(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124032
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/237 20180101AFI20240905BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240905BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20240905BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20240905BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20240905BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240905BHJP
【FI】
F21S43/237
F21S43/14
F21V8/00 330
F21W103:20
F21W103:60
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031922
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】坂下 麻美
(72)【発明者】
【氏名】北澤 由希子
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA09
3K244BA14
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA04
3K244EA08
3K244EA12
3K244ED02
3K244ED13
3K244ED25
(57)【要約】
【課題】専用の路面描画ユニットを搭載することなく、路面描画を可能とする車両用灯具を提供する。
【解決手段】路面描画を可能とする車両用灯具10が提供される。この車両用灯具10は、車両用灯具10の配光形成および路面描画に共用される光源と、光入射面と、第1光学形状24および第2光学形状26を有する周面22とを備える棒状導光体20であって、光源からの入射光を光入射面に受け、第1光学形状24での内部反射により車両用灯具10の配光形成用の第1出射光L1を生成するとともに、第2光学形状26での内部反射により路面描画用の第2出射光L2を生成する棒状導光体20と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面描画を可能とする車両用灯具であって、
前記車両用灯具の配光形成および路面描画に共用される光源と、
光入射面と、第1光学形状および第2光学形状を有する周面とを備える棒状導光体であって、前記光源からの入射光を前記光入射面に受け、前記第1光学形状での内部反射により前記車両用灯具の配光形成用の第1出射光を生成するとともに、前記第2光学形状での内部反射により路面描画用の第2出射光を生成する棒状導光体と、を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1光学形状は、前記棒状導光体の長手方向に沿って前記周面上の第1周方向位置に形成され、内部反射により前記第1出射光を生成する第1ステップを備え、
前記第2光学形状は、前記第1周方向位置と異なる前記周面上の第2周方向位置に形成され、内部反射により前記第2出射光を生成する第2ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1光学形状および第2光学形状は、前記棒状導光体の長手方向に沿って前記周面上の同じ周方向位置に形成され、
前記第1光学形状は、内部反射により前記第1出射光を生成する第1ステップを備え、
前記第2光学形状は、内部反射により前記第2出射光を生成する第2ステップを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
路面描画を可能とする車両用灯具であって、
前記車両用灯具の配光形成および路面描画に共用される光源と、
光入射面と、第1光学形状を有する周面とを備える棒状導光体であって、前記光源からの入射光を前記光入射面に受け、前記第1光学形状での内部反射により前記車両用灯具の配光形成用の第1出射光を生成する棒状導光体と、
前記棒状導光体に隣接配置され、第2光学形状を備える隣接光学部材であって、前記周面からの漏光を前記第2光学形状に受け、前記第2光学形状での反射または透過により路面描画用の第2出射光を生成する隣接光学部材と、を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
前記隣接光学部材は、リフレクタを備え、
