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特開2024-12406リボヌクレオチドに富む酵母抽出物ならびに望ましくない風味および望ましくない芳香ノートを遮蔽するためのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012406
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】リボヌクレオチドに富む酵母抽出物ならびに望ましくない風味および望ましくない芳香ノートを遮蔽するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/16 20060101AFI20240123BHJP
   A23L 33/145 20160101ALI20240123BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C12N1/16 J
A23L33/145
A61K47/26
A61K47/46
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023184709
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2020532667の分割
【原出願日】2018-11-12
(31)【優先権主張番号】1762074
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】506261567
【氏名又は名称】ルサッフル・エ・コンパニー
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET COMPAGNIE
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ジョリヴェ エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】メニン ルディ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アントワーヌ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製品中の甘味料およびタンパク質の苦味および酸味ならびに望ましくないノート、ならびに望ましくない金属ノートを遮蔽するための酵母抽出物および方法を提供する。
【解決手段】0.85~1.25の範囲の5’-AMP/5’-GMP比で、5重量%~20重量%のアデノシン5’-一リン酸(5’-AMP)および5重量%~20重量%のグアノシン5’-一リン酸(5’-GMP)を含む、25重量%~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む新規な酵母抽出物(重量百分率は、酵母抽出物の乾燥物質の重量に対して表される)ならびにこのような抽出物のフレーバーおよびノートを遮蔽するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物であって、5~20重量%の5’-AMPおよび5~20重量%の5’-GMPを、0.85~1.25の5’-AMP/5’-GMP比で含み、重量百分率は酵母抽出物の乾燥重量に基づくことを特徴とする、酵母抽出物。
【請求項2】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種の酵母株から得られることを特徴とする、請求項1に記載の酵母抽出物。
【請求項3】
5’-IMPを含まないことを特徴とする、請求項1または2に記載の酵母抽出物。
【請求項4】
35~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の酵母抽出物。
【請求項5】
8~16重量%の5’-AMPおよび8~16重量%の5’-GMP、好ましくは9~14重量%の5’-AMPおよび9~14重量%の5’-GMPを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の酵母抽出物。
【請求項6】
5’-AMP/5’-GMP比が0.85~1.25、好ましくは0.90~1.15、好ましくは0.95~1.10、より好ましくは0.98~1.05、最も特定的に約1であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の酵母抽出物。
【請求項7】
0%~20%の遊離アミノ酸含有量および25%~55%の総アミノ酸含有量を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の酵母抽出物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の酵母抽出物の、製品中の苦味および酸味ならびに甘味料、タンパク質および金属ノートの遮蔽のための使用。
【請求項9】
前記製品が食品、医薬品もしくは栄養補助食品または良好な芳香の調製物であることを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記酵母抽出物が10ppm~1000ppm、好ましくは50ppm~200ppmの量で食品製品中に存在することを特徴とする、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の酵母抽出物を前記製品に10~1000ppm包含させることを含む、製品中の苦味および酸味ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属ノートを遮蔽するための方法。
【請求項12】
前記酵母抽出物の前記製品への包含が、前記製品の製造中または製造後に行われることを特徴とする、請求項11に記載の遮蔽方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物、望ましくない味および望ましくない芳香ノートを遮蔽するためのその使用、ならびに製品中の望ましくない味および望ましくない芳香ノートを遮蔽するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品または物質の味の知覚は、複数のメカニズムの産物であり、味、芳香および三叉神経感覚の結果である。食品の味は、風味とも呼ばれる。食品が口内に置かれると、咀嚼は、揮発性および不揮発性成分を放出し、その各々は、味覚に対する様々な結果および効果を有する。
