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▶ ウニヴェルズィテート・フューア・ボーデンクルトゥーア・ウィーンの特許一覧 ▶ メディツィニシェ ウニベルジテート ウィーンの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012402
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】老化細胞の除去のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20240123BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/4152 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 31/655 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240123BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240123BHJP
   C12Q 1/44 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240123BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20240123BHJP
   C12N 9/00 20060101ALN20240123BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K31/196
A61K31/405
A61K31/4152
A61K31/616
A61K31/655
A61P29/00
A61P43/00 111
C12Q1/02
C12Q1/44
G01N33/92 Z
G01N33/48 M
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
G01N33/50 D
C12N9/02
C12N9/00
C12N9/16 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184576
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2021522539の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】18202657.5
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507205623
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート・フューア・ボーデンクルトゥーア・ウィーン
(71)【出願人】
【識別番号】508317424
【氏名又は名称】メディツィニシェ ウニベルジテート ウィーン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】レンマーマン,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】グリラリ,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ピルス,ベラ
(72)【発明者】
【氏名】グルーバー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ナルツ,マリー-ソフィー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】老化細胞を効果的に除去することが可能な組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、老化細胞の選択的な除去での使用のための、シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、およびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも2つを阻害することが可能な1つもしくは複数の阻害剤を含む組成物、またはアラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、もしくはACSBG2を阻害することが可能な1つもしくは複数の阻害剤を含む組成物、またはそれらの組合せを提供する。本発明は、対象において老化細胞を同定するインビトロ方法、および老化細胞の選択的な除去のための候補化合物を同定する方法にさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、およびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも2つを阻害することが可能な1つ以上の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
【請求項2】
アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、またはACSBG2を阻害することが可能な1つ以上の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
【請求項3】
アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、またはACSBG2を阻害することが可能な1つ以上の阻害剤、およびCOX-1、COX-2、またはリポキシゲナーゼのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
老化細胞が、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの高い細胞内レベルで特徴付けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
リゾホスファチジルコリンが、1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoSPC)、または1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPPC)である、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
1つ以上の阻害剤が、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、セレコキシブ、シクロスポリンA、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、ナブメトン、ケトロラック、テノキシカム、トルメチン、ピロキシカム、フェノプロフェン、エトドラク、ナプロキセン、ジフルニサル、スプロフェン、ブロムフェナク、ケトプロフェン、ジホモ-γ-リノレン酸、イコサペント、フルルビプロフェン、メフェナム酸、サルサレート、スリンダク、サリチル酸、ルミラコキシブ、O-アセチル-L-セリン、フェナセチン、フルルビプロフェンメチルエステル、メタミゾール、ニトロアスピリン、メロキシカム、フルフェナム酸、オキサプロジン、チアプロフェン酸、サリチル酸マグネシウム、ジエチルカルバマジン、ロルノキシカム、カルプロフェン、フェニルブダゾン、ネパフェナク、アンチピリン、アントラフェニン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、トリフルサール、ニフルム酸、デキシブプロフェン、アセクロフェナック、アセメタシン、ドロキシカム、ロキソプロフェン、トルフェナム酸、デキスケトプロフェン、トロメタモール、タルニフルメート、プロパセタモール、サリチル酸トロラミン、サリチル酸フェニル、ブフェキサマク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メンチル、FK-506、レナリドマイド、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、シミコキシブ、クロルフェネシン、クロドロン酸、セリシクリブ、ドロスピレノン、トリアムシノロン、ポマリドミド、パレコキシブ、フィロコキシブ、アクロフェナク、アダパレン、サリドマイド、エトリコキシブ、ロベナコキシブ、アサルアルデヒド、ザルトプロフェン、デラコキシブ、デキサメタゾン、プラノプロフェン、アンフェナクナトリウム一水和物、アンピロキシカム、NS-398、次サリチル酸ビスマス、ジクロフェナクジエチルアミン、トロメタモール、ルテカルピン、サリシン、フェンブフェン、キサントフモール、フルニキシンメグルミン、およびニメスリドからなる群から選択されるCOX-1および/またはCOX-2阻害剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
1つ以上の阻害剤が、MK886、ジロイトン、マソプロコール、ジエチルカルバマジン、アゼラスチン、ベノキサプロフェン、ノルジヒドログアイアレチン酸、アビエチン酸、エスクレチン、モンテルカスト、ミノサイクリン、MLN-977、レイン、ジアセレイン、ナビキシモルス、ホスタマチニブ、AM103、DG031、フィボフラポン、AA-861、およびアトレロイトンからなる群から選択されるリポキシゲナーゼおよび/またはFLAP(ALOX5AP)阻害剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
1つ以上の阻害剤が、好ましくは、リコフェロン、ダルブフェロン、CI-987、S-2474、KME-4、ケブラジン酸、バルサラジド、メサラジン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、メクロフェナム酸、モルニフルマートジアリールピラゾール誘導体、チエノ[2,3-b]ピリジン誘導体、N-置換5-アミノサリシリシラミド、フラボコキシド、インドリジン誘導体、LQFM-091、ヒペルホリン、セラストロール、BW755C、テポキサリン、b-ボスウェリン酸、D-002、2,3-ジアリールキサントン、フェニドン、およびER-34122からなる群から選択されるデュアルシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ阻害剤である、請求項1~7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害することが可能な1つ以上の阻害剤が、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、トリアクシンCの類似体、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、5-ブロモ-5’-フェニルスピロ[3H-1,3,4-チアジアゾール-2,3’-インドリン]-2-オン、CB2、CB5、CB6、CB16、NCI-3、CB2、CB5、CB6、CB16の類似体、および2-(6-ヒドロキシ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-1,3-チアゾール-4(5H)-オンからなる群から選択される阻害剤である、請求項2~8のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
アラキドン酸の細胞内の転換を阻害することが可能な追加の化合物を含み、前記追加の化合物が、
a)好ましくは、ウコン、ローズマリー、ショウガ、オレガノ、レスベラトロール、クルクミン、カンナビノイド、チョウセンニンジン、サポニン、テルペノイド、フラボノイド、ポリフェノール、イチョウ、カプサイシン、ゲニステイン、ケンフェロールからなる群から選択される天然化合物;
b)好ましくは、スルファフェナゾール、アバシミブ、ベンズブロマロン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、セルビスタチン、ワルファリン、ピオグリタゾン、ラパチニブ、トリメトプリム、ザフィルルカスト、アモジアキン、ニカルジピン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロラタジン、エチニルエストラジオール、イルベサルタン、キニーネ、ソラフェニブ、エルトロンボパグ、ロサルタン、リコフェロン、アミトリプチリン、アトルバスタチン、メフェナム酸、メロキシカム、ピロキシカム、エルロチニブ、パゾパニブ、ジエチルスチルベストロール、エンザルタミド、ポナチニブ、ダブラフェニブ、エナシデニブ、ロバスタチン、モンテルカスト、ケトコナゾール、フェロジピン、カンデサルタンシレキセチル、クロトリマゾール、モメタゾン、サルメテロール、ラロキシフェン、フェノフィブラート、レボチロキシン、タモキシフェン、オキシブチニン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ニフェジピン、リオトリックス、アムロジピン、ベザフィブラート、クロラムフェニコール、シクロスポリン、シメチジン、クロピドグレル、コレカルシフェロール、デラビルジン、デキストロプロポキシフェン、エトポシド、イソニアジド、ケトプロフェン、メトロニダゾール、ニルタミド、ニルバジピン、パロキセチン、フェネルジン、プラバスタチン、プロパフェノン、ピリメタミン、ロフェコキシブ、ルチン、サキナビル、スルファメトキサゾール、スルフィンピラゾン、テガセロド、テルフェナジン、チオリ
ダジン、チクロピジン、チオコナゾール、トリアゾラム、トロレアンドマイシン、バルプロ酸、アビラテロン、ビスモデギブ、レゴラフェニブ、トラメチニブ、イデラリシブ、ロピナビル、セレコキシブ、エファビレンツ、ラベプラゾール、テリフルノミド、クリサボロール、ベリノスタット、トピロキソスタット、カンデサルタン、レテルモビル、ルカパリブ、オピカポン、ナビロン、フルボキサミン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ボスチニブ、カボザンチニブ、ゲニステイン、レンバチニブ、アタザナビル、ベキサロテン、デフェラシロクス、キニジン、ミフェプリストン、ベムラフェニブ、シルデナフィル、ジクロフェナク、フルオキセチン、バルデコキシブ、ボリコナゾール、エトドラク、セルトラリン、グリブリド、アセノクマロール、ロスバスタチン、イマチニブ、クロザピン、ジアゼパム、プロゲステロン、オメプラゾール、バルサルタン、ボルテゾミブ、ネビラピン、アゼラスチン、ロルノキシカム、フェニルブダゾン、エトラビリン、レフルノミド、シタキセンタン、アミノフェナゾン、ベラパミル、エトリコキシブ、プロポフォール、スルファモキソール、ジクマロール、ジルチアゼム、ヒスタミン、モクロベミド、セレギリン、パレコキシブ、ドコネキセント、アセチルスルフィソキサゾール、フルコナゾール、パントプラゾール、デスロラタジン、ミコナゾール、アミオダロン、ゲムフィブロジル、プロベネシド、テニポシド、スルファジアジン、カペシタビン、フルオロウラシル、トラニルシプロミン、アナストロゾール、アトバコン、シクリジン、デクスフェンフルラミン、ジスルフィラム、エピネフリン、エプロサルタン、フレカイニド、インジナビル、メタゾラミド、ネルフィナビル、オランザピン、プランルカスト、プロメタジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファピリジン、メチマゾール、トルカポン、ビカルタミド、アルモダフィニル、アゴメラチン、ノスカピン、クレビジピン、スルコナゾール、ゲフィチニブ、チカグレロル、セリチニブ、フロクスウリジン、リフィテグラスト、レイン、ジアセレイン、ズカプサイシン、スチリペントール、ロベグリタゾン、ドスレピン、マニジピン、ブラックコホシュ、クルクミン、フェルバメート、ピペリン、サフィナミド、イプロニアジド、オリタバンシン、マソルポコール、およびペグビソマントからなる群から選択される、シトクロムP450の阻害剤;
c)好ましくは、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、トリアクシンCの類似体、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、およびロシグリタゾンからなる群から選択される、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤;
d)好ましくは、N-フェニルマレイミド誘導体、TSI-01、およびチメロサールからなる群から選択される、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤、具体的には、LPCAT1、LPCAT2、LPCAT3、LPCAT4、MBOAT2、および/もしくはMBOAT7の阻害剤;ならびに/または
e)好ましくは、シクロエート、アデノシン5’-ヘキサデシルホスフェート、エンド-1k、(S)-イル、および化合物37、5,5-ジメチル-3-(5-メチル-3-オキソ-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル)-1-フェニル-3-(トリフルオロメチル-3,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インドール-2,4-ジオン)、および(3-エンド)-3-(フェニルスルホニル)-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキサミドからなる群から選択される、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤、具体的にはELOVL2、ELOVL4、および/もしくはELOVL5の阻害剤
からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物を含み、前記追加の化合物が、
a)好ましくは、オリゴマイシンA、ニコチン酸イノシトール、ベダキリン、エフラペプチン、ロイシノスタチン、テントキシン、テントキシン誘導体、アンジオスタチン、エンテロスタチン、メリチン、IF、Syn-A2、Syn-C、レスベラトロール、ピ
セアタンノール、ジエチルスチルベストロール、4-アセトアミド-4’-イソチオシアノスチルベン-2,2’-ジスルホネート、4,4’-D-イソチオシアナトスチルベン-2,2-ジスルホン酸、ケンフェロール、モリン、アピゲニン、ゲニステイン、ビオカニンA、ダイゼイン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、プロアントシアニジン、クルクミン、フロレチン、テアフラビン、タンニン酸、4-ヒドロキシ-エストラジオール、2-ヒドロキシ-エストラジオール、17α-エストラジオール、17β-エストラジオール、α-ゼアラレノール、β-ゼアラレノール、オリゴマイシン、ベンツリシジン、アポプトリジン、オサマイシン、シトバリシン、ペリオマイシン、トリブチルスズ塩化物、水酸化トリシクロヘキシルスズ、硫酸トリエチルスズ、トリフェニルスズ塩化物、ジメチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3-ヒドロキシフラボン臭化物、ジオクチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジフェニルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン臭化物、ジフェニルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、トリブチルスズ3-ヒドロキシフラボン、トリエチル鉛、オーロベルチン、シトレオビリジン、アステルトキシン、ローダミンB、ローダミン123、ローダミン6G、ロザニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、キナクリン、キナクリンマスタード、アクリジンオレンジ、コリホスフィン、ピロニンY、デカリニウム、サフラニンO、ナイルブルーA、臭化エチジウム、テトラカイン、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、クロルプロマジン、トリフルオペラジン、プロカインアミド、プロプラノロール、オクチルグアニジン、1-ダンシルアミド-3-ジメチルプロピルアミン化合物、セチルトリメチルアンモニウム、スペルミン、スペルミジン、バトフェナントロリン-金属キレート、4,4-ジフェニル-2,2-ビピリジン、3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジン、アトラジン、アトラジンアミノ誘導体、アルセネート、フッ化アルミニウム、フッ化ベリリウム、フッ化スカンジウム、バナデート、フッ化マグネシウム、亜硫酸塩、チオホスフェート、アジド、ANPP、フェニルグリオキサール、ブタンジオン、ダンシル塩化物、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、ジカルボポリボレート、アルミトリン、5-ヒドロキシ-1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、R207910、スペガッジニン、n-ブタノール、テトラクロロサリチルアニリド、ジヒドロストレプトマイシン、スラミン、Bz-423、DMSO、次亜塩素酸、DDT、ジアゾキシド、HNB、N-スルホニルもしくはN-アルキル置換テトラヒドロベンゾジアゼピン誘導体、4-(N-アリールイミダゾール)-置換ベンゾピラン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-シアノグアニジン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-アシルグアニジン誘導体、O-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-チオウレタン誘導体、dio-9複合体、エタノール、および亜鉛からなる群から選択される、ATPシンターゼの阻害剤;
b)好ましくは、クロドロン酸、イビピナバント、アトラクチロシド、カルボキシアトラクチロシド、ボンクレキン酸、イソボンクレキン酸、MT-21、クロサンテル、CD437、リーラミン、L923-0673、IMD0354、PI32-0333、S899542、ノナクチン、およびS838462からなる群から選択される、ADP/ATPトランスロカーゼの阻害剤;
c)好ましくは、2-デオキシ-D-グルコース、ロニダミン、ブロモピルビン酸、フロレチン、STF-31、WZB117、3PO、3-ブロモピルベート、ジクロロアセテート、オキサミン酸、NHI-1、オキシチアミン、イマチニブ、グルコサミン、6-アミノニコチンアミド、ゲニステイン、5-チオグルコース、マンノヘプツロース、α-クロロヒドリン、オルニダゾール、オキサレート、グルフォスファミド、N-(ホスホンアセチル)-L-アスパルテート、6-メチルメルカプトプリンリボシド、CGP3466Bマレエート、モノフルオロリン酸ナトリウム、DASA-58、DL-セリン、ジクロロ酢酸、ジクロロ酢酸ナトリウム、ニトロフラール、6-AN、ファセンチン、ベンセ
ラジド、アストラガリン、レスベラトロール、クリシン、GEN-27、アピゲニン、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチル硫化物、CB-839、アザセリン、アシビシン、6-ジアゾ-5-ox-L-ノルロイシン、チアゾリジン-2,4-ジオン誘導体、化合物968、R-リポ酸、1,3,4-チアジアゾール化合物、2-クロロプロピオネート、Nov3r、AZD7545、Pfz3、ラジシコール、ミタプラチン、mito-DCA、フェニルブチレート、4,5-ジアリールイソオキサゾール、VER-246608、ベツリン酸、ホスフィネートまたはホスホナート基を含有するピルベート類似体、CPI-613、M77976、芳香族DCA誘導体、フランおよびチオフェンカルボン酸、リトナビル、FX11、オキサメート、D-フルクトース-6-ホスフェート、6-ホスホグルコン酸、N-ブロモアセチル-アミノエチルホスフェート、2-カルボキシエチルホスホン酸、N-ヒドロキシ-4-ホスホノ-ブタンアミド、2-ホスホグリセリン酸、ヨードアセテート、ゴシポール、1,3-ビスホスホグリセリン酸のビスホスホネート類似体、ベンゼンヘキサカルボン酸、3-ホスホグリセリン酸、ホスホノアセトヒドロキサム酸、2-ホスホ-D-グリセリン酸、TLN-232、ならびにCAP-232からなる群から選択される、グリコリシスの阻害剤
からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
老化関係の疾患もしくは状態の発症を予防もしくは遅延するか、または老化関係の疾患もしくは状態の進行を予防もしくは遅延するか、または老化関係の疾患もしくは状態の退行を促進する、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
老化関係の疾患または状態が、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、がん、骨粗鬆症、変形性関節症、神経障害、認知症、白内障、腎疾患、網膜症、糖尿病、肺線維症、脊椎の皮膚変性、加齢性筋萎縮、脱毛、または皮膚老化である、請求項12に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
移植の成績を改善する、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
老化関連の瘢痕形成および線維症を予防または減弱する、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
化学療法の副作用を改善し、腫瘍の再発を予防または遅延する、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
対象において老化細胞を同定するインビトロ方法であって、
a)前記対象のサンプルを準備するステップ、
b)前記対象においてリゾホスファチジル-コリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルを決定するステップ、
c)b)のレベルを基準レベルと比較するステップ
を含み、基準レベルが、非老化細胞におけるリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルであり、
リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のレベルでの少なくとも2倍の増加が、前記サンプルにおける老化細胞の存在を示している、
上記方法。
【請求項18】
老化細胞を除去するための候補化合物をスクリーニングする方法であって、
a)少なくとも1つの試験化合物を、老化細胞のサンプルと接触させるステップ、
b)アラキドン酸の細胞内レベルを測定する、および/またはアポトーシスを測定する、および/または細胞生存率を測定するステップ、ならびに
c)未処置の老化細胞と比較して、試験化合物と接触させた老化細胞において、アラキドン酸の細胞内蓄積、高いアポトーシス、および/または低い細胞生存率を起こす試験化合物を選択するステップ
を含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老化細胞除去剤(senolytics)の分野に関し、老化細胞の選択的な除去に有用な組成物、および老化細胞除去(senolytic)化合物をスクリーニングする方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
老化細胞は、それらが加齢性の疾患および障害の発症および進行に重要な役割を果たす加齢性病変に近接して、加齢の過程の間に組織および臓器に蓄積することが見出された。遺伝的または薬理学的のいずれかの手法を使用するマウスモデルでの老化細胞のクリアランスは、健康寿命を延長し、老化関連の疾患および障害の発生ならびに虚弱の発症を予防または遅延することが示された。それ以来、老化細胞を選択的に除去することができ、一般に「老化細胞除去剤」と称される、いくつかの薬理学的化合物が同定されている。
【0003】
細胞老化が、胚発生(Munoz-Espinら、2013年)、および創傷治癒(Demariaら、2014年)に重要な役割を果たす腫瘍抑制機構であるので、加齢の過程の間の臓器および組織での老化細胞の慢性蓄積は、加齢性の疾患および障害の発症および進行に対する主な駆動力であると考えられる。老化細胞は、最終的に、p53-p21CIP1またはp16INK4a-Rb軸のいずれかを介して成長が停止しており、老化関連のβ-ガラクトシダーゼ活性(SA-β-gal)を蓄積させ、典型的な形態を呈する(Campisiおよびd’Adda di Fagagna、2007年)。慢性的に存在する場合、これらは、老化関連分泌表現型(SASP)と呼ばれる、サイトカイン、成長因子、およびプロテアーゼの腫瘍化を促進する(pro-tumorigenic)炎症性混合物を分泌することにより、周囲組織に悪影響を及ぼす(Acostaら、2013年;Coppeら、2010年;Krtolicaら、2001年)。
【0004】
老化細胞では、アラキドン酸の細胞外培地への放出が増大するので、若い細胞と比較してアラキドン酸の細胞内レベルが低減することは、以前に記載されている(Lorenziniら、2000年)。
【0005】
これらの知見と対照的に、WO2019070407A1は、例えばエイコサノイドのような老化細胞のインジケーター、またはエイコサノイド前駆体アラキドン酸を決定することにより、哺乳動物において高いレベルの老化細胞を同定する方法を開示する。
【0006】
p16INK4aプロモーターを使用して、p16INK4a陽性細胞を視覚化し、選択的に除去する遺伝学的マウスモデルは、老化細胞が、インビボの加齢の過程の間に蓄積し、p16INK4a陽性細胞のクリアランスが、健康寿命を延長させ、老化関連の疾患および障害の発症および進行を障害することを、説得力をもって示した(Bakerら、2016年;Bakerら、2011年)。老化細胞、ならびに、いくつか加齢性の疾患および障害、例えば、アテローム性動脈硬化症(Childsら、2016年;Roosら、2016年)、特発性肺線維症(Lehmannら、2017年;Schaferら、2017年)、骨粗鬆症(Farrら、2017年;Zhuら、2015年)、外傷後変形性関節症(Jeonら、2017年)、腎臓老化(SchmittandMelk、2017年;Valentijnら、2018年)、皮膚老化(Baarら、2017年;Lammermannら、2018年;Lewisら、2011年;Resslerら、2006年;Yosefら、2016年)、神経変性疾患(Bussianら、2018年)、および脂肪生成の障害(Xuら、2015年)の間の因果関係に対する有力な証拠がある。さらに、老化細胞のクリアランスが、照射および化学療法に誘発された老化の悪影響を減弱し、組織機能性を修復することを示していた(Baarら、2017年;Changら、2016年;Dorrら、2013年;Panら、2017年)。加齢性の疾患および障害に加えて、細胞老化はまた、腫瘍の再発と、続く化学療法(Milanovicら、2017年)、および、老化細胞除去両方の潜在性を強調する移植臓器の成績(Braunら、2012年)に関連する。
【0007】
老化細胞除去化合物および標的のリストは、Bcl-2ファミリーの阻害剤(Changら、2016年;Panら、2017年;Yosefら、2016年;Zhuら、2017年;Zhuら、2016年)、Hsp90阻害剤(Fuhrmann-Stroissniggら、2017年)、ダサチニブ(Roosら、2016年;Schaferら、2017年;Zhuら、2015年)、FOXO4(Baarら、2017年)、OXR1(Zhangら、2018年)、グルコース代謝(Dorrら、2013年)、ミトコンドリア標的タモキシフェン(MitoTam)またはオリゴマイシンAでのATPシンターゼ活性の低減(Hubackovaら、2018)、およびいくつかの植物由来化合物、例えばケルセチン(Roosら、2016年;Schaferら、2017年;Zhuら、2015年)、フィセチン(Zhuら、2017年)、ピペルロングミン(Wangら、2016a年)、ならびにアキノキリンソウ(solidagovirgaurea)のアルコール抽出物(Lammermannら、2018年)を含む。
【0008】
老化細胞を標的とする化合物の組合せは、記載されている。WO2015116735A1は、例えばダサチニブおよびケルセチンを含む老化細胞除去の組合せを投与することによる、老化細胞関連の疾患または障害の処置のための方法を記載する。
【0009】
しかし、ナビトクラックスおよびダサチニブのような報告された老化細胞除去剤の多くは、重篤な副作用を有し、ほとんどの老化細胞除去剤は、全ての細胞種において全般に効果的なわけではない。
【0010】
