IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ハイブリッド車両 図1
  • 特開-ハイブリッド車両 図2
  • 特開-ハイブリッド車両 図3
  • 特開-ハイブリッド車両 図4
  • 特開-ハイブリッド車両 図5
  • 特開-ハイブリッド車両 図6
  • 特開-ハイブリッド車両 図7
  • 特開-ハイブリッド車両 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123973
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20240905BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20240905BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240905BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20240905BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240905BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20240905BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240905BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/442 ZHV
B60W10/06 900
B60W20/13
B60L50/61
B60L7/14
B60L50/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031831
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 徹
(72)【発明者】
【氏名】西村 弘
(72)【発明者】
【氏名】古田 賢寛
(72)【発明者】
【氏名】牧村 健
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲平
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB09
3D202BB11
3D202BB15
3D202CC15
3D202CC16
3D202CC52
3D202CC58
3D202CC59
3D202DD00
3D202DD18
3D202DD22
3D202DD45
3D202FF12
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CB03
5H125EE27
5H125EE62
(57)【要約】
【課題】回生発電による蓄電池への充電を適切に行えるハイブリッド車両を提供する。
【解決手段】車両1の減速走行時に走行駆動用のフロントモータ4により発電して駆動用バッテリ11を充電する回生制動モードと、エンジン2に燃料供給を行わずにモータジェネレータ9によりエンジン2を強制駆動する第1モータリングモードと、エンジン2に燃料供給して燃焼しつつモータジェネレータ9によりエンジン2を強制駆動する第2モータリングモードとを切り替え可能な車両1において、回生制動モード時に駆動用バッテリ11の充電率が第1所定値以上の場合に第1モータリングモードを実施し、回生制動モード時に駆動用バッテリ11の充電率が第1所定値未満かつ第1所定値よりも小さい第2所定値以上の場合に第2モータリングモードを実行させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な第1電気モータと、前記車両を走行させるとともに減速走行時に回生発電可能な第2電気モータと、前記第2電気モータに電力を供給する蓄電池と、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータを作動制御する制御部と、を有するハイブリッド車両であって、
前記蓄電池の充電量を取得する充電量検出部を備え、
前記制御部は、
前記第2電気モータで発電し前記蓄電池を充電することで前記車両を減速させる回生制動モードと、
前記内燃機関に燃料供給を行わず前記第1電気モータを駆動することで前記内燃機関を強制駆動させて前記第2電気モータで発電した電力を消費する第1モータリングモードと、
