(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124022
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】服装判定装置、服装判定方法、及び、服装判定装置のためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08C 15/00 20060101AFI20240905BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20240905BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20240905BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240905BHJP
G06T 7/11 20170101ALI20240905BHJP
【FI】
G08C15/00 D
A41D13/00
A41D1/00 C
G06T7/00 660B
G06T7/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031902
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】花田 大
【テーマコード(参考)】
2F073
3B030
3B211
5L096
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
2F073AA19
2F073AA40
2F073AB01
2F073AB04
2F073BB01
2F073BB04
2F073BB07
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CC14
2F073CD11
2F073EE01
2F073FF01
2F073FF12
2F073FG01
2F073FG02
2F073FG11
2F073GG01
2F073GG08
3B030AB05
3B030AB08
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC13
5L096BA08
5L096FA02
(57)【要約】
【課題】行動目的に適した服装であるか否かの判定がより的確にできるようになる服装判定装置を提供する。
【解決手段】服装判定装置200は、体温特定部240と2次判定部250とを備える。体温特定部240は、被写体となる人の可視映像110より服装が重装と判定された際、被写体の骨格情報230を基に被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を被写体の赤外線映像120を用いて特定する。2次判定部250は、可視映像110より服装が重装と判定された人に対して、特定された上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、上腿部および下腿部の領域の各温度より、服装が軽装か否かを再度判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体となる人の可視映像より服装が重装と判定された際、前記被写体の骨格情報を基に前記被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、前記被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を前記被写体の赤外線映像を用いて特定する体温特定部と、
前記可視映像より服装が重装と判定された人に対して、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の領域の各温度、および/または、前記上腿部および前記下腿部の領域の各温度より、前記服装が軽装か否かを再度判定する2次判定部と、
を備える服装判定装置。
【請求項2】
前記可視映像より前記被写体の骨格判定を行い、前記骨格判定に基づき前記被写体の前記上腕部および前記前腕部の各領域、および、前記上腿部および前記下腿部の各領域を特定する骨格判定部をさらに備え、
前記体温特定部は、前記骨格判定部により特定された前記被写体の前記上腕部および前記前腕部の各領域、および/または、前記被写体の前記上腿部および前記下腿部の各領域にて、前記赤外線映像より各部の温度を特定する、
請求項1に記載の服装判定装置。
【請求項3】
前記2次判定部は、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の各領域の温度差、および/または、前記上腿部および前記下腿部の各領域の温度差が所定値以上の場合、前記服装が軽装と判定する、
請求項1に記載の服装判定装置。
【請求項4】