【0003】
味覚系の受容体細胞を介する不揮発性成分は、味覚の原因である。酸味、苦味、甘味、塩味、うま味の5つの基本的な味しかない。
【0004】
揮発性成分は、次に、鼻後経路として知られる嗅覚系の受容体細胞を介して検出され、芳香の原因となる。味とは異なり、いくつかの分子の結果であり得る多種多様な芳香がある。
【0005】
最後に、揮発性成分と不揮発性成分の両方が、口腔または鼻腔の三叉神経の神経終末によって検出される。この検出は、辛み、渋み、高温または低温のような非常に多様な感覚を生じる。
【0006】
したがって、食品または物質の味の知覚は、味、芳香および三叉神経感覚を通して、複雑な現象である。
【0007】
この複雑さにもかかわらず、ある種の用途、特に食品または医薬品用途では、ある種の芳香の味またはノートを遮蔽することができることが必要な場合がある。
【0008】
その結果、製造業者は、長年にわたり、摂取されることが意図される製品における特定の味または芳香を増強または遮蔽するための解決法を開発してきた。実際、これらの味の原因となる不揮発性化合物の量を増加させることなく、ある種の味を増強する必要があり、一方他の味、特に望ましくない味は遮蔽すべきである。
【0009】
味の増強に関して、良好な例は甘味の例であり、食品の糖含有量を増加させて食品の知覚を増強することは、健康上の結果の観点から許容できないであろう。これが、製品の糖含有量を増加させることなく製品の知覚を向上させるために代替的な解決法が開発された理由である。
【0010】
例えば、文献特許文献1には、甘味料を含有する食品における甘味を増強するための剤の使用が記載されている。特に、剤は、1~15重量%の5’-イノシン酸ナトリウムおよび/または5’-アデニル酸ナトリウム、1~15重量%の5’-グアニル酸ナトリウム、1~15重量%の5’-ウリジル酸ナトリウム、1~15重量%の5’-シチジル酸ナトリウムおよび1~20重量%のグルタミン酸ナトリウムを含有する酵母抽出物であり、重量百分率は、酵母抽出物の重量に対して示される。これらの酵母抽出物の欠点は、それらが甘味を増強するだけであり、したがって、前記味またはノートが有害である製品における特定の味および/または芳香ノートを遮蔽する可能性を提供しないことである。
【0011】
食品の製造または保存に使用される特定の成分は、必ずしも中性ではなく、したがって、口内に望ましくない味または残存味を残す。同様に、特定の製品自体は、強度を低減する必要があり得る味を有する。興味深いことに、酵母抽出物はまた、望ましくない味または望ましくない芳香ノートを遮蔽するために使用され得る。
【0012】
文献特許文献2には、甘味料ノートを遮蔽するための人工甘味料ベースの組成物における酵母抽出物の使用が記載されている。酵母抽出物は、遊離アミノ酸および5’-リボヌクレオチドを、3.5未満の遊離アミノ酸/5’-リボヌクレオチド比で含む。甘味料ノートの遮蔽は、2つの特定の酵母抽出物で得られ、第1の抽出物は、6.5重量%の5’-IMPおよび5’-GMPを含む13重量%の5’-リボヌクレオチドを含み、第2の抽出物は、4.3重量%の5’-IMPおよび5’-GMPを含む8.5重量%の5’-リボヌクレオチドを含む。この抽出物はノートを遮蔽することができるが、それは甘味料のノートにすぎず、他の遮蔽を利用可能にすることが有利である。
【0013】
文献特許文献3は、食品の味および芳香を増加および/または増強するために使用することができるが、人工甘味料によって生成される苦味を遮蔽するためにも使用することができる組成物を調製するための方法を記載している。組成物は、15~55重量%の5’-リボヌクレオチドを有する酵母抽出物を含み、百分率は、組成物の非NaCl乾燥重量に関連して示される。この文献の説明はまた、組成物中のグアノシン5’-一リン酸(5’-GMP)の量が、アデノシン5’-一リン酸(5’-AMP)およびイノシン5’-一リン酸(5’-IMP)の量の合計よりも大きいことが好ましく、それは、5’-GMPが5’-IMPよりも味知覚を改善するのに有効であるからであることを特定している。
【0014】
酵母抽出物はまた、特定の塩代替物の金属ノートを遮蔽するために使用され得る。例えば、文献特許文献4には、少なくとも30重量%の5’-リボヌクレオチドを含む酵母抽出物を使用して、穀物製品中の塩代替物によって生成される金属ノートを遮蔽することが記載されている。この効果は、特に少なくとも20重量%の5’-GMPおよび5’-IMPを含む5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物で得られる。百分率は、組成物の非NaCl乾燥重量に関連して示される。
【0015】
したがって、食品用途に関しては、酵母抽出物は、製品中に存在する味を増強するため、および望ましくないノートを遮蔽するための両方に使用することができる。用途におけるこの相違は、特に酵母抽出物に含まれる化合物の複雑さおよび多様性によって説明され、したがって、特定の特性を有する新規な抽出物を得ることを特に困難にする。同様に、上記で説明したように、味知覚は、いくつかの感覚系および多種多様な化合物を伴う複雑な機構によって支配される。この全てが、おそらく、望ましくない味および望ましくない芳香ノートを遮蔽するために、製造業者は、1つのタイプの遮蔽を生成する酵母抽出物を開発するに過ぎない理由を説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許第1 080 645号
【特許文献2】国際公開第2003/063613号
【特許文献3】国際公開第2005/0067734号
