS1203)。シーケンスNo.401のすべてのシーケンスの実行が終了していない場合(ステップS1203:No)、現在のシミュレーション時間501(現シミュレーション時間)がシーケンスNo.実行時間以上であるか否かを判断する(ステップS1204)。
【0078】
現シミュレーション時間は、ステップS1202の開始時点では「0.0s」であり、ステップS1207において、シミュレーションにより1ステップ(0.1s)刻みで増加する。
【0079】
シーケンスNo.実行時間とは、現在までのシーケンスNo.401のシーケンス(以下、現シーケンス(#))の実行までの累積時間である。シーケンス(#)は、シーケンスNo.401の昇順に実行されるため、現シーケンス(#)は未実行でかつ最も若いシーケンスNo.401である。シーケンスNo.実行時間は、ステップS1202の開始時点では「0.0s」であり、シーケンス(#)の実行によりステップS1206で累積される。
【0080】
現シミュレーション時間がシーケンスNo.実行時間以上である場合(ステップS1204:Yes)、ステップS1205に移行する。一方、現シミュレーション時間がシーケンスNo.実行時間以上でない場合(ステップS1204:No)、ステップS1207に移行する。
【0081】
ステップS1202の開始時点では、現シミュレーション時間およびシーケンスNo.実行時間はともに「0.0s」であるため、ステップS1204に移行する。
【0082】
試験装置100は、現シーケンス(#)の指示402を実行する(ステップS1205)。ステップS1202の開始時点では、現シーケンス(#)は、シーケンス(1)である。したがって、試験装置100は、シーケンス(1)の指示402である「IGN」を設定値403である「ON」にする処理を実行する。これにより、参照判定値902が測定信号の値として出力される。
【0083】
シーケンス(1)は、指示402が故障を引き起こす命令(Fail_Injection)ではないため、故障が疑似発生しない。したがって、故障発生の有無を示す参照判定値902(Fail_flag)の値は「0」である。
【0084】
試験装置100は、現在のシーケンスNo.実行時間を更新する(ステップS1206)。具体的には、たとえば、試験装置100は、シーケンスNo.実行時間に、ステップS1204での現シーケンス(#)の指示402の実行に要した時間を加算することにより、シーケンスNo.実行時間を更新する。
【0085】
たとえば、シーケンス(1)に0.1s要したとする。この場合、シーケンスNo.実行時間は、「0.0s」から「0.1s」に更新される。
【0086】
つぎに、試験装置100は、現シミュレーション時間を1ステップ進める(ステップS1207)。具体的には、たとえば、試験装置100は、現シミュレーション時間に0.1s加算する。これにより、現シミュレーション時間は、「0.0s」から「0.1s」に更新される。
【0087】
つぎに、試験装置100は、現シミュレーション時間、現シーケンス(#)およびステップS1205の実行結果である測定信号の値を参照時系列データ207に書込む(ステップS1208)。現シミュレーション時間が「0.1s」の場合、現シミュレーション時間「0.1s」、現シーケンス(1)のシーケンスNo.401である「1」、および現シーケンス(1)の実行結果である測定信号の値「0」を、エントリとして参照時系列データ207に書込む。そして、ステップS1203に戻る。
【0088】
現シーケンス(#)のシーケンスNo.401は「1」であるため、全シーケンスの実行が終了していない(ステップS1203:No)。したがって、ステップS1204に移行する。
【0089】
ステップS1204では、現シミュレーション時間が「0.1s」であり、シーケンスNo.実行時間も「0.1s」であるため、ステップS1204を充足する(ステップS1204:Yes)。したがって、ステップS1205に移行する。
【0090】
ステップS1205では、試験装置100は、シーケンス(2)を実行する。この場合、試験装置100は、シーケンス(2)の指示402である「Wait」を設定値403である「5s」にする処理を実行する。これにより、参照判定値902が測定信号の値として出力される。
【0091】
シーケンス(2)も、指示402が故障を引き起こす命令(Fail_Injection)ではないため、故障が疑似発生しない。したがって、故障発生の有無を示す参照判定値902(Fail_flag)の値は「0」である。
【0092】
