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特開2024-124008ガラス樹脂積層体の製造方法及びガラス樹脂積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124008
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ガラス樹脂積層体の製造方法及びガラス樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B32B17/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031880
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】桑原 耕治
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AK01A
4F100AT00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100EJ15B
4F100EJ82
4F100GB07
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】 複数のガラス樹脂積層体を効率良く製造する。
【解決手段】 ガラス樹脂積層体1の製造方法は、所定形状に加工された樹脂板R2を用意する準備工程S1と、樹脂板R2をガラス板G1に積層して第一積層体LM1を形成する積層工程S2と、第一積層体LM1のガラス板G1にエッチング処理を施すエッチング工程S3と、を備える。積層工程S2では、複数の樹脂板R2をガラス板G1に重なるように配置する。エッチング工程S3では、樹脂板R2が重ねられていないガラス板G1の一部G1a2をエッチング処理によって除去することで第二積層体LM2を形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状に加工された樹脂板を用意する準備工程と、前記樹脂板をガラス板に積層して第一積層体を形成する積層工程と、前記第一積層体の前記ガラス板にエッチング処理を施すエッチング工程と、を備えるガラス樹脂積層体の製造方法であって、
前記積層工程では、複数の前記樹脂板を前記ガラス板に重なるように配置し、
前記エッチング工程では、前記樹脂板が重ねられていない前記ガラス板の一部を前記エッチング処理によって除去することで第二積層体を形成することを特徴とするガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項2】
前記ガラス板は、前記樹脂板側に位置する第一主面と、前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有し、
前記ガラス板の前記第二主面に保護シートを固定する固定工程を備える請求項1に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング工程では、前記ガラス板の前記第一主面において前記樹脂板が重ねられていない前記一部に前記エッチング処理を施す請求項2に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂板は、前記ガラス板側に位置する第一主面と、前記樹脂板の前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有し、
前記保護シートは、前記樹脂板の前記第一主面の面積よりも大きな面積を有する請求項2又は3に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項5】
前記ガラス板の厚みは、10μm以上300μm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング工程後に、前記第二積層体の端面を加工する端面加工工程を備える請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項7】
前記エッチング工程では、エッチング槽に収容されるエッチング液に前記第一積層体を浸漬する請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項8】
前記エッチング工程では、前記第一積層体の前記ガラス板に対してエッチング液をシャワーにより付与する請求項1から3のいずれか一項に記載のガラス樹脂積層体の製造方法。
【請求項9】
端面を有する樹脂板と端面を有するガラス板とが積層されてなるガラス樹脂積層体であって、
前記ガラス板の厚みは、10μm以上300μm以下であり、
前記ガラス板の前記端面は、エッチング処理が施されたエッチング面であり、