したがって、重篤な副作用がより少なく、広範囲な適用の改善された老化細胞除去剤が強く望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、老化細胞を効果的に除去することが可能な組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、老化細胞の選択的な除去に有用な化合物をスクリーニングする方法を提供することである。
【0012】
課題は、本発明により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、老化細胞が、変化した脂質代謝を含み、これを、老化細胞を選択的に除去するのに利用することができることを示している。特に、リゾPCは、老化細胞において上方制御され、アラキドン酸の形成の増加を示す。アラキドン酸の細胞内蓄積による細胞死を予防するために、アラキドン酸は、代謝される。例えば、アラキドン酸は、リポキシゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼによりエイコサノイドに代謝されるか、またはACSL4のようなアラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素により、酵素的な再利用および分解の過程に対する前駆体であるアラキドニル-CoAに代謝される。これにより、高い細胞内レベルのアラキドン酸による細胞死は、予防される。したがって、リポキシゲナーゼまたはシクロオキシゲナーゼの阻害は、老化細胞のアラキドン酸の増加をもたらすので、老化細胞の選択的な除去をもたらす。
【0014】
本発明によると、シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、およびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも2つを阻害することが可能な1つまたは複数の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物が提供される。
【0015】
具体的には、1つまたは複数の阻害剤は、COX-1および/またはCOX-2の特異的阻害剤である。
具体的には、本明細書で提供される組成物は、1つまたは複数の阻害剤を含み、COX-1、COX-2、およびリポキシゲナーゼからなる群から選択される少なくとも2つの酵素の酵素活性を阻害することが可能である。
【0016】
具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、少なくとも2つの阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つのCOX-1またはCOX-2阻害剤、および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、組成物は、少なくとも1つのCOX-1阻害剤、および少なくとも1つのCOX-2阻害剤を含む。具体的には、提供される組成物は、COX-1阻害剤、COX-2阻害剤、およびCOX-1/COX-2阻害剤、ならびにリポキシゲナーゼ阻害剤からなる群から選択されるシクロオキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つのCOX-1阻害剤および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤、または少なくとも1つのCOX-2阻害剤および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤、または少なくとも1つのCOX-1/COX-2阻害剤および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤を含む。
【0017】
さらに具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つのデュアルシクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、上記組成物は、1つのデュアルシクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害剤、ならびに任意で少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼまたはリポキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、併用処置として、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼおよび少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤を含むか、またはシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも1つのデュアル阻害剤、もしくはそれらの任意の組合せを含む。
【0018】
さらに具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、COX-1およびCOX-2を阻害することが可能な、1つまたは複数の阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つのCOX-1/COX-2阻害剤、または少なくとも1つのCOX-1阻害剤、および少なくとも1つのCOX-2阻害剤を含む。
【0019】
本発明によると、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害することが可能な1つまたは複数の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物がさらに提供される。具体的には、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する上記酵素は、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)、具体的にはACSL1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、またはSLC27A2もしくはACSBG2のいずれか1つまたは複数である。
【0020】
具体的には、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害することが可能な阻害剤は、ACSL阻害剤であり、具体的には、少なくともACSL4を阻害することが可能な阻害剤である。具体的には、本明細書に記載の組成物は、1つまたは複数のACSL阻害剤を含む。具体的には、本明細書に記載の組成物は、ACSL4阻害剤を含む。
【0021】
具体的には、1つまたは複数のACSL阻害剤は、トリアクシンA、トリアクシンB、
トリアクシンC、トリアクシンD、トリアクシンCの類似体、例えば、Kimら、2012年、またはPriorら、2014年に記載されたもの、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、またはロシグリタゾンである。
【0022】
具体的には、本明細書に記載の組成物は、1つまたは複数のSLC27A2阻害剤を含み、好ましくは、トリアクシンC、5-ブロモ-5’-フェニルスピロ[3H-1,3,4-チアジアゾール-2,3’-インドリン]-2-オン、CB2、CB5、CB6、CB16、NCI-3、ならびに、CB2、CB5、CB6およびCB16の類似体から選択される。具体的には、SLC27A2の阻害剤は、Sandovalら、2010年に開示される。
【0023】
具体的には、本明細書に記載の組成物は、1つまたは複数のACSBG2阻害剤を含み、好ましくは、上記阻害剤は、2-(6-ヒドロキシ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-1,3-チアゾール-4(5H)-オンである。
【0024】
本発明の具体的な実施形態によると、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、またはACSBG2を阻害することが可能な1つまたは複数の阻害剤、およびCOX-1、COX-2、またはリポキシゲナーゼのうちの少なくとも1つを含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物を提供する。
【0025】
具体的には、本明細書で提供される組成物は、1つまたは複数の阻害剤を含み、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的にはACSL1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2および/またはACSBG2、ならびに、シクロオキシゲナーゼ活性を有する酵素、具体的にはCOX-1および/またはCOX-2の酵素活性を阻害することが可能である。
【0026】
具体的には、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つのACSL阻害剤、およびシクロオキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、ACSL1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、およびACSL6のうちの少なくとも1つを阻害することが可能な阻害剤、ならびに、COX-1およびCOX-2のうちの少なくとも1つを阻害することが可能な阻害剤を含む。
【0027】
具体的には、本明細書で提供される組成物は、1つまたは複数の阻害剤を含み、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的にはACSL1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2および/またはACSBG2、ならびに、リポキシゲナーゼ活性を有する酵素の酵素活性を阻害することが可能である。
【0028】
具体的には、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つのACSL阻害剤、およびリポキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、ACSL1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、およびACSL6のうちの少なくとも1つを阻害することが可能な阻害剤、ならびに、少なくともALOX5を阻害することが可能な阻害剤を含む。
【0029】
具体的には、老化細胞は、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、およびホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの高い細胞内レベルで特徴付けられる。
具体的には、リゾホスファチジルコリンは、1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoSPC)、または1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPPC)からなる群から選択され
る。
【0030】
具体的には、本明細書で提供される組成物に含まれる1つまたは複数の阻害剤は、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、セレコキシブ、シクロスポリンA、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、ナブメトン、ケトロラック、テノキシカム、トルメチン、ピロキシカム、フェノプロフェン、エトドラク、ナプロキセン、ジフルニサル、スプロフェン、ブロムフェナク、ケトプロフェン、ジホモ-γ-リノレン酸、イコサペント、フルルビプロフェン、メフェナム酸、サルサレート、スリンダク、サリチル酸、ルミラコキシブ、O-アセチル-L-セリン、フェナセチン、フルルビプロフェンメチルエステル、メタミゾール、ニトロアスピリン、メロキシカム、フルフェナム酸、オキサプロジン、チアプロフェン酸、サリチル酸マグネシウム、ジエチルカルバマジン、ロルノキシカム、カルプロフェン、フェニルブダゾン、ネパフェナク、アンチピリン、アントラフェニン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、トリフルサール、ニフルム酸、デキシブプロフェン、アセクロフェナック、アセメタシン、ドロキシカム、ロキソプロフェン、トルフェナム酸、デキスケトプロフェン、タルニフルメート、プロパセタモール、サリチル酸トロラミン、サリチル酸フェニル、ブフェキサマク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メンチル、FK-506、レナリドマイド、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、シミコキシブ、クロルフェネシン、クロドロン酸、セリシクリブ、ドロスピレノン、トリアムシノロン、ポマリドミド、パレコキシブ、フィロコキシブ、アクロフェナク、アダパレン、サリドマイド、エトリコキシブ、ロベナコキシブ、アサルアルデヒド、ザルトプロフェン、デラコキシブ、デキサメタゾン、プラノプロフェン、アンフェナクナトリウム一水和物、アンピロキシカム、NS-398、次サリチル酸ビスマス、ジクロフェナクジエチルアミン、トロメタモール、ルテカルピン、サリシン、フェンブフェン、キサントフモール、フルニキシンメグルミン、およびニメスリドからなる群から選択されるCOX-1および/またはCOX-2阻害剤である。
【0031】
好ましくは、本明細書に記載の組成物は、ケルセチンを含まない。具体的には、ケルセチンは、100μm未満のIC50で、シクロオキシゲナーゼ活性を阻害することが不可能なので、シクロオキシゲナーゼ阻害剤ではない(Wangら、2000年)。具体的には、ケルセチンは、3μm未満のIC50で、リポキシゲナーゼ活性を阻害することができないので、リポキシゲナーゼ阻害剤ではない。
【0032】
具体的には、本明細書で提供される組成物に含まれる1つまたは複数の阻害剤は、MK886、ジロイトン、マソプロコール、ジエチルカルバマジン、アゼラスチン、ベノキサプロフェン、ノルジヒドログアイアレチン酸、アビエチン酸、エスクレチン、モンテルカスト、ミノサイクリン、MLN-977、レイン、ジアセレイン、ナビキシモルス、ホスタマチニブ、AM103、DG031、フィボフラポン、AA-861、およびアトレロイトン(atreleuton)からなる群から選択されるリポキシゲナーゼおよび/またはFLAP(ALOX5AP)阻害剤である。
【0033】
好ましい実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、セレコキシブ、シクロスポリンA、およびイブプロフェンからなる群から選択される少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害剤、ならびに、MK886およびジロイトンからなる群から選択される少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、アセチルサリチル酸およびMK886を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、ジクロフェナクおよびMK886を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、セレコキシブおよびMK886を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、アセチルサリチル酸、ジクロフェナクまたはセレコキシブ、ならびにシクロスポリンAおよびMK886を含む。
【0034】
具体的には、本明細書で提供される組成物に含まれる1つまたは複数の阻害剤は、好ましくは、リコフェロン、ダルブフェロン、CI-987、S-2474、KME-4、ケブラジン酸、バルサラジド、メサラジン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、メクロフェナム酸、モルニフルマートジアリールピラゾール誘導体、チエノ[2,3-b]ピリジン誘導体、N-置換5-アミノサリシリシラミド(aminosalicylicylamide)、フラボコキシド、インドリジン誘導体、LQFM-091、ヒペルホリン、セラストロール、BW755C、テポキサリン、b-ボスウェリン酸、D-002、2,3-ジアリールキサントン、フェニドン、およびER-34122からなる群から選択されるデュアルシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ阻害剤である。
【0035】
さらに具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、アラキドン酸の細胞内の転換を阻害することが可能な追加の化合物を含む。具体的には、上記の追加の化合物は、アラキドン酸レベルの増加をもたらす。具体的には、上記の追加の化合物は、天然化合物のいずれか1つ、シトクロムP450の阻害剤、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤、もしくは脂肪酸エロンガーゼの阻害剤、またはそれらの任意の組合せである。
【0036】
具体的には、追加の化合物は、好ましくは、ウコン、ローズマリー、ショウガ、オレガノ、レスベラトロール、クルクミン、カンナビノイド、チョウセンニンジン、サポニン、テルペノイド、フラボノイド、ポリフェノール、イチョウ、カプサイシン、ゲニステイン、およびケンフェロールからなる群から選択される天然化合物である。
【0037】
具体的には、追加の化合物は、好ましくは、スルファフェナゾール、アバシミブ、ベンズブロマロン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、セルビスタチン、ワルファリン、ピオグリタゾン、ラパチニブ、トリメトプリム、ザフィルルカスト、アモジアキン、ニカルジピン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロラタジン、エチニルエストラジオール、イルベサルタン、キニーネ、ソラフェニブ、エルトロンボパグ、ロサルタン、リコフェロン、アミトリプチリン、アトルバスタチン、メフェナム酸、メロキシカム、ピロキシカム、エルロチニブ、パゾパニブ、ジエチルスチルベストロール、エンザルタミド、ポナチニブ、ダブラフェニブ、エナシデニブ、ロバスタチン、モンテルカスト、ケトコナゾール、フェロジピン、カンデサルタンシレキセチル、クロトリマゾール、モメタゾン、サルメテロール、ラロキシフェン、フェノフィブラート、レボチロキシン、タモキシフェン、オキシブチニン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ニフェジピン、リオトリックス、アムロジピン、ベザフィブラート、クロラムフェニコール、シクロスポリン、シメチジン、クロピドグレル、コレカルシフェロール、デラビルジン、デキストロプロポキシフェン、エトポシド、イソニアジド、ケトプロフェン、メトロニダゾール、ニルタミド、ニルバジピン、パロキセチン、フェネルジン、プラバスタチン、プロパフェノン、ピリメタミン、ロフェコキシブ、ルチン、サキナビル、スルファメトキサゾール、スルフィンピラゾン、テガセロド、テルフェナジン、チオリダジン、チクロピジン、チオコナゾール、トリアゾラム、トロレアンドマイシン、バルプロ酸、アビラテロン、ビスモデギブ、レゴラフェニブ、トラメチニブ、イデラリシブ、ロピナビル、セレコキシブ、エファビレンツ、ラベプラゾール、テリフルノミド、クリサボロール、ベリノスタット、トピロキソスタット、カンデサルタン、レテルモビル、ルカパリブ、オピカポン、ナビロン、フルボキサミン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ボスチニブ、カボザンチニブ、ゲニステイン、レンバチニブ、アタザナビル、ベキサロテン、デフェラシロクス、キニジン、ミフェプリストン、ベムラフェニブ、シルデナフィル、ジクロフェナク、フルオキセチン、バルデコキシブ、ボリコナゾール、エトドラク、セルトラリン、グリブリド、アセノクマロール、ロスバスタチン、イマチニブ、クロザピン、ジアゼパム、プロゲステロン、オメプラゾール、バルサルタン、ボルテゾミブ、ネビラピン、アゼラスチン、ロルノキシカム、フェニルブダゾン、エトラビリン、レフルノミド、シタキセンタン、アミノフェナゾン、ベラパミル、エトリコキシブ、プロポフォール、スルファモキソール、ジクマロール、ジルチアゼム、ヒスタミン、モクロベミド、セレギリン、パレコキシブ、ドコネキセント、アセチルスルフィソキサゾール、フルコナゾール、パントプラゾール、デスロラタジン、ミコナゾール、アミオダロン、ゲムフィブロジル、プロベネシド、テニポシド、スルファジアジン、カペシタビン、フルオロウラシル、トラニルシプロミン、アナストロゾール、アトバコン、シクリジン、デクスフェンフルラミン、ジスルフィラム、エピネフリン、エプロサルタン、フレカイニド、インジナビル、メタゾラミド、ネルフィナビル、オランザピン、プランルカスト、プロメタジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファピリジン、メチマゾール、トルカポン、ビカルタミド、アルモダフィニル、アゴメラチン、ノスカピン、クレビジピン、スルコナゾール、ゲフィチニブ、チカグレロル、セリチニブ、フロクスウリジン、リフィテグラスト、レイン、ジアセレイン、ズカプサイシン、スチリペントール、ロベグリタゾン、ドスレピン、マニジピン、ブラックコホシュ、クルクミン、フェルバメート、ピペリン、サフィナミド、イプロニアジド、オリタバンシン、マソルポコール(masorpocol)、およびペグビソマントからなる群から選択される、シトクロムP450(CYP2J、CYP2C、CYP4A、CYP4F)の阻害剤である。
【0038】
具体的には、追加の化合物は、好ましくは、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、およびロシグリタゾンからなる群から選択される、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤である。
【0039】
具体的には、追加の化合物は、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤、具体的にはLPCAT1、LPCAT2、LPCAT3、LPCAT4、MBOAT2、および/またはMBOAT7の阻害剤であり、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤は、好ましくは、N-フェニルマレイミド誘導体、TSI-01、およびチメロサールからなる群から選択される。
【0040】
具体的には、追加の化合物は、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤、具体的にはELOVL2、ELOVL4、および/またはELOVL5の阻害剤であり、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤は、好ましくは、シクロエート、アデノシン5’-ヘキサデシルホスフェート、エンド-1k、(S)-イル、および化合物37、5,5-ジメチル-3-(5-メチル-3-オキソ-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル)-1-フェニル-3-(トリフルオロメチル-3,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インドール-2,4-ジオン)、および(3-エンド)-3-(フェニルスルホニル)-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキサミドからなる群から選択される。
【0041】
さらに具体的な実施形態によると、組成物は、細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物を含む。
具体的には、細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物は、好ましくは、オリゴマイシンA、ニコチン酸イノシトール、ベダキリン、エフラペプチン、ロイシノスタチン、テントキシン、テントキシン誘導体、アンジオスタチン、エンテロスタチン、メリチン、IF、Syn-A2、Syn-C、レスベラトロール、ピセアタンノール、ジエチルスチルベストロール、4-アセトアミド-4’-イソチオシアノスチルベン-2,2’-ジスルホネート、4,4’-D-イソチオシアナトスチルベン-2,2-ジスルホン酸、ケンフェロール、モリン、アピゲニン、ゲニステイン、ビオカニンA、ダイゼイン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、プロアントシアニジン、クルクミン、フロレチン、テアフラビン、タンニン酸、4-ヒドロキシ-エストラジオール、2-ヒドロキシ-エストラジオール、17α-エストラジオール、17β-エストラジオール、α-ゼアラレノール、β-ゼアラレノール、オリゴマイシン、ベンツリシジン、アポプトリジン、オサマイシン(ossamycin)、シトバリシン、ペリオマイシン(peliomycin)、トリブチルスズ塩化物、水酸化トリシクロヘキシルスズ、硫酸トリエチルスズ、トリフェニルスズ塩化物、ジメチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3-ヒドロキシフラボン臭化物、ジオクチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジフェニルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン臭化物、ジフェニルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、トリブチルスズ3-ヒドロキシフラボン、トリエチル鉛、オーロベルチン、シトレオビリジン、アステルトキシン、ローダミンB、ローダミン123、ローダミン6G、ロザニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、キナクリン、キナクリンマスタード、アクリジンオレンジ、コリホスフィン、ピロニンY、デカリニウム、サフラニンO、ナイルブルーA、臭化エチジウム、テトラカイン、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、クロルプロマジン、トリフルオペラジン、プロカインアミド、プロプラノロール、オクチルグアニジン、1-ダンシルアミド-3-ジメチルプロピルアミン化合物、セチルトリメチルアンモニウム、スペルミン、スペルミジン、バトフェナントロリン-金属キレート、4,4-ジフェニル-2,2-ビピリジン、3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジン、アトラジン、アトラジンアミノ誘導体、アルセネート、フッ化アルミニウム、フッ化ベリリウム、フッ化スカンジウム、バナデート、フッ化マグネシウム、亜硫酸塩、チオホスフェート、アジド、ANPP、フェニルグリオキサール、ブタンジオン、ダンシル塩化物、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、ジカルボポリボレート、アルミトリン、5-ヒドロキシ-1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、R207910、スペガッジニン、n-ブタノール、テトラクロロサリチルアニリド、ジヒドロストレプトマイシン、スラミン、Bz-423、DMSO、次亜塩素酸、DDT、ジアゾキシド、HNB、N-スルホニルまたはN-アルキル置換テトラヒドロベンゾジアゼピン誘導体、4-(N-アリールイミダゾール)-置換ベンゾピラン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-シアノグアニジン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-アシルグアニジン誘導体、O-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-チオウレタン誘導体、dio-9複合体、エタノール、および亜鉛からなる群から選択される、ATPシンターゼの阻害剤である。
【0042】
具体的には、細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物は、好ましくは、クロドロン酸、イビピナバント、アトラクチロシド、カルボキシアトラクチロシド、ボンクレキン酸、イソボンクレキン酸、MT-21、クロサンテル、CD437、リーラミン(leelamine)、L923-0673、IMD0354、PI32-0333、S899542、ノナクチン、およびS838462からなる群から選択される、ADP/ATPトランスロカーゼの阻害剤である。
【0043】
具体的には、細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物は、好ましくは、2-デオキシ-D-グルコース、ロニダミン、ブロモピルビン酸、フロレチン、STF-31、WZB117、3PO、3-ブロモピルベート、ジクロロアセテート、オキサミン酸、NHI-1、オキシチアミン、イマチニブ、グルコサミン、6-アミノニコチンアミド、ゲニステイン、5-チオグルコース、マンノヘプツロース、α-クロロヒドリン、オルニダゾール、オキサレート、グルフォスファミド、N-(ホスホンアセチル)-L-アスパルテート、6-メチルメルカプトプリンリボシド、CGP3466Bマレエート、モノフルオロリン酸ナトリウム、DASA-58、DL-セリン、ジクロロ酢酸、ジクロロ酢酸ナトリウム、ニトロフラール、6-AN、ファセンチン(fasentin)、ベンセラジド、アストラガリン、レスベラトロール、クリシン、GEN-27、アピゲニン、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチル硫化物、CB-839、アザセリン、アシビシン、6-ジアゾ-5-ox-L-ノルロイシン、チアゾリジン-2,4-ジオン誘導体、化合物968、R-リポ酸、1,3,4-チアジアゾール化合物、2-クロロプロピオネート、Nov3r、AZD7545、Pfz3、ラジシコール、ミタプラチン(mitaplatin)、mito-DCA、フェニルブチレート、4,5-ジアリールイソオキサゾール、VER-246608、ベツリン酸、ホスフィネートまたはホスホナート基を含有するピルベート類似体、CPI-613、M77976、芳香族DCA誘導体、フランおよびチオフェンカルボン酸、リトナビル、FX11、オキサメート、D-フルクトース-6-ホスフェート、6-ホスホグルコン酸、N-ブロモアセチル-アミノエチルホスフェート、2-カルボキシエチルホスホン酸、N-ヒドロキシ-4-ホスホノ-ブタンアミド、2-ホスホグリセリン酸、ヨードアセテート、ゴシポール、1,3-ビスホスホグリセリン酸のビスホスホネート類似体、ベンゼンヘキサカルボン酸、3-ホスホグリセリン酸、ホスホノアセトヒドロキサム酸、2-ホスホ-D-グリセリン酸、TLN-232、ならびにCAP-232からなる群から選択される、グリコリシスの阻害剤である。
【0044】
具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、老化関係の疾患または状態の発症を予防または遅延する。
具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、老化関係の疾患または状態の進行を予防または遅延する。
【0045】
具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、老化関係の疾患または状態の退行を促進する。
具体的には、老化関係の疾患または状態は、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、がん、骨粗鬆症、変形性関節症、神経障害、認知症、白内障、腎疾患、網膜症、糖尿病、肺線維症、脊椎の皮膚変性、加齢性筋萎縮、脱毛、および皮膚老化から選択される。
【0046】
具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、移植の成績を改善する。
具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、老化関連の瘢痕形成および線維症を予防または減弱する。
【0047】
具体的な実施形態によると、組成物は、化学療法の副作用を改善し、腫瘍の再発を予防または遅延する。
本明細書でさらに提供されるのは、対象において老化細胞を同定するインビトロ方法であって、
a)上記対象のサンプルを準備するステップ、
b)上記対象においてリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルを決定するステップ、
c)b)のレベルを基準レベルと比較するステップ