試験装置100は、現在のシーケンスNo.実行時間を更新する(ステップS1206)。シーケンス(2)の指示402である「Wait」は、待機する処理であるため、「Wait」の実行に要した時間は、設定値403の値「5s」になる。したがって、試験装置100は、シーケンスNo.実行時間である「0.1s」に、ステップS1204での現シーケンス(2)の指示402の実行に要した時間「5s」を加算することにより、シーケンスNo.実行時間を「5.1s」に更新する。
【0093】
つぎに、試験装置100は、現シミュレーション時間である「0.1s」に0.1s加算する(ステップS1207)。これにより、現シミュレーション時間は、「0.1s」から「0.2s」に更新される。
【0094】
つぎに、試験装置100は、現シミュレーション時間「0.2s」、現シーケンス(2)のシーケンスNo.401である「2」およびステップS1205の実行結果である測定信号の値「0」を、エントリとして参照時系列データ207に書込む(ステップS1208)。そして、ステップS1203に戻る。
【0095】
現シーケンス(#)のシーケンスNo.401は「2」であるため、全シーケンスの実行が終了していない(ステップS1203:No)。したがって、ステップS1204に移行する。
【0096】
ステップS1204では、現シミュレーション時間は「0.2s」であり、シーケンスNo.実行時間は「5.1s」であるため、ステップS1204を充足しない(ステップS1204:No)。したがって、ステップS1207に移行する。
【0097】
ステップS1207では、試験装置100は、現シミュレーション時間である「0.2s」に0.1s加算する(ステップS1207)。これにより、現シミュレーション時間は、「0.2s」から「0.3s」に更新される。
【0098】
試験装置100は、ステップS1204:No、S1207、S1208、S1203:Noのループを、現シミュレーション時間がステップS1207によりシーケンスNo.実行時間である「5.1s」以上になるまで継続することになる。
【0099】
このあと、現シミュレーション時間がシーケンスNo.実行時間である「5.1s」以上になれば(ステップS1204:Yes)、試験装置100は、ステップS1205~S1208を実行し、ステップS1203に戻る。
【0100】
最終的に、試験装置100は、全シーケンスの実行が終了したと判断した場合(ステップS1203:Yes)、参照時系列データ生成処理を終了する。これにより、図9に示したような参照時系列データ207が生成される。
【0101】
<時系列データ生成処理>
図13は、試験装置100による時系列データ生成処理手順例を示すフローチャートである。図13は、第2自動試験実行判定プロセスにおいて、試験装置100が、試験シナリオ実行処理311、第1通信処理312、時系列データ取得処理313により、試験対象210を用いたリアルタイムシミュレーションで時系列データ205を生成する処理である。試験対象210を用いたリアルタイムシミュレーション実行前の時系列データ205のエントリは空の状態である。
【0102】
試験装置100は、第2試験シナリオ704を読み込み、シーケンスNo.401、指示402および設定値403の解析(スクリプトファイルへの変換)を実行する(ステップS1301)。
【0103】
試験装置100は、自動試験の判定で用いる測定信号、本例では参照判定値902(Fail_flag)の測定を開始する(ステップS1302)。ステップS1302により、リアルタイムのシミュレーション時間501の経時が開始する。
【0104】
試験装置100は、ステップS1302の測定開始信号を試験対象210に送信する(C1)。
【0105】
試験装置100は、シーケンスNo.401のすべてのシーケンスの実行が終了したか否かを判断する(ステップS1303)。シーケンスNo.401のすべてのシーケンスの実行が終了していない場合(ステップS1303:No)、現在のシミュレーション時間501(現シミュレーション時間)がシーケンスNo.実行時間以上であるか否かを判断する(ステップS1204)。
【0106】
現シミュレーション時間は、図12とは異なり、ステップS1302の測定開始からの現実の経過時間である。ステップS1302の開始時点では「0.0s」であり、現実の時間経過に従って増加する。シーケンスNo.実行時間およびシーケンス(#)は、図12と同様である。シーケンスNo.実行時間は、ステップS1302の開始時点では「0.0s」であり、シーケンス(#)の実行によりステップS1306で累積される。
【0107】
現シミュレーション時間がシーケンスNo.実行時間以上である場合(ステップS1304:Yes)、ステップS1305に移行する。一方、現シミュレーション時間がシーケンスNo.実行時間以上でない場合(ステップS1304:No)、ステップS1303に移行する。
【0108】
ステップS1302の開始時点では、現シミュレーション時間およびシーケンスNo.実行時間はともに「0.0s」であるため、ステップS1305に移行する。
