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  • 特開-活性化光触媒クロスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123986
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】活性化光触媒クロスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/34 20060101AFI20240905BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240905BHJP
   B01J 35/58 20240101ALI20240905BHJP
   D06N 7/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B01J37/34
B01J35/02 J
B01J35/06 A
D06N7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031849
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】515316458
【氏名又は名称】株式会社Nano Wave
(71)【出願人】
【識別番号】500241136
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(72)【発明者】
【氏名】今井 勇次
【テーマコード(参考)】
4F055
4G169
【Fターム(参考)】
4F055AA15
4F055BA03
4F055CA16
4F055FA24
4F055GA32
4F055HA15
4F055HA21
4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA22B
4G169BA48A
4G169CA10
4G169CA11
4G169CA17
4G169DA05
4G169EA09
4G169EB15Y
4G169FA03
4G169FA08
4G169FB15
4G169FB58
4G169HA01
4G169HB01
4G169HC32
4G169HE03
(57)【要約】
【課題】従来の光触媒クロスに対して脱臭作用を向上させた活性化光触媒クロスの製造方法を提供する。
【解決手段】光触媒クロスの製造にあたり、作製工程S1にて作製された光触媒クロスに対し、活性化工程S2にて光触媒の励起光を照射することにより、未活性の光触媒クロスよりも脱臭作用を向上させた光触媒クロスを製造することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒クロスを作製する作製工程と、
前記作製工程にて作製された前記光触媒クロスに光触媒の励起光を照射して、光触媒を活性化させる活性化工程と、を含む活性化光触媒クロスの製造方法。
【請求項2】
前記光触媒は、酸化チタンであり、
前記励起光は、紫外光である請求項1に記載の活性化光触媒クロスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒が活性化された光触媒クロスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、建築物の壁紙等には、ポリ塩化ビニルを主原料としたビニルクロスが多く用いられている。また、このビニルクロスに室内の消臭作用を付与する目的で、光触媒粒子を含む懸濁液を収容した光触媒スプレーが販売されている。光触媒スプレーからビニルクロスへ向けて懸濁液が噴射されると、ビニルクロス表面に光触媒粒子が付着する。そして、この光触媒粒子が太陽光、照明器具からの光等により励起されると、室内の脱臭作用を得ることができるとされている。しかしながら、懸濁液には有機物等の不純物が多く含まれていることから、ビニルクロス表面の光触媒粒子が不純物により覆われてしまい、光触媒粒子を的確に励起させることができない。この結果、現実的には光触媒の励起による脱臭作用をほとんと得ることはできない。
【0003】
一方、繊維シートの片面または両面に、光触媒を有機系または無機系の支持体により保持した光触媒クロスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この光触媒クロスを建築物の壁紙等に用いると、太陽光や照明器具から発せられる光により光触媒粒子が励起され、建築物の室内の脱臭作用を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-128706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光触媒クロスの脱臭作用は限定的であり、脱臭作用の向上がのぞまれている。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の光触媒クロスに対して脱臭作用を向上させた活性化光触媒クロスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、
光触媒クロスを作製する作製工程と、
前記作製工程にて作製された前記光触媒クロスに光触媒の励起光を照射して、光触媒を活性化させる活性化工程と、を含む活性化光触媒クロスの製造方法が提供される。
【0008】
上記活性化光触媒クロスの製造方法において、
前記光触媒は、酸化チタンであり、
前記励起光は、紫外光であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の光触媒クロスに対して脱臭作用を向上させた活性化光触媒クロスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す活性化光触媒クロスの概略斜視図である。
図2】活性化光触媒クロスの表面状態を示す模式説明図である。
図3】活性化光触媒クロスの製造方法を示すフローチャートである。
図4】活性化光触媒クロスの脱臭性能を確認した実験装置の概略斜視図である。
