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  • 特開-車高調整機能付き緩衝器 図1
  • 特開-車高調整機能付き緩衝器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124003
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車高調整機能付き緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/34 20060101AFI20240905BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20240905BHJP
   F16F 9/56 20060101ALI20240905BHJP
   B60G 17/044 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
F16F9/34
F16F9/46
F16F9/56 A
B60G17/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031870
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 宏友
(72)【発明者】
【氏名】粥川 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 浩司
【テーマコード(参考)】
3D301
3J069
【Fターム(参考)】
3D301AA01
3D301AA48
3D301DA08
3D301DA15
3D301DA41
3D301DA64
3D301DB35
3D301DB36
3D301DB38
3D301DB39
3D301DB40
3D301DB48
3D301DB50
3D301EB03
3D301EB09
3J069AA54
3J069CC09
3J069CC40
3J069EE11
3J069EE35
(57)【要約】
【課題】シリンダ内の圧力を増減させることによって車高を調整しても車両における乗心地の悪化を抑制できる車高調整機能付き緩衝器を提供する。
【解決手段】
本発明における車高調整機能付き緩衝器SAは、減衰力を調整可能な減衰力調整バルブ18とを有する緩衝器本体Dと、圧側室R2に連通されるリザーバRと、液体を貯留するタンクTと、タンクTとリザーバRとを連通する供給通路32および排出通路33と、供給通路32に設けれてタンクTからリザーバRまたは圧側室R2へ液体を供給可能なポンプ31と、排出通路33に設けられて開弁時にリザーバRまたは圧側室R2からタンクTへ向かう液体の流れを許容するバルブ36とを有するポンプユニットPとを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されて前記シリンダ内を液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、前記伸側室内に挿入されて前記シリンダに対して軸方向へ移動可能であって前記ピストンに連結されるピストンロッドと、減衰力を調整可能な減衰力調整バルブとを有する緩衝器本体と、
前記圧側室に連通されるリザーバと、
液体を貯留するタンクと、
前記タンクと前記リザーバとを連通する供給通路および排出通路と、前記供給通路に設けられて前記タンクから前記リザーバまたは前記圧側室へ液体を供給可能なポンプと、前記排出通路に設けられて開弁時に前記リザーバまたは前記圧側室から前記タンクへ向かう液体の流れを許容するバルブとを有するポンプユニットとを備えた
ことを特徴とする車高調整機能付き緩衝器。
【請求項2】
前記シリンダへ液体を供給して緩衝器本体を伸長させた後は、前記減衰力調整バルブにおける液体の流れに与える抵抗を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の車高調整機能付き緩衝器。
【請求項3】
前記シリンダに液体を給排して緩衝器本体を伸縮させている間は、前記減衰力調整バルブにおける液体の流れに与える抵抗を小さくする
ことを特徴とする請求項1に記載の車高調整機能付き緩衝器。
【請求項4】
前記緩衝器本体は、
前記リザーバから前記圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路と、
前記圧側室から前記伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路と、
前記伸側室と前記リザーバとを連通するとともに前記減衰力調整バルブが設けられる減衰力調整通路とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車高調整機能付き緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車高調整機能付き緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車高調整機能付き緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、ピストンに連結されるピストンロッドと、シリンダ内に連通される高圧室と、作動油を貯留する低圧室と、低圧室から高圧室へ作動油を供給するポンプとを備えて構成されて車両における車体と車輪との間に介装されて使用される。
【0003】