前記内燃機関に燃料供給を行い燃焼させつつ前記第1電気モータを駆動することで前記内燃機関を強制駆動させて前記第2電気モータで発電した電力を消費する第2モータリングモードと、を切り替え可能であり、
前記回生制動モード時に前記蓄電池の充電量が第1所定値以上の場合に前記第1モータリングモードを実施し、前記回生制動モード時に前記蓄電池の充電量が前記第1所定値未満かつ前記第1所定値よりも小さい第2所定値以上の場合に前記第2モータリングモードを実施する
ことを特徴とするハイブリッド車両。
【請求項2】
前記車両が走行する路面の勾配を取得する勾配取得部を備え、
前記制御部は、前記回生制動モード時に、前記路面の勾配に基づいて前記第1所定値及び前記第2所定値を変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記制御部は、
前記路面の勾配が上り勾配の場合には、平地に比べて前記第1所定値を大きく設定し、
前記路面の勾配が下り勾配の場合には、平地に比べて前記第1所定値を小さく設定する
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1モータリングモードが所定時間継続した場合に、前記第2モータリングモードに切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1モータリングモードにおける前記内燃機関の回転速度に応じて前記所定時間を変更する
ことを特徴とする請求項4に記載のハイブリッド車両。
【請求項6】
前記内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化装置と、前記排気浄化装置に設けられる電気ヒータと、前記排気浄化装置の温度を取得する温度取得手段と、を有し、
前記制御部は、前記排気浄化装置の温度が所定温度以下の場合に前記電気ヒータを作動させ、
前記排気浄化装置の温度が前記所定温度以下で前記第1モータリングモードが行われる場合、前記所定温度以下で前記第1モータリングモードが行われない場合に比べ前記電気ヒータの出力を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両における回生発電の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年開発されているハイブリッド車において、内燃機関と、内燃機関により駆動されて発電する発電機と、発電機から電力を供給されて充電可能な駆動用バッテリ(蓄電池)と、駆動用バッテリまたは発電機から電力を供給されて走行駆動輪を駆動する駆動用モータと、を備えた車両が知られている。
上記のようなハイブリッド車では、発電機により発電された電力は、駆動用バッテリや駆動用モータに供給される。また、車両減速時においては、駆動用モータによって回生発電が行われ、発電された電力が駆動用バッテリに供給されて充電可能となっている。回生発電を行うことで駆動用モータによって車両に制動力が付与される(回生制動)。
【0003】
特許文献1に記載されているように、回生制動時に駆動用バッテリが満充電付近であると、駆動用モータによって発電した電力を駆動用バッテリに充電させることができないので、エンジンを例えば発電機で駆動して電力を消費するモータリングを行うことで回生制動を可能にする技術が知られている。
また、特許文献1には、モータリングとして、エンジンに燃料を供給せずに燃焼を停止させた状態で発電機(モータ発電機)によって駆動するといったファイアリングを伴わないモータリングと、エンジンに燃料を供給して燃焼を維持しつつ発電機によってエンジンを駆動するといったファイアリングを伴うモータリングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-83573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、駆動用バッテリの充電量が所定以上(満充電付近)の状態で回生制動を行う際、ファイアリングを伴わないモータリングが所定時間継続した場合に、ファイアリングを伴うモータリングに切り替えるように制御している。なお、ファイアリングを伴うモータリングは、ファイアリングを伴わないモータリングに比べエンジンフリクションが低下するため、モータリングによる消費電力が低下する。
【0006】
しかしながら、駆動用バッテリの充電量が所定以上の状態でファイアリングを伴わないモータリングを行いつつ回生制動を行うと、ファイアリングを伴わないモータリングが所定時間継続しファイアリングを伴うモータリングに切り替わる場合があり、回生制動力が変化する可能性がある。
