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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124078
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
F04C18/02 311K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031999
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】垣本 健二
(72)【発明者】
【氏名】並木 謙
(72)【発明者】
【氏名】山本 詩織
(72)【発明者】
【氏名】松田 邦久
(72)【発明者】
【氏名】服部 友哉
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓郎
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA03
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB01
3H039BB16
3H039CC02
3H039CC03
3H039CC08
3H039CC15
3H039CC24
3H039CC28
(57)【要約】
【課題】第1背圧空間内の流体を吸入圧空間に排出しやすいスクロール型圧縮機を提供する。
【解決手段】固定スクロール60と可動スクロール70とプレート80は、吸入室から流体が流入する吸入圧空間Kを区画している。背圧室S4は、可動スクロール70と軸支ハウジング40とによって区画される第1背圧空間S41と、プレート80と背圧室形成凹部48とによって区画される第2背圧空間S42とを有している。軸支ハウジング40は、第1背圧空間S41と第2背圧空間S42とを連通させる背圧供給溝49を有している。背圧供給溝49は、第1背圧空間S41内の流体を第2背圧空間S42に供給する。排出孔82は、プレート80を貫通するとともに第2背圧空間S42と吸入圧空間Kとを連通可能である。排出孔82は、第2背圧空間S42内の流体を吸入圧空間Kに排出可能である。排出孔82は、回転軸12の軸方向において背圧供給溝49と重なっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が吸入される吸入室を有するハウジングと、
前記ハウジングに対して回転可能に支持される回転軸と、
固定基板、前記固定基板から立設された固定渦巻壁、及び前記固定基板から立設されるとともに前記固定渦巻壁を取り囲む筒状の固定外周壁を有し、前記ハウジングに固定される固定スクロールと、
前記固定基板と対向する可動基板、及び前記可動基板から前記固定基板に向けて立設されるとともに前記固定渦巻壁と噛み合う可動渦巻壁を有し、前記固定外周壁の内側に配置され、前記回転軸の回転に伴い前記固定スクロールに対して公転運動する可動スクロールと、
前記可動基板に対して前記固定基板とは反対側に対向配置される対向壁と、
前記可動基板と前記対向壁との間に介在される環状のプレートと、
前記固定外周壁と前記可動スクロールと前記プレートとによって区画され、前記吸入室から前記流体が流入する吸入圧空間と、
前記対向壁における前記プレートと対向する対向面から凹む環状の背圧室形成凹部と、
前記可動スクロールと前記対向壁とによって区画される第1背圧空間、及び前記プレートと前記背圧室形成凹部とによって区画される第2背圧空間を有し、前記可動スクロールを前記固定スクロールに向けて付勢する背圧室と、
前記対向面から凹むとともに前記第1背圧空間と前記第2背圧空間とを連通させ、前記第1背圧空間内の前記流体を前記第2背圧空間に供給する背圧供給溝と、
前記プレートを貫通するとともに前記第2背圧空間と前記吸入圧空間とを連通可能であり、前記第2背圧空間内の前記流体を前記吸入圧空間に排出可能な排出孔と、
を備えたスクロール型圧縮機であって、
前記排出孔の少なくとも一部は、前記回転軸の軸方向において前記背圧供給溝と重なっていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記排出孔は、前記固定スクロールに対する前記可動スクロールの公転運動に伴い、前記吸入圧空間と連通する排出状態と前記可動スクロールと対向する非排出状態とで切り替わる請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記排出孔は、重力方向において前記回転軸よりも下側で前記回転軸の軸方向において前記背圧供給溝と重なっている請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項4】
