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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124066
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13357 20060101AFI20240905BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20240905BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240905BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240905BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240905BHJP
【FI】
G02F1/13357
G02F1/1334
F21S2/00 451
G09F9/00 336B
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031980
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
【テーマコード(参考)】
2H189
2H391
3K244
5G435
【Fターム(参考)】
2H189AA04
2H189HA16
2H189LA19
2H189LA20
2H189LA22
2H189MA15
2H189NA09
2H391AA15
2H391AA23
2H391AB04
2H391AD45
2H391EA26
2H391FA01
2H391FA02
3K244AA01
3K244BA08
3K244BA48
3K244CA05
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244EC27
3K244EC28
3K244EC30
5G435AA03
5G435BB12
5G435EE22
5G435FF02
5G435FF08
(57)【要約】
【課題】表示装置の性能を向上させる技術を提供する。
【解決手段】第1前面、および第1前面の反対側にある第1背面を備えている第1基板と、第1前面と対向する第2背面、および第2背面の反対側にある第2前面を備えている第2基板と、第1基板の第1前面と第2基板の第2背面との間に配置される液晶層と、第1基板の第1背面上に接着層を介して接着固定された導光板と、第2基板の第2前面上に接着層を介して接着固定された導光板40と、導光板40の第1側面と対向する位置に配置された光源部と、導光板40と接着層との間の一部の領域に介在し、導光板40よりも低い屈折率を有する低屈折率層1と、を有し、低屈折率層1の厚さは、800nmより大きい、表示装置を用いる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1前面、および前記第1前面の反対側にある第1背面を備えている第1基板と、
前記第1前面と対向する第2背面、および前記第2背面の反対側にある第2前面を備えている第2基板と、
前記第1基板の前記第1前面と前記第2基板の前記第2背面との間に配置される液晶層と、
前記第1基板の前記第1背面上に第1接着層を介して接着固定された第1導光板と、
前記第2基板の前記第2前面上に第2接着層を介して接着固定された第2導光板と、
前記第2導光板の第1側面と対向する位置に配置された光源部と、
前記第2導光板と前記第2接着層との間の一部の領域に介在し、第1導光板よりも低い屈折率を有する低屈折率層と、
を有し、
前記低屈折率層の厚さは、800nmより大きい、表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記低屈折率層の前記厚さは、1μm以上である、表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
前記低屈折率層の前記厚さは、5μm以下である、表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記低屈折率層は、前記第2導光板の背面に沿う第1方向に延在し、前記第2導光板の背面に沿う方向であって、前記第1方向と交わる第2方向において並ぶ複数のパターンを有し、
