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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124023
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】畜肉加工食品用食感改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20240905BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20240905BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20240905BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20240905BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L13/60 B
A23L13/60 Z
A23L13/40
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031904
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 領
【テーマコード(参考)】
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LE03
4B036LE04
4B036LF11
4B036LF13
4B036LH03
4B036LH12
4B036LH16
4B036LH38
4B036LK01
4B036LP01
4B036LP02
4B036LP03
4B036LP12
4B036LP14
4B042AC05
4B042AD08
4B042AD20
4B042AE03
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK09
4B042AK10
4B042AP02
4B042AP04
4B042AP14
4B042AP22
(57)【要約】
【課題】肉らしい歯ごたえのある食感を畜肉加工食品に付与できる畜肉加工食品用食感改良剤を提供する。
【解決手段】油脂加工澱粉、エンドウ蛋白及び焼成カルシウムを有効成分とする、畜肉加工食品用食感改良剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂加工澱粉、エンドウ蛋白及び焼成カルシウムを有効成分とする、畜肉加工食品用食感改良剤。
【請求項2】
請求項1に記載の畜肉加工食品用食感改良剤を含有する、畜肉加工食品。
【請求項3】
請求項1に記載の畜肉加工食品用食感改良剤を畜肉加工食品に添加する、畜肉加工食品の食感改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉加工食品用食感改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグ、ミートボール等の畜肉加工食品は、近年の国内における「肉ブーム」の影響で、肉好きの消費者の嗜好を満足するため、柔らかくジューシーな食感よりも、肉らしい歯ごたえのある食感が求められるようになってきている。また、昨今の原料高騰の影響で、畜肉加工食品中の肉の比率を下げざるを得ず、それによって肉らしい歯ごたえのある食感の不足が課題となっているケースが多い。
【0003】
畜肉加工食品に肉らしい歯ごたえのある食感を付与する技術としては、従来、油脂加工澱粉を用いる技術が開示されている。当該技術としては、例えば、加熱溶解度が3%~25%、且つ加熱膨潤度が8倍~17倍である油脂加工澱粉を含有する水畜産肉製品改良剤であって、前記油脂加工澱粉のpHがpH3.3以上、pH6.5未満であることを特徴とする水畜産肉製品改良剤(特許文献1)が挙げられる。
【0004】
しかし、上記技術では十分とはいえず、肉らしい歯ごたえのある食感を畜肉加工食品に付与できる畜肉加工食品用食感改良剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-162560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、肉らしい歯ごたえのある食感を畜肉加工食品に付与できる畜肉加工食品用食感改良剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に対して鋭意検討を行った結果、油脂加工澱粉に、エンドウ蛋白及び焼成カルシウムを併用することにより、油脂加工澱粉の有する食感改良効果が改善され、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の(1)~(3)から成っている。