前記体温特定部は、前記上腕部の領域の複数点の温度の平均値を前記上腕部の領域の温度とし、前記前腕部の領域の複数点の温度の平均値を前記前腕部の領域の温度とし、前記上腿部の領域の複数点の温度の平均値を前記上腿部の領域の温度とし、前記下腿部の領域の複数点の温度の平均値を前記下腿部の領域の温度とする、
請求項3に記載の服装判定装置。
【請求項5】
前記被写体の服装が軽装と判定された際、発報を行う発報部をさらに備える、請求項1に記載の服装判定装置。
【請求項6】
前記発報部による発報は、定められた監視員への通知書、定められた監視員への前記被写体の前記可視映像の送信、注意喚起を行う音声再生、ドローンによる前記被写体に対する追跡指令、または、それらの組み合わせである、請求項5に記載の服装判定装置。
【請求項7】
前記可視映像より服装が軽装か否かを判定する1次判定部をさらに備え、
前記発報部は、前記1次判定部または前記2次判定部が前記服装を軽装と判定した際に、前記発報を行う、
請求項5に記載の服装判定装置。
【請求項8】
前記被写体の前記可視映像と前記赤外線映像は、1台のカメラで撮影された映像である、
請求項1から7のいずれか1項に記載の服装判定装置。
【請求項9】
被写体となる人の可視映像より服装が重装と判定された際、前記被写体の骨格情報を基に前記被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、前記被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を前記被写体の赤外線映像を用いて特定し、
前記可視映像より服装が重装と判定された人に対して、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の領域の各温度、および/または、前記上腿部および前記下腿部の領域の各温度より、前記服装が軽装か否かを再度判定する、
コンピュータによる服装判定方法。
【請求項10】
服装判定装置のためのコンピュータプログラムであって、
被写体となる人の可視映像より服装が重装と判定された際、前記被写体の骨格情報を基に前記被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、前記被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を前記被写体の赤外線映像を用いて特定し、
前記可視映像より服装が重装と判定された人に対して、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の領域の各温度、および/または、前記上腿部および前記下腿部の領域の各温度より、前記服装が軽装か否かを再度判定する、
ことをプロセッサに実行させる、服装判定装置のためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服装判定装置、服装判定方法、及び、服装判定装置のためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
山岳や森林等への登山やハイキングを楽しむ人、あるいは、被災があった際にボランティアにて貢献したいと考える人が増えつつある。これらの人の中には、登山やハイキング、被災地でのボランティアなどにおける経験が乏しい人も少なくない。そのため、登山やハイキング、ボランティアを行う際に適切な服装で臨まない人も含まれ、結果として、それらの人における危険が伴うこともある。よって、登山やハイキング、ボランティアに向かう人の危険や被災を防止するためにも事前の服装の確認が重要となる。しかし、登山者やハイカー、ボランティア等に対する人手による服装確認は、人手不足の際には十分に機能しない。そのため、行動目的にあった服装をしているか否かの自動的な確認を補助するためのシステムが望まれている。
【0003】
特許文献1は、空調制御のために撮像した室内画像から特定した各人のそれぞれの着衣状態を、サーモグラフィ機能等により求めることを開示する。また、特許文献1は、着衣状態をサーモグラフィではなく、可視光を利用して求めてもよい旨も開示する。特許文献2は、車両の空調管理のためにCCDカメラより乗員の輪郭を抽出し、抽出された輪郭より運転者の上半身、下半身の温度分布を求めて運転者の服を判定する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-063058号公報
【特許文献2】特開2005―104221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、登山やハイキング、ボランティア等に向かう際の服装は、単に服やズボンの丈の長、すなわち半袖か長袖か、半ズボンか長ズボンかだけの判定では十分とは言えない場合も多い。特許文献1および特許文献2に開示の発明は、単に上着の袖丈の長さ(半袖、長袖)やズボンの総丈の長さ(半ズボン、長ズボン)を判定するのみである。そのため、登山やハイキング、ボランティア等に向かう際の服装として適切な服装であるか否かを正しく判定できないケースもあり、行動目的に適した服装であるか否か判定をできるようにする必要がある。