前記複数のパターンが前記第2方向において並ぶ周期的な距離は、100μm以上である、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶層を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶層を用いた表示装置として、液晶層を挟む基板の光透過率を向上させることにより、観察者が、表示画像と背景とを重ね合わせて認識することが可能な透明表示装置がある。特許文献1(特開2020-16724号公報)には、透明表示装置における光の減衰を防ぐため、側面が発光素子に対向する透明基板よりも屈折率が低い透明層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-16724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、観察者が、表示画像と背景とを重ね合わせて認識することが可能な透明表示装置の開発を行っている。透明表示装置の場合、前面および背面のそれぞれが可視光を透過させる特性を備えている必要がある。このため、画像を表示するための光源部は、導光板の側面に配置される。本願発明者らの検討によれば、導光板の側面に対向するように光源部を配置した場合、以下の課題があることが判った。すなわち、透明表示装置における光の減衰を防ぐために、側面が発光素子に対向する導光板よりも屈折率が低い低屈折率層を設けた場合、低屈折率層の厚さが薄いと、低屈折率層の表面における反射率が低くなるため、低屈折率層を設けたことによる効果が十分に得られないという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、表示装置の性能を向上させる技術を提供することにある。
【0006】
その他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0008】
一実施の形態である表示装置は、第1前面、および前記第1前面の反対側にある第1背面を備えている第1基板と、前記第1前面と対向する第2背面、および前記第2背面の反対側にある第2前面を備えている第2基板と、前記第1基板の前記第1前面と前記第2基板の前記第2背面との間に配置される液晶層と、前記第1基板の前記第1背面上に第1接着層を介して接着固定された第1導光板と、前記第2基板の前記第2前面上に第2接着層を介して接着固定された第2導光板と、前記第2導光板の第1側面と対向する位置に配置された光源部と、前記第2導光板と前記第2接着層との間の一部の領域に介在し、第1導光板よりも低い屈折率を有する低屈折率層と、を有するものであり、前記低屈折率層の厚さは、800nmより大きい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る透明表示装置の一例を示す斜視図である。
図2図1のA-A線における断面図である。
図3】低屈折率層のパターンを示す平面レイアウトである。
図4】光の全反射の態様を説明する模式図である。
図5】比較例における反射の態様を説明する模式図である。
図6】実施の形態に係る透明表示装置における全反射の態様を説明する模式図である。
図7】低屈折率層の厚さと、光の波長と反射率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一または関連する符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0011】
以下の実施の形態では、ガラス板と組み合わせて利用される表示パネルの例として、液晶分子による可視光の散乱を利用して画像を表示させる液晶表示装置を取り上げて説明する。
【0012】
また、液晶表示装置は、液晶層に含まれる分子の配向を変化させることにより、表示画像を形成する装置であるが、光源を必要とする。以下で説明する実施の形態では、光源が、表示パネルとは別に設けられる。このため、以下では、表示パネルと、表示パネルに可視光を供給する光源モジュールとを区別して説明する。
【0013】
(実施の形態)
<透明表示パネルの構造>
まず、所謂、透明表示パネルの特徴について説明する。図1は、本実施の形態の表示装置である透明表示パネル(透明表示装置)の一例を示す斜視図である。図1を含む以下の図面において、表示パネルP1の厚さ方向に沿った方向をZ方向、Z方向に直交するX-Y平面において、表示パネルP1の一辺の延在方向をX方向、X方向に交差する方向をY方向として説明する。図2は、図1のA-A線における断面図である。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態の表示パネルP1は、基板(アレイ基板)10、基板(対向基板)20、導光板(第1導光板または第1カバーガラスともいう)30、導光板(第2導光板または第2カバーガラスともいう)40、光源部50、および駆動回路70を有している。