(1)油脂加工澱粉、エンドウ蛋白及び焼成カルシウムを有効成分とする、畜肉加工食品用食感改良剤。
(2)上記(1)に記載の畜肉加工食品用食感改良剤を含有する、畜肉加工食品。
(3)上記(1)に記載の畜肉加工食品用食感改良剤を畜肉加工食品に添加する、畜肉加工食品の食感改良方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の畜肉加工品用品質改良剤を添加した畜肉加工食品は、肉らしい歯ごたえのある食感が付与される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いられる油脂加工澱粉は、油脂を吸着した澱粉を熟成処理したものであれば特に制限はないが、本発明の効果が更に高まる観点から、乳化剤を含有する油脂組成物を吸着した澱粉を熟成処理して得られる油脂加工澱粉(即ち、乳化剤を含有する油脂加工澱粉)であることが好ましい。
【0011】
本発明で用いられる油脂加工澱粉の原料となる澱粉としては、タピオカ澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、エンドウ豆澱粉、あるいはこれらの澱粉に、架橋処理を施した加工澱粉(例えば、リン酸架橋澱粉等)、アセチル化処理を施した加工澱粉、エーテル化処理を施した加工澱粉(例えば、ヒドロキシプロピル澱粉等)、酸化処理を施した加工澱粉(例えば、ジアルデヒド澱粉等)、酸処理を施した加工澱粉、湿熱処理を施した加工澱粉、更に架橋、アセチル化、エステル化、エーテル化等の処理を2以上組み合わせて施した加工澱粉等が挙げられる。これら澱粉は、1種類のみを単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、リン酸架橋タピオカ澱粉が好ましい。
【0012】
本発明で用いられる油脂加工澱粉の原料となる油脂としては、食用可能な油脂であれば特に制限はなく、例えば、サフラワー油、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、米糠油、コーン油、椰子油、パーム油、パーム核油、カポック油、落花生油、オリーブ油、ハイオレイック菜種油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックコーン油及びハイオレイックヒマワリ油等の植物油脂、牛脂、ラード、魚油及び乳脂等の動物油脂、更にこれら動植物油脂を分別、水素添加又はエステル交換したもの、並びに中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられる他、プロピレングリコールジ脂肪酸エステルもこれらに含まれる。これらの中でも、サフラワー油、大豆油、ヒマワリ油又はコーン油が好ましい。また、上記油脂の一部又は全部の代替品として油分を多く含む穀粉、例えば、生大豆粉等を用いても良い。
【0013】
本発明で用いられる油脂加工澱粉が含有し得る乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル又はレシチン等である。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸のエステル(モノグリセリン脂肪酸エステル)の他、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等が含まれる。また、グリセリン有機酸脂肪酸エステルには、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が含まれる。また、レシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン及び酵素処理レシチン等が含まれる。これら乳化剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができ、好ましくはグリセリンと脂肪酸のエステル(モノグリセリン脂肪酸エステル)又はグリセリン有機酸脂肪酸エステルであり、さらに好ましくはグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルである。
【0014】
上記モノグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とのエステルであり、エステル化反応、エステル交換反応等自体公知の方法で製造される。該エステルは、モノエステル体(モノグリセリド)、ジエステル体(ジグリセリド)のいずれであっても良く、あるいはそれらの混合物であっても良い。
【0015】
モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数16~18の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)が好ましい。これら脂肪酸は、1種類のみを単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0016】
上記グリセリン有機酸脂肪酸エステルは、グリセリン、有機酸及び脂肪酸のエステルであり、モノグリセリンモノ脂肪酸エステルと有機酸(又は有機酸の酸無水物)との反応、又はグリセリンと有機酸と脂肪酸との反応により製造される。グリセリン有機酸脂肪酸エステルの種類としては、例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルが好ましい。これらグリセリン有機酸脂肪酸エステルは、1種類のみを単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば、炭素数6~24の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等)が挙げられる。これらの中でも、炭素数16~18の直鎖状の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等)が好ましい。これら脂肪酸は、1種類のみを単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
本発明で用いられる油脂加工澱粉の製造において、乳化剤を含有する油脂組成物を用いる場合、該油脂組成物の調製方法に特に制限はないが、例えば、油脂及び乳化剤を混合し、50~90℃に加熱及び溶融することにより調製できる。調製された油脂組成物中の油脂と乳化剤との割合(油脂/乳化剤)は、通常1/99~99/1(質量比)であり、好ましくは60/40~20/80(質量比)である。
【0019】
上記油脂又は油脂組成物(以下、「油脂等」という)を澱粉に吸着させる方法としては、澱粉粒が破壊されない状態で澱粉の表面に油脂等を吸着させる方法であれば特に制限はないが、乾燥処理を伴う方法であって、その表面に油脂等が吸着した粉末又は顆粒状の澱粉を調製する方法が好ましい。より具体的には、例えば、(a)平衡水分を保った澱粉若しくは水分含有量を20~40質量%に調整した澱粉を流動層乾燥機中で流動状態とし、そこに油脂等を噴霧し乾燥する方法、(b)水分含有量を10~50質量%に調整した澱粉のケーキに油脂等を添加し、混合及び分散した後、棚段式通風乾燥機等を用いて乾燥し、粉末化する方法、(c)水分含有量を60~70質量%に調整したスラリー状の澱粉に油脂等を添加し、混合及び分散した後、噴霧乾燥機又はドラムドライヤー等を用いて乾燥し、粉末化する方法等を実施することができる。これら方法により調製される粉末又は顆粒状の澱粉は、好ましくは水分含有量が8~18質量%、より好ましくは10~14質量%に調整される。
【0020】
澱粉に対する油脂又は油脂組成物中の油脂の吸着量は、澱粉100質量部に対して、例えば、0.001~9質量部、好ましくは0.02~3質量部、より好ましくは0.05~0.9質量部である。
【0021】
澱粉に対する乳化剤の吸着量は、澱粉100質量部に対して、例えば、0.002~12質量部、好ましくは0.04~4質量部、より好ましくは0.1~1.2質量部である。
【0022】
油脂等を吸着した澱粉(以下、単に「澱粉」ともいう)は、熟成処理される。熟成処理は、熟成温度30~70℃、熟成期間1時間~20日間の範囲で行うことができる。熟成期間は、澱粉に対する油脂等の吸着量、熟成温度等に応じて適宜調整することが好ましい。例えば、熟成温度が高い程、比較的短期に設定することが好ましい。より具体的には、例えば、澱粉100質量部に対する油脂等の吸着量が0.4質量部、熟成温度が60℃の場合、好ましい熟成期間は7~14日である。
【0023】
本発明で用いられるエンドウ蛋白は、マメ科の1~2年草であるエンドウに含まれる蛋白質成分であり、一般的に使用されているものであれば特に制限はない。エンドウ蛋白としては例えば、エンドウの種子から水を用いて蛋白質成分を抽出して得られるもの、当該抽出物を濃縮して得られるもの、当該濃縮物を乾燥して得られるもの等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いられる焼成カルシウムは、例えば、卵殻、貝殻、サンゴ、骨(獣骨、魚骨)、石灰等を、高温で熱処理(焼成)して得られる焼成物であり、一般的に使用されているものであれば特に制限はない。焼成カルシウムとしては、例えば、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム等を主成分とするものが挙げられる。
【0025】