【0109】
試験装置100は、現シーケンス(#)の指示402を実行する(ステップS1305)。ステップS1302の開始時点では、現シーケンス(#)は、シーケンス(1)である。したがって、試験装置100は、シーケンス(1)の指示402である「IGN」を設定値403である「ON」にする処理を試験対象210に対して実行する。すなわち、試験装置100は、「IGN」を「ON」にする命令を試験対象210に送信する(C2)。
【0110】
試験対象210は、第2通信処理321により、試験装置100から測定開始信号を受信(C1)したあと、試験装置100から命令(C2)を受信する都度、ソフトウェア211により、命令(C2)に基づく動作を実行して、当該動作によって生成される測定信号の値を逐次読み出す(ステップS1310)。
【0111】
シーケンス(1)は、指示402が故障を引き起こす命令(Fail_Injection)ではないため、故障が疑似発生しない。したがって、故障発生の有無を示す判定値502(Fail_flag)の値は「0」である。試験対象210は、第2通信処理321により、読み出した測定信号の値を判定値502として試験装置100に送信する(C3)。
【0112】
つぎに、試験装置100は、測定結果(現シミュレーション時間、現シーケンス(#)およびステップS1310の実行結果である測定信号の値)をエントリとして時系列データ205に書込む(ステップS1306)。現シミュレーション時間が時間経過により「0.1s」になったとする。この場合、試験装置100は、現シミュレーション時間「0.1s」、現シーケンス(1)のシーケンスNo.401である「1」、および現シーケンス(1)の実行結果である測定信号の値「0」を、エントリとして時系列データ205に書込む。
【0113】
試験装置100は、現在のシーケンスNo.実行時間を更新する(ステップS1306)。具体的には、たとえば、試験装置100は、試験装置100から命令を送信(C2)してから測定信号の値を受信(C3)するまでの時間を現シーケンス(#)の指示402の実行に要した時間とし、シーケンスNo.実行時間に加算することにより、シーケンスNo.実行時間を更新する。
【0114】
たとえば、シーケンス(1)に0.1s要したとする。この場合、シーケンスNo.実行時間は、「0.0s」から「0.1s」に更新される。
【0115】
現シーケンス(#)のシーケンスNo.401は「1」であるため、全シーケンスの実行が終了していない(ステップS1303:No)。したがって、ステップS1304に移行する。
【0116】
ステップS1304では、現シミュレーション時間が「0.1s」であり、シーケンスNo.実行時間も「0.1s」であるため、ステップS1304を充足する(ステップS1304:Yes)。したがって、ステップS1305に移行する。
【0117】
ステップS1305では、試験装置100は、シーケンス(2)を実行する。この場合、試験装置100は、シーケンス(2)の指示402である「Wait」を設定値403である「5s」にする命令を試験対象210に送信する(C2)。
【0118】
シーケンス(2)も、指示402が故障を引き起こす命令(Fail_Injection)ではないため、故障が疑似発生しない。したがって、故障発生の有無を示す判定値502(Fail_flag)の値は「0」である。試験対象210は、読み出した測定信号の値を判定値502として試験装置100に送信する(C3)。
【0119】
なお、シーケンス(2)の指示402である「Wait」により、試験対象210は、設定値403である「5s」経過するまで待機し続ける。その間、試験対象210は、読み出した測定信号の値「0」を判定値502として試験装置100に送信し続けることになる(C3)。
【0120】
測定結果(現シミュレーション時間、現シーケンス(#)およびステップS1310の実行結果である測定信号の値)をエントリとして時系列データ205に書込む(ステップS1306)。現シミュレーション時間が時間経過により「0.2s」になったとする。この場合、試験装置100は、現シミュレーション時間「0.2s」、現シーケンス(1)のシーケンスNo.401である「2」、および現シーケンス(2)の実行結果である測定信号の値「0」を、エントリとして時系列データ205に書込む。
【0121】
試験装置100は、現在のシーケンスNo.実行時間を更新する(ステップS1307)。シーケンス(2)の指示402である「Wait」は、試験対象210を待機させる処理であるため、「Wait」の実行に要した時間は、設定値403の値「5s」になる。したがって、試験装置100は、シーケンスNo.実行時間である「0.2s」に、設定値403の値「5s」を加算することにより、シーケンスNo.実行時間を「5.1s」に更新する。そして、ステップS1303に戻る。
