IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社大阪製薬の特許一覧

<>
  • 特開-ダニ防除剤 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124024
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ダニ防除剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/02 20060101AFI20240905BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20240905BHJP
   A01N 31/06 20060101ALI20240905BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20240905BHJP
   A01N 25/04 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A01N37/02
A01P7/02
A01N31/06
A01N25/30
A01N25/04 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031906
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000149181
【氏名又は名称】株式会社大阪製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】得野 克成
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC04
4H011BA05
4H011BB03
4H011BB06
4H011DA15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用した箇所にダニが近づくことを抑制することができ、さらに、ダニ由来のアレルゲンを低減することができるダニ防除剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、脂肪酸エステル、精油成分から選ばれる少なくとも1種のダニ防除成分と、スメクタイトに属する粘土鉱物と、アニオン界面活性剤を含有することを特徴とするダニ防除剤や、前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトから選ばれる少なくとも1種である前記ダニ防除剤などにより解決することができた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸エステル、精油成分から選ばれる少なくとも1種のダニ防除成分と、
スメクタイトに属する粘土鉱物と、
アニオン界面活性剤を含有することを特徴とするダニ防除剤。
【請求項2】
前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のダニ防除剤。
【請求項3】
前記脂肪酸エステルが、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種であり、前記精油成分が、l-メントールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダニ防除剤。
【請求項4】
前記ダニ防除成分を0.05~15重量%、前記粘土鉱物を0.005~1.0重量%、前記アニオン界面活性剤を0.5~20重量%含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダニ防除剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用した箇所にダニが近づくことを抑制し、さらに、ダニ由来のアレルゲンを低減する効果を奏する製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダニは、適度な湿度及び温度が保たれている屋内に置かれている絨毯、カーペットなどの敷物や、布団、毛布、枕などの寝具、或いはセーター、コートなどの衣服や、ぬいぐるみなどの玩具などにおいて広く生息している。ダニの死骸などが粉砕されて生じた微粒子がアレルゲンとなり、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎などの種々のアレルギー反応を示すようになると言われている。
【0003】
このようなダニに起因しアレルギー反応を引き起こすアレルゲンを発生させないために、そもそも所定の箇所にダニを近づけないようにすることが好ましく、種々の製剤が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1において、ダニ忌避成分にダニ行動抑制機能を付与するために、ダニ忌避成分と、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールの少なくとも一方を有効成分とするダニ行動抑制剤が開示されている。
【0005】
そして、特許文献2において、衣料害虫に対する防虫活性に加え、屋内塵性ダニに対する忌避効果も兼ね備えるために、3-メチル-5-フェニル-1-ペンタノールを含有する衣料用防虫およびダニ忌避組成物を水性ゲルビーズに保持したこと特徴とする衣料用防虫およびダニ忌避剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-91659号公報