前記樹脂板と前記ガラス板とは、前記樹脂板の前記端面と前記ガラス板の前記端面とが一致するように積層されてなることを特徴とするガラス樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス樹脂積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器のカバー部材や、建材などの幅広い分野において、耐久性と軽量性の両立を図る観点などから、樹脂板とガラス板とを接着層を介して積層一体化したガラス樹脂積層体が用いられている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-117191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス樹脂積層体を製造する場合に、樹脂板の端面とガラス板の端面とが段差なく一致するように樹脂板とガラス板とを積層することが求められる場合がある。この場合には、樹脂板とガラス板とを重ね合わせる際に、樹脂板の端面とガラス板の端面とを精度良く位置合わせする必要がある。
【0005】
このようなガラス樹脂積層体の製造方法では、多数のガラス樹脂積層体を製造する場合に、樹脂板とガラス板の位置合わせ作業が煩雑となり、ガラス樹脂積層体を効率良く製造することができないという問題があった。また、樹脂板とガラス板のそれぞれの加工寸法精度に差が生じた場合、樹脂板の端面とガラス板の端面とが段差なく一致することは不可能となる。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、複数のガラス樹脂積層体を効率良く製造することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、所定形状に加工された樹脂板を用意する準備工程と、前記樹脂板をガラス板に積層して第一積層体を形成する積層工程と、前記第一積層体の前記ガラス板にエッチング処理を施すエッチング工程と、を備えるガラス樹脂積層体の製造方法であって、前記積層工程では、複数の前記樹脂板を前記ガラス板に重なるように配置し、前記エッチング工程では、前記樹脂板が重ねられていない前記ガラス板の一部を前記エッチング処理によって除去することで第二積層体を形成することを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、複数の樹脂板をガラス板に重ねた後に、樹脂板が重ねられていないガラス板の一部をエッチング処理によって除去することで、樹脂板が重ねられているガラス板の部分のみを残存させることができる。残存したガラス板は、樹脂板の形状と同一となるため、従来のように樹脂板に対するガラス板の位置合わせを行う必要がない。しかも、このガラス板は、エッチング工程により樹脂板の数と同じ数だけ同時に形成されることになる。これにより、複数のガラス樹脂積層体を効率良く製造することが可能となる。
【0009】
(2) 上記(1)に記載のガラス樹脂積層体の製造方法において、前記ガラス板は、前記樹脂板側に位置する第一主面と、前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有してもよく、本方法は、前記ガラス板の前記第二主面に保護シートを固定する固定工程を備えてもよい。
【0010】
かかる構成によれは、ガラス板の第二主面に保護シートを固定することで、エッチング工程において第二主面がエッチングされることを防止できる。これにより、一定の厚みを有するガラス板を含むガラス樹脂積層体を製造することができる。
【0011】
(3) 上記(2)に記載のガラス樹脂積層体の製造方法において、前記エッチング工程では、前記ガラス板の前記第一主面において前記樹脂板が重ねられていない前記一部に前記エッチング処理を施してもよい。
【0012】
(4) 上記(2)又は(3)に記載のガラス樹脂積層体の製造方法において、前記樹脂板は、前記ガラス板側に位置する第一主面と、前記樹脂板の前記第一主面の反対側に位置する第二主面とを有してもよく、前記保護シートは、前記樹脂板の前記第一主面の面積よりも大きな面積を有してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、エッチング工程によって形成される複数のガラス板の各端面と、樹脂板の端面とを一致させることができる。
【0014】
(5) 上記(1)から(4)のいずれかに記載のガラス樹脂積層体の製造方法において、前記ガラス板の厚みは、10μm以上300μm以下であってもよい。
【0015】
(6) 上記(1)から(5)のいずれかに記載のガラス樹脂積層体の製造方法において、前記エッチング工程後に、前記第二積層体の端面を加工する端面加工工程を備えてもよい。
