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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124045
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】組電池、及び電池盤
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6556 20140101AFI20240905BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240905BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20240905BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240905BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20240905BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240905BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240905BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20240905BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20240905BHJP
   H01M 50/262 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M10/6556
H01M10/613
H01M10/6569
H01M10/6551
H01M10/6563
H01M10/647
H01M50/204 401H
H01M50/209
H01M50/227
H01M50/262
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031951
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦美
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 法仁
(72)【発明者】
【氏名】王 蕾
(72)【発明者】
【氏名】吉川 賢一
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031KK01
5H031KK08
5H040AA28
5H040AS01
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H040CC20
(57)【要約】
【課題】充放電により組電池のセルが温度上昇するときに、組電池の温度上昇を一時的に抑制し、かつ、組電池の温度を平滑化する。
【解決手段】セルを収容室に並列させて収容するケースと、セル下方に配設された金属板と、前記金属板により上面が接着封止される相変化材料充填部と、前記相変化材料充填部の下面に接着されるヒートシンクと、を備え、前記相変化材料充填部は、ケーシング内に配設された金属仕切り板によって仕切られた複数の充填空間と、複数の該充填空間に充填された相変化材料と、を備え、前記ヒートシンクは、シンク基部の下面に櫛状を形成するように複数並べて配設されたフィンを備え、複数の該フィンが、前記ケースに収容された複数の前記セルのうち温度が上昇しやすい該セルに対応するように、前記シンク基部の下面の中で該セルの高さ方向から見て十字状となるフィン群を形成する、組電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角柱セルと、
前記角柱セルを収容室に並列させて複数収容する樹脂ケースと、
前記角柱セルの下方に配設された金属板と、
前記金属板により上面が接着封止される相変化材料充填部と、
前記相変化材料充填部の下面に接着され前記角柱セルを冷却するヒートシンクと、を備え、
前記相変化材料充填部は、ケーシングと、前記ケーシング内に配設された金属仕切り板によって仕切られた複数の充填空間と、複数の該充填空間に充填された相変化材料と、を備え、
前記ヒートシンクは、平板状のシンク基部と、該シンク基部の下面に櫛状を形成するように複数並べて配設されたフィンと、隣り合う該フィン同士の間に形成された通風路と、を備え、
複数の該フィンが、前記樹脂ケースに収容された複数の前記角柱セルのうち温度が上昇しやすい該角柱セルに対応するように、前記シンク基部の下面の中で、空気の流れる方向における上流側の上流中央領域と、該上流中央領域につながるとともに該上流中央領域よりも広い中流領域と、該中流領域につながるとともに該空気の流れる方向における下流側の下流中央領域と、に配設されて、該角柱セルの高さ方向から見て十字状となるフィン群を形成する、組電池。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、前記シンク基部の下面の中で、該シンク基部の下面の面方向において前記フィン群の側方に位置する領域に櫛状を形成するように複数並べて配設された側方フィンを備え、
隣り合う該側方フィンのピッチ幅は、前記フィン群を形成する前記フィンのピッチ幅よりも大きい、請求項1に記載の組電池。
【請求項3】
絶縁性能を有し前記角柱セルの一対の長側面及び底面をそれぞれ覆うように該角柱セルを把持した状態で該角柱セルと共に前記樹脂ケースに収容されるセル把持部と、
該セル把持部の下面に倣って変形可能であり、前記樹脂ケースの底板に貫通形成された枠孔に収容され、前記セル把持部の下面に密着した状態で前記金属板と該セル把持部とを接着する伝熱可塑性材料と、を備える請求項1に記載の組電池。
【請求項4】
前記充填空間は、正六角柱状であり、
前記相変化材料充填部は、複数の前記充填空間により形成されたハニカム構造を有する請求項1に記載の組電池。
【請求項5】
前記相変化材料充填部の複数の前記充填空間は、それぞれ矩形体状である請求項1に記載の組電池。
【請求項6】
前記金属板と前記相変化材料充填部との間にホットメルトフィルムが配設され、
該相変化材料充填部は、該金属板及び該ホットメルトフィルムにより上面が接着封止された請求項1に記載の組電池。
【請求項7】
前記樹脂ケースは、前記収容室の外に設けられボルトが通る第1の貫通孔を備え、
前記金属板は、前記第1の貫通孔に連通するとともに前記ボルトが通る第2の貫通孔を備え、
前記相変化材料充填部は、前記第2の貫通孔に連通するとともに前記ボルトが通る第3の貫通孔を備え、
前記ヒートシンクは、前記第3の貫通孔に連通するとともに前記ボルトが螺合するボルト穴を備え、
前記第1の貫通孔、前記第2の貫通孔、前記第3の貫通孔に通されるとともに前記ボルト穴に螺合した前記ボルトによって、前記樹脂ケース、前記金属板、前記相変化材料充填部、及び前記ヒートシンクが締結固定される請求項1に記載の組電池。
【請求項8】
複数の角柱セル、及び該角柱セルを冷却するヒートシンクを備える複数の組電池と、
複数の前記組電池を収容し、正面板及び該正面板と反対側に位置する背面板を有する筐体と、
前記筐体内で上下方向に間隔を空けて並べて複数配設され、前記組電池がそれぞれ載置される棚板と、
前記筐体の正面板に形成された複数の吸気口と、
前記筐体内に複数の前記吸気口にそれぞれ対向するように配設され、前記吸気口から該筐体外の空気を該筐体内に吸い込み、該空気を前記組電池のヒートシンクに向けて送り該ヒートシンクを通過させるファンと、
前記筐体の背面板に形成され前記ヒートシンクを通過した前記空気を該筐体外に排気する排気口と、
前記棚板と前記上下方向において段状に隣り合う別の前記棚板との間に形成された盤内通風路と、を備え、
前記棚板は、前記上下方向に貫通形成された開口部を有し、
前記組電池に取り付けられ前記棚板の上面の面方向に沿って延在し、前記組電池の前記ヒートシンクを前記開口部を通過させ前記棚板の下面から下方に位置する前記盤内通風路に露出させた状態で、前記開口部よりも前記面方向における外側に張り出し前記棚板の上面で支持される被支持板を備え、
前記ファンにより前記吸気口から吸い込まれた前記空気を、前記棚板によって前記排気口側へ流れるようにガイドしつつ前記棚板の下面から露出した前記ヒートシンクを通過させた後に前記排気口から排気する、電池盤。
【請求項9】
前記組電池は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の組電池である請求項8に記載の電池盤。
【請求項10】
前記正面板の内側面の前記上下方向における中間領域に上下に並べて配設された上入口偏向板と下入口偏向板とを備え、
前記上入口偏向板は、前記正面板の内側面から前記筐体の内部側の斜め下方に向かって傾斜するように延在し、前記下入口偏向板は、前記正面板の内側面から前記筐体の内部側の斜め上方に向かって傾斜するように延在し、
前記上入口偏向板は、該上入口偏向板よりも前記上下方向において上方に位置する前記ファンが前記吸気口から吸い込んだ前記空気を、前記上下方向において段状に隣り合う1つの前記ヒートシンクと別の1つの前記ヒートシンクとに分配するように偏向し、
前記下入口偏向板は、該下入口偏向板よりも前記上下方向において下方に位置する前記ファンが前記吸気口から吸い込んだ前記空気を、前記上下方向において段状に隣り合う1つの前記ヒートシンクと別の1つの前記ヒートシンクとに分配するように偏向する、請求項8に記載の電池盤。
【請求項11】
前記組電池は、請求項7に記載の組電池であり、
前記被支持板は、前記樹脂ケースの前記第1の貫通孔、及び前記金属板の前記第2の貫通孔に連通するとともに前記ボルトが通る被支持板貫通孔を備え、
前記第1の貫通孔、前記被支持板貫通孔、前記第2の貫通孔、前記相変化材料充填部の前記第3の貫通孔に通されるとともに前記ヒートシンクの前記ボルト穴に螺合した前記ボルトによって、前記樹脂ケース、前記被支持板、前記金属板、前記相変化材料充填部、及び前記ヒートシンクが締結固定される請求項8に記載の電池盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、組電池、及び電池盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組電池(電池モジュール)は、絶縁性を持たせた樹脂ケース内に複数のセル(電池)を収容し、所望の電圧電流となるように直並列にバスバー等で接続されたセル群を備えている。そして、セル群が正常な状態となっているか否かを監視する監視基板を、樹脂ケース等に収納し、該監視基板に主回路と通信ケーブル配線部とを配設する場合がある。該監視基板は、例えば、Cell Monitoring Unit(CMU)と呼ばれている。そして、組電池をさらに複数個直並列に配置することで、電池システム、電池盤、又は電池パックとして所望の電力、電圧、及び電流を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6892451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非常走行用電池装置やUPS(無停電電源装置)用蓄電池盤に用いられ、充放電時において急速に温度上昇する電池システムがある。そして、電池システムのモジュール内において、他のセルよりも温度が高いセルがあると、そのセルだけ先に内部の劣化が加速する。そのため、内部抵抗が上昇し、且ジュール熱が上昇することで、セル温度が上昇して容量が減少する。例えば、リチウムイオン電池等はエネルギー密度が低いので、高密度に組電池、電池システム、電池盤、又は電池パックに複数配置することが多く、配置場所によって、セルの急速充放電により急速に温度上昇するホットスポットができやすい。そして、ホットスポットの発生は、上記電池システム等における全体の性能低下の原因となる。