【0015】
表示装置として構成する場合、図1に示す表示パネルP1が備える各部分の他、例えば制御回路、あるいは表示パネルP1に接続されるフレキシブル基板、あるいは筐体などが含まれる場合がある。図1では、表示パネルP1以外の部分は図示を省略している。
【0016】
表示パネルP1は、外部から供給される入力信号に応じて画像が形成される表示領域DAを有する。また、表示パネルP1は、平面視において表示領域DAの周囲を囲む周辺領域PFA(図3参照)を有している。なお、図1に示す表示パネルP1の表示領域DAは四角形であるが、表示領域が多角形や円形など、四角形以外の形状であってもよい。表示領域DAは、表示面を視た平面視において、表示パネルP1が画像を表示する有効領域である。基板10、基板20、導光板30および導光板40のそれぞれは、平面視において表示領域DAと重なる位置にある。図1に示す例では、駆動回路70は基板10上に搭載されており、光源部50は導光板40の側面40s1に面して設けられている。ただし、導光板40の側面40s1から導光板40内に光源部50から光を射出できるようにすれば、光源部50の搭載箇所はこれに限られない。例えば、光源部50は基板10上に搭載されていてもよい。光源部50は、例えば複数の発光ダイオード素子を備えている。
【0017】
まず、図2に示す表示パネルP1において、光源部50から出射された光の光路について説明する。図2に示すように、表示パネルP1は、液晶層LQLを介して対向するように貼り合せられた基板10および基板20を有している。基板10と基板20とは、表示パネルP1の厚さ方向であるZ方向に配列される。言い換えれば、基板10と基板20とは、表示パネルP1の厚さ方向(Z方向)において互いに対向する。基板10は、液晶層LQL(および基板20)と対向する前面(主面、面)を有する。また基板20は、基板10の前面(および液晶層LQL)と対向する背面(主面、面)を有する。
【0018】
基板10は、スイッチング素子(能動素子)としての複数のトランジスタ(トランジスタ素子)がアレイ状に配置されたアレイ基板である。このトランジスタは、例えばTFT(Thin Film Transistor、薄膜トランジスタ)である。また、基板20は、アレイ基板である基板10に対して表示面側に設けられた基板である。基板20は、アレイ基板に対向配置された基板という意味で、対向基板と言い換えることができる。
【0019】
液晶LQを含む液晶層LQLは、基板10の前面と基板20の背面との間にある。液晶層LQLは、光学変調素子である。表示パネルP1は、上記したスイッチング素子を介して液晶層LQLの周辺に形成される電界の状態を制御することにより、そこを通過する光を変調する機能を備えている。基板10および基板20にある表示領域DAは、平面視において液晶層LQLと重畳する。
【0020】
また、基板10と基板20とは、シール部(シール材)SLMを介して接着される。図2に示すように、シール部SLMは、平面視において表示領域DAの周囲を囲むように配置される。つまり、シール部SLMの内側には液晶層LQLがある。シール部SLMは、基板10と基板20との間に液晶を封入するシールとしての役割を果たす。また、シール部SLMは、基板10と基板20とを接着する、接着材としての役割を果たす。
【0021】
基板10の背面上には、接着層31を介して導光板30が接着固定されている。また、基板20の前面上には、接着層41、保護膜42を順に介して導光板40が接着固定されている。導光板30は、基板10の背面と対向する前面および前面の反対側の背面を備えている。導光板30は、接着層31を介して基板10に接着固定されている。少なくとも表示領域DAでは、導光板30と基板10との間の隙間は、接着層31により埋められている。図2に示す例では、導光板30の前面の全体に接着層31が接着している。保護膜42は、基板20の前面と対向する背面および背面の反対側の前面を備えている。
【0022】
導光板40は、基板20の前面と対向する背面および背面の反対側の前面を備えている。また、導光板40は、光源部50と対向する側面40s1、および側面40s1の反対側に位置する側面40s2を備えている。側面40s1および側面40s2のそれぞれは、導光板40の背面と前面との間において、導光板40の背面と前面とを繋ぐ面である。側面40s1および側面40s2のそれぞれは、導光板40の背面および前面のそれぞれに対し垂直な方向(Z方向)に沿う面である。導光板40は、接着層41を介して基板20に接着固定されている。少なくとも表示領域DAの一部では、導光板40と基板20との間の隙間は、接着層41および保護膜42により埋められている。すなわち、導光板40は、保護膜42および接着層41を介して基板20に貼り付けられている。