を含み、基準レベルが、非老化細胞におけるリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルであり、
少なくとも2倍の増加が、上記サンプルにおける老化細胞の存在を示している、
方法である。
【0048】
具体的には、基準レベルと比較して少なくとも2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、または5倍のリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、およびホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルでの増加は、上記サンプルにおける老化細胞の存在を示している。
【0049】
さらにより具体的には、それぞれの標準偏差の少なくとも2倍、3倍、4倍、または5倍である、基準レベルと比較した、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、およびホ
スホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルでの増加は、上記サンプルにおける老化細胞の存在を示している。好ましくは、それぞれの標準偏差の少なくとも2倍である、基準レベルと比較した、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、およびホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つのレベルでの増加は、対象のサンプルにおける老化細胞の存在を示している。
【0050】
さらに提供されるのは、老化細胞を除去するための候補化合物をスクリーニングする方法であって、
a)少なくとも1つの試験化合物を、老化細胞のサンプルと接触させるステップ、
b)アラキドン酸の細胞内レベルを測定する、および/またはアポトーシスを測定する、および/または細胞生存率を測定するステップ、ならびに
c)未処置の老化細胞と比較して、試験化合物と接触させた老化細胞において、アラキドン酸の細胞内蓄積、高いアポトーシス、および/または低い細胞生存率を起こす試験化合物を選択するステップ
を含む方法である。
【0051】
具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物で使用される化合物は、本明細書に記載のスクリーニング方法にしたがって同定される。
具体的な実施形態によると、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物は、COX-1およびCOX-2活性を阻害または除去する、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害剤および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤を含み、老化関係の疾患または状態に罹患するか、または発症の危険がある対象は、女性である。
【0052】
具体的な実施形態によると、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物は、COX-1およびCOX-2を阻害する、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、本明細書で提供される組成物は、COX-1およびCOX-2を阻害する、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害剤を含み、老化関係の疾患または状態に罹患するか、または発症の危険がある対象は、男性である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】リゾホスファチジルコリンは、老化細胞において上昇する。(a)リゾPPC(16:0 リゾPC)およびリゾSPC(18:0 リゾPC)の細胞内レベルは、3つの異なるドナー由来のHDFの複製寿命の間に上昇し、高い集団倍加(PD)でのHDF培養における複製老化細胞の高い百分率をミラーリングする。リゾPPC(16:0 リゾPC)およびリゾSPC(18:0 リゾPC)の細胞内レベルは、(b)過酸化水素および(c)ドキソルビシンでのテロメア非依存性ストレスに誘発された早期老化の誘導後、HDFにおいて上昇する。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。データは、3つの実験の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図2】PLA活性を伴うホスホリパーゼ、および分泌型ホスホリパーゼA2受容体は、SIPSのHDFおよびHLFで上昇する。(a)PLA活性を有する酵素をエンコードするか、または他の手段により細胞内PLA活性を高めることが可能であるかのいずれかである、いくつかの遺伝子の転写レベルは、ストレスに誘発された早期老化のHDFを上昇させ、酵素加水分解が、老化細胞での高いレベルのリゾPCに対して可能性のある供給源であることを示す。PLA2G4A、PLA2G4C、およびPLA2R1は全て、この過程の間、リゾPCの他に、生成物としてアラキドン酸を生成することが知られている。(b)PLA活性は、3つの異なるドナー由来のストレスに誘発された早期老化のHDF、およびHLFで上昇し、EnzChek(商標)ホスホリパーゼA2アッセイキット(ThermoFisher Scientific;E10217)で測定される。データは、3つの実験の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図3】本明細書に記載の老化細胞除去組成物により利用される経路の概要:老化細胞では、脂質代謝、具体的にはアラキドン酸の代謝が変化する。老化細胞は、高いレベルのアラキドン酸を含み、これは、例えばCOXおよびALOXによりエイコサノイドへと代謝されるか、またはアラキドニル-CoAへと変換されるので、再アシル化および分解の過程で利用可能である(MurphyおよびFolco、2019年)。COXおよびALOXまたはACSL4の阻害は、老化細胞でのアラキドン酸の蓄積をもたらし、次にアポトーシスの誘導をもたらす。
図4】COX-1/2阻害剤ASAおよびALOX阻害剤MK886単独、対、先行技術の老化細胞除去剤ケルセチンおよびナビトクラックスの老化細胞除去効果。MK886、ASA、ならびに報告された老化細胞除去剤ケルセチンおよびナビトクラックスは、対照の休止細胞(Q)と比較して、Hに誘発された早期老化ヒト真皮線維芽細胞(SIPS)において試験した。MK886およびASAが、SIPSのHDFにおいて著しい老化細胞除去効果を示した一方、これは、ケルセチンまたはナビトクラックスでは見られなかった。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。データは、6つの実験の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図5】COX-2/ALOXデュアル阻害剤リコフェロンおよびCOX-1/2阻害剤ASA単独、対、先行技術の老化細胞除去剤の老化細胞除去効果。リコフェロン、ASA、ならびに報告された老化細胞除去ケルセチンおよびナビトクラックスは、対照の休止細胞(Q)と比較して、ドキソルビシンに誘発された早期老化HUVEC(SIPS)において試験した。リコフェロン、ASA、ならびにナビトクラックスが、SIPSのHUVECにおいて著しい老化細胞除去効果を示した一方、これは、ケルセチンでは見られなかった。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。データは、6つの実験の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図6-1】HDF161におけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果。ドキソルビシンに誘発された早期老化HDF161(SIPS)および対照の休止細胞(Q)は、ALOX-5阻害剤MK886、COX-1/2阻害剤ASA、およびジクロフェナク、もしくはCOX-2特異的阻害剤セレコキシブ単独、または高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、50μMのジクロフェナク、もしくは2μMのセレコキシブのいずれかを使用する組合せのいずれかで処置した。単一のAA代謝酵素の阻害は、セレコキシブ単独で見られる老化細胞での細胞生存率を低下させるのに十分ではなかった。MK886の任意のシクロオキシゲナーゼ阻害剤(COX-1/2またはCOX-2特異的)との組合せは、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加を実証した、相乗効果を示した。データは、3つの実験の平均値を示す。
図6-2】同上。
図7】HDF164におけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果。ドキソルビシンに誘発された早期老化HDF164(SIPS)および対照の休止細胞(Q)は、ALOX-5阻害剤MK886、およびCOX-1/2阻害剤ジクロフェナク単独、または高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、もしくは50、100、もしくは200μMのジクロフェナクのいずれかを使用する組合せのいずれかで処置した。MK886のシクロオキシゲナーゼ阻害剤との組合せは、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。データは、3つの実験の平均値を示す。
図8】fHDF166におけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果。ドキソルビシンに誘発された早期老化fHDF166(SIPS)および対照の休止細胞(Q)は、ALOX-5阻害剤MK886、およびCOX-1/2阻害剤ASA、およびジクロフェナク単独、または高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、もしくは50μMのジクロフェナクのいずれかを使用する組合せのいずれかで処置した。MK886のシクロオキシゲナーゼ阻害剤との組合せは、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。データは、3つの実験の平均値を示す。
図9】HDFにおけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果(3つのドナーの組合せデータ)。(a)ドキソルビシンに誘発された早期老化HDF76、HDF161、HDF164(SIPS)、および対照の休止細胞(Q)は、ALOX-5阻害剤MK886、およびCOX-1/2阻害剤ASA、およびジクロフェナク単独、または(b)高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、もしくは50μMのジクロフェナクのいずれかを使用する組合せのいずれかで処置した。MK886のシクロオキシゲナーゼ阻害剤との組合せは、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。(c)ナビトクラックス、ならびに高濃度のダサチニブと組み合わせた15μMのケルセチンは、HDFにおいて老化細胞除去効果を示さなかった。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。データは、3つの生物学的複製の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図10】ランズ回路の重要な酵素は、老化HDFで増加する。アシル-CoAシンテターゼまたはリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼのいずれかをコードする、いくつかの遺伝子の転写レベルは、ストレスに誘発された早期老化のHDFで上昇し、遊離AAの細胞内レベルが、ランズ回路の迅速な再利用および分解の過程により老化細胞内で調節されることを示す。(a)ACSL1およびACSL4は、AA-CoA、リン脂質への分解または酵素的再組込みに対する前駆体を生成することにより遊離AAの活性化を必要とする。(b)MBOAT7は、ホスホイノシトールへのAA-CoAの再組込みにとって重要な酵素である。データは、3つの実験の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図11】長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害は、老化細胞除去であり、HDFにおけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの阻害と組み合わせる場合(3つのドナーの組合せデータ)、相乗効果を有する。ドキソルビシンに誘発された早期老化HDF76、HDF161、HDF164(SIPS)、および対照の休止細胞(Q)は、ACSL4阻害剤トリアクシンC(TrC)単独、または高濃度のMK886と組み合わせた0.5μMのTrC、もしくは50μMのジクロフェナクのいずれかを使用する組合せのいずれかで処置した。ACSL4阻害剤単独は、HDFにおいて強力な老化細胞除去効果を示した。加えて、リポキシゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼ阻害剤のTrcとの組合せは、図9と比較して、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。データは、3つの生物学的複製の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図12】長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害は、老化細胞除去であり、HLFにおけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの阻害と組み合わせる場合、相乗効果を有する。ドキソルビシンに誘発された早期老化HLF102(SIPS)、および対照の休止細胞(Q)は、ACSL4阻害剤トリアクシンC(TrC)単独、または高濃度のTrCと組み合わせた1μMのMK886、もしくは50μMのジクロフェナクのいずれかを使用する組合せのいずれかで処置した。ACSL4阻害剤単独は、HLFにおいて強力な老化細胞除去効果を示した。加えて、リポキシゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼ阻害剤との組合せは、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。データは、3つの実験の平均値を示す。
図13】長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害は、老化細胞除去であり、RPTECにおけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの阻害と組み合わせる場合、相乗効果を有する。ドキソルビシンに誘発された早期老化RPTEC1(SIPS)および対照の休止細胞(Q)は、ACSL4阻害剤トリアクシンC(TrC)、ALOX-5阻害剤MK886、およびCOX-1/2阻害剤ジクロフェナク単独、または高濃度のMK886と組み合わせた0.1μMのTrC、もしくは25μMのジクロフェナクのいずれかを使用する組合せのいずれかで処置した。ACSL4阻害剤単独は、RPTECにおいて強力な老化細胞除去効果を示した。加えて、リポキシゲナーゼおよびシクロオキシゲナーゼ阻害剤のTrcとの組合せは、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。データは、3つの実験の平均値を示す。
図14】HDF164におけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果は、ATPシンターゼ阻害剤オリゴマイシンAの添加によりさらに増強することができる。ドキソルビシンに誘発された早期老化HDF164(SIPS)、および対照の休止細胞(Q)は、高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、または5μMのオリゴマイシンAとの組合せで処置した。ALOX-5阻害剤MK886およびCOX-1/2阻害剤ASAのATPシンターゼ阻害剤オリゴマイシンAとの組合せは、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。データは、3つの実験の平均値を示す。
図15】fHDF166におけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果は、カルシニューリン阻害剤シクロスポリンAの添加によりさらに増強することができる。ドキソルビシンに誘発された早期老化fHDF166(SIPS)、および対照の休止細胞(Q)は、高濃度のMK886単独と組み合わせた0.4mMのASA、または2μMのシクロスポリンAとの組合せで処置した。ALOX-5阻害剤MK886およびCOX-1/2阻害剤ASAのカルシニューリン阻害剤シクロスポリンAとの組合せは、COX-2発現を阻害すると知られており、老化細胞のEC50値の低下、および老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化の増加により相乗効果を示した。データは、3つの実験の平均値を示す。
図16】SIPSのHDFのシクロスポリンAとの併用処置は、COX/ALOX阻害剤の老化細胞除去効果を増強した。顕微鏡画像は、MK886およびASAを使用する併用処置が、対照細胞(「Q」)ではなく、老化細胞(「SIPS」)の溶解を誘発することを明らかにする。SIPSにおけるMK886およびASAの老化細胞除去効果は、シクロスポリンAを添加すると、さらに増大する。このような効果は、対照細胞において観察されない。100倍の倍率での顕微鏡写真。スケールバー、100μm。
図17】AAの細胞内レベルは、対照の休止細胞(Q)と比較して、老化HDFおよびHLF(SIPS)で上昇し、エイコサノイド合成を遮断することで、AAの細胞内レベルを上昇させる。(a)ドキソルビシンに誘発された老化HDFおよびHLFのAAの細胞内レベルは、それぞれ、4つおよび3つの異なるドナー由来の対照の休止細胞と比較した。(b)HDF161のAAの細胞内レベルは、COX-1/2阻害剤ジクロフェナク(100μM)およびALOX-5阻害剤MK886(10μM)、または溶媒のみ(1%のDMSO)で6時間処置した。(a)に対して、データは、4つおよび3つの生物学的複製の平均値を示す。(b)に対して、データは、1つの実験を示す。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
図18】ACSL4およびALOX5のデュアル阻害の老化細胞除去効果は、老化細胞の高いPLA-活性に依存する。ドキソルビシンに誘発された早期老化HDF76、HDF85、HDF161(SIPS)、および対照の休止細胞(Q)は、1μMのACSL4阻害剤トリアクシンC(TrC)および1μMのALOX5阻害剤MK886単独の組合せ、または2.5μMのA23187(cPLA活性剤)もしくは12.5μMのASB14780(cPLA阻害剤)のいずれかを添加してのいずれかで72時間処置した。ALOX5単独と組み合わせたACSL4阻害は、図11に示す通り、HDFにおいて著しい老化細胞除去効果を示した。cPLA活性剤A23187は、同様のレベルに、老化細胞ならびに休止細胞の両方の生存率を低減したので、老化細胞除去効果を消失させた。一方、小分子阻害剤ASB14780を有するcPLAの阻害が、老化細胞の生存率を上昇させた一方、休止細胞は、わずかな程度でしか影響を及ぼさなかった。エラーバーは、平均値±標準偏差を表す。データは、3つの生物学的複製の平均値を示す。有意水準は、以下で示した:P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0054】
別段指示または定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語は、当該技術分野における通常の意味を有し、当業者には明白であろう。例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第2版)、1~3巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Lewin、「Genes IV」、Oxford University Press、New York、(1990)、およびJanewayら、「Immunobiology」(第5版またはより最新版)、Garland Science、New York、2001年のような、標準的なハンドブックを参照する。
【0055】
本明細書を通して使用される具体的な用語は、以下の意味を有する。
用語「含む(comprise)」、「含有する(contain)」、「有する(have)」、および「含む(include)」とは、本明細書で使用する場合、同義的に使用することができ、さらなる部材または部分または要素に対するオープン定義として理解されるべきである。「からなる(consisting)」とは、なっている定義の特徴のさらなる要素を伴わない、最もクローズな定義として考えられる。ゆえに、「含む(comprising)」は、より広く、「からなる(consisting)」の定義を含有する。
【0056】
用語「約」とは、本明細書で使用する場合、同じ値、または与えられた値の±5%の差である値を指す。
単数形および複数形は、別段指示されない場合、本明細書で互換的に使用することができる。
【0057】
本明細書で使用する場合、用語「対象」または「個体」または「患者」とは、温血哺乳動物、特にヒトを指すべきである。あるいは、これはまた、動物、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、または非ヒト霊長類であり得る。
【0058】
用語「患者」とは、老化関連の状態もしくは疾患に対する予防的もしくは治療的処置を受けるか、または細胞老化もしくは老化関連の状態もしくは疾患と診断されている、ヒトおよび他の哺乳動物対照を含む。
【0059】
用語「サンプル」とは、一般に、組織または臓器サンプル、血液、無細胞血液、例えば血清および血漿、乏血小板血漿、リンパ液、尿、唾液、ならびに生検プローブを指す。
老化細胞は、内部または外部ストレスに応じて、ならびに加齢の過程の間に、組織および臓器に蓄積することが見出された。これらは、老化関係の疾患または障害の発症および進行に重要な役割を果たす。老化細胞を除去することができるいくつかの薬理学的化合物は、同定されているが、多くの老化細胞除去剤は、重篤な副作用を起こすか、特定の細胞種でのみ老化細胞除去活性を呈するか、または十分な有効性を欠如させる。したがって、改善された老化細胞除去剤に対する、緊急の必要性がある。
【0060】
老化とは、機能的特質が徐々に劣化することを指す。細胞老化は、細胞外もしくは細胞内ストレスに対する応答として、および/または加齢により、培養およびインビボで起こ
る。老化応答は、損傷細胞の増殖を予防し、潜在的な悪性転換を妨げる細胞周期停止に細胞を固定する。老化とは、経時的に起こる変化の列挙を指す。基準細胞(例えば、非老化であると知られている同じ種類または年齢の細胞またはサンプル)と比較して、老化細胞は、以下の特徴:細胞増殖能の低下;リポフスチンの蓄積(例えば、リポフスチン蓄積における増加);β-ガラクトシダーゼ活性の増大;老化関連分泌表現型(SASP)のメンバーの分泌での増加;ミトコンドリア由来の反応性酸素種の増加;核DNA損傷病巣の増大;テロメアの短縮;p16もしくはp21もしくはその任意の組合せの高い発現のいずれかの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上、または全てを示す細胞として定義され;または細胞もしくは対象は、上述のものを起こす過程を示す。
【0061】
老化細胞は、オートファジー効果の低下、もしくはミトコンドリア膜電位の低下をさらに示すことができるか、または上述のものを起こす過程を示す。公知の老化細胞または対象のような細胞または対象と比較して、非老化細胞または対象は、細胞増殖能の増加、リポフスチン蓄積の低下、β-ガラクトシダーゼ活性の低下、またはその組合せを示すことができる。具体的には、ヒトの場合、約30歳以上、約40歳以上、約50歳以上、約60歳以上、約70歳以上、約80歳以上、約90歳以上の人から採取した細胞またはサンプルは、老化細胞またはサンプルとして定義することができる。ある特定の場合、約30歳以下、20歳以下、10歳以下、または胚期でのヒトから採取した細胞またはサンプルは、老化細胞またはサンプルとして定義することができる。具体的には、例えば糖尿病、具体的にはI型糖尿病のような、老化関係の疾患または状態に罹患するか、または発症の危険があるヒトの子供から採取した細胞またはサンプルは、老化細胞またはサンプルとして定義することができる。
【0062】
ゆえに、用語「細胞老化」および「老化細胞」とは、分裂することができる細胞が、臨界的に短いテロメア、発がん性ストレス、もしくはDNA損傷に接するか、または強い細胞分裂促進シグナル、例えば、限定されないが、がん遺伝子または高発現した増殖性を促進する遺伝子を経験する場合に起こる重要な不可逆な成長停止、および代謝的に活性であり、タンパク質発現において広範な変化を受けている潜在的に持続する細胞である老化細胞を指す。
【0063】
用語「老化細胞」とは、具体的には、老化の特質である、マーカーまたはマーカーの組合せを発現する細胞を指す。具体的な実施形態によると、このようなマーカーは、リゾホスファチジルコリン、具体的にはリゾPPCおよび/またはリゾSPC、アラキドン酸、ならびにホスホリパーゼA2活性のいずれか1つまたは複数である。具体的には、このようなマーカーは、リゾホスファチジルコリン、好ましくはリゾPPCおよび/またはリゾSPC、アラキドン酸、ならびにホスホリパーゼA2活性のいずれか1つまたは複数のレベル、具体的には細胞内レベルの増加である。いくつかの実施形態では、老化細胞は、DNA損傷応答性(DDR)マーカーのレベル、テロメアを有する53BP1またはγH2AXのようなDNA損傷タンパク質の共局在性、ならびに細胞周期阻害剤p16INK4A、p15INK4B、p21CIP1、およびp53における、非老化細胞のような基準に対する高い発現を含むがそれらに限定されない他のマーカーを発現する。DEC1、DCR2、およびPAI1もまた、老化のバイオマーカーとして使用することができる。一実施形態では、老化細胞は、SA-β-Gal(老化関連のβガラクトシダーゼ)を、pH=6でX-Galでの染色が青色となる程度まで発現する。
【0064】
ストレスは、天然およびインビボの等価物が知られていないが、著しいテロメアの浸食を伴わずに老化停止を起こす。これらのストレスは、不適切な基質、例えば、組織培養プラスチック、血清(インビボでは、多くの細胞が血清ではなく血漿を経験)、血清除去、物質または酸化ストレス、例えば大気Oでの培養を含むDNA損傷を含み、これは、超生理学的であるか、または過酸化水素、パラコート、もしくはtert-ブチルヒドロペ
ルオキシドのような反応性酸素種を生成する物質への曝露である。細胞はまた、PTEN腫瘍抑制剤、増殖性/生存性を促進するキナーゼと反作用するホスファターゼを喪失すると、老化に入る。加えて、老化成長停止を通常実現するサイクリン依存性キナーゼ阻害剤(CDKi)、特にp21WAF1および/またはp16INK4aの異所性発現は、老化を起こし得る。
【0065】
加齢は、有機体の発生の期間に続く劣化の過程の組合せである。加齢は、一般に、ストレスに対する適応性の低下、ホメオスタシス不均衡の増大、老化細胞の増加、および疾患の高い危険性で特徴付けられる。これにより、死亡が加齢の最終結果である。環境因子は、加齢に影響を及ぼし得、例えば、紫外線放射への過剰曝露は、皮膚老化を加速する。身体の異なる部分は、異なる速度で老化し得る。同じ種の2つの有機体もまた、異なる速度で老化し得るが、生物学的老化および経時的老化を別個の概念とする。
【0066】
老化の速度の加速は、化学的、身体的、および生物学的ストレスを含むが、限定されないストレス状態により誘発され得る。例えば、加速した老化は、UVおよびIR放射、薬物および他の化学物質、化学療法、中毒物質、例えば、限定されないが、DNA挿入剤および/または損傷剤、酸化ストレッサーなど;細胞分裂促進刺激、発がん性刺激、有害化合物、低酸素、酸化剤、環境汚染物質、例えばシリカへの曝露、産業的汚染物質、例えば粉塵、噴煙、石綿、または煙霧への曝露に起因するストレスにより誘発され得る。これら全てのストレッサーは、単独で、または組み合わせて、細胞老化も起こし得る。具体的には、老化は、ストレスの組合せ、例えば、2つ以上の化学的および身体的ストレス;2つ以上の化学的および生物学的ストレス;2つ以上の身体的および生物学的ストレス;組み合わせて化学的、身体的および生物学的ストレスなどにより誘発される。
【0067】
細胞老化はまた、繰り返される細胞分裂(複製老化と称す)に由来するテロメア機能障害(テロメア脱キャップ化)、ミトコンドリア劣化、酸化ストレス、重篤または修復不能なDNA損傷およびクロマチン破壊(遺伝毒性ストレス)、ならびにある特定のがん遺伝子の発現(がん遺伝子に誘発された老化)に起因し得る。細胞老化を起こすストレスは、寿命の過程の間、治療的介入(例えば、X線照射もしくは化学療法)で、または酸化呼吸および細胞分裂促進シグナルのような内因性の過程の結果として遭遇する、外部または内部の化学的および身体的結果により誘発され得る。例示的な細胞分裂促進シグナル、例えば、正常細胞に近接する腫瘍細胞による増殖関連癌遺伝子α(GROα)分泌、または循環するアンギオテンシンIIもまた、細胞老化を誘発することが示されている。分裂する能力を有する全ての体細胞は、老化を経験し得る。老化を誘発するストレスの異なる機構に関わらず、老化プログラムは、細胞が、損傷または機能障害の限界レベルを感知すると、活性化される。今まで、老化成長停止は、p16INK4aおよびpRB(網膜芽腫タンパク質)、ならびにp53により制御される、主要な腫瘍抑制経路の活性に依存することが示されている。老化関連表現型の経路上流および下流に関与する分子のいくつかは、培地およびインビボでの老化細胞を検出するマーカーとして使用されている。
【0068】
本明細書に記載される通り、老化細胞は、変化した脂質代謝を有する。具体的には、ホスホリパーゼA2活性は、上方制御される。具体例によると、分泌型ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R1)は、上方制御され、リゾPCの生成を誘発し、アラキドン酸(AA)の同時細胞内放出をもたら。ゆえに、具体的には、老化細胞は、速いAA形成速度を有する。さらに具体例によると、リゾホスファチジルコリンは、上方制御される。特に、1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 リゾPC)および1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:0 リゾPC)は、老化誘導因子が、テロメア依存性(複製老化、加齢)であるかまたは非依存性(ストレスに誘発された早期老化)であるかに依存せずに上方制御される。
【0069】
驚くべきことに、COX-1、COX-2、およびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも2つを阻害することが可能な組成物を使用して老化細胞の上記の変化した脂質代謝を標的とすることは、異なる細胞種の老化細胞を効果的かつ選択的に除去する。有利には、十分に研究された薬理学的化合物であり、一般に軽い副作用のみを有する、多くのシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ阻害剤が、存在する。
【0070】
用語「ホスホリパーゼA2」または「PLA2」とは、本明細書で使用する場合、PLA2活性を有するリパーゼのスーパーファミリーを指す。PLA2活性とは、例えばホスファチジルコリンのような膜リン脂質のsn-2位置から脂肪酸を加水分解する、PLA2酵素の能力を指す。PLA2スーパーファミリーは、分泌したPLA2(sPLA2)、細胞質ゾロのPLA2(cPLA2)、カルシウム依存性PLA2(iPLA2)、および、血小板活性化因子(PAF)アセチルヒドロラーゼ/酸化した脂質リポタンパク質関連PLA2((Lp)PLA2)を含む、4つの主要な種類の酵素を含む。具体的には、PLA2、特にsPLA2およびcPLA2は、ホスファチジルコリンを加水分解することで知られており、リゾホスファチジルコリンを生成し、アラキドン酸を同時に放出する。
【0071】