前記対向壁には、前記背圧供給溝が複数設けられ、
複数の前記背圧供給溝は、前記プレートの周方向において間隔を空けて並んでおり、
前記排出孔は、複数の前記背圧供給溝のうち、一部の前記背圧供給溝と前記回転軸の軸方向に重なっている請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項5】
前記背圧供給溝は、前記プレートの径方向に沿って延びる直線状の溝である請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項6】
前記背圧室は、前記可動スクロールと前記プレートとによって区画されるとともに前記第1背圧空間と連通する第3背圧空間を有している請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のスクロール型圧縮機は、ハウジングと、回転軸と、固定スクロールと、可動スクロールと、対向壁と、環状のプレートとを備えている。ハウジングは、流体が吸入される吸入室を有している。回転軸は、ハウジングに対して回転可能に支持されている。固定スクロールは、固定基板と、固定基板から立設された固定渦巻壁と、固定基板から立設されるとともに固定渦巻壁を取り囲む筒状の固定外周壁とを有している。固定スクロールは、ハウジングに固定されている。可動スクロールは、固定基板と対向する可動基板と、可動基板から固定基板に向けて立設されるとともに固定渦巻壁と噛み合う可動渦巻壁とを有している。可動スクロールは、固定外周壁の内側に配置されている。可動スクロールは、回転軸の回転に伴い固定スクロールに対して公転運動する。対向壁は、可動基板に対して固定基板とは反対側に対向配置されている。プレートは、可動基板と対向壁との間に配置されている。対向壁は、プレートと対向する対向面から凹む環状の背圧室形成凹部を有している。また、対向壁は、対向面から凹む背圧供給溝を有している。
【0003】
スクロール型圧縮機は、吸入室から流体が流入する吸入圧空間と、可動スクロールを固定スクロールに向けて付勢する背圧室とを有している。吸入圧空間は、固定外周壁と可動スクロールとプレートとによって区画されている。背圧室は、可動スクロールと対向壁とによって区画される第1背圧空間と、プレートと背圧室形成凹部とによって区画される第2背圧空間とを有している。第1背圧空間と第2背圧空間とは、背圧供給溝によって連通している。背圧供給溝は、第1背圧空間内の流体を第2背圧空間に供給する。
【0004】
流体としての冷媒を圧縮するスクロール型圧縮機では、ハウジング内の温度がハウジング外よりも低い状態で長時間放置されると、背圧室内に液冷媒が溜まる。この状態でスクロール型圧縮機を運転すると、背圧室内に溜まった液冷媒が気化することにより背圧室内の圧力が過剰に上昇する。背圧室内の圧力が上昇すると、固定スクロールと可動スクロールとの摺動抵抗、及び可動スクロールとプレートとの摺動抵抗は増大する。このため、例えば、背圧室内の流体を吸入圧空間に排出するための排出孔をプレートに設けることが考えられる。排出孔は、プレートを貫通している。排出孔は、第2背圧空間と吸入圧空間とを連通可能である。排出孔は、第2背圧空間内の流体を吸入圧空間に排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-159314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排出孔が設けられたスクロール型圧縮機において、第1背圧空間内の流体は、背圧供給溝を通って第2背圧空間に流れた後、排出孔によって吸入圧空間に排出される。つまり、第1背圧空間内の流体が吸入圧空間に排出されるためには第2背圧空間を通る必要がある。しかしながら、第2背圧空間は、対向壁の背圧室形成凹部とプレートとによって区画された狭い空間である。