本発明の畜肉加工食品用食感改良剤(以下単に「食感改良剤」ともいう)中の油脂加工澱粉、エンドウ蛋白及び焼成カルシウムの含有量に特に制限はないが、油脂加工澱粉100質量部に対し、エンドウ蛋白の含有量が通常0.1~100質量部、好ましくは0.5~15質量部、焼成カルシウムの含有量が通常0.1~100質量部、好ましくは0.5~50質量部である。
【0026】
本発明の食感改良剤の形状に特に制限はなく、固体、液体等いずれの形態でも良いが、ハンドリング性、保存性を考慮すると固体、特に粉末状のものが好ましい。
【0027】
本発明の食感改良剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で他の任意の成分が含まれても良く、例えば、乳化剤、食物繊維、動植物性蛋白(エンドウ蛋白を除く)、増粘安定剤、糖類、澱粉、酵素等を配合することができる。
【0028】
本発明の食感改良剤の製造方法としては、各成分が均一になるよう混合する方法であれば特に制限はないが、油脂加工澱粉、エンドウ蛋白及び焼成カルシウムを混練し、油脂加工澱粉に、エンドウ蛋白及び焼成カルシウムを練り込ませることにより製造する方法が好ましい。混練には、例えば、フードプロセッサー、リボンミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、V型混合機等の公知の混練装置を用いることができる。
【0029】
本発明の食感改良剤は、各種の畜肉加工食品に添加して使用できる。ここで、畜肉加工食品とは、畜肉を原料として調製される食品であれば特に制限はないが、本発明の効果の発現のし易さの観点から、例えば、ハンバーグ、焼売、そぼろ、チキンナゲット、メンチカツ、肉団子、ミートローフ、餃子、春巻き、肉まん、コーンビーフ、ソーセージ等の挽肉加工食品、トンカツ、チキンカツ、ビーフカツ、ハムカツ、ソーセージカツ、メンチカツ、から揚げ、チキンナゲット等の油ちょう食品が好ましい。
【0030】
上記畜肉としては、一般に畜肉加工食品に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば牛肉、豚肉、馬肉、めん羊肉、山羊肉、家兎肉等の家畜等の肉、鶏肉、七面鳥、カモ等の家禽肉及びこれらの混合肉が挙げられ、好ましくは豚肉、牛肉、鶏肉等である。また、使用可能な部位に特に制限はなく、例えば豚肉の場合、肩肉、ロース肉、ばら肉、もも肉、ウデ肉、半丸枝肉、胴肉等何れの部位も用いることができる。
【0031】
本発明の食感改良剤の畜肉加工食品への添加方法に特に限定はなく、例えば畜肉加工食品が挽肉加工食品の場合、生地調製工程において、挽肉と他の原材料を混合する際に、本発明の食感改良剤を併せて混合する方法等が挙げられ、例えば畜肉加工食品が油ちょう食品の場合、種に、粉末状の本発明の食感改良剤を打ち粉として(又は打ち粉に混合した混合物として)添加する方法等が挙げられる。
【0032】
本発明の食感改良剤の畜肉加工食品への添加量は、畜肉加工食品に含まれる畜肉100質量部に対し、通常0.1~2質量部、好ましくは0.5~1.5質量部である。
【0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0034】
[油脂加工澱粉の製造]
[製造例1]
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムW-10;理研ビタミン社製)及びサフラワー油を質量比1:1で混合し、60℃に加熱・溶融して油脂組成物を得た。水分含有量約50質量%に調湿したリン酸架橋タピオカ澱粉(商品名:ネオビスT-100;日本食品化工社製)100質量部に対して上記油脂組成物0.5質量部を添加し、高速撹拌混合機(型式:レーディゲミキサーFM130D;松坂技研社製)で10分間混合した。得られた混合物をトレーに広げて機内温度約60℃の棚段式通風乾燥機で水分含有量約12.0質量%まで乾燥し、乾燥物を粉砕して粉末化した。得られた粉末をポリエチレン製の袋に詰めて約60℃で2週間熟成し、油脂加工澱粉1を得た。
【0035】
[製造例2]
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルをモノグリセリン脂肪酸エステル(商品名:ポエムOL-200V;理研ビタミン社製)に替えた以外は上記製造例1と同様に操作し、油脂加工澱粉2を得た。
【0036】
[製造例3]
リン酸架橋タピオカ澱粉(商品名:ネオビスT-100;日本食品化工社製)をアセチル化タピオカ澱粉(商品名:MT-01;日本食品化工社製)に替えた以外は上記製造例2と同様に操作し、油脂加工澱粉3を得た。
【0037】
リン酸架橋タピオカ澱粉(商品名:ネオビスT-100;日本食品化工社製)をコーンスターチ(商品名:コーンスターチCD-Y;王子コーンスターチ社製)に替えた以外は上記製造例2と同様に操作し、油脂加工澱粉4を得た。
【0038】
[食感改良剤の製造]
