(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124018
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】オゾンを用いた空気処理機
(51)【国際特許分類】
A61L 9/015 20060101AFI20240905BHJP
C01B 13/10 20060101ALI20240905BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20240905BHJP
F24F 8/26 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
A61L9/015
C01B13/10 Z
A61L9/20
F24F8/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031898
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 龍星
(72)【発明者】
【氏名】十川 博行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 豪朗
(72)【発明者】
【氏名】王 青躍
(72)【発明者】
【氏名】王 偉倩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美穂
【テーマコード(参考)】
4C180
4G042
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA17
4C180CA01
4C180DD03
4C180EA17X
4C180EA35X
4C180HH05
4C180HH17
4C180LL20
4G042CA03
4G042CB29
4G042CC23
4G042CE02
(57)【要約】
【課題】筐体内を通過する空気の風量を大きく下げることなく、筐体内に吸い込んだ空気中のアレルゲンやウイルス等を、高濃度オゾンに曝露する時間を長くすることで、アレルゲンやウイルス等を効率よく無害化することが可能な空気処理機を提供する。
【解決手段】本発明に係る空気処理機は、第一方向に延伸する第一領域と、前記第一方向と異なる第二方向に延伸して第一領域と連通する連通部を含む第二領域と、を有する筐体と、前記第一領域に設けられ、オゾンを生成するエキシマランプと、前記第一領域に設けられる吸入口と、前記第二領域に設けられる排出口と、前記筐体内の前記排出口に接続され前記第2方向に備えられた排出管と、前記排出口に配されるファンとを備え、前記筐体の前記第二領域は円筒状であり、前記連通部は、前記円筒状の外周に沿って延伸して形成された側壁部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に延伸する第一領域と、前記第一方向と異なる第二方向に延伸して前記第一領域と連通する連通部を含む第二領域と、を有する筐体と、
前記第一領域に設けられ、オゾンを生成するエキシマランプと、
前記第一領域に設けられる吸入口と、
前記第二領域に設けられる排出口と、
前記筐体内の前記排出口に接続され前記第二方向に備えられた排出管と、
前記排出口に配されるファンと
を備え、
前記筐体の前記第二領域は円筒状であり、
前記連通部は、前記円筒状の外周に沿って延伸して形成された側壁部を有する
空気処理機。
【請求項2】
前記排出管は、前記排出口と対向する方向に狭くなるテーパ部分を有する
請求項1に記載の空気処理機。
【請求項3】
前記吸入口及び前記排出管にオゾン除去フィルタを有する
請求項1に記載の空気処理機。
【請求項4】
空気を処理する際に前記第一領域及び前記第二領域における実質的なオゾン濃度は、10ppm以上5000ppm以下である
請求項1に記載の空気処理機。
【請求項5】
前記排出管の前記テーパ部分の先端の開口径は、前記第二領域の直径よりも、1/5~2/5倍である
請求項2に記載の空気処理機。
【請求項6】
前記排出管の前記テーパ部分の先端の開口径は、前記第二領域の直径よりも、1/4~3/10倍である
