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特開2024-123976バイポーラ型二次電池及びこのバイポーラ型二次電池の組電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123976
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】バイポーラ型二次電池及びこのバイポーラ型二次電池の組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/28 20060101AFI20240905BHJP
   H01M 4/80 20060101ALI20240905BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240905BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20240905BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01M4/80 C
H01M4/62 C
H01M4/24 J
H01M4/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031834
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田原 麻奈美
【テーマコード(参考)】
5H017
5H028
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA02
5H017AS03
5H017CC28
5H028CC19
5H028HH01
5H028HH03
5H050AA07
5H050BA14
5H050CA03
5H050CB16
5H050DA04
5H050DA11
5H050EA21
5H050FA03
5H050FA09
5H050HA01
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】従来よりも寿命特性に優れるバイポーラ型二次電池及びこのバイポーラ型二次電池の組電池を提供する。
【解決手段】バイポーラ型二次電池10は、絶縁材からなる枠体6と、枠体6の一方の開口部12及び他方の開口部14を閉塞する正極集電体2及び負極集電体4と、枠体6と、正極集電体2及び負極集電体4とにより区切られ形成された収容室16内にアルカリ電解液とともに収容された電極群8と、を備え、電極群8は、セパレータ5を介して重ね合わされた正極1及び負極3を含んでおり、正極1は、正極芯体と、正極芯体に充填された正極合剤とを有し、正極集電体2と当接しており、負極3は、負極芯体と、負極芯体に充填された負極合剤とを有し、負極集電体4と当接しており、負極芯体は、3次元網目状骨格を有するニッケルフォームからなり、負極合剤に含まれる結着剤の含有量は、負極活物質100重量部に対し、0重量部以上、0.5重量部未満である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材からなる枠体と、前記枠体の一方の開口部及び他方の開口部を閉塞する一対の集電体と、前記枠体及び前記一対の集電体により区切られ形成された収容室内にアルカリ電解液とともに収容された電極群と、を備え、
前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含んでおり、
前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体に充填された正極合剤とを有し、前記集電体の一方と当接しており、
前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体に充填された負極合剤とを有し、前記集電体の他方と当接しており、
前記負極芯体は、3次元網目状骨格を有する発泡金属からなり、
前記負極合剤は、負極活物質と、有機添加物とを含んでおり、
前記有機添加物は、結着剤として作用する結着性有機添加物と、前記負極合剤のペースト性状を維持するために添加される増粘性有機添加物とを含んでおり、
前記結着性有機添加物の含有量は、前記負極活物質100重量部に対し、0重量部以上、0.5重量部未満であり、
前記増粘性有機添加物の含有量は、前記負極活物質100重量部に対し、0.26重量部以上、0.5重量部以下である、バイポーラ型二次電池。
【請求項2】
前記正極合剤に含まれる正極活物質の充填密度が、2.4g/cm以上、2.8g/cm以下であり、
前記負極合剤に含まれる負極活物質の充填密度が、4.5g/cm以上、5.7g/cm以下である、請求項1に記載のバイポーラ型二次電池。
【請求項3】
前記負極活物質は、水素吸蔵合金である、請求項2に記載のバイポーラ型二次電池。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のバイポーラ型二次電池からなる単電池が複数個直列に接続されて形成されたバイポーラ型二次電池の組電池であって、
前記集電体は、隣り合う前記単電池の間に位置付けられる中継集電体と、前記組電池の一方端及び他方端に位置付けられる端末集電体と、を含み、
前記中継集電体は、隣り合う前記単電池において共有の集電体であり、一方側の前記単電池の負極と当接しているとともに他方側の前記単電池の正極と当接しており、