【特許文献4】国際公開第2008/0068155号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、それらの組成を変更する必要なく、かつそれらが組み込まれる製品に望ましくない味を生じさせることなく、いくつかのタイプの遮蔽を生成することができる新規な酵母抽出物を有する必要がある。実際、製品の風味は、微妙な均衡の結果である。したがって、口内の味の知覚を変化させることなく、単一の抽出物でいくつかのタイプの遮蔽を生じることは、明らかであるには程遠かった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、広範な研究の結果として、特定の酵母抽出物を開発することに成功したのは、出願人の信用によるものであり、前記酵母抽出物は、これまで達成されたことがない望ましくない味および望ましくない芳香ノートを遮蔽するという組み合わせた特性を有する。このようにして開発された酵母抽出物は、食品、医薬品または栄養補助食品または芳香製品の製造において非常に特定的な用途を有する。
【0019】
したがって、本発明は、5~20重量%のアデノシン5’-一リン酸(5’-AMP)および5~20重量%のグアノシン5’-一リン酸(5’-GMP)を含む25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを、0.85~1.25の範囲の5’-AMP/5’-GMP比で含む、新規な酵母抽出物に関し、重量百分率は、酵母抽出物の乾燥重量に対して表され、5’-リボヌクレオチドの二ナトリウム七水和物形態を考慮して計算される。本発明はまた、製品中の苦味および酸味ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属芳香ノートを遮蔽するためのこのような酵母抽出物の使用に関する。
【0020】
明細書全体を通して、また明確にするために、重量百分率は、文脈が反対に明確に識別されることを可能にする場合を除いて、酵母抽出物の乾燥重量に対して常に表される。
【0021】
本発明の意味の範囲内で、味の遮蔽は、製品中の味の知覚を減少させるか、または完全に排除することにあり、一方、オフノートの遮蔽は、芳香または芳香ノートの知覚を減少させるか、または完全に排除することにある。
【0022】
本発明による酵母抽出物は、前記製品の味の全体的な知覚を変えることなく、製品中の苦味および酸味の両方、ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属芳香ノートを遮蔽する点で特に注目に値する。実際、本発明に従って使用される酵母抽出物は、これらの抽出物に一般的に特徴的なブロスノート、酵母の芳香ノート、またはうま味(「酵母風の味」という表現の下に分類される)を生成しない。
【0023】
本発明の意味内で、製品の用語は、食品、医薬または栄養補助食品、ならびに食品、医薬または栄養補助食品用途に使用することができる芳香調製物の両方を指す。
【0024】
本発明の意味内の食品製品は、生命体、特にヒトに栄養を提供する任意の物質とみなすことができる。したがって、食品製品は、固体または液体のいずれの形態であってもよい。例として、食品製品は、調製された料理、ジャム、ワインもしくはビールなどの発酵飲料、エネルギー飲料、またはスポーツ用のタンパク質飲料であってもよい。
【0025】
本発明の意味内の医薬品とは、ヒトによって摂取されることが意図される任意の医薬物質、例えば薬物を指す。
【0026】
全く驚くべきことに、本発明者らは、5’-AMPおよび5’-GMPの特定量を0.85~1.25の5’-AMP/5’-GMP比で含む、25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを有する酵母抽出物が、生成物の調製に使用される場合、苦味および酸味、ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属芳香ノートを遮蔽することを見出した。この効果は、甘味料ノート遮蔽剤として5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物を使用する場合、従来技術で一般に行われているように、5’-AMPを5’-IMPに変換する必要なく、顕著に達成される。
【0027】
一般に、酵母抽出物は、公知の製品である。本発明によれば、酵母抽出物は、酵母細胞の酵素加水分解後に得られる可溶性画分を意味する。また、本発明によれば、酵母抽出物は、好ましくは、前記酵母細胞の自己分解後、言い換えると内因性酵母酵素のみによって酵素的加水分解を行った後に得られる可溶性画分である。酵母細胞の加水分解はまた、外因性酵素によって、言い換えるとプロテアーゼのような追加の酵素を添加することによって実施され得る。
【0028】
好ましくは、酵母抽出物は、酵母細胞の不溶性部分から分離される。このようにして不溶性部分から分離された酵母抽出物は、不溶性部分の膜脂質の酸化による芳香ノートの出現なしに、より良好な保存の利点を提供する。
【0029】
本発明による酵母抽出物は、任意の酵母から得ることができる。好ましくは、本発明による抽出物を調製するために使用される酵母株は、Saccharomyces、KluyveromycesまたはCandida(PichiaまたはLindneraとしても知られる)属に属する。好ましくは、抽出物を調製するために使用される酵母株は、サッカロミセス属、より詳細にはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)種に属する。
【0030】
本発明による5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物は、当業者に公知の方法、例えば、G.ReedおよびT.W.Nagodawithanaによる参照作業「Yeast Technology」、第2版(Van Nostrand Reinhold,ISBN 0-442-31892-8)、382~385頁に記載されている方法によって得ることができる。特に、内因性酵母ホスファターゼおよびヌクレアーゼの不活性化を伴う5’-ホスホジエステラーゼの存在下での酵母の酵素的加水分解によって5’-ヌクレオチドに富む酵母抽出物を調製することが知られている。以下の5’-リボヌクレオチドを含有する酵母抽出物が、このようにして得られる:5’-GMP、5’-UMP、5’-CMPおよび5’-AMP。