【0122】
現シーケンス(#)のシーケンスNo.401は「2」であるため、全シーケンスの実行が終了していない(ステップS1303:No)。したがって、ステップS1304に移行する。
【0123】
ステップS1304では、現シミュレーション時間は「0.2s」であり、シーケンスNo.実行時間は「5.1s」であるため、ステップS1304を充足しない(ステップS1304:No)。したがって、ステップS1303に移行する。
【0124】
試験装置100は、ステップS1304:No、S1303:Noのループを、現シミュレーション時間がシーケンスNo.実行時間である「5.1s」以上になるまで継続することになる。
【0125】
このあと、現シミュレーション時間が時間経過によりシーケンスNo.実行時間である「5.1s」以上になれば(ステップS1304:Yes)、試験装置100は、ステップS1305~S1307を実行し、ステップS1303に戻る。
【0126】
最終的に、試験装置100は、全シーケンスの実行が終了したと判断した場合(ステップS1303:Yes)、時系列データ生成処理を終了する。これにより、図5に示したような時系列データ205が生成される。
【0127】
<自動判定ポイント調整試験実行処理>
図14は、試験装置100による自動判定ポイント調整試験実行処理手順例を示すフローチャートである。図14は、第2自動試験実行判定プロセスにおいて、試験装置100が、自動判定ポイント調整処理711および試験判定処理314により、参照時系列データ207と図13で取得した時系列データ205とを用いて、自動判定ポイント調整試験を実行する処理である。なお、図14は、1種類の測定信号について自動判定ポイント調整試験を実行する例を示すが、1つの第2試験シナリオ704に測定信号が複数種類存在する場合は、測定信号の種類数分、自動判定ポイント調整試験が実行される。
【0128】
試験装置100は、参照時系列データ207と図13で取得した時系列データ205とを読み込む(ステップS1401)。
【0129】
試験装置100は、参照時系列データおよび時系列データの各々から調整対象となるJudge Pointの時系列な値を取得する(ステップS1402)。具体的には、たとえば、試験装置100は、参照時系列データ207のシミュレーション時間501が0.1s~12.0sにおける参照判定値902と、時系列データ205のシミュレーション時間501が0.1s~12.0sにおける判定値502と、を取得する。
【0130】
試験装置100は、DTWアルゴリズムを用いて、Judge Pointごとに調整先の時間および調整元からの調整時間を特定し、DTW値を算出する(ステップS1403)。DTWアルゴリズムにより、調整元の時間と調整先の時間とが対応付けられる。
【0131】
調整元とは、上述したように、参照時系列データ207における時系列なJudge Pointの参照判定値902である。調整元の時間は、その参照判定値902におけるシミュレーション時間501である。図11の例では、第1波形W1のシーケンス(6)10.6s、シーケンス(7)10.7s、シーケンス(8)10.8sが、調整元の時間である。
【0132】
調整先とは、上述したように、時系列データ205における時系列なJudge Pointの判定値502であり、調整先の時間は、その判定値502におけるシミュレーション時間501である。図11の例では、第2波形W2のシーケンス(5)10.7s、シーケンス(6)10.8s、シーケンス(7)10.9sが、調整先の時間である。
【0133】
調整元からの調整時間は、調整先の時間から対応付けされた調整元の時間を引いた時間差である。
【0134】
試験装置100は、時間調整されたJudge Pointで第2試験シナリオ704の期待値404と時系列データ205の判定値502とを比較して第2判定結果1000を生成する(ステップS1404)。
【0135】
時間調整されたJudge Pointは、調整元である参照時系列データ207におけるシーケンス(6)~(8)に対応する調整先である時系列データ205におけるシーケンス(5)~(7)である。このシーケンス(5)~(7)の判定値502は、(0,1,0)である。第2試験シナリオ704におけるシーケンス(6)~(8)の期待値404は(0,1,0)である。
【0136】
したがって、参照時系列データ207におけるシーケンス(6)から時間調整後の時系列データ205におけるシーケンス(5)の判定値502は「0」であり、第2試験シナリオ704におけるシーケンス(6)の期待値404は「0」であるため、両者は一致する。
【0137】