【0005】
充放電によって、組電池のセルが例えば急激に温度上昇するときに、組電池の温度上昇を一時的にパッシブに抑制し、また、組電池の温度を平滑化するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本実施形態の組電池は、複数の角柱セルと、前記角柱セルを収容室に並列させて複数収容する樹脂ケースと、前記角柱セルの下方に配設された金属板と、前記金属板により上面が接着封止される相変化材料充填部と、前記相変化材料充填部の下面に接着され前記角柱セルを冷却するヒートシンクと、を備え、前記相変化材料充填部は、ケーシングと、前記ケーシング内に配設された金属仕切り板によって仕切られた複数の充填空間と、複数の該充填空間に充填された相変化材料と、を備え、前記ヒートシンクは、平板状のシンク基部と、該シンク基部の下面に櫛状を形成するように複数並べて配設されたフィンと、隣り合う該フィン同士の間に形成された通風路と、を備え、複数の該フィンが、前記樹脂ケースに収容された複数の前記角柱セルのうち温度が上昇しやすい該角柱セルに対応するように、前記シンク基部の下面の中で、空気の流れる方向における上流側の上流中央領域と、該上流中央領域につながるとともに該上流中央領域よりも広い中流領域と、該中流領域につながるとともに該空気の流れる方向における下流側の下流中央領域と、に配設されて、該角柱セルの高さ方向から見て十字状となるフィン群を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態の組電池の各構成を説明する分解斜視図である。
図2図2は、組電池の角柱セルの一例を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態の組電池を下側ケースの底板側から見て説明する斜視図である。
図4図4は、実施形態の組電池の下側ケースの収容室内を説明する斜視図である。
図5図5は、実施形態の組電池の概略的な断面図である。
図6図6は、相変化材料充填部を説明する平面図である。
図7図7は、実施例1のヒートシンクを下面側から見て説明する斜視図である。
図8図8は、実施例1のヒートシンクの十字状のフィン群を説明する下面図である。
図9図9は、実施例2のヒートシンクのフィン群の側方に配設された側方フィンを説明する下面図である。
図10図10は、実施形態の組電池における温度上昇がしやすいセルを説明する斜視図である。
図11図11は、相変化材料充填部を備える実施形態の組電池の温度と時間との関係を示すグラフ、及び相変化材料充填部を備えていない組電池の温度と時間との関係を示すグラフである。
図12図12は、相変化材料充填部を備える実施形態の組電池の温度と時間との関係を示すグラフ、相変化材料充填部を備えていない組電池の温度と時間との関係を示すグラフ、及び充電率と時間との関係を示すグラフである。
図13図13は、実施形態1の電池盤の構造を説明するための側面図である。
図14図14は、棚板と、棚板に複数載置される組電池とを示す分解斜視図である。
図15図15は、別例の棚板と、電池盤用に金属板、相変化材料充填部、及びヒートシンクのサイズが変更された組電池と、を説明する分解斜視図である。
図16図16は、実施形態1の電池盤の筐体の正面板に形成された吸気口とファンとの位置関係を説明する説明図である。
図17図17は、実施形態2の電池盤の構造を説明するための側面図である。
図18図18は、実施形態2の電池盤の筐体の正面板に形成された吸気口とファンとの位置関係を説明する説明図である。
図19図19は、実施形態2の電池盤の棚板と、棚板に複数載置される組電池とを示す分解斜視図である。
図20図20は、実施形態2の電池盤の棚板と、棚板に載置された組電池とを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(組電池の実施形態)
以下、図1図5を用いて複数の角柱セル10(以下、セル10とする)を備える組電池4の例示的かつ模式的な実施形態を開示する。なお、以下の説明では、便宜上、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向が規定されている。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに直交している。例えば、X軸方向及びY軸方向で形成される平面を水平面とし、Z軸方向を鉛直方向とする。X軸方向は、組電池4の長手方向に沿う方向である。Y軸方向は、組電池4の短手方向に沿う方向である。Z軸方向は、組電池4の高さ方向に沿う方向である。X軸方向は、+X方向と-X方向とを含む。Y軸方向は、+Y方向と-Y方向とを含む。Z軸方向は、+Z方向(上方向)と-Z方向(下方向)とを含む。なお、本実施形態における上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、組電池4の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。
【0009】
実施形態の組電池4は、種々の装置や、機械、設備等に設置され、それら種々の装置や、機械、設備の電源として使用される。組電池4は、自動車や鉄道車両等の電源等、移動型の電源としても使用される他、例えば、POS(Point Of Sales)システム用の電源等、定置型の電源としても使用されうる。また、種々の装置等には、複数の、本実施形態で示される組電池4を、直列あるいは並列に接続したセット(例えば棚状に上下に重ねたセット)として搭載することもできる。組電池4は、電池モジュールとも称される。
【0010】
図1に示すように、組電池4は、例えば、絶縁性能を有し複数のセル10の一対の長側面109及び底面108をそれぞれ覆うように複数のセル10を把持するセル把持部41を、例えば3つ備えている。また、組電池4は、セル把持部41により把持された複数のセル10を並列させて収容する樹脂ケース5を備えている。
【0011】
図1において、樹脂ケース5は、組電池4の内部の構造を説明するために二点鎖線により簡略化して示している。樹脂ケース5は、電気的絶縁性を有する材料から形成される。樹脂ケース5を形成する材料としては、例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等の電気的絶縁性を有するエンプラ樹脂が挙げられる。そして、樹脂ケース5は、平面視矩形で蓋形状の上側ケース5Aと、上側ケース5Aと組み合わされる下側ケース5Bとを備えている。上側ケース5Aは、即ち、組電池4の上蓋となる。
【0012】
図2において各部を詳しく説明するセル10は、電池セル、単電池、又は電池等とも称される。セル10は、例えば、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平又は略直方体形状の外装容器100と、外装容器100内に非水電解液と共に収容された図示しない発電要素と、を備えている。セル10は、角柱型の缶セルである。
【0013】
外装容器100は、有底矩形筒状の容器本体101と、容器本体101の上部側の開口に溶融等によって一体的に取り付けられた図示しない蓋と、を有する。そして、図示しない蓋のZ軸方向における上面は、略平坦な端子面103となる。端子面103に、正極端子104と負極端子105との2種の端子が、X軸方向(長手方向)に間隔を空けて形成されている。
【0014】
セル10は、端子面103の略中央に外装容器100内に発生したガスを排出するラブチャー106、及び非水電解液を外装容器100の内部に注入するための注液口107を備えている。ラブチャー106は、端子面103の正極端子104と負極端子105との間に位置する薄肉部にX字状の溝部を設けたものである。
【0015】
外装容器100は、Z軸方向において端子面103に対向する底面108と、底面108から連続的に立設する一対の短側面102と、底面108から連続に立設する一対の長側面109と、を有している。図1において、一対の短側面102はX軸方向において対向する側面であり、一対の長側面109はY軸方向において対向する側面である。セル10の底面108、一対の短側面102、及び一対の長側面109は、略平坦面となっている。
【0016】
電流入出力用の正極端子104及び負極端子105は、端子面103にかしめ固定されるか、あるいは図示しない蓋を成形する際に鋳込まれることで、端子面103に取り付けられている。正極端子104及び負極端子105は、端子面103上において互いに電気的に絶縁されている。正極端子104及び負極端子105は、例えば、略平坦な平板状に形成されている。
【0017】
外装容器100内に収容された図示しない発電要素は、その正極が正極端子104と電気的に接続している。発電要素の負極は、負極端子105と電気的に接続している。発電要素は例えば、倦回型電極群を含む。
【0018】
図示しない発電要素は、例えばコイルが巻回されて非水電解液とともに外装容器100内に収納されているため、巻回方向、積層方向、及び面内方向によって熱伝導率が異なり、放熱のしやすさが角柱のセル10のそれぞれの面によって異なる。そして、一般的にセル10においては、セル10の高さ方向(Z軸方向)における例えば下半分が、熱抵抗が他の部分よりも低くなる傾向がある。
【0019】
図1に示すセル把持部41は、放熱材料であるアルミニウム等で形成されており、Y軸方向を長手方向とし、X軸方向を短手方向とする矩形の底板412を備えている。底板412は、水平面(X軸Y軸平面)に水平に延在している。そして、底板412の上面に、Y軸方向に互いに等間隔を空けて仕切り板411が垂直又は略垂直に立設している。
【0020】
セル把持部41は、例えば、底板412の表面及び各仕切り板411の表面に絶縁塗装(例えば、電着塗装)が施されていることによって、絶縁性能を有している。該絶縁塗装は、例えば数十μmの厚さであり、セル10が仕切り板411によって一対の長側面109が覆われて把持された状態における熱抵抗の影響が低くなる厚さに設定されている。
【0021】
セル把持部41の絶縁塗装は、電着塗装に限定されず、例えば、エポキシ樹脂等の電気的絶縁性を有する樹脂が薄膜状に形成された塗装であってもよい。この場合の絶縁塗装は、液状樹脂をセル把持部41の表面に塗布後に乾燥して一体化したものである。なお、該絶縁塗装は、例えば、セル把持部41の表面に予めシート状のものを貼り付けて実現されてもよい。
なお、絶縁性能を有するセル把持部41は、アルミニウム板に絶縁塗装を施した構成に限定されず、電気的絶縁性を有する所定の樹脂からなる樹脂板であってもよい。
【0022】
組電池4では、例えば、9枚の仕切り板411が底板412上に立設しており、Y軸方向に隣り合う一枚の仕切り板411と別の一枚の仕切り板411との間に、セル10が一つ配設される。そして、セル把持部41の底板412にセル10の底面108が当接し、かつ、セル把持部41のY軸方向において隣り合う仕切り板411にセル10の一対の長側面109が当接するように、セル把持部41内にセル10が嵌合する。即ち、セル把持部41は、複数のセル10をY軸方向両側から挟み込み把持して固定できるとともに、各セル10を抜き取るように取り外すこともできる。