【0023】
導光板40の背面と保護膜42の前面との間の一部の領域には、低屈折率層(透明層)1が介在している。保護膜42は、低屈折率層1の背面を覆っており、接着層41を介して基板20に貼り付けられている。低屈折率層1は、基板20の前面と対向する背面および背面の反対側の前面1fを備えている。図3を用いて後に説明するように、低屈折率層1は、表示領域DAにおいて接着層41の前面の全体を覆ってはおらず、表示領域DAの所定の範囲において接着層41の前面を覆っている。図2に示す断面では、表示領域DA内の当該所定の範囲において、導光板40の背面に低屈折率層1が接し、表示領域DA内の当該所定の範囲と異なる範囲において、導光板40の背面に保護膜42が接着している。低屈折率層1は、基板10、基板20、導光板30、導光板40、接着層31および接着層41のいずれよりも屈折率が低い。
【0024】
接着層31および接着層41のそれぞれは、可視光を透過させることのできる透明な樹脂材料からなる。可視光透過性の接着層31および接着層41の例として、シート状に形成されたOCA(Optical Clear Adhesive)と呼ばれる透明接着シート、または、液体状の透明接着剤を硬化させて用いるOCR(Optical Clear Resin)などを例示できる。保護膜42も、可視光を透過させることのできる透明な材料からなる。保護膜42の厚さは、例えば1μm程度である。また、本実施の形態の主な特徴の1つとして、Z方向における低屈折率層1の厚さは800nmよりも大きい。具体的には、低屈折率層1の厚さは例えば1μmである。
【0025】
図2に示す表示パネルP1の場合、前面および背面の可視光透過性を確保するために、表示領域DAと重ならない位置に光源部50が配置された構造を備える。また、表示パネルP1は、導光板30、導光板40、基板10および基板20と、周囲の空気層との屈折率差を利用して光源光L1を反射させることにより、光源部50と対向する側面40s1の反対側の側面40s2側へ光を届ける機構を備えている。側面40s2を含む表示パネルP1の側面、つまり、基板10、基板20、導光板30、導光板40、接着層31、接着層41、およびシール部SLMを含む積層体の側面には、鏡面が当該側面に対向するようにミラー43が貼り付けられている。
【0026】
上記のように、導光板の側面から光源光を入射させて表示領域全体を照らす表示パネルの場合、表示領域において、光源部から遠い領域の輝度が光源部に近い領域の輝度よりも低いという現象が確認される。ここでは、この現象を輝度傾斜現象と呼ぶ。このような輝度傾斜現象を抑えるため、本実施の形態の表示パネルP1では、光源部50の近傍に低屈折率層1を設けている。低屈折率層1の屈折率は、接着層41の屈折率より小さいため、導光板40内を通る光源光L1が、低屈折率層1の前面において全反射する臨界角は、接着層41の前面において全反射する臨界角よりも小さい。よって、低屈折率層1が形成された光源部50の近傍では、液晶層LQLおよび導光板30に達する光源光L1を低減できる。つまり、光源光L1により表示パネルP1を照らす領域を、光源部50から遠い位置に先送りする効果を得られる。これにより、輝度傾斜現象を抑えられる。
【0027】
次に、図3に示す平面レイアウトを用いて、低屈折率層1のパターンを説明する。図3では、低屈折率層1の他に光源部50を示している。図3では、パターン形状を分かり易くするため、低屈折率層1にハッチングを付している。
【0028】
図3に示すように、平面視において、表示パネルP1は、環状の周辺領域PFAと、周辺領域PFAに囲まれた表示領域DAとを有している。図3では、周辺領域PFAと表示領域DAとの境界を破線で示している。低屈折率層1は、平面視において周辺領域PFA内に形成された矩形の環状パターンである枠部3と、表示領域DA内でY方向に延在する複数の帯部2とを有している。帯部2は、Y方向に延在するパターンである。すなわち、帯部2は、図2に示す導光板40の側面のうちの、光源部50と対向する側面40s1側から、反対側の側面40s2側へ向かって延在している。帯部2は、長手方向の両端部において枠部3と一体となっている。複数の帯部2は、互いに離間してX方向に並んでいる。X方向およびY方向は、導光板40の背面に沿う方向である。
【0029】