また、調整元である参照時系列データ207におけるシーケンス(6)から調整先である時系列データ205におけるシーケンス(5)への調整時間は、+1.0sである。したがって、第2試験シナリオ704におけるシーケンス(6)の第2判定結果1000の値は、「OK+1.0s」になる。
【0138】
また、参照時系列データ207におけるシーケンス(7)から時間調整後の時系列データ205におけるシーケンス(6)の判定値502は「1」であり、第2試験シナリオ704におけるシーケンス(7)の期待値404は「1」であるため、両者は一致する。
【0139】
また、調整元である参照時系列データ207におけるシーケンス(7)から調整先である時系列データ205におけるシーケンス(6)への調整時間は、+1.0sである。したがって、第2試験シナリオ704におけるシーケンス(7)の第2判定結果1000の値は、「OK+1.0s」になる。
【0140】
また、参照時系列データ207におけるシーケンス(8)から時間調整後の時系列データ205におけるシーケンス(7)の判定値502は「0」であり、第2試験シナリオ704におけるシーケンス(8)の期待値404は「0」であるため、両者は一致する。
【0141】
また、調整元である参照時系列データ207におけるシーケンス(8)から調整先である時系列データ205におけるシーケンス(7)への調整時間は、+1.0sである。したがって、第2試験シナリオ704におけるシーケンス(8)の第2判定結果1000の値は、「OK+1.0s」になる。
【0142】
試験装置100は、DTW期待値805とDTW値とを比較して、DTW判定結果1001を生成する(ステップS1405)。図8に示したように、DTW期待値805は「0」である。また、第1波形W1および第2波形W2はDTWにより一致するため、DTW値=「0」になる。したがって、DTW期待値805とDTW値とは一致するため、DTW判定結果1001は「OK」になる。
【0143】
試験装置100は、図10に示したように、第2試験結果706を出力する(ステップS1406)。
【0144】
このように、本実施例によれば、試験装置100は、処理遅延を考慮に入れた判定ポイントを自動調整し、期待している判定ポイントで試験判定を行う。具体的には、試験装置100は、時系列データ同士の類似度を測るDTWアルゴリズムを用いることで判定ポイントの自動調整を行い、算出したDTW値を試験判定に用いる。したがって、試験精度の向上を図ることができる。
【0145】
具体的には、試験対象210のハードウェア要因であるレイテンシ、並びに試験シナリオを実行する際の処理遅延が発生した場合でも、時系列データの波形の特徴も自動試験項目に含まれているため、判定ポイントのずれによる試験結果の誤判定(不合格)を抑制することができる。また、試験結果の誤判定(不合格)が抑制されたことにより、試験結果の誤判定(不合格)によって生じる試験シナリオの見直しや不合格理由の原因究明、再試験の実施といった無駄な作業が抑制される。したがって、テスト期間の短縮化を図ることができる。
【0146】
特に車両開発におけるV字プロセスでは、前段で行った抽象度の高いシミュレーション環境(PCシミュレータ)で行った試験で用いた第2試験シナリオ704と当該試験の出力結果である参照時系列データ207とを、後段まで活用することで、プロセス全体での一気通貫な自動試験構成を実現することが可能となる。
【0147】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。たとえば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0148】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0149】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0150】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0151】
100 試験装置
101 プロセッサ
102 記憶デバイス
201 自動試験実行部
202 判定部
203 第1通信部
204 試験シナリオ
205 時系列データ
206 試験結果
207 参照時系列データ
210 試験対象
211 ソフトウェア
212 第2通信部
304 第1試験シナリオ
306 第1試験結果
310 第1自動試験実行判定プロセス
311 試験シナリオ実行処理
312 第1通信処理
313 時系列データ取得処理
314 試験判定処理
320 試験対象環境
321 第2通信処理
704 第2試験シナリオ
706 第2試験結果
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