(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024123987
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ボールねじ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
F16H25/22 L
F16H25/22 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031850
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】上岡 広樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 靖史
(72)【発明者】
【氏名】御厨 功
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA16
3J062BA26
3J062BA35
3J062CD08
3J062CD62
(57)【要約】
【課題】作動性や耐久性に優れたボールねじを低コストに提供する。
【解決手段】複数のボール4を介して相対回転するねじ軸2及びナット3と、ナット3に取り付けられた循環部材5とを備え、ねじ軸2とナット3の相対回転に伴い、ねじ軸2の雄ねじ溝2aとナット3の雌ねじ溝3aとの間に形成される螺旋状の転走路6と、循環部材5で形成される循環部7とを有する一連のボール通路8に沿ってボール4が循環移動するボールねじ1において、複数のボール4は、第1ボール4Aと、第1ボール4Aよりもボール径が小さい第2ボール4Bとを含み、第2ボール4Bのボール径を、第1ボール4Aのボール径に対して99.0%以上100%未満とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボールを介して相対回転するねじ軸及びナットと、前記ナットに固定された循環部材とを備え、前記ねじ軸と前記ナットの相対回転に伴い、前記ねじ軸の外周面に形成された雄ねじ溝と前記ナットの内周面に形成された雌ねじ溝との間に形成される螺旋状の転走路と、前記循環部材で形成される循環部とを有する一連のボール通路に沿って前記複数のボールが循環移動するボールねじにおいて、
前記複数のボールは、第1ボールと、前記第1ボールよりもボール径が小さい第2ボールとを含み、前記第2ボールのボール径が、前記第1ボールのボール径に対して99.0%以上100%未満であることを特徴とするボールねじ。
【請求項2】
前記第2ボールは、前記転走路の1巻きにつき1つ以上配されている請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記第1ボールと前記第2ボールを前記ボール通路の路長方向に沿って交互に配置した請求項1又は2に記載のボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、鋼材又はセラミックス等の剛体からなる複数のボールを介して相対回転するねじ軸及びナットと、ナットに取り付けられた循環部材とを備えており、ねじ軸とナットが相対回転すると、ねじ軸の外周面に形成した雄ねじ溝とナットの内周面に形成した雌ねじ溝との間に形成される螺旋状の転走路と、循環部材によって形成される循環部とを備えた一連のボール通路に沿ってボールが循環(周回)移動するようになっている。循環部材としては、エンドキャップ、こま、リターンチューブ、ガイドプレートなどがあり、ボールねじの用途等に応じて使い分けられている(以上、例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載のボールねじにおいては、隣り合うボール(特に転走路内で負荷を受けるボール)間に、ボール間方向のばね定数が0.1~100N/mmの範囲内であると共に、使用時におけるボール間方向の最大変位量がボール径の0.5~100%の範囲内である弾性部材を介在させるようにしている。これにより、転走路内での「ボールの競り合い現象」に起因する循環部内でのボール詰まりやトルク変動等の問題発生を抑えることができる、としている。なお、「ボールの競り合い現象」とは、負荷を受ける転走路内でのボール同士の接触により相対滑り摩擦力が生じる現象であり、これが生じると、負荷を受ける転走路内のボールの公転速度に差が生じて、転走路から循環部に入るボールと、循環部から転走路に入るボールとの間に公転速度差が生じる結果、上記の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、隣り合うボール間に弾性部材を介在させる特許文献1のボールねじには以下に列挙するような種々の問題が生じるおそれがある。