前記第2光学形状は、前記リフレクタに形成され、それぞれが前記周面からの漏光を受け前記第2出射光を生成する複数の反射領域を備えることを特徴とする請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第2光学形状は、前記第2出射光を前記第1出射光に対して下向きとするように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第2出射光は、路面上の第1エリアに照射される第1ビームと、前記第1エリアに比べて遠い路面上の第2エリアに照射される第2ビームとを含み、
前記第2光学形状は、前記第1ビームを生成する第1部分と、前記第2ビームを生成する第2部分とを含み、
前記第2部分は、前記第1部分に比べて前記光源に近接することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具、例えば自動車などの車両に用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面描画を可能とする車両用灯具の例として、路面描画のための照明ユニットが灯室内に配置されたヘッドランプが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この照明ユニットは、車両の右左折時にそれを示すシーケンシャル照射パターンを路面上に照射することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記の車両用灯具について検討し、以下の課題を認識するに至った。車両用灯具に路面描画専用の照明ユニットが組み込まれる構成では、この路面描画ユニットを配置できる灯具内の場所は、その灯具に要請される法規上の要件によって制約されうる。また、専用の路面描画ユニットは、灯具意匠のなかで不必要に存在感を出すような、ある程度の大きさをもつことがある。こうした諸要因によって、路面描画ユニットが搭載先の車両用灯具の外観意匠に与える影響は、大きくなりがちである。とくに、例えば、上下方向の寸法が比較的小さい細幅のヘッドランプには、このような専用の路面描画ユニットを適合させる設計が困難となりうることが懸念される。
【0005】
また、光源とライトパイプなどの導光体とを有する車両用灯具では、光源から導光体に入射した光が灯具の配光形成に利用される。このような車両用灯具として例えばターンシグナルランプが挙げられる。しかし、こうした灯具では、実際のところ、入射光のすべてが配光形成に利用されるわけではなく、入射光の一部は漏光として導光体から出射され(捨てられ)ている。このような未利用の光を有効に活用できることが望まれる。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、専用の路面描画ユニットを搭載することなく、路面描画を可能とする車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様によると、路面描画を可能とする車両用灯具が提供される。この車両用灯具は、車両用灯具の配光形成および路面描画に共用される光源と、光入射面と、第1光学形状および第2光学形状を有する周面とを備える棒状導光体であって、光源からの入射光を光入射面に受け、第1光学形状での内部反射により車両用灯具の配光形成用の第1出射光を生成するとともに、第2光学形状での内部反射により路面描画用の第2出射光を生成する棒状導光体と、を備える。
【0008】
この態様によると、棒状導光体の第1光学形状によって車両用灯具の配光が形成されるとともに、この棒状導光体の第2光学形状によって路面描画も可能となる。専用の路面描画ユニットを搭載することなく、路面描画を可能とする車両用灯具を提供することができる。
【0009】
第1光学形状は、棒状導光体の長手方向に沿って周面上の第1周方向位置に形成され、内部反射により第1出射光を生成する第1ステップを備えてもよい。第2光学形状は、第1周方向位置と異なる周面上の第2周方向位置に形成され、内部反射により第2出射光を生成する第2ステップを備えてもよい。
【0010】
第1光学形状および第2光学形状は、棒状導光体の長手方向に沿って周面上の同じ周方向位置に形成されてもよい。第1光学形状は、内部反射により第1出射光を生成する第1ステップを備えてもよい。第2光学形状は、内部反射により第2出射光を生成する第2ステップを備えてもよい。
【0011】
本発明の別の態様もまた、路面描画を可能とする車両用灯具に関する。この車両用灯具は、車両用灯具の配光形成および路面描画に共用される光源と、光入射面と、第1光学形状を有する周面とを備える棒状導光体であって、光源からの入射光を光入射面に受け、第1光学形状での内部反射により車両用灯具の配光形成用の第1出射光を生成する棒状導光体と、棒状導光体に隣接配置され、第2光学形状を備える隣接光学部材であって、周面からの漏光を第2光学形状に受け、第2光学形状での反射または透過により路面描画用の第2出射光を生成する隣接光学部材と、を備える。
【0012】
この態様によると、棒状導光体の第1光学形状によって車両用灯具の配光が形成されるとともに、この棒状導光体の隣接光学部材の第2光学形状によって路面描画も可能となる。専用の路面描画ユニットを搭載することなく、路面描画を可能とする車両用灯具を提供することができる。