【0006】
そこでこの発明は、上述の課題を解決すべくなされたもので、服装判定装置、服装判定方法、及び、服装判定装置のためのコンピュータプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、服装判定装置は、被写体となる人の可視映像より服装が重装と判定された際、前記被写体の骨格情報を基に前記被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、前記被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を前記被写体の赤外線映像を用いて特定する体温特定部と、前記可視映像より服装が重装と判定された人に対して、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の領域の各温度、および/または、前記上腿部および前記下腿部の領域の各温度より、前記服装が軽装か否かを再度判定する2次判定部と、を備える。
【0008】
また、本発明の第2の態様によれば、コンピュータによる服装判定方法は、被写体となる人の可視映像より服装が重装と判定された際、前記被写体の骨格情報を基に前記被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、前記被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を前記被写体の赤外線映像を用いて特定し、前記可視映像より服装が重装と判定された人に対して、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の領域の各温度、および/または、前記上腿部および前記下腿部の領域の各温度より、前記服装が軽装か否かを再度判定する。
【0009】
また、本発明の第3の態様によれば、服装判定装置のためのコンピュータプログラムは、被写体となる人の可視映像より服装が重装と判定された際、前記被写体の骨格情報を基に前記被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、前記被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を前記被写体の赤外線映像を用いて特定し、前記可視映像より服装が重装と判定された人に対して、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の領域の各温度、および/または、前記上腿部および前記下腿部の領域の各温度より、前記服装が軽装か否かを再度判定する、ことをプロセッサに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、行動目的に適した服装であるか否かの判定がより的確にできるようになる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における服装判定装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における服装判定装置の処理動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態における服装判定装置による人の各部の説明と、各部の温度の特定を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態における服装判定装置を実現する際のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による服装判定装置の最小構成図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による服装判定装置について、図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による服装判定装置を含むシステムの構成を示すブロック図である。
図1に示すシステムは、入力装置100と服装判定装置200とを含む。
【0013】
入力装置100は、被写体となる人の撮影のために用いられる。また、入力装置100は、可視光での撮影用カメラと赤外線サーモグラフィカメラとを含む。なお、入力装置100は、被写体の可視光での撮影画像とサーモグラフィとなる赤外線映像との対応がとりやすいよう、両機能を備えた一体型のカメラであることが好ましい。入力装置100は、撮影された可視映像110と赤外線映像120とを服装判定装置200へ入力情報として出力する機能も備える。また、入力装置100は、可視映像110と赤外線映像120とを一時的ないしは所定期間蓄積する機能を備えてもよい。なお、入力装置100にて撮影された可視映像110と赤外線映像120とは、撮影時間等により対応付け可能とする。