前記端末集電体のうち、前記組電池の一方端に位置付けられる一方側端末集電体は、前記組電池の一方端に配設された前記単電池の正極と当接しており、前記組電池の他方端に位置付けられる他方側端末集電体は、前記組電池の他方端に配設された前記単電池の負極と当接している、バイポーラ型二次電池の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ型二次電池及びこのバイポーラ型二次電池の組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なバイポーラ型二次電池における極板は、一枚の集電体の表側に正極合剤が塗布されて正極合剤層が形成され、裏側に負極合剤が塗布されて負極合剤層が形成され、次いで、これら正極合剤層及び負極合剤層の充填密度を高めるために、圧延が施されることにより製造される。得られた極板は、集電体を挟んで正極及び負極が一体的に組み合わされた形状をなしている。
【0003】
ところで、上記のように充填密度を高めるために圧延処理を行う際、正極合剤及び負極合剤に同じ圧力が加えられるが、正極合剤及び負極合剤はそれぞれ材質が異なるので圧縮の度合いに差が表れる。このため、極板を圧延する際には反りが起こりやすいという問題がある。しかも、正極合剤及び負極合剤にはそれぞれ適切な充填密度があるが、その適切な充填密度に正極合剤及び負極合剤を個々に調整することは難しい。
【0004】
上記のように、バイポーラ型二次電池の極板は、集電体を挟んで正極及び負極が一体的に形成されるので、正極と負極とを別々に製造することは困難であり、正極及び負極の充填密度を、それぞれ最適な状態とすることは困難であった。
【0005】
そこで、正極及び負極を別工程で製造してから組み立てを行うバイポーラ型二次電池の極板が提案されている。このタイプの極板では、例えば、従来のニッケル水素二次電池で用いられている正極及び負極が利用されている。このタイプの極板の場合、正極及び負極を別工程で製造するので、それぞれ最適な圧延処理を施すことができ、それぞれ充填密度が高められた正極合剤層及び負極合剤層が得られる。また、極板全体で圧延することは省略できるので、極板が反ることも抑制できる。
【0006】
上記した従来のニッケル水素二次電池の負極は、負極芯体に負極合剤ペーストを塗布した後、乾燥処理、及び圧延処理を施すことにより製造される。ここで、負極芯体は、金属製の薄板に貫通孔が多数穿設されたパンチングメタルや金属箔が用いられる。また、負極合剤ペーストは、水素吸蔵合金の粉末、結着剤、増粘剤、及び水を混錬して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許5790848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、負極容量を上げるために負極の厚さを厚くして負極合剤の量を増やすことが行われる。しかしながら、負極の厚さを厚くすると、パンチングメタルや金属箔から負極合剤が脱落しやすくなり、所定の容量を維持することができなくなる。その結果、電池の寿命は短くなる。
【0009】
上記したような脱落を防止するため、負極合剤に結着剤を多く添加することが行われている。しかしながら、結着剤の量を増やすと水素吸蔵合金の表面が結着剤により過剰に覆われてしまい、水素吸蔵合金の活性化不足を招くおそれがある。水素吸蔵合金の活性化が不足すると充放電時に、副反応により発生するガスを十分に吸収することが困難となり、電池の内圧上昇を招く。電池の内圧が上昇すると、安全弁が作動して発生したガスとともにアルカリ電解液も外部へ放出してしまう。このようにガスの外部放出にともないアルカリ電解液が減少すると、電池は放電不能となり寿命が早期に尽きてしまう。
【0010】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、従来よりも寿命特性に優れるバイポーラ型二次電池及びこのバイポーラ型二次電池の組電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、絶縁材からなる枠体と、前記枠体の一方の開口部及び他方の開口部を閉塞する一対の集電体と、前記枠体及び前記一対の集電体により区切られ形成された収容室内にアルカリ電解液とともに収容された電極群と、を備え、前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含んでおり、前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体に充填された正極合剤とを有し、前記集電体の一方と当接しており、前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体に充填された負極合剤とを有し、前記集電体の他方と当接しており、前記負極芯体は、3次元網目状骨格を有する発泡金属からなり、前記負極合剤は、負極活物質と、有機添加物とを含んでおり、前記有機添加物は、結着剤として作用する結着性有機添加物と、前記負極合剤のペースト性状を維持するために添加される増粘性有機添加物とを含んでおり、前記結着性有機添加物の含有量は、前記負極活物質100重量部に対し、0重量部以上、0.5重量部未満であり、前記増粘性有機添加物の含有量は、前記負極活物質100重量部に対し、0.26重量部以上、0.5重量部以下である、バイポーラ型二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバイポーラ型二次電池は、絶縁材からなる枠体と、前記枠体の一方の開口部及び他方の開口部を閉塞する一対の集電体と、前記枠体及び前記一対の集電体により区切られ形成された収容室内にアルカリ電解液とともに収容された電極群と、を備え、前記電極群は、セパレータを介して重ね合わされた正極及び負極を含んでおり、前記正極は、正極芯体と、前記正極芯体に充填された正極合剤とを有し、前記集電体の一方と当接しており、前記負極は、負極芯体と、前記負極芯体に充填された負極合剤とを有し、前記集電体の他方と当接しており、前記負極芯体は、3次元網目状骨格を有する発泡金属からなり、前記負極合剤は、負極活物質と、有機添加物とを含んでおり、前記有機添加物は、結着剤として作用する結着性有機添加物と、前記負極合剤のペースト性状を維持するために添加される増粘性有機添加物とを含んでおり、前記結着性有機添加物の含有量は、前記負極活物質100重量部に対し、0重量部以上、0.5重量部未満であり、前記増粘性有機添加物の含有量は、前記負極活物質100重量部に対し、0.26重量部以上、0.5重量部以下である構成をとる。