複数の帯部2のそれぞれの短手方向における幅は、平面視において、光源部50側の方が光源部50の反対側よりも大きい。つまり、帯部2の幅は、光源部50から遠ざかる程小さくなる。複数の帯部2のそれぞれは同じ平面形状を有しており、X方向において等間隔で配置されている。X方向において複数の帯部2が並ぶ周期的な距離X1は、100~200μm以上である。各帯部2が、光源部50の近傍において大きい幅を有していることで、光源部50から導光板40内に入射した光源光L1は、光源部50から遠い領域に比べ、光源部50に近い領域で全反射し易くなる。よって、光源部50の近傍では、液晶層LQLおよび導光板30に達する光源光L1を低減できるため、輝度傾斜現象を抑えられる。
【0030】
複数の帯部2が並ぶ周期的な距離X1は、例えば、X方向における、所定の帯部2の中心から、当該帯部2と隣り合う他の帯部の中心までの距離である。
【0031】
ここで、接着層31および接着層41のそれぞれの屈折率は、1.474である。基板10および基板20のそれぞれの屈折率は、1.51である。導光板30の屈折率は、1.470~1.51である。導光板40の屈折率は、1.470である。保護膜42の屈折率は、1.500である。低屈折率層1の屈折率は、1.410である。
【0032】
すなわち、図2に二点鎖線で模式的に示すように、光源部50から出射された光源光L1は、導光板30の背面および導光板40の前面で反射しながら、側面40s1から遠ざかる方向に伝搬する。このとき、導光板40側または導光板30側から低屈折率層1の表面に入射した光源光L1のうち、入射角が臨界角より大きい光は全反射する。その後、ミラー43により反射した光源光L1は、反対側(側面40s1を含む表示パネルP1の側面側)へ、導光板30の背面および導光板40の前面で反射しながら伝搬する。
【0033】
液晶LQは高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)であり、液晶性ポリマーと液晶分子を含んでいる。液晶性ポリマーの配向方向は、電界の有無にかかわらずほとんど変化しない。一方、液晶分子の配向方向は、液晶LQにしきい値以上の高い電圧が印加された状態では、電界に応じて変化する。液晶LQに電圧が印加されていない状態では、液晶性ポリマー及び液晶分子のそれぞれの光軸は互いに平行であり、液晶層LQLに入射した光源光L1は、液晶層LQL内でほとんど散乱されることなく透過する(透明状態)。液晶LQに電圧が印加された状態では、液晶性ポリマー及び液晶分子のそれぞれの光軸は互いに交差し、液晶LQに入射した光源光L1は、液晶層LQL内で散乱される(散乱状態)。
【0034】
表示パネルP1は、光源光L1の伝搬経路における液晶LQの配向を制御することにより、透明状態と散乱状態とを制御する。散乱状態において光源光L1は液晶LQにより放出光L2として導光板40の前面側および導光板30の背面側から表示パネルP1の外部に出射される。放出光L2および背景光L3は、例えば導光板40の前面側にいる観察者に視認される。観察者は、放出光L2と、背景光L3とを組み合わせて認識することができる。このように透明表示パネルを用いた観察者は、表示画像と背景とを重ね合わせて認識することが可能である。
【0035】
<本実施の形態の効果>
以下に、図4図5および図6を用いて、全反射の態様について説明する。図4は、光の全反射の態様を説明する模式図である。図5は、比較例における反射の態様を説明する模式図である。図6は、本実施の形態における全反射の態様を説明する模式図である。図4図5および図6では、光の経路を矢印で示している。また、図4図5および図6は断面図であるが、光の進路を分かり易くするため、ハッチングを省略している。
【0036】
図4には、例として導光板40のみを示している。図4には、導光板40内を進む光が導光板40の背面で全反射する際の光の進み方を示している。ここで、光の入射角θ1の大きさは、導光板40の背面で全反射が起こる臨界角の大きさ以上である。全反射が起こるとき、光は導光板40の外へ一切出ないのではなく、その一部は一時的に導光板40の外部へ染み出し、その後、導光板40の背面を通過して導光板40内へ戻る。このように、全反射が起こるべき入射角で光が入射した際に、光の一部は屈折率の低い物質側へ染み出す。このように染み出す光は、エバネッセント光と呼ばれる。
【0037】
次に、図5に、比較例として、導光板40に比較的薄い厚さを有する低屈折率層1aが接している場合について説明する。ここで、導光板40側から低屈折率層1aの前面1fへ入射する光の入射角θ2の大きさは、導光板40側から低屈折率層1aの前面1fへ光が入射する場合において全反射が起こる臨界角の大きさ以上である。
【0038】