【0014】
服装判定装置200は、1次判定部210、骨格判定部220、骨格情報230、体温特定部240、2次判定部250、発報部260から構成される。
【0015】
1次判定部210は、入力装置100から得た可視映像110を入力情報とし、画像解析による人の抽出、および、抽出した人の服装が軽装か重装かの判定を行う。なお、1次判定部210による服装が軽装か重装かの判定は、その人の服装における服(上衣)の袖の長さやズボンの丈の長さに基づき判定される。より具体的には、上着の袖の長さより半袖と判定される場合、および/または、ズボンの丈の長さより半ズボンと判定される場合に「軽装」、それ以外の場合には「重装」と判定する。なお、1次判定部210による軽装か重装かの判定は、人の行動目的に応じて変更してもよい。例えば、行動目的に応じてズボンが半ズボンと判定される場合のみ「軽装」、それ以外の場合には「重装」と判定するようにしてもよい。
【0016】
骨格判定部220は、入力装置100から得た可視映像110を入力情報とし、被写体となった人の上肢における上腕部の領域と前腕部の領域、および、下肢における上腿部の領域と下腿部の領域を検出し、骨格情報230を生成する。なお、人体における上肢、上腕部、前腕部の各領域、および、下肢、上腿部、下腿部の領域の各概要について
図3に示す。骨格情報230は、可視映像から認識された人、および、その人における上腕部、前腕部、および、上腿部、下腿部の各領域を関連付けて記憶する。
【0017】
体温特定部240は、入力装置100から取得した赤外線映像120と骨格情報230を入力情報とし、被写体の上腕部と前腕部、上腿部と下腿部の各領域の体温(温度)を特定する。なお、可視映像110と赤外線映像120とが一対一に対応付け可能な映像で、可視映像110より得た骨格情報230より赤外線映像120における対応する領域が特定可能であるとする。
【0018】
2次判定部250は、1次判定部210において被写体となる人の服装が重装と判定された人に対して、体温特定部240の結果を用いて、上腕部および前腕部の各領域の温度、および/または、上腿部および下腿部の各領域の温度より、被写体となった人が軽装か否かを再度判定する。なお、2次判定部250における「軽装」か否かの判定は、上腕部および前腕部の各領域の温度差が所定以上、および/または、上腿部および下腿部の各領域の温度差が所定値以上である場合に「軽装」、それ以外の場合に「重装」と判定する。なお、1次判定部210と同様に2次判定部250による軽装か重装かの判定は、人の行動目的に応じて変更してもよい。例えば、行動目的に応じて上腿部および下腿部の各領域の温度差が所定値以上である場合にのみ「軽装」、それ以外の場合には「重装」と判定するようにしてもよい。
【0019】
発報部260は、1次判定部210、または、2次判定部250にて被写体が「軽装」と判定された場合、警告のための発報のための処理を行う。
【0020】
次に、服装判定装置200による動作を説明する。
図2は、本発明の一実施形態における服装判定装置200の処理動作を示すフローチャートである。1次判定部210は、入力装置100からの可視映像110を入力情報として取得する(ステップS20)。1次判定部210は、可視映像110から人を特定するとともに、特定した人の服装が「軽装」か「重装」かを判定する(ステップS21)。「軽装」か「重装」かは、前述のとおり上着の袖の長さや、ズボンの丈の長さなどに基づき判定する。具体的には、被写体となる人の上衣の袖丈の方向から袖の領域、および、下衣の総丈の方から下衣の領域を検出するとともに、被写体となる人の上衣および下衣の総丈を求めて「軽装」か否かを判定しても良い。
【0021】
なお、1次判定部210は、既存の画像認識技術を用いて得られた領域認識結果を利用して判定しても良い。あるいは、複数の人の映像とそれらの人が「軽装」か「重装」かを示したデータを教師データとして学習を行った汎用映像AIモデルを用いて実施しても良い。1次判定部210がステップS21の処理で「重装」と判定した場合には体温による服装判定処理を行うためステップS22に進み、「軽装」と判定した場合にはステップS26に進む。
【0022】
1次判定部210が「重装」と判定した場合、骨格判定部220は、入力装置100から取得した可視映像110を入力情報として骨格判定処理を行う(ステップS22)。骨格判定部220は、骨格判定として被写体となった人の上腕部、前腕部や、上腿部、下腿部の領域を判定する。この領域判定処理は、例えば、複数の人の映像とそれらの人の上腕部、前腕部、上腿部、下腿部の各領域を示したデータを教師データとして学習を行った汎用映像AIモデルを用いて実施しても良い。なお、骨格判定部220による各領域の判定結果は判定対象となった被写体と関連付けて骨格情報230として一時的に保持される。
【0023】