請求項2に記載の空気処理機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンを用いた空気処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オゾンを用いた様々な脱臭装置や殺菌装置等の空気処理機が開発されている。このような装置として、例えば、中空円筒体の装置本体に臭気管から接線方向に臭気流れを送り込み、円筒体内で旋回するその臭気流れにオゾン噴霧ノズルからオゾン噴霧流れを噴霧して殺菌、脱臭する第1脱臭手段と、脱臭された臭気流に残存する臭気に含まれる有機臭、無機臭を噴霧された水分ガスと共に接触材に接触させて液化し残留臭気を脱臭する第2脱臭手段と、脱臭された気流を排出する排出筒を備えて成るオゾン脱臭装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、前後方向に延びる空間を形成する空間形成部と、空間に設けられ、紫外線を放射する殺菌灯と、空間が前後方向に複数の区画室に分割されるように、その空間を仕切る複数の隔壁部と、を備え、空間形成部は、前端部および後端部を有し、前端部には吸気口が設けられ、後端部には排気口が設けられ、複数の隔壁部の各々には、空気が通過する通過口が形成されており、複数の隔壁部における通過口の各々は、吸気口から排気口に向かう空気の流れが蛇行するように配置されている殺菌装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-161801号公報
【特許文献2】特開2022-031590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の装置では、円筒体内で旋回する臭気(空気)に対してオゾン噴霧ノズルからオゾンを上から噴霧しているため、旋回流が阻害されてしまい、十分な時間オゾンと処理気体を接触させることができず、オゾンによる処理が不十分なまま処理気体を装置外へ放出する恐れがある。また、特許文献2の装置では、取り込んだ空気のオゾンとの接触時間を長くすることはできるが、空気の流量を多くするのが困難であるため、十分な処理速度を得ることができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、筐体内を通過する空気の風量を大きく下げることなく、筐体内に吸い込んだ空気中のアレルゲンやウイルス等を、高濃度オゾンに曝露する時間を長くすることで、アレルゲンやウイルス等を効率よく無害化することが可能な空気処理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気処理機は、第一方向に延伸する第一領域と、前記第一方向と異なる第二方向に延伸して前記第一領域と連通する連通部を含む第二領域と、を有する筐体と、
前記第一領域に設けられ、オゾンを生成するエキシマランプと、
前記第一領域に設けられる吸入口と、
前記第二領域に設けられる排出口と、
前記筐体内の前記排出口に接続され前記第二方向に備えられた排出管と、
前記排出口に配されるファンと
を備え、
前記筐体の前記第二領域は円筒状であり、
前記連通部は、前記円筒状の外周に沿って延伸して形成された側壁部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筐体内を通過する空気の風量を大きく下げることなく、筐体内に吸い込んだ空気中のアレルゲンやウイルス等を、高濃度オゾンに曝露する時間を長くすることで、アレルゲンやウイルス等を効率よく無害化することが可能な空気処理機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る空気処理機の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す空気処理機の第一領域の縦断面図である。
【
図3】
図1に示す空気処理機の第一領域及び第二領域の横断面図である。
【
図4】
図1に示す空気処理機の第二領域の縦断面図である。
【
図5】本発明に係る空気処理機の第二領域の他の実施形態を示す縦断面図である。
【
図6】本発明に係る空気処理機の第二領域の他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る空気処理機の好適な実施形態を、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る空気処理機は、オゾンを用いた空気処理機であり、空気中のアレルゲン(特に花粉アレルゲン)や悪臭を無害化することが可能である。特に、花粉アレルゲンは、1.1μm以下の粒子に多く存在し、本発明に係る空気処理機は、このような花粉アレルゲンの粒子を効果的に無害化することが可能である。
図1は、本発明に係る空気処理機の構成例を示す斜視図、
図2は、
図1に示す空気処理機の第一領域の縦断面図、
図3は、
図1に示す空気処理機の第一領域及び第二領域の横断面図、
図4は、
図1に示す空気処理機の第二領域の縦断面図である。
【0011】
本発明に係る空気処理機10は、
図1~4に示すように、第一方向に延伸する第一領域11と、第一方向と異なる第二方向に延伸して第一領域11と連通する連通部を含む第二領域12とを有する筐体1を有している。また、空気処理機10は、第一領域11に設けられ、オゾンを生成するエキシマランプ2と、第一領域11に設けられる吸入口3と、第二領域12に設けられる排出口4と、筐体1内の排出口4に接続され第二方向に備えられた排出管5と、排出口4に配されるファン6とを備えている。なお、第一方向とは、後述する第二方向との関係で決まる方向で、本実施形態では、図に示すように、空気処理機10を地面に設置した際に、地面と略水平な方向を指す。