用語「リゾホスファチジルコリン」または「リゾPC」とは、本明細書で使用する場合、ホスファチジルコリンに由来する化学化合物を指し、通常、細胞膜に位置する。リゾPCを、酸化の過程を通して非酵素的、またはPLA2活性を有するホスホリパーゼによる転換を通して酵素的のいずれかで、ホスファチジルコリン(PC)から生成することができる。具体的には、リゾPCは、細胞質ゾルのホスホリパーゼA2(PLA2G4A)、細胞質ゾルのホスホリパーゼA2γ(PLA2G4C)、および/またはグループXVホスホリパーゼA2(PLA2G15)により生成することができる。リゾPCは、C-1(sn-1)位置に結合した、様々な長さおよび飽和の脂肪酸の異なる組合せを有し得る。16、18、および20個の炭素を含有する脂肪酸が、最も一般的である。18:0 リゾPCは、リゾSPCとも呼ばれるが、特に、C-1位置でステアリン酸の1本鎖からなる。16:0 リゾPCは、リゾPPCとも呼ばれるが、特に、C-1位置でパルミチン酸の1本鎖からなる。
【0072】
用語「アラキドン酸」または「AA」とは、本明細書で使用する場合、ポリ不飽和ω-6脂肪酸を指す。具体的には、AAは、身体の細胞の膜のリン脂質、とりわけホスファチジルコリンに存在する。シグナル伝達酵素の調節に関与する脂質セカンドメッセンジャーとして細胞シグナル伝達に関与することに加え、アラキドン酸は、重要な炎症性中間体であり、血管拡張剤として作用することもできる。具体的には、AAは、PLA2活性を有するリパーゼによるホスファチジルコリンのリゾホスファチジルコリンへの加水分解時、ホスファチジルコリンから細胞質ゾルへと放出される。
【0073】
AAは、様々な酵素により、広範囲のエイコサノイドおよびエイコサノイドの代謝物に代謝される前駆体である。具体的には、細胞内AAは、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼによりエイコサノイドにさらに代謝される。例えば、酵素シクロオキシゲナーゼ-1および-2(COX-1およびCOX-2)は、アラキドン酸をプロスタグランジンG2およびプロスタグランジンH2に代謝し、5-リポキシゲナーゼは、アラキドン酸を5-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(5-HPETE)に代謝し、次に様々なロイコトリエンに代謝し、15-リポキシゲナーゼ-1(ALOX15)および15-リポキシゲナーゼ-2(ALOX15B)は、アラキドン酸を15-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(15-HPETE)に代謝し、12-リポキシゲナーゼ(ALOX12)は、アラキドン酸を12-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸(12-HPETE)に代謝する。
【0074】
AAのエイコサノイドまたはエイコサノイドの代謝物への転換は、重要であるが、それは、AAの細胞内蓄積が、細胞に毒性作用を有するからである。例えば、ホスホリパーゼA2活性により細胞質ゾルへと放出されるAAは、ミトコンドリアのアポトーシス経路を通してアポトーシスを誘導することができる。本明細書に記載される通り、老化細胞は、速いAA形成速度を有するが、それは、PLA2およびリゾPCが、上方制御されるからである。したがって、AAのエイコサノイドへの代謝の阻害は、老化細胞のAAレベル、特に細胞内AAレベルを、非老化細胞より高い程度まで高め、老化細胞の選択的除去をもたらす。具体的には、老化細胞は、高い細胞内AAレベルにより誘導される細胞死を通して選択的に除去される。
【0075】
用語「選択的に除去すること」とは、細胞または対象の、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害剤、および/もしくは少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤、ならびに/またはアラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害することが可能な少なくとも1つの阻害剤を含む老化細胞除去組成物への曝露を指し、老化細胞の溶解を誘発する。本明細書に記載の老化細胞除去組成物は、好ましくは老化細胞を死滅させることにより、例えばアポトーシスを誘発することにより、老化細胞を選択的に除去する組成物である。換言すれば、老化細胞除去組成物は、非老化細胞を破壊または死滅させるその能力と比較して、生物学的、臨床的、および/または統計学的に有意な方法で老化細胞を破壊または死滅させる。具体的には、本明細書に記載の老化細胞除去組成物は、老化細胞の死滅を誘発する(開始する、刺激する、誘導する、活性化する、促進する)および老化細胞の死滅を生じる(すなわち、起こす、もたらす)方法で、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ、ならびにアラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を標的化することにより、老化細胞の脂質代謝を変化させる。加えて、本明細書に記載の老化細胞除去組成物は、例えば、老化細胞の細胞生存および/または炎症性経路内のタンパク質と拮抗することにより、例えば、細胞生存シグナル伝達経路(例としてAkt経路)、または炎症性経路を変化させることができる。具体的には、本明細書に記載の組成物は、細胞死をもたらすアポトーシス経路を誘発する(活性化する、刺激する、その阻害を除去する)ことにより、老化細胞を選択的に除去することができる。
【0076】
非老化細胞は、増殖する細胞であり得るか、または休止細胞であり得る。ある特定の例では、非老化細胞の本明細書に記載の組成物への曝露は、増殖する非老化細胞の能力を一時的に低下させるが、非老化細胞は、破壊されない。
【0077】
用語「シクロオキシゲナーゼ阻害剤」または「COX阻害剤」とは、本明細書で使用する場合、シクロオキシゲナーゼ活性と結合および阻害、予防もしくは低下することができるか、またはCOX-1もしくはCOX-2活性を選択的に除去、予防もしくは低下するできる任意の化合物、またはそれらの組合せを指す。具体的には、COX阻害剤は、少なくとも1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍またはそれ以上に、シクロオキシゲナーゼ活性を阻害、予防、もしくは低下することができるか、またはCOX-1もしくはCOX-2活性を選択的に阻害、予防、もしくは低下することができる任意の化合物である。さらにより具体的には、COX阻害剤は、50μM未満、好ましくは45、40、35、30、25、20、15、もしくは10μM未満、または9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、もしくは1μM未満のIC50で、シクロオキシゲナーゼ活性を著しく低下することができるか、またはCOX-1もしくはCOX-2活性を低下させることができる任意の化合物であり、さらにより好ましくは、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100nM未満、または90、80、70、60、50、40、30、20、もしくは10nM未満、またはさらにそれ未満のIC50で、シクロオキシゲナーゼ活性を著しく低下させることができる任意の化合物である。
【0078】
具体的には、阻害剤のIC50は、組換えヒトCOX酵素の阻害を、市販の無細胞の試験キット、例えばCOX-1(ヒト)阻害剤スクリーニングアッセイキット(Cayman Chemicals、Cay701070-96)、およびCOX-2(ヒト)阻害剤スクリーニングアッセイキット(Cayman Chemicals、Cay701080-96)で測定し、阻害剤に対して得られたIC50値を計算することにより決定される。あるいは、ヒト全血アッセイは、(Brideauら、1996年)に記載される通りに実施して、それぞれ、TxBおよびPGEの生成を測定することによりCOX1およびCOX2活性を決定することができる。
【0079】
具体的には、シクロオキシゲナーゼ(COX)は、プロスタグランジン-エンドペルオキシドシンターゼ(PTGS)として表向きは知られているが、アラキドン酸から、トロンボキサン、およびプロスタサイクリンのようなプロスタグランジンを含む、プロスタノイドの形成に関与する酵素である。別個の遺伝子生成物:構成性COX-1および誘導性COX-2によりコードされるCOXの2つのアイソザイムが存在する。
【0080】
古典的なCOX阻害剤は、選択的ではなく、全ての種類のCOXを阻害する。最頻の有害作用は、プロスタグランジンが胃腸管において保護的な役割を通常は有するので、胃粘膜の刺激である。より新しいCOX阻害剤は、COX-2もしくはCOX-1に対する選択性を呈するか、または優先的には、他のものよりCOX-2もしくはCOX-1の1つを阻害する。COX-2が、通常、炎症性組織に特異的であるので、消化性潰瘍の危険性が低い、COX-2阻害剤に関連する胃刺激症状は大幅に少ない。
【0081】
具体的には、非選択性COX阻害剤の例は、アセチルサリチル酸またはその誘導体、例えばNO-アスピリン(アセチルサリチル酸のニトロ誘導体)、およびサリチル酸またはその誘導体、例えばサリチル酸マグネシウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸トロラミン、サリチル酸フェニル、サリチル酸グリコール、サリチル酸メンチル、次サリチル酸ビスマス、およびO-アセチル-L-セリン、ジクロフェナクおよびその誘導体、例えばジクロフェナクジエチルアミン、イブプロフェン、スプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、フルルビプロフェンメチルエステル、フェノプロフェン、カルプロフェン、デキシブプロフェン、ロキソプロフェン、ザルトプロフェン、プラノプロフェン、インドメタシン、ケトロラック、オキシカムクラスの薬物、例えばテノキシカム、ピロキシカム、ロルノキシカム、ドロキシカム、およびトルメチン、ナプロキセン、ジフルニサル、サルサレート、メタミゾール(ジピロン)、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ジエチルカルバマジン、フェニルブダゾン、ネパフェナク(アンフェナクのプロドラッグ)、アントラフェニン、アセメタシン、トルフェナム酸、デキスケトプロフェントロメタモール、タルニフルメート、プロパセタモール、ブフェキサマク、クロルフェネシン、クロドロン酸、アンフェナクナトリウム一水和物、アンピロキシカム、サリシン、フェンブフェン、キサントフモール、スリンダク、ジホモ-γ-リノレン酸、およびフルニキシンメグルミンを含む。
【0082】
具体的には、選択性COX-2阻害剤の例は、シクロスポリンA、セレコキシブ、シミコキシブ、ルミラコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、フィロコキシブ、エトリコキシブ、ロベナコキシブ、デラコキシブ、アセトアミノフェン(パラセタモール)、ナブメトン、エトドラク、ブロムフェナク、イコサペント、メロキシカム、フルフェナム酸、メフェナム酸、トリフルサール、ニフルム酸、アセクロフェナック、具体的には、ジクロフェナクのプロドラッグとして、タクロリムス(フジマイシンまたはFK-506としても公知)、レナリドマイド、ロスコビチン(セリシクリブ)、ドロスピレノン、トリアムシノロン、ポマリドミド、アダパレン、サリドマイド、アサルアルデヒ
ド、デキサメタゾン、NS-398、ルテカルピン、およびニメスリドを含む。
【0083】
具体的には、COX-1またはそのアイソフォームCOX-3に選択的な阻害剤の例は、フェナセチン、アンチピリン、アミノピリン、SC-560、およびモフェゾラクを含む。
【0084】
具体的には、多くの天然化合物も、COX阻害効果を呈する。マイタケのような調理用キノコは、COX-1およびCOX-2を部分的に阻害することができ、様々なフラボノイドは、COX-2を阻害することが見出され、ヒペルホリンは、アスピリンの約3~18倍、COX-1を阻害することが示され、カルシトリオール(ビタミンD)は、COX-2遺伝子の発現を著しく阻害し、魚油は、代替的な脂肪酸をアラキドン酸に供給する。これらの酸は、炎症性プロスタグランジンの代わりのCOXにより、いくつかの抗炎症性プロスタサイクリンにすることができる。
【0085】
用語「リポキシゲナーゼ阻害剤」とは、本明細書で使用する場合、任意のリポキシゲナーゼの活性と結合および阻害、予防または低減する化合物を指す。具体的には、リポキシゲナーゼ阻害剤は、少なくとも1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍またはそれ以上に、リポキシゲナーゼ活性を阻害、予防、もしくは低下することができるか、またはALOX5活性を選択的に阻害、予防、もしくは低下することができる任意の化合物である。さらにより具体的には、リポキシゲナーゼ阻害剤は、3μM未満、好ましくは2.5、2、1.5、または1μM未満のIC50で、リポキシゲナーゼ活性を著しく低下することができるか、またはリポキシゲナーゼ活性、具体的にはALOX5活性を選択的に阻害、予防、または低下することができる任意の化合物であり、さらにより好ましくは、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100nM未満、または90、80、70、60、50、40、30、20、もしくは10nM未満、またはさらにそれ未満のIC50で、リポキシゲナーゼ活性を著しく低下することができる任意の化合物である。
【0086】
具体的には、阻害剤のIC50は、組換えヒトALOX5酵素の阻害を、市販の無細胞の試験キット、例えばヒト5-リポキシゲナーゼアッセイキット(MYBioSource、MBS846911)で測定し、阻害剤に対して得られたIC50値を計算することにより決定する。あるいは、ヒト血液LTB阻害アッセイは、(Hutchinsonら、2009年)に記載の通りに実施することができ、ALOX5AP阻害剤によりALOX5の間接的阻害を決定することもできる。
【0087】
リポキシゲナーゼは、鉄含有酵素のファミリーであり、その多くは、細胞シグナル伝達剤に、cis,cis-1,4-ペンタジエンを含有する脂質において、ポリ不飽和脂肪酸の二原子酸素添加を触媒する。具体的には、ポリ不飽和脂肪酸アラキドン酸は、リポキシゲナーゼに対する基質として機能する。具体的には、アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ(またはALOX-5もしくは5-LOX)は、代謝することができるので、アラキドン酸をエイコサノイド、特に5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸、および5-オキソエイコサテトラエン酸に転換する。ロイコトリエンは、エイコサノイド炎症性メディエイターのファミリーであるが、ALOX-5によるAAおよび必須脂肪酸イコサペンタエン酸(EPA)の酸化により生成される。
【0088】
アラキドン酸5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質(ALOX5APまたはFLAP)は、5-リポキシゲナーゼと共に、ロイコトリエン合成に必要なタンパク質である。ロイコトリエンは、アラキドン酸代謝物であり、様々な種類の炎症反応に関与している。このタンパク質は、原形質膜に局在している。この機能の阻害剤は、細胞質から細胞膜への5-リポキシゲナーゼの転座を妨げ、5-リポキシゲナーゼ活性化を阻害する。ALOX5AP阻害剤の例は、MK886である。MK-886、またはL-663536は、ロイコトリエンアンタゴニストであり、5-リポキシゲナーゼ活性化タンパク質を遮断し、それゆえ5-リポキシゲナーゼを阻害することにより、その作用を発揮する。具体的には、FLAP(またはALOX5AP)の阻害剤は、リポキシゲナーゼ阻害剤であり、リポキシゲナーゼの酵素活性を間接的に阻害する。
【0089】
具体的には、ロイコトリエン形成は、性別による偏りがある。ロイコトリエン形成は、ホルモン、テストステロンの制御下であり、炎症性エイコサノイドの生合成における重要な酵素であるALOX-5の細胞内局在を調節する。男性のような高いテストステロンレベルを有する個体では、テストステロンは、細胞質から細胞膜へのALOX-5の転座を阻害するので、アラキドン酸代謝活性を阻害する。
【0090】
本発明の具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、1つまたは複数のシクロオキシゲナーゼ阻害剤のみを含むその具体的な使用を除いて、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、およびリポキシゲナーゼ阻害剤を含む。例えば、本明細書で提供される組成物がシクロオキシゲナーゼ阻害剤のみを含む、このような具体的な使用の1つは、性別に偏りがある老化関係の疾患または状態の処置である。具体的には、老化関係の疾患または状態に罹患するか、または発症の危険がある対象は、男性であり、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物は、少なくとも1つのCOX-1/COX2阻害剤、またはCOX-1阻害剤およびCOX2阻害剤を含む。しかし、シクロオキシゲナーゼ阻害剤およびリポキシゲナーゼ阻害剤の両方を含む組成物での男性対象の処置は、排除しない。
【0091】
リポキシゲナーゼおよび/またはFLAP阻害剤の例は、限定されないが、MK886、ジロイトン、マソプロコール、ジエチルカルバマジン、アゼラスチン、ベノキサプロフェン、ノルジヒドログアイアレチン酸、アビエチン酸、エスクレチン、モンテルカスト、ミノサイクリン、MLN-977、レイン、ジアセレイン、ナビキシモルス、ホスタマチニブ、AM103、DG031、フィボフラポン、AA-861、およびアトレロイトンを含む。
【0092】
具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つのデュアルシクロオキシゲナーゼ/リポキシゲナーゼ阻害剤を含む。具体的には、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物は、老化関係の疾患または状態に罹患するか、または発症の危険がある対象が、女性対象である場合、このようなデュアル阻害剤を含む。
【0093】
例示的なデュアル阻害剤は、限定されないが、リコフェロン、ダルブフェロン、CI-987、S-2474、KME-4、ケブラジン酸、バルサラジド、メサラジン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、メクロフェナム酸、モルニフルマートジアリールピラゾール誘導体、チエノ[2,3-b]ピリジン誘導体、N-置換5-アミノサリシリシラミド、フラボコキシド、インドリジン誘導体、LQFM-091、ヒペルホリン、セラストロール、BW755C、テポキサリン、b-ボスウェリン酸、D-002(6つの高級脂肪族蜜蝋アルコールの混合物)、2,3-ジアリールキサントン、フェニドン、およびER-34122を含む。
【0094】
本明細書で言及される通り、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素は、アラキドン酸およびCoAのアラキドニル-CoAへの転換を触媒することが可能な酵素である。このような酵素の具体例は、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)、具体的にはACSL4である。
【0095】
本明細書で使用する場合、用語「長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ阻害剤」または省略して
「ACSL阻害剤」とは、任意の長鎖脂肪酸-CoAリガーゼの活性と結合および阻害、予防または低減する化合物を指す。具体的には、ACSL阻害剤は、少なくとも1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、または5倍またはそれ以上に、ACSL活性を阻害、予防、または低下することができる任意の化合物である。さらにより具体的には、ACSL阻害剤は、約100μM以下、好ましくは50、45、40、35、30、25、または20μM以下のIC50で、ACSL活性を著しく低下することができる任意の化合物であり、さらにより好ましくは、約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、または9μMのIC50で、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を著しく低下することができる任意の化合物である。
【0096】
具体的には、ACSL阻害剤のIC50は、(Askariら、2007年;Kimら、2001年)に記載される通り、組換えACSL酵素または細胞溶解物のいずれかを、ATP、CoA、アラキドン酸のような放射性標識された脂肪酸でインキュベートすることによる、アシル-CoAの形成の阻害を測定することにより決定される。
【0097】
細胞内の遊離アラキドン酸のリン脂質への組込みは、長鎖アシル-CoAシンテターゼの群に属する酵素によるAAのチオエステル化を必要とする。
長鎖脂肪アシルCoAシンテターゼは、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ、略して「ACSL」とも称すが、複合脂肪酸の酸性化を活性化するリガーゼファミリーの酵素である。これら酵素は、アシル-CoAを、長さが少なくとも12個の炭素である脂肪酸から生成する。ACSLは、アデニル化中間体を通じて進行する2ステッププロセスにより脂肪アシル-CoAの形成を触媒し、具体的には、長鎖脂肪酸の脂肪アシル補酵素A(脂肪酸CoA)への活性化を触媒する。いくつかの高度に保存された領域、およびこのスーパーファミリーのメンバー間で、20~30%のアミノ酸配列類似性が存在する。具体的には、ファミリーにおける酵素は、大型のN末端および小型のC末端ドメインからなり、2つのドメイン間に位置する触媒部位を有する。
【0098】
具体的には、用語「ACSL」はまた、本明細書で使用する場合、長鎖脂肪酸補酵素Aリガーゼファミリーのアイソザイムも指す。ヒトおよび齧歯類で公知の5つのACSLアイソフォーム:ACSL1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、およびACSL6が存在する。基質特異性、細胞内局在性、および組織分布が異なるが、このファミリーの全てのアイソザイムは、遊離の長鎖脂肪酸を脂肪アシル-CoAエステルへと変換されるので、脂質生合成および脂肪酸分解に重要な役割を果たす。
【0099】
具体的には、ACSL4およびACSL1は、アシル-CoAシンテターゼファミリーの2つのメンバーであり、遊離脂肪酸のCoAでの活性化に必要であり、ランズ回路での再組込みおよび分解の過程に対する前駆体であるアシル-CoAを生成する(MurphyおよびFolco、2019年)。ランズ回路は、AAのようなリゾリン脂質および遊離脂肪酸を生成する、リン脂質の酵素加水分解、アシル-CoAシンテターゼを通した脂肪酸の活性化、および、アシル-CoAトランスフェラーゼによるアシル-CoAのリゾリン脂質への再組込みを包含する。あるいは、アラキドン酸-CoAは、β-酸化を介して分解するか、またはジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼに使用して、ジアシルおよびトリアシルグリセロールを形成し、ステロールO-アシルトランスフェラーゼに使用して、コレステロールエステルを形成する。
【0100】
具体的には、ACSL4は、優先的には、基質としてアラキドン酸塩を利用する。ACSL4は、アラキドン酸の細胞内レベルを制御するが、それは、AAが、具体的には老化細胞でアポトーシスを誘発することができるので、ACSL4がアポトーシスを調節する能力を有するからである。ACSL4の過剰発現は、より高速のアラキドノイル-CoA合成、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびトリアシ
ルグリセロールへの高いAA組込み、ならびに非エステル化AAの低い細胞レベルをもたらすことが示されている。
【0101】
具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物は、活性剤としてACSL阻害剤を含む。さらに具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物は、ACSL阻害剤、およびCOX-1、COX-2、またはリポキシゲナーゼの1つまたは複数を阻害することが可能な少なくとも1つの阻害剤を含む。具体的には、本明細書に記載の組成物は、ACSL、COX-1、COX-2、およびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも2つを阻害することが可能な阻害剤を含む。
【0102】
具体的な実施形態によると、ACSL阻害剤は、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、トリアクシンCの類似体(Kimら、2012年;Priorら、2014年)、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、およびロシグリタゾンからなる群から選択される。
【0103】
具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ、および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤、ならびにアラキドン酸の細胞内の転換を阻害することが可能な追加の化合物を含む。具体的には、このような追加の化合物は、天然化合物のいずれか1つもしくは複数もしくは全て、シトクロムP450の阻害剤、長鎖脂肪酸CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤、および/または脂肪酸エロンガーゼの阻害剤である。
【0104】
具体的には、シトクロムP450の阻害剤は、シトクロムP4502J2(CYP2J2)、シトクロムP4502C(CYP2C)、シトクロムP4504A(CYP4A)、および/またはシトクロムP4504F(CYP4F)のいずれか1つまたは複数または全ての阻害剤であり得る。
【0105】
具体的には、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)の阻害剤は、LPCAT1、LPCAT2、LPCAT3、LPCAT4、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ2(MBOAT2)、ならびに膜結合O-アシルトランスフェラーゼドメイン含有7(リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ7および/またはMBOAT7)のいずれか1つまたは複数または全ての阻害剤であり得る。
【0106】
具体的には、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤は、超長鎖脂肪酸タンパク質2(ELOVL2)の伸長、超長鎖脂肪酸タンパク質4(ELOVL4)の伸長、および/または超長鎖脂肪酸タンパク質5(ELOVL5)の伸長のいずれか1つまたは複数または全ての阻害剤であり得る。
【0107】
具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ、および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤、ならびにATPレベルを操作すること、具体的には細胞内のATPレベルを上昇させるおよび/または低減することが可能な追加の化合物を含む。具体的には、このような追加の化合物は、ATPシンターゼの阻害剤、阻害剤もしくはADP/ATPトランスロカーゼ、および/またはグリコリシスの阻害剤のいずれか1つまたは複数または全てである。
【0108】
本明細書に記載される通り、本明細書で提供される組成物は、老化関係の疾患または状態の処置に使用することができる。具体的には、本明細書で提供される組成物は、老化関係の疾患もしくは状態の発症の予防(すなわち、発生の可能性の低下)もしくは遅延、老
化関係の疾患もしくは状態の進行の予防もしくは遅延、または老化関係の疾患もしくは状態の退行を促進するのに使用される。
【0109】
用語「老化関係の疾患または障害」とは、加齢性の疾患および障害を含む、細胞老化に関するか、関連するか、または起因する状態、疾患、または障害を指す。
老化関係の疾患または状態は、心血管疾患または状態であり得、限定されないが、狭心症、不整脈、アテローム性動脈硬化症、心筋症、うっ血性心不全、冠動脈疾患(CAD)、頚動脈疾患、心内膜炎、冠状動脈血栓症、頚動脈血栓症、心筋梗塞(MI)、高血圧症、大動脈瘤、脳動脈瘤、心臓線維症、心臓拡張機能障害、高コレステロール血症/高脂血症、僧帽弁逸脱症、末梢血管疾患、末梢動脈疾患(PAD)、心臓ストレス耐性、および卒中を含むことができる。
【0110】
心血管疾患に罹患する対象は、心血管疾患に対して、当該技術分野で公知の標準的な診断法を使用して同定することができる。一般に、アテローム性動脈硬化症および他の心血管疾患の診断は、患者の症状(例えば胸部の疼痛または圧迫感(狭心症)、腕もしくは下肢のしびれもしくは虚弱、発話困難もしくは不明瞭発語、顔面での下垂した筋肉、下肢痛、高血圧症、腎不全、および/もしくは勃起不全)、病歴ならびに/または身体検査に基づく。心血管疾患の発症の危険がある対象は、心血管疾患の家族歴を有するもの、ならびに、高血圧症、高コレステロール、糖尿病、肥満、および/または喫煙のような他の危険因子を有するものを含む。ある特定の実施形態では、老化細胞関連の疾患/障害である心血管疾患は、アテローム性動脈硬化症である。アテローム性動脈硬化症は、中規模および大動脈の内腔に食い込む斑点上の内膜プラーク(アテローム)で特徴付けられ;プラークは、脂質、炎症細胞、平滑筋細胞、および結合組織を含有する。
【0111】
心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症)を処置または予防する(すなわち、その発症または発生の可能性を低下または低減する)のに本明細書に記載の組成物の有効性は、医学的および臨床的分野での当業者により容易に決定することができる。診断方法の1つまたは任意の組合せは、身体検査、評価、および臨床症状のモニタリング、ならびに、本明細書に記載し、当該技術分野で実行される分析試験および方法(例えば、血管造影、心電図検査、ストレステスト、ノンストレステスト)の実施を含むが、対象の健康状態をモニタリングするために使用することができる。老化細胞除去の組合せの処置の効果は、当該技術分野で公知の技術を使用して、例えば、心血管疾患に罹患するか、またはその危険がある、処置を受けた患者の症状を、このような処置を受けていない、またはプラセボ処置を受けた患者の症状と比較することで分析することができる。
【0112】
老化関係の疾患または状態は、神経学的状態であり得る。神経学的状態は、限定されないが、パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、球麻痺、仮性球麻痺、原発性側索硬化症、運動ニューロン機能障害(MND)、軽度認知障害(MCI)、ハンチントン病、眼疾患、黄斑変性症(湿性および乾性)、緑内障、視力喪失、老眼、白内障、進行性筋萎縮症、下位運動ニューロン疾患、脊髄性筋萎縮症(SMA)、ウェルドニッヒ-ホフマン病(SMA1)、SMA2、クーゲルバーグ-ヴェランダー病(SM3)、ケネディー病、ポリオ後症候群、遺伝性痙性対麻痺、加齢性の記憶低下、ならびに、うつ病および気分障害を含む。神経学的状態の処置または予防における使用のための、本明細書に記載の老化細胞除去組成物の効果は、例えばパーキンソン病またはアルツハイマー病のような神学的疾患または障害に罹患するか、またはその危険がある、処置を受けた患者の症状を、このような処置を受けていない、またはプラセボ処置を受けた患者の症状と比較することにより分析することができる。
【0113】
パーキンソン病は、2番目に一般的な神経変性疾患である。運動の緩慢さ(運動緩徐)、振戦、こわばり、および後期での平衡障害で特徴付けられる、脳の機能障害状態である。これらの症状の多くは、脳のある特定の神経の喪失によるものであり、ドーパミンの欠乏をもたらす。この疾患は、神経変性、例えば、黒質緻密部におけるドーパミン作動性ニューロンの約50%~70%の喪失、線条体におけるドーパミンの深刻な喪失、および/または細胞質内封入体(レビー小体)の存在で特徴付けられ、α-シヌクレインおよびユビキチンから主としてなる。パーキンソン病はまた、運動障害、例えば振戦、こわばり、運動緩徐、および/または姿勢不安定で特徴付けられる。これらの動的な発現はまた、嗅覚障害、睡眠障害、および神経精神障害のような、非運動性症状を伴ってもよい。一般に、パーキンソン病の診断は、患者の症状、病歴、ならびに神経学的および/または身体検査に基づく。パーキンソン病の発症の危険がある対象は、パーキンソン病の家族歴を有するもの、および、殺有害生物剤(例えば、ロテノンもしくパラコート)、除草剤(例えば、枯葉剤)、または重金属に曝露したものを含む。パーキンソン病に関連する神経変性の欠乏および/または運動障害を検出、モニタリング、または定量化するための方法は、当該技術分野で知られており、例えば、組織学的研究、生化学的研究、および行動評価である。