(1)転走路内に介在するボール数減少により負荷容量(荷重負荷能力)や寿命が低下する。
(2)ボールとは全く異なる形態の弾性部材追加により組立工数及びコストが増大する。
(3)一部又は全部が樹脂又はゴムで形成された弾性部材を長期使用する場合、弾性部材の劣化に起因して作動性が低下(トルク変動が増大)する。
(4)一部又は全部が樹脂又はゴムで形成された弾性部材を使用する場合、転走路に充填する潤滑剤(例えば、潤滑油又はグリース)の選択範囲が狭い。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような種々の問題発生を可及的に防止し、もって作動性や耐久性に優れたボールねじを低コストに提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために創案された本発明は、複数のボールを介して相対回転するねじ軸及びナットと、ナットに取り付けられた循環部材とを備え、ねじ軸とナットの相対回転に伴い、ねじ軸の外周面に形成された雄ねじ溝とナットの内周面に形成された雌ねじ溝との間に形成される螺旋状の転走路と、循環部材で形成される循環部とを有する一連のボール通路に沿ってボールが循環移動するボールねじにおいて、
複数のボールは、第1ボールと、第1ボールよりもボール径が小さい第2ボールとを含み、第2ボールのボール径が、第1ボールのボール径に対して99.0%以上100%未満であることを特徴とする。
【0008】
上記の構成を有するボールねじによれば、通常使用時(転走路に介在するボールの弾性変形が生じないような荷重条件下)においては、第1ボール(のみ)によってナット又はねじ軸に作用する荷重(軸方向荷重及び/又は径方向荷重)が支持される一方で、転走路に介在するボールに弾性変形が生じるほどの大荷重がナット又はねじ軸に作用する高荷重条件下においては、第1ボール及び第2ボールの双方で上記荷重を支持することが可能となる。これは、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、第2ボールのボール径を第1ボールのボール径の99%未満にすると、高荷重条件下でのねじ溝の溝底面(ボール転走面)の耐久性が第2ボールを省略した場合と同程度になる一方で、第2ボールのボール径を第1ボールのボール径の99.0%以上(かつ100%未満)にすると、高荷重条件下での上記溝底面の耐久性が良好であることを見出したことを理由とする。
【0009】
そして、本発明に係るボールねじにおいては、特許文献1に記載の弾性部材の代替品として第2ボールが用いられる。第2ボールはあくまでも「ボール」であることから、ボールねじの組立を困難なものにならしめることはなく、また、ボールねじのボールには、通常、鋼材やセラミックス等の剛体からなるボールが使用されることから、前述した(3)及び(4)の課題については特段考慮する必要がない。
【0010】
上記の作用効果を享受するには、第2ボールを、螺旋状の転走路の1巻きにつき1つ以上配するのが好ましい。
【0011】
上記構成において、第1ボールと第2ボールは、ボール通路の路長方向(長手方向)に沿って交互に配置することができる。
【0012】
なお、本発明は、循環部材の種類を問わず適用することができる。すなわち、本発明に係るボールねじにおいては、例えばエンドキャップ、エンドデフレクタ、リターンチューブ、ガイドプレート(リターンプレート)及びこま等の公知の循環部材の何れを用いる場合にも問題なく適用することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のことから、本発明によれば、作動性や耐久寿命に優れたボールねじを低コストに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボールねじの概略縦断面図である。