【0013】
隣接光学部材は、リフレクタを備えてもよい。第2光学形状は、リフレクタに形成され、それぞれが周面からの漏光を受け第2出射光を生成する複数の反射領域を備えてもよい。
【0014】
第2光学形状は、第2出射光を第1出射光に対して下向きとするように構成されていてもよい。このようにすれば、第2出射光を路面に向けて照射することが容易になる。
【0015】
第2出射光は、路面上の第1エリアに照射される第1ビームと、第1エリアに比べて遠い路面上の第2エリアに照射される第2ビームとを含んでもよい。第2光学形状は、第1ビームを生成する第1部分と、第2ビームを生成する第2部分とを含んでもよい。第2部分は、第1部分に比べて光源に近接してもよい。このようにすれば、第2光学形状のうち光源に比較的近い部分が路面上で比較的遠いエリアでの路面描画を担うことができる。比較的暗くなりがちな遠方をより明るく照らすことが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、専用の路面描画ユニットを搭載することなく、路面描画を可能とする車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係る車両用灯具を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す車両用灯具のA-A断面を示す概略断面図である。
【
図3】実施の形態に係り、車両用灯具による路面描画パターンの例を示す概略図である。
【
図4】実施の形態に係り、第2光学形状の配置と路面上での描画エリアとの例示的な関係を示す概略図である。
【
図5】
図5(a)から
図5(c)は、変形例に係る車両用灯具を示す概略図である。
【
図6】変形例に係る車両用灯具を示す概略図である。
【
図7】他の実施の形態に係る車両用灯具を示す概略図である。
【
図8】
図7に示す車両用灯具のC-C断面を示す概略断面図である。
【
図9】変形例に係る車両用灯具を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に用いられる「第1」、「第2」等の用語は、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0019】
図1は、実施の形態に係る車両用灯具10を示す概略図である。
図1には、車両用灯具10の概略水平断面図が示されている。
図2は、
図1に示す車両用灯具10のA-A断面(鉛直断面)を示す概略断面図である。
【0020】
車両用灯具10は、詳細は後述するが、車両用灯具10の本来の灯具機能(すなわち、車両用灯具10として求められる配光形成)を提供するとともに、路面描画を可能とするように構成されている。この実施の形態では、車両用灯具10は、例えばターンシグナルランプとして動作可能であるとともに、路面描画機能を提供することができる。車両用灯具10は、車両の前部に設置可能であってもよく、例えば、車両用前照灯の一部を構成し、または車両用前照灯に隣接して配置されてもよい。あるいは、車両用灯具10は、車両の後部に設置可能であってもよく、例えば、リアコンビネーションランプの一部を構成し、または車両後部の他の車両用標識灯(例えば、テールランプ、ストップランプ、バックアップランプなど)に隣接して配置されてもよい。
【0021】
車両用灯具10は、車両用灯具10は、開口部を有するランプボディ12と、ランプボディ12の開口部を覆う透光性のアウターカバー14とを備える。アウターカバー14は、アウターレンズと呼ばれることもある。ランプボディ12とアウターカバー14はともに、例えば車幅方向(
図1において左右方向であってもよい)またはその他の方向に延在する細長形状を有してもよい。通例、ランプボディ12は、例えば汎用樹脂材料など適宜の材料で形成され、アウターカバー14は、透光性をもつ合成樹脂材料またはガラスなど適宜の透光材料で形成されている。
【0022】
ランプボディ12とアウターカバー14とが組み合わされてそれらの間に形成される灯室16内には、光源18と、棒状導光体20とが収容される。棒状導光体20は、ライトパイプとも称されうる。光源18および棒状導光体20は、それぞれランプボディ12に固定される。光源18および棒状導光体20は、それぞれ適宜の支持部材(図示せず)に取り付けられ、これら支持部材がランプボディ12に固定されてもよい。
【0023】
光源18は、車両用灯具10の配光形成および路面描画に共用される。光源18は、少なくとも1つの発光素子18aと、発光素子18aを実装した基板18bとを備える。発光素子18aは、例えば発光ダイオード(LED)などの半導体発光素子である。基板18bは、例えばプリント基板などの回路基板であり、基板18b上に実装された発光素子18aを制御するように構成される。基板18bは、これに接続される配線を介して車両用灯具10外の電源と接続され、給電される。なお、光源18は、その他の形式の光源であってもよい。光源18は、支持部材としても機能しうるヒートシンクとも呼ばれる放熱部材(図示せず)に搭載されていてもよい。