【0031】
5’-リボヌクレオチドに富む酵母誘導体を製造するための公知の適切な方法の中で、また以下を挙げることができる:米国特許第4 810 509号には、(1)酵母懸濁液を55℃~70℃に加熱するステップ、(2)酵母細胞をpH8~10で自己溶解するステップ、(3)自己溶解した酵母懸濁液のpHを5~7に調整するステップ、(4)この懸濁液を90℃以上に加熱するステップ、(5)この加熱した懸濁液から不溶性物質を除去するステップ、および(6)5’-ヌクレオチドを含有する酵母抽出物を回収するステップを含む、5’-ヌクレオチドに富む酵母抽出物を製造するための方法が記載されている。
【0032】
欧州特許第0299078号による方法は、大量のRNAを含有する酵母懸濁液を80℃~120℃に加熱するステップ(リボヌクレアーゼの破壊)、次いでアルカリ処理でRNAを抽出し、5’-ホスホジエステラーゼの作用によって前記RNAを5’-ヌクレオチドに切断するステップからなる。
【0033】
国際公開第02/067959号に従う方法は、35℃を超える温度、例えば35~70℃、好ましくは50~60℃で行われる自己分解によって酵母誘導体を調製するステップからなる。酵母は、好ましくは、自己分解の間または後に、1つ以上のプロテアーゼで加水分解される。任意に、生成物を遠心分離してもよく、上清の限外濾過のさらなるステップもまた、実行してもよい。
【0034】
したがって、当業者は、0.85~1.25の5’-AMP/5’-GMP比で5~20重量%の5’-AMPおよび5~20重量%の5’-GMPを含む、25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む酵母抽出物を得るように、既知の方法を適合させることができる。
【0035】
当業者はまた、5~20重量%の5’-AMPおよび5~20重量%の5’-GMPを含む25~55重量%のリボヌクレオチドを含む酵母抽出物を、単離された、または化学的に合成された5’-リボヌクレオチドを25重量%未満の5’-リボヌクレオチドを含む酵母抽出物に添加することによって得ることができることを知っている。これらの酵母抽出物も、本発明の一部である。化学的に合成された5’-リボヌクレオチドを添加することによって得られるものは、そのような酵母抽出物から調製される生成物が化学添加剤を含有するものとして標識されなければならないので、必ずしも好ましくない。
【0036】
したがって、本発明による酵母抽出物は、5’-リボヌクレオチドを天然に豊富に含み、かつ/または5’-リボヌクレオチドの量を添加することによって富化することができ、前記5’-リボヌクレオチドは、好ましくは酵母から得られる。
【0037】
本発明の文脈において、用語「5’-リボヌクレオチド」は、5’-ヌクレオチド自体、ならびにその水和物、および他の生理学的に許容される形態、例えば、二ナトリウム七水和物形態を指す。特に、本発明による5’-リボヌクレオチドは、グアノシン5’-一リン酸(5’-GMP)、アデノシン5’-一リン酸(5’-AMP)、ウリジン5’-一リン酸(5’-UMP)またはシチジン5’-一リン酸(5’-CMP)、およびイノシン5’-一リン酸(5’-IMP)である。イノシン5’-一リン酸(5’-IMP)は、特に、5’-AMPを酵素5’-アデニル酸デアミナーゼ(AMPデアミナーゼ)で変換することによって得ることができる。
【0038】
特に好ましい実施形態によれば、5’-リボヌクレオチドは、イノシン5’-一リン酸(5’-IMP)を含まない。この実施形態によれば、本発明による酵母抽出物は、したがって、5’-IMPを含まない。
【0039】
「5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物」とは、酵母抽出物の乾燥重量に基づいて、二ナトリウム七水和物形態を考慮して計算して、25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む酵母抽出物を意味する。好ましくは、酵母抽出物は、酵母抽出物の乾燥重量に基づいて30~55重量%の5’-リボヌクレオチド、最も特定的に酵母抽出物の乾燥重量に基づいて35~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む。
【0040】
25~55重量%の5’-リボヌクレオチドのうち、5~20重量%は5’-AMPであり、5~20重量%は5’-GMPである。好ましくは、25~55重量%の5’-リボヌクレオチドのうち、8~16重量%が5’-AMPであり、8~16重量%が5’-GMPであり、より好ましくは9~14重量%が5’-AMPであり、9~14重量%が5’-GMPである。
【0041】
特に有利には、酵母抽出物は、40~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含み、そのうちの約10重量%は5’-AMPであり、約10重量%は5’-GMPである。本発明による酵母抽出物はまた、15重量%未満の5’-CMP、好ましくは12重量%未満の5’-CMP、最も特定的に9重量%未満の5’-CMPを含む。また、重量百分率は酵母抽出物の乾燥重量との関係で表し、5’-リボヌクレオチドの二ナトリウム七水和物形態を考慮して計算した。
【0042】
本発明の酵母抽出物において、5’-AMP/5’-GMP比は、0.85~1.25である。好ましくは、5’-AMP/5’-GMP比は、0.90~1.15、好ましくは0.95~1.10、より好ましくは0.98~1.05であり、最も特定的に5’-AMP/5’-GMP比は、約1.00である。
【0043】
本発明による酵母抽出物はまた、0%~20%、好ましくは1%~10%の遊離アミノ酸含有量、ならびに25%~55%、および好ましくは35%~45%の総アミノ酸含有量を有する。
【0044】
本発明による酵母抽出物は、当業者に公知の形態であり得る。好ましくは、酵母抽出物は乾燥抽出物の形態である。
【0045】
特定の実施形態によれば、本発明による酵母抽出物は、粉末形態または液体形態であり得る。好ましくは、酵母抽出物は粉末形態である。
【0046】