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、ファイアリングを伴わないモータリングが長時間継続することを抑制しつつ回生発電による蓄電池への充電を適切に行えるハイブリッド車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、本発明のハイブリッド車両は、車両に搭載される内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な第1電気モータと、前記車両を走行させるとともに減速走行時に回生発電可能な第2電気モータと、前記第2電気モータに電力を供給する蓄電池と、前記第1電気モータ及び前記第2電気モータを作動制御する制御部と、を有するハイブリッド車両であって、前記蓄電池の充電量を取得する充電量検出部を備え、前記制御部は、前記第2電気モータで発電し前記蓄電池を充電することで前記車両を減速させる回生制動モードと、前記内燃機関に燃料供給を行わず前記第1電気モータを駆動することで前記内燃機関を強制駆動させて前記第2電気モータで発電した電力を消費する第1モータリングモードと、前記内燃機関に燃料供給を行い燃焼させつつ前記第1電気モータを駆動することで前記内燃機関を強制駆動させて前記第2モータで発電した電力を消費する第2モータリングモードと、を切り替え可能であり、前記回生制動モード時に前記蓄電池の充電量が第1所定値以上の場合に前記第1モータリングモードを実施し、前記回生制動モード時に前記蓄電池の充電量が前記第1所定値未満かつ前記第1所定値よりも小さい第2所定値以上の場合に前記第2モータリングモードを実施することを特徴とする。
【0008】
これにより、回生制動モード時に蓄電池の充電量が第1所定値以上の場合に、燃料供給を行わない第1モータリングモードを行うことで、内燃機関のフリクションを大きくし、第1電気モータにより大きく電力消費させて回生制動力を大きく確保することができる。また、回生制動モード時に蓄電池の充電量が第1所定値未満かつ第2所定値以上の場合に、燃料供給を行う第2モータリングモードを行うことで、蓄電池の充電量が第1所定値以上となることを抑制しつつ回生制動力を確保することができる。
【0009】
好ましくは、前記車両が走行する路面の勾配を取得する勾配取得部を備え、前記制御部は、前記回生制動モード時に、前記路面の勾配に基づいて前記第1所定値及び前記第2所定値を変更するとよい。
これにより、回生制動モード時に路面の勾配によって変化する発電電力に応じて、第1所定値及び第2所定値を変更して、蓄電池が満充電付近となることを抑制しつつ回生制動力の確保をより効果的に行うことができる。
【0010】
好ましくは、前記制御部は、前記路面の勾配が上り勾配の場合には、平地に比べて前記第1所定値を大きく設定し、前記路面の勾配が下り勾配の場合には、平地に比べて前記第1所定値を小さく設定するとよい。
これにより、路面の勾配が上り勾配の場合には車両が減速し易くなり、蓄電池が満充電となり難いため、第1所定値を大きく設定することで、第1モータリングモードの実行機会を減らす。路面の勾配が下り勾配の場合には車両が減速し難くなり、蓄電池が満充電となり易いため、、第1所定値を小さく設定することで、第1モータリングモードの実行機会を増やす。以上により、路面の勾配に対応して、第1モータリングモードが長時間継続されることを抑制しつつ充電率が満充電付近となることを抑制し、回生制動力の確保をより効果的に行うことができる。
【0011】
好ましくは、前記制御部は、前記第1モータリングモードが所定時間継続した場合に、前記第2モータリングモードに切り替えるとよい。
これにより、第1モータリングモードが所定時間を超えて継続されることを抑制し、エンジンの強制回転によって発生するオイル上がりを抑制することができる。
好ましくは、前記制御部は、前記第1モータリングモードにおける前記内燃機関の回転速度に応じて前記所定時間を変更するとよい。
【0012】
これにより、第1モータリングモードにおけるオイル上がりを効果的に抑制することができる。
好ましくは、前記内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化装置と、前記排気浄化装置に設けられる電気ヒータと、前記排気浄化装置の温度を取得する温度取得手段と、を有し、前記制御部は、前記排気浄化装置の温度が所定温度以下の場合に前記電気ヒータを作動させ、前記排気浄化装置の温度が前記所定温度以下で前記第1モータリングモードが行われる場合、前記所定温度以下で前記第1モータリングモードが行われない場合に比べ前記電気ヒータの出力を大きくするとよい。