【特許文献2】特開2020-40991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のダニの忌避性能を有する組成物では、使用した箇所にダニが近づくことを抑制することはできたとしても、使用前にすでにダニが存在しておりダニの死骸などのアレルゲンが存在していると、ヒトなどがアレルギー反応を生じるおそれがあるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明では、使用した箇所にダニが近づくことを抑制することができ、さらに、ダニ由来のアレルゲンを低減することができるダニ防除剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕すなわち、本発明は、脂肪酸エステル、精油成分から選ばれる少なくとも1種のダニ防除成分と、スメクタイトに属する粘土鉱物と、アニオン界面活性剤を含有することを特徴とするダニ防除剤である。
【0010】
〔2〕そして、前記粘土鉱物が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記〔1〕に記載のダニ防除剤である。
【0011】
〔3〕そして、前記脂肪酸エステルが、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピルから選ばれる少なくとも1種であり、前記精油成分が、l-メントールであることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のダニ防除剤である。
【0012】
〔4〕そして、前記ダニ防除成分を0.05~15重量%、前記粘土鉱物を0.005~1.0重量%、前記アニオン界面活性剤を0.5~20重量%含有することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のダニ防除剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用した箇所にダニが近づくことを抑制することができ、さらに、ダニ由来のアレルゲンを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明等の効果を確認するための試験方法を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のダニ防除剤に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0016】
本発明のダニ防除剤に用いられるダニ防除成分は、脂肪酸エステル、精油成分などから選ばれる少なくとも1種の化合物である。ダニ防除成分により、ダニ防除剤を衣類や寝具などに使用したときに、それらに生息しているダニを追い出したり、それらにダニを近づけたりしないように忌避することができ、或いはそれらに生息しているダニを死滅やノックダウンさせることができる。これらのダニ防除成分は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。具体的に、ダニ防除成分である脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピルなどが好ましい。
【0017】
そして、ダニ防除成分としては、例えば、グレープフルーツ、ゼラニウム、ローズマリー、アニス、アルモワーズ、イランイラン、オレンジ、カナンガ、カモミール、カルダモン、カユプテ、クラリセージ、コリアンダー、サイプレス、サンダルウッド、シダーウッド、シトロネラ、ジュニパーベリー、ジンジャー、スペアミント、セージ、ティートリー、ナツメグ、ネロリ、パインニードル、バジル、パチョリー、パルマローザ、フェンネル、ブラックペッパー、ペチグレン、ベチバー、ペパーミント,ベルガモット、マージョラム、マンダリン、レモンユーカリ、ユーカリプタス、コパイバ、ライム、ラベンダー、レモン、レモングラス、ローズウッド、月桃葉、桂皮、薄荷などの植物に含有されている化合物と同様の構造を有する精油成分が好ましい。精油成分としては、具体的に、グレープフルーツに含有されるd-リモネン、ミルセン、α-ピネン、ゼラニウムに含有されるシトロネロール、ゲラニオール、リナロールや、ローズマリーに含有されるα-ピネン、カンファー、1,8-シネオールや、アニスに含有される(E)-アネトール、リモネン、アニスアルデヒドや、アルモアーズに含有される1,8-シネオール、ツジョン、ボルネオール、カンファー、ピネン、アルテミシニン(セスキテルペン・ラクトン)リナロール、ネロールや、イランイランに含有されるリナロール、β-カリオレフィン、ゲルマクレンDや、オレンジに含有されるリモネン、ミルセン、β-ビサボレンや、カナンガに含有されるカリオフィレン、酢酸ゲラニル、テルピネオールや、カモミールに含有されるファルネセン、カマズレン、α-ビサボロールオキサイドBや、カルダモンに含有される1,8-シネオール、α-テルピニルアセテート、リモネンや、カユプテに含有される1,8-シネオール、α-テルピネオール、パラ-シメンや、クラリセージに含有される酢酸リナリル、リナロール、ゲルマクレンDや、クローブに含有される、オイゲノール、β-カリオフィレン、オイゲニルアセテートや、コリアンダーに含有されるd-リナロール、カンファー、α―ピネンや、サイプレスに含有されるα―ピネン、δ-3-カレンや、サンダルウッドに含有されるシス-α-サンタロール、シス-β-サンタロール、epi-β