このとき、導光板40側から導光板40と低屈折率層1aとの界面に達した光の一部は、導光板40の背面近傍の低屈折率層1a内へ染み出してから導光板40内へ戻ろうとする。しかし、低屈折率層1aの厚さが800nm以下だと、導光板40の背面近傍に出た光の一部が低屈折率層1aの背面から保護膜42側へ出て、そのまま保護膜42内を、導光板40側とは異なる方向へ直進していく。導光板40の背面近傍へ染み出した光の一部が導光板40内へ戻ったとしても、他の一部の光が保護膜42側へ進むため、導光板40を設けたことにより期待される全反射が起こらない。つまり、低屈折率層1aによる反射率が低下するため、輝度傾斜現象を十分に抑えられない。
【0039】
上記比較例では、低屈折率層1aの厚さが小さいことが、反射率の低下の原因となっている。低屈折率層1aの厚さが800nm以下である場合、低屈折率層1aによる反射率の低下が問題となる。
【0040】
そこで、本実施の形態では、図6に示すように、光の染み出しを抑えるため、低屈折率層1の厚さを十分に大きく設定している。具体的には、低屈折率層1の厚さは800nmより大きい。これにより、導光板40側から導光板40と低屈折率層1との界面に入射角θ2で達した光の一部は、導光板40の背面近傍の低屈折率層1内に染み出してから導光板40内へ戻る。このとき、低屈折率層1内に染み出した光が保護膜42側に飛び出さないよう、低屈折率層1が十分な厚さを有していることで、全反射が起こる際の保護膜42側への光の漏れを抑えられる。よって、本実施の形態では、低屈折率層1を設けることによる所望の輝度傾斜現象抑制効果が得られるため、表示装置の性能を向上できる。
【0041】
図7に、本願発明者らが行ったシミュレーションの結果として、光が反射する際の光の波長(横軸)と光の反射率と(縦軸)との関係をグラフで示す。図7では、全反射が起こる臨界角以上の角度(ここでは75度)で光が導光板から低屈折率層へ入射した際の反射率を示している。図7では、低屈折率層の厚さが300nmである比較例の表示パネルにおいて計算したグラフを破線で示している。また、図3では、低屈折率層の厚さが900nmである表示パネルにおいて計算したグラフを実線で示している。つまり、実線で示すグラフは、本実施の形態のように低屈折率層の厚さを800nmより大きく設定した場合における計算結果を示すものである。
【0042】
図7に示すように、破線で示す比較例グラフでは、光の反射率が比較的小さいのに対し、実線で示すグラフでは、比較例よりも高い反射率を示している。実線で示すグラフでは、長波長側であっても、80%以上の反射率が得られており、良好な反射特性が得られていることが分かる。反射率を高める観点から、低屈折率層の厚さは、1μm以上であることがより好ましい。低屈折率層の厚さは、800nmより大きければ、光学的な観点からはどのような厚さでも本実施の形態の効果を得られるが、低屈折率層の成膜方法による制限があるため、低屈折率層の厚さの上限は5μmとなることが考えられる。
【0043】
ここで、低屈折率層の厚さが比較的大きい場合、低屈折率層による光の回折が問題となることが考えられる。これは、低屈折率層の帯部2(図3参照)が並ぶ周期的な距離X1が比較的小さい場合に、外光と回折光とが離れることで、回折像が観察者から視認され、表示パネルにおける表示品質が低下する問題である。しかし、図3を用いて説明した、X方向において複数の帯部2が並ぶ周期的な距離X1が100μm以上であれば、本実施の形態のように低屈折率層1が800nmより大きい厚さを有する場合であっても、外光と回折光とがほぼ重なるため、回折像は視認されず問題とならない。回折像を目立たなくする観点から、距離X1は200μm以上であることが、より望ましい。
【0044】
以上、実施の形態および代表的な変形例について説明したが、上記した技術は、例示した変形例以外の種々の変形例に適用可能である。例えば、上記した変形例同士を組み合わせてもよい。
【0045】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に想到し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、表示装置や表示装置が組み込まれた電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 低屈折率層
2 帯部
3 枠部
10、20 基板
30、40 導光板
31、41 接着層
40s1、40s2 側面
42 保護膜
43 ミラー
50 光源部
70 駆動回路
DA 表示領域
L1 光源光
L2 放出光
L3 背景光
LQ 液晶
LQL 液晶層
P1 表示パネル
SLM シール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7