この構成により、負極合剤を発泡金属内に十分に保持することができるので、結着剤として作用する結着性有機添加物の添加量を減らすことができる。このため、水素吸蔵合金を十分に活性化できるので、電池内で発生したガスを十分に吸収でき、電池の内圧上昇を抑えることができる。その結果、アルカリ電解液の外部放出を抑制することができ電池の長寿命化が図れる。このため、本発明によれば、従来よりもサイクル寿命の長いバイポーラ型二次電池及びこのバイポーラ型二次電池の組電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る単電池を概略的に示す断面図である。
図2】一実施形態に係る単電池を構成する正極及びセパレータを示す平面図である。
図3】一実施形態に係る単電池を構成する負極及びセパレータを示す平面図である。
図4】一実施形態に係る単電池を積層することにより形成された組電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、バイポーラ型のニッケル水素二次電池10(以下、「単電池10」とも表記する)、及び当該単電池10を複数含む組電池20について図面を参照して説明する。
【0015】
ここで、図1に示す単電池10において、正極集電体2が配置される側を「左」、負極集電体4が配置される側を「右」と定義する。そして、図1における左右方向に垂直な方向を上下方向と定義する。更に、上述した左右方向及び上下方向に垂直な方向を前後方向と定義する。以下、各図に示される「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は、全て上記定義に基づくものとする。
【0016】
単電池10は全体として扁平な箱形状をしており、筒状の枠体6と、この枠体6の一方の開口部12及び他方の開口部14を閉塞する一対の集電体(正極集電体2、負極集電体4)とを有している。
【0017】
枠体6は、電気絶縁性の材料により形成され、好ましくは樹脂により形成される。この枠体6においては、外周部分の平面視形状が正方形であり、筒の中空部分の形状は外周部分と相似形の正方形である。つまり、枠体6は正方形の開口部12、14を有している。この枠体6には、アルカリ電解液の注入孔(図示せず)が設けられている。この注入孔には、図示しない安全弁が配設されている。この安全弁は、通常時は、注入孔を閉塞しているが、充放電反応にともない後述する収容室16内でガスが発生し、収容室16内のガスの圧力が所定の値に達した時に作動して開弁し、ガスを外部へ放出する。
【0018】
集電体は、導電性の材料により形成され、好ましくは金属により形成される。この集電体は、平面視形状が正方形状をなしており、枠体6の開口部12、14がある端面の全体を覆う大きさを有している。つまり、集電体は枠体6の開口部を閉塞することができる。
【0019】
上記した枠体6及び一対の集電体が組み合わされることにより空間が区切られ、単電池10の中に収容室16が形成される。ここで、枠体6と集電体との間には、図示しないシーリング部材が配設されており、枠体6と集電体との間の気密性及び液密性を保持している。
【0020】
収容室16内には、正極1と負極3とがセパレータ5を介して重ね合わされた電極群8と、アルカリ電解液とが収容されている。
【0021】
アルカリ電解液としては、アルカリ二次電池用のアルカリ電解液として一般的なものが用いられる。例えば、アルカリ成分の溶質として、NaOH及びKOHのうちの少なくとも1種を含んでいる水溶液を用いることが好ましい。なお、上記したアルカリ電解液においては、必要に応じてLiOHを添加することが好ましい。
【0022】
正極1は、多孔質構造を有する導電性の正極芯体と、この正極芯体の空孔内に保持された正極合剤とを含んでいる。
【0023】
このような正極芯体としては、例えば、ニッケルメッシュやニッケルフォームのシートを用いることができる。
【0024】
正極合剤は、正極活物質粒子と、結着剤とを含む。また、正極合剤には、必要に応じて正極添加剤が添加される。
【0025】
上記した結着剤は、正極活物質粒子を互いに結着させるとともに、正極活物質粒子を正極基材に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
また、正極添加剤としては、酸化亜鉛、水酸化コバルト等が挙げられる。
【0026】
正極活物質粒子としては、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている水酸化ニッケル粒子が用いられる。この水酸化ニッケル粒子は、高次化されている水酸化ニッケル粒子を採用することが好ましい。
【0027】
ついで、正極1は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、正極活物質粒子、水及び結着剤を含む正極合剤ペーストを調製する。調製された正極合剤ペーストは、例えば、ニッケルフォームのシートに充填され、乾燥処理が施される。乾燥後、水酸化ニッケル粒子等が充填されたニッケルフォームのシートは、圧延されてから、例えば、正方形状に裁断され、正極が製造される。