【0013】
これにより、排気浄化装置の温度が所定温度以下の場合に、第1モータリングモードが行なわれる際は、電気ヒータの出力を大きくすることで、排気浄化装置の温度低下を抑制して排気浄化性能を向上させるとともに、電気ヒータによって電力を消費することで蓄電池の充電量が満充電となることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のハイブリッド車両によれば、回生制動モードにおいて、蓄電池の充電量に応じて、燃焼が行われずに回生制動力を大きく確保できる第1モータリングモードと、燃焼を行う第2モータリングモードとに切り替えるので、第1モータリングモードが長時間継続することを抑制しつつ回生発電による蓄電池への充電を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るハイブリッド車の概略構成図である。
図2】本実施形態におけるエンジンの吸排気系の概略構成図である。
図3】モータリングモードの切替制御の説明図である。
図4】エンジン回転速度に基づく第1所定時間の設定用のマップの一例である。
図5】スロットル開度に基づく第1所定時間の設定用のマップの一例である。
図6】電気ヒータの出力設定用マップの一例である。
図7】エンジン回転速度に基づく第2所定時間の設定用のマップの一例である。
図8】スロットル開度に基づく第2所定時間の設定用のマップの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のハイブリッド車の作動制御装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッド車両(以下、車両1という)の走行駆動系の概略構成図である。
本発明の一実施形態における車両1は、エンジン2(内燃機関)の出力によってモータジェネレータ9(第1電気モータ)を駆動して発電するとともに、車輪を駆動する電動のフロントモータ4(第2電気モータ)を備えたプラグインハイブリッド車やハイブリッド車等の車両である。
【0017】
エンジン2は、フロントトランスアクスル7を介して前輪3の駆動軸8を駆動可能であるとともに、フロントトランスアクスル7を介してモータジェネレータ9を駆動して発電させることが可能となっている。また、エンジン2と前輪3とは、フロントトランスアクスル7内に配置されたクラッチ16を介して接続されている。
フロントモータ4は、コントロールユニット20を介して、車両1に搭載された駆動用バッテリ11(蓄電池)やモータジェネレータ9から電力を供給されて駆動し、フロントトランスアクスル7を介して前輪3の駆動軸8を駆動する。
【0018】
モータジェネレータ9によって発電された電力は、駆動用バッテリ11を充電可能であるとともに、フロントモータ4に電力を供給可能である。駆動用バッテリ11は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成されている。また、駆動用バッテリ11には、駆動用バッテリ11の充電率(SOC)を検出する充電率検出部11a(充電量検出部)を備えている。
【0019】
コントロールユニット20(制御部)は、走行モード、フロントモータ4の出力、モータジェネレータ9の発電量及び出力、エンジン2における燃料噴射量及び燃料噴射時期、フロントトランスアクスル7におけるクラッチ16の断接等を制御する機能を有する。走行モードは、EV走行モード、エンジン走行モード、パラレル走行モード、シリーズ走行モードを含む。
【0020】
コントロールユニット20は、車両1の総合的な制御を行うための制御装置である。コントロールユニット20は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)及びタイマ等を含んで構成される。
EVモードでは、エンジン2を停止し、モータ46を駆動して走行させる。
シリーズモードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を切断し、エンジン2によりモータジェネレータ9を駆動させることで発電を行うとともに、フロントモータ4を駆動して走行させる。なお、シリーズモードでは、エンジン2の回転速度を効率のよい値に設定する。
【0021】
パラレルモードでは、フロントトランスアクスル7のクラッチ16を接続し、エンジン2及びフロントモータ4の動力を伝達して前輪3を駆動させる。