【0024】
棒状導光体20は、その長手方向に細長く延びている柱状の形状を有する。棒状導光体20は、長手方向における任意の位置に少なくとも1つの湾曲部を有してもよい。例えば、図示されるように、棒状導光体20は、ランプボディ102およびアウターカバー104の湾曲形状に沿って湾曲して延びていてもよい。または、棒状導光体20は、湾曲部をもつことなく直線状に延びていてもよい。棒状導光体20の長手方向に垂直な断面は、例えば円形であり、またはその他の適切な形状を有してもよい。
【0025】
棒状導光体20は、透光性をもつ合成樹脂材料またはガラスなど適宜の透光材料で形成されている。棒状導光体20は、例えば無色透明であるが、有色の透明であってもよい。必要とされる場合には、棒状導光体20は、粒子状の光拡散材を含有してもよい。棒状導光体20は、射出成形など適宜の公知の成形方法を用いて製造されうる。
【0026】
棒状導光体20は、光入射面21と周面22を備える。光入射面21は、光源18、具体的には発光素子18aと対向する棒状導光体20の一方の端面を含む。周面22は、棒状導光体20の両端面を接続する棒状導光体20の側面にあたる。周面22は、第1光学形状24および第2光学形状26を有する。
【0027】
なお、必要とされる場合には、光源18と光入射面21との間に、光源18から光入射面21に効率的に光を入射させるための光学素子が設けられてもよい。また、棒状導光体20は、複数の光入射面21を有してもよく、例えば、追加の光源が棒状導光体20のもう1つの端面に対向して配置され、この端面が追加の光入射面として利用されてもよい。
【0028】
棒状導光体20は、光源18からの入射光を光入射面21に受け、第1光学形状24での内部反射により車両用灯具10の配光形成用の第1出射光L1を生成するとともに、第2光学形状26での内部反射により路面描画用の第2出射光L2を生成するように構成されている。第1光学形状24は、車両用灯具10の配光形成のための第1の配光制御素子として周面22の一部分に形成され、第2光学形状26は、路面描画のための第2の配光制御素子として第1光学形状24とは異なる周面22の一部分に形成されている。
【0029】
この実施の形態では、第1光学形状24および第2光学形状26は、周面22のうち後側(すなわちランプボディ12側)の部分に形成されている。光入射面21から棒状導光体20に入射して第1光学形状24および第2光学形状26により生成された第1出射光L1および第2出射光L2は、周面22のうち前側(すなわちアウターカバー14側)の部分から出射し、アウターカバー14に直接照射される。第1出射光L1は、棒状導光体20からアウターカバー14を通じて車両用灯具10の外部に出射され、車両用灯具10の前方に配光を形成する。第2出射光L2は、棒状導光体20からアウターカバー14を通じて車両用灯具10の外部に出射され、路面描画パターンを路面に形成する。
【0030】
なお、必要とされる場合には、第1出射光L1および第2出射光L2の少なくとも一方を制御するための例えばインナーレンズなどの光学素子が棒状導光体20とアウターカバー14との間に設けられてもよい。
【0031】
図1および
図2に例示されるように、第1光学形状24は、棒状導光体20の長手方向に沿って周面22上の第1周方向位置に形成されている。第1光学形状24は、内部反射により第1出射光L1を生成する第1ステップを備える。第2光学形状26は、第1周方向位置と異なる周面22上の第2周方向位置に形成されている。第2光学形状26は、内部反射により第2出射光L2を生成する第2ステップを備える。これらのステップは、棒状導光体20の内部を導光される光を全反射して周面22からアウターカバー14に向けて出射するように形成された凹凸形状または適宜の反射素子であり、公知の構成を適宜採用することができる。
【0032】
第2光学形状26は、第2出射光L2を第1出射光L1に対して下向きとするように周面22に形成されている。通例、第1出射光L1は車両用灯具10の正面に向けて(つまり概ね水平方向に)出射される。そのため、第1光学形状24が形成される周面22上の第1周方向位置は、周面22のうち後側部分で高さ方向(
図2において上下方向)に中央部にある。第2光学形状26が形成される周面22上の第2周方向位置は、周面22のうち後側部分で第1周方向位置に対して上側に位置する。このような配置により、第2光学形状26は内部反射により第2出射光L2を第1出射光L1に対して下方に向けることができる。第2出射光L2を路面(例えば
図2に示される路面R)に直接照射することが可能になる。
【0033】
この例では、第2光学形状26は、第1光学形状24に比べて周面22上に疎に分布している。例えば、第1光学形状24を構成する複数の第1ステップは、棒状導光体20の長手方向に互いに隣接して密に並んでいるのに対して、第2光学形状26を構成する複数の第2ステップは、棒状導光体20の長手方向に互いに間隔をあけて疎に並んでいる。第2光学形状26が棒状導光体20の周面22上の特定部分に集中して配置される場合に比べて、このような第2光学形状26の分散配置は、外からの車両用灯具10の見映えにおいて、棒状導光体20の光り方に長手方向に均一性をもたらすことができ、有利でありうる。