このため、第1背圧空間内の流体は吸入圧空間に排出されにくい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためのスクロール型圧縮機は、流体が吸入される吸入室を有するハウジングと、前記ハウジングに対して回転可能に支持される回転軸と、固定基板、前記固定基板から立設された固定渦巻壁、及び前記固定基板から立設されるとともに前記固定渦巻壁を取り囲む筒状の固定外周壁を有し、前記ハウジングに固定される固定スクロールと、前記固定基板と対向する可動基板、及び前記可動基板から前記固定基板に向けて立設されるとともに前記固定渦巻壁と噛み合う可動渦巻壁を有し、前記固定外周壁の内側に配置され、前記回転軸の回転に伴い前記固定スクロールに対して公転運動する可動スクロールと、前記可動基板に対して前記固定基板とは反対側に対向配置される対向壁と、前記可動基板と前記対向壁との間に介在される環状のプレートと、前記固定外周壁と前記可動スクロールと前記プレートとによって区画され、前記吸入室から前記流体が流入する吸入圧空間と、前記対向壁における前記プレートと対向する対向面から凹む環状の背圧室形成凹部と、前記可動スクロールと前記対向壁とによって区画される第1背圧空間、及び前記プレートと前記背圧室形成凹部とによって区画される第2背圧空間を有し、前記可動スクロールを前記固定スクロールに向けて付勢する背圧室と、前記対向面から凹むとともに前記第1背圧空間と前記第2背圧空間とを連通させ、前記第1背圧空間内の前記流体を前記第2背圧空間に供給する背圧供給溝と、前記プレートを貫通するとともに前記第2背圧空間と前記吸入圧空間とを連通可能であり、前記第2背圧空間内の前記流体を前記吸入圧空間に排出可能な排出孔と、を備えたスクロール型圧縮機であって、前記排出孔の少なくとも一部は、前記回転軸の軸方向において前記背圧供給溝と重なっていることを特徴とするスクロール型圧縮機。ことを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、排出孔の少なくとも一部は、回転軸の軸方向において背圧供給溝と重なっている。このため、第1背圧空間から排出孔と重なる背圧供給溝に流れた流体は、第2背圧空間を流れることなく、排出孔から吸入圧空間に排出される。したがって、第1背圧空間内の流体を吸入圧空間に排出しやすい。その結果、背圧室内の圧力が過剰に上昇することによる固定スクロールと可動スクロールとの摺動抵抗、及び可動スクロールとプレートとの摺動抵抗の増大を抑制できる。
【0009】
上記スクロール型圧縮機において、前記排出孔は、前記固定スクロールに対する前記可動スクロールの公転運動に伴い、前記吸入圧空間と連通する排出状態と前記可動スクロールと対向する非排出状態とで切り替わってもよい。
【0010】
例えば、排出孔が可動スクロールと対向する非排出状態のみを取る場合、背圧室と吸入圧空間とは連通しない。このため、背圧室内の流体は吸入圧空間に排出されない。一方、排出孔が吸入圧空間と連通する排出状態のみを取る場合、背圧室と吸入圧空間とは排出孔によって常に連通した状態になる。このため、背圧室内の流体が吸入圧空間に過剰に排出されることによって、背圧室内の圧力が低下しすぎるおそれがある。特に排出孔が背圧供給溝と重なっている場合はそのおそれが顕著である。背圧室内の圧力が低下しすぎると、可動スクロールを固定スクロールに付勢する付勢力が不足する。これに対し、上記構成では、排出孔は、固定スクロールに対する可動スクロールの公転運動に伴い、排出状態と非排出状態とで切り替わる。したがって、背圧室内の圧力が低下しすぎることを回避しつつ、背圧室内の流体を吸入圧空間に排出することができる。
【0011】
上記スクロール型圧縮機において、前記排出孔は、重力方向において前記回転軸よりも下側で前記回転軸の軸方向において前記背圧供給溝と重なっていてもよい。
スクロール型圧縮機の起動時において、第1背圧空間内の流体は、重力によって重力方向の下側に溜まっている。上記構成によれば、排出孔は、重力方向において回転軸よりも下側で回転軸の軸方向において背圧供給溝と重なっている。このため、第1背圧空間内において重力方向の下側に溜まっている流体は、排出孔と重なっている背圧供給溝に流れやすい。したがって、第1背圧空間内の流体を吸入圧空間により排出しやすくなる。
【0012】
上記スクロール型圧縮機において、前記対向壁には、前記背圧供給溝が複数設けられ、複数の前記背圧供給溝は、前記プレートの周方向において間隔を空けて並んでおり、前記排出孔は、複数の前記背圧供給溝のうち、一部の前記背圧供給溝と前記回転軸の軸方向に重なっていてもよい。
【0013】
例えば、排出孔が全ての背圧供給溝と回転軸の軸方向に重なっている場合、背圧室内の流体が吸入圧空間に過剰に排出されることによって、背圧室内の圧力が低下しすぎるおそれがある。これに対し、上記構成では、排出孔は、複数の背圧供給溝のうち、一部の背圧供給溝と回転軸の軸方向に重なっている。したがって、背圧室内の流体が吸入圧空間に過剰に排出されることにより背圧室内の圧力が低下しすぎることを回避しやすい。