【0023】
図1に示すように、一つのセル把持部41は、Y軸方向に並ぶ8つのセル10を把持している。Y軸方向に並ぶ8つのセル10を、セル列10Aとする。セル列10Aにおいて、Y軸方向において隣り合う各セル10は、各仕切り板411によって絶縁されている。組電池4は、セル把持部41と一体となったセル列10Aを、X軸方向に並べて3つ有している。例えばリチウムイオン電池であるセル10は、エネルギー密度が低いが、セル把持部41に把持された複数のセル10間の隙間はほとんど無く、セル10を高密度に並べた状態とすることができる。
【0024】
なお、セル把持部41は、図1に示す例に限定されるものではなく、例えば、一つのセル10を一つのセル把持部が把持する構成となっていてもよい。この場合には、下側ケース5B内に、一つのセル10を把持した一つのセル把持部がY軸方向に例えば8つ並べられて収容され、一つのセル列10Aを形成する。
また、例えば、図1に示す3つのセル把持部41が一体となって一つのセル把持部を形成していてもよい。
【0025】
図3図4において具体的な形状を示す下側ケース5Bは、長手方向(X軸方向)において対向する一対の側壁52、樹脂ケース5の短手方向(Y軸方向)において対向する一対の側壁53、及び底板55を備える。なお、図3においては、下側ケース5Bに上側ケース5Aが嵌合した状態を示している。また、図4においては、下側ケース5Bのみを図示している。
【0026】
図4に示すように、下側ケース5Bの内部には、セル把持部41に把持された複数のセル10からなるセル列10Aを収容するための収容室50が形成されている。一対の側壁52と一対の側壁53とは例えば一体的に接続されており、収容室50側方全周を囲む。
【0027】
図4に示すように、下側ケース5Bは、例えば2つの仕切り壁をセパレータ56として備えている。電気的絶縁性を備える各セパレータ56は、X軸方向において一対の側壁52の間に配置され、互いに対して離れて配置される。セパレータ56のそれぞれは、収容室50内において、高さ方向(Z軸方向)に沿って連続して延設される。そして、2つのセパレータ56によって下側ケース5Bの収容室50は、収容する図1に示す3つのセル列10Aと同数の3つの領域502に仕切られる。即ち、収容室50は、セパレータ56によって、X軸方向において3分割される。
【0028】
例えば、図1に示すセル把持部41が複数のセル10を把持するのではなく、一つのセル把持部が一つのセル10を把持する構成となっている場合には、下側ケース5Bの収容室50内に、一つのセル10を把持したセル把持部がY軸方向に例えば8つ並べられて、一つのセル列10Aを形成する。この場合には、図4に示す下側ケース5Bの底板55上に、複数の区分け板がY軸方向に等間隔を空けて立設していてもよい。領域502のそれぞれは、該区分け板によって、領域502に収容するセル10を把持したセル把持部の数(例えば8つ)と同一の数に区分けされる。そして、区分け板によって、セル列10Aに含まれる複数のセル10のY軸方向における適切な位置決めがなされるようにしてもよい。
【0029】
図3図5に示す下側ケース5Bの底板55は、Z軸方向の下側から、複数のセル10を把持したセル把持部41を支持する。底板55には、3つの枠孔554が貫通形成されている。底板55では、枠孔554のそれぞれは、領域502の一つと対応する位置に形成される。枠孔554は、例えば、平面視略矩形状に貫通形成されている。
【0030】
図1図4図5に示す下側ケース5Bに収容されたセル列10Aのそれぞれでは、セル10の長手方向が樹脂ケース5の長手方向(X軸方向)と平行又は略平行の状態に、セル10が配列される。図4に示す3つの領域502では、複数のセル10を把持するセル把持部41の下面は、底板55の枠孔554以外の領域によって支持される。また、セル列10Aでは、セル10の短手方向が、樹脂ケース5の短手方向(Y軸方向)と平行又は略平行の状態になる。そして、セル列10Aでは、セル10のそれぞれの高さ方向が、樹脂ケース5の高さ方向(Z軸方向)と平行又は略平行の状態になっている。また、セル列10Aの一つのセル10は、別の一つのセル列10AのY軸方向において同順番となる一つのセル10と、互いにY軸方向及びZ軸方向にほとんどずれることなく配列される。
【0031】
図4に示す収容室50の領域502のそれぞれは、枠孔554の対応する一つを通して、下側ケース5Bの外部に対して開口する。領域502のそれぞれでは、全周に渡って内周側へ突出する状態に底板55が形成され、枠孔554のそれぞれでは、底板55の突出端によって、全周に渡ってその縁が形成される。
【0032】
図5に示す複数のセル10を把持し下側ケース5Bに収容されたセル把持部41の底板412の下面は、例えば、下側ケース5Bの底板55の上面に図示しない接着剤、又は両面テープによって接着される。
【0033】
組電池4は、例えば、図3図5に示すように、セル把持部41の下面に倣って変形可能であり、下側ケース5Bの底板55に貫通形成された枠孔554に収容され、セル把持部41の下面に密着する伝熱可塑性材料71(以下、可塑性材料71とする。)を備えている。また、組電池4は、図1図5に示すように、セル把持部41の下方に配設され可塑性材料71を介してセル把持部41と接着された放熱用の金属板72と、金属板72の下方に配設され金属板72によりその上面60aが接着封止される相変化材料充填部6と、を備えている。
【0034】
金属板72の材質は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、又は銅板等である。金属板72は、組電池4の高さ方向(Z軸方向)について底板55が位置する下側から、下側ケース5Bに取付けられる。なお、金属板72は、図1図5に示す例においては、相変化材料充填部6の上面60aを覆う大きさの平面視略矩形状に形成されているが、必要に応じて適切な寸法及び形状等に形成される。
【0035】
金属板72は、例えば、その表面に絶縁層が形成されている。金属板72の絶縁層は、例えば、電着塗装で形成されたもの、又は予め絶縁性能を有するシート状のものを貼り付けて形成されたものである。
【0036】
図3図5に示すように、組電池4では、例えば、可塑性材料71は3枚配設されている。そして、下側ケース5Bの枠孔554の形状に対応するように、可塑性材料71は平面視略矩形状に形成されており、その全周が枠孔554に入る大きさに設定されている。
【0037】
可塑性材料71のそれぞれは、下側ケース5B及び空気に比べて熱伝導性が高い。可塑性材料71としては、シリコーン等の可塑性及び電気的絶縁性を有する樹脂が挙げられる。また、可塑性材料71のそれぞれは、金属板72に比べて、熱伝導性が低い。可塑性材料71のそれぞれは、組電池4の高さ方向について、複数のセル10を把持したセル把持部41と、金属板72との間で挟まれる。可塑性材料71は、プレス加工機等によってZ軸方向における上方から下方に向かって所定の押圧力がセル10に加えられた場合に、セル把持部41の略平坦な下面に倣って柔軟に変形可能である。また、可塑性材料71は、セル把持部41の下面及び金属板72の上面に対して十分な粘着性、及び密着性を備えるものを選定する。
【0038】
可塑性材料71のそれぞれは、枠孔554に収容された状態で収容室50において領域502の対応する一つに配置される。また、可塑性材料71のそれぞれは、領域502の対応する一つにおいて、Y軸方向に並ぶ複数のセル10で形成されるセル列10Aの対応する一つのセル把持部41の下面に密着及び当接する。各セル10は、セル把持部41、下側ケース5B、及び可塑性材料71等によって、金属板72に対して、電気的に絶縁される。
【0039】
図1図5に示す複数のセル10が充放電することで発生した熱は、セル把持部41、及び可塑性材料71を通して金属板72へ伝達される。したがって、セル把持部41、及び可塑性材料71によって、複数のセル10から金属板72への空気中を通らない伝熱経路が形成される。
【0040】
図1図5に示すように、金属板72の下方には、平面視が矩形となる相変化材料充填部6が配設されている。相変化材料充填部6は、ケーシング60と、ケーシング60内に配設された複数の金属仕切り板61(以下、仕切り板61とする)によって仕切られた複数の充填空間62と、複数の充填空間62に充填された相変化材料(PCM:Phase Change Material)63と、を備える。
【0041】
図1に示すように、アルミニウム等の所定の金属で形成されたケーシング60は、例えば、ケーシング60の長手方向(X軸方向)において対向する一対の側壁600と、ケーシング60の短手方向(Y軸方向)において対向する一対の側壁601と、底板605(図5参照)と、を備える。
【0042】
本実施形態の相変化材料充填部6では、図1図6に示すように、ケーシング60内に複数の仕切り板61で仕切られて形成された充填空間62は、正六角柱状である。即ち、相変化材料充填部6は、複数の仕切り板61で形成された正六角柱状の複数の充填空間62を、X軸方向及びY軸方向に隙間なく並べた構造(ハニカム構造)を備えている。相変化材料充填部6の上面60aは、主に複数の充填空間62のZ軸方向における上側開口で形成されている。また、相変化材料充填部6の下面60bは、本実施形態においてはケーシング60の底板605の下面である。
【0043】
なお、相変化材料充填部6は、複数の充填空間62をX軸方向及びY軸方向に隙間なく並べたハニカム構造の代わりに、金属仕切り板によって仕切られた矩形体状の複数の充填空間が、ケーシング60内にX軸方向及びY軸方向に隙間なく並べられた平面視略格子状となる構造を備えていてもよい。
【0044】
図1図5に示す複数の充填空間62には、一度溶かされて液体状態となっている相変化材料63が充填される。該充填後、常温(例えば、摂氏25℃)程度まで相変化材料63が冷却されることで、相変化材料63が各充填空間62の中で充填されたまま固体になる。なお、図1においては、相変化材料63の理解のために、各充填空間62内で固体となった複数の正六角柱状の相変化材料63の中から、一つを充填空間62より抜き出して示している。
【0045】
相変化材料63は、例えば、常温である25℃付近では個体の状態であり、かつ、固体から液体へ相変化を起こす融点が45℃~65℃である不燃性の材料が用いられる。また、相変化材料63は、例えば、熱伝導率が約0.2[W/mK]~約0.4[W/mK]である。本実施形態では、相変化材料63として例えばポリエチレングリコール(PEG)を用いている。より具体的には、相変化材料63は、例えば、融点60℃程度であるポリエチレングリコールを用いる。なお、相変化材料63は、ポリエチレングリコールに限定されず、酢酸ナトリウム三水和物を用いてもよい。酢酸ナトリウム三水和物は、例えば、融点が58℃であり、融解熱、即ち固体から液体に相転移する時に必要な熱量が264j/gであり、難燃性である。
【0046】
上記のように、相変化材料63が各充填空間62の中に充填され正六角柱状の固体になった状態で、例えば、図5に示すホットメルトフィルム17によって、相変化材料充填部6の上面60aと、セル10及びセル把持部41が一体となった金属板72の下面とが加熱接着される。そして、図5に示すように、複数の充填空間62のZ軸方向における上側開口が封止され、固体から相転移して液体になった場合の相変化材料63が充填空間62から流出してしまうことが無いようになる。
【0047】