【0034】
また、車両用灯具10は、棒状導光体20に隣接して配置された隣接光学部材28を備えてもよい。隣接光学部材28は、棒状導光体20に沿って長手方向に延在しており、棒状導光体20の後側(つまりランプボディ12と棒状導光体20との間)で棒状導光体20から隙間をあけて配置されている。隣接光学部材28は、棒状導光体20の周面22から漏れ出る漏光を受け、これを反射して前方に向けるリフレクタとして機能してもよい。隣接光学部材28は、棒状導光体20の周面22と対向し、反射面として機能する対向表面29を備えてもよい。
【0035】
図3は、実施の形態に係り、車両用灯具10による路面描画パターンPの例を示す概略図である。路面描画パターンPは、第2光学形状26の設計に応じた固定パターンであり、車両用灯具10(具体的には光源18)の点灯により路面に照射される。設計者が第2光学形状26を適切に設計することにより、第2光学形状26を構成する複数の第2ステップの各々が路面上で互いに異なる位置にある点状の領域を照らすように、各第2ステップで生成される第2出射光L2の照射方向を設定することができる。照らされる点状領域の組合せによって所望の路面描画パターンPを路面上に形成することができる。
【0036】
この実施の形態では、車両用灯具10は路面描画を可能とするターンシグナルランプであるから、路面描画パターンPは、車両の進行方向(右折または左折)を示す例えば直線状またはその他適宜の形状を有してもよい。図示の例では、路面描画パターンPは、連続した直線状のパターンであるが、点線状のパターンであってもよい。また、路面描画パターンPは、ターンシグナルランプの点滅とともに路面上で点滅する。このようにして、車両周囲の歩行者H等の対象に車両の進行方向を効果的に知らせることができる。
【0037】
したがって、実施の形態によると、車両用灯具10は、ターンシグナルランプの配光形成のための光源18と棒状導光体20を用いて路面描画を行うことができる。言い換えれば、車両用灯具10は、光源18と棒状導光体20を路面描画に兼用することができ、専用の路面描画ユニットを追加する必要が無い。よって、路面描画ユニットの搭載に伴って生じうる車両用灯具10の外観意匠への影響や設計上の困難を避けることができる。
【0038】
既存の車両用灯具では、光源から棒状導光体に入射した光の一部が、入射側とは反対側の導光体端面から出射され、漏光として捨てられている。これに対して、実施の形態によると、光源18から棒状導光体20に入射した光を車両用灯具10の配光形成だけでなく路面描画にも利用することができる。これにより、車両用灯具10は、漏光を減らし、光源18からの光をより有効に活用することができる。
【0039】
図4は、実施の形態に係り、第2光学形状26の配置と路面上での描画エリアとの例示的な関係を示す概略図である。上述のように、第2光学形状26は、棒状導光体20の長手方向に沿って周面22上に形成されている。簡単のために、
図4では、第1光学形状24の図示は省略されている。
【0040】
図示されるように、第2光学形状26の位置が光源18に近いほど、路面描画パターンPにおける対応する照射エリアが遠方となるように、第2光学形状26と路面描画パターンPが関係づけられていてもよい。
図4では、長手方向に棒状導光体20の中央部にある第2光学形状26について路面描画パターンPにおける照射エリアとの対応を代表的に示しているが、他の位置にある第2光学形状26についても路面描画パターンPと同様の対応関係を有しうる。
【0041】
第2光学形状26は、第1部分26aと第2部分26bを含んでもよい。第2部分26bは、第1部分26aに比べて、棒状導光体20の長手方向において周面22上で光源18に近接している。第1部分26aと第2部分26bは、棒状導光体20の長手方向において隣り合うように周面22上に配置された第2光学形状26のうちの2つの部分であって、図示のように、両者間にいくらかの間隔をあけて長手方向に並んでいてもよいし、あるいは、隙間なく長手方向に隣接していてもよい。第1部分26aと第2部分26bはそれぞれ、1つ又は複数の第2ステップを有してもよい。
【0042】
第1部分26aは、第2出射光L2の一部となる第1ビームL2aを生成し、第2部分26bは、第2出射光L2の一部となる第2ビームL2bを生成する。第1ビームL2aは、路面上の第1エリアA1に照射され、第2ビームL2bは、路面上の第2エリアA2に照射される。第2エリアA2は、第1エリアA1に比べて遠方にある。
【0043】
同様にして、第2光学形状26は、1つ又は複数の第2ステップを有する第3部分26cを含んでもよい。第3部分26cは、棒状導光体20の長手方向において第2部分26bと隣り合うように周面22上で第2部分26bよりも光源18に近接して配置されている。第3部分26cは、第2出射光L2の一部となる第3ビームL2cを生成する。第3ビームL2cは、第2エリアA2よりも遠方にある路面上の第3エリアA3に照射される。
