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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124014
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】イオン源
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/08 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H01J37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031892
(22)【出願日】2023-03-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】安東 靖典
(72)【発明者】
【氏名】松尾 大輔
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB03
5C101BB05
5C101BB07
5C101BB09
5C101CC01
5C101CC17
5C101DD03
5C101DD20
5C101DD23
5C101DD25
5C101DD26
5C101DD27
5C101DD29
5C101DD30
5C101DD31
5C101DD40
(57)【要約】
【課題】メンテナンスの周期が長く、メンテナンス時の作用性がよく、さらには装置全体の小型化を図ることができ、製造コストも抑えられ、イオン引出口近傍でのプラズマ密度を向上できるイオン源を提供する。
【解決手段】イオン源ガスが導入される内部空間を有する容器であり、その1つの側壁にイオン引出口が形成されたプラズマ生成容器と、前記イオン源ガスを電離させて前記内部空間にプラズマを生成させるものであり、前記プラズマ生成容器の外部に設けられ、高周波電源に接続されて高周波磁場を生じさせるアンテナと、前記プラズマ生成容器の側壁における前記アンテナに臨む位置に形成され、前記アンテナから生じた高周波磁場を前記内部空間に透過させる磁場透過窓とを備えるプラズマ生成手段と、前記内部空間における前記イオン引出口の近傍に設けられた放電電極と、プラズマ生成容器の外部に設けられ、前記イオン引出口を通じて前記内部空間からイオンビームを引き出す引出電極系とを備えるイオン源である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源ガスが導入される内部空間を有する容器であり、その1つの側壁にイオン引出口が形成されたプラズマ生成容器と、
前記イオン源ガスを電離させて前記内部空間にプラズマを生成させるものであり、
前記プラズマ生成容器の外部に設けられ、高周波電源に接続されて高周波磁場を生じさせるアンテナと、
前記プラズマ生成容器の側壁における前記アンテナに臨む位置に形成され、前記アンテナから生じた高周波磁場を前記内部空間に透過させる磁場透過窓とを備えるプラズマ生成手段と、
前記内部空間における前記イオン引出口の近傍に設けられた放電電極と、
プラズマ生成容器の外部に設けられ、前記イオン引出口を通じて前記内部空間からイオンビームを引き出す引出電極系とを備えるイオン源。
【請求項2】
前記プラズマ生成容器が長尺状をなし、その長手方向に沿った前記1つの側壁に前記イオン引出口が形成されたものであり、
前記引出電極系が、前記イオン引出口に臨む位置に設けられた1枚又は複数枚の板状の電極を備えており、当該各電極における前記イオン引出口に対応する位置には、その厚み方向に貫通するスリットが前記長手方向に沿って形成されており、
前記アンテナと前記放電電極とが前記長手方向に沿って伸びる形状をなす請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記長手方向から視て、前記放電電極が、前記アンテナと前記イオン引出口とを結ぶ線上に配置されている請求項2に記載のイオン源。
【請求項4】
前記放電電極は、冷却流体が流れる流路が内部に形成された管状をなすものである請求項2又は3に記載のイオン源。
【請求項5】
前記長手方向から視て、前記放電電極が、前記アンテナと前記イオン引出口とを結ぶ線を挟んで向かい合って配置された一対の板状電極により構成されている請求項2に記載のイオン源。
【請求項6】
前記一対の板状電極のそれぞれの背面側に、前記板状電極の背面と前記プラズマ生成容器の内壁との間における放電を抑制するシールド部材が配置されている請求項5に記載のイオン源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばイオン注入装置等に用いられるイオン源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のイオン源としては、特許文献1に示すように、イオン源ガスが導入される直方体形状をなすプラズマ生成容器と、当該プラズマ生成容器の側面外側に配置され、プラズマ生成容器内部にカスプ磁場を形成する複数の磁石と、プラズマ生成容器の側壁から内部に挿入して設けられた、電子を放出するフィラメントとを有するものがある。