【0114】
アルツハイマー病(AD)は、記憶力の減退、失見当識、および錯乱を伴う緩徐進行型精神荒廃を示す神経変性疾患であり、深刻な認知症をもたらす。年齢は、ADを発症する単一の最も大きな素質危険因子であり、高齢者の認知症の主因である。初期の臨床的症状は、軽度認知障害と著しい類似性を示し、最近の生活体験または人の名前を記憶することが困難であることで特徴付けられる。疾患が進行すると、判断力障害、錯乱、挙動変化、失見当識、ならびに、歩行および嚥下の困難さが起こる。アルツハイマー病は、組織学的標本における、神経原線維変化、およびアミロイド(老年性)プラークの存在で特徴付けられる。疾患は、大部分が、脳の辺縁領域および皮質領域を含む。いくつかの挙動アッセイおよび組織病理学アッセイは、治療剤を特徴付け、処置を評価するためにアルツハイマー病の表現型を評価する目的で、当該技術分野で知られている。アルツハイマー病に罹患する対象は、アルツハイマー病に対して、当該技術分野で公知の標準的な診断法を使用して同定することができる。一般に、アルツハイマー病の診断は、患者の症状(例えば、記憶機能の進行性の低下、通常の活動からの緩やかな衰退または通常の活動への不満、無感情、動揺またはかんしゃく、攻撃性、不安、睡眠障害、不快気分、異常運動行動、脱抑制、引きこもり、食欲減退、幻覚、認知症)、病歴、神経心理学テスト、神経学的および/または身体検査に基づく。脳脊髄液はまた、タウ、アミロイドβペプチド、およびAD7C-NTPを含む、アルツハイマー病変に関連している様々なタンパク質に対して試験することができる。遺伝子検査はまた、常染色体優性遺伝的疾患である、早期発症型家族性アルツハイマー病(eFAD)で利用可能である。臨床的遺伝子検査は、AD症状を有する個体、または早期発症型疾患の患者の危険性のある家族に利用可能である。米国では、PS2に対する突然変異、およびAPPは、Clinical Laboratory Improvement Amendmentsの下で、臨床的または連邦政府により承認された研究室において試験することができる。PS1突然変異に対する市販のテストも利用可能である(Elan Pharmaceuticals)。
【0115】
MCIは、個々の年齢および教育に基づいて予期されるものを超える、認知障害の発症および進展に関与するが、この個々の毎日の活動を妨げるのに十分なほど著しいものではない脳機能症候群である。MCIは、通常の加齢と、変換され得る認知症との間の過度状態である考えられる認知的な加齢の側面である。記憶に主に影響を及ぼすMCIは、「健忘性MCI」として知られている。健忘性MCIの人は、最近の事象のような以前は容易に思い出せた重要な情報を忘れることから始まり得る。健忘性MCIは、アルツハイマー病の前駆期として頻繁に見られる。
【0116】
MNDは、発話、歩行、呼吸、および嚥下のような重要な随意筋活動を制御する細胞である、運動ニューロンを破壊する進行性神経障害の群である。変性が、上位運動ニューロ
ン、下位運動ニューロン、またはその両方に影響を及ぼすかどうかにしたがって分類される。MNDの例は、例えば、側索硬化症(ALS)、球麻痺、および脊髄性筋萎縮症(SMA)を含む。腕、下肢、または顔面の筋肉に影響を及ぼすことができる。MNDの患者は、筋肉虚弱および消耗、制御不能な単収縮、痙性、緩慢で不自然な動作、ならびに過活動な腱反射を含む、1つまたは複数の運動障害を示す。原発性側索硬化症は、上位運動ニューロンの疾患である一方、進行性筋萎縮症は、脊髄において下位運動ニューロンのみに影響を及ぼす。進行性球麻痺では、脳幹の最下位運動ニューロンは、最も影響があり、不明瞭発語、ならびに咀嚼および嚥下の困難さを起こす。ほとんどの場合、腕および下肢において軽度な異常徴候がある。MNDに関連する運動障害および組織病理学的障害を検出、モニタリング、定量化、または評価するための方法は、当該技術分野で知られており、組織病理学研究、生化学的研究、および電気生理学的研究、ならびに運動活性分析を含む。
【0117】
老化関係の疾患または状態は、炎症状態であり得る。炎症状態は、限定されないが、筋骨格疾患、変形性関節症、骨粗鬆症、サルコペニア、狼瘡、間質性膀胱炎、強皮症、脱毛症、口腔粘膜炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、側弯症、椎間板ヘルニア、潰瘍性大腸炎、クローン病、潰瘍性喘息、移植後腎線維症を含む腎線維症、肝線維症、膵線維症、心臓線維症、糖尿病に関する創傷治癒を含む皮膚の創傷治癒、および口腔内粘膜下線維症を含む。炎症状態の処置または予防における使用のための、本明細書に記載の老化細胞除去組成物の効果は、例えば変形性関節症のような炎症性の疾患または障害に罹患するか、またはその危険がある、処置を受けた患者の症状を、このような処置を受けていない、またはプラセボ処置を受けた患者の症状と比較することにより分析することができる。
【0118】
変形性関節症は、高い機械的ストレスの部位での軟骨の線維化、骨硬化症、ならびに滑膜および関節包の肥厚で特徴付けられる、変性関節疾患である。変形性関節症の症状は、不活動または酷使した後の、特に股関節、膝、および背部下部の関節痛または関節硬直;動作後に消失する安静後の硬直;ならびに、活動後または1日の終わりに向かって悪化する疼痛を含む。骨粗鬆症の処置または予防のための本明細書に記載の組成物の有効性、およびその組成物を投与される対象のモニタリングは、医学および臨床の分野における当業者により容易に決定することができる。診断方法の1つまたは任意の組合せは、身体検査(例えば罹患関節の圧痛、腫脹、または発赤の決定)、臨床症状の評価およびモニタリング(例えば疼痛、硬直、移動性)、ならびに本明細書に記載し、当該技術分野で実行される分析試験および方法の実施(例えば、炎症性サイトカインまたはケモカインのレベルを決定すること;関節内の骨の間隔の狭窄により示される軟骨の喪失を決定する、X線画像;軟骨を含む骨および軟組織の詳細な画像をもたらす、磁気共鳴撮像(MRI))を含むが、対象の健康状態をモニタリングするために使用することができる。
【0119】
骨粗鬆症は、骨折の高い危険性をもたらし得る、骨量および密度の低下で特徴付けられる進行性の骨疾患である。骨密度(BMD)は低下し、骨微細構造は劣化し、骨内のタンパク質の量および種類は変化する。骨粗鬆症は、典型的には、骨密度検査により診断し、モニタリングする。閉経後の女性、またはエストロゲンの低下している女性は、最も危険性が高い。75歳超の男女ともに危険がある一方、女性は、男性より骨粗鬆症を発症する可能性は2倍である。
【0120】
本明細書に記載の組成物で処置することができる、さらなる炎症性/自己免疫障害は、過敏性腸症候群(IBS)、ならびに、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性腸疾患を含む。炎症性腸疾患(IBD)は、消化管の全てまたは一部の慢性炎症を含む。IBDを起こす命に関わる合併症に加えて、疾患は、有痛性で消耗性であり得る。潰瘍性大腸炎は、消化管の一部で持続性の炎症を起こす、炎症性腸疾患である。症状は、通常、突然ではなく、経時的に発症する。潰瘍性大腸炎は、通常、大腸(結腸)および直腸の最内
層のみに影響を及ぼす。クローン病は、消化管の内層に沿った任意の場所で炎症を起こす、炎症性腸疾患であり、多くの場合、罹患組織内深くに広がる。これは、腹痛、重篤な下痢、および栄養不良をもたらし得る。クローン病に起因する炎症は、消化管の異なる領域を含み得る。疾患の診断およびモニタリングは、血液検査、結腸内視鏡、軟性S状結腸鏡、バリウム注腸、CTスキャン、MRI、内視鏡検査、および小腸撮像を含む、当該技術分野で日常的に実行される方法および診断試験にしたがって実施する。
【0121】
老化関係の疾患または状態は、皮膚科学的状態であり得る。皮膚科学的状態は、限定されないが、乾癬、湿疹、しわ、掻痒症、異常感覚、丘疹鱗状障害、紅皮症、扁平苔癬、苔癬様皮膚疾患、アトピー性皮膚炎、湿疹性発疹、好酸球性皮膚疾患、発疹、光線過敏症ならびに光老化に関連する疾患および障害、反応性好中球性皮膚疾患、天疱瘡、類天疱瘡、免疫水疱性皮膚疾患、皮膚の線維組織球性増殖、皮膚の母斑、蕁麻疹、色素沈着過剰症、皮膚リンパ腫、乾癬、ならびに皮膚狼瘡を含む。ある特定の実施形態では、老化細胞関連の障害は、皮膚の炎症性障害であり、例えば、非限定的な例として、本明細書に記載の組成物を使用して処置または予防することができる乾癬および湿疹である。乾癬は、皮膚の表皮層の異常な過度で迅速な増殖で特徴付けられる。乾癬の診断は、通常、皮膚の外観に基づく。乾癬に典型的な皮膚の特質は、疼痛や掻痒を伴い得る、鱗状の赤いプラーク、丘疹、または皮膚斑である。
【0122】
本明細書に記載の老化細胞除去組成物で処置することができる、他の免疫不全または状態は、臓器移植(例えば、腎臓、骨髄、肝臓、肺、または心臓移植)に対する宿主免疫反応に由来する状態、例えば、移植した臓器の拒絶を含む。具体的には、老化細胞除去組成物は、移植片対宿主疾患の発生を処置するか、またはその可能性を低減するために使用することができる。
【0123】
老化関係の疾患または状態は、代謝障害であり得る。代謝障害は、限定されないが、I型およびII型糖尿病、糖尿病性潰瘍、および肥満を含む。代謝の状態の処置または予防における使用のための、本明細書に記載の老化細胞除去組成物の効果は、例えば糖尿病のような代謝性疾患または障害に罹患するか、またはその危険がある、処置を受けた患者の症状を、このような処置を受けていない、またはプラセボ処置を受けた患者の症状と比較することにより分析することができる。
【0124】
糖尿病は、インスリン産生、インスリン作用、またはその両方の欠陥に起因する、高いレベルの血糖で特徴付けられる。成人で糖尿病と診断された全ての場合の大部分(90~90%)は、膵臓によるインスリン産生を徐々に喪失することで特徴付けられる、2型糖尿病である。2型糖尿病に罹患する対象は、2型糖尿病に対して、当該技術分野で公知の標準的な診断法を使用して同定することができる。一般に、2型糖尿病の診断は、患者の症状(例えば、口渇感増強および頻尿、空腹感増強、体重減少、疲労感、霧視、疼痛の治りにくさ、もしくは頻繁な感染、および/もしくは暗色皮膚の領域)、病歴、ならびに/または身体検査に基づく。2型糖尿病の発症の危険がある対象は、2型糖尿病の家族歴を有するもの、ならびに、体重増加、脂肪分布、不活動、人種、年齢、前糖尿病、および/または妊娠糖尿病のような他の危険因子を有するものを含む。
【0125】
肥満および肥満関連とは、身長および骨格に対する理想よりある程度大きい体重を有する対象の状態を指すのに使用される。ボディマス指数(BMI)は、過剰な体重を決定するのに使用される測定ツールであり、対象の身長および体重から計算される。ヒトは、BMIが25~29である場合、過体重とみなされ;人は、BMIが30~39である場合、肥満とみなされ;人は、BMIが40以上である場合、重度の肥満とみなされる。
【0126】
糖尿病および老化に関連する状態または障害は、糖尿病性潰瘍(すなわち、糖尿病創傷
)である。潰瘍は、皮膚の崩壊であり、皮下組織、または筋肉もしくは骨さえも含むほどに広がる可能性がある。これらの病変は、特に、下肢で起こる。糖尿病性静脈性潰瘍の患者は、慢性創傷の部位で細胞老化の高い存在を示す。
【0127】
老化関係の疾患または状態は、黄斑変性症、乾性(非血管新生)または湿性(血管新生)黄斑変性症であり得る。黄斑変性症は、黄斑と呼ばれる、網膜の中心部分において、光受容細胞の喪失を起こす神経変性疾患である。黄斑変性症は、一般に、2つの種類:乾性および湿性に分類される。乾性型は、湿性型より一般的であり、加齢黄斑変性症(ARMD)患者の約90%が、乾性型と診断される。湿性型の疾患は、通常、より重症の視力喪失をもたらす。症状は、直線がゆがんで知覚されることを含み、いくつかの場合、視覚の中心が、周りの光景よりひずんで見える;暗くぼやけた領域もしくは「白くらみ」が、視覚の中心に見られる;および/または色の知覚が、変化もしくは低下する。黄斑変性症の対象の診断およびモニタリングは、当該技術分野で認められた周期的な検眼手順および対象による症状の報告にしたがって、眼科分野における当業者により達成することができる。
【0128】
老化細胞関連の状態は、肺の状態であり得る。肺の状態は、限定されないが、特発性肺線維症(TPF)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、気管支拡張症、肺気腫、加齢性の肺機能の喪失、および加齢関連の睡眠時無呼吸を含む。肺の状態の処置または予防における使用のための、本明細書に記載の老化細胞除去組成物の効果は、例えばCOPDのような肺の疾患または障害に罹患するか、またはその危険がある、処置を受けた患者の症状を、このような処置を受けていない、またはプラセボ処置を受けた患者の症状と比較することにより分析することができる。
【0129】
COPDは、肺組織の崩壊(肺気腫)、および小気道の機能障害(閉塞性細気管支炎)に由来する、慢性的な気流不良により定義される、肺疾患である。COPDの初期症状は、息切れ、喘鳴、胸部絞扼感、慢性咳嗽、および喀痰の過剰産生を含む。COPDは、タバコの煙(紙巻きタバコの煙、葉巻タバコ、副流煙、パイプの煙を含む)、職業曝露(例えば、粉塵、噴煙、または煙霧)、および汚染に最も一般的に起因し、これらが何十年にもわたって起こるので、COPDを発症する危険因子として加齢に関与する。
【0130】
肺線維症は、肺の硬化および瘢痕化で特徴付けられる慢性および進行性の肺疾患であり、呼吸不全、肺がん、および心不全をもたらす可能性がある。線維症は、上皮の修復に関連する。肺線維症の発症の危険がある対象は、環境または職業の汚染物質に曝露されるもの、例えば石綿肺症および珪肺症;紙巻きタバコを吸うもの;関節リウマチ、SLE、および強皮症のような、いくつかの典型的な結合組織疾患を有すること;サルコイドーシスおよびウェゲナー肉芽腫症のような結合組織を含む他の疾患を有すること;感染を有すること;ある特定の医薬(例えば、アミオダロン、ブレオマイシン、ブスルファン、メトトレキサート、およびニトロフラントイン)の摂取;胸部に放射線療法を行ったもの;ならびに、家族が肺線維症を有するものを含む。肺線維症の症状は、当該技術分野で知られており、息切れ、特に運動時;乾いた空咳;速い浅呼吸;穏やかな意図しない体重減少;疲労;関節痛および筋肉痛;ならびに、ばち状指形成(手指または足指の先端が広く丸くなる)を含む。
【0131】
さらに具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、移植の成績を改善するのに使用される。具体的には、ドナー臓器および/またはレシピエントにおける増加した数の老化細胞の存在は、移植の成績に悪影響を及ぼす。具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物は、ドナー臓器および/またはレシピエントにおいて老化細胞を選択的に除去して、移植の成績を改善するのに使用することができる。
【0132】
さらに具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、老化関連の瘢痕形成および線維症を予防または減弱するのに使用される。
さらに具体的な実施形態によると、本明細書で提供される組成物は、化学療法の副作用を改善するのに使用される。なおさらに具体的な実施形態によると、本明細書に記載の組成物は、腫瘍の再発、ならびに老化関係の疾患および状態の発生を予防または遅延するのに使用される。療法に誘発された老化(TIS)は、がん療法の一般的な副作用であり、療法で生存した患者において早期老化を起こす。加えて、TISは、腫瘍、例えば、Bcl2リンパ腫において老化関連の幹細胞性(SAS)を誘発するので、高い腫瘍発生の能力およびがん再発に対する高い危険性をもたらす。
【0133】
老化細胞の除去または破壊は、化学療法または放射線療法の、エネルギー不均衡を含む急性毒性を含む、急性毒性を改善することができる。急性毒性の副作用は、限定されないが、胃腸毒性(例えば、悪心、嘔吐、便秘、食欲不振、下痢)、末梢神経障害、疲労感、不定愁訴、低い身体活動、血液学的毒性(例えば、貧血)、肝毒性、脱毛症(脱毛)、疼痛、感染、粘膜炎、体液貯留、皮膚科学的毒性(例えば、発疹、皮膚炎、色素沈着過剰症、蕁麻疹、光線過敏症、爪の変化)、口腔、歯肉もしくは咽頭の問題、または化学療法もしくは放射線療法に起因する任意の毒性の副作用を含む。例えば、化学療法もしくは放射線療法に起因する毒性の副作用(例えば、国立がん研究所のウェブサイトを参照)は、本明細書に記載の方法により改善することができる。したがって、ある特定の実施形態では、方法は、療法を受ける対象において、急性毒性を改善する(発生を低減、阻害、もしくは予防する(すなわち、発生の可能性を低減する))、または化学療法もしくは放射線療法の毒性の副作用(すなわち、有害な副作用)の重症度を低減する、またはその両方のために本明細書で提供され、方法は、対象に、老化細胞を選択的に死滅、除去、もしくは破壊するか、または老化細胞の選択的崩壊を促進する、本明細書に記載の組成物を投与することを含む。処置するか、または発生の可能性を低減するか、または化学療法もしくは放射線療法の副作用の重症度を低減するための老化細胞除去組成物の投与は、転移の処置/予防に対して、上述と同じ処置の過程により達成することができる。転移を処置または予防する(すなわち、その発生の可能性を低減する)のに記載される通り、老化細胞除去の組合せは、化学療法もしくは放射線療法を行わない期間の間、または化学療法もしくは放射線療法の処置レジメンが完了した後、投与される。
【0134】
本明細書でさらに提供されるのは、対象において老化細胞を同定する方法である。具体的には、本明細書に記載の老化細胞の変化した脂質代謝のメンバーのレベルの変化は、対象において老化細胞を同定するために検出することができる。具体的には、対象において老化細胞を同定する方法は、バイオマーカーである、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、およびホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つのレベルを決定することを含む。好ましくは、バイオマーカーは、リゾSPC、またはリゾPPC、またはアラキドン酸である。
【0135】
対象において老化細胞を同定する方法は、具体的には、老化関連の疾患もしくは状態の診断、対象における老化関連の疾患もしくは状態の危険性の診断、老化関連の疾患もしくは状態のモニタリング、もしくは処置応答のモニタリングもしくは予測、または老化誘発剤(酸化ストレッサーを含む、中毒物質、DNA損傷剤など)への曝露のモニタリングにおいて、老化細胞の存在を決定するために使用することができる。
【0136】
「対照」、「対照サンプル」、または「基準値」もしくは「基準レベル」とは、本明細書で互換的に使用することができる用語であり、実験サンプルとの比較に対して使用されるサンプルまたは基準として利用されるべきである。対照は、健康対象、または老化の危険がないか、もしくは罹患していないか、もしくは老化を含むストレス状態に曝露していないか、もしくは老化細胞除去剤での処置に曝露している、対象から得られるサンプルを
含み得る。基準レベルとは、具体的には、健康対象由来、老化の危険がないか、もしくは罹患していないか、もしくは老化を含むストレス状態に曝露していない対象由来のサンプルで定量化された、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/もしくはPLA2活性のレベルを指すか、または老化細胞除去処置のモニタリングの場合、上記レベルはまた、老化細胞除去処置を開始する前、もしくは老化細胞除去処置の過程の間の対象のサンプルに由来することができる。
【0137】
具体的には、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはPLA2活性のレベルは、ELISA、質量分析、または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のような免疫アッセイを使用して測定される。
【0138】
例えば、リゾホスファチジルコリンのレベル、具体的には細胞内レベルは、Gruberら、2015年に記載の陽イオンモードでのタンデム質量分析に連結される高性能液体クロマトグラフィー、またはJeschekら、2016年に記載のHPLCにより測定することができる。
【0139】
例えば、細胞内アラキドン酸のレベルは、酵素免疫測定法、例えば、Novus Biologicals(NBP2-66372)で供給されるユニバーサルアラキドン酸ELISAキット、または任意の他の等価のELISAアッセイにより測定することができる。さらに具体例によると、アラキドン酸アッセイのレベルは、Nishikioriら、2015年に記載の高性能液体クロマトグラフィー、または陰イオンモードでのタンデム質量分析に連結される高性能液体クロマトグラフィーでの、Gruberら、2015年に記載のフローインジェクションエレクトロスプレーイオン化質量分析により測定することができる。
【0140】
例えば、PLA2活性は、ホスホリパーゼA2活性による切断時に、蛍光計、例えばbis-BODIPY(登録商標)-FL-C11-PC(Thermo Fisher)で、またはEnzChek(商標)ホスホリパーゼA2アッセイキット(Thermo Fisher)もしくは任意の他の等価のアッセイで定量化することができる蛍光産物を得る、PLA2基質を含むアッセイにより測定することができる。
【0141】
具体的な実施形態によると、バイオマーカーである、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、およびホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つのレベルの2または3超の標準偏差の、基準における上記バイオマーカーのレベルと比較しての増加は、老化細胞または細胞老化の存在を示している。
【0142】
具体的には、健康対象または健康対象の群から得られる上記バイオマーカーのいずれか1つまたは複数の基準レベル間の、対象のサンプルから得られる上記バイオマーカーの1つまたは複数のレベルと比較して、2.0、2.5、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0倍超の増加は、上記サンプルにおける老化細胞の存在を示している。
【0143】
具体的には、老化細胞除去処置の間またはその後の対象のサンプルから得られる上記バイオマーカーのいずれか1つまたは複数の基準レベル間の、早い時点からの同じ対象のサンプルと比較して、2.0分の1、2.5分の1、3.0分の1、3.1分の1、3.2分の1、3.3分の1、3.4分の1、3.5分の1、3.6分の1、3.7分の1、3.8分の1、3.9分の1、4.0分の1、4.1分の1、4.2分の1、4.3分の1、4.4分の1、4.5分の1、4.6分の1、4.7分の1、4.8分の1、4.9分の1、または5.0分の1への減少(個人内比較または個人内差異)は、老化細胞除去処置に対する陽性反応を示している。
【0144】
加えて、対照はまた、標準的な基準値、または値の範囲であり得る。基準レベルはまた、健康な対象のサンプル、および/または薬理学的、食事もしくは生活様式の介入前の対象における、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のいずれか1つまたは複数の平均レベルとして決定することができる。別の方法として、また、1つまたは複数の対象由来のサンプルのプールは、使用することができるか、または文献に開示される参照であり得る。
【0145】
本明細書に記載の老化細胞の検出のための方法は、具体的には、本明細書に記載の診断シグネチャーまたは発現パターンを使用する診断ツールおよび予測ツールであって、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2のいずれか1つまたは複数または全てのレベルの上昇からなり、線維芽細胞、内皮細胞、腎上皮細胞、肝細胞、神経細胞、皮膚細胞、肺上皮細胞、または結腸上皮細胞を含むが、限定されない、様々な細胞種の広範囲な老化に適用可能であるツールを提供する。特に、若い対象または老化を誘発するストレス状態に曝露していない対象、および高齢の対象または老化を誘発するストレス状態に曝露した対象の組織、血液、または血清における老化細胞の検出は、初期診断、長期予後、および細胞老化の患者のスクリーニングに対してより高い有意性を有する診断ツールおよび予測ツールを提供する。本明細書に記載の方法はまた、老化細胞除去剤での処置をモニタリングするための診断ツールを提供する。
【0146】
具体的には、本明細書に記載の老化細胞を同定する方法は、単一測定として実施することができるが、反復した決定により実行することもできる。
具体的には、本明細書に記載の老化細胞を検出するための方法の使用はまた、移植臓器の機能を予測すること、または臓器移植不全を予測することを包含する。
【0147】
具体的な実施形態によると、本明細書に記載の方法はまた、老化細胞の減少、または細胞老化の低減を検出するために使用することができ、バイオマーカーであるリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはPLA2活性のうちの少なくとも1つのレベルは、老化細胞除去剤、抗加齢剤、または任意の抗加齢性介入での処置の前の、相当するリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはPLA2活性のレベルと比較する。具体的には、上記のバイオマーカーのうちの少なくとも1つのレベルでの低下は、例えば、老化細胞除去剤、抗加齢剤(例えば、ラパマイシン、スペルミジン、メトホルミン)、または食事、運動などのような任意の他の抗加齢性介入を使用する間、老化細胞の除去を示すことができる。このシグネチャーはまた、任意の抗加齢性介入から利益を受ける対象を同定するのに使用することができる。
【0148】
具体的には、方法は、対象をモニタリングする、具体的には老化細胞除去処置に対する対象の応答を測定するのに有用である。したがって、バイオマーカーはまた、効果的な薬物用量の表示(例えば、任意の種類の介入の開発中、またはパーソナル化された処置選択肢もしくは投与の同定に関して、用量設定)のために使用することができる。
【0149】
本明細書でさらに提供されるのは、老化細胞を選択的に除去することが可能な、老化細胞除去化合物をスクリーニングする方法である。具体的な実施形態によると、アラキドン酸のレベルは、例えば、ELISAのような、酵素に基づく免疫アッセイを使用して、化合物にもまた曝露した非老化細胞、もしくは化合物に曝露しない老化細胞、またはその両方でのアラキドン酸のレベルと比較して、化合物への曝露時に老化細胞で測定される。具体的には、本スクリーニング法により同定された化合物は、老化細胞を選択的に除去することが可能である。
【0150】
本発明は、以下の項目をさらに含む:
1.シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、およびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも2つを阻害することが可能な1つまたは複数の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
【0151】
2.アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、またはACSBG2を阻害することが可能な1つまたは複数の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
【0152】
3.アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、またはACSBG2を阻害することが可能な1つまたは複数の阻害剤、およびCOX-1、COX-2、またはリポキシゲナーゼのうちの少なくとも1つを含む、項目2に記載の使用のための組成物。
【0153】
4.老化細胞が、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、およびホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの高い細胞内レベルで特徴付けられる、項目1から3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0154】
5.リゾホスファチジルコリンが、1-ステアロイル(steraroyl)-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoSPC)、または1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPPC)である、項目4に記載の使用のための組成物。
【0155】
6.阻害剤の1つまたは複数が、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、セレコキシブ、シクロスポリンA、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、ナブメトン、ケトロラック、テノキシカム、トルメチン、ピロキシカム、フェノプロフェン、エトドラク、ナプロキセン、ジフルニサル、スプロフェン、ブロムフェナク、ケトプロフェン、ジホモ-γ-リノレン酸、イコサペント、フルルビプロフェン、メフェナム酸、サルサレート、スリンダク、サリチル酸、ルミラコキシブ、O-アセチル-L-セリン、フェナセチン、フルルビプロフェンメチルエステル、メタミゾール、ニトロアスピリン、メロキシカム、フルフェナム酸、オキサプロジン、チアプロフェン酸、サリチル酸マグネシウム、ジエチルカルバマジン、ロルノキシカム、カルプロフェン、フェニルブダゾン、ネパフェナク、アンチピリン、アントラフェニン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、トリフルサール、ニフルム酸、デキシブプロフェン、アセクロフェナック、アセメタシン、ドロキシカム、ロキソプロフェン、トルフェナム酸、デキスケトプロフェン、トロメタモール、タルニフルメート、プロパセタモール、サリチル酸トロラミン、サリチル酸フェニル、ブフェキサマク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メンチル、FK-506、レナリドマイド、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、シミコキシブ、クロルフェネシン、クロドロン酸、セリシクリブ、ドロスピレノン、トリアムシノロン、ポマリドミド、パレコキシブ、フィロコキシブ、アクロフェナク、アダパレン、サリドマイド、エトリコキシブ、ロベナコキシブ、アサルアルデヒド、ザルトプロフェン、デラコキシブ、デキサメタゾン、プラノプロフェン、アンフェナクナトリウム一水和物、アンピロキシカム、NS-398、次サリチル酸ビスマス、ジクロフェナクジエチルアミン、トロメタモール、ルテカルピン、サリシン、フェンブフェン、キサントフモール、フルニキシンメグルミン、およびニメスリドからなる群から選択されるCOX-1および/またはCOX-2阻害剤である、項目1から5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0156】
7.1つまたは複数の阻害剤が、MK886、ジロイトン、マソプロコール、ジエチル
カルバマジン、アゼラスチン、ベノキサプロフェン、ノルジヒドログアイアレチン酸、アビエチン酸、エスクレチン、モンテルカスト、ミノサイクリン、MLN-977、レイン、ジアセレイン、ナビキシモルス、ホスタマチニブ、AM103、DG031、フィボフラポン、AA-861、およびアトレロイトンからなる群から選択されるリポキシゲナーゼおよび/またはFLAP(ALOX5AP)阻害剤である、項目1から6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0157】
8.1つまたは複数の阻害剤が、デュアルシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ阻害剤であり、好ましくは、リコフェロン、ダルブフェロン、CI-987、S-2474、KME-4、ケブラジン酸、バルサラジド、メサラジン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、メクロフェナム酸、モルニフルマートジアリールピラゾール誘導体、チエノ[2,3-b]ピリジン誘導体、N-置換5-アミノサリシリシラミド、フラボコキシド、インドリジン誘導体、LQFM-091、ヒペルホリン、セラストロール、BW755C、テポキサリン、b-ボスウェリン酸、D-002、2,3-ジアリールキサントン、フェニドン、およびER-34122からなる群から選択される、項目1から7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0158】