別の特定の実施形態によれば、本発明による酵母抽出物は、生理学的に許容される担体または賦形剤中で希釈され得る。生理学的に許容される担体または賦形剤は、ヒトへの投与に適した芳香的に中性の担体または賦形剤である。生理学的に許容される担体または賦形剤の例には、マルトデキストリン、トリアセチン、プロピレングリコール、植物グリセリン、グリセロール、可溶性繊維、酵母抽出物などの酵母誘導体、樹皮および自己溶解物、またはパーム油などの脂肪が含まれる。
【0047】
本発明の別の主題は、製品中の苦味および酸味、ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属ノートの遮蔽のための、上記で定義した酵母抽出物の使用に関する。
【0048】
本発明の意味内で、製品はまた、食品、医薬もしくは栄養補助食品または芳香調製物であってもよい。
【0049】
本発明に従って使用される酵母抽出物は、酵母抽出物の乾燥重量に基づいて25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む。好ましくは、酵母抽出物は、酵母抽出物の乾燥重量に基づいて、30~55重量%の5’-リボヌクレオチドおよび最も特定的に35~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む。
【0050】
25~55重量%の5’-リボヌクレオチドのうち、5~20重量%は5’-AMPであり、5~20重量%は5’-GMPである。好ましくは、25~55重量%の5’-リボヌクレオチドのうち、8~16重量%が5’-AMPであり、8~16重量%が5’-GMPであり、より好ましくは9~14重量%が5’-AMPであり、9~14重量%が5’-GMPである。
【0051】
特に有利には、酵母抽出物は、40~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含み、そのうちの約10重量%は5’-AMPであり、約10重量%は5’-GMPである。
【0052】
本発明の酵母抽出物において、5’-AMP/5’-GMP比は、0.85~1.25である。好ましくは、5’-AMP/5’-GMP比は、0.90~1.15、好ましくは0.95~1.10、より好ましくは0.98~1.05であり、最も特定的に5’-AMP/5’-GMP比は、約1.00である。
【0053】
本発明に従って使用される酵母抽出物はまた、15重量%未満の5’-CMP、好ましくは12重量%未満の5’-CMP、および最も特定的に9重量%未満の5’-CMPを含み、重量百分率はまた、酵母抽出物の乾燥重量に関連して表される。
【0054】
特に好ましい態様によれば、本発明による酵母抽出物は、5’-IMPを含まない。
【0055】
本発明による酵母抽出物はまた、0%~20%、好ましくは1%~10%の遊離アミノ酸含有量、および25%~55%、および好ましくは35%~45%の総アミノ酸含有量を有する。
【0056】
食品製品中に存在する酵母抽出物の量は、10ppm~1000ppmであり得る。好ましくは、酵母抽出物の量は、10ppm~500ppm、好ましくは50ppm~200ppm、最も特定的に約100ppmである。驚くべきことに、酵母抽出物の量が1000ppmを超える場合、酵母抽出物はもはや種々の遮蔽を生じず、反対に、味および望ましくないノートが増加する。
【0057】
特定の実施形態によれば、本発明に従って使用される酵母抽出物は、粉末形態または液体形態であり得る。好ましくは、酵母抽出物は粉末形態である。
【0058】
別の特定の実施形態によれば、本発明に従って使用される酵母抽出物は、生理学的に許容される担体または賦形剤中で希釈され得る。生理学的に許容される担体または賦形剤は、ヒトへの投与に適した芳香的に中性の担体または賦形剤である。生理学的に許容される担体または賦形剤の例には、マルトデキストリン、トリアセチン、プロピレングリコール、植物グリセリン、グリセロール、可溶性繊維、酵母抽出物などの酵母誘導体、樹皮および自己溶解物、またはパーム油などの脂肪が含まれる。
【0059】
具体的には、本発明による酵母抽出物の使用は、食品製品または医薬製品中の苦味および酸味、ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属ノートの遮蔽を可能にする。このように、酵母抽出物は、これまで知られていたものとは対照的に、いくつかの遮蔽を提供する。
【0060】
本発明による使用はまた、酵母抽出物が、推奨される量で食品製品または医薬製品中に包含された場合に、酵母抽出物に一般的に特徴的なブロスノート、芳香ノートまたはうま味を生じないという点で特に有利である。
【0061】
上述したように、食品製品は、生命体、特にヒトに栄養を提供する任意の物質と見なすことができ、固体形態または液体形態のいずれであってもよい。例として、食品製品は、調製された料理、ジャム、ワインもしくはビールなどの発酵飲料、エネルギー飲料、またはスポーツ用のタンパク質飲料であってもよい。
【0062】
同様に、「医薬製品」は、薬物のような、ヒトによって摂取されることが意図される任意の医薬物質を指す。
【0063】
製品中の遮蔽の概念は、前記製品中の本発明による酵母抽出物の存在が、望ましくない味および望ましくないノートを減少させるか、またはさらに完全に排除するという事実を指す。したがって、本発明による遮蔽は、前記味およびノートの欠如、または少なくともその減少として理解される。望ましくない味および望ましくないノートの欠如または減少は、今日まで、電子舌の使用のような他の方法が特定の遮蔽の精密な検出を可能にしないので、ヒトの感覚的知覚によって実証される。実際、現在の検出方法は、ヒトの知覚メカニズムを十分に代表するものではなく、それは、多数の要因に依存し、そのうちのいくつかは、単に生理学的なものではない。
【0064】
本発明の別の主題は、製品中の苦味および酸味ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属のノートを遮蔽するための方法に関する。
【0065】
本発明による遮蔽プロセスは、以下のステップを含む:
- 上記定義の酵母抽出物を提供するステップ、
- 前記酵母抽出物を製品中に包含させるステップ。
【0066】