-サンタロールや、シダーウッドに含有されるツヨプセン、α-セドレン、セドロールや、シトロネラに含有されるゲラニオール、リモネン、シトロネロール、カンフェン、シトロネラール、酢酸ゲラニル、α-ピネン、α-テルピネオールや、ジュニパーベリーに含有されるα-ピネン、ミルセン、β-ファルネセンや、ジンジャーに含有されるar-クルクメン、α-ジンジベレン、β-セスキフェランドレンや、スペアミント含有される(-)-カルボン、ジヒドロカルボン、1,8-シネオールや、セージに含有されるα-ツヨン、β-ツヨン、カンファーや、ティートリーに含有されるテルピネン-4-オール、γ-テルピネン、α-テルピネンや、ナツメグに含有されるα-ピネン、サビネン、β-ピネンや、ネロリに含有されるリナロール、リモネン、βピネンや、パインニードルに含有されるα-ピネン、β-ピネン、ミルセンや、バジルに含有されるリナロール、メチルチャビコール、β-カリオフィレンや、パチョリーに含有されるパチュリアルコール、α-パチュレン、β-カリオフィレンや、パルマローザに含有されるゲラニオール、酢酸ゲラニル、リナロールや、フェンネルに含有される(E)-アネトール、リモネン、メチルチャビコールや、ブラックペッパーに含有されるβ-3-カリオフィレン、δ-3-カレン、リモネンや、ペチグレンに含有されるリナリルアセテート、リナロール、α―テルピネオールや、ベチバーに含有されるベチベロール、ベチベン、α-ベチボールや、ベルガモットに含有されるリモネン、リナリルアセテート、リナロールや、マージョラムに含有されるテルピネン-4-オール、シス-サビネンヒドレート、パラ-シメンや、マンダリンに含有されるリモネン、γ-テルピネン、β-ピネンや、レモンユーカリに含有されるシトロネラール、シトロネロール、シトラールや、ユーカリプタスに含有される1,8-シネオール、α-ピネン、リモネン、アロマデンドレン、p-サイメン、t-ピノカルベオール、グロブロールや、コパイバに含有されるβ-カリオレフィン、α-フュムレン、α-コパエン、t-α-ベルガモッテン、ゲルマクレンD、カジネン、α-ビサボレン、γ-ムロレン、β-エレメン、σ-エレメンや、ライムに含有されるリモネン、γ-テルピネン、β-ピネンや、ラベンダーに含有される酢酸リナリル、リナロール、(Z)-β-オシメンや、レモンに含有されるリモネン、β-ピネン、γ-テルピネンや、レモングラスに含有されるゲラニアール、シトラール、エレモールや、ローズウッドに含有されるリナロール、α-テルピネオール、シスーリナロールオキサイドや、ペパーミントに含有されるl-メントール、l-メントン、メントフランや、桂皮に含有されるシンナムアルデヒド、t-2-メトキシシンナムアルデヒド、クマリンや、月桃葉に含有される1,8-シネオール、テルピネン-4-オール、p―サイメンや、薄荷に含有されるl-メントール、l-メントン、メントフランなどが好ましい。なお、精油成分については植物から抽出した化合物だけでなく、化学的に合成された化合物であってもよい。
【0018】
また、ダニ防除成分として、脂肪酸エステルや精油成分以外にも、N,N-ジエチル-m-トルアミド(DEET)、イカリジンやペルメトリン、フェノトリン、アレスリン、d‐アレスリン、ピレトリン、プラレトリン、シフェノトリン、シフルトリン、フェンバレレート、フェンプロパトリン、トランスフルスリン、レスメトリン、エムペントリン、シハロトリン、エトフェンプロックス、トラロメトリン、エフィビオスリン、テラレスリン、プロフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド化合物やピレトリンなどを含有する除蟲菊エキスを単一で又は組み合わせて用いることもできる。
【0019】
ダニ防除成分の含有割合は、ダニ防除剤のうち、0.05~15重量%が好ましく、0.1~10重量%がさらに好ましい。ダニ防除成分の含有割合がこの範囲にあると、ダニ防除剤を衣類や寝具などに使用したときにそれらに生息しているダニを追い出したり、それらにダニを近づけたりしないようにすることができる。
【0020】
本発明のダニ防除剤に用いられるスメクタイトに属する粘土鉱物は、層状の結晶構造を有するケイ酸塩である。スメクタイトに属する粘土鉱物の基本的な構造としては、2枚のSi-O四面体シートの間にAl-(OH)又はMg-(OH)の八面体シートが挟まれた2:1構造を基本としている。そして、スメクタイトに属する粘土鉱物は、四面体シートのSi4+や八面体シートAl3+などが一部化数の小さい陽イオンに置換しているため、層全体が弱い負の電荷を有しているという特性を有している。スメクタイトに属する粘土鉱物により、ダニの生体や死骸など体由来の抗原であるアレルゲンを層全体や層内部などに吸着すると考えられ、当該アレルゲンを低減することができる。具体的に、スメクタイトに属する粘土鉱物としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ヘクトライトなどが好ましい。これらのスメクタイトに属する粘土鉱物は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
スメクタイトに属する粘土鉱物の含有割合は、ダニ防除剤のうち、0.005~1.0重量%が好ましく、0.01~0.5重量%がさらに好ましい。スメクタイトに属する粘土鉱物の含有割合がこの範囲にあると、ダニ防除剤を衣類や寝具などに使用したときにそれらに含まれるアレルゲンを低減することができる。
【0022】