このイオン源においては、プラズマ生成容器が陽極を兼ねており、フィラメントから放出される電子をプラズマ生成容器内で放電させて、イオン源ガスを電離させてプラズマが生成される。そして、プラズマ生成容器の1つの側壁に形成されたイオン引出口近傍に設けられた引出電極系を用いて、プラズマからイオンビームを引き出すよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-228044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような、フィラメントをプラズマ生成容器の側壁から内部に挿入したイオン源では、プラズマを生成するのにプラズマ生成容器に負電圧を印加させるので、フィラメントは、正イオンによるスパッタリングを受けて消耗してしまう。特にBF等のハロゲン化物のイオン源ガスを使ってプラズマを発生させる場合には、フィラメントは化学反応を伴うスパッタリングを受け、より一層消耗しやすい。フィラメントの消耗が進むと、これを交換する等のメンテナンスが必要となるため、従来のイオン源においては、フィラメントの寿命が、イオン源のメンテナンス周期を決める主たる要因となっている。
【0005】
また、プラズマ生成容器内に略均一なプラズマを生成するには、多数のフィラメントを設ける必要があり、そして各フィラメントに対して電源を設ける必要があるため、部品点数が増加し、装置が大型化してしまう。また部品点数が増加することでその取り付けに要する加工工数も増大し、さらには電源が増加することで制御点数も比例して増加し、コストが高くなってしまう。さらには、多数のフィラメントを設けることから、フィラメント結線用の高電流用ケーブルの本数も増加し、これにより配線経路が複雑化しメンテナンス時の作業性が悪いという問題もなる。
また、イオン引出口近傍におけるプラズマ密度を一層向上させることも求められる。
【0006】
本発明は、かかる問題を一挙に解決するべくなされたものであり、メンテナンスの周期が長く、メンテナンス時の作用性がよく、さらには装置全体の小型化を図ることができ、製造コストも抑えられ、イオン引出口近傍でのプラズマ密度を向上できるイオン源を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るイオン源は、イオン源ガスが導入される内部空間を有する容器であり、その1つの側壁にイオン引出口が形成されたプラズマ生成容器と、前記イオン源ガスを電離させて前記内部空間にプラズマを生成させるものであり、前記プラズマ生成容器の外部に設けられ、高周波電源に接続されて高周波磁場を生じさせるアンテナと、前記プラズマ生成容器の側壁における前記アンテナに臨む位置に形成され、前記アンテナから生じた高周波磁場を前記内部空間に透過させる磁場透過窓とを備えるプラズマ生成手段と、前記内部空間における前記イオン引出口の近傍に設けられた放電電極と、プラズマ生成容器の外部に設けられ、前記イオン引出口を通じて前記内部空間からイオンビームを引き出す引出電極系とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成した本発明によれば、メンテナンスの周期が長く、メンテナンス時の作用性がよく、さらには装置全体の小型化を図ることができ、製造コストも抑えられ、イオン引出口近傍でのプラズマ密度を向上できるイオン源を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るイオン注入装置の全体構成を示す模式図である。
図2】同実施形態のイオン源の構成を模式的に示す横断面図である。
図3】同実施形態のイオン源の構成を模式的に示す縦断面図である。
図4】同実施形態の窓部材の構成を模式的に示す図であり、(a)横断面図、(b)アンテナ側から視た平面図、(c)内部空間側から視た平面図である。
図5】他の実施形態の窓部材の構成を模式的に示す図であり、(a)横断面図、(b)内部空間側から視た見た平面図である。
図6】他の実施形態のイオン注入装置における電流分布モニタの機能を説明する図である。
図7】他の実施形態のイオン源の構成を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のイオン源は、例えば、半導体製造工程やフラッットパネルディスプレイ製造工程で使用されるイオン注入装置やイオンドーピング装置等のイオンビーム照射装置に用いられるものである。以下に、本発明の一実施形態に係るイオン源100を備えるイオン注入装置400について、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態のイオン注入装置400は、図1に示すように、ターゲットである基板Wに、イオンビームIBを照射してイオン注入をするためのものである。具体的にこのイオン注入装置400は、所定の引出方向にイオンビームIBが引き出されるイオン源100と、イオン源100の下流側に設けられ、イオン源100から引き出されたイオンビームIBの質量分析を行う質量分析部200と、基板Wが設置される処理室300とを備えている。本実施形態のイオン注入装置400では、イオン源100からは図1の紙面の表裏方向である幅が、それに直交する方向の厚さよりも十分に大きいリボン状のイオンビームIBが引き出される。