このように構成された車高調整機能付き緩衝器では、ポンプを駆動して高圧室に作動油を供給して、シリンダ内を加圧することにより、ピストンロッドをシリンダ内から押し出す力を大きくして、車高を上昇させることができる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-127734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように構成された車高調整機能付き緩衝器では、車体に積載した質量が増加して車高が低下するとポンプを駆動して車高を上昇させるが、高圧室内には窒素等の気体と作動油とが封入されており、高圧室内に作動油を供給すると、その分だけ気体の圧力も上昇して、気体のばね定数が大きくなる。
【0006】
他方、車高調整機能付き緩衝器における粘性減衰係数(減衰係数)と臨界減衰係数の比である減衰比ζは、車両におけるばね上質量をmとし、減衰係数をCとし、気体のばね定数をKとすると、ζ=C/{2×(m・K)1/2}となる。よって、車体積載荷重が増加して車高を上昇させようと高圧室に作動油を供給すると、気体の圧力が高くなるとともに気体のばね定数が大きくなって減衰比の値は小さくなる。そして、減衰比の値が小さくなりすぎると車高調整機能付き緩衝器の減衰力が不足して車体の振動を十分に抑制できなくなってしまい、車両における乗心地が悪化してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、シリンダ内の圧力を増減させることによって車高を調整しても車両における乗心地の悪化を抑制できる車高調整機能付き緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段における車高調整機能付き緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ内を液体が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、伸側室内に挿入されてシリンダに対して軸方向へ移動可能であってピストンに連結されるピストンロッドと、減衰力を調整可能な減衰力調整バルブとを有する緩衝器本体と、圧側室に連通されるリザーバと、液体を貯留するタンクと、タンクとリザーバとを連通する供給通路および排出通路と、供給通路に設けられてタンクからリザーバまたは圧側室へ液体を供給可能なポンプと、排出通路に設けられて開弁時にリザーバまたは圧側室からタンクへ向かう液体の流れを許容するバルブとを有するポンプユニットとを備えている。
【0009】
このように構成された車高調整機能付き緩衝器によれば、ポンプを駆動してタンクからリザーバ内へ液体を供給してリザーバの気体の圧力が上昇して気体のばね定数が大きくなっても、或いは、排出通路を通じてリザーバからタンクへ液体を排出してリザーバの気体の圧力が下降して気体のばね定数が小さくなっても、減衰力調整バルブによって緩衝器本体が伸縮する際に通過する液体に与える抵抗を調整できるので、減衰係数を大小させて、車高調整の前後で減衰比が変化するのを抑制できる。
【0010】
また、車高調整機能付き緩衝器は、シリンダに液体を供給して緩衝器本体を伸長させた後は、緩衝器本体を伸長させる前よりも減衰力調整バルブにおける液体の流れに与える抵抗を大きくするように構成されてもよい。このように構成された車高調整機能付き緩衝器によれば、リザーバ内への液体の供給によって気体のばね定数が大きくなっても、車高を上昇させても減衰比の変化を抑制でき、車両における乗心地を向上し得る。
【0011】
さらに、車高調整機能付き緩衝器は、シリンダに液体を給排して緩衝器本体を伸縮させている間は、減衰力調整バルブにおける液体の流れに与える抵抗を小さくしてもよい。このように構成された車高調整機能付き緩衝器によれば、シリンダ内に液体を給排させている間は減衰力調整バルブの抵抗を小さくするので、シリンダ内とリザーバとにおいて液体が移動しやすくなり、ポンプのエネルギ消費を低減できるとともに緩衝器本体が速やかに伸縮できるようになる。
【0012】
そして、車高調整機能付き緩衝器における緩衝器本体は、リザーバから圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路と、圧側室から伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路と、伸側室とリザーバとを連通するとともに減衰力調整バルブが設けられる減衰力調整通路とを備えている。このように構成された車高調整機能付き緩衝器によれば、緩衝器本体がユニフロー型に設定されて伸長しても収縮しても必ず液体がシリンダ内から減衰力調整通路を通過してリザーバへ排出されるようになるので、1つの減衰力調整バルブで伸長時と収縮時の両方の減衰力を調整できるとともに、減衰力調整バルブをシリンダ外に設置することができ、減衰力調整バルブの配線の取り回しが容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車高調整機能付き緩衝器によれば、シリンダ内の圧力を増減させることによって車高を調整しても車両における乗心地の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施の形態の車高調整機能付き緩衝器の縦断面図である。
図2】一実施の形態の車高調整機能付き緩衝器の液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示した各実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における車高調整機能付き緩衝器SAは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、伸側室R1内に挿入されてシリンダ1に対して軸方向へ移動可能であってピストン2に連結されるピストンロッド3と、減衰力を調整可能な減衰力調整バルブ18とを有する緩衝器本体Dと、圧側室R2に連通されてシリンダ1内にピストンロッド3が出入りする体積を補償するリザーバRと、液体を貯留するタンクTと、ポンプユニットPとを備えている。車高調整機能付き緩衝器SAは、図示しない車両における車体と車輪との間に介装され、車両走行中に入力される振動に応じて伸縮するとともに減衰力を発生して車体の振動を抑制する。