【0014】
上記スクロール型圧縮機において、前記背圧供給溝は、前記プレートの径方向に沿って延びる直線状の溝であってもよい。
上記構成によれば、背圧供給溝は、プレートの径方向に沿って延びる直線状の溝である。このため、例えば、背圧供給溝がプレートの径方向に延びる部分とプレートの周方向に延びる部分とを有している場合と比較して、第1背圧空間から排出孔までの流体の径路が短くなる。したがって、第1背圧空間内の流体を吸入圧空間により排出しやすい。
【0015】
上記スクロール型圧縮機において、前記背圧室は、前記可動スクロールと前記プレートとによって区画されるとともに前記第1背圧空間と連通する第3背圧空間を有していてもよい。
【0016】
可動スクロールの可動基板の中央部は、第1背圧空間内の流体の圧力によって固定スクロールに向けて付勢される。上記構成によれば、背圧室は、第1背圧空間及び第2背圧空間に加えて、可動スクロールとプレートとによって区画される第3背圧空間を有している。これにより、可動基板の外周側の部位は、第3背圧空間内の流体の圧力によって固定スクロールに向けて付勢される。つまり、可動基板は、中央部だけでなく外周側の部位も固定スクロールに向けて付勢される。したがって、可動スクロールを固定スクロールに向けて安定的に付勢することができる。また、第3背圧空間は第1背圧空間と連通しているため、第1背圧空間の容積は実質的に増大することになるが、この場合でも排出孔と背圧供給溝とが重なっていることにより、第1背圧空間内及び第3背圧空間内の流体を吸入圧空間に排出しやすい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1背圧空間内の流体を吸入圧空間に排出しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】スクロール型圧縮機を示す断面図である。
図2】(a)は軸支ハウジング、プレート、及び回転軸を示す正面図、(b)は(a)の一部を拡大して示す拡大図である。
図3】排出孔が排出状態であるときのスクロール型圧縮機を示す部分断面図である。
図4】排出孔が非排出状態であるときのスクロール型圧縮機を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、スクロール型圧縮機を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。なお、本実施形態のスクロール型圧縮機は、車両に搭載される。本実施形態のスクロール型圧縮機は、車両空調装置に用いられる。本実施形態のスクロール型圧縮機は、流体としての冷媒を圧縮する。
【0020】
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、ハウジング11と、回転軸12と、電動モータ13と、圧縮部14とを備えている。
<ハウジング>
ハウジング11は、回転軸12、電動モータ13、及び圧縮部14を収容している。ハウジング11は、金属製である。本実施形態のハウジング11は、アルミニウム製である。ハウジング11は、モータハウジング20と、吐出ハウジング30と、軸支ハウジング40とを有している。
【0021】
モータハウジング20は、有底筒状である。モータハウジング20は、板状の底壁21と、底壁21の外周部から筒状に延びる周壁22とを有している。モータハウジング20は、筒状のボス23を有している。ボス23は、底壁21の内面から突出している。
【0022】
モータハウジング20は、複数の第1連通路形成凹部24を有している。図1では、1つの第1連通路形成凹部24が図示されている。複数の第1連通路形成凹部24は、モータハウジング20の周壁22の周方向において間隔を空けて配置されている。第1連通路形成凹部24は、モータハウジング20の周壁22の内周面から凹んでいる。第1連通路形成凹部24は、モータハウジング20の周壁22の開口側に設けられている。第1連通路形成凹部24は、モータハウジング20の周壁22の先端面22aにおいて開口している。
【0023】
モータハウジング20は、複数の雌ねじ穴25を有している。図1では、1つの雌ねじ穴25が図示されている。複数の雌ねじ穴25は、モータハウジング20の周壁22の周方向において間隔を空けて配置されている。雌ねじ穴25は、モータハウジング20の周壁22の周方向において第1連通路形成凹部24とは異なる位置に設けられている。雌ねじ穴25は、モータハウジング20の周壁22の先端面22aに形成されている。