コントロールユニット20は、例えば、高速領域のように、エンジン2の効率のよい領域では、走行モードをパラレルモードとする。また、パラレルモードを除く領域、即ち中低速領域では、駆動用バッテリ11の充電率SOC(充電量に相当)に基づいてEVモードとシリーズモードとの間で切換える。
【0022】
図2は、エンジン2の吸排気系の概略構成図である。エンジン2は、例えば多気筒の内燃機関である。図2では簡略して1つの気筒のみ記載している。
エンジン2は、各気筒の吸気ポート31に設けられた燃料噴射弁32から、任意の噴射時期及び噴射量で各気筒の吸気ポート31内に燃料を噴射し、点火プラグ34によって点火可能な構成となっている。
【0023】
エンジン2の吸気通路33には、新気の流量を調整するためのスロットルバルブ30が設けられている。
エンジン2の排気通路40には、例えば三元触媒のような排気浄化装置41が備えられている。排気浄化装置41には、電気ヒータ42が備えられている。また、排気浄化装置の温度を検出する温度センサ43(温度取得手段)が備えられている。
【0024】
排気浄化装置41の上流側の排気通路40には、排気浄化装置41に隣接してLAFS(リニア空燃比センサ)44が備えられている。LAFS44はその検出値が目標空燃比、例えば理論空燃比を示す値になるように燃料噴射量をフィードバック制御するために使用される。
車両1には、車両1の走行路の勾配を取得する勾配取得部45が備えられている。勾配取得部45は、例えば車体に備えられた傾斜角センサでもよいし、車両の位置情報に基づいて外部データベース等から取得するものでもよい。
【0025】
コントロールユニット20は、エンジン2の目標出力トルクに基づいてスロットルバルブ30の目標開度を演算し、スロットルバルブ30を制御する。
また、コントロールユニット20は、車両の減速走行時において前輪3の回転力によりフロントモータ4を強制駆動して発電(回生発電)させるとともに、前輪3に制動力を付与させる回生制動を実行する回生制動モードが可能になっている。
【0026】
なお、回生制動モードにおける回生制動力は、シフトレバーの選択操作によって変更することができる。
更に、コントロールユニット20は、車両減速走行時における回生制動モードにおいて、例えば駆動用バッテリ11の充電率が満充電付近の所定値以上になった場合に、モータジェネレータ9に電力を供給して作動させエンジン2を回転駆動させるモータリングモードが可能である。
【0027】
モータリングモードでは、モータジェネレータ9によりエンジン2を駆動することで電力消費される。これにより、駆動用バッテリ11の充電率が満充電付近であっても回生制動力を確保することができる。
コントロールユニット20は、モータリングモードにおいて、駆動用バッテリ11の充電率SOCとフロントモータ4における回生発電量とに応じてモータジェネレータ9を制御してモータリングによるエンジン回転速度(モータリング速度)を制御する。例えばフロントモータ4における回生発電量はコントロールユニット20から入力すればよい。
【0028】
更に、本実施形態では、モータリングモードについて、燃料噴射を完全に停止した上でモータジェネレータ9によりエンジン2を回転駆動させる第1モータリングモードと、燃料噴射を完全に停止せずに燃焼を維持した上でモータジェネレータ9によりエンジン2を回転駆動させる第2モータリングモードと、に切り替え可能である。
以下、モータリングモードの詳細な制御について説明する。
【0029】
図3は、モータリングモードの切替制御の説明図である。
例えは図3の道路勾配の平地に示すように、コントロールユニット20は、回生制動要求時(回生制動モード時)に、駆動用バッテリ11の充電率SOCが満充電(100%)に近い第1所定値SOC1a(例えば90%)以上の場合に、燃料噴射を完全に停止する第1モータリングモードを実行させる。
【0030】
また、コントロールユニット20は、回生制動要求時に、駆動用バッテリ11の充電率SOCが第1所定値SOC1aより低い第2所定値SOC2a(例えば80%)以上かつ第1所定値SOC1a未満である場合には、燃料噴射を抑えて燃焼を維持する第2モータリングモードを実行させる。なお、本実施形態における第2モータリングモードでは、モータジェネレータ9によりエンジン2を燃焼時の回転と同一方向に回転(正回転)させる。エンジン2の燃焼による回転よりもモータジェネレータ9によって高回転で駆動することで、モータジェネレータ9において電力消費される。
【0031】