【0016】
まず、緩衝器本体Dについて説明する。本実施の形態における緩衝器本体Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、伸側室R1内に挿入されてシリンダ1に対して軸方向へ移動可能であってピストン2に連結されるピストンロッド3と、減衰力調整バルブ18とを備えている。また、緩衝器本体Dのシリンダ1の外周には、シリンダ1を覆う中間筒4と、中間筒4を覆う外筒5とが設けられており、シリンダ1と中間筒4との間および中間筒4と外筒5との間にはそれぞれ環状隙間が設けられている。
【0017】
中間筒4と外筒5との間の環状隙間は、中間筒4の中間部の外周に嵌合するポンプユニットPにおけるハウジング30によって上下に仕切られており、上方側の環状隙間でタンクTが形成され、下方側の環状隙間でリザーバRが形成されている。なお、本実施の形態の緩衝器本体Dは、シリンダ1の下端に嵌合するバルブケース6を備えており、バルブケース6によってリザーバRと圧側室R2とが区画されている。
【0018】
そして、シリンダ1の上端および中間筒4の上端には、環状であって内周にピストンロッド3が摺動自在に挿入されるとともに外筒5の上端の内周に固定されるロッドガイド7が嵌合している。さらに、シリンダ1の下端および中間筒4の下端には、シリンダ1の下端と中間筒4の下端を閉塞するバルブケース6が嵌合されている。外筒5の下端は、バルブケース6の下端に当接するボトムキャップ13によって閉塞されている。よって、シリンダ1、中間筒4およびバルブケース6は、外筒5の下端を閉塞するボトムキャップ13とロッドガイド7によって挟持されて外筒5内に不動に固定されている。
【0019】
外筒5は、上方筒5aと下方筒5bとを備えている。上方筒5aの上端には、前述したロッドガイド7が取り付けられており、上方筒5aの上端がロッドガイド7によって閉塞されている。また、上方筒5aの下端は、中間筒4の外周に嵌合するポンプユニットPにおけるハウジング30の上端に連結されている。下方筒5bは、下端が図示しない車両への取り付けを可能とするブラケット13aを備えたボトムキャップ13によって閉塞されており、上端がハウジング30の下端に連結されている。
【0020】
このように、中間筒4と外筒5との間の環状隙間は、ハウジング30によって上下に仕切られており、中間筒4の上方側を覆う上方筒5aと中間筒4との間の環状隙間でタンクTが形成され、中間筒4の下方側を覆う下方筒5bと中間筒4との間の環状隙間でリザーバRが形成されている。
【0021】
タンクT内には、液体が充填される他に気体が充填されている。なお、タンクTに充填される気体は、窒素等の不活性ガスであること好ましいが、大気等とされてもよい。
【0022】
また、リザーバR内には筒状のブラダ14が収容されている。ブラダ14の上端とブラダ14の下端は、それぞれ環状の止め輪15,16と下方筒5bとの間で挟持されており、ブラダ14はリザーバRを気体が封入された気室RGと液体が充填された液室RLとに仕切っている。ブラダ14で仕切られた気室RG内には、圧縮された気体が封入されており、常時、リザーバR内を加圧している。
【0023】
中間筒4のハウジング30に径方向で対向する部分には孔4aが設けられており、孔4aは、ハウジング30の中間筒4と対面する部分から開口してリザーバR内に通じる通路40を介してリザーバRに連通されている。また、シリンダ1は、上端近傍にシリンダ1と中間筒4との間の環状隙間に連通される孔1aを備えている。シリンダ1とシリンダ1の外周を覆う中間筒4との間に形成される環状隙間は、ロッドガイド7とバルブケース6とによって上下端が閉塞されるともに、孔1aを通じてシリンダ1内の伸側室R1内に連通されている。よって、伸側室R1とリザーバRは、孔1a、シリンダ1と中間筒4との間の環状隙間、孔4aおよび通路40を介して連通されており、これら孔1a、シリンダ1と中間筒4との間の環状隙間、孔4aおよび通路40によって減衰力調整通路VPが形成されている。
【0024】
ピストン2は、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1に対して軸方向となる図1中上下方向に移動可能とされるとともに、シリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画している。また、ピストン2には、伸側室R1と圧側室R2とを連通するピストン通路9aと、ピストン通路9aに設けられて圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ9bとを備えた整流通路9が設けられている。
【0025】
ピストンロッド3は、伸側室R1を貫通しており、一端がピストン2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されており、他端側はロッドガイド7内を通じてシリンダ1外に突出している。なお、ピストンロッド3は、伸側室R1の軸方向の全長に亘って挿通されているが、圧側室R2には挿入されていない。ピストンロッド3の下端の一部が圧側室R2に挿入されていても構わないが、ピストンロッド3は、圧側室R2の軸方向の全長に亘って挿入されることはない。
【0026】
バルブケース6は、シリンダ1と中間筒4との下端に嵌合して、シリンダ1と中間筒4の下端を閉塞している。また、バルブケース6は、シリンダ1内の圧側室R2とリザーバRとの間を仕切っており、圧側室R2とリザーバRとを連通する通路17aと、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ17bとを有する吸込通路17を備えている。