【0024】
吐出ハウジング30は、有底筒状である。吐出ハウジング30は、板状の底壁31と、底壁31の外周部から筒状に延びる周壁32とを有している。
吐出ハウジング30は、第1吐出室形成凹部33を有している。第1吐出室形成凹部33は、吐出ハウジング30の底壁31の内面から凹んでいる。
【0025】
吐出ハウジング30は、複数の第2連通路形成凹部34を有している。図1では、1つの第2連通路形成凹部34が図示されている。複数の第2連通路形成凹部34は、吐出ハウジング30の周壁32の周方向において間隔を空けて配置されている。第2連通路形成凹部34は、吐出ハウジング30の周壁32の内周面から凹んでいる。第2連通路形成凹部34は、吐出ハウジング30の周壁32の開口側に設けられている。第2連通路形成凹部34は、吐出ハウジング30の周壁32の先端面32aにおいて開口している。
【0026】
吐出ハウジング30は、複数の第1ボルト挿通孔35を有している。図1では、1つの第1ボルト挿通孔35が図示されている。複数の第1ボルト挿通孔35は、吐出ハウジング30の周壁32の周方向において間隔を空けて配置されている。第1ボルト挿通孔35は、吐出ハウジング30の周壁32の周方向において第2連通路形成凹部34とは異なる位置に設けられている。第1ボルト挿通孔35は、吐出ハウジング30の周壁32を貫通している。
【0027】
モータハウジング20には、図示しない吸入口が形成されている。また、吐出ハウジング30には、図示しない吐出口が形成されている。吸入口には、図示しない外部冷媒回路の一端が接続されるとともに、吐出口には、外部冷媒回路の他端が接続されている。
【0028】
軸支ハウジング40は、有底筒状である。軸支ハウジング40は、板状の底壁41と、底壁41の外周部から筒状に延びる周壁42とを有している。軸支ハウジング40は、環状のフランジ壁43を有している。フランジ壁43は、軸支ハウジング40の周壁42の先端部から径方向外側に向けて延びている。
【0029】
軸支ハウジング40の周壁42の内周面は、大径内周面42aと、大径内周面42aよりも小径の中径内周面42bと、中径内周面42bよりも小径の小径内周面42cとを有している。大径内周面42a、中径内周面42b、及び小径内周面42cは、軸支ハウジング40の開口側から底壁41側に向けてこの順に並んでいる。
【0030】
軸支ハウジング40は、軸挿通孔44を有している。軸挿通孔44は、軸支ハウジング40の底壁41を貫通している。
図2(a)に示すように、軸支ハウジング40は、複数の連通路形成孔45を有している。複数の連通路形成孔45は、フランジ壁43の周方向において間隔を空けて配置されている。連通路形成孔45は、フランジ壁43の外周部を貫通している。また、軸支ハウジング40は、複数の第2ボルト挿通孔46を有している。複数の第2ボルト挿通孔46は、フランジ壁43の周方向において間隔を空けて配置されている。第2ボルト挿通孔46は、フランジ壁43の周方向において連通路形成孔45とは異なる位置に設けられている。第2ボルト挿通孔46は、フランジ壁43の外周部を貫通している。
【0031】
図1に示すように、モータハウジング20と吐出ハウジング30とは、モータハウジング20の周壁22の先端面22aと吐出ハウジング30の周壁32の先端面32aとが互いに向かい合うように配置されている。モータハウジング20の周壁22の軸方向と吐出ハウジング30の周壁32の軸方向とは一致している。
【0032】
軸支ハウジング40は、モータハウジング20と吐出ハウジング30との間に配置されている。軸支ハウジング40の周壁42の軸方向は、モータハウジング20の周壁22の軸方向及び吐出ハウジング30の周壁32の軸方向と一致している。軸支ハウジング40の周壁42は、底壁41から吐出ハウジング30側に向かって延びている。フランジ壁43は、モータハウジング20の周壁22と吐出ハウジング30の周壁32との間に位置している。軸支ハウジング40は、吐出ハウジング30の周壁32の先端面32aと対向する端面40aを有している。
【0033】
モータハウジング20の第1連通路形成凹部24、軸支ハウジング40の連通路形成孔45、及び吐出ハウジング30の第2連通路形成凹部34は、周壁22,32,42の軸方向に並んでいる。第1連通路形成凹部24、連通路形成孔45、及び第2連通路形成凹部34は、連通路Rを構成している。
【0034】