次に、体温特定部240は、入力装置100から取得した赤外線映像120および骨格情報230を入力情報として、被写体の上腕部と前腕部の各領域の温度、上腿部と下腿部の各領域の温度を特定する(ステップS23)。すなわち、体温特定部240は、骨格情報230により特定された特定領域間(上半身:上腕部と前腕部、下半身:上腿部と下腿部)の温度を赤外線映像120より特定する。
【0024】
より具体的な温度の特定処理の例について
図3を用いて説明する。なお、例として赤外線映像より温度を特定したい各領域内の四箇所の平均値を求める方法を記載しているが、あくまで一例であり、温度の特定の方法についてはこれに限定するものではない。例えば、その領域全体の平均温度をその領域の温度としてもよい。
【0025】
体温特定部240は、上腕部の領域(S101)の体温を特定する。より詳細には、体温特定部240は、骨格情報230より上腕部の領域を特定する。続いて、体温特定部240は、特定された上腕部の領域内において、肩に近い領域から二箇所、肘に近い領域から二箇所、計四箇所の体温情報を赤外線映像120から抽出し、平均値を上腕部の領域の温度として算出する。
【0026】
体温特定部240は、前腕部の領域(S102)の温度を特定する。より詳細には、体温特定部240は、骨格情報230より前腕部の領域を特定する。続いて、体温特定部240は、特定された前腕部の領域内において、肘に近い領域から二箇所、手首に近い領域から二箇所、計四箇所の体温情報を赤外線映像120から抽出し、平均値を前腕部の領域における温度として算出する。
【0027】
体温特定部240は、上腿部の領域(S103)の体温を特定する。より詳細には、体温特定部240は、骨格情報230より上腿部の領域を特定する。続いて、体温特定部240は、特定された上腿部の領域内において、鼠径部に近い領域から二箇所、膝に近い領域から二箇所、計四箇所の体温情報を赤外線映像120から抽出し、平均値を上腿部の領域の温度として算出する。
【0028】
最後に、体温特定部240は、下腿部の領域(S104)の体温を特定する。より詳細には、体温特定部240は、骨格情報230より下腿部の領域を特定する。続いて、体温特定部240は、特定された下腿部の領域内において、膝に近い領域から二箇所、脛に近い領域から二箇所、計四箇所の体温情報を赤外線映像120から抽出し、平均値を下腿部の領域の温度として算出する。
以上のようにして、体温特定部240は、各部の温度を特定する。
【0029】
図2に戻り、2次判定部250は、体温特定部240にて特定された各領域の温度を用いて、「軽装」か否かの体温による服装判定処理を行う(ステップS24)。2次判定部250は、例えば、上腕部の領域と前腕部の領域との温度差が所定以上、および/または、上腿部の領域と下腿部の領域との温度差が所定値以上である場合に「軽装」(ステップS26)と判定し、それ以外の場合に「重装」(ステップS25)と判定する。なお、「重装」(ステップS25)と判定された場合、処理対象の被写体となった人の判定は終了する。
【0030】
赤外線映像において、服やズボンで覆われた部分の温度は、肌が露出した部分の温度より低く示される。半袖や半ズボンの場合、上腕部や上腿部の一部あるいは大部分が袖や裾で覆われることから、赤外線映像において、それらの領域の温度が肌の露出する前腕部や下腿部の領域の温度より低く示される。一方、服の袖やズボンの丈が長い場合、体温の影響が服やズボンを通して表れにくいため、赤外線映像において各領域の温度の差がより表れにくくなる。この現象を利用して、2次判定部250は、「軽装」か否かの判断を行う。これにより、1次判定部210が可視映像により「軽装」(上衣の袖丈や下衣の総丈の長さが短い服装、いわゆる半袖、半ズボン)を正しく判定できず、「重装」(上衣の袖丈や下衣の総丈の長さが長い服装、いわゆる長袖、長ズボン)であると誤認識するケースがあっても、2次判定部250により、1次判定部210の誤りを解消できる。
【0031】
ところで、服の袖やズボンの丈が十分に長くとも、その生地が薄手だと体温の影響が服やズボンの表面に現れやすい。一般的に体幹から離れた部分の方が体幹から近い部分よりその体温が低い。そのため、服の袖やズボンの丈が十分に長くとも、その生地が薄手の場合、半袖や半ズボンの時のような差はないものの、赤外線映像において、体幹から遠い前腕部や下腿部の温度は、体幹に近い上腕部や下腿部の温度より低く現れる。一方、服の袖やズボンの丈が十分に長く、かつ、その生地が厚手、あるいは、遮熱性が高い場合、体温の影響が服やズボンの表面に表れにくいことから、赤外線映像において、前腕部や下腿部の領域の温度と、上腕部や下腿部の領域の温度とはほぼ同じに現れる。
【0032】
2次判定部250は、このような現象も利用して、服やズボンが半袖や半ズボンのであるかによる「軽装」か否かを判定するだけでなく、長袖や長ズボンであっても、薄手か厚手か、または、遮熱性が高いか否かにより「軽装」か否の判断を行うようにしてもよい。そのために、温度差を用いた判定の際に用いる「所定値」や温度の比較領域は、行動目的に応じて、