【
図2】
図1に示すボールねじの転走路の部分拡大断面図であって、(a)図は、通常使用時の断面図、(b)図は、高負荷時(高荷重が負荷されている時)の断面図である。
【
図3】第2ボールの有無、及び第2ボールのボール径がボールの転走面寿命に与える影響を検証した結果を示す線図である。
【
図4】本発明の他の実施形態に係るボールねじの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明で使用する「軸方向」及び「径方向」とは、それぞれ、ボールねじ1を構成するねじ軸2の中心軸に沿う方向、及び上記中心軸を中心とする円の径方向である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るボールねじ1の概略縦断面図である。同図に示すボールねじ1は、外周面に螺旋状の雄ねじ溝2aが形成されたねじ軸2と、内周面に螺旋状の雌ねじ溝3aが形成されたナット3と、互いに対向する雄ねじ溝2aと雌ねじ溝3aとの間に形成される転走路6に介在する複数のボール(ここでは鋼球)4と、ナット3に取り付けられた循環部材5とを備える。
【0017】
このボールねじ1は、ねじ軸2がその中心軸回りに回転するのに伴ってナット3が軸方向に進退移動(直線運動)するねじ軸回転タイプとして使用される場合と、ナット3がその中心軸回りに回転するのに伴ってねじ軸2が軸方向に進退移動するナット回転タイプとして使用される場合とがある。ねじ軸回転タイプのボールねじ1では、ナット3の回転を規制するための回転規制手段(図示省略)が設けられ、ナット回転タイプのボールねじ1では、ねじ軸2の回転を規制するための回転規制手段(図示省略)が設けられる。
【0018】
ナット3は、金属材料で円筒状に形成され、軸方向一方側及び他方側の端部のそれぞれには、循環部材5としてのエンドキャップ5A,5Aが取り付けられている。従って、本実施形態のボールねじ1は、エンドキャップ式のボールねじである。
【0019】
ナット3には、雌ねじ溝3aの径方向外側でナット3を軸方向に貫通する貫通孔3bが形成されている。各エンドキャップ5Aは円環状(短円筒状)をなし、ナット3との対向端面には、上記転走路6の長手方向端部と上記貫通孔3bの長手方向端部とを接続する(連通させる)ための溝部5aが形成されている。この溝部5aと、ナット3に形成された上記貫通孔3bとで、転走路6に介在するボール4を循環させるための循環部7が形成される。そして、ねじ軸2とナット3が相対回転すると、上記転走路6と循環部7とからなる一連のボール通路8に沿って、このボール通路8内に配設された複数のボール4が循環移動する。これにより、ねじ軸2とナット3のうち、回転側の部材が滑らかに回転すると共に、直動側の部材が滑らかに直線運動する。
【0020】
図2(a)に示すように、転走路6(を含むボール通路8)に介在する複数のボール4は、ボール径が互いに異なる第1ボール4Aと第2ボール4Bとを含む。第1ボール4A及び第2ボール4Bは何れも鋼球である。図示例では、転走路6(ボール通路8)の長手方向に沿って複数の第1ボール4Aと第2ボール4Bを交互に配している。
【0021】
第1ボール4Aとしては、これが転走路6内に位置するとき(ねじ軸2とナット3の相対回転に伴って転走路6内を移動するとき)に、雄ねじ溝2aの溝底面及び雌ねじ溝3aの溝底面の双方に接触するようなボール径、すなわちねじ軸2及びナット3に作用する荷重を受けることが可能なボール径を有するものが使用される。つまり、第1ボール4Aは、いわゆる「負荷ボール」として機能するボールである。
【0022】
第2ボール4Bとしては、ボール径が第1ボール4Aのボール径よりも小さいもの、より具体的には、第1ボール4Aのボール径に対して99.0%以上100%未満のボール径を有するものが使用される。係るボール径を有する第2ボール4Bがボールねじ1の通常運転状態で転走路6内に位置するとき、第2ボールねじ4Bは、ねじ軸2の雄ねじ溝2aの溝底面(内径側のボール転走面)及びこれに対向するナット3の雌ねじ溝3aの溝底面(外径側のボール転走面)の何れか一方又は双方に対して接触せず、2つのボール転走面の何れか一方又は双方との間にすきまδを形成する。