(1)原材料
1)油脂加工澱粉1~4
2)エンドウ蛋白(商品名:Radiure S8001B;カーギルジャパン社製)
3)焼成カルシウム(商品名:貝殻焼成カルシウムKM;カワイマテリアル社製)
【0039】
(2)食感改良剤の配合
上記原材料を用いて調製した食感改良剤1~13の配合組成を表1及び2に示した。このうち、食感改良剤1~7は本発明に係る実施例であり、食感改良剤8~13はそれらに対する比較例である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
(3)食感改良剤の製造方法
表1及び2に示した配合割合に従って原材料を所定量ずつフードプロセッサー(型式:MK-K48P;パナソニック社製)に投入し、該フードプロセッサーで2分間混練して、食感改良剤1~13を得た。なお、各食感改良剤は、原材料の合計が200gとなる分量で調製した。
【0043】
[挽肉加工食品による評価試験]
(1)挽肉加工食品の製造
(1-1)原材料
1)鶏ムネ挽肉(3.2mmにミンチしたもの)
2)食塩(商品名:精製塩;関東塩業社製)
3)水
4)食感改良剤1~13
【0044】
(1-2)挽肉加工食品の配合
上記原材料を用いて調製した挽肉加工食品1~15の配合組成を表3及び4に示した。このうち、挽肉加工食品1~7は本発明に係る実施例であり、挽肉加工食品8~15はそれらに対する比較例である。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
(1-3)挽肉加工食品の製造方法
鶏ムネ挽肉、食塩、食感改良剤1~13につき、表3及び4に記載の量の6倍量を量り取り、卓上ミキサー(型式:キッチンエイドKSM150WH;エフ・エム・アイ社製)を用いて、2分間ミキシングを行った。その後、水を加え、40秒間さらにミキシングを行い、挽肉加工食品生地を得た。なお、ミキシング後の挽肉加工食品生地の温度は5℃以下であることを確認した。
得られた挽肉加工食品生地を真空包装機(型式:V-380G;東静電気社製)を用いて脱気し、脱気後、折径48mmのポリ塩化ビニリデン製ケーシングに充填した。充填後、90℃で25分ボイルし、ボイル後、氷水中で30分間冷却し、挽肉加工食品1~15を得た。また、対照として、食感改良剤を使用しないこと以外は同様に調製し、挽肉加工食品16を得た。
【0048】
(2)挽肉加工食品の物性評価
(1-3)で得た挽肉加工食品をポリ塩化ビニリデン製袋に入れて密封し、約5℃の恒温器中に約1時間保管した。保管後の挽肉加工食品のケーシングを剥いた後、厚さ20mmにスライスし、試験片とした。この試験片について、クリープメーター(型式:RE2-33005B;山電社製)により破断応力(Pa)を測定した。測定では、直径5mmの円柱状のプランジャーを装着し、プランジャースピードを5mm/秒として、10個の試験片について行い、その破断応力について平均値を求めた。得られた数値は、対照の挽肉加工食品16の数値を100とし、それに対する相対値として示した。この相対値が高いほど、挽肉加工食品の硬さが強く、肉らしい歯ごたえのある食感が付与されているといえる。結果を表6に示す。
【0049】
(3)挽肉加工食品の官能評価
(1-3)で得た挽肉加工食品をポリ塩化ビニリデン製袋に入れて密封し、約5℃の恒温器中に約1時間保管した。保管後の挽肉加工食品のケーシングを剥いた後、厚さ20mmにスライスし、肉感(肉らしい歯ごたえのある食感)について官能評価を行った。官能試験では、挽肉加工食品16を対照とし、下記表5に示す評価基準に従い、10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表6に示す。
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上3.5未満
△:平均値1.5以上2.5未満
×:平均値1.5未満
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】
表6の結果から、本発明の食感改良剤1~7を添加した挽肉加工食品1~7は、いずれも物性評価の数値が基準値の100を大きく上回っており、官能評価が「○」以上の結果であった。これに対し、比較例の食感改良剤8~13を添加した挽肉加工食品8~15は、いずれも物性評価の数値が基準値と同程度又はやや上回る程度であり、また、官能評価が「×」又は「△」の結果であり、挽肉加工食品1~7より劣っていた。
【0053】
[ハンバーグによる評価試験]
(1)ハンバーグの製造
(1-1)原材料
1)牛トリミング(赤身75質量%)
2)シーズンドポーク(アメリカ産)
3)豚ウデ肉
4)粒状大豆蛋白(商品名:フジニックエース100;不二製油社製)
5)水(粒状大豆蛋白戻し用)
6)ドミグラスソース
7)粉末状大豆蛋白(商品名:ニューフジプロSE-H;不二製油社製)