・長袖は必須ではなく、長ズボンであればよいのか;
・長袖、長ズボンであればよいのか;
・長袖、長ズボンで厚手の生地が好ましいか;または、
・長袖、長ズボンで遮熱性の高く結果として保温性の高い生地が好ましいのか、
等によりその値を変えてもよい。
【0033】
1次判定部210、または、2次判定部250にて被写体が「軽装」と判定された場合、発報部260は、警告のための発報の処理を行う(ステップS27)。発報部260による発報は、例えば、
・予め定められた監視員への電子メールによる通知書、
・被写体の可視映像の監視員への送信、
・監視員用アプリへのメッセージ通知、
・被写体となる人の周辺に設けられたスピーカでの注意喚起を行う音声再生のための制御処理、
・ドローンによる被写体に追跡指令、または、
・それらの組み合わせ、
のいずれであってもよい。
【0034】
以上のようにして、服装判定装置200は、服装について「軽装」か否かを判定する。このように、可視映像を用いた服装の判定と、赤外線サーモグラフィカメラによる赤外線映像を用いた人の特定領域の温度の特定を組み合わせることで、1次判定部210で仮に「軽装」(上衣の袖丈や下衣の総丈の長さが短い服装、いわゆる半袖、半ズボン)を正しく判定できず、「重装」(上衣の袖丈や下衣の総丈の長さが長い服装、いわゆる長袖、長ズボン)であると誤認識するケースにおいても、より精度よく「軽装」であると正しく判定できる。これにより、軽装で山岳地帯や森林地帯といった危険地帯に立ち入る人、あるいは、軽装で震災被害地域に立ち入るボランティア活動者を未然に阻止するための判定が可能となり、被災や2次被害を事前に防止し得る。
【0035】
また、服装判定装置200に入力される可視映像と赤外線映像の両映像を、入力装置100として1台のカメラで撮影することで、2台のカメラで可視映像と赤外線映像とを別々に撮影する場合と比べると映像間に位置ずれを抑えられる。そのため、可視映像から判定した骨格情報をそのまま赤外線映像に写像することができ、服装判定装置200における処理が容易になる。ただし、2台のカメラで可視映像と赤外線映像とを別々に撮影しても被写体となる人の対応付けが可能であれば、2台のカメラで可視映像と赤外線映像とを別々に撮影してもよい。
【0036】
図4は本発明の一実施形態による服装判定装置200のハードウェア構成を示す図である。服装判定装置200は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、SSD(Solid State Drive)104といった不揮発性メモリ、および、必要に応じて通信モジュール105を備える。
【0037】
CPU101は、ROM102またはSSD104等の記録媒体に記憶されるプログラムを実行することで、服装判定装置200の各機能を実現する。
【0038】
SSD104は、服装判定装置の機能を実現するため必要となるデータ等も記憶する。なお、SSD104は、他の不揮発性の記憶装置、例えば、HDD(Hard Disk Drive)であってもよく、いくつかの異なる種類の不揮発性の記憶装置により構成させてもよい。通信モジュール105は、近距離無線通信やネットワーク接続のために用いられる。また、服装判定装置200は、キーボード、マウス、タブレット、表示装置といった入出力装置106ないしはそれらの入出力装置への接続ポートを備えてもよい。
【0039】
図5は、本発明の一実施形態による服装判定装置200の最小構成図を示す図である。服装判定装置200は、体温特定部240と2次判定部250とを備える。体温特定部240は、被写体となる人の可視映像より服装が重装と判定された際、前記被写体の骨格情報を基に前記被写体の上腕部および前腕部の領域の各温度、および/または、前記被写体の上腿部および下腿部の領域の各温度を前記被写体の赤外線映像を用いて特定する。2次判定部250は、前記可視映像より服装が重装と判定された人に対して、前記特定された前記上腕部および前記前腕部の領域の各温度、および/または、前記上腿部および前記下腿部の領域の各温度より、前記服装が軽装か否かを再度判定する。
【0040】
なお、服装判定装置200の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより服装判定装置200における処理を実現しておもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0041】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0042】
100 入力装置
110 可視映像
120 赤外線映像
200 服装判定装置
210 1次判定部
220 骨格判定部
230 骨格情報
240 体温特定部
250 2次判定部
260 発報部