【0027】
なお、ピストンロッド3の上端には、車両の車体への取り付けを可能とするエンドボルト3aが設けられるとともに、上端近傍の外周には環状の上方ばね受20が取り付けられている。さらに、上方筒5aの外周には、環状の下方ばね受21が取り付けられている。ピストンロッド3の上端に設けられた上方ばね受20と上方筒5aの外周に設けられた下方ばね受21との間には、ピストンロッド3の外周に配置されたコイルばねでなる懸架ばねSが介装されている。よって、車高調整機能付き緩衝器SAをピストンロッド3のエンドボルト3aとボトムキャップ13のブラケット13aを利用して車両の車体と車輪との間に介装すると、懸架ばねSにより車体が弾性支持される。
【0028】
減衰力調整バルブ18は、図1および図2に示すように、減衰力調整通路VPの一部を形成するハウジング30に設けられた通路40の途中に設置されている。減衰力調整バルブ18は、本実施の形態では、ハウジング30に設けられて通路40の途中に設置される弁体18aと、弁体18aを閉弁させる方向へ付勢するばね18bと、ハウジング30の下端に取り付けられて通電時にばね18bに対抗して弁体18aを開弁させる方向へ推力を発生可能なソレノイド18cと、上流側となる伸側室R1の圧力を弁体18aに対して開弁方向へ作用させるパイロット通路18dとを備えたソレノイドバルブとされている。減衰力調整バルブ18は、ソレノイド18cに供給する電流量の調整によって、開弁圧を高低調整でき、非通電時に開弁圧を最大として通過する液体の流れに与える抵抗を最大とし、ソレノイド18cに与える電流量を最大にすると開弁圧を最小として通過する液体に流れに与える抵抗を最小とし、電流量に応じて開弁圧を最大から最小まで調整できる。なお、減衰力調整バルブ18は、非通電時に開弁圧を最小として、ソレノイドに与える電流量を最大にすると開弁圧を最大とするソレノイドバルブであってもよい。
【0029】
また、減衰力調整バルブ18は、ハウジング30に設けた通路40の途中に設けられており、ハウジング30に設置されているが、ロッドガイド7に設けられてもよい。減衰力調整バルブ18をロッドガイド7に設ける場合、シリンダ1に孔1aを設ける代わりに、ロッドガイド7にシリンダ1と中間筒4との間の環状隙間を伸側室R1に連通する減衰力調整通路を設け、当該減衰力調整通路の途中に減衰力調整バルブ18を設ければよい。また、減衰力調整バルブ18は、バルブケース6に設けられてもよい。減衰力調整バルブ18をバルブケース6に設ける場合、バルブケース6にシリンダ1と中間筒4との間の環状隙間に連通してリザーバRへ通じる通路を設けて、当該通路で減衰力調整通路の一部を形成するとともに、当該通路の途中に減衰力調整バルブ18を設ければよい。
【0030】
また、減衰力調整通路VPは、シリンダ1の外周にシリンダ1を覆う中間筒4を設けて、シリンダ1と中間筒4との間の環状隙間で一部が形成されているが、中間筒4と孔1aを設ける代わりに、ロッドガイド7とハウジング30との間にパイプを架け渡して、当該パイプ内をロッドガイド7に形成の通路を介して伸側室R1に連通するとともにハウジング30に設けた通路を介してリザーバRに連通し、当該パイプ、ロッドガイド7の通路、ハウジング30の通路によって減衰力調整通路VPを形成してもよい。この場合も、減衰力調整バルブ18は、ハウジング30とロッドガイド7の何れに設置されてもよい。
【0031】
さらには、減衰力調整通路VPは、中間筒4と孔1aを設ける代わりに、ロッドガイド7とバルブケース6との間にパイプを架け渡して、当該パイプ内をロッドガイド7に形成の通路を介して伸側室R1に連通するとともにバルブケース6に設けた通路を介してリザーバRに連通し、当該パイプ、ロッドガイド7の通路、バルブケース6の通路によって減衰力調整通路VPを形成してもよい。この場合も、減衰力調整バルブ18は、バルブケース6とロッドガイド7の何れに設置されてもよい。
【0032】
つづいて、ポンプユニットPについて説明する。ポンプユニットPは、図1および図2に示すように、ハウジング30と、ハウジング30に設置したポンプ31と、ハウジング30に設けられた液圧回路Cとを備えている。
【0033】
ハウジング30は、液圧回路Cと、後述するポンプ31のモータ31a以外の部品、減衰力調整バルブ18のソレノイド18c以外の部品を内方しており、図1に示すように、緩衝器本体Dのシリンダ1の外周に設けられた中間筒4が挿入される孔30aを備えている。そして、ハウジング30は、中間筒4の外周に嵌合されるとともに外筒5の上方筒5aと下方筒5bとに溶接等によって連結される。ハウジング30は、液圧回路Cの他に、ハウジング30の孔30aを形成する内周面から開口してハウジング30の下端に通じる通路40を備えており、中間筒4の外周に嵌合して外筒5に固定されると、通路40を中間筒4の孔4aに対向させる。このように、通路40は孔4aに連通されて、孔4aとともに減衰力調整通路VPの一部を形成する。
【0034】
また、液圧回路Cは、ハウジング30内に設けられており、タンクTとリザーバRとを連通する供給通路32および排出通路33と、供給通路32に設けられて供給通路32をタンクTからリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定する一対のチェックバルブ34,35と、排出通路33に設けられたバルブとしてのオペレートチェックバルブ36とを備えている。
【0035】