【0044】
このように、第2光学形状26は、光源18からの距離が異なる複数の部分を備え、光源18により近接した部分が路面描画パターンPのなかでより遠方となる路面上のエリアに照射されるビームを生成するように構成されてもよい。このようにすれば、第2光学形状26のうち光源18に比較的近い部分が路面上で比較的遠いエリアでの路面描画を担うことができる。光源18に近い第2光学形状26の部分に光源18から到達する光は、それよりも遠い第2光学形状26の部分に比べて強く、その結果、より明るいビームを生成することができる。比較的暗くなりがちな遠方をより明るく照らすことが可能になる。光源18から第2光学形状26の各部分への距離に応じた各ビームの明るさの違いによる路面上の各エリアの明るさの違いを軽減し、路面描画パターンPの明るさの均一性を向上することができる。
【0045】
図5(a)から
図5(c)は、変形例に係る車両用灯具10を示す概略図である。
図5(a)には、光源18および棒状導光体20の概略側面図が示されている。
図5(b)には、
図5(a)のB1-B1断面を概略的に示し、
図5(c)には、
図5(a)のB2-B2断面を概略的に示す。
【0046】
この変形例では、第1光学形状24および第2光学形状26は、棒状導光体20の長手方向に沿って周面22上の同じ周方向位置に形成される。言い換えれば、第1光学形状24と第2光学形状26は、棒状導光体20の長手方向に互いに異なる位置にあり、例えば、長手方向に交互に配置されている。上述の実施の形態と同様に、第1光学形状24は、内部反射により第1出射光L1を生成する第1ステップを備え、第2光学形状26は、内部反射により第2出射光L2を生成する第2ステップを備える。
【0047】
図5(b)には第1光学形状24が示され、
図5(c)には第2光学形状26が示されている。これらの比較からわかるように、第2光学形状26の反射面27は、第1光学形状24の反射面25に比べて下向きに傾斜した角度をもつ。これにより、上述の実施の形態と同様に、第2光学形状26は、第2出射光L2を第1出射光L1に対して下向きとすることができる。
【0048】
図6は、変形例に係る車両用灯具10を示す概略図である。棒状導光体20の周面22には、第1光学形状24に加えて、第1部分26a、第2部分26bおよび第3部分26cを有する第2光学形状26が形成されている。ただし、簡単のために、
図6では第1光学形状24の図示は省略されている。第1部分26a、第2部分26bおよび第3部分26cはそれぞれ、第2出射光L2を構成する第1ビームL2a、第2ビームL2bおよび第3ビームL3cを生成し、これらはそれぞれ路面描画パターンPの第1エリアA1、第2エリアA2および第3エリアA3を照らす。このようにして、点線状の路面描画パターンPが路面に形成されてもよい。
【0049】
図4を参照して述べた実施の形態と同様に、光源18により近接した第2光学形状26の部分(例えば第3部分26c)が、路面描画パターンPのなかでより遠方となる路面上のエリア(例えば第3エリアA3)に照射されるビーム(例えば第3ビームL2c)を生成してもよい。
【0050】
第2光学形状26を構成する第2ステップは、第1光学形状24を構成する第1ステップに比べて微細であってもよい。第2光学形状26は、各列の第2ステップが棒状導光体20の周方向に隣接した複数列の第2ステップを有してもよい。言い換えれば、第2光学形状26の各部分は、マトリックス状に配置された多数の第2ステップを有してもよい。
【0051】
図7は、他の実施の形態に係る車両用灯具を示す概略図である。
図7には、車両用灯具10の概略水平断面図が示されている。
図8は、
図1に示す車両用灯具10のC-C断面(鉛直断面)を示す概略断面図である。
【0052】
上述の実施の形態と同様に、車両用灯具10は、光源18と棒状導光体20を備える。光源18は、車両用灯具10の配光形成および路面描画に共用される。棒状導光体20は、光入射面21と、第1光学形状24を有する周面22とを備える。棒状導光体20は、光源18からの入射光を光入射面21に受け、第1光学形状24での内部反射により車両用灯具10の配光形成用の第1出射光L1を生成する。
【0053】
また、車両用灯具10は、棒状導光体20に隣接配置された隣接光学部材28を備える。隣接光学部材28は、隣接光学部材28は、棒状導光体20に沿って長手方向に延在しており、棒状導光体20の後側(つまりランプボディ12と棒状導光体20との間)で棒状導光体20から隙間をあけて配置されている。隣接光学部材28は、棒状導光体20の周面22から漏れ出る漏光L3を受け、これを反射して前方に向けるリフレクタとして機能する。隣接光学部材28は、棒状導光体20の周面22と対向し、反射面として機能する対向表面29を備えてもよい。
【0054】