【0028】
上記した正極芯体としては、目付が550g/m以上、600g/m以下のニッケルフォームを用いることが好ましい。そして、正極合剤ペーストを乾燥させた後の充填密度が2.40g/cm以上、2.80g/cm以下となるように充填操作及び圧延操作を行う。
【0029】
ここで、正極合剤の充填密度は、以下の式(I)により計算される。
充填密度[g/cm]=正極合剤ペーストの乾燥後重量[g]÷正極の極板高さ[cm]×正極の極板長さ[cm]×正極の極板厚み[cm]-ニッケルフォームの重量[g]÷ニッケルの比重[g/cm]・・・(I)
【0030】
負極3は、負極芯体と、この負極芯体に充填された負極合剤とを有している。負極芯体は、3次元網目状骨格を有する発泡金属からなる。このような発泡金属としては、例えば、ニッケルフォームが挙げられる。
【0031】
負極合剤は、負極活物質としての水素吸蔵合金粒子、有機添加物、及び導電剤を含む。上記した有機添加物は、結着剤として作用する結着性有機添加物と、負極合剤のペースト性状を維持するために添加される増粘性有機添加物とを含んでいる。
【0032】
水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金としては、特に限定されるものではないが、希土類元素、Mg及びNiを含む希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いるのが好ましい。より好ましくは、以下に示す一般式(II)で表される組成を有する水素吸蔵合金を用いる。
【0033】
Ln1-xMgNiy-zAl・・・(II)
ただし、一般式(II)中、Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、Y、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素を表し、添字x、y、zは、それぞれ、0.05≦x≦0.30、2.8≦y≦3.8、0.05≦z≦0.30で示される関係を満たしている。
【0034】
水素吸蔵合金の粒子は、例えば、以下のようにして得られる。
まず、所定の組成となるよう金属原材料を計量して混合し、この混合物を、例えば、高周波誘導溶解炉で溶解してインゴットにする。得られたインゴットに、900~1200℃の不活性ガス雰囲気下にて5~24時間加熱する熱処理を施す。この後、インゴットを不活性ガス雰囲気下で機械的に粉砕し、篩分けを行うことにより所望粒径の水素吸蔵合金の粒子を得る。
【0035】
ここで、水素吸蔵合金の粒子としては、その粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは、平均粒径が55.0~70.0μmのものを用いる。なお、本明細書において、平均粒径とは、特に言及した場合を除き、重量基準による積算が50%にあたる平均粒径を意味し、粒子径分布測定装置を用いてレーザー回折・散乱法により求められる。
【0036】
結着性有機添加物は、いわゆる結着剤であり、負極合剤の構成成分である負極活物質等を結着させる働きをする。このような結着剤としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
【0037】
結着性有機添加物である結着剤は、負極合剤中での含有量が多いと水素吸蔵合金の表面を過剰に覆ってしまい、水素吸蔵合金の活性化不足を招くおそれがあるので、結着剤の含有量は極力少なくする必要がある。よって、結着剤は、負極活物質である水素吸蔵合金100重量部に対して0重量部以上、0.5重量部未満の範囲で負極合剤に添加する。
【0038】
増粘性有機添加物は、いわゆる増粘剤であり、後述する負極合剤ペーストに所定の粘性を付与するとともに、水素吸蔵合金粒子等の負極合剤成分の分散性を高める働きをする。これにより負極芯体への負極合剤ペーストの充填性を高めることができる。このような増粘剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。
【0039】
増粘性有機添加物は、負極合剤内での含有量が少ないと水素吸蔵合金粒子等の負極合剤成分の分散性を高める効果が十分に得られない。よって、水素吸蔵合金等の分散性を高めるため、増粘性有機添加物は、水素吸蔵合金100重量部に対し、0.26重量部以上含ませる。一方、増粘性有機添加物は、電池反応には直接関与しないので、あまり多く含まれると活物質の量が相対的に減り容量低下を招くおそれがある。よって、増粘性有機添加物は、水素吸蔵合金100重量部に対して0.5重量部以下とする。
【0040】
ここで、本実施形態において、負極合剤に含まれる有機添加物は、スチレンブタジエンゴム(SBR)のような結着剤として作用する結着性有機添加物が除かれており、負極合剤のペースト性状を維持するために添加される増粘性有機添加物のみ含まれる態様とすることが好ましい。
【0041】
導電材は、負極合剤に導電性を付与するものであり、カーボンブラックや黒鉛を用いることができる。ここで、カーボンブラックとしては、一次粒子が中空シェル状の構造を持つ中空カーボンブラックを用いることが好ましい。この中空カーボンブラックは、通常のカーボンブラックに比べ導電性に優れている。
【0042】