モータハウジング20の雌ねじ穴25、軸支ハウジング40の第2ボルト挿通孔46、及び吐出ハウジング30の第1ボルト挿通孔35は、周壁22,32,42の軸方向に並んでいる。モータハウジング20、軸支ハウジング40、及び吐出ハウジング30は、第1ボルト挿通孔35及び第2ボルト挿通孔46に挿通されたボルトBが雌ねじ穴25に螺合されることによって、互いに連結されている。フランジ壁43は、モータハウジング20の周壁22と吐出ハウジング30の周壁32とによって挟まれている。
【0035】
ハウジング11は、モータ室S1を有している。モータ室S1は、モータハウジング20の底壁21及び周壁22と軸支ハウジング40とによって区画されている。モータ室S1には、外部冷媒回路から吸入口を介して冷媒が吸入される。したがって、モータ室S1は、冷媒が吸入される吸入室である。
【0036】
図1及び図2(a)に示すように、軸支ハウジング40は、複数のピン47を有している。本実施形態の軸支ハウジング40は、6つのピン47を有している。複数のピン47は、フランジ壁43の周方向において等間隔を空けて配置されている。軸支ハウジング40は、環状の背圧室形成凹部48を有している。背圧室形成凹部48は、軸支ハウジング40の端面40aから凹んでいる。各ピン47は、背圧室形成凹部48の底面から突出している。
【0037】
図2(a)及び図3に示すように、軸支ハウジング40は、背圧供給溝49を有している。本実施形態の軸支ハウジング40は、複数の背圧供給溝49として6つの背圧供給溝49を有している。複数の背圧供給溝49は、フランジ壁43の周方向において等間隔を空けて配置されている。背圧供給溝49は、フランジ壁43の周方向においてピン47とは異なる位置に設けられている。背圧供給溝49とピン47は、フランジ壁43の周方向において交互に並んでいる。
【0038】
図3に示すように、各背圧供給溝49は、軸支ハウジング40の端面40aから凹んでいる。本実施形態では、軸支ハウジング40の端面40aから背圧供給溝49の底面までの深さは、軸支ハウジング40の端面40aから背圧室形成凹部48の底面までの深さよりも深い。本実施形態の各背圧供給溝49は、フランジ壁43の径方向に沿って直線状に延びる溝である。
【0039】
各背圧供給溝49は、軸支ハウジング40の周壁42の大径内周面42aにおいて開口している。各背圧供給溝49は、軸支ハウジング40の周壁42の大径内周面42aから背圧室形成凹部48と重なる位置まで延びている。各背圧供給溝49は、背圧室形成凹部48と連通している。
【0040】
<回転軸>
図1に示すように、回転軸12は、モータ室S1内に収容されている。回転軸12の軸方向は、モータハウジング20の周壁22の軸方向と一致している。本実施形態のスクロール型圧縮機10は、回転軸12の軸方向が重力方向Zに対して直交するような姿勢で車両に搭載されている。
【0041】
回転軸12の軸方向の第1端部は、モータハウジング20のボス23の内側に挿入されている。回転軸12の外周面とボス23の内周面との間には、第1軸受15が配置されている。第1軸受15は、転がり軸受である。回転軸12の第1端部は、第1軸受15を介してモータハウジング20に対して回転可能に支持されている。
【0042】
回転軸12は、軸支ハウジング40の軸挿通孔44に挿通されている。回転軸12の第1端部とは反対側の端部である第2端部は、軸支ハウジング40内に突出している。回転軸12の外周面と軸支ハウジング40の中径内周面42bとの間には、第2軸受16が収容されている。第2軸受16は、転がり軸受である。回転軸12の第2端部は、第2軸受16を介して軸支ハウジング40に対して回転可能に支持されている。
【0043】
図2(a)に示すように、本実施形態では、軸支ハウジング40に設けられた6つの背圧供給溝49のうち、3つの背圧供給溝49は、重力方向Zにおいて回転軸12よりも下側に位置している。残りの3つの背圧供給溝49は、重力方向Zにおいて回転軸12よりも上側に位置している。
【0044】
図1に示すように、回転軸12の外周面と軸支ハウジング40の小径内周面42cとの間には、シール部材17が配置されている。シール部材17は、回転軸12の外周面と軸支ハウジング40の小径内周面42cとの間をシールしている。シール部材17により、後述する第1背圧空間S41内の冷媒がモータ室S1に漏れることが規制されている。
【0045】
回転軸12の第2端部側の軸端面12aには、偏心軸18が一体形成されている。偏心軸18は、回転軸12と一体的に回転する。偏心軸18の軸線方向は、回転軸12の軸方向と一致している。偏心軸18の軸線L18は、回転軸12の軸線L12に対して偏心した位置に設けられている。
【0046】