【0012】
質量分析部200は、質量分析磁石210と分析スリット220とを有している。質量分析磁石210は、イオンビームIBをその厚さ方向に曲げて所望のイオンを選別して導出するものである。分析スリット220は、質量分析磁石210の下流側に設けられており、質量分析磁石210と協働することにより、上記した所望のイオンを選別して通過させるものである。質量分析磁石210の入口には、入射スリットを形成するスリット板211が設けられている。このスリット板211は、質量分析部210に入射する際のイオンビームIBの入射角度とビーム幅とを制限するものであり、これにより分析スリット220を通過するイオンビームの分析性能を向上できる。
【0013】
処理室300において、基板Wはその処理面をイオンビームIBに向けて基板駆動装置310により保持されている。この基板駆動装置310は、基板Wを保持するとともに、基板Wに入射するイオンビームIBの厚さに沿う方向に機械的に往復駆動するよう構成されている。イオン注入装置400は、この基板駆動装置310による基板Wの往復駆動と、リボン状をなすイオンビームIBの照射とによって、基板Wの全面にイオンビームIBを入射させてイオン注入を行うことができる。
【0014】
以下、イオン源100の構成について詳細に説明する。なお、各図では本発明の実施形態のイオン源100の要部のみが記されており、各種の部材を省略して記している。
【0015】
具体的にこのイオン源100は、図2及び図3に示すように、イオン源ガスが導入されてプラズマを生成するためのプラズマ生成容器1と、プラズマ生成容器1の外部に設けられて当該プラズマ生成容器1内に磁場(具体的にはカスプ磁場、より厳密に言えばマルチカスプ磁場。多極磁場ともいう。)を形成する複数の磁石2と、プラズマ生成容器1内にプラズマを形成するプラズマ生成手段3と、プラズマ生成容器1からイオンビームIBを引き出す引出電極系4と、プラズマ生成容器1にイオン源ガスを一定流量で供給するガス源5とを備えている。
【0016】
プラズマ生成容器1は、例えば直方体形状等をなす長尺状の容器である。このプラズマ生成容器1の内壁面により、イオン源ガスが導入されてプラズマを生成するための内部空間1sが形成されている。この内部空間1sはプラズマ生成容器1の長手方向に沿って延びるように形成された概略直方体形状をなす長尺状の空間であり、引出方向に沿って互いに対向する一対の内壁面と、幅方向に沿って互いに対向する一対の内壁面とによって囲まれて形成されている。なお内部区間は図示しない真空排気装置によって真空排気される。
【0017】
長手方向に平行なプラズマ生成容器1の一つの側壁(以下、前側壁11aという)には、内部空間1sからイオンビームIBを引き出すための開口であるイオン引出口1Hが形成されている。イオン引出口1Hは、内部空間1sと同様に、長手方向に沿って延びるように前側壁11aに形成されている。本実施形態においては、この前側壁11aはイオンビームIBの引出方向に直交するように形成されている。以下において、引出方向及び長手方向に直交する方向を幅方向という。なお長尺状とは、引出方向から視て、互いに直交する2つの軸方向において、一方の軸方向の長さ(すなわち長手方向の長さ)が、他方の軸方向の長さ(すなわち幅方向の長さ)よりも長くなるように形成された任意の形状を意味し、直方体形状に限らない。
【0018】
長手方向から視て、イオン引出口1Hを通って引出方向に伸びる軸線(以下、イオン引出軸線L1ともいう)を挟んで対向(幅方向において対向する)する2つの側壁(以下、横側壁11c、dともいう)には、ガス源5に連通し、ガス流量調整器(図示しない)を介して内部空間1sにイオン源ガスを導入するための複数のガス導入孔1gが形成されている。複数のガス導入孔1gは、互いに略同一径であり、横側壁11c、dにおけるイオン引出口1H近傍(すなわち、前側壁11aとの接合部近傍)に、プラズマ生成容器1の長手方向に沿って略等間隔に設けられている。このガス導入孔1gから、BFガスやPHガス等のイオン源ガスが内部空間1sに導入される。
【0019】
なお複数のガス導入孔1gは、2つの横側壁11c、dの一方のみに形成されていてもよく、また横側壁11c、dにおける、前側壁11aと対向する後側壁11bとの接合部近傍(すなわち、後述する磁場透過窓3w近傍)に設けられていてもよい。また複数のガス導入孔1gは、互いに略等間隔に設けるとともに、長手方向に沿った両端部における孔径が、中央部における孔径よりも相対的に大きくなるようにしてもよい。あるいは、複数のガス導入孔1gは、互いに略同一の孔径にするとともに、長手方向に沿った両端部における配置間隔が、中央部における配置間隔よりも相対的に狭くなるようにしてもよい。さらにガス導入孔1gは、プラズマ生成容器1の側壁の内面に開口するように設けられていたが、プラズマ生成容器1内に配置されたガス供給管の管壁に開口するように設けられていてもよい。
【0020】
複数の磁石2は、前側壁11a以外の他の側壁(具体的には横側壁11c、d)の外面に沿って外部に設けられるものであり、横側壁11c、dの内面近傍にカスプ磁場を形成するものである。本実施形態の各磁石2は永久磁石であるが、電磁石を用いてもよい。この複数の磁石2は、イオン引出方向に直交する方向に沿って、極性が互いに異なるように、かつ略等間隔に配列されている。なお、複数の磁石2の配列態様はこれに限らず適宜変更可能である。