回生制動モード時に駆動用バッテリ11の充電率SOCが第2所定値SOC2a未満である場合には、モータリングを行わずに回生発電を行う通常モードになる。
このように、本実施形態では、モータリングを実行する際に、駆動用バッテリ11の充電率SOCに基づいて第1モータリングモードと第2モータリングモードとを切り替える。
【0032】
これにより、回生制動モードにおいて、駆動用バッテリ11の充電率が満充電に近い第1所定値SOC1a以上である場合に、エンジン2への燃料供給を停止する第1モータリングモードを実行することで、エンジン2のフリクションを大きくすることで、モータジェネレータ9によるエンジン2の強制駆動により電力を大きく消費し、回生制動力を大きく確保することができる。
【0033】
また、駆動用バッテリ11の充電率SOCが第1所定値SOC1aよりも低い第2所定値SOC2a以上かつ第1所定値SOC1a未満である場合には、エンジン2への燃料供給を抑えて燃焼を維持する第2モータリングモードを実行することで、駆動用バッテリ11の充電率が第1所定値SOC1a以上となることを抑制しつつ回生制動力を確保することができる。これにより、第1モータリングモードが長時間継続することを抑制することができる。また、第2モータリングモードにより燃焼を維持させることで、第2モータリングモード中における排気温度の低下を抑制して排気浄化装置41における排気浄化性能を維持させることができる。これにより、第2モータリングモードから例えばアクセルを加速操作した際に加速開始直後より排気浄化性能を確保することが可能になる。
【0034】
更に、コントロールユニット20は、道路勾配に基づいて第1所定値SOC1及び第2所定値SOC2を変更させるとよい。
例えば図3に示すように、上り勾配である場合には、第1所定値SOC1bを平地での第1所定値SOC1aより大きい値にするとともに、第2所定値SOC2bを平地での第2所定値SOC2aより大きい値にする。
【0035】
また、下り勾配である場合には、第1所定値SOC1cを平地での第1所定値SOC1aより小さい値にするとともに、第2所定値SOC2cを平地での第2所定値SOC2aより小さい値にする。
このように、回生制動モード時に、路面の勾配によって変化する発電電力に基づいて第1所定値SOC1及び第2所定値SOC2を変更することで、第1モータリングモード及び第2モータリングモードの切り替えを適切に行って、充電率が満充電付近となることを抑制しつつ回生制動力の確保をより効果的に行うことができる。
【0036】
特に、車両1が減速し易くなり必要な回生制動力が小さくなる上り勾配の場合には、第1モータリングモードの実行機会を減らしても駆動用バッテリ11の充電率が満充電となり難いため、平地に比べて第1所定値SOC1bが大きく設定される。また、車両1が減速し難くなり必要な回生制動力が大きくなる下り勾配の場合には、駆動用バッテリ11の充電率が満充電となり易いため第1モータリングモードの実行機会を増やすように平地に比べて第1所定値SOC1cが小さく設定される。同様に、上り勾配の場合には、第2モータリングモードの実行機会を減らしても駆動用バッテリ11の充電率が第1所定値SOC1となり難いため、平地に比べて第2所定値SOC2bが大きく設定され、エンジン2の始動を抑制する。下り勾配の場合には、駆動用バッテリ11の充電率が第1所定値SOC1となり易いため第2モータリングモードの実行機会を増やすように平地に比べて第2所定値SOC2cが小さく設定される。
【0037】
更に、コントロールユニット20は、上記のように回生制動モードにおいて駆動用バッテリ11の充電率に応じて第1モータリングモードと第2モータリングモードとの切り替えを行うだけでなく、第1モータリングモードが第1所定時間t1(所定時間)継続した場合に第2モータリングモードに切り替える。
図4は、エンジン回転速度に基づく第1所定時間t1の設定用のマップの一例である。図5は、スロットル開度に基づく第1所定時間t1の設定用のマップの一例である。
【0038】
コントロールユニット20は、図4に示すようなマップよりエンジン回転速度に基づいて演算した第1所定時間t1と、図5に示すようなスロットル開度に基づいて演算したt1係数を積算して求めた値を最終的な第1所定時間t1とする。
図4に示すように第1モータリングモード時にエンジン回転速度(モータリング速度)が増加するに伴って第1所定時間t1を減少させることで、モータリング時間(第1モータリング時間)が減少するように設定される。また、図5に示すように第1モータリングモード時にスロットル開度がLAFS汚染下限開度M-minを超えて低下した場合にスロットル開度が低下するに伴って係数(t1係数)を低下させるように設定する。これらは、第1モータリングモード時にエンジン回転速度が増加する、又はスロットル開度がLAFS汚染下限開度M-minを超えて低下するに伴ってオイル上がりが増加しLAFS44にオイル等が付着し易くなることに対応している。