8)水(カード調製用)
9)大豆油
10)生玉ねぎ
11)ドライパン粉
12)アセチル化タピオカ澱粉(商品名:MT-01;日本食品化工社製)
13)食塩
14)グラニュー糖
15)グルタミン酸ナトリウム(商品名:グルエース;三菱商事ライフサイエンス社製)
16)白コショウ
17)食感改良剤1及び8
【0054】
(1-2)ハンバーグの配合
上記原材料を用いて調製したハンバーグ1及び2の配合組成を表7に示した。このうち、ハンバーグ1は本発明に係る実施例であり、ハンバーグ2はそれに対する比較例である。
【0055】
【表7】
【0056】
(1-3)ハンバーグの製造方法
表7に記載の原材料の6倍量を量り取り、下記のとおりハンバーグを製造した。
1)牛トリミング、シーズンドポーク、豚ウデ肉をまとめて挽き目4.8mmでチョッピングし、挽肉を得た。
2)生玉ねぎをみじん切りし、みじん切り玉ねぎを得た。
3)粒状大豆蛋白に水(粒状大豆蛋白戻し用)を加え、水戻し大豆蛋白を得た。
4)粉末状大豆蛋白、水(カード調製用)、大豆油を混合し、カードを得た。
5)挽肉、食塩、食感改良剤1につき、卓上ミキサー(型式:キッチンエイドKSM150WH;エフ・エム・アイ社製)を用いて、3分間ミキシングを行った。その後、残りの原材料を加え、1分間さらにミキシングを行い、ハンバーグ生地を得た。
6)得られたハンバーグ生地を1個40gずつ成型し、ホットプレート(型式:EA-DE10;象印マホービン社製)で片面につき180℃で1分間、両面焼成した。
7)上記焼成後のハンバーグ生地を、スチームコンベクションオーブン(型式:FSCC XS 6 2/3E;フジマック社製)で湿度40%、180℃の条件で5分間焼成し、ハンバーグを得た。
8)得られたハンバーグを、急速冷凍庫で-35℃で40分冷却した。
9)冷却後のハンバーグを、ポリ袋に入れて真空包装し、上記急速冷凍庫で-20℃で12時間保存し、冷凍ハンバーグ1及び2を得た。
10)対照として、食感改良剤を使用しないこと以外は同様に調製し、冷凍ハンバーグ3を得た。
【0057】
(2)ハンバーグの官能評価
(1-3)で得た冷凍ハンバーグ1及び2を電子レンジで解凍して得たハンバーグ1及び2について、肉感(肉らしい歯ごたえのある食感)について官能評価を行った。官能試験では、冷凍ハンバーグ3を電子レンジで解凍して得たハンバーグ3を対照とし、下記表8に示す評価基準に従い、10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表9に示す。
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上3.5未満
△:平均値1.5以上2.5未満
×:平均値1.5未満
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
表9の結果から、本発明の食感改良剤1を添加したハンバーグ1は、「◎」の結果であった。これに対し、比較例の食感改良剤8を添加したハンバーグ2は、「×」の結果であり、ハンバーグ1より劣っていた。
【0061】
[焼売による評価試験]
(1)焼売の製造
(1-1)原材料
1)生玉ねぎ
2)鶏ムネ肉
3)チキンミンチ
4)シーズンドポーク
5)豚脂
6)薄力粉
7)ゼラチン
8)水(ゼラチン戻し用)
9)液卵白
10)粒状大豆蛋白(商品名:フジニックエース100;不二製油社製)
11)水(粒状大豆蛋白戻し用)
12)砂糖
13)食塩
14)醤油
15)ブドウ糖
16)香辛料
17)アセチル化タピオカ澱粉(商品名:MT-01;日本食品化工社製)
18)グルタミン酸ナトリウム(商品名:グルエース;三菱商事ライフサイエンス社製)
19)食感改良剤1及び8
【0062】
(1-2)焼売の配合
上記原材料を用いて調製した焼売1及び2の配合組成を表10に示した。このうち、焼売1は本発明に係る実施例であり、焼売2はそれに対する比較例である。
【0063】
【表10】
【0064】
(1-3)焼売の製造方法
表10に記載の原材料の6倍量を量り取り、下記のとおり焼売を製造した。
1)鶏ムネ肉、チキンミンチ、シーズンドポークをまとめて挽き目4.8mmでチョッピングし、挽肉を得た。
2)生玉ねぎをみじん切りし、みじん切り玉ねぎを得た。
3)ゼラチンに水(ゼラチン戻し用)を加え、水戻しゼラチンを得た。
4)粒状大豆蛋白に水(粒状大豆蛋白戻し用)を加え、水戻し大豆蛋白を得た。
5)挽肉、食塩、食感改良剤1につき、卓上ミキサー(型式:キッチンエイドKSM150WH;エフ・エム・アイ社製)を用いて、2分間ミキシングを行った。その後、残りの原材料を加え、1分間さらにミキシングを行い、焼売生地を得た。
6)得られた焼売生地を1個15gずつ成型し、皮に包んだ。成型後の焼売生地を95℃10分間蒸煮した。