図2(a)は、第2ボール4Bが雌ねじ溝3aの溝底面に対して接触せず、第2ボール4B(の外球面)と雌ねじ溝3aの溝底面との間にすきまδが存在する状態を示している。従って、ボールねじ1の通常運転状態において、第2ボール4Bはいわゆる「負荷ボール」として機能せず、ねじ軸2及びナット3に作用する荷重を受けることができない。
【0023】
一方、
図2(b)に例示するように、ねじ軸2とナット3の相対回転時にねじ軸2及びナット3の何れか一方又は双方に大荷重が負荷され(同図では、ナット3に縮径方向の大荷重Fが負荷されている)、その結果、転走路6内で荷重を受ける第1ボール4Aが弾性的に圧縮変形すると、上記のボール径を有する第2ボール4Bが雄ねじ溝2a及び雌ねじ溝3aの溝底面に接触する。これにより、第1ボール4Aに加え、第2ボール4Bによっても荷重Fが支持されるので、負荷能力が高く、耐久性に優れたボールねじ1を実現することができる。
【0024】
本実施形態のボールねじ1において、転走路6を含むボール通路8に介在させる全てのボール4(ボール径が互いに異なる第1ボール4A及び第2ボール4B)は鋼球である。要するに、本実施形態のボールねじ1においては、特許文献1に記載の弾性部材の代替品として第2ボール4Bが用いられる。第2ボール4Bはあくまでも「ボール」であることから、ボールねじ1の組立を困難なものにならしめることはなく、また、全てのボール4(4A,4B)を鋼球としていることから、前述した(3)及び(4)の課題については考慮する必要もない。
【0025】
ボールねじ1の負荷能力及び耐久性を最優先に考えるのであれば、ボール4の全てを「負荷ボール」として機能する第1ボール4Aとするのが好ましい。しかしながら、このようにすると、転走路6内で生じる「ボール4の競り合い現象」に起因する循環部7内でのボール詰まり、トルク変動等により、ボールねじ1が正確に作動しなくなる可能性がある。これに対し、本実施形態のように、第1ボール4A間に、第1ボール4Aよりもボール径が小さい第2ボール4Bを介在させておけば転走路6内での「ボール4の競り合い現象」の発生を防止し、ボールねじ1の良好な作動性を維持することができる。これは、第2ボール4Bが転走路6の幅方向で転走路6内を移動可能であることから、隣り合う第1ボール4Aの回転方向を逆方向とすることができるためである。
【0026】
そこで本発明者らは、ボールねじ1の耐久性を極力低下させることなく、作動性が良好なボールねじ1を実現するため、第2ボール4Bのボール径に着目し、上記のとおり、第2ボール4Bのボール径を第1ボール4Aのボール径の99.0%以上100%未満に制限することにした。上記のボール径の範囲は、以下に示す、転走路6(を含むボール通路8)に介在させるボール4の構成を互いに異ならせた7種類のボールねじサンプル(サンプル1~サンプル7)について、ボール転走面の耐久性を調査することで導き出した範囲である。
[サンプル1]第1ボール4A:30個、第2ボール4B:0個
[サンプル2]第1ボール4A:15個、第2ボール4B(ボール径が第1ボール4Aのボール径に対して99.9%のもの):15個
[サンプル3]第1ボール4A:15個、第2ボール4B(ボール径が第1ボール4Aのボール径に対して99.7%のもの):15個
[サンプル4]第1ボール4A:15個、第2ボール4B(ボール径が第1ボール4Aのボール径に対して99.3%のもの):15個
[サンプル5]第1ボール4A:15個、第2ボール4B(ボール径が第1ボール4Aのボール径に対して99.0%のもの):15個
[サンプル6]第1ボール4A:15個、第2ボール4B(ボール径が第1ボール4Aのボール径に対して98.7%のもの):15個
[サンプル7]第1ボール4A:15個、第2ボール4B:0個
【0027】
調査結果を、横軸を「転走面寿命回転数」とし、縦軸を「アキシャル荷重」とした
図3に示す。「転走面寿命回転数」とは、ボール転走面が耐久寿命に至る回転数であり、「アキシャル荷重」とはサンプルに負荷した軸方向荷重である。