【0012】
第一領域11は、図示の構成のように、第一方向に延伸した直方体の筒状をなしており、エキシマランプ2と、空気処理機10内部に気体を取り込む吸入口3とを有している。また、本実施形態では、第一領域11が直方体の筒状をなしているが、これに限定されず、例えば円筒状であってもよい。
第一領域11を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、各種金属材料や各種プラスチック材料を用いることができる。また、第一領域11を構成する部材の紫外線による劣化防止のため、第一領域11の内壁面に紫外線反射部材をコーティングしてもよい。紫外線反射部材は、紫外線に対する耐性及び反射率が高い材料が好ましく、例えばアルミニウム等の金属膜や、PTFE等のフッ素系樹脂膜を用いることができる。
【0013】
第一領域11の吸入口3の高さH1及び吸入口3の幅W1は、エキシマランプ2の放電防止の観点から、30mm以上110mm以下であることが好ましく、さらに第一領域11を通過する風量の観点も含めると、40mm以上70mm以下であることがより好ましい。なお、本実施形態のエキシマランプ2の直径が10mmであり、放電防止の観点からエキシマランプ2の側面から10mm以上離した距離としている。また、第一領域11の長さL1は、エキシマランプ2の設置や吸入する気体量を考慮すると、100mm以上300mm以下であることが好ましく、150mm以上250mm以下であることが好ましい。
【0014】
エキシマランプ2は、オゾンを生成する波長帯域の光を発する。具体的には、吸入口3から第一領域11内に吸入された空気がエキシマランプ2の周辺を通過する際に高濃度のオゾンが生成される。エキシマランプ2は、希ガス等を封入したランプ内で発生する放電プラズマにより発生する光(エキシマ光)を利用したものである。エキシマランプ2の波長としては、126nm(Ar2)、146nm(Kr2)、172nm(Xe2)、222nm(KrCl)、308nm(XeCl)等が挙げられ、これらの中でも、オゾンの生成効率の観点から、エキシマランプ2として、172nm(Xe2)の波長のものを用いることが好ましい。
空気を処理する際に第一領域11及び第二領域12における実質的なオゾン濃度は、10ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、アレルゲン分解効果の観点から、100ppm以上4000ppm以下であることがより好ましい。
【0015】
吸入口3は、第一領域11の後述する第二領域12側とは反対側の端部に設けられている。本実施形態において、第一領域11の吸入口3には、オゾン除去フィルタ7aが設けられている。これにより、発生したオゾンが吸入口3から外部へ漏れ出ることを効果的に防止することができる。オゾン除去フィルタ7aとしては、オゾンを除去できるものであれば特に限定されないが、Mn系触媒で構成されたものを用いることが好ましい。
また、本実施形態において、第一領域11の下部には、エキシマランプ2やファン6等を駆動するための電源回路部8が設けられている。第一領域11の下部に設けることで、空気処理機10をコンパクトにすることができる。
【0016】
第二領域12は、上述した第一領域11の第一方向とは異なる第二方向に延伸した円筒状をなしている。また、第二領域12は、
図1及び2に示すように、その上端部側において連通部121を介して第一領域11と接続されている。
本実施形態では、第二方向とは、図に示すように、空気処理機10を地面に設置した際に、地面と略垂直な方向を指し、第一方向と第二方向とは直交する構成となっている。なお、第一方向と第二方向とは、異なった方向であればよく、直交していることに限定はされないが、例えば、第一方向と第二方向とのなす角は、80°以上120°以下であることが好ましく、90°以上100°以下であることがより好ましい。なお、旋回流発生の観点から、実質的に90°とすることが最も好ましい。
【0017】
第一領域11と第二領域12とは、第一領域11の一方の側面Aの延長に、円筒状の第二領域12の接線(円筒の断面の円の接線)とが重なるように接続されている。これにより、第一領域11と第二領域12との間で乱流の発生を抑制することができる。
連通部121は、側壁部122を有している。側壁部122は、第一領域11の他方の側面Bと第二領域12とが接する部分から第一領域11の内部方向に円筒状の外壁に沿って延伸して形成されている。そして、側壁部122は、第一領域11と第二領域12との連通孔の一部を塞ぐことで、連通孔123を形成している。この側壁部122を設けることで、第一領域11を通過してきた空気は、第二領域12に入るとその内壁面に沿って流れるため、第二領域12内において、空気の旋回流を形成することができる。このような空気の旋回流ができることで、オゾンと空気との接触時間を長くすることができ、空気中のアレルゲンやウイルス等を、高濃度オゾンに曝露する時間を長くすることができる。その結果、空気中のアレルゲンやウイルス等を効率よく無害化することができる。