ポンプ31は、供給通路32の途中であって、チェックバルブ34とチェックバルブ35との間に設けられており、本実施の形態では、双方向へ吐出可能な双方向吐出型のポンプとされており、ハウジング30の上方に取り付けられたモータ31aの駆動によって正転および逆転可能となっている。そして、ポンプ31は、モータ31aの動力によって正転すると、チェックバルブ34,35が開弁してタンクTから液体を吸い込んでリザーバRを介してシリンダ1内に液体を供給する。このように、ポンプ31は、液体をタンクTからリザーバRへ供給可能である。なお、ポンプ31は、たとえば、内接歯車ポンプや外接歯車ポンプといった双方向へ液体の吐出が可能なポンプとされればよい。また、チェックバルブ34,35は、ポンプ31の停止時には、高圧側となるリザーバRの圧力によって閉弁するため、供給通路32を通じてリザーバRからタンクTへ液体が排出されることはない。
【0036】
排出通路33には、前述したようにオペレートチェックバルブ36が設けられている。オペレートチェックバルブ36は、リザーバRから圧力を受けても開弁せず排出通路33を遮断するが、ポンプ31からパイロット通路37を通じてパイロット圧が作用すると開弁してリザーバRからタンクTへ向かう液体の流れを許容するようになる。パイロット通路37は、ポンプ31を逆転させた場合にポンプ31が液体を吐出する吐出口とオペレートチェックバルブ36とを接続している。よって、ポンプ31を逆転させるとパイロット圧がオペレートチェックバルブ36に作用して、オペレートチェックバルブ36は、開弁してリザーバRからタンクTへ向かう液体の流れを許容する。なお、バルブは、本実施の形態ではオペレートチェックバルブ36とされているが、開弁時にリザーバRからタンクTへ向かう液体の流れを許容するバルブであればよいので、オペレートチェックバルブ以外にも、たとえば、電磁開閉バルブその他のバルブとされてもよい。また、ポンプ31の逆転によってバルブを開弁させる必要がない場合、ポンプ31はタンクTからリザーバRへ一方通行で液体を供給可能であればよいので、双方向吐出型ではなく一方向へのみ吐出が可能なポンプとされてもよい。
【0037】
また、液圧回路Cは、タンクTと供給通路32の途中であってリザーバ側のチェックバルブ35とポンプ31との間とを連通する逆転用通路38と、逆転用通路38に設けられてタンクTからポンプ31へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ39とを備えている。よって、ポンプ31を逆転させると、供給通路32におけるチェックバルブ34,35は閉弁したままとなるが、チェックバルブ39が開弁するため、ポンプ31はタンクTから液体を吸い込んで、パイロット通路37へ液体を吐出して、オペレートチェックバルブ36へパイロット圧を作用させ得る。
【0038】
以上のように、本実施の形態のポンプ31は、ハウジング30を介して緩衝器本体Dに装着されて緩衝器本体Dとともに車高調整機能付き緩衝器SAを構成している。
【0039】
つづいて、車高調整機能付き緩衝器SAの作動について説明する。まず、シリンダ1に対してピストン2が図1中上方へ移動する車高調整機能付き緩衝器SAの伸長時の作動について説明する。シリンダ1に対してピストン2が上方へ移動すると、伸側室R1が圧縮されるため、液体が伸側室R1からリザーバRへ減衰力調整通路VPおよび減衰力調整バルブ18を介して移動する。液体が減衰力調整バルブ18を通過する際に抵抗が与えられるため、伸側室R1内の圧力が上昇する。車高調整機能付き緩衝器SAの伸長時には、ピストン2がシリンダ1内を上方へ移動して圧側室R2が拡大されるため、バルブケース6に設けたチェックバルブ17bが開弁してリザーバRから液体が吸込通路17を介して圧側室R2に供給される。このように、リザーバRは、シリンダ1内から退出するピストンロッド3の体積を補償している。そして、車高調整機能付き緩衝器SAの伸長時には、伸側室R1内の圧力が上昇する一方で圧側室R2内の圧力はリザーバR内の圧力と略等しくなり、伸側室R1と圧側室R2の圧力に差が生じて、車高調整機能付き緩衝器SAは緩衝器本体Dの伸長を妨げる減衰力を発生する。また、減衰力調整バルブ18へ供給する電流量に応じて減衰力調整バルブ18が液体の流れに与える抵抗を調整できるので、車高調整機能付き緩衝器SAが発生する緩衝器本体Dの伸長を妨げる減衰力を高低調整し得る。
【0040】
他方、シリンダ1に対してピストン2が図1中下方へ移動する車高調整機能付き緩衝器SAの収縮時では、圧側室R2が圧縮されるため、チェックバルブ9bが開弁して液体が圧側室R2から拡大する伸側室R1へ整流通路9を介して移動する。車高調整機能付き緩衝器SAの収縮時では、シリンダ1内にピストンロッド3が侵入するため、ピストンロッド3がシリンダ1内に侵入する体積分の液体がシリンダ1内で過剰となり、この過剰分の液体が伸側室R1からリザーバRへ減衰力調整通路VPおよび減衰力調整バルブ18を介して移動する。このように、リザーバRは、シリンダ1内へ侵入するピストンロッド3の体積を補償している。そして、減衰力調整バルブ18が液体の流れに抵抗を与えるため、シリンダ1内の圧力が上昇し、ピストン2の伸側室R1に面する受圧面積よりも圧側室R2に面する受圧面積がピストンロッド3の断面積分だけ大きいため、車高調整機能付き緩衝器SAは緩衝器本体Dの収縮を妨げる減衰力を発生する。また、減衰力調整バルブ18へ供給する電流量に応じて減衰力調整バルブ18が液体の流れに与える抵抗を調整できるので、車高調整機能付き緩衝器SAが発生する緩衝器本体Dの収縮を妨げる減衰力を高低調整し得る。
【0041】
つづいて、ポンプ31を駆動して車高調整機能付き緩衝器SAによる車高調整時の作動について説明する。まず、リザーバRは、前述した通り、ブラダ14内に封入された圧縮された気体によって加圧されており、吸込通路17および整流通路9を通じてリザーバR内の圧力がシリンダ1内に伝搬しており、車高調整機能付き緩衝器SAが静止した状態では、シリンダ1内の圧力はリザーバR内の圧力と略同じ圧力となっている。つまり、シリンダ1内もブラダ14内に封入された圧縮された気体によって常時加圧されている。