図5】実施例及び比較例の光触媒クロスにおけるアルデヒド残存率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図3は本発明の一実施形態を示し、図1は活性化光触媒クロスの概略斜視図、図2は活性化光触媒クロスの表面状態を示す模式説明図、図3は活性化光触媒クロスの製造方法を示すフローチャートである。
【0012】
図1に示すように、活性化光触媒クロス1は、所定厚さのシート状に形成される。活性化光触媒クロス1の厚さは任意であり、例えば0.1mm以上10mm以下であり、本実施形態においては0.5mmである。活性化光触媒クロス1の表面には凹凸が形成され、これにより表面積の増大が図られている。活性化光触媒クロス1の凹凸の数は任意であり、例えば断面10cmあたりの凸の個数を10以上100以下とすることができ、本実施形態においては断面10cmあたりの凸の個数は25である。
【0013】
図2に示すように、活性化光触媒クロス1は、ポリエステルからなる基材2を有し、酸化チタン(TiO)からなる光触媒粒子3が基材2に担持されている。本実施形態においては、光触媒粒子3は、無機バインダー粒子4を介して基材2に担持されている。尚、基材2としてポリエステル以外のプラスチックを使用してもよいし、セラミックを使用してもよい。活性化光触媒クロス1における光触媒の担持量は任意であるが、例えば0.05g/m以上10g/m以下とすることができ、好ましくは4g/m以上8g/m以下であり、本実施形態においては7g/mである。
【0014】
図3に示すように、本実施形態の活性化光触媒クロス1は、作製工程S1と、活性化工程S2と、特性確認工程S3と、を経て製造される。作製工程S1では、従来公知の方法により、光触媒粒子3が基材2に担持された光触媒クロスが作製される。このとき、光触媒クロスの光触媒は、未活性である。
【0015】
活性化工程S2では、未活性の光触媒クロスに励起光を照射して光触媒を活性化させる。この光エージング処理により、光触媒クロスの脱臭性能が向上する。活性化工程S2における励起光の照射時間は任意であり、例えば、10分以上60分以下とすることができ、本実施形態においては30分である。励起光の波長は、光触媒を励起可能な波長であれば任意であり、本実施形態においては405nmである。励起光の強度は、光触媒が十分に励起される範囲であればよく、例えば、0.1mW/cm以上2.0mW/cm以下とすることができ、本実施形態においては1.0mW/cmである。
【0016】
特性確認工程S3では、活性化光触媒クロス1が所期の脱臭特性を有しているか確認を行う。例えば、光触媒を活性化させた場合の脱臭特性を予め測定しておき、光エージング処理が行われた光触媒クロスについて脱臭特性が得られていることの確認試験を行う。活性化光触媒クロス1を大量に製造する場合、必ずしも全ての活性化光触媒クロス1の脱臭性能を確認する必要はなく、複数の活性化光触媒クロス1から無作為に1つの活性化光触媒クロス1を抽出して確認を行えばよい。
【0017】
以上のように製造された活性化光触媒クロス1は、未活性のものと比べて、空気の浄化作用が格段に向上する。これにより、活性化光触媒クロス1が配置された空間の脱臭効果を格段に向上させることができる。本実施形態の活性化光触媒クロス1は、480nm以下の波長の光で励起可能な可視光応答型であることから、蛍光灯が設置された部屋の壁面を活性化光触媒クロス1とすることにより、室内の脱臭作用を得ることができる。
【0018】
光触媒の活性化による脱臭効果の向上を検証するため、活性化光触媒クロスと未活性の光触媒クロスによる脱臭効果の比較実験を行った。実施例として上記実施形態の製造方法により製造された活性化光触媒クロスを準備し、比較例として上記実施形態の活性化工程S2を省略した未活性の光触媒クロスを準備した。実験にあたり、図4に示すように、光透過性を有するポリカーボネートの板材からなり、一辺が70cmの立方体の箱体100を作製した。光触媒クロスは、短辺が15cm、長辺が70cmのシート状とし、4つの光触媒クロスを箱体100の一側面の内面に水平方向に間隔をおいて設置した。図4は、実施例の活性化光触媒クロス1が箱体100に設置された状態を示している。箱体100内の光触媒クロスに照射される光源は、箱体100が配置された実験室の天井に備え付けの室内用の蛍光灯とした。
【0019】
箱体100内に8マイクロリットルのアセトアルデヒドを注入し、実験室の蛍光灯を点灯させて、箱体100内のアセトアルデヒドの残存率の変化を測定した。このとき、箱体100上の照度は、500ルクスであった。実施例の活性化光触媒クロス1では、約300分で残存率が0となった。これに対し、比較例の未活性の光触媒クロスでは、アセトアルデヒドの残存率が0となるまで約450分を要した。これにより、光触媒クロスの活性化処理により、脱臭効果が向上していることが確認された。
【0020】
さらに、箱体100内に空気浄化装置を設置し、実施例の活性化光触媒クロス1と比較例の光触媒クロスを空気浄化装置のフィルターとして、箱体100内のアセトアルデヒドの残存率の変化を測定した。空気浄化装置は、複数のLED素子を有する発光部を備えており、発光部からの照射光によりクロスの光触媒を励起した。図5に、このときのアセトアルデヒドの残存率の時間変化を示す。図5に示すように、実施例の活性化光触媒クロス1では、60分で残存率が0となった。これに対し、比較例の未活性の光触媒クロスでは、アセトアルデヒドの残存率が0となるまで85分を要した。これによっても、光触媒クロスの活性化処理により、脱臭効果が向上していることが確認された。
【0021】
尚、前記実施形態においては、活性化光触媒クロス1の光触媒として酸化チタンを用いたものを示したが、光触媒機能を有する他の材料を用いてもよいことは勿論である。
【0022】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組み合わせの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0023】
1 活性化光触媒クロス
2 基材
3 光触媒粒子
4 無機バインダー粒子
100 箱体
S1 作製工程
S2 活性化工程
S3 特性確認工程
図1
図2
図3
図4
図5