本発明のダニ防除剤に用いられるアニオン界面活性剤は、陰イオン性の親水基を有する界面活性剤である。アニオン界面活性剤により、ダニ防除成分を水系の可溶化剤や溶剤と均一に混合させることができるとともに、スメクタイトに属する粘土鉱物のアレルゲン低減効果を阻害することがない。具体的に、アニオン界面活性剤としては、カルボン酸型のアニオン界面活性剤として、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウレス-6カルボン酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム)、ラウロイルサルコシンナトリウム、オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム、ミリスチリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸(炭素数8~18)サルコンシンナトリウムなどが好ましく、スルホン酸型のアニオン界面活性剤として、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、1-ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1-オクタンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ナフタレントリスルホン酸三ナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが好ましく、硫酸エステル型のアニオン界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、セチル硫酸ナトリウム、ココグリセリル硫酸ナトリウム(硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム)、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸トリエタノールアミンなどが好ましく、リン酸エステル型のアニオン界面活性剤として、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレン(5)セチルエーテルリン酸ナトリウム)、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸、ラウリルリン酸カリウムなどが好ましい。これらのアニオン界面活性剤は単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。なお、非イオン界面活性剤やカチオン界面活性剤などの各種界面活性剤の中でも特にアニオン界面活性剤がスメクタイトに属する粘土鉱物のアレルゲン低減効果を阻害しないことは、下記実施例及び比較例の結果から示唆される。すなわち、アニオン界面活性剤が、層全体が弱い負の電荷を帯びているスメクタイトに属する粘土鉱物に電気的に反発して近づくことができないないことから、ダニの生体や死骸など体由来の抗原であるアレルゲンが当該粘土鉱物に近づきやすく吸着されるためであると推察される。
【0023】
ダニ防除剤に用いられるアニオン界面活性剤の含有割合は、ダニ防除剤のうち、0.05~20重量%が好ましく、0.1~10重量%がさらに好ましい。アニオン界面活性剤の含有割合がこの範囲にあると、ダニ防除成分を水系の可溶化剤や溶剤と均一に混合させることができるとともに、スメクタイトに属する粘土鉱物のアレルゲン低減効果を阻害することがない。
【0024】
ダニ防除剤に可溶化剤を配合することができる。可溶化剤を配合することによりダニ防除剤やスメクタイトに属する粘土鉱物を水などの溶剤と均一にしやすくすることができる。可溶化剤としては、炭素数1~4級の低級アルコールであることが好ましく、エタノール、プロパノールであることが好ましい。そして、ダニ防除剤における可溶化剤の含有割合は、10~50重量%であることが好ましく、20~40重量%であることが好ましい。
【0025】
ダニ防除剤に溶剤を配合することができる。溶剤を配合することによりダニ防除剤を希釈して低濃度で使用する箇所に塗布することができる。溶剤としては、水であることが好ましい。水であれば、さらにダニ防除剤に配合して衣服、寝具などに使用し付着しても揮散し人体に害を及ぼさない。そして、水は、日本薬局方規格の水であることが好ましく、例えば、水道水、井戸水などである常水、そして、蒸留、イオン交換膜によるイオン交換処理、限外ろ過膜による限外ろ過処理のいずれか、またはそれらの組み合わせにより常水を処理した精製水、そして、加熱等により精製水を滅菌処理した滅菌精製水などであることが好ましい。なお、水は、スメクタイトに属する粘土鉱物を分散するために用いられている水やアニオン界面活性剤を溶解している水であってよい。そして、ダニ防除剤における溶剤の含有割合は、40~80重量%であることが好ましく、50~70重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明のダニ防除剤の25℃におけるpHとしては、4~6であることが好ましく、3~7であることが好ましい。ダニ防除成分とスメクタイトに属する粘土鉱物とアニオン界面活性剤を含有してpHが上記範囲であると、スメクタイトに属する粘土鉱物によるアレルゲンを低減する効果を阻害しない。
【0027】
さらに本発明のダニ防除剤の酸化による劣化などの腐食を防止するため、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(α-トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤を添加することができる。また、防腐を目的に、パラオキシ安息香酸エステルを添加することもできる。