負極3は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末、結着剤(必要に応じて)、増粘剤、導電材、及び水を混練して負極合剤ペーストを調製する。得られた負極合剤ペーストは負極芯体に充填され、乾燥処理が施される。乾燥後、水素吸蔵合金粒子等が充填された負極芯体はロール圧延されて、体積当たりの合金量を高められた後、裁断がなされる。これにより負極が製造される。この負極は、例えば、全体として正方形の板状をなしている。
【0043】
上記した負極芯体としては、目付が400g/m以上、450g/m以下のニッケルフォームを用いることが好ましい。そして、負極合剤ペーストを乾燥させた後の充填密度が4.50g/cm以上、5.70g/cm以下となるように充填操作及び圧延操作を行う。
【0044】
ここで、負極合剤の充填密度は、以下の式(III)により計算される。
充填密度[g/cm]=負極合剤ペーストの乾燥後重量[g]÷負極の極板高さ[cm]×負極の極板長さ[cm]×負極の極板厚み[cm]-ニッケルフォームの重量[g]÷ニッケルの比重[g/cm]・・・(III)
【0045】
ここで、本実施形態においては、正極1と負極3とを別工程で製造するので、それぞれ、最適な活物質の充填密度を得ることができ、しかも、従来のように圧延時の反りの発生を回避することができる。
【0046】
セパレータ5は、正極1及び負極3の間に配設される平板状の部材である。このセパレータ5の素材としては、アルカリ二次電池のセパレータとして一般的なものが用いられる。例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの等が用いられる。
【0047】
電極群8は、上記したセパレータ5を間に挟んだ状態で上記した正極1及び負極3が重ね合わされて形成される。セパレータ5は、例えば、図2、3に示すように、正極1及び負極3と相似形の正方形状をなしている。ここで、セパレータ5の平面視形状は、正極1及び負極3の平面視形状よりも大きく、枠体6の開口部12、14の平面視形状よりも小さいサイズに調整されている。
【0048】
上記のようにして製造された電極群8は、枠体6、正極集電体2、及び、負極集電体4によって形成された収容室16に収容される。詳しくは、枠体6の内部に電極群8が配設され、その状態で枠体6の一方の開口部12が正極集電体2により閉塞され、枠体6の他方の開口部14が負極集電体4により閉塞される。次いで、正極集電体2及び負極集電体4が互いに近接する方向(左右方向)に加圧される。これにより、正極1が正極集電体2に所定の圧力で押し付けられ、負極3が負極集電体4に所定の圧力で押し付けられる。この結果、正極1と正極集電体2との間の導通、負極3と負極集電体4との間の導通が確保される。
【0049】
ここで、電極群8は、正極1、負極3、及びセパレータ5の厚さの和(t1+t3+t5)が、枠体6の一方の開口部12と他方の開口部14との間の長さ、つまり図1中の左右方向における長さLとほぼ同じとなるように構成されている。なお、t1は正極1の左右方向での厚さを示し、t3は負極3の左右方向での厚さを示し、t5はセパレータ5の左右方向での厚さを示す。電極群8の厚さ(t1+t3+t5)が枠体6の長さLよりも大きくなると、単電池10及び組電池20を密閉することができず、アルカリ電解液の漏れが生じるおそれがある。他方、電極群8の厚さ(t1+t3+t5)が枠体6の長さLよりも大幅に小さくなる場合、正極1及び正極集電体2の間、負極3及び負極集電体4の間に空隙が生じる。これにより集電不良が生じ、ひいては内部抵抗の増大や過電圧が生じるおそれがある。よって、正極1と正極集電体2との間の導通、及び負極3と負極集電体4との間の導通が確保でき、しかも枠体6の開口部を良好に閉塞できるように、電極群8の厚さ(t1+t3+t5)と枠体6の長さLは同等にする必要がある。
【0050】
次に、当該収容室16には所定量のアルカリ電解液が注入孔から注入された後、注入孔が安全弁により閉塞される。これにより収容室16が密閉され、単電池10が得られる。単電池10は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
【0051】
次に、単電池10が複数個直列に接続されて形成された組電池20について以下に説明する。
【0052】
組電池20は、上述の単電池10に対して、2つの電極群8の間に後述する中継集電体7が設けられている点で異なる。以下、上述の単電池10と同じ又は類似する機能を有する構成については、単電池10と同一の符号を付してその説明を省略又は簡略し、異なる部分について詳しく説明する。
【0053】
図4に示すように、バイポーラ型のニッケル水素二次電池の組電池20は、少なくとも二つの電極群8と、正極集電体2と、負極集電体4と、中継集電体7と、少なくとも二つの枠体6と、を含んで構成されている。具体的には、組電池20は、正極集電体2、負極集電体4、及び複数の枠体6によって形成される空間を複数の中継集電体7によって仕切り、これら仕切られた空間からなる収容室16の各々に電極群8を収容して構成されている。
【0054】
図4に示すように、組電池20において、電極群8は少なくとも二つ設けられている。具体的に本実施形態では、5つの電極群8が設けられている。電極群8の各々は、正極1、負極3、及びセパレータ5の厚さ方向(即ち左右方向)に積層して配設されている。
【0055】
図4に示すように、正極集電体2は、平板状であり、電極群8における一の(即ち左側の)電極群8の正極1と接触する。具体的には、正極集電体2は、収容室16の内側に位置する正極接触面2aが、正極1におけるセパレータ5とは反対側に位置する面である正極外側面1aの全体と接触する。また、負極集電体4は、平板状であり、電極群8における他の(即ち右側の)電極群8の負極3と接触する。具体的には、負極集電体4は、収容室16の内側に位置する負極接触面4aが、負極3におけるセパレータ5とは反対側に位置する面である負極外側面3aの全体と接触する。