図5に示すホットメルトフィルム17は、例えば、熱可塑性材料であるナイロン系材料で構成されており、熱伝導率が一例として約0.4[W/mK]である。また、ホットメルトフィルム17は、例えば絶縁性能を有している。ホットメルトフィルム17は、例えば、厚さが約50μmに設定されており、発熱体であるセル10に比べて熱抵抗が十分に低くなっている。そのため、一つのセル10当たりの発熱量[W]を1W~数Wと仮定した場合に、セル10から相変化材料充填部6に対する伝熱がホットメルトフィルム17によって妨げられることはほとんどない。なお、ホットメルトフィルム17の材質、熱伝導率、及び厚さは、上記例に限定されるものではない。また、相変化材料充填部6の上面60aに対する金属板72の接着は、ホットメルトフィルム17を用いた形態に限定されない。
【0048】
(実施例1のヒートシンク)
組電池4は、相変化材料充填部6の下面60bに接着される図1図5、及び図7に示すヒートシンク15を備えている。ヒートシンク15には、相変化材料充填部6を通してセル10の熱が伝わり、セル10の熱を外部に放熱する役割を果たす。ヒートシンク15を、実施例1のヒートシンクとする。
【0049】
ヒートシンク15は、例えば水平方向に延在する平板状のシンク基部154と、シンク基部154の下面156に櫛状を形成するように複数並べて配設されたフィン150と、隣り合うフィン150とフィン150との間に形成された通風路153と、を備えている。
ヒートシンク15は、例えば銅、又はアルミニウムで形成されているが、公知の放熱用の材料であればよい。
【0050】
シンク基部154は、例えば、相変化材料充填部6と略同一の大きさの平面視略矩形状に形成されているが、必要に応じて適切な寸法及び形状等に形成される。シンク基部154の上面155は、略平坦面となっている。
【0051】
複数のフィン150のそれぞれは、例えば、シンク基部154の下面156から-Z方向に沿って垂下するとともに、X軸方向に沿って延在する板状である。そして、複数のフィン150はY軸方向に並列するように配置されており、複数のフィン150により櫛状を形成する。
【0052】
組電池4では、図1図7図8に示すように、ヒートシンク15の各通風路153の空気の流れる方向は、X軸方向となり、各通風路153に空気が流れ込む上流側は-X方向側であり、通風路153から空気が流れ出る下流側は+X方向側となる。
【0053】
図7図8に示すように、複数のフィン150は、下側ケース5Bに収容された複数のセル10のうち温度が上昇しやすいセル10に対応するように、シンク基部154の下面156の中で、空気の流れる方向における上流側の上流中央領域156aと、該上流中央領域156aにつながるとともに該上流中央領域よりも広い中流領域156bと、該中流領域156bにつながるとともに空気の流れる方向における下流側の下流中央領域156cと、に配設されている。そして、シンク基部154の下面156に配設された複数のフィン150によって、セル10の高さ方向(Z軸方向)から見て十字状となるフィン群150Aを形成する。
【0054】
実施例1のヒートシンク15では、シンク基部154の下面156全域に沿って流れる空気の一部は、十字状のフィン群150Aの各通風路153を通過することで、十字状のフィン群150Aを通過しない空気よりも、図1図5に示すセル10の熱をより吸収する。
【0055】
図7図8に示すように、実施例1のヒートシンク15では、例えば、シンク基部154の下面156における中流領域156bは、Y軸方向における下面156の一方の外周縁から他方の外周縁までを占める領域となっている。そして、中流領域156bには、複数のフィン150が、下面156のY軸方向における一方の外周縁から他方の外周縁までの等間隔を空けて略全域に配設されている。
【0056】
図8に示すように、フィン群150Aを形成する1枚のフィン150と別の隣り合う1枚のフィン150とのピッチ幅d1、即ち、各通風路153のY軸方向における幅d1は、同一に設定されている。
【0057】
図5に示すように、組電池4では、ヒートシンク15と相変化材料充填部6との間に、例えば、ホットメルトフィルム16が配設されている。そして、ホットメルトフィルム16によって、ヒートシンク15の上面155と相変化材料充填部6の下面60bとが加熱接着される。ホットメルトフィルム16は、ホットメルトフィルム17と例えば同一のものを用いるため、材質等についての説明は省略する。
【0058】
(実施例2のヒートシンク)
組電池4は、図1図7図8に示す実施例1のヒートシンク15に代えて、図9に示す実施例2のヒートシンク15Bを備えていてもよい。図9は、実施例2のヒートシンク15Bのフィン150が形成された下面156を示す説明図である。なお、実施例2のヒートシンク15Bにおいて、実施例1のヒートシンク15と同様の構成については、実施例1のヒートシンク15と同様の符号を付して説明する。
【0059】
例えば、銅、又はアルミニウムで形成された実施例2のヒートシンク15Bは、シンク基部154と、複数のフィン150からなりセル10の高さ方向(Z軸方向)から見て十字状となるフィン群150Aと、フィン150とフィン150との間に形成された通風路153と、を備える。さらに、ヒートシンク15Bは、シンク基部154の下面156の中で、下面156の面方向(Y軸方向)においてフィン群150Aの側方に位置する領域156d、領域156e、及び領域156fに、複数の側方フィン158が並べて配設されている。
【0060】
複数の側方フィン158は、例えば、シンク基部154の下面156から-Z方向に沿って垂下するとともに、X軸方向に沿って延在する板状を呈する。そして、複数の側方フィン158はY軸方向に並列に配置されており、櫛状を呈する。側方フィン158と側方フィン158との間は、空気が流れる通風路158hとなる。
【0061】
図9において、下面156中における領域156dは、上流中央領域156aのY軸方向における側方に位置している。また、下面156中における領域156e及び領域156fは、下流中央領域156cのY軸方向における側方にそれぞれ位置している。
【0062】
領域156d、領域156e、又は領域156fに配設された1枚の側方フィン158と該1枚の側方フィン158とのピッチ幅は、図8図9に示すフィン群150Aを形成する1枚のフィン150と該1枚のフィン150とのピッチ幅d1よりも大きく設定されている。
【0063】
例えば、図9に示す領域156dに櫛状を呈するように複数配設された側方フィン158のピッチ幅d2は、フィン群150Aにおけるフィン150のピッチ幅d1の6倍の大きさに設定されている。なお、実施例2のヒートシンク15Bでは、シンク基部154の下面156の中で、領域156dには、複数の側方フィン158を配設しない構成としてもよい。
【0064】
領域156eに櫛状を呈するように複数配設された側方フィン158のピッチ幅d3は、一例として、フィン群150Aにおけるフィン150のピッチ幅d1の3倍の大きさに設定されている。なお、領域156eに櫛状を呈するように複数配設された側方フィン158のピッチ幅d3を、フィン群150Aにおけるフィン150のピッチ幅d1の2倍の大きさに設定してもよい。
【0065】
例えば、図9に示す領域156fに櫛状を呈するように複数配設された側方フィン158のピッチ幅d4は、一例として、フィン群150Aにおけるフィン150のピッチ幅d1の2倍の大きさに設定されている。なお、図9に示す領域156fに櫛状を呈するように複数配設された側方フィン158のピッチ幅d4を、フィン群150Aにおけるフィン150のピッチ幅d1の3倍の大きさに設定してもよい。
【0066】
図1図7図8図10に示す組電池4における実施例1のヒートシンク15のフィン群150Aと、下側ケース5Bに収容された複数のセル10との対応関係について説明する。
図10は、組電池4における温度上昇をしやすいセル10を説明する斜視図である。組電池4の中央付近に位置する例えば4つのセル10は、組電池4において最も温度が高くなりやすいホットスポットとなるセルである。即ち、図10において、X軸方向に3つ並ぶセル列10Aの中で、2列目となる中央のセル列10Aの3番目から6番目のセル10が、最も温度が高くなりやすいセルである。これは、セル10内部の発電要素のコイルの熱伝導率の異方性と、高い熱容量と、周囲が他のセル10に囲まれて隣接するセル10による熱逃げ悪化が生じることと、を要因とする。例えば、1列目のセル列10A(-X方向側に位置するセル列10A)の各セル10や3列目のセル列10A(+X方向側に位置するセル列10A)の各セル10では、セル10の短側面102側からの放熱があるが、2列目のセル列10Aの各セル10は、セル10の短側面102側からの放熱が1列目のセル列10A及び3列目のセル列10Aによって妨げられる。
【0067】
組電池4では、ヒートシンク15における空気の流れる方向は、-X方向側(上流側)から+X方向側(下流側)となる。そして、2列目の中央のセル列10Aよりも該空気の流れる方向において下流側(+X方向側)に位置する3列目のセル列10Aの3番目から6番目のセル10が、次に温度が高くなりやすいセルである。これは、ヒートシンク15を上流側から下流側に向かって流れる空気が、1列目のセル列10Aのセル10及び2列目のセル列10Aのセル10の熱を吸収しており、該熱を吸収して温度が上昇した空気が、3列目のセル列10Aに対応するヒートシンク15を通過するためである。
【0068】
この次に温度が高くなりやすいセルは、2列目の中央のセル列10Aの最も温度が高くホットスポットになりやすいセル10よりも、組電池4の外側に位置するセル10である。即ち、2列目の中央のセル列10Aの1番目、2番目、7番目、及び8番目のセル10である。
次いで、中央のセル列10Aよりも該空気の流れる方向において上流側(-X方向側)に位置する1列目のセル列10Aの3番目から6番目のセル10が、温度が高くなりやすいセルとなる。
【0069】
上記のように、組電池4において、樹脂ケース5に収容された状態で充放電を行うことで温度上昇しやすい複数のセル10は、セル10の高さ方向から見て十字状のセル群に含まれるセルである。そして、実施形態の組電池4においては、セル10の高さ方向から見て十字状のセル群に対応するように、図7図8に示すヒートシンク15の十字状のフィン群150Aが形成されている。
【0070】
例えば、図3図4に示すように、下側ケース5Bの一対の側壁52の外側面の4角となる部分には、外側から内側に向かって略矩形の切り欠き520が形成されており、切り欠き520内に、下側ケース5B外側における底板55の上面が一部露出している。切り欠き520内で露出する底板55には、外側へ突出する突出端555が設けられている。そして、下側ケース5Bの4角の4つの突出端555には、その上面から底板55の下面に至る第1の貫通孔551が形成されている。このように第1の貫通孔551は、下側ケース5Bの収容室50の外側であり、下側ケース5Bの例えば4角となる位置にそれぞれ形成されている。各第1の貫通孔551には、図4に示すボルト57が挿通される。
【0071】
図1に示すように、例えば、金属板72の4角近傍部分には、下側ケース5Bの底板55の4つの第1の貫通孔551に、Z軸方向においてそれぞれ対応して連通する第2の貫通孔722が形成されている。
【0072】
例えば、相変化材料充填部6のケーシング60の4角部分には、下側ケース5Bの第1の貫通孔551及び金属板72の第2の貫通孔722に対応するように、第3の貫通孔608が一対の側壁600をZ軸方向に貫通形成されている。なお、ケーシング60の4角部分に、X軸方向においてケーシング60から突出する突片を形成し、該突片に第3の貫通孔608を貫通形成する構成としてもよい。