【0021】
プラズマ生成手段3は、プラズマ生成容器1の内部空間1sに高周波磁場を供給することでイオン源ガスを電離させてプラズマを生成するものである。
【0022】
引出電極系4は、プラズマ生成容器1のイオン引出口1H近傍に設けられ、プラズマ生成容器1との間に電位差を与えることでイオンビームIBを加速して引き出すものである。具体的にこの引出電極系4は、スリット4xが形成された複数枚の板状電極41~44を有しており、より具体的には、図2及び図3に示すように、イオン引出方向に沿ってプラズマ生成容器1から下流に向けて順に配置された、プラズマ電極41、引出電極42、抑制電極43及び接地電極44を有している。これらの各電極はいずれもその中央部に、厚み方向に貫通し、長手方向に沿って伸びる細長形状のスリット4xが形成されている。そして各電極は中央部に形成されたスリット4xが、プラズマ生成容器1のイオン引出口1Hに向かい合うようにして配置されている。なお各電極間は、例えば絶縁物(図示しない)によって互いに電気的に絶縁されている。なおこの引出電極系4は、プラズマ生成容器1に最も近い電極(ここではプラズマ電極41)のスリット幅が可変に構成されているのが好ましい。このようにすれば、プラズマ室内のガス圧力を可変にすることができ、プラズマ生成容器1内の圧力と、引出電極領域の真空度の設定に自由度を付与することができ、これにより電極間に印加する耐電圧に裕度を持たせることができる。
【0023】
しかして本実施形態のイオン源100は、プラズマ生成手段3が、プラズマ生成容器1の内部空間1sに誘導結合型のプラズマを生じさせるよう構成されており、プラズマ生成容器1の外部に設けられたアンテナ31と、アンテナ31に高周波を引加する高周波電源32と、プラズマ生成容器1の側壁におけるアンテナ31に臨む位置に形成され、アンテナ31から生じた高周波磁場を内部空間1sに透過させる磁場透過窓3wとを備えている。かかる構成において、アンテナ31に高周波電源32から高周波を印加することによりアンテナ31には高周波電流が流れて、プラズマ生成容器1内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマが生成される。
【0024】
アンテナ31は、外観視して長さが数十cm以上の直線状(具体的には円柱状)をなすものである。このアンテナ31は、プラズマ生成容器1の外部において磁場透過窓3wに対して間隙をもって、プラズマ生成容器1の長手方向に沿って真っすぐになるように設けられている。すなわちアンテナ31は、イオン引出口1Hや引出電極系4のスリット4xの長手方向に沿って真っすぐになるように設けられている。そしてイオン引出方向から視て、アンテナ31は、イオン引出口1Hを望む位置に配置されており、より具体的には前記したイオン引出軸線L1上に配置されている。アンテナ31の一端部である給電端部は、整合回路321を介して高周波電源32が接続されている。
【0025】
高周波電源32は、整合回路321を介してアンテナ31に高周波電流を流すことができる。高周波の周波数は例えば一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではなく適宜変更してもよい。
【0026】
磁場透過窓3wは、プラズマ生成容器1における前側壁11aに対向する側壁(後側壁11bという)に形成されている。具体的にこの磁場透過窓3wは、図4(a)~(c)に示すように、プラズマ生成容器1の後側壁11bに設けられた開口1xと、当該開口1xを塞ぐようにプラズマ生成容器1に取付けられた窓部材33とにより形成されている。
【0027】
この開口1xは、イオン引出方向から視て、プラズマ生成容器1の長手方向に沿った長さが幅方向に沿った長さより大きい矩形状をなしている。そしてこの開口1xは、後側壁11bにおいて、アンテナ31とイオン引出口1Hの両方を臨む位置に形成されており、より具体的にはアンテナ31とイオン引出口1Hとを結ぶ線上に位置するように形成されている。
【0028】
窓部材33は、プラズマ生成容器1の後側壁11bに形成された開口1xを外側から塞ぐスリット板331と、スリット板331に形成されたスリット331xをプラズマ生成容器1の外側から塞ぐ誘電体板332とを備えている。
【0029】
スリット板331は、アンテナ31から生じた高周波磁場をプラズマ生成容器1内に透過させるとともに、プラズマ生成容器1の外部からプラズマ生成容器1の内部への電界の入り込みを防ぐものである。具体的にこのスリット板331は、その厚さ方向に貫通してなるスリット331xがアンテナ31の長手方向に沿って複数形成された平板状のものである。このスリット板331は、後述する誘電体板332よりも機械強度が高いことが好ましく、誘電体板332よりも厚み寸法が大きいことが好ましい。そして複数のスリット331xは、厚さ方向から視て、互いに平行であって、且つアンテナ31に交差するように(具体的には直交するように)形成されている。複数のスリット331xはいずれも同形状(具体的には平面視矩形状)である。
【0030】