【0016】
(7) 上記の(1)から(6)のいずれかに記載のガラス樹脂積層体の製造方法において、前記エッチング工程では、エッチング槽に収容されるエッチング液に前記第一積層体を浸漬してもよい。
【0017】
(8) 上記の(1)から(6)のいずれかに記載のガラス樹脂積層体の製造方法において、前記エッチング工程では、前記第一積層体の前記ガラス板に対してエッチング液をシャワーにより付与してもよい。
【0018】
(9) 本発明は上記の課題を解決するためのものであり、端面を有する樹脂板と端面を有するガラス板とが積層されてなるガラス樹脂積層体であって、前記ガラス板の厚みは、10μm以上300μm以下であり、前記ガラス板の前記端面は、エッチング処理が施されたエッチング面であり、前記樹脂板と前記ガラス板とは、前記樹脂板の前記端面と前記ガラス板の前記端面とが一致するように積層されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のガラス樹脂積層体を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ガラス樹脂積層体の斜視図である。
図2】ガラス樹脂積層体の断面図である。
図3】ガラス樹脂積層体の製造方法を示すフローチャートである。
図4】準備工程を示す斜視図である。
図5】準備工程を示す斜視図である。
図6】積層工程を示す斜視図である。
図7】積層工程を示す斜視図である。
図8】エッチング工程を示す断面図である。
図9】エッチング工程を示す断面図である。
図10】エッチング工程の他の例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。図1乃至図10は、本発明に係るガラス樹脂積層体及びその製造方法の一実施形態を示す。
【0022】
図1及び図2は、本方法によって製造されたガラス樹脂積層体を示す。ガラス樹脂積層体1は、樹脂板2と、ガラス板3と、樹脂板2とガラス板3との間に位置する接着層4とを備える。
【0023】
樹脂板2は、例えばポリカーボネート等の透明樹脂により構成される。樹脂板2は楕円形状に構成されるが、樹脂板2の形状は本実施形態に限定されない。樹脂板2は、多角形状、円形状その他の各種形状に構成され得る。樹脂板2の厚みは、例えば50μm以上500μm以下である。
【0024】
図2に示すように、樹脂板2は、ガラス板3側に位置する第一主面2aと、第一主面2aの反対側に位置する第二主面2bと、第一主面2aと第二主面2bとを繋ぐ端面2cと、を有する。
【0025】
ガラス板3は、透明なガラスにより構成される。ガラス板3は、例えばケイ酸塩ガラス、シリカガラスであることが好ましく、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノケイ酸塩ガラスであることがより好ましく、無アルカリガラスであることが更に好ましい。無アルカリガラスを用いると、透明性が向上するとともに、アルカリ溶出による劣化を防ぐこともできる。
【0026】
ガラス板3は、例えば、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドローダウンドロー法などのダウンドロー法や、フロート法によって成形されたものが利用できる。
【0027】
ガラス板3は、樹脂板2と同一の形状を有しており、本実施形態では楕円形状に構成される。ガラス板3の形状は本実施形態に限定されず、多角形状、円形状その他の各種形状に構成され得る。ガラス板3の厚みは、例えば10μm以上300μm以下である。
【0028】
ガラス板3は、樹脂板2の第一主面2a側に位置する第一主面3aと、第一主面3aの反対側に位置する第二主面3bと、第一主面3aと第二主面3bとを繋ぐ端面3cと、を有する。ガラス板3の端面3cは、エッチング処理が施されたエッチング面である。
【0029】
樹脂板2とガラス板3とは、同じ寸法で構成されている。このため、樹脂板2とガラス板3とは、樹脂板2の端面2cとガラス板3の端面3cとが段差なく一致するように積層されている。
【0030】
接着層4は、シート状に構成されており、一方の面が樹脂板2の第一主面2aに貼り付けられ、他方の面がガラス板3の第一主面3aに貼り付けられている。接着層4は、光学透明接着剤(OCA)により構成されることが好ましい。接着層4の厚みは、例えば5μm以上500μm以下である。
【0031】
以下、上記構成のガラス樹脂積層体1を製造する方法について説明する。図3に示すように、本方法は、準備工程S1と、積層工程S2と、エッチング工程S3と、端面加工工程S4と、を備える。
【0032】
図4及び図5に示すように、準備工程S1では、大型の樹脂板(以下「第一樹脂板」という)R1を所定形状に加工することで、複数の樹脂板を用意する。図4では、第一樹脂板R1から得られる複数の樹脂板を二点鎖線で仮想的に示している。