偏心軸18の外周面には、バランスウェイト51が一体化されたブッシュ52が嵌合されている。バランスウェイト51は、ブッシュ52に一体形成されている。バランスウェイト51は、軸支ハウジング40の大径内周面42aの内側に収容されている。
【0047】
<電動モータ>
電動モータ13は、回転軸12を回転させる。電動モータ13は、モータ室S1内に収容されている。電動モータ13は、ロータ13aと、筒状のステータ13bとを有している。
【0048】
ロータ13aは、円筒状のロータコア130と、図示しない永久磁石とを有している。回転軸12は、ロータコア130に挿通されている。回転軸12は、ロータコア130に固定されている。永久磁石は、ロータコア130に埋設されている。ステータ13bは、ロータ13aの外側に配置されている。ステータ13bは、円筒状のステータコア131と、コイル132とを有している。ステータコア131の外周面は、モータハウジング20の周壁22の内周面に固定されている。コイル132は、ステータコア131に巻回されている。コイル132が通電されることによりステータ13bに回転磁界が発生すると、ロータ13aは回転する。回転軸12は、ロータ13aと一体的に回転する。
【0049】
<圧縮部>
圧縮部14は、回転軸12が回転することにより、冷媒を圧縮する。電動モータ13は、回転軸12を回転させることによって、圧縮部14を駆動する。圧縮部14は、吐出ハウジング30の底壁31及び周壁32と軸支ハウジング40とによって区画された空間に収容されている。
【0050】
圧縮部14は、固定スクロール60及び可動スクロール70を有している。固定スクロール60は、回転軸12の軸方向において、可動スクロール70よりも吐出ハウジング30の底壁31側に位置している。可動スクロール70は、回転軸12の軸方向において、固定スクロール60よりも軸支ハウジング40側に位置している。
【0051】
固定スクロール60は、円板状の固定基板61と、渦巻形状の固定渦巻壁62と、筒状の固定外周壁63とを有している。固定基板61は、第1面61a及び第2面61bを有している。第1面61a及び第2面61bは、固定基板61の板厚方向と直交する面である。固定基板61の第1面61aは、吐出ハウジング30の底壁31の内面と対向している。固定基板61の第2面61bは、固定基板61の第1面61aの反対側の面である。固定渦巻壁62及び固定外周壁63はそれぞれ、固定基板61の第2面61bから立設されている。固定外周壁63は、固定渦巻壁62を取り囲んでいる。固定スクロール60は、吐出ハウジング30の底壁31と軸支ハウジング40とによって挟み込まれることによって、ハウジング11に固定されている。
【0052】
固定スクロール60は、第2吐出室形成凹部64を有している。第2吐出室形成凹部64は、固定基板61の第1面61aから凹んでいる。第2吐出室形成凹部64は、吐出ハウジング30の第1吐出室形成凹部33とともに吐出室S2を区画している。
【0053】
固定スクロール60は、吐出ポート65を有している。吐出ポート65は、固定基板61の中央部を貫通する貫通孔である。吐出ポート65は、第2吐出室形成凹部64の底面において開口している。第2吐出室形成凹部64の底面には、吐出ポート65を開閉する弁機構66が取り付けられている。
【0054】
固定スクロール60は、導入孔67を有している。導入孔67は、固定外周壁63を厚さ方向に貫通している。
可動スクロール70は、円板状の可動基板71と、渦巻形状の可動渦巻壁72とを有している。可動スクロール70は、固定外周壁63の内側に配置されている。
【0055】
可動基板71は、第1面71a及び第2面71bを有している。第1面71a及び第2面71bは、可動基板71の板厚方向と直交する面である。可動基板71の第1面71aは、固定基板61の第2面61bと対向している。固定渦巻壁62の先端面は、可動基板71の第1面71aに接触している。可動基板71の第2面71bは、可動基板71の第1面71aの反対側の面である。可動渦巻壁72は、可動基板71の第1面71aから立設されている。可動渦巻壁72は、可動基板71から固定基板61に向けて立設されている。可動渦巻壁72は、固定渦巻壁62と噛み合わされている。可動渦巻壁72の先端面は、固定基板61の第2面61bに接触している。
【0056】
軸支ハウジング40は、可動基板71に対して固定基板61とは反対側に対向配置される対向壁である。したがって、対向壁は、ハウジング11の一部である。