具体的にこのスリット板331は金属製のものであり、例えばCu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金(例えばステンレス合金、アルミニウム合金等)等の金属材料を圧延加工(例えば冷間圧延や熱間圧延)等により製造したものである。
【0031】
このスリット板331は、平面視においてプラズマ生成容器1の開口1xよりも大きいものであり、後側壁11bに支持された状態(すなわち、後側壁11bに載せられた状態)で開口1xを塞いでおり、プラズマ生成容器1と同電位にされている。スリット板331と後側壁11bとの間には、Oリングやガスケット等のシール部材が介在しており、これらの間は真空シールされている。
【0032】
誘電体板332は、スリット板331においてプラズマ生成容器1の外側を向く外向き面(プラズマ生成容器1の内部を向く内向き面の裏面)に載せられて、スリット板331のスリット331xを塞ぐものである。この誘電体板332とスリット板331との間にはシール部材が介在しており、これらの間は真空シールされている。
【0033】
誘電体板332は、全体が誘電体物質で構成された平板状をなすものであり、例えばアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、フッ素樹脂(例えばテフロン)等の樹脂材料等からなる。
【0034】
かかる構成により、スリット板331及び誘電体板332は、アンテナ31から発生した磁場を透過させる磁場透過窓3wとして機能を担う。すなわち、高周波電源32からアンテナ31に高周波を印加すると、アンテナ31から発生した高周波磁場が、スリット板331及び誘電体板332からなる磁場透過窓3wを透過してプラズマ生成容器1内に形成(供給)される。これにより、プラズマ生成容器1内の空間に誘導電界が発生し、誘導結合型のプラズマが生成される。
【0035】
そして、本実施形態のプラズマ処理装置では、窓部材33はさらに、スリット板331に形成された各スリット331xを、プラズマ生成容器1の内側から間隙を空けて覆うマスク板333をさらに備えている。
【0036】
より具体的に説明すると、マスク板333はその厚さ方向に貫通してなるスリット333xがアンテナ31の長手方向に沿って複数形成された平板状のものである。厚さ方向から視て、この複数のスリット333xは互いに平行であって、かつスリット板331に形成された複数のスリット331xと平行になるように形成されている。ここでは、各スリット333xは、アンテナ31に交差するように(具体的には直交するように)形成されている。複数のスリット333xはいずれも同形状(具体的には平面視矩形状)となるように形成されている。
【0037】
マスク板333における隣り合うスリット333x間には、各スリット333xに平行な梁状領域333zが形成されている。この梁状領域333zは、スリット板331に形成された複数のスリット331xに対応するように複数形成されており、各梁状領域333zによりスリット板331の各スリット331xが覆われている。ここでは、アンテナ31の長手方向に沿った梁状領域333zの長さ(幅)は、スリット板331のスリット331xの幅と略同一であり、各梁状領域333zがスリット板331の各スリット331xの略全部を覆っている。各梁状領域333zは、各スリット331xの一部のみを覆うように形成されてもよい。なおマスク板333は、スリット板331の内向き面に接続され、同電位とされている。
【0038】
具体的にマスク板333は、例えばCu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金(例えばステンレス合金、アルミニウム合金等)等の金属材料により構成されている。マスク板333の厚みは、スリット板331の厚みより小さいことが好ましい。
【0039】
またこの実施形態では、スリット板331には水等の冷却媒体が流れる流路331rが形成されている。この流路331rは、スリット板331におけるマスク板333の接続領域の近傍にアンテナ31の長手方向に沿って形成されている。ここでは、流路331rは、スリット板331の厚み方向に沿って接続領域の直上に位置するように形成されている。
【0040】
また本実施形態のイオン源100では、磁場透過窓3wにおける内向き面(具体的にはスリット板331の内向き面)と、引出電極系4におけるプラズマ生成容器1に最も近い電極の表面との間の距離が、約45mm~約140mmの範囲に設定されているのが好ましい。
【0041】
そして本実施形態のイオン源100では、図2及び図3に示すように、プラズマ生成容器1の内部空間において、イオン引出口1Hの近傍には放電電極7が設けられている。この放電電極7は、誘導結合により内部空間1s内に形成されたプラズマを用いて、引出電極系4においてプラズマ生成容器1に最も近い電極(ここではプラズマ電極41)との間に直流放電又は低周波放電を生じさせることで、内部空間1sにおけるイオン引出口1H近傍に生成されるプラズマ密度を向上させるものである。
【0042】