【0073】
図1に示すように、ヒートシンク15の4角部分には、対応する下側ケース5Bの第1の貫通孔551、金属板72の第2の貫通孔722、相変化材料充填部6の第3の貫通孔608からずれることなく配置されたボルト穴157が形成されている。
【0074】
図4図5に示すボルト57が、第1の貫通孔551、第2の貫通孔722、及び第3の貫通孔608に通されてボルト穴157に螺合される。下側ケース5Bの4角全てで同様にボルト57の挿通及び螺合がなされることで、下側ケース5B、金属板72、相変化材料充填部6、及びヒートシンク15が締結固定されて一体化する。したがって、ヒートシンク15は、ボルト57による上記締結固定を解除し、さらに、金属板72との可塑性材料71との接着を解除することで、相変化材料充填部6及びヒートシンク15等と、樹脂ケース5とが分離可能である。
【0075】
図5に示す組電池4では、下側ケース5Bに複数のセル10が収容された状態で、複数のセル10の各端子面103全体を覆う図示しない中蓋が、複数のセル10上に配設される。図示しない中蓋は、セル10の正極端子104及び負極端子105を上方に露出させるための端子露出孔を複数備えている。そして、該端子露出孔から該中蓋の上方に露出した各セル10の正極端子104及び負極端子105に、図5に破線で簡略化して示すバスバー42を取り付け可能となっている。
【0076】
図5に示すバスバー42は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を平板状に形成したものである。バスバー42は、例えば、図1に示すY軸方向に隣り合う各セル10の正極端子104及び負極端子105に、ろう材を用いてレーザ溶接される。具体的には、セル列10Aの一つのセル10の正極端子104に、バスバー42の一端部が溶接され、Y軸方向における隣のセル10の負極端子105に、該バスバー42の他端部が溶接される。また、該一つのセル10の負極端子105は、前記の隣とは反対側の隣のセル10の正極端子104とバスバー42によって溶接される。
【0077】
複数のセル10のうち、樹脂ケース5内において、例えば、-Y方向における端位置に位置するセル10のバスバー42で接続されていない正極端子104は、バスバーを介して図示しない正極の電源入出力用端子と接続される。また、樹脂ケース5内において+Y方向における端位置に位置するセル10のバスバー42で接続されていない負極端子105は、バスバーを介して図示しない負極の電源入出力用端子と接続される。図示しない正極の電源入出力用端子及び図示しない負極の電源入出力用端子が、充電電源や負荷と接続されることで、組電池4の充放電等の利用がなされる。
【0078】
複数のセル10は、複数のバスバー42により、例えば直列に接続されて組電池4となる。なお、電気的に並列に接続されている複数のセル10を含む組電池4では、負極端子105同士がバスバー42により接続されるとともに正極端子104同士がバスバー42により接続されることで、複数のセル10が電気的に接続され得る。また、組電池4において、図1図5に示すX軸方向において隣り合うセル10同士が、バスバー42で接続されてもよい。
【0079】
図5に示すように、組電池4は、監視基板44を備えている。監視基板44は、例えば各バスバー42を介して各セル10と電気的に接続され、セル10の温度及び電圧等の測定、及びセル10の制御等を行う。例えば、監視基板44は、矩形板状に形成されており、CMU(Cell Monitoring Unit)基板とも称される。監視基板44は、セル監視IC等を搭載しており、図示しない固定部材によって各バスバー42に接続される。そして監視基板44は、セル10の電圧及び温度を測定し、例えば図示しない上位制御装置とデータ授受可能に構成される。上位制御装置の一例としては、BMU(Battery Management Unit)である。
【0080】
図3に示すように、例えば、上側ケース5Aには、外部通信用コネクタ594が配設されており、この外部通信用コネクタ594を通して、監視基板44は上位制御装置とデータの授受を行う。
【0081】
下側ケース5B内のセル把持部41に把持された複数のセル10からなる3つのセル列10A(図1参照)に、図5に示す監視基板44が接続された状態で、監視基板44の上方から、図3図5に示す上側ケース5Aが下側ケース5Bに装着される。即ち、下側ケース5Bが上側ケース5Aによって蓋をされた状態となる。
【0082】
例えば、図4図5に示すように、下側ケース5Bの一対の側壁52及び一対の側壁53の上端側は、下側ケース5Bの外部側に向かって一段の段差を生む凹部58がそれぞれ形成されている。
【0083】
図3図5に示す上側ケース5Aは、矩形平板状の天板590と、天板590の外周縁から-Z方向に垂下する4枚の側壁591と、を備えている。例えば、図5に示すように、4枚の側壁591の下端側は、上側ケース5Aの内部側に向かって一段の段差を生む凸部593が形成されている。
【0084】
例えば、図5に示すように、上側ケース5Aは下側ケース5Bに嵌合する。即ち、上側ケース5Aの4枚の側壁591が、下側ケース5Bの収容室50内に入り込む。そして、下側ケース5Bの一対の側壁52及び一対の側壁53に形成された凹部58と、上側ケース5Aの各側壁591の凸部593とがラビリンス状には嵌り合う。上側ケース5Aと下側ケース5Bとがラビリンス状に嵌合することで、例えば、セル10の端子面103上から上側ケース5Aの側壁591側に流れる外部短絡が、樹脂ケース5外部に達してしまうことを防止できる。なお、セル10の底面108側からの外部短絡を防止するために、図5に示す下側ケース5Bの下部外周縁に、相変化材料充填部6の外側面を囲繞するように垂下する壁を設けてもよい。
【0085】
電源から図1図3図5又は図10等に示す組電池4に電力が供給されることにより、組電池4が充電される。また、組電池4から負荷へ電力が供給されることにより、組電池4が放電する。以下に、組電池4が例えば急速な充放電を繰り返すことで発熱する場合における、組電池4の温度上昇を抑制する機能について説明する。
【0086】
図11は、図1図5に示す相変化材料充填部6を備える実施形態の組電池4のセル10の温度の上昇と、相変化材料充填部6を備えていない従来の組電池のセルの温度の上昇とを比較するためのグラフである。図11において、実線で示すグラフG1は、実施形態の組電池4におけるセル10の温度と時間との関係を示すグラフである。また、破線で示すグラフG2は、相変化材料充填部6を備えていない、換言すれば、図1に示す相変化材料63による温度上昇の抑制がなされない組電池におけるセルの温度と時間との関係を示すグラフである。図11において、横軸は時間[秒]を示し、縦軸は温度[℃]を示している。
【0087】
組電池4は、例えば、UPS用蓄電池盤に組み込まれて使用される。UPS用蓄電池盤は、バッテリマネジメントユニット(BMU:Battery Management Unit)、BMUの上位制御手段であり組電池4を含む電池盤のその他の各部の多重制御を行うコントローラ、防火壁、又は消火設備等の少なくとも一つを備えている。しかし、図11に示すグラフG1及びグラフG2は、セルに対する監視基板44等による監視制御が失われてしまったり、外部事故による圧力でセルが内部短絡してしまったりする場合におけるセルの温度と時間との関係を示している。
【0088】
例えば、図11に示す温度T1を、図1に示すセル10の発熱する前の開始温度T1として、開始温度T1からセル10の温度が充放電等を行うことで上昇していく。即ち、充放電の反復によって、主に内部抵抗と充放電電流の2乗との積でジュール熱と反応熱とが発生して、セル10の温度が上昇していく。
【0089】
セル10は、監視基板44等による監視制御等が失われている場合には、途中から熱暴走状態となり、例えば電解液沸点温度T2を超えると、外装容器100内の電解液が沸騰する。これによって、ラブチャー106がひらき、霧状になった非水電解液がセル10外部に噴出する。そして、噴出した非水電解液の気中濃度が所定条件を満たし、かつ噴出した非水電解液が発火点温度T3になると火災が起きる可能性がある。
【0090】
図11に示す時間S0における所定の温度T4をセル10の保護温度とし、温度T5を火災予兆とみなす温度だとする。温度T5は、例えば、約65℃~約75℃である。実施形態の組電池4におけるセル10の温度と時間との関係を示すグラフG1と、温度上昇抑制がなされない組電池におけるセルの温度と時間との関係を示すグラフG2とを比較すると、実施形態の組電池4におけるセル10は、温度T4から温度T5に到達する間で温度上昇が抑制されている。即ち、温度上昇抑制がなされない組電池におけるセルが火災予兆とみなす温度T5に到達する時間S1よりも、組電池4におけるセル10が温度T5に到達する時間S2は遅く(長く)なっている。また、温度上昇抑制がなされない組電池におけるセルが電解液沸点温度T2に到達する時間S11よりも、組電池4におけるセル10が電解液沸点温度T2に到達する時間S21は遅くなっている。
【0091】
例えば、組電池4が組み込まれたUPS用蓄電池盤の傍にいる作業者、運転者、又は乗員等が、該UPS用蓄電池盤から退避する場合等に、退避時間を時間S0から開始すると考える。そして、実施形態の組電池4におけるセル10は、温度上昇抑制がなされない組電池におけるセルよりも、時間S1と時間S1よりも遅い時間S2との間の差分時間ΔSaを、上記退避時間のために多く充てることが可能となる。即ち、実施形態の組電池4では、セル10の例えば急速な充放電を行った場合等に、急激な温度上昇が起きることを抑制でき、発熱時の退避時間を差分時間ΔSa分増加させることができる。
【0092】
図1図5、及び図10に示す組電池4が、上記のように退避時間を増加させることができる理由について説明する。本実施形態の図1図5に示す組電池4では、セル10が発熱すると、セル10の熱が、セル把持部41、可塑性材料71、及び金属板72を介して、セル10の下方に配設された相変化材料充填部6に伝えられる。
【0093】
相変化材料充填部6は、ケーシング60内に配設された複数の金属仕切り板61によって仕切られた複数の充填空間62を備えており、複数の充填空間62によりハニカム構造を形成している。そして、各充填空間62には、例えば、常温である25℃程度においては個体であり、融点が60℃程度の相変化材料63が充填されている。そのため、相変化材料充填部6で、セル10から伝わってきた熱を個体の状態から融解する際の潜熱として相変化材料63が吸収する。該熱吸収によって、セル10の例えば急速な充放電を行った場合等における急激な温度上昇を抑制できる。
【0094】
また、充填空間62に充填されている相変化材料63は、熱伝導率が約0.2[W/mK]~約0.4[W/mK]と低いが、ケーシング60内において金属仕切り板61によって周囲を囲繞された状態になっているため、セル10から伝わった熱を熱伝導率が高い金属仕切り板61を介して、効率よく吸収することができ、相変化における潜熱により、セル10の温度上昇を抑える効果を最大限に引き出すことができる。さらに、相変化材料充填部6は、セル10の熱抵抗がより低くなる底面108の下方に配設されているため、セル10から相変化材料63が熱をより吸収しやすくなっている。また、相変化材料充填部6の下面60bには、例えば実施例1のヒートシンク15が接着されているため、相変化材料63が潜熱を使い終えた後においても、ヒートシンク15による吸熱がなされ、セル10の温度上昇を抑える効果を最大限に引き出すことが可能になる。