【0033】
第一樹脂板R1は、第一主面R1aと、第二主面R1bとを有する。図4に示すように、第一樹脂板R1の第一主面R1aには、その全面に接着層(以下「第一接着層」という)AL1が貼り付けられる。第一接着層AL1は、光学透明接着剤(OCA)によりシート状に構成される。第一接着層AL1の一方の面は、第一樹脂板R1の第一主面R1aに貼り付けられ、第一接着層AL1の他方の面は図示しない剥離紙により覆われている。第一接着層AL1は、第一樹脂板R1の第一主面R1aと同一の面積を有するが、第一主面R1aよりも大きな面積を有していてもよい。
【0034】
準備工程S1では、大型の第一樹脂板R1から小型の複数の樹脂板を得るために、例えばプレス加工機による打ち抜き加工が用いられる。このプレス加工機に備えられた打ち抜き型により、第一樹脂板R1から楕円状に構成される複数の樹脂板(以下「第二樹脂板」という)R2が打ち抜かれる(図5参照)。第二樹脂板R2は、第一主面R2aと、第二主面R2bと、端面R2cとを有する。第二樹脂板R2は、図1及び図2に示したガラス樹脂積層体1の樹脂板2に相当する。
【0035】
第一樹脂板R1に貼り付けられていた第一接着層AL1は、プレス加工機によって第一樹脂板R1とともに撃ち抜かれる。これにより、第二樹脂板R2の第一主面R2aには、第二樹脂板R2の同一形状(楕円形状)の接着層(以下「第二接着層」という)AL2が形成される。第二接着層AL2は、図1及び図2に示したガラス樹脂積層体1の接着層4に相当する。第二接着層AL2の一方の面は第二樹脂板R2の第一主面R2aに貼り付けられ、第二接着層AL2の他方の面は図示しない楕円形状の剥離紙により覆われている。
【0036】
図6及び図7に示すように、積層工程S2では、一枚の大型のガラス板(以下、「第一ガラス板」という)G1を用意する。第一ガラス板G1は、第二樹脂板R2の面積よりも大きな面積を有する。第一ガラス板G1は、第一主面G1aと、第一主面G1aの反対側に位置する第二主面G1bとを有する。第一ガラス板G1の第二主面G1bには、その全面に保護シートSが固定される(固定工程)。
【0037】
保護シートSは、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド等の耐酸性樹脂により構成される。保護シートSは、第二樹脂板R2の第一主面R2aの面積よりも大きな面積を有する。保護シートSは、第一ガラス板G1の第二主面G1bの面積と同一の面積を有するが、第二主面G1bの面積よりも大きな面積を有していてもよい。保護シートSは、粘着性を有しており、第一ガラス板G1の第二主面G1bに貼り付けることができる。
【0038】
積層工程S2では、複数の第二樹脂板R2を第一ガラス板G1に重なるように配置する。すなわち、第二樹脂板R2の第一主面R2aと、第一ガラス板G1の第一主面G1aとを重ね合わせる。より詳細には、第二接着層AL2を覆う剥離紙を取り除いた後に、第二樹脂板R2の第一主面R2aに貼り付いている第二接着層AL2を第一ガラス板G1の第一主面G1aに接触させる。
【0039】
これにより、第二樹脂板R2は、第一ガラス板G1に固定される。この固定工程により、第一ガラス板G1と複数の第二樹脂板R2を有する第一積層体LM1が形成される(図7参照)。
【0040】
図7に示すように、第一ガラス板G1に固定された複数の第二樹脂板R2は、一定の間隔をおいて配列されている。このため、第一積層体LM1における第一ガラス板G1の第一主面G1aは、第二樹脂板R2と接触する接触部G1a1と、第二樹脂板R2と接触していない非接触部G1a2とを有する。非接触部G1a2は、第二樹脂板R2の第一主面R2aと重なっていない部分であり、露出している部分である。
【0041】
本実施形態では、第一ガラス板G1に固定される複数の第二樹脂板R2を規則的に配置した例を示すが、これに限らず、複数の第二樹脂板R2を第一ガラス板G1に対して不規則に配置してもよい。これにより、複数の第二樹脂板R2を第一ガラス板G1に対して迅速に配置することができる。なお、複数の第二樹脂板R2を不規則に配置する場合、第二樹脂板R2どうしが接触しないようにする。
【0042】
図8及び図9に示すように、エッチング工程S3では、エッチング槽EBに収容されたエッチング液ESに第一積層体LM1を浸漬する。これにより、第二樹脂板R2が重ねられていない第一ガラス板G1の一部、すなわち第一主面G1aの非接触部G1a2を、エッチング処理によって除去する。エッチング液ESとしては、フッ酸等の酸性のものが使用される。
【0043】
非接触部G1a2が除去されることにより、第一ガラス板G1の接触部G1a1のみが新たなガラス板(以下「第二ガラス板」という)G2として残存することになる(図9参照)。この第二ガラス板G2は、上記の図1及び図2に示したガラス板3に相当する。第二ガラス板G2は、第一主面G2aと、第二主面G2bと、端面G2cとを有する。