【0042】
圧側室R2内の圧力は、ピストン2を図1中で押し上げる方向に作用しており、伸側室R1内の圧力は、ピストン2を図1中で押し下げる方向に作用している。前述した通り、ピストン2の圧側室R2の圧力を受ける受圧面積は、ピストン2の伸側室R1の圧力を受ける受圧面積よりもピストンロッド3の断面積分だけ大きいことから、ピストン2は、常時、シリンダ1内の圧力にピストンロッド3の断面積を乗じた値の力によって図1中上方へ向けて付勢されている。このピストン2を図1中上方へ向けて付勢する力は、シリンダ1内の圧力に比例することから、ポンプ31を駆動してリザーバRを通じてシリンダ1内に液体を供給すればシリンダ1内の圧力を上昇させてピストン2を上方へ向けて付勢する力を増大させて緩衝器本体Dを伸長させ得る。
【0043】
ポンプ31は、モータ31aの駆動によって正転すると、チェックバルブ34,35が開弁して、供給通路32を通じてタンクTから液体を吸い込んでリザーバR内に液体を供給する。ポンプ31が供給した液体によってリザーバR内の圧力が上昇するため、チェックバルブ17bが開弁して吸込通路17を通じてリザーバRから圧側室R2にも液体が供給される。このように、ポンプ31は、正転駆動させられると、タンクT内の液体を吸い込んでシリンダ1内に供給できる。
【0044】
そして、圧側室R2内への液体の流入によってピストン2が上方へ押し上げられるので、容積が減少する伸側室R1から減衰力調整バルブ18が開弁して減衰力調整通路VPを介して伸側室R1からリザーバRへ液体が移動する。よって、ポンプ31を駆動してタンクTから液体をシリンダ1内に供給すると、リザーバR内およびシリンダ1内の圧力が略等しく上昇する。圧側室R2内の圧力の上昇によって、車高が所望する高さになった後、ポンプ31を停止させれば、チェックバルブ34,35が閉弁し、減衰力調整バルブ18も閉弁してリザーバRとシリンダ1内の液体量を維持できるので車高も維持される。ポンプ31を正転させてタンクTから液体を圧側室R2内に供給し緩衝器本体Dを伸長させて車高を上昇させる場合、シリンダ1に対するピストン2の上方側への移動によって容積が減少する伸側室R1から減衰力調整バルブ18を通じてリザーバRへ液体が移動するため、減衰力調整バルブ18の抵抗を最小にすると、ピストン2の上昇を妨げる力が最小となり、ポンプ31におけるエネルギ消費を低減できるとともに速やかに車高を上昇させることができる。
【0045】
前述とは逆に、リザーバRからタンクTへ液体を排出すれば、シリンダ1内の圧力が減少するので、ピストン2を上方へ向けて付勢する力を減少させて車高を下降させ得る。そこで、ポンプ31は、モータ31aの駆動によって逆転すると、チェックバルブ34,35を閉弁させる一方で、チェックバルブ39を開弁させる。よって、ポンプ31は、逆転すると逆転用通路38を通じてタンクTから十分な量の液体を吸い込んでパイロット通路37を通じて吐出圧をパイロット圧としてオペレートチェックバルブ36に作用させてオペレートチェックバルブ36を開弁させる。オペレートチェックバルブ36が開弁すると、排出通路33を介してリザーバRとタンクTとが連通されるので、リザーバR内から液体がタンクTへ移動する。
【0046】
リザーバRから液体がタンクTへ移動すると、リザーバR内の圧力が減少して、減衰力調整バルブ18が開弁して伸側室R1からリザーバRへ液体が移動し、さらに、伸側室R1内の液体の減少によってチェックバルブ9bが開弁して伸側室R1から圧側室R2に整流通路9を介して液体が移動する。よって、ポンプ31を逆転させてリザーバRからタンクTへ液体を排出させると、リザーバR内およびシリンダ1内の圧力が略等しく下降するので、ピストン2を上方へ向けて付勢する力が減少して車高が下降する。そして、車高が所望する高さになった後、モータ31bを停止すれば、オペレートチェックバルブ36へのパイロット圧が解消されてオペレートチェックバルブ36が閉弁して排出通路33を通じてのリザーバRとタンクTとの連通が断たれ、チェックバルブ34,35も閉弁状態を維持するのでリザーバRとシリンダ1内の液体量を維持でき車高も維持される。ポンプ31を逆転させてリザーバRから液体をタンクTへ排出して緩衝器本体Dを収縮させて車高を下降させる場合、シリンダ1に対するピストン2の下方側への移動によって伸側室R1から減衰力調整バルブ18を通じてリザーバRへ液体が移動するため、減衰力調整バルブ18の抵抗を最小にすると、ピストン2の下降を妨げる抵抗が最小となり、車高の急激な下降を緩和しつつも速やかに車高を下降させることができる。以上のように、車高調整機能付き緩衝器SAでは、ポンプ31の駆動によってシリンダ1内に液体を給排することによって、シリンダ1内の圧力を増減させて車高を調整できる。
【0047】
なお、ハウジング30に設けられた液圧回路Cは、タンクTとリザーバRとを連通するリリーフ通路41と、リリーフ通路41に設けられてリザーバR内の圧力が過剰となると開弁するリリーフバルブ42とを備えており、緩衝器本体Dの収縮或いはポンプ31からリザーバRへの液体の供給により、リザーバR内の圧力が過大となる場合には、リリーフバルブ42が開弁してリリーフ通路41を介してリザーバRの液体をタンクTへ逃がして、リザーバR内の圧力が過大となるのを防止でき、緩衝器本体D内からの液体の漏洩を防止できる。
【0048】
以上、車高調整機能付き緩衝器SAは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2と、伸側室R1内に挿入されてシリンダ1に対して軸方向へ移動可能であってピストン2に連結されるピストンロッド3と、減衰力を調整可能な減衰力調整バルブ18とを有する緩衝器本体Dと、圧側室R2に連通されるリザーバRと、液体を貯留するタンクTと、タンクTとリザーバRとを連通する供給通路32および排出通路33と、供給通路32に設けられてタンクTからリザーバRへ液体を供給可能なポンプ31と、排出通路33に設けられて開弁時にリザーバRからタンクTへ向かう液体の流れを許容するオペレートチェックバルブ(バルブ)36とを有するポンプユニットPとを備えている。