9.アラキドン酸の細胞内の転換を阻害することが可能な追加の化合物を含む、項目1から8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
10.追加の化合物が、好ましくは、ウコン、ローズマリー、ショウガ、オレガノ、レスベラトロール、クルクミン、カンナビノイド、チョウセンニンジン、サポニン、テルペノイド、フラボノイド、ポリフェノール、イチョウ、カプサイシン、ゲニステイン、およびケンフェロールからなる群から選択される天然化合物である、項目9に記載の使用のための組成物。
【0159】
11.追加の化合物が、シトクロムP450の阻害剤、好ましくは、スルファフェナゾール、アバシミブ、ベンズブロマロン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、セルビスタチン、ワルファリン、ピオグリタゾン、ラパチニブ、トリメトプリム、ザフィルルカスト、アモジアキン、ニカルジピン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロラタジン、エチニルエストラジオール、イルベサルタン、キニーネ、ソラフェニブ、エルトロンボパグ、ロサルタン、リコフェロン、アミトリプチリン、アトルバスタチン、メフェナム酸、メロキシカム、ピロキシカム、エルロチニブ、パゾパニブ、ジエチルスチルベストロール、エンザルタミド、ポナチニブ、ダブラフェニブ、エナシデニブ、ロバスタチン、モンテルカスト、ケトコナゾール、フェロジピン、カンデサルタンシレキセチル、クロトリマゾール、モメタゾン、サルメテロール、ラロキシフェン、フェノフィブラート、レボチロキシン、タモキシフェン、オキシブチニン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ニフェジピン、リオトリックス、アムロジピン、ベザフィブラート、クロラムフェニコール、シクロスポリン、シメチジン、クロピドグレル、コレカルシフェロール、デラビルジン、デキストロプロポキシフェン、エトポシド、イソニアジド、ケトプロフェン、メトロニダゾール、ニルタミド、ニルバジピン、パロキセチン、フェネルジン、プラバスタチン、プロパフェノン、ピリメタミン、ロフェコキシブ、ルチン、サキナビル、スルファメトキサゾール、スルフィンピラゾン、テガセロド、テルフェナジン、チオリダジン、チクロピジン、チオコナゾール、トリアゾラム、トロレアンドマイシン、バルプロ酸、アビラテロン、ビスモデギブ、レゴラフェニブ、トラメチニブ、イデラリシブ、ロピナビル、セレコキシブ、エファビレンツ、ラベプラゾール、テリフルノミド、クリサボロール、ベリノスタット、トピロキソスタット、カンデサルタン、レテルモビル、ルカパリブ、オピカポン、ナビロン、フルボキサミン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ボスチニブ、カボザンチニブ、ゲニステイン、レンバチニブ、アタザナビル、ベキサロテン、デフェラシロクス、キニジン、ミフェプリストン、ベムラフェニブ、シルデナフィル、ジクロフェナク、フルオキセチン、バルデコキシブ、ボリコナゾール、エトドラク、セルトラリン、グリブリド、アセノクマロール、ロスバスタチン、イマチニブ、クロザピン、ジアゼパム、プロゲステロン、オメプラゾール、バルサルタン、ボルテゾミブ、ネビラピン、アゼラスチン、ロルノキシカム、フェニルブダゾン、エトラビリン、レフルノミド、シタキセンタン、アミノフェナゾン、ベラパミル、エトリコキシブ、プロポフォール、スルファモキソール、ジクマロール、ジルチアゼム、ヒスタミン、モクロベミド、セレギリン、パレコキシブ、ドコネキセント、アセチルスルフィソキサゾール、フルコナゾール、パントプラゾール、デスロラタジン、ミコナゾール、アミオダロン、ゲムフィブロジル、プロベネシド、テニポシド、スルファジアジン、カペシタビン、フルオロウラシル、トラニルシプロミン、アナストロゾール、アトバコン、シクリジン、デクスフェンフルラミン、ジスルフィラム、エピネフリン、エプロサルタン、フレカイニド、インジナビル、メタゾラミド、ネルフィナビル、オランザピン、プランルカスト、プロメタジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファピリジン、メチマゾール、トルカポン、ビカルタミド、アルモダフィニル、アゴメラチン、ノスカピン、クレビジピン、スルコナゾール、ゲフィチニブ、チカグレロル、セリチニブ、フロクスウリジン、リフィテグラスト、レイン、ジアセレイン、ズカプサイシン、スチリペントール、ロベグリタゾン、ドスレピン、マニジピン、ブラックコホシュ、クルクミン、フェルバメート、ピペリン、サフィナミド、イプロニアジド、オリタバンシン、マソルポコール、およびペグビソマントからなる群から選択される、CYP2J、CYP2C、CYP4A、またはCYP4Fの阻害剤である、項目9に記載の使用のための組成物。
【0160】
12.追加の化合物が、好ましくは、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、トリアクシンCの類似体、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、およびロシグリタゾンからなる群から選択される、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤である、項目9に記載の使用のための組成物。
【0161】
13.追加の化合物が、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤、具体的にはLPCAT1、LPCAT2、LPCAT3、LPCAT4、MBOAT2、および/またはMBOAT7の阻害剤であり、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤が、好ましくは、N-フェニルマレイミド誘導体、TSI-01、およびチメロサールからなる群から選択される、項目9に記載の使用のための組成物。
【0162】
14.追加の化合物が、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤、具体的にはELOVL2、ELOVL4、および/またはELOVL5の阻害剤であり、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤が、好ましくは、シクロエート、アデノシン5’-ヘキサデシルホスフェート、エンド-1k、(S)-イル、および化合物37、5,5-ジメチル-3-(5-メチル-3-オキソ-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル)-1-フェニル-3-(トリフルオロメチル-3,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インドール-2,4-ジオン)、および(3-エンド)-3-(フェニルスルホニル)-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキサミドからなる群から選択される、項目9に記載の使用のための組成物。
【0163】
15.細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物を含む、項目1から9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
16.追加の化合物が、好ましくは、オリゴマイシンA、ニコチン酸イノシトール、ベダキリン、エフラペプチン、ロイシノスタチン、テントキシン、テントキシン誘導体、アンジオスタチン、エンテロスタチン、メリチン、IF、Syn-A2、Syn-C、レスベラトロール、ピセアタンノール、ジエチルスチルベストロール、4-アセトアミド-4’-イソチオシアノスチルベン-2,2’-ジスルホネート、4,4’-D-イソチオシアナトスチルベン-2,2-ジスルホン酸、ケンフェロール、モリン、アピゲニン、ゲ
ニステイン、ビオカニンA、ダイゼイン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、プロアントシアニジン、クルクミン、フロレチン、テアフラビン、タンニン酸、4-ヒドロキシ-エストラジオール、2-ヒドロキシ-エストラジオール、17α-エストラジオール、17β-エストラジオール、α-ゼアラレノール、β-ゼアラレノール、オリゴマイシン、ベンツリシジン、アポプトリジン、オサマイシン、シトバリシン、ペリオマイシン、トリブチルスズ塩化物、水酸化トリシクロヘキシルスズ、硫酸トリエチルスズ、トリフェニルスズ塩化物、ジメチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3-ヒドロキシフラボン臭化物、ジオクチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジフェニルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン臭化物、ジフェニルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、トリブチルスズ3-ヒドロキシフラボン、トリエチル鉛、オーロベルチン、シトレオビリジン、アステルトキシン、ローダミンB、ローダミン123、ローダミン6G、ロザニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、キナクリン、キナクリンマスタード、アクリジンオレンジ、コリホスフィン、ピロニンY、デカリニウム、サフラニンO、ナイルブルーA、臭化エチジウム、テトラカイン、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、クロルプロマジン、トリフルオペラジン、プロカインアミド、プロプラノロール、オクチルグアニジン、1-ダンシルアミド-3-ジメチルプロピルアミン化合物、セチルトリメチルアンモニウム、スペルミン、スペルミジン、バトフェナントロリン-金属キレート、4,4-ジフェニル-2,2-ビピリジン、3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジン、アトラジン、アトラジンアミノ誘導体、アルセネート、フッ化アルミニウム、フッ化ベリリウム、フッ化スカンジウム、バナデート、フッ化マグネシウム、亜硫酸塩、チオホスフェート、アジド、ANPP、フェニルグリオキサール、ブタンジオン、ダンシル塩化物、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、ジカルボポリボレート、アルミトリン、5-ヒドロキシ-1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、R207910、スペガッジニン、n-ブタノール、テトラクロロサリチルアニリド、ジヒドロストレプトマイシン、スラミン、Bz-423、DMSO、次亜塩素酸、DDT、ジアゾキシド、HNB、N-スルホニルもしくはN-アルキル置換テトラヒドロベンゾジアゼピン誘導体、4-(N-アリールイミダゾール)-置換ベンゾピラン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-シアノグアニジン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-アシルグアニジン誘導体、O-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-チオウレタン誘導体、dio-9複合体、エタノール、および亜鉛からなる群から選択される、ATPシンターゼの阻害剤である、項目15に記載の使用のための組成物。
【0164】
17.追加の化合物が、好ましくは、クロドロン酸、イビピナバント、アトラクチロシド、カルボキシアトラクチロシド、ボンクレキン酸、イソボンクレキン酸、MT-21、クロサンテル、CD437、リーラミン、L923-0673、IMD0354、PI32-0333、S899542、ノナクチン、およびS838462からなる群から選択される、ADP/ATPトランスロカーゼの阻害剤である、項目15に記載の使用のための組成物。
【0165】
18.追加の化合物が、好ましくは、2-デオキシ-D-グルコース、ロニダミン、ブロモピルビン酸、フロレチン、STF-31、WZB117、3PO、3-ブロモピルベート、ジクロロアセテート、オキサミン酸、NHI-1、オキシチアミン、イマチニブ、グルコサミン、6-アミノニコチンアミド、ゲニステイン、5-チオグルコース、マンノヘプツロース、α-クロロヒドリン、オルニダゾール、オキサレート、グルフォスファミド、N-(ホスホンアセチル)-L-アスパルテート、6-メチルメルカプトプリンリボシド、CGP3466Bマレエート、モノフルオロリン酸ナトリウム、DASA-58、DL-セリン、ジクロロ酢酸、ジクロロ酢酸ナトリウム、ニトロフラール、6-AN、ファセンチン、ベンセラジド、アストラガリン、レスベラトロール、クリシン、GEN-27、アピゲニン、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチル硫化物、CB-839、アザセリン、アシビシン、6-ジアゾ-5-ox-L-ノルロイシン、チアゾリジン-2,4-ジオン誘導体、化合物968、R-リポ酸、1,3,4-チアジアゾール化合物、2-クロロプロピオネート、Nov3r、AZD7545、Pfz3、ラジシコール、ミタプラチン、mito-DCA、フェニルブチレート、4,5-ジアリールイソオキサゾール、VER-246608、ベツリン酸、ホスフィネートまたはホスホナート基を含有するピルベート類似体、CPI-613、M77976、芳香族DCA誘導体、フランおよびチオフェンカルボン酸、リトナビル、FX11、オキサメート、D-フルクトース-6-ホスフェート、6-ホスホグルコン酸、N-ブロモアセチル-アミノエチルホスフェート、2-カルボキシエチルホスホン酸、N-ヒドロキシ-4-ホスホノ-ブタンアミド、2-ホスホグリセリン酸、ヨードアセテート、ゴシポール、1,3-ビスホスホグリセリン酸のビスホスホネート類似体、ベンゼンヘキサカルボン酸、3-ホスホグリセリン酸、ホスホノアセトヒドロキサム酸、2-ホスホ-D-グリセリン酸、TLN-232、ならびにCAP-232からなる群から選択される、グリコリシスの阻害剤である、項目15に記載の使用のための組成物。
【0166】
19.老化関係の疾患または状態の発症を予防または遅延する、項目1から18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
20.老化関係の疾患または状態の進行を予防または遅延する、項目1から18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0167】
21.老化関係の疾患または状態の退行を促進する、項目1から18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
22.老化関係の疾患または状態が、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、がん、骨粗鬆症、変形性関節症、神経障害、認知症、白内障、腎疾患、網膜症、糖尿病、肺線維症、脊椎の皮膚変性、加齢性筋萎縮、脱毛、または皮膚老化から選択される、項目19から21に記載の使用のための組成物。
【0168】
23.移植の成績を改善する、項目1から18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
24.老化関連の瘢痕形成および線維症を予防または減弱する、項目1から18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【0169】
25.化学療法の副作用を改善し、腫瘍の再発を予防または遅延する、項目1から18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
26.対象において老化細胞を同定する方法であって、
a)上記対象のサンプルを準備するステップ、
b)上記対象においてリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルを決定するステップ、
c)b)のレベルを基準レベルと比較するステップ
を含み、基準レベルが、非老化細胞におけるリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルであり、
リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のレベルでの少なくとも2倍の増加が、上記サンプルにおける老化細胞の存在を示している、
方法。
【0170】
27.老化細胞を除去するための候補化合物をスクリーニングする方法であって、
a)少なくとも1つの試験化合物を、老化細胞のサンプルと接触させるステップ、
b)アラキドン酸の細胞内レベルを測定する、および/またはアポトーシスを測定する、および/または細胞生存率を測定するステップ、ならびに
c)未処置の老化細胞と比較して、試験化合物と接触させた老化細胞において、アラキドン酸の細胞内蓄積、高いアポトーシス、および/または低い細胞生存率を起こす試験化合物を選択するステップ
を含む方法。
【0171】
28.対象において老化細胞を除去する化合物の使用であって、上記化合物が、項目27に記載の方法にしたがって同定される、使用。
29.少なくとも1つのシクロオキシゲナーゼ阻害剤、および少なくとも1つのリポキシゲナーゼ阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
【0172】
本明細書に記載の実施例は、本発明の説明であり、その限定を意図するものではない。本発明の異なる実施形態は、本発明にしたがって記載される。本明細書で記載および図示した技術に対して、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変形および変更がなされ得る。したがって、実施例が、単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解すべきである。
【実施例0173】
以下の材料および方法は、別段指示がない限り、本明細書で提供される実施例を通して使用される。
細胞単離
ヒト真皮線維芽細胞(HDF)を、健康な女性の成人ドナーの皮膚生検から単離し、Evercyte(ウィーン、オーストリア)より入手した。包皮ヒト真皮線維芽細胞(fHDF)を、包皮から単離し、Evercyte(ウィーン、オーストリア)より入手した。男性ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、ヒト臍帯から単離し、Evercyte(ウィーン、オーストリア)より入手した。全ての細胞株は、一定間隔でマイコプラズマに対して試験した。ヒト肺線維芽細胞(HLF)を、ドナー肺から単離し、Ludwig Boltzmann Institute for Lung Vascular Research(グラーツ、オーストリア)より入手した。ヒト腎近位上皮細胞(RPTEC)を、Biopredic(サン・グレゴワール、フランス)より入手した。
【0174】
細胞培養
HDF、fHDF、およびHLFを、周囲の酸素下、7%のCO、37℃で、10%のFCS(F7524、Sigma-Aldrich)および4mMのL-グルタミン(G7513、Sigma-Aldrich)を補充したDMEM/Ham’s F-12(1:1混合物)(F4815、Biochrome)で培養した。HUVECを、周囲の酸素下、7%のCO、37℃で、10%のFCS(F7524、Sigma-Aldrich)を補充したEndopan3Kit(ゲンタマイシンおよびFBSを除く;P04-0010K、Pan Biotech)で培養した。細胞を、37℃で3~5分間、0.1%のトリプシンおよび0.02%のEDTAでインキュベートすることにより剥離し、細胞の種類および成長速度によって1:2と1:8との間の比で分割した。RPTECを、周囲の酸素下、7%のCO、37℃で、G418を伴わないProxUp(MHT-003、Evercyte)で培養した。細胞を、37℃で3~5分間、0.05%のトリプシン-EDTA溶液(25300054、Gibco)でインキュベートすることにより剥離し、成長速度によって1:2と1:4との間の比で分割した。細胞を、Vi-CELL XR(Beckman Coulter)自動細胞計数器を使用して計数した。
【0175】
SIPS
細胞を、処置の1日前に、2,800細胞/cmの細胞密度で播種した。細胞を、培地交換の前の1時間に、培地に補充した60~80μMのHで、11日間にわたって9回処置した。あるいは、細胞の種類によって、細胞を、処置の1日前に、3,500~7,000細胞/cmの細胞密度で播種し、SIPSを、6日間、培地に補充した100~200nMのドキソルビシン(D1515、Sigma-Aldrich)で誘発された。老化の誘導を、SA-β-gal染色、p21発現、およびBrdU組込みがないことにより確認した。アネキシンV/PI染色を実施して、処置が非致死性であったことを保証し、SIPSのHDFを50日にわたって培養およびモニタリングして、誘発された成長停止が恒久的であったことを保証した(Terlecki-Zaniewiczら、2018年)。
【0176】
脂質分析
細胞を、0.5mMのジエチレントリアミン五酢酸を含有するPBSで1回洗浄し、3%の酢酸および0.01%のブチル化ヒドロキシトルエンを含有する2.2mlのメタノールを添加した後、細胞を、セルスクレーパーで剥離した。脂質サンプルをガラスバイアルに移し、空気を不活性ガスで排出し、サンプルを、バイアルをパラフィンで封止した後、-20℃で保管した。最終的に、サンプルを、Analystソフトウェア(Applied Biosystems)のバージョン1.6を使用して、(Gruberら、2015年)に記載のフローインジェクションエレクトロスプレーイオン化質量分析で分析した。リゾPPCおよびリゾSPCのレベルを、DPPCレベルに正規化した。
【0177】
次世代シーケンシングおよびデータ分析
ライブラリ作成およびシーケンシングを、Illumina HighSeq 2000 Platform(GATC Biotech AG、コンスタンツ、ドイツ)で実施した。全ての分析ステップを、Tuxedo Suite Pipelineにしたがって行った(Trapnellら、2012年)。簡潔には、Illumina Casava 1.8.2ソフトウェアを、ベースコールに使用した。RNA-seq読出しを、初期パラメータを伴うTOPHATバージョン2.0.13を使用して、hg19ゲノムアセンブリに整合した。転写産物を、Cufflinksバージョン2.1.1にアセンブルし、示唆発現した遺伝子を、Cuffdiffにより予測した。
【0178】
生存率アッセイ
alamar blue(DAL1100、Thermo Fisher Scientific)アッセイを、製造会社の説明書にしたがって実施した。細胞を、第0日、第3日、および第6日の培地を交換しながら、9日間それぞれの物質で処置した。対照を、それぞれの濃度の溶媒(DMSO)で処置した。
【0179】
アラキドン酸の定量化
細胞を、トリプシン処理により採取し、4℃で5分間、1000gで遠心分離し、冷PBSで3回洗浄した。細胞を、Vi-CELL XR(Beckman Coulter)自動細胞計数器を使用して計数し、細胞ペレットを、冷PBSで再懸濁して、2000~5000細胞/μlで細胞懸濁液を得た。その後、細胞を、Bioruptor(Diagenode)において、30周期の超音波処理(30秒のオン、30秒のオフ)により溶解した。細胞デブリを、4℃で、1500gで10分間の遠心分離により除去し、上清を、製造会社の説明書にしたがってELISAアッセイ(Novus Biologicals;NBP2-66372)で分析した。
【0180】
PLA活性アッセイ
細胞を、トリプシン処理により採取し、4℃で5分間、1000gで遠心分離し、冷PBSで3回洗浄した。細胞を、Vi-CELL XR(Beckman Coulter
)自動細胞計数器を使用して計数し、細胞ペレットを、冷PBSで再懸濁して、2000~5000細胞/μlで細胞懸濁液を得た。その後、細胞を、Bioruptor(Diagenode)において、30周期の超音波処理(30秒のオン、30秒のオフ)により溶解した。細胞デブリを、4℃で、1500gで10分間の遠心分離により除去し、上清を、製造会社の説明書にしたがってEnzChek(商標)ホスホリパーゼA2アッセイキット(ThermoFisher Scientific;E10217)で分析した。
【0181】
実施例1:老化細胞において変化した脂質代謝
実施例1A:老化細胞におけるリゾPCの高いレベルの同定
本明細書に記載される通り、老化細胞において変化した脂質代謝を発見し、老化に対する新規のバイオマーカーとして2種類のリゾPCを、質量分析を使用して同定した。1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0 リゾPC)および1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(16:0 リゾPC)は、誘導因子が、テロメア依存性(複製老化)であるか、または非依存性(ストレスに誘発された早期老化;図1)であるかにかかわらず、いくつかの一次ヒト細胞株において老化の間、上方制御された。
【0182】
図1は、リゾホスファチジルコリンが、老化細胞で上昇することを示す。図1aは、初期、中期、および後期の集団倍加(PD)で、3つの異なるドナーのヒト真皮線維芽細胞(HDF)の脂質分析を示す一方、リゾPCのレベルを、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)レベルに正規化した。図1bは、SIPS処置の4日後、ストレスに誘発された早期老化(SIPS)のHDFの脂質分析を示す。SIPSを、慢性酸化ストレス処置(11日間にわたって9用量のH処置)で誘発した。図1cは、SIPS処置の7日後、ストレスに誘発された早期老化(SIPS)のHDFの脂質分析を示す。SIPSを、ドキソルビシン(100nMで72時間、2つの後処置)で誘発した。SIPS処置に対する対照として、細胞は、通常の成長培地で培養し、処置の間に集密になるまで成長させ、休止状態(Q)に入れた。図1aでは、有意性を、1方向ANOVAと、続くpost hoc Tukey検定で計算した。図1b、cでは、有意性を、両側スチューデントt検定で計算した。
【0183】
リゾPCは、酸化の過程を通して非酵素的に(Choiら、2011年)、またはPLA活性を有するホスホリパーゼによる転換を通して酵素的に(SixおよびDennis、2000年)のいずれかで、ホスファチジルコリン(PC)から生成され得る。SIPSのHDF由来のRNA-seq発現データを対照の休止細胞(GEO受託番号:GSE93535で得られる生データ)と比較すると、観察された効果に対して可能性のある候補として、細胞質ゾルのホスホリパーゼA2(PLA2G4A)、細胞質ゾルのホスホリパーゼA2γ(PLA2G4C)、およびグループXVホスホリパーゼA2(PLA2G15)を同定した(図2)。
【0184】
図2は、PLA活性、およびPLA活性に関連するタンパク質のmRNA発現レベルが、老化細胞において上昇することを示す。図2aは、PLA活性を伴うホスホリパーゼ、および分泌型ホスホリパーゼA2受容体が、SIPSのHDFで上昇することを示す。早期老化を、慢性酸化ストレス処置(11日間にわたって9用量のH処置)で、HDFにおいて誘発した。SIPS処置に対する対照として、細胞は、通常の成長培地で培養し、処置の間に集密になるまで成長させ、休止状態(Q)に入れた。SIPS処置の4日後、RNAサンプルを調製し、RNA-seqを実施した。発現レベルを、Fragments Per Kilobase of transcript per Million mapped reads(FPKM)として表す。p値を、Benjamini-Hochberg法を使用して多重比較の偽発見率で補正し、エラーバーは、信頼区間(95%)を示す。図2bは、SIPSのHDFおよびHLFにおける高いレベルのPLA活性を示す。早期老化を、HDFおよびHLFにおいて、ドキソルビシン(100nMで72時間、2つの後処置)で誘発した。SIPS処置に対する対照として、細胞は、通常の成長培地で培養し、処置の間に集密になるまで成長させ、休止状態(Q)に入れた。
【0185】
実施例1B:老化細胞におけるアラキドン酸(AA)の増産
分泌型ホスホリパーゼA2受容体(PLA2R1)は、細胞老化を誘発し(Augertら、2009年)、本発明者らのデータセットで上方制御されているが(図2)、MAPKによるリン酸化を通したPLA2G4Aの活性化により、リゾPCの生成およびアラキドン酸(AA)の同時放出を誘発することが報告されている(Fontehら、2000年;Panら、2015年;Scottら、2006年)。
【0186】
老化におけるリゾPCの増加が、老化誘導因子に非依存的に、全ての被検細胞株に頑強であったという事実は、変化した脂質代謝が、老化細胞に特異的な細胞障害性処置の開発の、したがって老化関連の疾患および障害の予防または療法の標的として使用することができることを示す。
【0187】
エイコサノイドの形成の増加は、細胞老化および加齢に関連することが報告されている(Curraisら、2016年;Kabirら、2016年;Liら、2015年;Wangら、2016b年)。本明細書で示す通り、リゾPCの生成は、上昇し、リゾPCの高い生成は、副産物としてAAの高い生成をもたらす(図1および図16)。次にAAは、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼのような酵素により、エイコサノイドへとさらに代謝され得る。細胞内AAの蓄積が、高濃度のAAでアポトーシスを誘発することができたことが報告されている(Penzoら、2004年)。
【0188】
最初に本明細書で記載される通り、細胞内レベルのAAの蓄積に起因する細胞死は、これらの細胞が、より速いAA形成速度を伴う変化した脂質代謝を有するので、老化細胞において大部分が観察される(図3)。実際に、以下の実施例で驚くべきことに示す通り、新規の老化細胞除去剤は、アラキドン酸代謝における老化細胞特異的変化に基づいて同定され、変化したアラキドン酸代謝は、老化細胞を選択的に除去するのに利用することができた。
【0189】
実施例2:新規の老化細胞除去剤の同定
実施例1Bで確立した仮説にしたがって、シクロオキシゲナーゼまたはリポキシゲナーゼの阻害は、細胞障害作用をもたらしたが、これは、一般に、老化細胞においてより重篤であり(図4~15)、良好な治療ウインドウを得ることかできることを示した。4つの被検細胞種(HDF、HLF、RPTEC、およびHUVEC)間にいくつかの差が存在したが、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼの阻害は、全ての細胞株における老化細胞の除去をもたらす。老化の異なる誘導因子間および異なるドナー間の差は、ほとんど目立たなかった。これは、先の報告に沿って、他の老化細胞除去戦略による細胞種依存性老化細胞除去効果を示している(Fuhrmann-Stroissniggら、2017年;Schaferら、2017年;Zhuら、2017年;Zhuら、2016年;Zhuら、2015年)。
【0190】
3つの報告された先行技術の老化細胞除去剤ナビトクラックス(ABT263;Selleck Chemicals)、ケルセチン(Sigma-Aldrich)、およびケルセチンのダサチニブとの組合せ(DQ;Cayman chemicals)は、HDFにおいて老化細胞除去効果を示さなかった(図4および9)。HUVECのみで、ナビトクラックスは、老化細胞を選択的に除去することができたが、ケルセチンはできなか
った(図5)。
【0191】
実施例2A:ヒト真皮線維芽細胞における新規の老化細胞除去剤の同定
最初に、COXまたはALOX阻害剤のいずれか単独での老化細胞除去効果を評価した。図4は、ヒト線維芽細胞のみで、ALOX-5阻害剤MK886(Santa Cruz Biotechnology)、およびCOX阻害剤アセチルサリチル酸(ASA;Sigma-Aldrich)の著しい老化細胞除去効果を示す。これら2つの薬物はまた、先行技術の老化細胞除去剤ケルセチンおよびナビトクラックスと比較した。
【0192】
早期老化を、慢性酸化ストレス処置(11日間にわたって9用量のH処置)で、HDFにおいて誘発した。休止細胞を、対照として使用した。老化細胞除去物質での処置は、SIPS処置の完了の11日後に開始して、完全に確立した老化表現型の確立を可能にした。成長培地を、3日毎に培地を交換しながら、9日間老化細胞除去物質で補充した。対照を含む、全てのサンプルは、同濃度の溶媒(DMSO)を含有した。その後、生存率を、alamar blueアッセイ(Thermo Fisher Scientific)を使用して評価した。
【0193】
実際に、MK886およびCOX阻害剤ASAは、休止細胞と比較して、先行技術の老化細胞除去剤ケルセチンおよびナビトクラックスより大きな程度まで、老化細胞の生存率を低減した。
【0194】