【0039】
このように、第1モータリングモード時にオイル上がりやLAFS汚染が発生し易くなる状況に伴って第1モータリングモードから第2モータリングモードに切り替えることでエンジン2の燃焼を開始させ、オイル上がりやLAFS汚染を防止することができる。
また、エンジン2の排気通路40に設けられた排気浄化装置41には電気ヒータ42が備えられるとともに、排気浄化装置41の温度を検出する温度センサ43が備えられている。そして図6に示すように、コントロールユニット20は、エンジン作動時に排気浄化装置41の温度(触媒温度)が、例えば活性化温度下限値付近に設定された所定温度以下の場合に電気ヒータ42を作動させて、排気浄化装置41の温度を上昇させることで、排気浄化性能を向上させることができる。また、触媒温度が低下するに伴って電気ヒータ42の出力を上昇させるようにして、触媒温度を迅速に活性化温度に到達させるようにしてもよい。
【0040】
更にコントロールユニット20は、排気浄化装置41の温度が所定温度以下で第1モータリングモードが行われる場合、所定温度以下で第1モータリングモードが行われない場合(エンジン作動時)に比べて電気ヒータ42の出力を大きくするように制御するとよい。
燃焼が行われない第1モータリングモードが行われる場合は、排気温度が低いため、排気浄化装置41の温度低下が大きい。このときに、電気ヒータ42の出力を大きくすることで、排気浄化装置41の温度低下を更に抑制して排気浄化性能を向上させることができる。また、電気ヒータ42により回生電力を消費することができるため、回生制動力を確保できる。
【0041】
また上記のように、第1モータリングモードにてエンジン2をモータリングすると、オイル上がり等により点火プラグ34やLAFS44にオイルが付着する可能性がある。そこで、本実施形態では、第1モータリングモード完了から第2所定時間t2経過するまでは第2モータリングモードを実行してから、通常モード(LAFS検出値に基づく燃料噴射制御)に移行する。
【0042】
図7は、エンジン回転速度に基づく第2所定時間t2の設定用のマップの一例である。図8は、スロットル開度に基づく第2所定時間t2の設定用のマップの一例である。
コントロールユニット20は、図7に示すようなマップよりエンジン回転速度に基づいて演算した第2所定時間t2と、図8に示すようなスロットル開度に基づいて演算したt2係数を積算して求めた値を最終的な第2所定時間t2とする。
【0043】
図7に示すように、第1モータリングモード時でのエンジン回転速度が増加するに伴って第1モータリング後の第2モータリングモード時間が増加するように設定される。また、図8に示すように第1モータリングモード時におけるスロットル開度がLAFS汚染下限開度M-minを超えて低下した場合にスロットル開度が低下するに伴ってt2係数を増加させるように設定する。これらは、第1モータリングモード時にエンジン回転速度が増加する、又はスロットル開度がLAFS汚染下限開度を超えて低下するに伴ってオイル上がりが増加し、LAFS44にオイル等が付着し易くなることに対応している。
【0044】
このように、第1モータリングモード時にオイル上がりやLAFS汚染が発生し易くなる状況に伴って第1モータリングモード後に第2モータリングモードを行ってから通常制御に移行するので、ファイアリングによりLAFS44等の汚染を確実に解消させてから、通常モードに移行させることができる。
なお、本願発明は、上記実施形態に限定するものでない。例えば上記の各種制御の詳細について適宜変更してもよい。
【0045】
本発明は、回生発電及びモータリングが可能なハイブリッド車両に広く適用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 車両
2 エンジン(内燃機関)
4 フロントモータ(第2電気モータ)
9 モータジェネレータ(第1電気モータ)
11 駆動用バッテリ(蓄電池)
11a 充電率検出部(充電量検出部)
20 コントロールユニット(制御部)
41 排気浄化装置
42 電気ヒータ
43 温度センサ(温度取得手段)
45 勾配取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8