【0095】
相変化材料充填部6において、複数の充填空間62からなるハニカム構造は、せん断方向(X軸Y軸平面方向)における剛性が低い。しかし、相変化材料充填部6の上面60aをホットメルトフィルム17及び金属板72で接着封止しているため、相変化材料63のケーシング60からの流出を防ぎつつ、剛性を上げることができる。また、組電池4では、相変化材料充填部6は、複数の充填空間62に相変化材料63を充填しているため、従来よりも組電池全体の軽量化を図ることができる。
【0096】
図12は、相変化材料充填部6を備える組電池4の温度の上昇と、相変化材料充填部6を備えていない組電池の温度の上昇とを比較するためのグラフである。図12において、下段側に実線で示すグラフG4は、本実施形態の組電池4の温度と時間との関係を示すグラフである。また、下段側に破線で示すグラフG5は、相変化材料充填部6を備えず相変化材料63による温度上昇抑制がなされない組電池の温度と時間との関係を示すグラフである。グラフG4及びグラフG5において、横軸は時間を示し、縦軸は温度[℃]を示している。また、図12における上段側に実線で示すグラフG6は、組電池4の充電率(SOC:State of Charge)と時間との関係を示している。グラフG6において、横軸は時間を示し、縦軸はSOC[%]を示している。
【0097】
組電池4が組み込まれるUPS用蓄電池盤は、通電中は高い充電率で保持され、電源喪失時に、停電から電源が復旧するまでの数分間から数十分間に、高いCレートで放電、又は電力を供給する機能がある。Cレートとは、充電及び放電のスピードのことであり、定電流充放電測定の場合、セルの理論容量を1時間で完全充電(または放電)させる電流の大きさは1Cで定義される。
【0098】
UPS用蓄電池盤の動作中において、図12に示す時間S6から高いCレート(例えば、5C)で放電していると、組電池の各セルの温度上昇が進行する。ここで、グラフG4とグラフG5との比較から確認できるように、相変化材料充填部6を備える組電池4は、相変化材料充填部6を備えていない組電池よりも、相変化材料63が相変化している時間(時間S6から時間S7まで間)における温度上昇を抑えることができる。
【0099】
時間S7に5CのCレートで行う放電が終了し、これ以降は、セル回復のためにCレートを例えば1C以下として低いCレートで充電を行う。低いCレートの充電ならば、組電池4の温度がこれ以上上昇することは無い。そして、常温(約25℃)までに組電池4の各セル10の温度が下がる過程で、相変化材料63が液体から固体に相変化し元に戻る。
【0100】
図1図5に示す実施形態の組電池4は、例えば実施例1のヒートシンク15を備えているため、組電池4全体における温度の平滑化を実現できる。ヒートシンク15は、例えば、相変化材料63がセル10の熱を吸収して個体から液体に相変化した後に、相変化材料63を介して伝わるセル10を吸収して、図7図8に示す通風路153を通過する空気と共に放熱する。そして、図7図8、及び図10に示すように、ヒートシンク15は、複数のフィン150が、樹脂ケース5に収容された複数のセル10のうち温度が上昇しやすいセル10(Z軸方向から見て十字状のセル群に含まれるセル10)に対応するように、シンク基部154の下面156の中で、-X方向から+X方向への空気の流れる方向における上流側の上流中央領域156aと、上流中央領域156aにつながるとともに上流中央領域156aよりも広い中流領域156bと、中流領域156bにつながるとともに空気の流れる方向における下流側の下流中央領域156cと、に配設されている。そして、複数のフィン150によって、セル10の高さ方向(Z軸方向)から見て十字状となるフィン群150Aを形成している。
【0101】
仮に、ヒートシンク15において、シンク基部154の下面156の全域に櫛状を形成するようにフィン150が配設されている場合を想定する。この場合に、上流側(-X方向側)から下流側(+X方向)にフィン150間の通風路153を通過する空気は、セル10の熱を吸収しつつ移動する。そして、空気の流れる方向における上流側のセル10の熱を吸収して温度上昇した空気が、下流に流れることで、下流側にあるセル10の温度をヒートシンク15が吸収して放熱しきれず、組電池4全体では、空気の流れる方向(X軸方向)における上流側と下流側とで温度勾配が発生する。即ち、仮にヒートシンク15のシンク基部154の下面156の全面に櫛状を形成するようにフィン150が配設されている場合、組電池4全体では、温度分布の平滑化をなし得ず、空気の流れる方向における下流側の複数のセル10の温度が高くなり劣化が速まる。その結果、組電池4において、例えば上流側の複数のセル10が上限温度に到達していないのに、組電池4の監視基板44(図5参照)等から保護信号が発せられることになる。そして、組電池4が組み込まれているUPS用蓄電池盤全体に充放電制限をかけることとなり、性能の低下を引き起こす。
【0102】
これに対して、本実施形態の組電池4のヒートシンク15では、セル10の高さ方向(Z軸方向)から見て十字状となるフィン群150Aは、シンク基部154の下面156におけるフィン150が形成されていない領域よりも優先的に空気が流れやすい各通風路153を形成する。そして、フィン群150Aは、図10に示すホットスポットとなる複数のセル10及び温度上昇を起こしやすい複数のセル10に対応しているため、空気の流れる方向(X軸方向)における上流側と下流側のセル10の温度分布を平滑化させることができる。即ち、図7図8図10に示すように、ヒートシンク15の空気の流れる上流側に位置する1列目のセル列10Aでは、3番目乃至6番目の各セル10の底面108側だけに複数のフィン150及び通風路153が形成されているため、1列目のセル列10Aでは、温度が高くなりやすい3番目乃至6番目の各セル10のヒートシンク15に対する熱伝達率が高くなり、1列目のセル列10Aの1番目、2番目、7番目、及び8番目のセル10と比較してヒートシンク15による吸熱が促進される。したがって、1列目のセル列10Aにおける温度分布の平滑化がなされる。
【0103】
2列目のセル列10Aでは、1番目乃至8番目の全てのセル10の底面108側に複数のフィン150及び通風路153が形成されているため、2列目のセル列10Aの全てのセル10でヒートシンク15による吸熱が促進される。ヒートシンク15では、1列目のセル列10Aの熱を吸収して温度上昇した空気が、2列目のセル列10Aに対応する通風路153に入ってくるので、フィン群150Aにおいて1列目のセル列10Aに対応する部分よりも2列目のセル列10Aに対応する部分の熱伝達率を、フィン150の配設枚数を増やすことで上げている。これによって、1列目のセル列10Aと2列目のセル列10Aとの温度差を小さくすることができ、温度分布が平滑化される。
【0104】
-X方向から+X方向へ向かう空気の流れる方向において、3列目(最後列)のセル列10Aでは、1列目のセル列10Aに対応する通風路153及び2列目のセル列10Aに対応する通風路153を通過して温度上昇した空気が、対応する通風路153を通過することになる。しかし、2列目のセル列10Aのセル10とは異なり、3列目のセル列10Aではセル10の短側面102側からの放熱がなされる。そして、3番目乃至6番目の各セル10の底面108側だけに複数のフィン150及び通風路153が形成されているため、3列目のセル列10Aでは、温度が高くなりやすい3番目乃至6番目の各セル10のヒートシンク15に対する熱伝達率が高くなり、3列目のセル列10Aの1番目、2番目、7番目、及び8番目のセル10と比較してヒートシンク15による吸熱が促進される。したがって、3列目のセル列10Aにおける温度分布の平滑化がなされる。
【0105】
本実施形態の組電池4が、実施例1のヒートシンク15に代えて、図9に示す実施例2のヒートシンク15Bを備えている場合にも、組電池4全体の温度分布の平滑化を図ることができる。
-X方向から+X方向へ向かう空気の流れる方向において、図1図10に示す1列目のセル列10Aに対応する通風路153及び2列目のセル列10Aに対応する通風路153を通過して温度上昇した空気が、3列目のセル列10Aに対応する通風路153を通過することになる。したがって、例えば、1列目のセル列10Aの1番目、2番目、7番目、及び8番目のセル10よりも、3列目のセル列10Aの1番目、2番目、7番目、及び8番目のセル10は温度が高くなりがちである。
【0106】
そこで、図9に示すヒートシンク15Bは、シンク基部154の下面156の中で、シンク基部154の下面156の面方向においてフィン群150Aの側方に位置する領域156eに、櫛状を呈するように複数の側方フィン158を備えている。そして、側方フィン158のピッチ幅d3は、一例として、フィン群150Aにおけるフィン150のピッチ幅d1の3倍の大きさに設定されている。また、図9に示す領域156fに櫛状を呈するように複数配設された側方フィン158のピッチ幅d4は、一例として、フィン群150Aにおけるフィン150のピッチ幅の2倍の大きさに設定されている。フィン群150Aを形成するフィン150のピッチ幅d1よりも、領域156eや領域156fに配設された側方フィン158のピッチ幅は大きいので、熱伝達率がフィン群150Aのフィン150よりも側方フィン158の方が下がる。そのため、組電池4において、セル10の高さ方向から見て十字状のセル群を形成する各セル10よりもやや温度が上がりやすいセル10、即ち、3列目のセル列10Aの1番目、2番目、7番目、及び8番目のセル10に対して、ピッチ幅を大きくして熱伝達率をフィン群150Aよりも下げた複数の側方フィン158を対応させることで、組電池4全体ついて温度分布を平滑化できる。
以上で、実施形態の組電池4についての説明を終了する。
【0107】
(電池盤の実施形態1)
上記のような組電池4を1単位として、複数の組電池4を直並列に配線接続して、さらに盤(筐体)に収容した電池システムは、電池盤と称される。以下、図13を用いて複数の組電池4を備える電池盤2の例示的かつ模式的な実施形態1を開示する。なお、以下の説明では、便宜上、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向が規定されている。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに直交している。例えば、X軸方向及びY軸方向で形成される平面を水平面とし、Z軸方向を鉛直方向とする。X軸方向は、+X方向と-X方向とを含む。Y軸方向は、+Y方向と-Y方向とを含む。Z軸方向は、+Z方向(上方向)と-Z方向(下方向)とを含む。なお、本実施形態における上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、電池盤2の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。
【0108】
図13は、電池盤2の内部構造を示す側面図である。電池盤2は、複数の組電池4を備えている。組電池4は、図1及び図5等に示す組電池4と同一である。なお、電池盤2に含まれる組電池4の数や配置等は、本実施形態で開示されるものには限定されず、組電池4とは別の複数の組電池を電池盤2が備えていてもよい。なお、図13以下に示す電池盤2の説明においては、図1から図5に示す組電池4の各部の構成を簡略化して示している。
【0109】
電池盤2は、複数の組電池4を収容する筐体20を備えている。全体が例えば矩形体状の筐体20は、金属製であり、また、表面に絶縁処理が施されている。