実施例2B:HUVECにおける新規の老化細胞除去剤の同定
COXまたはALOX阻害剤のいずれか、ならびにデュアル阻害剤の老化細胞除去効果を、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)で評価した。図5は、先行技術の老化細胞除去剤ケルセチンおよびナビトクラックスと比較して、COX-1/2阻害剤ASAおよびデュアルCOX/LOX阻害剤リコフェロンの効果を示す。
【0195】
早期老化を、6日間成長培地に補充したドキソルビシン(Sigma-Aldrich)によりHUVECにおいて誘発した。老化細胞除去物質での処置は、SIPS処置の完了の8日後に開始して、細胞が老化に入ることを可能にした。休止細胞を、対照として使用した。成長培地を、3日毎に培地を交換しながら、9日間老化細胞除去物質で補充した。対照を含む、全てのサンプルは、同濃度の溶媒(DMSO)を含有した。その後、生存率を、alamar blueアッセイ(Thermo Fisher Scientific)を使用して評価した(図5)。
【0196】
HUVECは、HDFより、シクロオキシゲナーゼ単独の阻害に対して感受性があった。予期される通り、先の報告(Zhuら、2016年)に沿って、ナビトクラックスは、HUVECに対してかなりの老化細胞除去活性を示さなかった。加えて、デュアルCOX/LOX阻害剤リコフェロンはまた、HUVECにおいて著しい老化細胞除去効果を示した。
【0197】
これは、異なる細胞種が、老化細胞除去化合物と別々に反応するという最近の知見を確認し、胚性および新生児の起源由来の細胞が、一般に老化細胞除去剤に対してより感受性がある可能性があったことを示す(Hwangら、2018年;Schaferら、2017年)。驚くべきことに、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ阻害剤を使用した、AAを代謝する酵素の阻害は、両方の細胞種、HDFおよびHUVECにおいて老化細胞除去的であったし、重要なことに、これらは、今まで成人ヒト真皮線維芽細胞に対して報告された、唯一の効果的な老化細胞除去化合物である。
【0198】
実施例3:HDFにおけるシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害
観察された老化細胞除去効果を高めるために、併用処置を使用するシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの両方の阻害を試験し、実際にそれらは相乗効果を示した。MK886と共にアセチルサリチル酸(ASA)またはジクロフェナク(Sigma-Aldrich)の組合せを有するシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの共阻害は、成人HDFならびに包皮HDFで強力な老化細胞除去効果を生じた(図6~9)。これらの結果は、初めて、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの共阻害が、効果的に、老化細胞を除去/破壊することを示す。
【0199】
これは、COX2およびALOX5の阻害剤での併用処置が老化細胞の細胞数の上昇をもたらしたWO2019070407A1の知見と矛盾する。この上昇は、本明細書で示すように、老化細胞の標的化された除去の研究で実施された実験で観察されたことはなかったし、実際、WO2019070407A1で使用される細胞の増殖によって説明される。これは、WO2019070407A1に記載の実験で使用された細胞が、いまだに細胞老化に関連する不可逆な成長停止を確立する過程にあったことを強く示し、WO2019070407A1で示される他の結果に沿っている。ゆえに、老化前の細胞を、COX2およびALOX5の阻害剤で処置することにより、細胞は、成長停止を回避し、増殖を開始した。結果として、SASP因子の分泌は、低減された。
【0200】
早期老化を、ドキソルビシンを有する成人および包皮HDFにおいて誘発し、6日間成長培地に補充した。老化細胞除去物質での処置は、SIPS処置の完了の8日後に開始して、細胞が老化に入ることを可能にした。休止細胞を、対照として使用した。成長培地を、3日毎に培地を交換しながら、9日間老化細胞除去物質で補充した。対照を含む、全てのサンプルは、同濃度の溶媒(DMSO)を含有した。その後、生存率を、alamar blueアッセイ(Thermo Fisher Scientific)を使用して評価した。
【0201】
図6は、高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、50μMのジクロフェナク、または2μMのセレコキシブのいずれかを使用するデュアル阻害と比較して、ALOX-5阻害剤MK886、およびCOX-1/2阻害剤ASA、およびジクロフェナク、またはCOX-2特異的阻害剤セレコキシブ(Sigma-Aldrich)を使用する、細胞株HDF161の成人ヒト真皮線維芽細胞での単一処置の効果を示す。セレコキシブによるCOX-2単独の阻害は、いかなる老化細胞除去効果を示さず、単一のAA代謝酵素の阻害が、老化細胞での細胞生存率を低下させるのに十分ではないことを示した。単一処置としてのMK886のEC50は、老化細胞に対して26.4μMだった一方、ASA、ジクロフェナク、またはセレコキシブと組み合わせて、EC50は、それぞれ18.8μM、9μM、および17μMに低下した。より重要なことに、老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化は、それぞれ1.58から1.95、2.53、および2.55に増加した。これは、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ単独の阻害と比較して、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果を示す。
【0202】
図7は、高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、または50、100、もしくは200μMのジクロフェナクを使用するデュアル阻害と比較して、COX阻害剤ジクロフェナクおよびALOX-5阻害剤MK886特異的阻害剤を使用する、細胞株HDF164の成人ヒト真皮線維芽細胞での単一処置の効果を示す。単一処置としてのMK886のEC50は、老化細胞に対して34.7μMであり、それぞれ30.4μM、17.3μM、11.2μM、および8.39μMに低下した。加えて、老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化は、それぞれ1.31から1.46、1.61、1.88、および1.64に増加し、異なるドナー由来の細胞株において、図7の結果を確認した。
【0203】
図8は、高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、または50μMのジ
クロフェナクを使用するデュアル阻害と比較して、COX阻害剤ASA、およびジクロフェナク、ならびにALOX-5阻害剤MK886を使用する、細胞株fHDF166の包皮ヒト真皮線維芽細胞での単一処置の効果を示す。単一処置としてのMK886のEC50は、老化細胞に対して34μMであり、それぞれ29.6μM、および12.4μMに低下した。上で概説する通り、成人ヒト真皮線維芽細胞で得られる結果に沿って、老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化は、それぞれ1.49から1.51および2.52に増加した。再び、これは、包皮由来HDFにおいても、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ単独の阻害と比較して、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼの併用阻害の相乗効果を示す。
【0204】
図9は、高濃度のMK886と組み合わせた0.4mMのASA、または50μMのジクロフェナクを使用するデュアル阻害と比較して、COX阻害剤ASA、およびジクロフェナク、およびALOX-5阻害剤MK886を使用する、成人ヒト真皮線維芽細胞(HDF76、HDF161、HDF164)の3つの細胞株での単一処置の効果を示す。加えて、2つの先行技術の老化細胞除去剤ナビトクラックス、および15μMのケルセチンの高濃度のダサチニブとの組合せを試験した。3つの異なるHDFドナーのデータを組み合わせた場合、老化細胞のEC50値は、MK886、ASA、およびジクロフェナク、ならびにナビトクラックスおよびDQでの単一処置により、著しく低下した。しかし、MK886をシクロオキシゲナーゼ阻害剤と組み合わせた場合、EC50値は、対照の休止細胞と比較した場合に老化細胞で著しく低下し、図6および7の結果を確認した。
【0205】
実施例4:トリアクシンC(TrC)、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤により再利用されるAAの阻害
エイコサノイド合成の他に、細胞のアポトーシスを促進する遊離AAのレベルを調節する最も効果的な方法は、ランズ回路を介するリン脂質への再組込みである(MurphyおよびFolco、2019年)。
【0206】
実際に、ランズ回路の重要な酵素は、老化細胞において著しく上昇した(図10)。長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)および長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ1(ACSL1)は、ACSL4およびACSL1は、アシル-CoAシンテターゼファミリーの2つのメンバーであり、遊離脂肪酸のCoAでの活性化に必要であり、ランズ回路での再組込みおよび分解の過程に対する前駆体であるアシル-CoAを生成する。加えて、リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ7(MBOAT7)は、AA-CoAのホスファチジルイノシトールへの再組込みに関与する酵素であり、老化細胞内で上昇したことが見出された。これは、老化細胞が、ランズ回路の迅速な再利用の過程を通して、遊離AAのレベルを調節することを強く示唆する。
【0207】
ゆえに、ランズ回路の重要な酵素の阻害は、老化細胞の、それ自身を、アポトーシスを促進する細胞内AAの形成の増加から保護する能力を低下させるはずであり、それにより、このような阻害剤の老化細胞除去効果をもたらす。
【0208】
図11は、高濃度のMK886と組み合わせた0.5μMのTrC、または50μMのジクロフェナクを使用するデュアル阻害と比較して、ACSL4阻害剤トリアクシンC(TrC)を使用する、成人ヒト真皮線維芽細胞(HDF76、HDF161、HDF164)の3つの細胞株での単一処置の効果を示す。ACSL4の単独阻害、ならびにACSL4およびALOX5のデュアル阻害は、著しい老化細胞除去効果を誘発するのに既に十分だった一方、MK886単独の効果は、著しくなかった(図9)。ACSL4、ALOX5、およびCOX1/2の併用阻害は、EC50値をさらにより低減した。
【0209】
図12は、高濃度のTrCと組み合わせた1μMのMK886、または50μMのジク
ロフェナクを使用するデュアル阻害と比較して、ACSL4阻害剤TrCを使用する、細胞株HLF102のヒト肺線維芽細胞(HLF)での単一処置の効果を示す。再び、ACSL4の単独阻害は、老化細胞および休止細胞間でEC50倍数変化が9.19である、強力な老化細胞除去効果を誘発するのに十分だった。ALOX5およびCOX1/2の阻害を組み合わせた場合、EC50倍数変化は、13.75にさらに上昇し、真皮線維芽細胞での実験からの結果を確認することができた。
【0210】
図13は、高濃度のMK886と組み合わせた0.1μMのTrC、または25μMのジクロフェナクを使用するデュアル阻害と比較して、ACSL4阻害剤TrC、COX阻害剤ジクロフェナク、ならびにALOX-5阻害剤MK886を使用する、細胞株RPTEC1のヒト腎近位上皮細胞(RPTEC)での単一処置の効果を示す。再び、ACSL4の単独阻害は、老化細胞および休止細胞間でEC50倍数変化が約350である、強力な老化細胞除去効果を誘発するのに十分だった。COX1/2およびALOX5の単独阻害は、それぞれ3.02および2.66のEC50倍数変化をもたらし、これはALOX5およびCOX1/2の併用阻害により5.11にさらに上昇させることができた。ACSL4、ALOX5、およびCOX1/2の阻害は、約700のEC50倍数変化をもたらした。これらの結果は、遊離細胞内AA転換の阻害により、老化細胞を選択的に除去する本手法の実効性および効力を明白に示す。
【0211】
実施例5:シクロオキシゲナーゼ/リポキシゲナーゼ阻害のATP減少との組合せ
ATPシンターゼ、ADP/ATPトランスロカーゼ、またはグリコリシスの阻害によるATPレベルの低下は、心臓ミトコンドリアでのAAに誘発されたミトコンドリア膜透過性を高め、AAに誘発されたアポトーシスが、ATPレベルを低減することによりさらに増強され得ることを示す。
【0212】
早期老化を、ドキソルビシンを有する成人HDFにおいて誘発し、6日間成長培地に補充した。老化細胞除去物質での処置は、SIPS処置の完了の8日後に開始して、細胞が老化に入ることを可能にした。休止細胞を、対照として使用した。成長培地を、3日毎に培地を交換しながら、9日間老化細胞除去物質で補充した。対照を含む、全てのサンプルは、同濃度の溶媒(DMSO)を含有した。その後、生存率を、alamar blueアッセイ(Thermo Fisher Scientific)を使用して評価した。
【0213】
実際に、ATPシンターゼの阻害剤である、5μMのオリゴマイシンA(OmA;Cayman Chemicals)の0.4mMのASAおよびMK886の併用処置への添加は、老化細胞に対するEC50を30.4μMから9.9μMへと低減することにより老化細胞除去効果をさらに高め、老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化を1.46から4.51へと高めた(図14)。これは、老化細胞でのAAに誘発されたアポトーシスが、ATP感受性であり、ATP減少によりさらに増強され得ることを示す。
【0214】
実施例6:シクロオキシゲナーゼ/リポキシゲナーゼ阻害のカルシニューリン-NFAT経路の阻害との組合せ
AAを代謝している酵素の発現レベルを低減することも、老化細胞除去効果を有することが予期され、COX/ALOX酵素活性の阻害と共に老化細胞除去の併用処置として使用し、老化細胞においてさらにアポトーシス圧を高めることができる。本発明者らのRNA-seqデータセットの経路解析(Lammermannら、2018年)は、カルシニューリン-NFAT経路が、休止細胞と比較して、SIPSのHDFでより上方制御されることを示す。シクロスポリンA(CsA)は、カルシニューリン-NFAT経路の強力な阻害剤であり、COX-2発現も下方制御することが以前に示された(Hernandezら、2001年;Lotzerら、2007年;YiuおよびToker、2006年)。
【0215】
これを試験するために、早期老化を、ドキソルビシンを有する包皮HDFにおいて誘発し、6日間成長培地に補充した。老化細胞除去物質での処置は、SIPS処置の完了の8日後に開始して、細胞が老化に入ることを可能にした。休止細胞を、対照として使用した。成長培地を、3日毎に培地を交換しながら、9日間老化細胞除去物質で補充した。対照を含む、全てのサンプルは、同濃度の溶媒(DMSO)を含有した。その後、生存率を、alamar blueアッセイ(Thermo Fisher Scientific)を使用して評価した。
【0216】
興味深いことに、2μMのCsA(Santa Cruz Biotechnology)の0.4mMのASAおよびMK886の併用処置への添加は、老化細胞に対するEC50を29.6μMから14.9μMへと低減し、老化細胞対休止細胞のEC50間の倍数変化を1.51から2.81へと高めた(図15および16)。
【0217】
したがって、それらをまとめると、脂質代謝を標的とする方法および組成物は、老化細胞を除去し、老化関連の疾患および障害を処置する有望な方式を示す。本結果は、AAを利用する酵素の阻害が、成人HDFおよび包皮HDF、ならびに新生児HUVECにおける老化細胞除去効果をもたらすことを示す。2つの報告された老化細胞除去剤ケルセチンおよびナビトクラックスは、ドキソルビシンに誘発された老化HUVECにおけるナビトクラックスを除いて、かなりの老化細胞除去活性を示さなかった。ナビトクラックスと対照的に、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼの阻害に対して報告された重篤な副作用はない。加えて、シクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼのデュアル阻害は、老化関連の疾患および障害を処置および予防する能力を独自にもたらす、成人起源の老化HDFでの相乗効果を示した。
【0218】
本明細書で示す通り、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼの阻害の老化細胞除去効果は、加えて、ATPシンターゼおよびカルシニューリンの同時阻害により増強することができた。AAを利用するか、またはAAレベルを操作する酵素および経路、例えば、シトクロムP450、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ、または脂肪酸エロンガーゼをさらに阻害することは、シクロオキシゲナーゼおよび/またはリポキシゲナーゼ阻害剤の老化細胞除去効果をさらに高める。
【0219】
実施例7:AAの定量分析
本明細書に記載される通り、老化細胞除去効果は、AAの細胞内レベルをある特定の閾値超に上昇させることによって、細胞死を誘発することに起因する。これは、代謝経路を利用するAAを阻害する前後に、休止細胞および老化細胞の細胞内AAレベルを測定することにより確認することができる。これは、同じ条件下で休止細胞では達しない、老化細胞の細胞内AAレベルを限界閾値超に上昇させることが予期される。細胞内AAレベルは、ELISA、質量分析、またはHPLCのような定量分析法を使用して定量化することができる。
【0220】
新規の老化細胞除去剤を、AAの細胞内レベルを測定する効果的なスクリーニングで同定することができるかどうかを確認するために、ELISA試験(Novus Biologicals;NBP2-66372)を、製造会社の説明書にしたがって使用して、最初に、上記の実施例で同定された新規の老化細胞除去剤が、実際に、細胞内AAの蓄積をもたらし、次に、化合物をスクリーニングし、老化HDFにおいてAAの細胞内レベルの増加を起こすことを確認した。
【0221】
予期される通り、AAの細胞内濃度は、対照の休止細胞と比較して、老化細胞でより高
く、COX-1/2阻害剤ジクロフェナクおよびALOX-5阻害剤MK886で6時間エイコサノイドの生成を遮断することにより、細胞内AAレベルを上昇させることができた(図17)。
【0222】
次いで、ELISAスクリーニングで同定される化合物の老化細胞除去効果を、COXおよびALOX阻害剤に対して上述される成人および包皮HDFにおける用量応答アッセイを使用して試験する。このような化合物はまた、AA代謝を標的とする老化細胞除去薬として使用される。
【0223】
実施例8:cPLA-活性を操作することによる老化細胞除去効果の救済
AA変換酵素に対する阻害剤の老化細胞除去効果が、老化細胞の上昇したPLA-活性に基づくので、休止細胞におけるPLA-活性の上昇、または老化細胞におけるPLA-活性の低下のいずれかは、AA変換酵素の阻害により誘発された細胞死に対する感受性の差をなくすはずである。
【0224】
ドキソルビシンに誘発された早期老化HDF76、HDF85、HDF161(SIPS)、および対照の休止細胞(Q)は、1μMのACSL4阻害剤トリアクシンC(TrC)および1μMのALOX5阻害剤MK886単独の組合せ、または2.5μMのA23187(cPLA活性剤)もしくは12.5μMのASB14780(cPLA阻害剤)のいずれかを添加してのいずれかで72時間処置した。ALOX5単独と組み合わせたACSL4阻害は、図11に示す通り、HDFにおいて著しい老化細胞除去効果を示した。
【0225】
本明細書で表すモデルに沿って、図18は、既に図11で観察された通り、1μMのTrc(ACSL4阻害剤)および1μMのMK886(ALOX5阻害剤)での併用処置の後、HDFにおける老化細胞除去効果を示す。老化細胞除去処置を、細胞質ゾルのホスホリパーゼAの公知の活性剤である2.5μMのA23187(Cayman Chemicals、Cay11016-1)と組み合わせた場合、老化細胞ならびに休止細胞の両方の生存率は低下し、同様のレベルに達し、したがって処置の老化細胞除去効果が消失した。これはまた、細胞質ゾルのホスホリパーゼAの酵素活性を、小分子阻害剤ASB14780(Sigma Aldrich、SML1913)により低下させた場合もそうなった。12.5μMのASB14780での処置は、老化細胞でのTrCおよびMK886の細胞障害作用を低下させた一方、休止細胞の生存率は、わずかな程度でしか影響を及ぼさなかった。これは、老化細胞の高いPLA-活性が、AA変換酵素に対する阻害剤の観察された老化細胞除去効果に関与することを示す。
【0226】
参照文献
【0227】
【表1-1】
【0228】
【表1-2】
【0229】
【表1-3】
【0230】
【表1-4】
【0231】
【表1-5】
【0232】
【表1-6】
【0233】
【表1-7】
【0234】
【表1-8】
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
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図11
図12
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図14
図15
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図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2023-11-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、およびACSBG2からなる群より選択される、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害する1つ以上の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
【請求項2】
長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、およびACSBG2からなる群より選択される、アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害する1つ以上の阻害剤;およびCOX-1、COX-2、またはリポキシゲナーゼのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
老化細胞が、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの高い細胞内レベルで特徴付けられる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
リゾホスファチジルコリンが、1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoSPC)、または1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPPC)である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
1つ以上の阻害剤が、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、セレコキシブ、シクロスポリンA、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、ナブメトン、ケトロラック、テノキシカム、トルメチン、ピロキシカム、フェノプロフェン、エトドラク、ナプロキセン、ジフルニサル、スプロフェン、ブロムフェナク、ケトプロフェン、ジホモ-γ-リノレン酸、イコサペント、フルルビプロフェン、メフェナム酸、サルサレート、スリンダク、サリチル酸、ルミラコキシブ、O-アセチル-L-セリン、フェナセチン、フルルビプロフェンメチルエステル、メタミゾール、ニトロアスピリン、メロキシカム、フルフェナム酸、オキサプロジン、チアプロフェン酸、サリチル酸マグネシウム、ジエチルカルバマジン、ロルノキシカム、カルプロフェン、フェニルブダゾン、ネパフェナク、アンチピリン、アントラフェニン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、トリフルサール、ニフルム酸、デキシブプロフェン、アセクロフェナック、アセメタシン、ドロキシカム、ロキソプロフェン、トルフェナム酸、デキスケトプロフェン、トロメタモール、タルニフルメート、プロパセタモール、サリチル酸トロラミン、サリチル酸フェニル、ブフェキサマク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メンチル、レナリドマイド、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、シミコキシブ、クロルフェネシン、クロドロン酸、セリシクリブ、ドロスピレノン、トリアムシノロン、ポマリドミド、パレコキシブ、フィロコキシブ、アクロフェナク、アダパレン、サリドマイド、エトリコキシブ、ロベナコキシブ、アサルアルデヒド、ザルトプロフェン、デラコキシブ、プラノプロフェン、アンフェナクナトリウム一水和物、アンピロキシカム、NS-398、次サリチル酸ビスマス、ジクロフェナクジエチルアミン、トロメタモール、ルテカルピン、サリシン、フェンブフェン、キサントフモール、フルニキシンメグルミン、およびニメスリドからなる群から選択されるCOX-1および/またはCOX-2阻害剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
1つ以上の阻害剤が、MK886、ジロイトン、マソプロコール、ジエチルカルバマジン、アゼラスチン、ベノキサプロフェン、ノルジヒドログアイアレチン酸、アビエチン酸、エスクレチン、モンテルカスト、ミノサイクリン、MLN-977、レイン、ジアセレイン、ナビキシモルス、ホスタマチニブ、AM103、DG031、フィボフラポン、AA-861、およびアトレロイトンからなる群から選択されるリポキシゲナーゼおよび/またはFLAP(ALOX5AP)阻害剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
1つ以上の阻害剤が、好ましくは、リコフェロン、ダルブフェロン、CI-987、S-2474、KME-4、ケブラジン酸、バルサラジド、メサラジン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、メクロフェナム酸、モルニフルマートジアリールピラゾール誘導体、チエノ[2,3-b]ピリジン誘導体、N-置換5-アミノサリシリシラミド、フラボコキシド、インドリジン誘導体、LQFM-091、ヒペルホリン、セラストロール、BW755C、テポキサリン、b-ボスウェリン酸、D-002、2,3-ジアリールキサントン、フェニドン、およびER-34122からなる群から選択されるデュアルシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ阻害剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害することが可能な1つ以上の阻害剤が、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、5-ブロモ-5’-フェニルスピロ[3H-1,3,4-チアジアゾール-2,3’-インドリン]-2-オン、CB2、CB5、CB6、CB16、NCI-3、および2-(6-ヒドロキシ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-1,3-チアゾール-4(5H)-オンからなる群から選択される阻害剤である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
アラキドン酸の細胞内の転換を阻害することが可能な追加の化合物を含み、前記追加の化合物が、
a)好ましくは、ウコン、ローズマリー、ショウガ、オレガノ、レスベラトロール、クルクミン、カンナビノイド、チョウセンニンジン、サポニン、テルペノイド、フラボノイド、ポリフェノール、イチョウ、カプサイシン、ゲニステイン、ケンフェロールからなる群から選択される天然化合物;
b)好ましくは、スルファフェナゾール、アバシミブ、ベンズブロマロン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、セルビスタチン、ワルファリン、ピオグリタゾン、ラパチニブ、トリメトプリム、ザフィルルカスト、アモジアキン、ニカルジピン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロラタジン、エチニルエストラジオール、イルベサルタン、キニーネ、ソラフェニブ、エルトロンボパグ、ロサルタン、リコフェロン、アミトリプチリン、アトルバスタチン、メフェナム酸、メロキシカム、ピロキシカム、エルロチニブ、パゾパニブ、ジエチルスチルベストロール、エンザルタミド、ポナチニブ、ダブラフェニブ、エナシデニブ、ロバスタチン、モンテルカスト、ケトコナゾール、フェロジピン、カンデサルタンシレキセチル、クロトリマゾール、モメタゾン、サルメテロール、ラロキシフェン、フェノフィブラート、レボチロキシン、タモキシフェン、オキシブチニン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ニフェジピン、リオトリックス、アムロジピン、ベザフィブラート、クロラムフェニコール、シクロスポリン、シメチジン、クロピドグレル、コレカルシフェロール、デラビルジン、デキストロプロポキシフェン、エトポシド、イソニアジド、ケトプロフェン、メトロニダゾール、ニルタミド、ニルバジピン、パロキセチン、フェネルジン、プラバスタチン、プロパフェノン、ピリメタミン、ロフェコキシブ、ルチン、サキナビル、スルファメトキサゾール、スルフィンピラゾン、テガセロド、テルフェナジン、チオリ
ダジン、チクロピジン、チオコナゾール、トリアゾラム、トロレアンドマイシン、バルプロ酸、アビラテロン、ビスモデギブ、レゴラフェニブ、トラメチニブ、イデラリシブ、ロピナビル、セレコキシブ、エファビレンツ、ラベプラゾール、テリフルノミド、クリサボロール、ベリノスタット、トピロキソスタット、カンデサルタン、レテルモビル、ルカパリブ、オピカポン、ナビロン、フルボキサミン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ボスチニブ、カボザンチニブ、ゲニステイン、レンバチニブ、アタザナビル、ベキサロテン、デフェラシロクス、キニジン、ミフェプリストン、ベムラフェニブ、シルデナフィル、ジクロフェナク、フルオキセチン、バルデコキシブ、ボリコナゾール、エトドラク、セルトラリン、グリブリド、アセノクマロール、ロスバスタチン、イマチニブ、クロザピン、ジアゼパム、プロゲステロン、オメプラゾール、バルサルタン、ボルテゾミブ、ネビラピン、アゼラスチン、ロルノキシカム、フェニルブダゾン、エトラビリン、レフルノミド、シタキセンタン、アミノフェナゾン、ベラパミル、エトリコキシブ、プロポフォール、スルファモキソール、ジクマロール、ジルチアゼム、ヒスタミン、モクロベミド、セレギリン、パレコキシブ、ドコネキセント、アセチルスルフィソキサゾール、フルコナゾール、パントプラゾール、デスロラタジン、ミコナゾール、アミオダロン、ゲムフィブロジル、プロベネシド、テニポシド、スルファジアジン、カペシタビン、フルオロウラシル、トラニルシプロミン、アナストロゾール、アトバコン、シクリジン、デクスフェンフルラミン、ジスルフィラム、エピネフリン、エプロサルタン、フレカイニド、インジナビル、メタゾラミド、ネルフィナビル、オランザピン、プランルカスト、プロメタジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファピリジン、メチマゾール、トルカポン、ビカルタミド、アルモダフィニル、アゴメラチン、ノスカピン、クレビジピン、スルコナゾール、ゲフィチニブ、チカグレロル、セリチニブ、フロクスウリジン、リフィテグラスト、レイン、ジアセレイン、ズカプサイシン、スチリペントール、ロベグリタゾン、ドスレピン、マニジピン、ブラックコホシュ、クルクミン、フェルバメート、ピペリン、サフィナミド、イプロニアジド、オリタバンシン、マソルポコール、およびペグビソマントからなる群から選択される、シトクロムP450の阻害剤;