【0018】
図3に示すように、第一領域11側から平面視した際の側壁部122の幅W
2は、20mm以上60mm以下であることが好ましく、25mm以上40mm以下であることがより好ましい。
また、第一領域11側から平面視した際の連通孔123の幅W
3は、10mm以上50mm以下であることが好ましく、15mm以上30mm以下であることがより好ましい。
第二領域12の直径D
1は、60mm以上180mm以下であることが好ましく、70mm以上140mm以下であることがより好ましい。
また、第二領域12の高さH
2は、150mm以上350mm以下であることが好ましく、200mm以上300mm以下であることがより好ましい。
【0019】
第二領域12の上部には、オゾン処理を施した空気を排出する排出口4が設けられている。排出口4上には、筐体1内の空気の排出を促すファン6が設置されている。
また、第二領域12内には、排出口4に接続し、第二方向に延伸した排出管5が設けられている。
【0020】
排出管5は、第二領域12の上部の排出口4から第二領域12の下部に向かって延在し、円筒形状を有している。このような排出管5を備えることで、第二領域12内において、空気の旋回流を確実に形成することができる。旋回流が発生することによって、第二領域12に流入した微粒子が内壁12aに沿って進んだ後、排出管5を通過して排出口4から空気処理機10の外部へ排出される。このように、旋回流を発生させる構造とすることによって、第一領域11から第二領域12に入った空気はすぐに排出口4から排出されず、排出管5の排出口4とは反対側の開口部を介して排出口4から排出されるため、空気とオゾンとの接触時間を長いものとすることができる。
【0021】
排出管5は、排出口4と対向する方向に狭くなるテーパ部分51を有している。本実施形態では、排出管5の端部にテーパ部分51を備えている。これにより、排出管5の開口部の中心側よりも第二領域12の内壁側の吸い込みを弱くすることができ、第二領域12の内壁に沿って旋回する空気に含まれるアレルゲンやウイルスが、早い段階で排出管5内部に吸い上げられるのを抑制し、結果的に空気に含まれるアレルゲンやウイルスの筐体内滞在時間の平均値を長くすることができる。
【0022】
排出管5のテーパ部分51以外の部分の内径D2は、40mm以上80mm以下であることが好ましい。
また、テーパ部分51の先端の開口径D3は、7mm以上87mm以下であることが好ましく、9mm以上77mm以下であることがより好ましく、10mm以上68mm以下であることがさらに好ましい。
テーパ部分51の先端の開口径D3は、第二領域12の直径D1よりも、1/5~2/5倍であることが好ましく、1/4~3/10倍であることがより好ましい。これにより、テーパ部分51を設けることによる効果をより顕著なものとすることができる。
排出管5の高さH3は、100mm以上150mm以下であることが好ましい。これにより、空気の筐体1内への滞在時間をより長くすることができ、空気中のアレルゲンやウイルス等をさらに効率よく無害化することができる。
【0023】
なお、排出管5の形状は、
図4の形状に限定されず、例えば、
図5に示すように、テーパ部分51の先にさらに円筒部分があってもよいし、
図6に示すように、テーパ部分51はなく、排出管5の先端が径の小さい円筒が設けられていてもよい。
【0024】
また、排出管5内部には、オゾン除去フィルタ7bが設けられている。これにより、空気処理機10の外にオゾンを含む空気を排出することを防止することができる。オゾン除去フィルタ7bとしては、オゾンを除去できるものであれば特に限定されないが、Mn系触媒で構成されたものを用いることが好ましい。
また、第二領域12の底部は、開閉可能となっていて、底部にゴミ等が溜まった際に側部を開くことでゴミを捨てることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0025】
図1~
図4に示す構成の空気処理機を作成した。各寸法は、H
1=40mm、W
1=50mm、L
1=150mm、W
2=33mm、W
3=17mm、H
2=250mm、D
2=50mm、H
3=100mm、D
3=30mmであり、エキシマランプ2として、172nm(Xe
2)の波長のものを用いた。
以上から、本発明に係る空気処理機は、筐体内を通過する空気の風量を大きく下げることなく、筐体内に吸い込んだ空気中のアレルゲンやウイルス等を、高濃度オゾンに曝露する時間を長くすることで、アレルゲンやウイルス等を効率よく無害化することが可能である。