【0056】
図4に示すように、中継集電体7は、平板状であり、複数の電極群8における各電極群8の間に配設される。具体的には、中継集電体7は、左右方向に隣接する各電極群8における正極1及び負極3の両方と接触するように、各電極群8の間に配設されている。中継集電体7は、ニッケルメッキ層が形成されており、いわゆるバイポーラプレートと呼ばれる部材である。つまり、中継集電体7は、複数の電極群8を直列接続するものである。
【0057】
図4に示すように、複数の枠体6は、各電極群8における正極1、負極3、及びセパレータ5の厚さ方向(即ち左右方向)に延在している。詳しくは、複数の枠体6は、図4中の左端に位置する正極集電体2とその右隣りの中継集電体7との間、中継集電体7と中継集電体7との間、及び、中継集電体7と図4中の右端に位置する負極集電体4との間にそれぞれ配設されている。このようにして複数の枠体6は、正極集電体2、中継集電体7、及び負極集電体4とともに電極群8の各々を包囲する。換言すると、一の枠体6は、正極集電体2及び中継集電体7とともに、組電池20の左側に位置する電極群8を包囲する。また、別の枠体6は、負極集電体4及び中継集電体7とともに、組電池20の右側に位置する電極群8を包囲する。更に、別の枠体6は、互いに対向する2つの中継集電体7とともに、組電池20の中央部分に位置する電極群8の一つを包囲する。
【0058】
ここで、組電池20においては、直列に配置する電極群8の数は5個に限定されるものではなく、2個以上であればよく、5個を超える個数の電極群8を直列に配置したものであってもよい。
【0059】
上記したバイポーラ型の単電池10は、負極芯体として3次元網目状骨格を有する発泡金属、具体的にはニッケルフォームを用いているので、負極合剤が3次元網目状骨格の空隙部分にしっかりと保持される。このため、負極合剤が脱落することを抑制でき、所定の容量を維持することができ、電池の寿命を延ばすことに貢献する。また、負極合剤が3次元網目状骨格の空隙部分にしっかりと保持されることにより、負極合剤に含有させる結着剤を減らすかあるいは省略することができる。このため、水素吸蔵合金の表面が結着剤により覆われることが抑制され、水素吸蔵合金の活性化不足を防ぐことができる。その結果、水素吸蔵合金のガス吸収能は損なわれず、電池の内圧上昇は抑制され、安全弁の作動にともなうアルカリ電解液の外部放出を抑えることができるので、電池の長寿命化を図ることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態の単電池10は、寿命特性に優れるバイポーラ型の二次電池となっている。
【0061】
また、本実施形態の組電池20は、上記した単電池10を複数個直列に接続して形成されているので、容量が大きく、しかも寿命特性に優れている。
【0062】
なお、図面においては、単電池10及び組電池20について概略的に表現してあり、正極集電体2及び負極集電体4が近付く方向へ加圧する加圧機構、正極集電体2及び負極集電体4に電気的に接続されたリードや端子は図示を省略している。
【0063】
[実施例]
1.単電池の製造
(実施例1)
(1)負極の製造
Nd、Mg、Ni、Alの各金属材料を所定のモル比となるように混合した後、高周波誘導溶解炉に投入しアルゴンガス雰囲気下にて溶解させ、得られた溶湯を鋳型に流し込み、25℃の室温まで冷却してインゴットを製造した。
【0064】
ついで、このインゴットに対し、温度1000℃のアルゴンガス雰囲気下にて10時間保持する熱処理を施した後、25℃の室温まで冷却した。冷却後、当該インゴットをアルゴンガス雰囲気下で機械的に粉砕して、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末を得た。得られた希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末について、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置により体積平均粒径(MV)を測定した。その結果、体積平均粒径(MV)は60μmであった。
【0065】
この水素吸蔵合金粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)によって分析したところ、組成は、Nd0.89Mg0.11Ni3.33Al0.17であった。
【0066】
得られた水素吸蔵合金の粉末100重量部に対し、ポリアクリル酸ナトリウムの粉末0.23重量部、カルボキシメチルセルロースの粉末0.03重量部、中空カーボンブラックの粉末0.5重量部、及び水22.4重量部を添加して25℃の環境下において混練し、負極合剤ペーストを調製した。
【0067】
この負極合剤ペーストを目付が420g/m、厚みが1.8mmのニッケルフォームのシートに充填した。そして、負極合剤ペーストを乾燥させ、負極合剤が充填されたニッケルフォームのシートを得た。得られたシートは、水素吸蔵合金の充填密度が5.07g/cmとなるように圧延した。このようにして負極3を得た。ここで、負極3は、厚さが0.615mmであり、縦寸法が50mm、横寸法が44mmであった。
【0068】
(2)正極の製造
水酸化ニッケル粒子の集合体である正極活物質粉末100重量部に、水酸化コバルトの粉末10重量部を混合し、更に、40重量部のHPCディスパージョン液及び30重量部の水を混合して正極合剤ペーストを調製し、この正極合剤ペーストを目付が575g/m、厚みが1.8mmの正極芯体としてのニッケルフォームのシートに充填した。そして、充填された正極合剤のペーストを乾燥させた後、正極合剤が充填されたニッケルフォームのシートを得た。得られたシートは、水酸化ニッケル粒子の充填密度が2.52g/cmとなるように圧延した。このようにして正極1を得た。ここで、正極1は、厚さが0.836mmであり、縦寸法が50mm、横寸法が44mmであった。