本発明による方法は、製品中の苦味および酸味、ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属ノートを遮蔽することを可能にする。例えば、製品は、食品、医薬品もしくは栄養補助食品、または芳香調製物であってもよい。例示的な食品製品には、調製された料理、ジャム、ワインもしくはビールなどの発酵飲料、エネルギー飲料、またはスポーツ用のタンパク質飲料が含まれる。例示的な医薬製品は、薬物である。
【0067】
本発明の方法によれば、提供される酵母抽出物は、特に、5~20重量%のアデノシン5’-一リン酸(5’-AMP)および5~20重量%のグアノシン5’-一リン酸(5’-GMP)を含む25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを、0.85~1.25の範囲の5’-AMP/5’-GMP比で含む。
【0068】
包含ステップは、当業者に公知のステップであり、特に、酵母抽出物を製品中に適用および/または混合するステップからなる。したがって、この包含ステップは、前記製品の製造中および製造後の両方で実施することができ、また高温または低温で実施することができる。
【0069】
包含させるべき酵母抽出物の量は、10ppm~1000ppmとすることができる。好ましくは、包含させるべき酵母抽出物の量は、10ppm~500ppm、より好ましくは50ppm~200ppm、最も特定的に約100ppmである。驚くべきことに、包含させるべき酵母抽出物の量が1000ppmを超える場合、苦味および酸味の遮蔽はもはや存在せず、逆に、前記味は製品中でより顕著である。
【0070】
特定の実施形態によれば、本発明の方法の第1のステップに従って提供される酵母抽出物は、粉末形態であっても液体形態であってもよい。好ましくは、酵母抽出物は、粉末形態である。
【0071】
別の特定の実施形態によれば、本発明の方法の第1のステップに従って提供される酵母抽出物は、生理学的に許容される担体または賦形剤中で希釈され得る。生理学的に許容される担体または賦形剤は、ヒトへの投与に適した芳香的に中性の担体または賦形剤である。生理学的に許容される担体または賦形剤の例には、マルトデキストリン、トリアセチン、プロピレングリコール、植物グリセリン、グリセロール、可溶性繊維、酵母抽出物などの酵母誘導体、樹皮および自己溶解物、またはパーム油などの脂肪が含まれる。
【0072】
本発明は、純粋に例示的であり、いかなる方法においても本発明の範囲を限定しないことを意図する以下の実施例の助けを借りて、より良く理解されるであろう。
【実施例0073】
7人の専門家のパネルによって、本発明による酵母抽出物から任意に調製された製品について、比較官能試験が行われた。
実施例1:望ましくない甘味料ノートの遮蔽
この実施例では、本発明による酵母抽出物による望ましくない甘味料ノートの遮蔽は、ジャムおよびアイスティーにおいて実証された。
【0074】
酵母抽出物:
2つの酵母抽出物を調製した。第1の(EXL1)は、5’-AMP/5’-GMP比0.98で10~15重量%の5’-AMPおよび5’-GMPを含む、本発明による5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物である。EXL1は、Saccharomyces cerevisiae種の酵母株から調製する。酵母株は、酵素、ホスホジエステラーゼが4.5~7.5のpHで添加される前に、最初に75℃を超える温度で熱ショックに供される。次いで、株を40~70℃の温度で8~24時間加水分解に供し、次いで分離ステップを行う。次いで、上清を回収し、濃縮し、乾燥させて、本発明による抽出物EXL1を得る。
【0075】
第2の抽出物(EXL2)は、Springer(登録商標)2020の名称で本出願人によって販売されている市販の酵母抽出物である。この抽出物は、特に5’-AMPを含まない点で、本発明による酵母抽出物とは異なり、したがって、比較の目的で使用される。
【0076】
酵母抽出物中の種々の5’-リボヌクレオチドの量を、以下の表1に列挙する:
【0077】
【表1】
【0078】
遮蔽を実証するために使用される食品製品:
- 製品1(対照):甘味料として0.03~0.04%のスクラロースを含有するGerble(登録商標)市販アプリコットジャム。百分率は、ジャムの総重量に対して表される。
- 製品2(比較):100ppmのEXL2と均一に混合したGerble(登録商標)市販アプリコットジャム。
- 製品3:100ppmのEXL1と均一に混合したGerble(登録商標)市販アプリコットジャム。
- 製品4:2000ppmのEXL1と均一に混合したGerble(登録商標)市販アプリコットジャム。
- 製品5(対照):甘味料として0.035%のステビオシドを含有するステビアベースのアイスティー。百分率は、飲料の総重量に対して表される。
- 製品6(比較):100ppmのEXL2と均一に混合したステビアベースのアイスティー。
- 製品7:100ppmのEXL1と均一に混合されたステビアベースのアイスティー。
【0079】
生成物5、6および7の組成を、以下の表2に示す:
【0080】
【表2】
【0081】
次いで、生成物を、比較官能分析のために専門家のパネルに提出した。各専門家は、酵母抽出物を含有する製品との盲目的な比較のために対照製品を味見した。酵母抽出物を含有する製品については、パネルメンバーに、酵母の芳香ノートの有無を決定するように求めた。結果は以下の通りである:
製品1:アプリコット芳香は顕著であり、口内の酸味および甘味料ノートがある。
製品2:アプリコット芳香は、依然として顕著であり、甘味はより少なく、口内の酸味は製品1よりも顕著であり、甘味料のノートはより顕著ではないが、依然として存在する。パネルの専門家は、酵母の芳香ノートを確認する。
製品3:アプリコット芳香は、甘味と同様に、より顕著であり、甘味料ノートは認められない。パネルの専門家は、酵母の芳香ノートがないことを記録している。
製品4:アプリコット芳香は依然として顕著であり、甘味料ノートがある。パネルの専門家はまた、酵母の芳香ノートを確認する。
製品5:顕著な甘味、果実状の芳香の存在、甘味料ノートの存在は、嚥下後にも持続すると記録される。