【0044】
図9に示すように、第二ガラス板G2の第一主面G2aは、第二樹脂板R2の第一主面R2aによって覆われている。第二ガラス板G2の第二主面G2bは、保護シートSによって覆われている。このため、第二ガラス板G2の第一主面G2a及び第二主面G2bには、エッチング処理が施されていない。第二ガラス板G2の端面G2cは、エッチング処理によって形成されたエッチング面である。
【0045】
エッチング工程S3が終了すると、保護シートS上には、第二樹脂板R2と、第二ガラス板G2とが第二接着層AL2を介して固定されてなる複数の第二積層体LM2が形成される。第二積層体LM2は、上記の図1及び図2で例示したガラス樹脂積層体1に相当する。
【0046】
図9に示すように、第二積層体LM2において、第二樹脂板R2と第二ガラス板G2とは、第二樹脂板R2の端面R2cと第二ガラス板G2の端面G2cとが一致するように積層されている。エッチング工程S3後において、第二積層体LM2から保護シートSが取り除かれる(剥離工程)。
【0047】
端面加工工程S4は、エッチング工程S3後に、第二積層体LM2の形状を変更する場合や、第二積層体LM2の端面に高い寸法精度が求められる場合に行われるものであり、本方法に必須のものではない。端面加工工程S4において用いられる端面加工の例としては、研磨加工(例えばポリッシュ研磨)が挙げられる。
【0048】
端面加工工程S4では、第二積層体LM2における第二樹脂板R2の端面R2c及び第二ガラス板G2の端面G2cが加工される。端面加工工程S4後においても、第二樹脂板R2の端面R2cと第二ガラス板G2の端面G2cとが一致した状態が維持される。
【0049】
上記の端面加工工程S4の他、第二ガラス板G2の第二主面G2bに研磨処理その他の各種加工を行ってもよい。また、第二樹脂板R2の第二主面R2bに追加の加工が行われてもよい。
【0050】
図10は、エッチング工程S3の他の例を示す。この例におけるエッチング工程S3では、第一積層体LM1の第一ガラス板G1に対してエッチング液ESをシャワーにより付与する。
【0051】
具体的には、第一積層体LM1を支持台SSに載せた状態で、第一積層体LM1の上方に配置される供給装置Fからエッチング液ESを下方に噴射する。これにより、第一積層体LM1における第一ガラス板G1の第一主面G1a(非接触部G1a2)に、エッチング液ESが付与される。
【0052】
以上説明した本実施形態に係るガラス樹脂積層体1及びその製造方法によれば、積層工程S2において複数の第二樹脂板R2を第一ガラス板G1に重ねた後に、エッチング工程S3において第二樹脂板R2が重ねられていない第一ガラス板G1の一部(非接触部G1a2)をエッチング処理によって除去することで、第二樹脂板R2が重ねられている第一ガラス板G1の部分(接触部G1a1)のみを第二ガラス板G2として残存させることができる。
【0053】
エッチング工程S3後に残存した第二ガラス板G2は、第二樹脂板R2の形状と同一の形状を有するため、従来のように樹脂板に対するガラス板の位置合わせ作業を行う必要がない。しかも、第二ガラス板G2は、エッチング工程S3により第二樹脂板R2の数と同じ数だけ同時に形成されることになる。これにより、複数のガラス樹脂積層体1(第二積層体LM2)を効率良く製造することが可能となる。
【0054】
本実施形態では、第一ガラス板G1の第二主面G1bに保護シートSを設けることにより、エッチング工程S3の終了時に、複数の第二積層体LM2をこの保護シートSによって保持することができる。これにより、複数の第二積層体LM2を、保護シートSを介してまとめて取り扱うことができ、ガラス樹脂積層体1の製造効率を一層高めることができる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 ガラス樹脂積層体
2 樹脂板
2a 樹脂板の第一主面
2b 樹脂板の第二主面
2c 樹脂板の端面
3 ガラス板
3a ガラス板の第一主面
3b ガラス板の第一主面
3c ガラス板の端面
EB エッチング槽
ES エッチング液
G1 第一ガラス板
G1a 第一ガラス板の第一主面
G1a2 非接触部(樹脂板が重ねられていないガラス板の一部)
G1b 第一ガラス板の第二主面
G2 第二ガラス板
G2a 第二ガラス板の第一主面
G2b 第二ガラス板の第二主面
G2c 第二ガラス板の端面
LM1 第一積層体
LM2 第二積層体
R2 第二樹脂板
S 保護シート
S1 準備工程
S2 積層工程
S3 エッチング工程
S4 端面加工工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10