【0028】
本発明のダニ防除剤に可溶化剤、溶剤や各種添加剤を配合した混合溶液を、トリガーの付いた容器に入れてノズルから噴霧してスプレータイプとして使用することができ、衣類、寝具、カーテン、ぬいぐるみなどダニが存在する可能性の高い箇所に簡便に使用することができる。
【実施例0029】
以下、本件発明におけるダニ防除剤について具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>
25℃の室温中において、容量が200mlのグリフィンビーカーに、ダニ防除成分として脂肪酸エステルであるステアリン酸ブチルを0.2g、スメクタイトに属する粘度鉱物としてモンモリロナイトの水希釈剤(モンモリロナイト含有率:2重量%)を0.1g、アニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含有率:25重量%)を1.0g、可溶化剤としてエタノールを30.0g、精製水を67.8g加えて攪拌し、合計100gのダニ防除剤を得た。
【0031】
そして、実施例1のダニ防除剤のpHは、JIS Z 8802:2011に準じて、pH測定装置(株式会社堀場製作所製、型式:F-52)を用いた計測において、25℃で5.3であった。
【0032】
<実施例2>
アニオン界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム含有率:98重量%)を1.0g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、5.4であった。
【0033】
<実施例3>
アニオン界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸ナトリウム水溶液(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム含有率:70重量%)を1.0g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、5.5であった。
【0034】
<実施例4>
アニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含有率:25重量%)を5.0g、精製水を63.8g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、4.9であった。
【0035】
<実施例5>
アニオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム水溶液(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム含有率:25重量%)を5.0g、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(ラウリル硫酸ナトリウム含有率:98重量%)を5.0g、精製水を58.8g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、4.7であった。
【0036】
<実施例6>
ダニ防除成分として脂肪酸エステルであるミリスチン酸イソプロピルを0.2g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、5.4であった。
【0037】
<実施例7>
ダニ防除成分として精油成分であるl-メントールを0.2g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、5.2であった。
【0038】
<比較例1>
アニオン界面活性剤に代えて非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油水溶液(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油含有率:12.5重量%)を1.0g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、7.1であった。
【0039】
<比較例2>
アニオン界面活性剤に代えて非イオン界面活性剤であるポリオキシエチレンラウリルエーテルを1.0g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、7.3であった。
【0040】
<比較例3>
アニオン界面活性剤に代えて両性イオン界面活性剤であるコカミドプロピルベタイン水溶液(コカミドプロピルベタイン含有率:30重量%)を1.0g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、6.5であった。
【0041】
<比較例4>
アニオン界面活性剤に代えてカチオン界面活性剤であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド水溶液(アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド含有率:50重量%)を1.0g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、7.0であった。
【0042】
<比較例5>
ステアリン酸ブチル及び界面活性剤を配合せず、精製水を68g用いた以外は、実施例1と同様に、合計100gのダニ防除剤を得た。また、実施例1と同様にpHを測定したところ、pHは、5.3であった。