筐体20は、例えば矩形板状の底板201と、Y軸方向において対向する図示しない一対の側壁と、筐体20の正面側(-X方向側)に位置する正面板203と、天板204と、筐体20の背面側(+X方向側)に位置する背面板205と、を備えている。正面板203及び背面板205は、例えば丁番等を介して手動の開閉が可能となっている。また、筐体20内には、複数の組電池4を収容可能な収容室200が形成されている。
【0110】
本実施形態では、X軸方向を筐体20の奥行方向とする。また、Y軸方向を筐体20の幅方向とする。さらに、Z軸方向は、電池盤2の上下方向(高さ方向)に沿う方向である。電池盤2においては、主に-X方向から+X方向に向かって組電池4のヒートシンク15を空気が通過していくものとする。
【0111】
筐体20内には、組電池4が単数又は複数載置され、上下方向(Z軸方向)に間隔を空けて複数並べて図13図14に示す棚板21が配設されている。棚板21は、筐体20内に上下方向に略等間隔を空けて、例えば8枚配設されている。即ち、棚板21によって、筐体20内には上下方向に8段の棚が形成される。
【0112】
各棚板21は、例えば、筐体20を形成する図示しない一対の側壁にY軸方向における両端が固定されており、水平面(X軸Y軸平面)に沿って略平行に延在している。例えば、図14に示すように、棚板21は平面視矩形に形成されている。そして、筐体20内において、棚板21の長手方向は、Y軸方向と平行となっており、棚板21の短手方向は、X軸方向と平行となっている。
【0113】
筐体20内における1枚の棚板21と、該1枚の棚板21と上下方向において段状に隣り合う別の1枚の棚板21との間の空間は、空気の通過を許容する盤内通風路26となる。
【0114】
図13図14に示すように、棚板21に載置された複数の組電池4は、組電池4の長手方向がX軸方向と平行又は略平行の状態となる。また、それぞれの組電池4の短手方向がY軸方向と平行又は略平行の状態になる。さらに、組電池4のそれぞれの高さ方向が、筐体20の高さ方向(Z軸方向)と平行又は略平行の状態になっている。なお、図14は、図13に示す筐体20内に配設される棚板21と、棚板21に載置される組電池4とを示す分解斜視図である。
【0115】
図13図14に示すように、棚板21は、例えば、組電池4のヒートシンク15を棚板21の下面210側に露出させて載置するための開口部213を備えている。図14に示すように、開口部213は、棚板21の長手方向(Y軸方向)に等間隔を空けて、棚板21を厚さ方向に貫通している。図14に示すように、開口部213は、例えば、棚板21に3か所形成されている。開口部213は、本実施形態においては、X軸方向を長手方向としY軸方向を短手方向とする略長方形の開口である。開口部213は、少なくとも組電池4のヒートシンク15全体を通過可能な大きさに設定されている。
【0116】
電池盤2は、組電池4に一体的に取り付けられ棚板21の上面211の面方向(X軸Y軸平面方向)に沿って延在し、組電池4のヒートシンク15を棚板21の開口部213を通過させ棚板21の下面210から下方に位置する盤内通風路26に露出させた状態で、開口部213よりも該面方向における外側に張り出し棚板21の上面211で支持される被支持板31(以下、実施例1の被支持板31とする)を備えている。
【0117】
実施例1の被支持板31は、例えば、放熱材料であるアルミニウム等で形成されており、図14に示すように、Y軸方向を長手方向とし、X軸方向を短手方向とする矩形の平板である。被支持板31の表面全体には、例えば絶縁塗装がなされている。被支持板31は、例えば、金属板72、相変化材料充填部6、ヒートシンク15、及び棚板21の開口部213より大きく形成されている。
【0118】
被支持板31は、例えば、図3図14に示す組電池4の高さ方向(Z軸方向)について下側(-Z方向側)から、樹脂ケース5の下側ケース5Bに取付けられる。即ち、電池盤2に配設される組電池4では、下側ケース5Bの枠孔554に収容された可塑性材料71(図3図5参照)のそれぞれは、組電池4の高さ方向(Z軸方向)について、複数のセル10を把持したセル把持部41と、被支持板31との間で挟まれる。また、図13図14に示す被支持板31の下面310には、図示しない接着剤、又は両面テープ等を介して金属板72が接着される。図13図14に示す金属板72、相変化材料充填部6、及びヒートシンク15の接続については、図5等を用いて説明した組電池4と同様となっている。
【0119】
図14に示すように、被支持板31は、長方形の開口部213よりも大きく形成されており、図13に示す組電池4のヒートシンク15が開口部213を上下方向に通過して棚板21の下面210から下方の盤内通風路26内に露出した状態で、被支持板31の下面310の外周縁近傍の領域が、開口部213よりも面方向外側に張り出して棚板21の上面211に当接する。そして、被支持板31が棚板21によって支持されることで、棚板21上に被支持板31と一体となっている組電池4が載置された状態になる。
【0120】
本実施形態では、図14に示すように、1つの棚板21上にY軸方向に間隔を空けて3つの組電池4が上記のように載置される。なお、棚板21に載置される組電池4の配設数は4つ以上であってもよい。また、棚板21上に載置された3つの組電池4間に、Y軸方向における間隔をほとんど設けずに、組電池4を高密度にY軸方向に並べた状態としてもよい。
【0121】
図15に示す3つの組電池4Eは、電池盤2に配設するために、その構成の一部を変更した組電池4の別例である。即ち、3つの組電池4Eでは、図14に示す金属板72のサイズを大きくして、図15に示すようにY軸方向において隣り合う3つの組電池4E間で一体的に併用される金属板72Eを備えている。また、3つの組電池4Eは、図14に示す相変化材料充填部6のサイズを大きくして、図15に示すようにY軸方向において隣り合う3つの組電池4E間で一体的に併用される相変化材料充填部6Eを備えている。なお、金属板72E及び相変化材料充填部6Eのサイズ以外の構成は、先に説明した金属板72及び相変化材料充填部6と同様となっている。
【0122】
3つの組電池4Eは、図14に示すヒートシンク15のサイズを大きくして、図15に示すようにY軸方向において隣り合う3つの組電池4E間で一体的に併用されるヒートシンク15Eを備えている。ヒートシンク15Eにおいては、シンク基部154Eの下面に高さ方向(Z軸方向)から見て3つの組電池4E全体にわたって、複数のフィン150を有し十字状となるフィン群150Eを形成する。
【0123】
図15に示す被支持板31E(以下、実施例2の被支持板31Eとする)は、図14に示す実施例1の被支持板31のサイズを大きくすることで、Y軸方向において隣り合う3つの組電池4E間で一体的に併用される態様となっている。そして、図15に示す棚板21Eは、サイズを大きくしたヒートシンク15E全体を通過可能に収容できる大きさの1つの開口部213Eを備えている。
【0124】
組電池4Eにおける樹脂ケース5と被支持板31Eとの接続、被支持板31Eと金属板72Eとの接続、金属板72Eと相変化材料充填部6Eとの接続、及び相変化材料充填部6Eとヒートシンク15Eとの接続、ヒートシンク15Eを棚板21Eの開口部213Eを通過させて棚板21Eから下方の盤内通風路26(図13参照)に露出させる配置、並びに組電池4E及び被支持板31Eの機能等については、図5図14等に示す組電池4等と略同様となっているため、説明を省略する。そして、図13に示す電池盤2の筐体20内には、組電池4及び実施例1の被支持板31等に代えて、組電池4E及び実施例2の被支持板31E等を収容してもよい。
【0125】
図13に示すように、筐体20の底板201上に、操作盤22が例えばZ軸方向に沿って壁状に立設している。そして、操作盤22には、上下方向に略等間隔を空けて、複数のファン24が取り付けられている。
【0126】
本実施形態1の電池盤2では、操作盤22には、図16に示すように、Y軸方向に3つのファン24が並べて取り付けられている。即ち、ファン24の電池盤2の高さ方向(Z軸方向)における配設数は、筐体20内に配設された8枚の棚板21に載置される組電池4に対して、それぞれ1つずつ対応するように8つとなっている。また、ファン24の筐体20の幅方向(Y軸方向)における配設数は、筐体20内に配設された1枚の棚板21に載置された3つの組電池4にそれぞれ1つずつ対応するように3つとなっている。即ち、本実施形態1の電池盤2では、8×3で計24つのファン24が筐体20内に配設されている。なお、ファン24の配設数は、上記例に限定されるものではない。
【0127】
図16に示すファン24は、図示しないモータから伝達される動力に基づいてX軸方向を軸方向とする回転軸241を中心として動翼242が回転することにより、回転軸241の軸心線に沿った方向の空気流を形成する、いわゆる軸流式のファンである。なお、ファン24のタイプは軸流式に限定されるものではなく、クロスフローファン等であってもよい。
【0128】
図13に示す電池盤2では、ヒートシンク15の空気F1の流れる方向は、おおよそX軸方向に沿う方向となる。そして、各ヒートシンク15に空気F1が流れ込む上流側は-X方向側であり、ヒートシンク15から空気F1が流れ出る下流側は+X方向側となる。そして、棚板21に載置された状態の組電池4では、ヒートシンク15の略全体が、棚板21の下面210よりも下方の盤内通風路26内に露出している。また、図13に示すように、ヒートシンク15に対して-X方向側に所定距離離れた位置に、ファン24が配設されている。
【0129】
例えば、図13図16に示す操作盤22に複数取り付けられたファン24に対して、-X方向側に所定距離離れて筐体20の正面板203が位置しており、正面板203のX軸方向において各ファン24と対向する領域に、吸気口206が貫通形成されている。吸気口206は、本実施形態においては、正面板203の上下方向に略等間隔を空けて8つ形成されている。
【0130】
吸気口206は、例えば、図16に示すように矩形状に正面板203に開口しているが、形状は矩形に限定されるものではない。例えば、各吸気口206には、筐体20内部にほこり等が入り込むことを防止するために、防塵用のフィルタ又はルーバーを配設してもよい。本実施形態では、例えば、筐体20内において冷却用の空気が主に流れる方向であるX軸方向において、Y軸方向に所定間隔を空けて並ぶ3つのファン24と1つの吸気口206とは正対している。
【0131】
図13に示すように、各棚板21に載置された組電池4に対して+X方向側に所定距離離れて筐体20の背面板205が位置している。そして、背面板205のX軸方向において組電池4のヒートシンク15と対向する領域には、排気口208がそれぞれ貫通形成されている。排気口208は、本実施形態においては、背面板205の上下方向に略等間隔を空けて8つ形成されている。なお、排気口208に、防塵用のフィルタ等を取り付けてもよい。
【0132】
電源から図13図14に示す電池盤2の各組電池4に電力が供給されることにより、各組電池4が充電される。また、各組電池4から負荷へ電力が供給されることにより、各組電池4が放電する。以下に、各組電池4が例えば急速な充放電を繰り返すことで発熱する場合に、電池盤2全体における温度上昇の分布の偏りの発生を低減し、電池盤2全体で温度上昇が平滑化される電池盤2の機能について説明する。
【0133】