本実施形態の放電電極7は棒状又は直管状をなす金属製のものであり、内部空間1sにおいてイオン引出口1Hを臨む位置(具体的にはアンテナ31とイオン引出口1Hとを結ぶ線上、あるいはイオン引出軸線L1上ともいえる)に、長手方向に沿って平行となるように設けられている。すなわちこの放電電極7は、イオン引出口1H及び引出電極系4を構成する電極41~44に形成されたスリット4xの長手方向に一致するように配置されている。
【0043】
放電電極7は、棒状を成すものである場合、例えばタングステンなどの高融点材料からなるのが好ましい。また放電電極7は、管状である場合には、ステンレス管、アルミニウム(又はアルミニウム合金)管、銅(又は銅合金)管等で構成され、内部に冷却流体が流れる流路が形成されているのが好ましい。
【0044】
放電電極7には、引出電極系4におけるプラズマ生成容器1に最も近い電極(プラズマ電極41)に対して、負の直流電圧を印加するようにしてもよく、あるいは約10kHz程度又はそれ以下の周波数の交番電圧を印加するようにしてもよい。またプラズマ生成容器1とプラズマ電極41との間は、短絡、あるいは抵抗器を介して接続してもよい。あるいは、直流電源を用いてプラズマ電極41に対してプラズマ生成容器1に正電圧を印加するようにしてもよい。
【0045】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のイオン源100によれば、プラズマ生成容器1の内部空間1sに突出するフィラメントを用いることなく、プラズマ生成容器1の外部に設けたアンテナ31により内部空間1sにプラズマを発生させるようにしているので、プラズマ生成容器1内においてスパッタリングによる消耗を受ける部品を低減することができ、メンテナンスの周期を長くすることができる。またイオン引出方向口に沿って延びる1本のアンテナ31と1台の高周波電源32により内部空間1sに略均一なプラズマを発生させることができるので、部品点数を大幅に低減でき、装置を小型化するとともに、取付けに要する加工工数や電源の制御点数を低減でき、製造コストを抑えることができる。さらには、電源数を少なくすることで、電力供給の線材及び機器の制御線の大幅な削減が可能であり、組立時の配線作業やメンテナンス時の脱着作業を簡単にでき、作業性を向上できる。
さらにイオン引出口1Hの近傍に放電電極7を設けることで、内部空間1sに発生したプラズマを利用して、引出電極系4(具体的にはイオン引出口1Hに最も近い電極41)との間で直流放電や低周波放電を生じさせることができ、イオン引出口1H近傍に生成するプラズマ密度を増加することができる。
【0046】
ここで、広い面積を有する大型イオン源や長尺イオン源の場合には、プラズマ室内のガス圧(真空度)と、高電圧の印加される引出電極系4の領域の真空度との間では、引出電極系4のスリット4xのスリットコンダクタンスが大きいため圧力差が出ず、ほぼ同等になる。一方で、引出電極系4に高電圧を安定に印加するためには、引出電極系4が設置される領域の圧力を約1mTorr(約133mPa)を上限として設定する必要がある。このような圧力状況下において、引出電極系4のスリット4xに相当する約数ミリ~約十数ミリ程度の間隔で配置された平行平板電極単体をプラズマ生成手段3として用いた場合には、直流電圧によるプラズマ生成は不可能であり、また通常の高周波放電でもプラズマ生成は不可能である。
一方本実施形態のイオン源100によれば、誘導結合型放電の放電可能な下限付近であるこのような低圧力下において、高周波プラズマによるプラズマ点灯の種(種プラズマ)を放電電極7と引出電極系4との間に供給でき、一方でその種プラズマを利用した直流放電や交番電圧(高周波電圧)によりプラズマ密度を増加させることができ、これによりフィラメントを用いることなく、効率的にイオンビームを引き出すことができる。
さらに、プラズマ生成手段3として平行平板電極を用いる場合には、真空内の電極間距離の必要箇所を調整することはほぼ不可能であるが、本実施形態のイオン源100では、プラズマ生成手段3として外部アンテナ31を用いることで、種プラズマの分布によるプラズマ分布の調整を行えるため、外部アンテナ31と真空内の放電電極7との組み合わせは非常に有効な構成であると言える。
【0047】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0048】
例えば他の実施形態のイオン源100は、図5(a)に示すように、アンテナ31と磁場透過窓3wとの間の距離を調整する距離調整機構6を備えていてもよい。この距離調整機構6は、アンテナ31の複数箇所の位置を調整することにより、アンテナ31と磁場透過窓3wとの間の距離を部分的に調整するよう構成されたものであり、具体的にはアンテナ31の長手方向に沿った一部分又は複数部分の位置を調整可能に構成されている。
【0049】
より具体的に説明すると、距離調整機構6は、窓部材33の上面に設けられて、アンテナ31の両端部を支持するアンテナ支持部材61と、アンテナ31の複数箇所を把持するとともに、当該把持した部位を磁場透過窓3w(具体的には誘電体板332)に対して変位させる複数の把持部62と、これらの把持部62を独立して移動させるモータ等の図示しない駆動源とを備えている。
【0050】