製品6:より顕著でない甘味、甘味料ノートはより顕著ではないが、依然として存在する。パネルの専門家は、アイスティー中の酵母の芳香ノートを確認する。
製品7:より顕著でない甘味およびわずかな酸味。甘味料ノートはない。パネルの専門家は、アイスティー中の酵母のいかなる芳香ノートも確認していない。
【0082】
専門家のパネルによる甘味料ノートの検出がないことによって、この実施例は、本発明による酵母抽出物の遮蔽容量を明確に実証し、前記抽出物はまた、酵母の芳香ノートが食品製品中に存在しないという点で有利である。同様に、比較製品4は、甘味料ノートの遮蔽を得る際に、本発明による酵母抽出物の割合の重要性を実証する。実際、前記遮蔽は、割合が高すぎる場合には得られない。
【0083】
実施例2:苦味の遮蔽
この実施例では、本発明による酵母抽出物による苦い後味の遮蔽が、カラメルソース中で実証された。
【0084】
酵母抽出物:
2つの酵母抽出物を調製し、使用した。これらは、上記実施例1と同じ抽出物(EXL1およびEXL2)である。
【0085】
遮蔽を実証するために使用される食品製品:
- 製品8(対照):Vahine(登録商標)市販カラメルソース。
- 製品9(比較):100ppmのEXL2と均一に混合したVahine(登録商標)市販カラメルソース。
- 製品10:100ppmのEXL1と均一に混合したVahine(登録商標)市販カラメルソース。
【0086】
実施例1と同じプロトコルに従って、各製品を、比較官能分析のために専門家パネルに提出し、結果は以下の通りである:
製品8:顕著なカラメル芳香、燃焼芳香の存在、非常に顕著な甘味および苦味の存在。
製品9:カラメル芳香は、製品8と比較して依然として顕著であり、甘味は依然として顕著であり、苦味の同様の存在である。さらに、パネルの専門家は、酵母の芳香ノートを同定する。
製品10:カラメル芳香は、製品8よりもまだ顕著であり、口内でより顕著な甘味である。他方で、専門家は、苦味がないこと、および酵母の芳香ノートがないことを記録している。
【0087】
従って、専門家のパネルによる研究は、本発明による酵母抽出物が、苦味を遮蔽しながら、食品製品中に酵母の芳香ノートを生成することなく、元の製品よりも口内でより顕著な甘味を有する製品を生成することを実証する。
【0088】
実施例3:望ましくないタンパク質ノートの遮蔽
(a)エンドウマメタンパク質溶液
この実施例では、本発明による酵母抽出物によるタンパク質ノートの遮蔽は、タンパク質水中で実証された。
【0089】
酵母抽出物:
2つの酵母抽出物を調製した。これらは、上記実施例1と同じ抽出物(EXL1およびEXL2)である。
【0090】
遮蔽を実証するために使用される食品:
- 製品11(対照):水中のPeatex(登録商標)エンドウマメタンパク質の3%溶液。
- 製品12(比較):Peatex(登録商標)エンドウマメタンパク質の、50ppmのEXL2と均一に混合した水中3%溶液。
- 製品13:Peatex(登録商標)エンドウマメタンパク質の、50ppmのEXL1と均一に混合した水中3%溶液。
【0091】
前の実施例と同じプロトコルに従って、各製品を、比較官能分析のために専門家のパネルに提出し、結果は以下の通りである:
製品11:苦い溶液、望ましくないエンドウマメタンパク質のノートおよび望ましくない金属のノートの存在。
製品12:溶液は依然として苦く、金属ノートは顕著であり、望ましくないエンドウマメタンパク質ノートは非常にわずかに減少した。パネルの専門家は、酵母の芳香ノートを確認する。
製品13:対照より苦味が少ない溶液、目立たない望ましくない金属のノート、および望ましくないエンドウマメタンパク質のノートの実質的な減少。パネルの専門家は、酵母の芳香ノートがないことを記録している。
【0092】
したがって、官能研究の結果は、タンパク質ノート遮蔽特性を実証する。実際に、本発明による酵母抽出物(EXL1)を添加すると、望ましくないタンパク質ノートが明らかに減少するが、また、有利には、苦味が減少し、しかしながら酵母の芳香ノートは生じない。
【0093】
(b)「チキン・イン・トマトソース」ヴィーガン製品。
本発明による酵母抽出物によるタンパク質ノートの遮蔽は、「チキン・イン・トマトソース」ヴィーガン製品においても実証された。
【0094】
酵母抽出物:
2つの酵母抽出物を調製した。これらは、上記実施例1と同じ抽出物(EXL1およびEXL2)である。
【0095】
遮蔽を実証するために使用される食品製品:
- 製品14(対照):Trutex(登録商標)1501テクスチャード加工小麦タンパク質(MGP成分)に基づく缶詰にした調製した料理。
- 製品15:100ppmのEXL1と均一に混合したTrutex(登録商標)1501テクスチャード加工小麦タンパク質に基づく缶詰にした調製した料理。
【0096】
製品14および15の組成を、以下の表3に示す:
【0097】
【表3】
【0098】
組成物を缶詰にし、121℃で12分間滅菌した。
【0099】
前の実施例と同じプロトコルに従って、各製品を、比較官能分析のために専門家のパネルに提出し、結果は以下の通りである:
製品14:望ましくない植物性タンパク質ノートおよび望ましくない金属ノートの存在。
製品15:野菜タンパクアフターノートの大幅な減少。パネルの専門家は、酵母の芳香ノートがないことを記録している。
【0100】
したがって、この官能研究は、本発明による抽出物の遮蔽特性を再び実証する。実際に、本発明による酵母抽出物(EXL1)を添加した結果、植物タンパク質芳香ノートおよび望ましくない金属ノートが実質的に減少するが、酵母の芳香ノートは生じない。
【0101】
実施例4:望ましくない金属ノートの遮蔽
この実施例では、本発明による酵母抽出物による金属ノートの遮蔽は、高塩化カリウム(KCl)スープ中で検出された。
【0102】
酵母抽出物:
2つの酵母抽出物を調製した。これらは、上記実施例1と同じ抽出物(EXL1およびEXL2)である。
【0103】
遮蔽を実証するために使用される食品製品:
- 製品16(対照):0.25%のKClを含有するCampbell’s(登録商標)市販トマトスープ。