【0049】
このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAでは、ポンプ31の停止時では緩衝器本体Dが伸縮する際に減衰力を発生して車両の車体の振動を抑制できるとともに減衰力を調整して車両における乗心地を向上できるだけでなく、ポンプ31を正転させることによりタンクTからシリンダ1内に液体を供給して緩衝器本体Dを伸長させて車高を上昇させ得るとともに、ポンプ31を逆転させることによりオペレートチェックバルブ(バルブ)36を開弁させて排出通路33を介してシリンダ1内からタンクTへ液体を排出させることで緩衝器本体Dを収縮させて車高を下降させ得る。
【0050】
そして、車高調整機能付き緩衝器SAでは、ポンプ31を駆動してタンクTからリザーバR内へ液体を供給してリザーバRの気体の圧力が上昇して気体のばね定数が大きくなっても、或いは、排出通路33を通じてリザーバRからタンクTへ液体を排出してリザーバRの気体の圧力が下降して気体のばね定数が小さくなっても、減衰力調整バルブ18によって緩衝器本体Dが伸縮する際に通過する液体に与える抵抗を調整できるので、減衰係数を大小調整し得る。減衰比ζは、前述した通り、ζ=C/{2×(m・K)1/2}で求めることができるが、リザーバR内への液体の供給によってリザーバR内の気体のばね定数Kが大きくなっても、その分だけ、減衰力調整バルブ18が通過する液体の流れに与える抵抗を大きくして減衰係数を大きくでき、リザーバR内からタンクTへ液体を排出してリザーバR内の気体のばね定数Kが小さくなっても、その分だけ、減衰力調整バルブ18が通過する液体の流れに与える抵抗を小さくして減衰係数を小さくできるから、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAによれば、車高調整の前後で減衰比ζが変化するのを抑制できる。以上より、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAによれば、シリンダ1内の圧力を増減させることによって車高を調整しても、減衰比の変化を抑制できるので、車両における乗心地の悪化を抑制できる。
【0051】
さらに、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAでは、ポンプ31が供給通路32に設けられて正転時にタンクTからリザーバRへ液体を供給する双方向吐出型のポンプとされており、バルブがポンプ31の逆転時にポンプ31からのパイロット圧で開弁するとともに開弁時にリザーバRからタンクTへ向かう液体の流れを許容するオペレートチェックバルブ36とされているので、ポンプ31を利用してオペレートチェックバルブ36を開弁させてシリンダ1内からタンクTへ液体を排出させることで緩衝器本体Dを収縮させて車高を下降させ得る。よって、ソレノイド等の駆動源を備えずともポンプ31を利用してバルブを開閉制御できるので、車高調整機能付き緩衝器SAの部品点数とコストを削減できる。なお、供給通路32および排出通路33は、タンクTと圧側室R2とを連通して、ポンプ31はタンクTから圧側室R2へ液体を供給し、バルブは開弁時に圧側室R2からタンクTへ向かう液体の流れを許容してもよい。このようにしても車高調整機能付き緩衝器SAの車高調整の前後で減衰比ζが変化するのを抑制でき、車両における乗心地の悪化を抑制できる。
【0052】
また、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAでは、シリンダ1に液体を供給して緩衝器本体Dを伸長させた後は、緩衝器本体Dを伸長させる前よりも減衰力調整バルブ18における液体の流れに与える抵抗を大きくする。このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、リザーバR内への液体の供給によって気体のばね定数Kが大きくなっても、車高を上昇させても減衰比ζの変化を抑制でき、車両における乗心地を向上し得る。
【0053】
さらに、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAでは、シリンダ1に液体を給排して緩衝器本体Dを伸縮させている間は、減衰力調整バルブ18における液体の流れに与える抵抗を小さくする。このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、シリンダ1内に液体を給排させている間は減衰力調整バルブ18の抵抗を小さくするので、シリンダ1内とリザーバRとにおいて液体が移動しやすくなり、ポンプ31のエネルギ消費を低減できるとともに緩衝器本体Dが速やかに伸縮できるようになる。
【0054】
そして、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAにおける緩衝器本体Dは、リザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路17と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路9と、伸側室R1とリザーバRとを連通するとともに減衰力調整バルブ18が設けられる減衰力調整通路VPとを備えている。このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、緩衝器本体Dがユニフロー型に設定されて伸長しても収縮しても必ず液体がシリンダ1内から減衰力調整通路VPを通過してリザーバRへ排出されるようになるので、1つの減衰力調整バルブ18で伸長時と収縮時の両方の減衰力を調整できるとともに、減衰力調整バルブ18をシリンダ1外に設置することができ、減衰力調整バルブ18の配線の取り回しが容易となる。