図3に示すサンプル1とサンプル7の線図を対比すると明らかなように、いわゆる「負荷ボール」として機能する第1ボール4Aの個数が多いほどボール転走面(ボールねじ1)の耐久性が向上するのがわかる。また、サンプル2~サンプル6の線図からは、第2ボール4Bのボール径を小さくするほど高荷重条件下でのボール転走面の耐久性が低下し、ボール径が第1ボール4Aのボール径の99.0%未満である第2ボール4Bを含めたサンプル6の耐久性は、ボール4中に第2ボール4Bを含めていないサンプル7の耐久性と大差がないことがわかる。従って、第2ボール4Bとしては、第1ボール4Aのボール径に対して99.0%以上100%未満のボール径を有するものを使用する。
【0028】
本実施形態のボールねじ1において、複数のボール4中に含める第2ボール4Bは、そのボール径が、第1ボール4Aのボール径に対して1.0%未満小さいもの、と言い換えることができる。「第1ボール4Aのボール径に対して1.0%」の具体的な数値は、例えば20μm程度とすることができる。この場合、第1ボール4Aのボール径に対して0.1%ボール径が変わると、2μm程度ボール径が変わることになる。ボール4のボール径は1μm単位で調整することができるので、ボール径が第1ボール4Aのそれよりも1μm小さい第2ボール4Bを必要とする場合であっても、第1ボール4A及び第2ボール4Bの双方を容易に準備(調達)可能である。
【0029】
以上、本発明の一実施形態に係るボールねじ1について説明したが、本発明の実施の形態はこれに限られない。
【0030】
例えば、以上で説明した実施形態では、転走路6(を含むボール通路8)内にボール径が互いに異なる第1ボール4Aと第2ボール4Bを交互に配したが、転走路6内に、第1ボール4Aよりも所定量ボール径が小さい第2ボール4Bを配することで享受される上記の作用効果は、螺旋状の転走路6の1巻きにつき1つ以上の第2ボール4Bを配することによっても享受することができる(図示省略)。
【0031】
また、以上では、循環部材5としてエンドキャップ5Aを用いたボールねじ1(エンドキャップ式のボールねじ1)に本発明を適用した場合について説明したが、本発明は、循環部材5にエンドキャップ5A以外のものを採用したボールねじ1にも好ましく適用することができる。
図4は、その一例を示すものであり、循環部材5として、ナット3の外周面及び内周面に開口した孔部に嵌め込まれた「こま5B」を採用した、いわゆるこま式のボールねじ1である。循環部材5としてのこま5Bは、ねじ軸2の外周面(に形成された雄ねじ溝2a)との対向面に循環部7として機能する循環溝を有している。こま5Bは、ナット3の外径やナット3の全長に影響を与えないことから、こま式のボールねじ1は、
図1等を参照して説明したエンドキャップ式のボールねじ1よりもコンパクトにし易いという利点がある。
【0032】
図示は省略するが、本発明は、上記のエンドキャップ5Aやこま5B以外の公知の循環部材5、例えば、エンドデフレクタ、リターンチューブ又はガイドプレート(リターンプレート)を採用したボールねじ1に適用することもできる。ここで、ボール4中に第2ボール4Bを含めることにより享受される「ボール4の競り合い現象」に起因する循環部7内でのボール詰まり、トルク変動等の抑制効果は、特に循環部7の全長が長い循環方式のボールねじ1において有効に享受できる。これは、循環部7の全長が長い場合、ボール同士の競り合い箇所、換言すると摩擦量の蓄積量が多くなる分、大きなトルク変動が発生し易くなるからである。従って、本発明は、
図4に示したこま式のボールねじ1よりも、
図1に示したエンドキャップ式のボールねじ1や、エンドデフレクタ式、リターンチューブ式、リターンプレート式のボールねじ(図示省略)等に適用した方が大きな作用効果を享受することができる。
【0033】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0034】
1 ボールねじ
2 ねじ軸
2a 雄ねじ溝
3 ナット
3a 雌ねじ溝
4 ボール
4A 第1ボール
4B 第2ボール
5 循環部材
5A エンドキャップ(循環部材)
5B こま(循環部材)
6 転走路
7 循環部
8 ボール通路