複数の把持部62は、アンテナ31とは電気的に絶縁された絶縁物である。これらの把持部62のうちの1つは、プラズマ生成容器1の開口1xの中央部の直上に配置されており、この把持部62に対してアンテナ31の長手方向に沿った対称的な位置に別の把持部62が設けられている。また本実施形態では、複数の把持部62が等間隔に配置されており、これらは何れも、プラズマ生成容器1の開口1xに直交する方向から視て、開口1xの内側に設けられている。
【0051】
具体的にこの把持部62は、アンテナ31の側面を窓部材33側に押圧する押し治具621と、アンテナ31と窓部材33との間に突っ張るように設けられたギャップ調整治具622とを備えている。この押し治具621は、例えばバネ材等を用いることで、アンテナ31を常に窓部材33側へ押し込むように構成されたものである。ギャップ調整治具622は、窓部材33の厚み方向に沿った長さを調整可能に構成されたものである。ここではギャップ調整治具622は、断面が楕円形状をなす治具であり、回転することにより厚み方向に沿った長さが変更され、アンテナ31と窓部材33との間の距離を調整するよう構成されている。
【0052】
また前記実施形態のイオン源100では、マスク板333は複数のスリット333xが形成され、この複数のスリット333x間に形成される梁状領域333zによりスリット板331のスリット331xを覆うものであったが、これに限らない。他の実施形態のマスク板333は、図5(b)に示すように、短冊状をなす金属板により構成されていてもよい。この場合、マスク板333は、スリット板331に形成された複数のスリット331xのそれぞれに臨む位置に1枚又は複数枚設けられてよい。1つのスリット331xに対して複数枚のマスク板333を設ける場合、これらを厚み方向において互いに段違いとなるように配置するのが好ましい。
【0053】
また他の実施形態のイオン注入装置400は、引き出したイオンビームIBの電流値に応じて、アンテナ31と磁場透過窓3wの間の距離や、高周波電源32の出力を調整するように構成されてもよい。具体的にイオン注入装置400は、図6に示すように、質量分析磁石210の後段に、長手方向に沿ったイオンビームIBの電流分布をモニタリングする電流分布モニタを備えており、モニタリングしたイオンビームIBの電流分布と、平均電流密度や均一性の目標値とを比較演算器により比較し、その比較結果に応じてアンテナ31と磁場透過窓3wの間の距離や、高周波電源32の出力を調整するように構成されてもよい。
【0054】
また前記実施形態では、放電電極7は、棒状又は直管状をなすものであったがこれに限らない。他の実施形態の放電電極7は、図7に示すように、イオン引出軸線L1を挟んで向かい合って配置された、互いに平行な一対の板状電極により構成されてもよい。この場合、放電電極7には、プラズマ生成容器1を基準電位として、約10kHz程度、あるいはそれ以下の周波数の交番電圧を印加するようにするのが好ましい。そしてこの場合には、放電電極7の背面及び側面(互いに対向する面以外の側面)を覆うシールド部材71を備えるのが好ましい。このシールド部材71は、放電電極7とプラズマ生成容器1の内壁面との間で、電圧による不要な放電を防止するためのものである。このシールド部材71は、耐熱性、加工性及びガス種による耐蝕性に優れた材質により構成されるが好ましく、例えばステンレス鋼、タングステン、モリブデン、タンタル又はこれらのいずれかを含む合金を含んで構成されるのが好ましいが、これらに限らない。このようなシールド部材71を備えることで、一対の放電電極7間での放電に対して電力を有効に利用することができる。
【0055】
また前記実施形態では、磁場透過窓3wはプラズマ生成容器1の後側壁11bに形成されていたがこれに限らない。例えば他の実施形態では、磁場透過窓3wは、長手方向から視て、イオン引出軸線L1を挟んで対向する2つの側壁(横側壁11c、d)の一方又は両方に形成されていてもよい。
【0056】
また前記実施形態のイオン源100は、高周波電源32と整合回路321が高電圧部に設置されていたがこれに限らない。他の実施形態のイオン源100は、高周波電源32と整合回路321を接地電位に設置してもよい。このようにすることで、高電圧部に電力供給するための絶縁トランスの容量低減に寄与し、さらにはシステム全体の小型化、低コスト化及び高電圧による放電トラブル時の機器故障回避に寄与し得る。
【0057】
またアンテナ31は、内部に冷却液が流通可能な流路が形成されている中空構造のものであってよい。またアンテナ31は、少なくとも2つの導体要素と、互いに隣り合う導体要素と電気的に直列接続された定量素子であるコンデンサとを備える、いわゆるLCアンテナ31であってもよい。例えばアンテナ31は、3つの導体要素と2つのコンデンサとを備えており、各導体要素は、内部に冷却液が流れる直線状の流路が形成された直管状(具体的には円管状)をなす同一形状のものであってもよい。各導体要素の材質は、例えば、銅、アルミニウム、これらの合金又はステンレス等の金属等であってよい。
【0058】
アンテナ31をこのように構成することによって、アンテナ31の合成リアクタンスは、簡単に言えば、誘導性リアクタンスから容量性リアクタンスを引いた形になるので、アンテナ31のインピーダンスを低減させることができる。その結果、アンテナ31を長くする場合でもそのインピーダンスの増大を抑えることができ、アンテナ31に高周波電流が流れやすくなり、内部空間1sに誘導結合型のプラズマを効率良く発生させることができる。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【0060】