ただし、この実施の形態では、第2光学形状26が、棒状導光体20ではなく、隣接光学部材28に形成されている。隣接光学部材28は、周面22からの漏光L3を第2光学形状26に受け、第2光学形状26での反射により路面描画用の第2出射光L2を生成するように構成されている。そこで例えば、第2光学形状26は、隣接光学部材28すなわちリフレクタに形成され、それぞれが周面22からの漏光L3を受け第2出射光L2を生成する複数の反射領域30を備える。複数の反射領域30は、対向表面29に形成され、棒状導光体20の長手方向に沿って並んでいる。
【0055】
第1出射光L1は、棒状導光体20からアウターカバー14を通じて車両用灯具10の外部に出射され、車両用灯具10の前方に配光を形成する。第2出射光L2は、隣接光学部材28からアウターカバー14を通じて車両用灯具10の外部に出射され、路面描画パターンを路面に形成する。
【0056】
したがって、この実施の形態によると、棒状導光体20の第1光学形状24によって車両用灯具10の配光が形成されるとともに、隣接光学部材28の第2光学形状26によって路面描画も可能となる。専用の路面描画ユニットを搭載することなく、路面描画を可能とする車両用灯具10を提供することができる。
【0057】
なお、第2光学形状26、すなわち複数の反射領域30は、第2出射光を第1出射光に対して下向きとするように隣接光学部材28の対向表面29に形成されていてもよい。
図8に示されるように、反射領域30は、下向きに傾斜した角度を有してもよい。これにより、反射領域30は、第2出射光L2を路面に向けて照射することが容易になる。
【0058】
上述の実施の形態と同様に、第2光学形状26は、光源18からの距離が異なる複数の部分を備え、光源18により近接した部分が路面描画パターンのなかでより遠方となる路面上のエリアに照射されるビームを生成するように構成されてもよい。
【0059】
図9は、変形例に係る車両用灯具10を示す概略図である。隣接光学部材28は、棒状導光体20の周面22からの漏光L3を第2光学形状26に受け、第2光学形状26での透過により路面描画用の第2出射光L2を生成するように構成されていてもよい。上述の反射領域30に代えて、透過領域が用いられてもよい。
【0060】
隣接光学部材28は、例えば、複数の透過領域(例えばスリット)を有する遮光板28aを備えてもよい。棒状導光体20からの漏光L3が遮光板28aのスリット32を透過することで第2出射光L2へと整形され、これが遮光板28aの背後のリフレクタ28bで路面に向けて反射される。このようにしても、専用の路面描画ユニットを搭載することなく、路面描画を可能とする車両用灯具10を提供することができる。
【0061】
本発明は、上述した実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、実施の形態及び変形例を組み合わせたり、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのように組み合わせられ、もしくはさらなる変形が加えられた実施の形態や変形例も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態や変形例、及び上述した実施の形態や変形例と以下の変形との組合せによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、変形例及びさらなる変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0062】
上述の実施の形態では、第2光学形状26が複数の反射ステップを備える場合を例として説明しているが、第2光学形状26は、他の構成も可能である。例えば、第2光学形状26は、棒状導光体20の周面22上に形成された、いわゆるマイクロプリズムレンズなどの複数のレンズ素子を備えてもよい。第2出射光L2は、レンズ素子を通じて棒状導光体20の周面22から出射し、棒状導光体20の背後のリフレクタで路面に向けて反射されてもよい。
【0063】
上述の実施の形態では、車両用灯具10がターンシグナルランプとして動作する場合を例として説明しているが、実施の形態に係る路面描画機能を提供可能な車両用灯具は、例えば、テールランプ、ストップランプ(例えばハイマウントストップランプ)、クリアランスランプまたはデイタイムランニングランプなどの車両用標識灯、またはその他の車両用灯具であってもよい。あるいは、実施の形態に係る車両用灯具10は、装飾用に車両に設置されるアクセサリランプや、運転支援または自動運転に関連する情報を車両の周囲(歩行者、他の車両など)に知らせるために光を発するコミュニケーションランプに適用されてもよい。
【0064】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0065】
10 車両用灯具、 18 光源、 20 棒状導光体、 21 光入射面、 22 周面、 24 第1光学形状、 26 第2光学形状、 26a 第1部分、 26b 第2部分、 28 隣接光学部材、 28b リフレクタ、 30 反射領域、 L1 第1出射光、 L2 第2出射光、 L2a 第1ビーム、 L2b 第2ビーム、 A1 第1エリア、 A2 第2エリア。