【0069】
(3)電池の組立
まず、スルホン化処理が施されたポリプロピレン繊維製不織布からなるセパレータ5を準備した。このセパレータ5は、目付が40g/mであり、厚さが0.22mm、縦寸法が60mm、横寸法が60mmであった。
【0070】
次いで、上記のように別々に製造した正極1及び負極3を、これらの間に上記したセパレータ5を挟んだ状態で重ね合わせ、電極群8を製造した。
【0071】
更に、溶質としてNaOH及びLiOHを含んでいるアルカリ電解液を準備した。このアルカリ電解液において、NaOHの濃度は7.50mol/L、LiOHの濃度は0.50mol/Lに調整されている。なお、このアルカリ電解液のアルカリ成分の濃度の総和は8.00mol/Lである。
【0072】
上記のようにして準備した電極群8を枠体6の中空部分に配設するとともに、正極集電体2で枠体6の一方の開口部12を塞ぎ、負極集電体4で枠体6の他方の開口部14を塞いだ。ここで、正極集電体2は、電極群8の正極1の側に位置し、負極集電体4は、電極群8の負極3の側に位置するように配置した。ついで、正極集電体2及び負極集電体4が互いに近づく方向に加圧し、この状態を維持する保持機構(図示せず)により加圧状態を維持した。これにより、正極1と正極集電体2との間の導通、及び、負極3と負極集電体4との間の導通を確保した。
【0073】
次に、枠体6に設けられた注入孔からアルカリ電解液を所定量注入にしたのち、この注入孔を安全弁で閉塞した。このようにして、単電池10を組み立てた。
【0074】
(4)初期活性化処理
単電池10を、25℃の環境下に1日間放置後、0.1Itの充電電流で16時間の充電を行った。その後、当該単電池10を25℃の環境下で12時間放置した。その後、0.2Itの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させた。このような充放電作業を2回繰り返すことにより初期活性化処理を行った。このようにして、単電池10を使用可能状態とした。
【0075】
(比較例1)
負極合剤ペーストを調製する際に、中空カーボンブラックの粉末を1.0重量部とし、更に結着剤としてSBRを0.5重量部加えたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0076】
(比較例2)
負極合剤ペーストを調製する際に、中空カーボンブラックの粉末を1.0重量部とし、更に結着剤としてSBRを1.0重量部加えたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0077】
(比較例3)
負極合剤ペーストを調製する際に、中空カーボンブラックの粉末を1.0重量部とし、ポリアクリル酸ナトリウム及びカルボキシメチルセルロースを添加しなかったことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0078】
(比較例4)
負極合剤ペーストを調製する際に、中空カーボンブラックの粉末を1.0重量部とし、更に結着剤としてSBRを0.75重量部加えたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0079】
(比較例5)
負極合剤ペーストを調製する際に、中空カーボンブラックの粉末を1.0重量部とし、ポリアクリル酸ナトリウムの粉末0.15重量部、カルボキシメチルセルロースの粉末0.15重量部加えたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0080】
(比較例6)
負極芯体として、ニッケルフォームの代わりに厚さが30μmのニッケル製の箔を用いたこと、負極合剤ペーストを調製する際に、中空カーボンブラックの粉末を1.0重量部とし、更に結着剤としてSBRを1.0重量部加えたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0081】
(実施例2)
水素吸蔵合金の充填密度を5.48g/cmとし、水酸化ニッケル粒子の充填密度を2.46g/cmとしたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0082】
(実施例3)
水素吸蔵合金の充填密度を4.75g/cmとし、水酸化ニッケル粒子の充填密度を2.65g/cmとしたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0083】
(実施例4)
水素吸蔵合金の充填密度を3.91g/cmとし、水酸化ニッケル粒子の充填密度を2.90g/cmとしたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0084】
(実施例5)
水素吸蔵合金の充填密度を6.30g/cmとし、水酸化ニッケル粒子の充填密度を2.35g/cmとしたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0085】
(実施例6)
水素吸蔵合金の充填密度を5.10g/cmとし、水酸化ニッケル粒子の充填密度を2.90g/cmとしたことを除いて、実施例1と同様にして、単電池を製造した。
【0086】
2.電池の評価
(1)漏液試験
初期活性化処理済みの実施例1、比較例1~5の単電池について、電池の重量を測定した。この重量を初期重量A[g]とする。