【0043】
各実施例及び各比較例のダニ防除剤を用いて、ダニの忌避効果及びアレルゲンの低減効果についてそれぞれ測定した。
【0044】
〔ダニの忌避効果〕
JIS L 1920「繊維製品の防ダニ性能試験方法」の侵入阻止法を参考にして、図1に示すようにしてダニの忌避効果を確認した。すなわち、まず、各実施例及び各比較例のそれぞれのダニ忌避剤200μLをおおよそ均等に含浸させた直径約40mmのろ紙を検体1とし、直径約40mmの第1シャーレ2に敷き詰める。そして、ダニ培地3を第1シャーレ2よりも直径の大きい第2シャーレ4内に均一に広げ、10000匹相当分のダニを載置する。その第2シャーレ4の中央に第1シャーレ2を重ねて載置して、23~27℃の温度で、70~90%RHの湿度で、24時間静置した。その後、第2シャーレ4から第1シャーレ2内へのダニの侵入数を計測した(以下、「処理区のダニ侵入数」という)。そして、各実施例及び各比較例のそれぞれのダニ防除剤の代わりにアセトンのみを含浸したろ紙を用いた以外は同様に試験を行い、第2シャーレ4から第1シャーレ2内へのダニの侵入数を計測し(以下、「無処理区のダニ侵入数」という)、コントロールとした。ダニの忌避率を下記数式(1)により百分率にて算出した。
ダニの忌避率(%)=〔(無処理区のダニ侵入数-処理区のダニ侵入数)/無処理区のダニ侵入数〕×100・・・(1)
なお、これらの試験は少なくとも3回以上行われ、上記結果は各試験結果の相加平均として示されている。
【0045】
そして、ダニの忌避率が、70%以上である防除剤を良好として○、70%未満である防除剤を不良として×と評価した。
【0046】
〔アレルゲンの低減効果〕
文部科学省の「学校環境衛生管理マニュアル」(平成30年度改訂版)に、「ダニの基準値は、1m2当たりのダニが100匹以下になるとぜん息の発作が治まったという報告があることなどから、100匹/m2以下であることとされている。アレルゲンを抽出し、酵素免疫測定法によりアレルゲンを測定した場合、「100匹/m2以下」と同等のアレルゲン量は、Der2(ダニの死骸由来アレルゲン)量10μgとなるため、ダニアレルゲンの基準値は、Der2量10μg以下であることとなる。」と記載されており、これに準拠したダニアレルゲンの検査器具が各社から種々販売されている。このうち、「学校環境衛生基準」準拠商品であるダニアレルゲン検査キット(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社製、マイティチェッカー(登録商標))を用いてアレルゲンの低減効果を確認した。なお、当該ダニアレルゲン検査キットの測定原理は、ダニアレルギーの臨床分野で主要アレルゲンの一つであるDer2(Derf2とDelp2の両方)と特異的に反応するモノクローナル抗体を用いた水平展開クロマト方式によってハウスダスト等の抽出液中に含まれるダニアレルゲンレベルを赤色の発色程度で表示するものであり、酵素免疫測定法との相関係数がr=0.83と非常に高いものである。当該ダニアレルゲン検査キットでは、発色程度により、〔判定:++、判定の目安:ハッキリとしたライン、ダニアレルゲンレベル:>35μg(>350匹)/m2〕、〔判定:+、判定の目安:ラインであることが確認できる、ダニアレルゲンレベル:10μg(100匹)/m2〕、〔判定:+-、判定の目安:うっすらと発色しているのがわかる、ダニアレルゲンレベル:5μg(50匹)/m2〕、〔判定:--、判定の目安:全く発色していない、ダニアレルゲンレベル:<1μg(<10匹)/m2〕と4段階の判断基準が設けられている。
【0047】
アレルゲンの低減効果の確認について、具体的には、上記ダニアレルゲン検査キットで++と判定される、コナヒョウヒダニ抗原(ダニの生体や死骸など体由来の抗原)を用いた抗原液を予め調整し、当該抗原液と各実施例及び各比較例のそれぞれのダニ防除剤を同量混和し、60秒間振とうする。当該混和液を用いて、上記ダニアレルゲン検査キットにてダニアレルゲンレベルを赤色の発色程度で確認した。そして、判定結果が-又は-と+-の間に相当するダニ防除剤をアレルゲン低減効果が顕著にあるとして◎、判定結果が+-又は+-と+の間に相当するダニ防除剤をアレルゲン低減効果が十分にあるとして○、判定結果が+であるダニ防除剤をアレルゲン低減効果が軽微であるとして△、判定結果が+と++の間に相当する又は++であるダニ防除剤をアレルゲン低減効果が不十分であるとして×と評価した。
【0048】
各実施例及び各比較例のダニ防除剤の組成及び、これらを用いて行ったダニの忌避効果及びアレルゲンの低減効果の結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
以上の結果より、比較例1から比較例5との対比より、実施例1から実施例5において、モンモリロナイトがダニの忌避効果を阻害せず、また、アニオン界面活性剤が、層全体が弱い負の電荷を帯びているモンモリロナイトに電気的相互作用で近づくことができないないことから、モンモリロナイトのアレルゲン低減効果を阻害しないことがわかった。このため、脂肪酸エステルなど所定のダニ防除成分と、層全体が弱い負の電荷を帯びているスメクタイトに属する粘土鉱物と、アニオン界面活性剤を含有するダニ防除剤によれば、使用した箇所にダニが近づくことを抑制することができ、さらに、ダニ由来のアレルゲンを低減することができることがわかった。
【符号の説明】
【0051】
1・・・検体
2・・・第1シャーレ
3・・・ダニ培地
4・・・第2シャーレ
図1