【0055】
なお、前述した車高調整機能付き緩衝器SAでは、ピストン2には整流通路9のみが設けられて、バルブケース6には吸込通路17のみが設けられているが、ピストン2に伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブを備えた伸側減衰通路を設けるとともに、バルブケース6に圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブを備えた圧側減衰通路を設けてもよい。また、ピストン2に伸側減衰通路および圧側減衰通路を設ける場合や伸側室R1と圧側室R2とを行き交う液体の流れに抵抗を与える減衰通路を設ける場合、車高調整の前後で伸側減衰力或いは圧側減衰力の調整にて車両の乗心地を確保できるようであれば、伸側減衰力減衰係数を大小させて、車高調整の前後で減衰比がピストン2に伸側室R1と圧側室R2とを連通するように減衰力調整通路VPを設けて、当該減衰力調整通路VPに伸側減衰力或いは圧側減衰力を調整できるように減衰力調整バルブ18を設けてもよい。
【0056】
さらに、減衰力調整バルブ18自体或いは通路の設定によって、減衰力調整通路VPを双方向へ通過する液体の流れに抵抗を与えることができるようにして、減衰力調整通路VPで伸側室R1と圧側室R2とを連通するしてもよい。このようにする場合、たとえば、ハウジング30によってシリンダ1と中間筒4との間の環状隙間をハウジング30によって上方の空間と下方の空間とに仕切って、上方の空間をシリンダ1の孔1aによって伸側室R1に連通し、下方の空間をシリンダ1の下端の近傍に孔を設けて圧側室R2に連通し、ハウジング30に通路40の代わりに前記の上方の空間と前記下方の空間とを連通する通路を設けて、ハウジング30に設けた前記通路に減衰力調整バルブ18を設ければよい。
【0057】
また、減衰力調整通路VPを伸側室R1と圧側室R2とを連通するように設ける場合、緩衝器本体Dは、バルブケース6を廃止して、圧側室R2とリザーバRとを一続きにする、所謂、モノチューブ型緩衝器と同様の構成を採用してもよい。
【0058】
また、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAでは、緩衝器本体Dは、シリンダ1を覆う外筒5を有し、シリンダ1と外筒5との間の環状隙間をタンクTとリザーバRとに仕切るハウジング30を備え、ハウジング30にポンプ31と減衰力調整バルブ18とが設置されている。
【0059】
このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、ポンプ31と減衰力調整バルブ18とが設置されるハウジング30によってタンクTとリザーバRとを仕切っているので、ポンプ31と減衰力調整バルブ18とを緩衝器本体Dの至近に配置して一体化できるとともに、タンクTを緩衝器本体Dに設けることができる。よって、車高調整機能付き緩衝器SAによれば、ポンプ31と減衰力調整バルブ18とを備えていても小型化が可能であって車両への搭載性を向上できる。また、このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAでは、ポンプ31と減衰力調整バルブ18とがシリンダ1の下端より上方のシリンダ1の中間部分に装着されるので、車両の走行中の飛び石や冠水路走行時の水しぶきからモータ31aとソレノイド18cとを保護できる。
【0060】
また、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAは、ポンプユニットPにおける液圧回路Cがポンプ31を保持するハウジング30に設けられている。このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、タンクTとリザーバRとを仕切るハウジング30にポンプ31が一体化されるとともにポンプユニットPの車高調整を行うために必要な液圧回路Cをハウジング30に集約しているので、より一層小型化でき、製造コストも低減できる。
【0061】
さらに、本実施の形態の車高調整機能付き緩衝器SAでは、モータ31aがハウジング30に対して図1中上方側となるピストンロッド側に装着されているので、モータ31aと路面との間にハウジング30が配置される格好となって、ハウジング30が盾となって車両走行中に路面側から飛来する石や水しぶきがモータ31aに衝突する機会を減少させ得る。よって、このように構成された車高調整機能付き緩衝器SAによれば、モータ31aの保護効果を向上させ得る。なお、モータ31bをハウジング30の下方に取り付けて、ソレノイド18cをハウジング30の上方に取り付けるようにしてもよい。
【0062】
なお、前述したところでは、タンクT、リザーバR、ポンプPおよび液圧回路Cは、緩衝器本体Dに一体化されているが、緩衝器本体Dと独立に設けられてホース等の配管によって緩衝器本体Dと接続されてもよい。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1・・・シリンダ、2・・・ピストン、3・・・ピストンロッド、9・・・整流通路、17・・・吸込通路、18・・・減衰力調整バルブ、31・・・ポンプ、32・・・供給通路、33・・・排出通路、36・・・オペレートチェックバルブ(バルブ)、D・・・緩衝器本体、P・・・ポンプユニット、R・・・リザーバ、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室、SA・・・車高調整機能付き緩衝器、T・・・タンク、VP・・・減衰力調整通路
図1
図2