- 製品17(比較):100ppmのEXL2と均一に混合されたCampbell’s(登録商標)市販トマトスープ。
- 製品18:100ppmのEXL1と均一に混合されたCampbell’s(登録商標)市販トマトスープ。
【0104】
前の実施例と同じプロトコルに従って、各製品を比較官能分析のためにパネル専門家に提出し、結果は以下の通りである:
製品16:顕著なトマト芳香、甘味の存在、わずかに苦い味の存在、および特に塩化カリウムによる望ましくない金属ノートの非常に顕著な存在。
製品17:トマト芳香は製品14と同様に顕著であり、甘味はわずかにより顕著であり、苦味および望ましくない金属ノートは依然として顕著である。パネルの専門家は、酵母の芳香ノートを確認する。
製品18:苦味はそれほど顕著ではない。望ましくない金属ノートは、製品14と比較して実質的に減少する。パネルの専門家は、酵母の芳香ノートがないことを記録している。
【0105】
従って、結果は、得られた製品中に酵母の芳香ノートを常に誘導することなく、金属ノートの遮蔽に対する本発明による酵母抽出物の有益な効果を示す。
【0106】
実施例5:酸味の遮蔽
この実施例では、本発明による酵母抽出物による「酸味」ノートの遮蔽は、Bonne Maman(登録商標)ブランドのジャムで実証された。
【0107】
酵母抽出物:
2つの酵母抽出物を調製した。これらは、上記実施例1と同じ抽出物(EXL1およびEXL2)である。
【0108】
遮蔽を実証するために使用される食品製品:
- 製品19(対照):Bonne Maman(登録商標)ブランドの市販のイチゴジャム。
- 製品20(比較):100ppmのEXL2と均一に混合したBonne Maman(登録商標)ブランドの市販のイチゴジャム。
- 製品21:100ppmのEXL1と均一に混合したBonne Maman(登録商標)ブランドの市販のイチゴジャム。
【0109】
次いで、製品を、比較官能分析のために専門家のパネルに提出した。各専門家は、酵母抽出物を含有する製品との比較のために対照製品を味見した。パネルメンバーはまた、酵母の芳香ノートの有無を決定するように求められた。結果は以下の通りである:
製品19:イチゴの芳香が顕著であり、口内に甘味が存在し、とりわけ製品中に酸味のピークが存在する。
製品20:甘味はより顕著であり、イチゴの芳香はあまり存在せず、酸味は依然として存在する。パネルの専門家は、後味に対する酵母のわずかな芳香ノートの存在を確認する。
製品21:甘味は、わずかにより顕著であるが、とりわけ、時間が経つにつれてより長くなり、一方、酸味は、製品からは存在しない。専門家は、製品中の酵母の芳香ノートを確認しない。
【0110】
従って、結果は、食品製品中の酵母の芳香ノートを誘導することなく、酸味を遮蔽することに対する本発明による酵母抽出物の有益な効果を示す。
【0111】
実施例1~5は、酵母抽出物EXL1を酵母抽出物EXL3または酵母抽出物EXL4のいずれかで置き換えながら再現され、前記抽出物EXL3およびEXL4も、本発明による抽出物であり、その組成は以下の表4に列挙される:
【0112】
【表4】
【0113】
専門家の同じパネルによって行われた官能試験の結果は、酵母抽出物EXL1を用いて得られたものと同じであり、したがって、苦味および酸味の、ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属ノートの遮蔽に対する、本発明による酵母抽出物の有益な効果を再び実証する。
【0114】
実施例6:芳香的に中性の担体と混合した本発明による酵母抽出物の遮蔽効果:
この実施例に使用される芳香的に中性の担体は、Roquetteにより販売されているマルトデキストリンGlucidex(登録商標)12である。
【0115】
上記の酵母抽出物EXL1をこのマルトデキストリンと混合して、10重量%の5’-AMPおよび5’-GMPならびに0.98の5’-AMP/5’-GMP比を有する最終混合物を得た。
【0116】
次に、このようにして得られたマルトデキストリンと抽出物EXL1との混合物を、以下に列挙し、先の実施例に記載した製品に添加し、すなわち:
- 製品5:甘味料として0.035%のステビオシドを含むステビアベースのアイスティー。百分率は、飲料の総重量に対して表される、
- 製品11:水中のPeatex(登録商標)エンドウマメタンパク質の3%溶液、
- 製品16:0.25%のKClを含有するCampbell’s(登録商標)市販トマトスープ、
- 製品19:Bonne Maman(登録商標)ブランドの市販イチゴジャム。
【0117】
添加されるマルトデキストリンおよび抽出物EXL1の混合物の量は、製品5、16および19については100ppmであり、製品11については50ppmである。
【0118】
次いで、得られた製品を、比較官能分析のために専門家のパネルに提出した。
【0119】
製品5、11、16および19中のマルトデキストリンおよび抽出物EXL1の混合物の遮蔽効果を、酵母抽出物EXL1単独(製品7、13、18および21)の存在下で、同じ製品中で得られたものと比較した。
【0120】
結果は、酵母抽出物EXL1にマルトデキストリンを添加しても、酸味、ならびに望ましくない甘味料、タンパク質、および金属ノートに関して遮蔽特性が変化しないことを示す。

【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物であって、5~20重量%の5’-AMPおよび5~20重量%の5’-GMPを、0.85~1.25の5’-AMP/5’-GMP比で含み、重量百分率は酵母抽出物の乾燥重量に基づくことを特徴とする酵母抽出物の、製品中の苦味および酸味ならびに甘味料、タンパク質および金属ノートの遮蔽のための使用。
【請求項2】
25~55重量%の5’-リボヌクレオチドを含む5’-リボヌクレオチドに富む酵母抽出物であって、5~20重量%の5’-AMPおよび5~20重量%の5’-GMPを、0.85~1.25の5’-AMP/5’-GMP比で含み、重量百分率は酵母抽出物の乾燥重量に基づくことを特徴とする酵母抽出物を製品に10~1000ppm包含させることを含む、製品中の苦味および酸味ならびに望ましくない甘味料、タンパク質および金属ノートを遮蔽するための方法。
【外国語明細書】