さらに本明細書の開示は、以下の態様1-6を含み得る。
【0061】
(態様1)イオン源ガスが導入される内部空間を有する容器であり、その1つの側壁にイオン引出口が形成されたプラズマ生成容器と、前記イオン源ガスを電離させて前記内部空間にプラズマを生成させるものであり、前記プラズマ生成容器の外部に設けられ、高周波電源に接続されて高周波磁場を生じさせるアンテナと、前記プラズマ生成容器の側壁における前記アンテナに臨む位置に形成され、前記アンテナから生じた高周波磁場を前記内部空間に透過させる磁場透過窓とを備えるプラズマ生成手段と、前記内部空間における前記イオン引出口の近傍に設けられた放電電極と、プラズマ生成容器の外部に設けられ、前記イオン引出口を通じて前記内部空間からイオンビームを引き出す引出電極系とを備えるイオン源。
【0062】
このような態様であれば、プラズマ生成容器の内部空間に突出するフィラメントを用いることなく、プラズマ生成容器の外部に設けたアンテナにより内部空間にプラズマを発生させるようにしているので、プラズマ生成容器内においてスパッタリングによる消耗を受ける部品を低減することができ、メンテナンスの周期を長くすることができる。
またイオン引出方向口に沿って延びる1本のアンテナと1台の高周波電源により内部空間に略均一なプラズマを発生させることができるので、部品点数を大幅に低減でき、装置を小型化するとともに、取付けに要する加工工数や電源の制御点数を低減でき、製造コストを抑えることができる。さらには、電源数を少なくすることで、電力供給の線材及び機器の制御線の大幅な削減が可能であり、組立時の配線作業やメンテナンス時の脱着作業を簡単にでき、作業性を向上できる。
さらにイオン引出口の近傍に放電電極を設けることで、内部空間に発生したプラズマを利用して、引出電極系との間で直流放電や低周波放電を生じさせることができ、イオン引出口近傍に生成するプラズマ密度を増加することができる。
【0063】
(態様2)前記プラズマ生成容器が長尺状をなし、その長手方向に沿った前記1つの側壁に前記イオン引出口が形成されたものであり、前記引出電極系が、前記イオン引出口に臨む位置に設けられた1枚又は複数枚の板状の電極を備えており、当該各電極における前記イオン引出口に対応する位置には、その厚み方向に貫通するスリットが前記長手方向に沿って形成されており、前記アンテナと前記放電電極とが前記長手方向に沿って伸びる形状をなす態様1に記載のイオン源。
このような態様であれば、アンテナ及び放電電極が伸びる方向と引出電極系のスリットが伸びる方向とをいずれも長手方向に揃えることで、アンテナに高周波電力を流すことで発生したプラズマを種にして、イオン引出口近傍に効率的にプラズマを生成することができるようになる。
【0064】
(態様3)前記長手方向から視て、前記放電電極が、前記アンテナと前記イオン引出口とを結ぶ線上に配置されている態様2に記載のイオン源。
このような態様であれば、1本の放電電極を用いた簡易な構成により、効率よくプラズマを生成することができるようになる。
【0065】
(態様4)前記放電電極は、冷却流体が流れる流路が内部に形成された管状をなすものである態様2又は3に記載のイオン源。
このような態様であれば、冷却流体を流すことで放電電極の温度上昇による変形を抑えることができ、放電電極と、引出電極等の周辺構造物との距離を安定に保つことができ、プラズマを安定して生成できるとともに、プラズマ分布を安定化させることができる。
【0066】
(態様5)前記長手方向から視て、前記放電電極が、前記アンテナと前記イオン引出口とを結ぶ線を挟んで向かい合って配置された一対の板状電極により構成されている態様2に記載のイオン源。
このような態様であれば、イオン引出口を挟むように一対の板状電極を配置することで、発生した高周波プラズマの高密度の領域をイオン引出口近傍に設定することができるとともに、イオン引出口を挟む電極間で効率よくプラズマを生成することができる。
【0067】
(態様6)前記一対の板状電極のそれぞれの背面側に、前記板状電極の背面と前記プラズマ生成容器の内壁との間における放電を抑制するシールド部材が配置されている態様5に記載のイオン源。
イオン引出口近傍に生成されるプラズマがイオンビームとして引き出されるため、この位置にプラズマを効率的に生成することが好ましい。板状電極の背面側(すなわち互いが対向する面の裏面側)にシールド部材を設置することで、板状電極とプラズマ生成容器の内壁間における不要なプラズマ生成を抑え、電力を有効利用して、イオン引出口近傍に効率よくプラズマを生成することができるようになる。
【符号の説明】
【0068】
100・・・イオン源
1 ・・・プラズマ生成容器
1s ・・・内部空間
11a・・・側壁(前側壁)
1H ・・・イオン引出口
3 ・・・プラズマ生成手段
31 ・・・アンテナ
32 ・・・高周波電源
3w ・・・磁場透過窓
4 ・・・引出電極系
7 ・・・放電電極
W ・・・基板
IB ・・・イオンビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7