7)蒸煮後の焼売生地を急速冷凍庫で-35℃で20分冷却した。
8)冷却後の焼売生地をポリ袋に入れて、急速冷凍庫で-20℃で12時間保存し、冷凍焼売1及び2を得た。また、対照として、食感改良剤を使用しないこと以外は同様に調製し、冷凍焼売3を得た。
【0065】
(2)焼売の官能評価
(1-3)で得た冷凍焼売1及び2を電子レンジで解凍して得た焼売1及び2について、肉感(肉らしい歯ごたえのある食感)について官能評価を行った。官能試験では、冷凍焼売3を電子レンジで解凍して得た焼売3を対照とし、下記表11に示す評価基準に従い、10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表12に示す。
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上3.5未満
△:平均値1.5以上2.5未満
×:平均値1.5未満
【0066】
【表11】
【0067】
【表12】
【0068】
表12の結果から、本発明の食感改良剤1を添加した焼売1は、「◎」の結果であった。これに対し、比較例の食感改良剤8を添加した焼売2は、「×」の結果であり、焼売1より劣っていた。
【0069】
[そぼろによる評価試験]
(1)そぼろの製造
(1-1)原材料
1)豚ウデ肉
2)食塩
3)砂糖
4)粉末醤油
5)黒コショウ
6)食感改良剤1及び8
7)水
【0070】
(1-2)そぼろの配合
上記原材料を用いて調製したそぼろ1及び2の配合組成を表13に示した。このうち、そぼろ1は本発明に係る実施例であり、そぼろ2はそれに対する比較例である。
【0071】
【表13】
【0072】
(1-3)そぼろの製造方法
表13に記載の原材料の3倍量を量り取り、下記のとおりそぼろを製造した。
1)豚ウデ肉を挽き目4.8mmでチョッピングし、挽肉を得た。
2)挽肉に、その他の原材料を加えて、IHヒーター(型式:KIH-1400/R;小泉成器社製)を用いて、撹拌しながら5分間加熱した。その後バットに移し、冷蔵庫(5℃)で12時間保存し、そぼろ1及び2を得た。また、対照として、食感改良剤を使用しないこと以外は同様に調製し、そぼろ3を得た。
【0073】
(2)そぼろの官能評価
(1-3)で得たそぼろ1及び2を電子レンジで加熱し、加熱後のそぼろ1及び2について、肉感(肉らしい歯ごたえのある食感)について官能評価を行った。官能試験では、電子レンジで加熱後のそぼろ3を対照とし、下記表14に示す評価基準に従い、10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表15に示す。
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上3.5未満
△:平均値1.5以上2.5未満
×:平均値1.5未満
【0074】
【表14】
【0075】
【表15】
【0076】
表15の結果から、本発明の食感改良剤1を添加したそぼろ1は、「◎」の結果であった。これに対し、比較例の食感改良剤8を添加したそぼろ2は、「×」の結果であり、そぼろ1より劣っていた。
【0077】
[トンカツによる評価試験]
(1)トンカツの製造
1)ビニール袋に、打ち粉(商品名:T-909;理研ビタミン社製)80質量%と食感改良剤1又は8のいずれか20質量%を入れて手で持ち、1分間撹拌して混合し、トンカツ用打ち粉100質量%とした。
2)豚ロース肉を厚み1cmにスライスし、スライスした豚ロース肉100質量部の両面にトンカツ用打ち粉3質量部をまぶした。
3)バッターミックス(商品名:U-869;理研ビタミン社製)100質量部に水400質量部を加え、ミキサー(型式:MX-153G;パナソニック社製)を用いて混合し、バッター液を調製した。
4)上記2)の工程を経た豚ロース肉を、バッター液にくぐらせ、パン粉を付けた。
5)180℃で5分間油ちょうした後、10分間室温で冷却し、トンカツ1及び2を得た。また、対照として、食感改良剤を使用しないこと以外は同様に調製し、トンカツ3を得た。
【0078】
(2)トンカツの官能評価
(1)で得たトンカツ1及び2について、肉感(肉らしい歯ごたえのある食感)について官能評価を行った。官能試験では、トンカツ3を対照とし、下記表16に示す評価基準に従い、10名のパネラーで評価を行い、評価点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。結果を表17に示す。
◎:平均値3.5以上
○:平均値2.5以上3.5未満
△:平均値1.5以上2.5未満
×:平均値1.5未満
【0079】
【表16】
【0080】
【表17】
【0081】
表17の結果から、本発明の食感改良剤1を添加したトンカツ1は、「◎」の結果であった。これに対し、比較例の食感改良剤8を添加したトンカツ2は、「×」の結果であり、トンカツ1より劣っていた。