c)好ましくは、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、およびロシグリタゾンからなる群から選択される、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤;
d)好ましくは、N-フェニルマレイミド誘導体、TSI-01、およびチメロサールからなる群から選択される、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤、具体的には、LPCAT1、LPCAT2、LPCAT3、LPCAT4、MBOAT2、および/もしくはMBOAT7の阻害剤;ならびに/または
e)好ましくは、シクロエート、アデノシン5’-ヘキサデシルホスフェート、エンド-1k、(S)-イル、および化合物37、5,5-ジメチル-3-(5-メチル-3-オキソ-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル)-1-フェニル-3-(トリフルオロメチル-3,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インドール-2,4-ジオン)、および(3-エンド)-3-(フェニルスルホニル)-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキサミドからなる群から選択される、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤、具体的にはELOVL2、ELOVL4、および/もしくはELOVL5の阻害剤
からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物を含み、前記追加の化合物が、
a)好ましくは、オリゴマイシンA、ニコチン酸イノシトール、ベダキリン、エフラペプチン、ロイシノスタチン、テントキシン、テントキシン誘導体、アンジオスタチン、エンテロスタチン、メリチン、IF、Syn-A2、Syn-C、レスベラトロール、ピ
セアタンノール、ジエチルスチルベストロール、4-アセトアミド-4’-イソチオシアノスチルベン-2,2’-ジスルホネート、4,4’-D-イソチオシアナトスチルベン-2,2-ジスルホン酸、ケンフェロール、モリン、アピゲニン、ゲニステイン、ビオカニンA、ダイゼイン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、プロアントシアニジン、クルクミン、フロレチン、テアフラビン、タンニン酸、4-ヒドロキシ-エストラジオール、2-ヒドロキシ-エストラジオール、17α-エストラジオール、17β-エストラジオール、α-ゼアラレノール、β-ゼアラレノール、オリゴマイシン、ベンツリシジン、アポプトリジン、オサマイシン、シトバリシン、ペリオマイシン、トリブチルスズ塩化物、水酸化トリシクロヘキシルスズ、硫酸トリエチルスズ、トリフェニルスズ塩化物、ジメチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3-ヒドロキシフラボン臭化物、ジオクチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジフェニルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン臭化物、ジフェニルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、トリブチルスズ3-ヒドロキシフラボン、トリエチル鉛、オーロベルチン、シトレオビリジン、アステルトキシン、ローダミンB、ローダミン123、ローダミン6G、ロザニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、キナクリン、キナクリンマスタード、アクリジンオレンジ、コリホスフィン、ピロニンY、デカリニウム、サフラニンO、ナイルブルーA、臭化エチジウム、テトラカイン、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、クロルプロマジン、トリフルオペラジン、プロカインアミド、プロプラノロール、オクチルグアニジン、1-ダンシルアミド-3-ジメチルプロピルアミン化合物、セチルトリメチルアンモニウム、スペルミン、スペルミジン、バトフェナントロリン-金属キレート、4,4-ジフェニル-2,2-ビピリジン、3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジン、アトラジン、アトラジンアミノ誘導体、アルセネート、フッ化アルミニウム、フッ化ベリリウム、フッ化スカンジウム、バナデート、フッ化マグネシウム、亜硫酸塩、チオホスフェート、アジド、ANPP、フェニルグリオキサール、ブタンジオン、ダンシル塩化物、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、ジカルボポリボレート、アルミトリン、5-ヒドロキシ-1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、R207910、スペガッジニン、n-ブタノール、テトラクロロサリチルアニリド、ジヒドロストレプトマイシン、スラミン、Bz-423、DMSO、次亜塩素酸、DDT、ジアゾキシド、HNB、N-スルホニルもしくはN-アルキル置換テトラヒドロベンゾジアゼピン誘導体、4-(N-アリールイミダゾール)-置換ベンゾピラン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-シアノグアニジン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-アシルグアニジン誘導体、O-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-チオウレタン誘導体、dio-9複合体、エタノール、および亜鉛からなる群から選択される、ATPシンターゼの阻害剤;
b)好ましくは、クロドロン酸、イビピナバント、アトラクチロシド、カルボキシアトラクチロシド、ボンクレキン酸、イソボンクレキン酸、MT-21、クロサンテル、CD437、リーラミン、L923-0673、IMD0354、PI32-0333、S899542、ノナクチン、およびS838462からなる群から選択される、ADP/ATPトランスロカーゼの阻害剤;
c)好ましくは、2-デオキシ-D-グルコース、ロニダミン、ブロモピルビン酸、フロレチン、STF-31、WZB117、3PO、3-ブロモピルベート、ジクロロアセテート、オキサミン酸、NHI-1、オキシチアミン、イマチニブ、グルコサミン、6-アミノニコチンアミド、ゲニステイン、5-チオグルコース、マンノヘプツロース、α-クロロヒドリン、オルニダゾール、オキサレート、グルフォスファミド、N-(ホスホンアセチル)-L-アスパルテート、6-メチルメルカプトプリンリボシド、CGP3466Bマレエート、モノフルオロリン酸ナトリウム、DASA-58、DL-セリン、ジクロロ酢酸、ジクロロ酢酸ナトリウム、ニトロフラール、6-AN、ファセンチン、ベンセ
ラジド、アストラガリン、レスベラトロール、クリシン、GEN-27、アピゲニン、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチル硫化物、CB-839、アザセリン、アシビシン、6-ジアゾ-5-ox-L-ノルロイシン、チアゾリジン-2,4-ジオン誘導体、化合物968、R-リポ酸、1,3,4-チアジアゾール化合物、2-クロロプロピオネート、Nov3r、AZD7545、Pfz3、ラジシコール、ミタプラチン、mito-DCA、フェニルブチレート、4,5-ジアリールイソオキサゾール、VER-246608、ベツリン酸、ホスフィネートまたはホスホナート基を含有するピルベート類似体、CPI-613、M77976、芳香族DCA誘導体、フランおよびチオフェンカルボン酸、リトナビル、FX11、オキサメート、D-フルクトース-6-ホスフェート、6-ホスホグルコン酸、N-ブロモアセチル-アミノエチルホスフェート、2-カルボキシエチルホスホン酸、N-ヒドロキシ-4-ホスホノ-ブタンアミド、2-ホスホグリセリン酸、ヨードアセテート、ゴシポール、ベンゼンヘキサカルボン酸、3-ホスホグリセリン酸、ホスホノアセトヒドロキサム酸、2-ホスホ-D-グリセリン酸、TLN-232、ならびにCAP-232からなる群から選択される、グリコリシスの阻害剤
からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
老化関係の疾患もしくは状態の発症を予防もしくは遅延するか、または老化関係の疾患もしくは状態の進行を予防もしくは遅延するか、または老化関係の疾患もしくは状態の退行を促進する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
老化関係の疾患または状態が、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、がん、骨粗鬆症、変形性関節症、神経障害、認知症、白内障、腎疾患、網膜症、糖尿病、肺線維症、肝線維症、椎間板ヘルニア、加齢性筋萎縮、脱毛、または皮膚老化である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
移植の成績を改善する、および/または、老化関連の瘢痕形成および線維症を予防または減弱する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
老化関連の瘢痕形成および線維症を予防または減弱する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
化学療法の副作用を改善し、腫瘍の再発を予防または遅延する、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0172
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0172】
本明細書に記載の実施例は、本発明の説明であり、その限定を意図するものではない。本発明の異なる実施形態は、本発明にしたがって記載される。本明細書で記載および図示した技術に対して、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの変形および変更がなされ得る。したがって、実施例が、単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解すべきである。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]シクロオキシゲナーゼ1(COX-1)、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)、およびリポキシゲナーゼのうちの少なくとも2つを阻害することが可能な1つ以上の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
[態様2]アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、またはACSBG2を阻害することが可能な1つ以上の阻害剤を含む、老化細胞の選択的な除去での使用のための組成物。
[態様3]アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素、具体的には長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ(ACSL)1、ACSL3、ACSL4、ACSL5、ACSL6、SLC27A2、またはACSBG2を阻害することが可能な1つ以上の阻害剤、およびCOX-1、COX-2、またはリポキシゲナーゼのうちの少なくとも1つを含む、態様2に記載の使用のための組成物。
[態様4]老化細胞が、リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの高い細胞内レベルで特徴付けられる、態様1~3のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様5]リゾホスファチジルコリンが、1-ステアロイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoSPC)、または1-パルミトイル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(LysoPPC)である、態様4に記載の使用のための組成物。
[態様6]1つ以上の阻害剤が、アセチルサリチル酸、ジクロフェナク、セレコキシブ、シクロスポリンA、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、ナブメトン、ケトロラック、テノキシカム、トルメチン、ピロキシカム、フェノプロフェン、エトドラク、ナプロキセン、ジフルニサル、スプロフェン、ブロムフェナク、ケトプロフェン、ジホモ-γ-リノレン酸、イコサペント、フルルビプロフェン、メフェナム酸、サルサレート、スリンダク、サリチル酸、ルミラコキシブ、O-アセチル-L-セリン、フェナセチン、フルルビプロフェンメチルエステル、メタミゾール、ニトロアスピリン、メロキシカム、フルフェナム酸、オキサプロジン、チアプロフェン酸、サリチル酸マグネシウム、ジエチルカルバマジン、ロルノキシカム、カルプロフェン、フェニルブダゾン、ネパフェナク、アンチピリン、アントラフェニン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、トリフルサール、ニフルム酸、デキシブプロフェン、アセクロフェナック、アセメタシン、ドロキシカム、ロキソプロフェン、トルフェナム酸、デキスケトプロフェン、トロメタモール、タルニフルメート、プロパセタモール、サリチル酸トロラミン、サリチル酸フェニル、ブフェキサマク、サリチル酸グリコール、サリチル酸メンチル、FK-506、レナリドマイド、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、シミコキシブ、クロルフェネシン、クロドロン酸、セリシクリブ、ドロスピレノン、トリアムシノロン、ポマリドミド、パレコキシブ、フィロコキシブ、アクロフェナク、アダパレン、サリドマイド、エトリコキシブ、ロベナコキシブ、アサルアルデヒド、ザルトプロフェン、デラコキシブ、デキサメタゾン、プラノプロフェン、アンフェナクナトリウム一水和物、アンピロキシカム、NS-398、次サリチル酸ビスマス、ジクロフェナクジエチルアミン、トロメタモール、ルテカルピン、サリシン、フェンブフェン、キサントフモール、フルニキシンメグルミン、およびニメスリドからなる群から選択されるCOX-1および/またはCOX-2阻害剤である、態様1~5のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様7]1つ以上の阻害剤が、MK886、ジロイトン、マソプロコール、ジエチルカルバマジン、アゼラスチン、ベノキサプロフェン、ノルジヒドログアイアレチン酸、アビエチン酸、エスクレチン、モンテルカスト、ミノサイクリン、MLN-977、レイン、ジアセレイン、ナビキシモルス、ホスタマチニブ、AM103、DG031、フィボフラポン、AA-861、およびアトレロイトンからなる群から選択されるリポキシゲナーゼおよび/またはFLAP(ALOX5AP)阻害剤である、態様1~6のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様8]1つ以上の阻害剤が、好ましくは、リコフェロン、ダルブフェロン、CI-987、S-2474、KME-4、ケブラジン酸、バルサラジド、メサラジン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、メクロフェナム酸、モルニフルマートジアリールピラゾール誘導体、チエノ[2,3-b]ピリジン誘導体、N-置換5-アミノサリシリシラミド、フラボコキシド、インドリジン誘導体、LQFM-091、ヒペルホリン、セラストロール、BW755C、テポキサリン、b-ボスウェリン酸、D-002、2,3-ジアリールキサントン、フェニドン、およびER-34122からなる群から選択されるデュアルシクロオキシゲナーゼおよびリポキシゲナーゼ阻害剤である、態様1~7のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様9]アラキドン酸-CoAリガーゼ活性を有する酵素を阻害することが可能な1つ以上の阻害剤が、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、トリアクシンCの類似体、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、5-ブロモ-5’-フェニルスピロ[3H-1,3,4-チアジアゾール-2,3’-インドリン]-2-オン、CB2、CB5、CB6、CB16、NCI-3、CB2、CB5、CB6、CB16の類似体、および2-(6-ヒドロキシ-1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-1,3-チアゾール-4(5H)-オンからなる群から選択される阻害剤である、態様2~8のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様10]アラキドン酸の細胞内の転換を阻害することが可能な追加の化合物を含み、前記追加の化合物が、
a)好ましくは、ウコン、ローズマリー、ショウガ、オレガノ、レスベラトロール、クルクミン、カンナビノイド、チョウセンニンジン、サポニン、テルペノイド、フラボノイド、ポリフェノール、イチョウ、カプサイシン、ゲニステイン、ケンフェロールからなる群から選択される天然化合物;
b)好ましくは、スルファフェナゾール、アバシミブ、ベンズブロマロン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、セルビスタチン、ワルファリン、ピオグリタゾン、ラパチニブ、トリメトプリム、ザフィルルカスト、アモジアキン、ニカルジピン、シンバスタチン、フルバスタチン、ロラタジン、エチニルエストラジオール、イルベサルタン、キニーネ、ソラフェニブ、エルトロンボパグ、ロサルタン、リコフェロン、アミトリプチリン、アトルバスタチン、メフェナム酸、メロキシカム、ピロキシカム、エルロチニブ、パゾパニブ、ジエチルスチルベストロール、エンザルタミド、ポナチニブ、ダブラフェニブ、エナシデニブ、ロバスタチン、モンテルカスト、ケトコナゾール、フェロジピン、カンデサルタンシレキセチル、クロトリマゾール、モメタゾン、サルメテロール、ラロキシフェン、フェノフィブラート、レボチロキシン、タモキシフェン、オキシブチニン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ニフェジピン、リオトリックス、アムロジピン、ベザフィブラート、クロラムフェニコール、シクロスポリン、シメチジン、クロピドグレル、コレカルシフェロール、デラビルジン、デキストロプロポキシフェン、エトポシド、イソニアジド、ケトプロフェン、メトロニダゾール、ニルタミド、ニルバジピン、パロキセチン、フェネルジン、プラバスタチン、プロパフェノン、ピリメタミン、ロフェコキシブ、ルチン、サキナビル、スルファメトキサゾール、スルフィンピラゾン、テガセロド、テルフェナジン、チオリダジン、チクロピジン、チオコナゾール、トリアゾラム、トロレアンドマイシン、バルプロ酸、アビラテロン、ビスモデギブ、レゴラフェニブ、トラメチニブ、イデラリシブ、ロピナビル、セレコキシブ、エファビレンツ、ラベプラゾール、テリフルノミド、クリサボロール、ベリノスタット、トピロキソスタット、カンデサルタン、レテルモビル、ルカパリブ、オピカポン、ナビロン、フルボキサミン、フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ボスチニブ、カボザンチニブ、ゲニステイン、レンバチニブ、アタザナビル、ベキサロテン、デフェラシロクス、キニジン、ミフェプリストン、ベムラフェニブ、シルデナフィル、ジクロフェナク、フルオキセチン、バルデコキシブ、ボリコナゾール、エトドラク、セルトラリン、グリブリド、アセノクマロール、ロスバスタチン、イマチニブ、クロザピン、ジアゼパム、プロゲステロン、オメプラゾール、バルサルタン、ボルテゾミブ、ネビラピン、アゼラスチン、ロルノキシカム、フェニルブダゾン、エトラビリン、レフルノミド、シタキセンタン、アミノフェナゾン、ベラパミル、エトリコキシブ、プロポフォール、スルファモキソール、ジクマロール、ジルチアゼム、ヒスタミン、モクロベミド、セレギリン、パレコキシブ、ドコネキセント、アセチルスルフィソキサゾール、フルコナゾール、パントプラゾール、デスロラタジン、ミコナゾール、アミオダロン、ゲムフィブロジル、プロベネシド、テニポシド、スルファジアジン、カペシタビン、フルオロウラシル、トラニルシプロミン、アナストロゾール、アトバコン、シクリジン、デクスフェンフルラミン、ジスルフィラム、エピネフリン、エプロサルタン、フレカイニド、インジナビル、メタゾラミド、ネルフィナビル、オランザピン、プランルカスト、プロメタジン、スルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファニルアミド、スルファピリジン、メチマゾール、トルカポン、ビカルタミド、アルモダフィニル、アゴメラチン、ノスカピン、クレビジピン、スルコナゾール、ゲフィチニブ、チカグレロル、セリチニブ、フロクスウリジン、リフィテグラスト、レイン、ジアセレイン、ズカプサイシン、スチリペントール、ロベグリタゾン、ドスレピン、マニジピン、ブラックコホシュ、クルクミン、フェルバメート、ピペリン、サフィナミド、イプロニアジド、オリタバンシン、マソルポコール、およびペグビソマントからなる群から選択される、シトクロムP450の阻害剤;
c)好ましくは、トリアクシンA、トリアクシンB、トリアクシンC、トリアクシンD、トリアクシンCの類似体、N-エチルマレイミド、2-フルオロパルミチン酸、トログリタゾン、シグリタゾン、ピオグリタゾン、およびロシグリタゾンからなる群から選択される、長鎖脂肪酸-CoAリガーゼ4(ACSL4)の阻害剤;
d)好ましくは、N-フェニルマレイミド誘導体、TSI-01、およびチメロサールからなる群から選択される、リゾホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼの阻害剤、具体的には、LPCAT1、LPCAT2、LPCAT3、LPCAT4、MBOAT2、および/もしくはMBOAT7の阻害剤;ならびに/または
e)好ましくは、シクロエート、アデノシン5’-ヘキサデシルホスフェート、エンド-1k、(S)-イル、および化合物37、5,5-ジメチル-3-(5-メチル-3-オキソ-2-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル)-1-フェニル-3-(トリフルオロメチル-3,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インドール-2,4-ジオン)、および(3-エンド)-3-(フェニルスルホニル)-N-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-カルボキサミドからなる群から選択される、脂肪酸エロンガーゼの阻害剤、具体的にはELOVL2、ELOVL4、および/もしくはELOVL5の阻害剤
からなる群から選択される、態様1~9のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様11]細胞内のATPレベルを操作することが可能な追加の化合物を含み、前記追加の化合物が、
a)好ましくは、オリゴマイシンA、ニコチン酸イノシトール、ベダキリン、エフラペプチン、ロイシノスタチン、テントキシン、テントキシン誘導体、アンジオスタチン、エンテロスタチン、メリチン、IF、Syn-A2、Syn-C、レスベラトロール、ピセアタンノール、ジエチルスチルベストロール、4-アセトアミド-4’-イソチオシアノスチルベン-2,2’-ジスルホネート、4,4’-D-イソチオシアナトスチルベン-2,2-ジスルホン酸、ケンフェロール、モリン、アピゲニン、ゲニステイン、ビオカニンA、ダイゼイン、没食子酸エピカテキン、没食子酸エピガロカテキン、プロアントシアニジン、クルクミン、フロレチン、テアフラビン、タンニン酸、4-ヒドロキシ-エストラジオール、2-ヒドロキシ-エストラジオール、17α-エストラジオール、17β-エストラジオール、α-ゼアラレノール、β-ゼアラレノール、オリゴマイシン、ベンツリシジン、アポプトリジン、オサマイシン、シトバリシン、ペリオマイシン、トリブチルスズ塩化物、水酸化トリシクロヘキシルスズ、硫酸トリエチルスズ、トリフェニルスズ塩化物、ジメチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3-ヒドロキシフラボン臭化物、ジオクチルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジフェニルスズ3-ヒドロキシフラボン塩化物、ジエチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、ジブチルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン臭化物、ジフェニルスズ3,5,7,2’,4’-ペンタヒドロキシフラボン塩化物、トリブチルスズ3-ヒドロキシフラボン、トリエチル鉛、オーロベルチン、シトレオビリジン、アステルトキシン、ローダミンB、ローダミン123、ローダミン6G、ロザニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、キナクリン、キナクリンマスタード、アクリジンオレンジ、コリホスフィン、ピロニンY、デカリニウム、サフラニンO、ナイルブルーA、臭化エチジウム、テトラカイン、ジブカイン、プロカイン、リドカイン、クロルプロマジン、トリフルオペラジン、プロカインアミド、プロプラノロール、オクチルグアニジン、1-ダンシルアミド-3-ジメチルプロピルアミン化合物、セチルトリメチルアンモニウム、スペルミン、スペルミジン、バトフェナントロリン-金属キレート、4,4-ジフェニル-2,2-ビピリジン、3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジン、アトラジン、アトラジンアミノ誘導体、アルセネート、フッ化アルミニウム、フッ化ベリリウム、フッ化スカンジウム、バナデート、フッ化マグネシウム、亜硫酸塩、チオホスフェート、アジド、ANPP、フェニルグリオキサール、ブタンジオン、ダンシル塩化物、1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、ジカルボポリボレート、アルミトリン、5-ヒドロキシ-1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、R207910、スペガッジニン、n-ブタノール、テトラクロロサリチルアニリド、ジヒドロストレプトマイシン、スラミン、Bz-423、DMSO、次亜塩素酸、DDT、ジアゾキシド、HNB、N-スルホニルもしくはN-アルキル置換テトラヒドロベンゾジアゼピン誘導体、4-(N-アリールイミダゾール)-置換ベンゾピラン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-シアノグアニジン誘導体、N-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-アシルグアニジン誘導体、O-[1-アリール-2-(1-イミダゾロ)エチル]-チオウレタン誘導体、dio-9複合体、エタノール、および亜鉛からなる群から選択される、ATPシンターゼの阻害剤;
b)好ましくは、クロドロン酸、イビピナバント、アトラクチロシド、カルボキシアトラクチロシド、ボンクレキン酸、イソボンクレキン酸、MT-21、クロサンテル、CD437、リーラミン、L923-0673、IMD0354、PI32-0333、S899542、ノナクチン、およびS838462からなる群から選択される、ADP/ATPトランスロカーゼの阻害剤;
c)好ましくは、2-デオキシ-D-グルコース、ロニダミン、ブロモピルビン酸、フロレチン、STF-31、WZB117、3PO、3-ブロモピルベート、ジクロロアセテート、オキサミン酸、NHI-1、オキシチアミン、イマチニブ、グルコサミン、6-アミノニコチンアミド、ゲニステイン、5-チオグルコース、マンノヘプツロース、α-クロロヒドリン、オルニダゾール、オキサレート、グルフォスファミド、N-(ホスホンアセチル)-L-アスパルテート、6-メチルメルカプトプリンリボシド、CGP3466Bマレエート、モノフルオロリン酸ナトリウム、DASA-58、DL-セリン、ジクロロ酢酸、ジクロロ酢酸ナトリウム、ニトロフラール、6-AN、ファセンチン、ベンセラジド、アストラガリン、レスベラトロール、クリシン、GEN-27、アピゲニン、ビス-2-(5-フェニルアセトアミド-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)エチル硫化物、CB-839、アザセリン、アシビシン、6-ジアゾ-5-ox-L-ノルロイシン、チアゾリジン-2,4-ジオン誘導体、化合物968、R-リポ酸、1,3,4-チアジアゾール化合物、2-クロロプロピオネート、Nov3r、AZD7545、Pfz3、ラジシコール、ミタプラチン、mito-DCA、フェニルブチレート、4,5-ジアリールイソオキサゾール、VER-246608、ベツリン酸、ホスフィネートまたはホスホナート基を含有するピルベート類似体、CPI-613、M77976、芳香族DCA誘導体、フランおよびチオフェンカルボン酸、リトナビル、FX11、オキサメート、D-フルクトース-6-ホスフェート、6-ホスホグルコン酸、N-ブロモアセチル-アミノエチルホスフェート、2-カルボキシエチルホスホン酸、N-ヒドロキシ-4-ホスホノ-ブタンアミド、2-ホスホグリセリン酸、ヨードアセテート、ゴシポール、1,3-ビスホスホグリセリン酸のビスホスホネート類似体、ベンゼンヘキサカルボン酸、3-ホスホグリセリン酸、ホスホノアセトヒドロキサム酸、2-ホスホ-D-グリセリン酸、TLN-232、ならびにCAP-232からなる群から選択される、グリコリシスの阻害剤
からなる群から選択される、態様1~10のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様12]老化関係の疾患もしくは状態の発症を予防もしくは遅延するか、または老化関係の疾患もしくは状態の進行を予防もしくは遅延するか、または老化関係の疾患もしくは状態の退行を促進する、態様1~11のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様13]老化関係の疾患または状態が、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、がん、骨粗鬆症、変形性関節症、神経障害、認知症、白内障、腎疾患、網膜症、糖尿病、肺線維症、脊椎の皮膚変性、加齢性筋萎縮、脱毛、または皮膚老化である、態様12に記載の使用のための組成物。
[態様14]移植の成績を改善する、態様1~11のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様15]老化関連の瘢痕形成および線維症を予防または減弱する、態様1~11のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様16]化学療法の副作用を改善し、腫瘍の再発を予防または遅延する、態様1~11のいずれか1に記載の使用のための組成物。
[態様17]対象において老化細胞を同定するインビトロ方法であって、
a)前記対象のサンプルを準備するステップ、
b)前記対象においてリゾホスファチジル-コリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルを決定するステップ、
c)b)のレベルを基準レベルと比較するステップ
を含み、基準レベルが、非老化細胞におけるリゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のうちの少なくとも1つの細胞内レベルであり、
リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸、および/またはホスホリパーゼA2活性のレベルでの少なくとも2倍の増加が、前記サンプルにおける老化細胞の存在を示している、
上記方法。
[態様18]老化細胞を除去するための候補化合物をスクリーニングする方法であって、
a)少なくとも1つの試験化合物を、老化細胞のサンプルと接触させるステップ、
b)アラキドン酸の細胞内レベルを測定する、および/またはアポトーシスを測定する、および/または細胞生存率を測定するステップ、ならびに
c)未処置の老化細胞と比較して、試験化合物と接触させた老化細胞において、アラキドン酸の細胞内蓄積、高いアポトーシス、および/または低い細胞生存率を起こす試験化合物を選択するステップ
を含む、上記方法。
【外国語明細書】