【0087】
次に、重量を測定した後の各電池について、25℃の環境下にて、0.1Itで11時間充電を行った。この充電が終了した電池の重量を測定した。この重量を充電後重量B[g]とする。
【0088】
そして、初期重量Aと充電後重量Bとの差を求め、この差をアルカリ電解液の漏液量C[g]とした。得られた漏液量Cの値を表1に示した。
【0089】
ここで、比較例3及び比較例5については、負極合剤ペーストの水素吸蔵合金が沈降しやすく安定した充填を行うことができず、良好な負極の製造が出来なかったため漏液試験を断念した。
【0090】
【表1】
【0091】
(2)内部抵抗測定及び容量検査
初期活性化処理済みの実施例1~6の単電池について、40℃の環境下で72時間保持するエージング処理を行った後、内部抵抗を測定した。その結果を表2に示した。更に、実施例1~6の単電池について、0.1Itで11時間充電した後、0.5Itで電池電圧が1.0Vになるまで放電した。その際の放電容量を求めた。そして、設計容量を100%とした場合の各単電池の放電容量の百分率を求めた。その結果を設計容量比率として表2に併せて示した。
【0092】
【表2】
【0093】
(3)考察
(i)表1の結果より
実施例1では、漏液量が0gであり漏液が生じていない。これに対し、比較例1では漏液量が0.06g、比較例2では漏液量が0.20g、比較例4では漏液量が0.18g、比較例6では漏液量が0.25gであり、それぞれ漏液が生じていた。
【0094】
比較例1、2、4、6においては、電池外部への電解液の放出をともなったガスの発生が起こっていると推測される。
【0095】
比較例1、2、4、6においては、水素吸蔵合金の表面に結着剤(SBR)による被膜が形成され、この被膜の影響により水素吸蔵合金の活性化が不足したと考えられる。水素吸蔵合金の活性化不足は、充放電時におけるガス発生による内圧上昇を引き起こし、電解液減少、筐体の変形など本電池構成では短寿命化の大きな原因となり得る。
【0096】
ここで、比較例6は、負極芯体に金属板を採用した従来の単電池に相当する。この比較例6の単電池においては、漏液試験終了後に解体して内部を観察した結果、負極活物質の脱落が認められた。このため、比較例6の単電池では、負極活物質の脱落により容量低下も生じていると考えられる。
【0097】
実施例1の単電池は、負極芯体に3次元網目状骨格を有する発泡金属を採用しているので、負極合剤に有機添加物のうち結着剤(SBR)を含んでいなくても水素吸蔵合金を十分の保持することができる。このため、結着剤による被膜で水素吸蔵合金の表面が覆われることを抑制でき、水素吸蔵合金の活性化は十分に行われるので、水素吸蔵合金の活性化不足による短寿命化は避けられていると考えられる。また、負極芯体が3次元網目状骨格を有する発泡金属であるので、水素吸蔵合金を負極芯体に十分に保持できる。よって、活物質の脱落を抑制でき、活物質脱落による容量低下に起因する短寿命化も避けられると考えられる。
【0098】
ところで、比較例3及び比較例5では、良好な負極の製造が出来なかった。これは、有機添加物のうち増粘性有機添加物である増粘剤が水素吸蔵合金100重量部に対し、比較例3では0重量部であり、比較例5では0.15重量部であり実施例1の0.26重量部よりも少ないため、負極合剤ペーストの水素吸蔵合金が沈降しやすく安定した充填を行うことができなかったためである。このことから、有機添加物のうち、増粘性有機添加物は、負極を形成するために、最低限は必要であり、負極活物質である水素吸蔵合金100重量部に対し、0.26重量部以上含ませることが好ましいといえる。また、増粘性有機添加物は、電池反応には直接関与しないので、あまり多く含まれると活物質の量が相対的に減り容量低下を招くおそれがある。よって、増粘性有機添加物は、負極活物質である水素吸蔵合金100重量部に対して0.5重量部含まれていれば十分である。よって、増粘性有機添加物は、水素吸蔵合金100重量部に対し、0.26重量部以上0.5重量部以下とすることが好ましいといえる。
【0099】
以上より、負極合剤に含まれる有機添加物の配合を極めて少量に限定することで、水素吸蔵合金の活性化を十全に進行させ、電池の内圧上昇の抑制と、漏液の予防により電池の長寿命化が達成できると考えられる。
【0100】
(ii)表2の結果より
実施例1~3は、内部抵抗が12.7mΩ以下、設計容量比率が80.4%以上であり、低抵抗と高容量とを両立させていることがわかる。このことから、長寿命に加え低抵抗と高容量との両立を図るためには、正極活物質の充填密度及び負極活物質の充填密度に関し、実施例1~3の条件を基準にし、更に製造条件(圧延条件等)を加味して検討することにより、正極活物質の充填密度を2.40g/cm以上2.75g/cm以下、且つ、負極活物質の充填密度を4.50g/cm以上5.75g/cm以下とすることが好ましいことが見出される。
【0101】
なお、本発明は、上記した実施形態及び実施例に記載したニッケル水素二次電池に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、組電池を構成する単電池は、ニッケルカドミウム二次電池等の他のアルカリ二次電池であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 正極
1a 正極外側面
2 正極集電体
2a 正極接触面
3 負極
3a 負極外側面
4 負極集電体
4a 負極接触面
5 セパレータ
6 枠体
7 中継集電体
8 電極群
10 ニッケル水素二次電池(バイポーラ型二次電池)
12 開口部
14 開口部
16 収容室
20 組電池
図1
図2
図3
図4