電池盤2における各組電池4の個々の温度上昇の抑制機能は、組電池4の実施形態において既に説明しているため、説明を省略する。先に説明してきたように、一般的に組電池4のセル10(図1参照)においては、セル10のZ軸方向における例えば下半分が、熱抵抗が他の部分よりも低くなる傾向がある。したがって、組電池4全体でも、組電池4のZ軸方向における例えば下半分について、熱抵抗が他の部分よりも低くなる傾向がある。
【0134】
電池盤2においては、図13に示すように、各ファン24が、吸気口206から筐体20外部の空気F1を吸って、空気F1を各段の組電池4の棚板21の下面210から下方の盤内通風路26に露出した状態のヒートシンク15に向けて+X方向に送り出す。
【0135】
筐体20内に吸い込まれた空気F1は、棚板21の下面210に当たることで、その進行方向が-X方向から+X方向に向かうように整えられる。即ち、下面210に沿って流れるように整えられる。そして、図13に示す整流化された空気F1は、ヒートシンク15の各通風路153(図14参照)に流入していく。即ち、各ファン24により各吸気口206から吸われた空気F1が、棚板21によって排気口208側へ流れるようにガイドされつつ棚板21の下面210から露出したヒートシンク15を通過するようになる。棚板21は、空気F1の流れを所望の方向に偏向して整える機能、即ち、組電池4の熱抵抗が低くなる下半分側に接続されたヒートシンク15と通過させる機能を有している。
【0136】
電池盤2では、組電池4の熱抵抗が低く放熱しやすい下側部分に接続されているヒートシンク15に対して、棚板21の存在により優先的にファン24により吸い込まれた空気F1が通過していくことで、組電池4の熱が冷却用の空気F1に効率よく吸収される。そして、空気F1は、各ヒートシンク15を通過し組電池4の熱を効率よく吸収した後に、各棚板21の下面210に沿ってガイドされて、筐体20の背面板205に形成された各排気口208から筐体20外部に排気される。
【0137】
上記のように、本実施形態1の電池盤2では、棚板21は、上下方向(Z軸方向)に貫通形成された開口部213を有している。また、電池盤2は、組電池4に一体的に取り付けられ棚板21の上面211の面方向(X軸Y軸平面方向)に沿って延在し、組電池4のヒートシンク15を開口部213を通過させ棚板21の下面210から下方に位置する盤内通風路26に露出させた状態で、開口部213よりも面方向における外側に張り出し棚板21の上面211で支持される被支持板31を備え、ファン24により吸気口206から吸われた空気F1を、棚板21によって排気口208側へ流れるようにガイドしつつ棚板21の下面210から露出したヒートシンク15を通過させた後に排気口208から排気する。そのため、筐体20内の各組電池4のヒートシンク15を通過する空気F1の温度を平滑化することができ、これに伴って、筐体20内に収容した複数の組電池4の温度の平滑化も実現できる。
【0138】
また、本実施形態1の電池盤2は、図1図7に示す相変化材料充填部6及びフィン群150Aを備える組電池4を備えているため、組電池単位での温度分布の平滑化や充放電による温度上昇のパッシブな抑制効果を得ることができる。よって、電池盤2の一台あたりのCレートを上げることができ、急速な充電や放電を行う用途において、システム上の電池盤2の並列数を減らすことが可能になる。
【0139】
(電池盤の実施形態2)
以下に、図17図19を用いて、実施形態2の電池盤2Cについて説明する。実施形態2の電池盤2Cは、図13図16を用いて説明した実施形態1の電池盤2の構成の一部を変更したものであり、実施形態1の電池盤2と同様の構成については、電池盤2と同様の符号を付して説明する。
【0140】
電池盤において、上下方向において多段に複数配設されるファン24の個数に比例して、ファン24の駆動音による騒音が問題となる場合がある。また、ファン24の数が多くなることに比例して、複数のファン24の駆動電力も大きくなる。図17に示す実施形態2の電池盤2Cは、図13に示す実施形態1の電池盤2に比べてファン24の配設個数を減らし、かつ、複数の組電池4に対する冷却機能は維持することを目的とするものである。
【0141】
実施形態2の電池盤2Cでは、操作盤22の上下方向に並べて配設されたファン24の個数を、実施形態1の電池盤2よりも少なくしている。即ち、図17、及び図18に示すように、ファン24の電池盤2の高さ方向(Z軸方向)における配設数は、6つとなっており、また、ファン24の筐体20の幅方向(Y軸方向)における配設数は、1枚の棚板21に載置された3つの組電池4にそれぞれ1つずつ対応するように3つとなっている。即ち、本実施形態1の電池盤2では、6×3で計18つのファン24が筐体20内に配設されている。
【0142】
電池盤2Cでは、Z軸方向における上側から見て1段目から3段目の棚板21にそれぞれ載置された組電池4の棚板21から下方の盤内通風路26に露出するヒートシンク15に対応するように、操作盤22の上部側に3つのファン24が略等間隔を空けて並べて配設されている。そして、操作盤22の中間部分には、実施形態1の電池盤2では備えていた2段分のファン24を配設していない。さらに、Z軸方向における上側から見て6段目から8段目の棚板21にそれぞれ載置された組電池4の棚板21から下方の盤内通風路26に露出するヒートシンク15に対応するように、操作盤22の下部側に3つのファン24が略等間隔を空けて並べて配設されている。
【0143】
図17図18に示すように、電池盤2Cの筐体20の正面板203Cは、Z軸方向において操作盤22の上部側に上下に3段並べて配設されたファン24に対応する吸気口206、及び操作盤22の下部側に上下に3段並べて配設されたファン24に対応する吸気口206が、計6つ形成されている。そして、図13に示す実施形態1の電池盤2の正面板203と異なり、図17図18に示すように、正面板203Cの中間部分に2つの吸気口206は形成されていない。
【0144】
図17に示すように、正面板203Cの筐体20内側となる内側面の上下方向(Z軸方向)における中間領域には、例えば、上入口偏向板271と下入口偏向板272とが上下に所定距離離して配設されている。上入口偏向板271は、正面板203Cの内側面から筐体20内部の操作盤22側に向かって斜め下方に傾斜するように配設されている。下入口偏向板272は、正面板203Cの内側面から筐体20内部の操作盤22側に向かって斜め上方に傾斜するように配設されている。
【0145】
上入口偏向板271の筐体20内部側の端部271aは、例えば、上下方向において4段目に位置する組電池4のヒートシンク15よりも少しだけ下方となる高さに位置付けられている。また、下入口偏向板272の筐体20内部側の端部272aは、例えば、上下方向において5段目に位置する組電池4のヒートシンク15よりも少しだけ上方となる高さに位置付けられている。
【0146】
例えば、実施形態2の電池盤2Cでは、実施形態1の電池盤2において用いられている図14に示す被支持板31に代えて、図19に示す被支持板貫通孔315を形成した被支持板31Cを用いている。即ち、平面視矩形の被支持板31Cの例えば4角近傍部分には、樹脂ケース5の第1の貫通孔551、及び金属板72の第2の貫通孔722に連通するとともにボルト57が通る被支持板貫通孔315が、厚さ方向に貫通形成されている。
【0147】
図19図20に示すボルト57が、第1の貫通孔551、被支持板貫通孔315、第2の貫通孔722、及び第3の貫通孔608に通されてボルト穴157に螺合される。下側ケース5Bの4角全てで同様にボルト57の挿通及び螺合がなされることで、下側ケース5B、金属板72、相変化材料充填部6、及びヒートシンク15が締結固定されて一体化する。該一体化がなされた後、組電池4のヒートシンク15が棚板21の開口部213を上下方向に通過して棚板21の下面210から下方の盤内通風路26内に露出した状態で、被支持板31Cの下面310の外周縁近傍の領域が、開口部213よりも面方向外側に張り出して棚板21の上面211に当接させる。そして、被支持板31Cが棚板21によって支持されることで、棚板21上に組電池4が載置された状態になる。即ち、図19図20に示すボルト57による上記締結固定を解除し、さらに、可塑性材料71と被支持板31Cとの接着を解除することで、樹脂ケース5に複数収容されたセル10の再利用時等において、樹脂ケース5側と被支持板31C側とを分離可能である。
【0148】
実施形態2の電池盤2Cにおいては、図17に示すように、6つのファン24が、吸気口206から筐体20外部の空気F1を吸って、空気F1を組電池4の棚板21の下面210から下方の盤内通風路26に露出した状態のヒートシンク15に向けて+X方向に送り出す。
【0149】
また、例えば、上入口偏向板271の上方に位置する3つのファン24によって、上側3つの吸気口206から吸い込まれた空気F1の一部は、筐体20内で-Z方向に向かっても流れる。そして、該一部の空気F1は、上入口偏向板271の上面に接触することで、ファン24がX軸方向において対向していない上から4段目の組電池4のヒートシンク15に向かって偏向される、即ち、分配される。同時に、下入口偏向板272の下方に位置する3つのファン24によって、下側3つの吸気口206から吸い込まれた空気F1の一部は、筐体20内で+Z方向に向かっても流れる。そして、該一部の空気F1は、下入口偏向板272の下面に接触することで、ファン24がX軸方向において対向していない上から5段目の組電池4のヒートシンク15に向かって偏向される、即ち、分配される。
【0150】
上記のように、実施形態2の電池盤2Cでは、実施形態1の電池盤2と比較して、例えば、ファン24の数を2つ減らしても、8段の組電池4のそれぞれのヒートシンク15に空気F1が流れるようにすることが可能である。そして、空気F1は、棚板21の下面210に当たることで、棚板21によって空気F1の進行方向が-X方向から+X方向に向かうように整えられる。組電池4の熱抵抗が低く放熱しやすい下側部分に接続されているヒートシンク15に対して、棚板21の存在により優先的に空気F1が通過していくことで、組電池4の熱が冷却用の空気F1に効率よく吸収される。そして、空気F1は、ヒートシンク15を通過した後に、棚板21によってガイドされて筐体20の背面板205に形成された排気口208から筐体20外部に排気される。
【0151】
本実施形態の電池盤2Cは、上記のように、実施形態2の電池盤2Cは、実施形態1の電池盤2に比べてファン24の配設個数を減らし、かつ、複数の組電池4に対する冷却機能は適切維持することが可能である。
【0152】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0153】
10:セル
15:ヒートシンク
150:フィン 153:通風路 154:シンク基部 150A:フィン群
15B:ヒートシンク 158:側方フィン
16,17:ホットメルトフィルム
4:組電池
41:セル把持部 42:バスバー 44:監視基板
5:樹脂ケース
5A:上側ケース
5B:下側ケース 50:収容室 56:セパレータ
6:相変化材料充填部
60:ケーシング 61:金属仕切り板 62:充填空間 63:相変化材料
71:可塑性材料 72:金属板
2:実施形態1の電池盤
20:筐体 203:正面板 205:背面板 206:吸気口 208:排気口
21:棚板 213:開口部
22:操作盤 24:ファン 26:盤内通風路
2C:実施形態2の電池盤
271:上入口偏向板 272:下入口偏向板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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