固定基板61、固定渦巻壁62、可動基板71、及び可動渦巻壁72は、冷媒を圧縮する圧縮室S3を区画している。圧縮室S3は、導入孔67によって連通路Rと連通している。モータ室S1内の冷媒は、連通路Rから導入孔67を通って圧縮室S3に導入される。圧縮室S3において圧縮された冷媒は、吐出ポート65を介して吐出室S2に吐出される。
【0057】
可動スクロール70は、収容凹部73を有している。収容凹部73は、可動基板71の第2面71bから凹んでいる。収容凹部73は、可動基板71の中央部に位置している。偏心軸18及びブッシュ52は、収容凹部73内に収容されている。ブッシュ52の外周面と収容凹部73の内周面との間には、第3軸受19が配置されている。第3軸受19は、転がり軸受である。可動スクロール70は、第3軸受19及びブッシュ52を介して偏心軸18と相対回転可能に偏心軸18に支持されている。
【0058】
可動スクロール70は、複数の自転規制凹部74を有している。複数の自転規制凹部74は、可動基板71の周方向に間隔を開けて配置されている。複数の自転規制凹部74は、収容凹部73の周囲に設けられている。各自転規制凹部74は、可動基板71の第2面71bから凹んでいる。各自転規制凹部74は、円形状である。各自転規制凹部74の内周面には、円環状のリング部材75が嵌着されている。各リング部材75の内側には、ピン47が挿入されている。
【0059】
可動スクロール70は、回転軸12の回転に伴い、固定スクロール60に対して公転運動する。詳しくは、回転軸12の回転は、偏心軸18、ブッシュ52、及び第3軸受19を介して可動スクロール70に伝達される。これにより、可動スクロール70は自転しようとするが、各ピン47と各リング部材75の内周面とが接触することにより、可動スクロール70の自転が阻止される。可動スクロール70は、固定スクロール60に対する公転運動のみが許容される。可動スクロール70は、可動渦巻壁72が固定渦巻壁62に接触しながら、自転が阻止された状態で回転軸12の回転軸線L12周りで公転運動する。可動スクロール70が固定スクロール60に対して公転運動することによって圧縮室S3の容積が減少することで、圧縮室S3に吸入された冷媒は圧縮される。バランスウェイト51は、可動スクロール70が公転運動する際に可動スクロール70に作用する遠心力を相殺することにより、可動スクロール70のアンバランス量を低減する。
【0060】
可動スクロール70は、円環状の突出部76を有している。突出部76は、可動基板71の第2面71bから突出している。突出部76は、複数の自転規制凹部74を取り囲んでいる。
【0061】
可動スクロール70は、背圧導入通路77を有している。背圧導入通路77は、可動基板71及び可動渦巻壁72の双方を貫通している。背圧導入通路77の一端は、可動渦巻壁72の先端面において開口しているとともに、背圧導入通路77の他端は、収容凹部73の底面において開口している。
【0062】
<プレート>
軸支ハウジング40と可動スクロール70との間には、環状のプレート80が介在している。プレート80の板厚方向は、軸支ハウジング40の周壁42の軸方向及び可動基板71から可動渦巻壁72が立設する方向と一致している。
【0063】
プレート80は、第1面80a及び第2面80bを有している。第1面80a及び第2面80bはそれぞれ、プレート80の板厚方向と直交する面である。プレート80の第1面80aは、軸支ハウジング40の端面40aと対向している。したがって、軸支ハウジング40の端面40aは、対向壁におけるプレート80と対向する対向面である。プレート80の第2面80bは、プレート80の第1面80aの反対側の面である。プレート80の第2面80bは、圧縮部14と対向している。
【0064】
軸支ハウジング40の端面40aにおける背圧室形成凹部48よりも内側に位置する部分は、プレート80の第1面80aに当接している。また、軸支ハウジング40の端面40aにおける背圧室形成凹部48よりも外側に位置する部分は、プレート80の第1面80aに当接している。可動スクロール70の突出部76は、プレート80の第2面80bに当接している。
【0065】
プレート80の内径は、軸支ハウジング40の大径内周面42aの径とほぼ同じである。プレート80の内周縁は、大径内周面42aと回転軸12の軸方向に並んでいる。軸支ハウジング40の背圧室形成凹部48は、プレート80の周方向に延びている。軸支ハウジング40の背圧供給溝49は、プレート80の径方向に沿って延びている。
【0066】
固定スクロール60の固定外周壁63と可動スクロール70とプレート80は、吸入圧空間Kを区画している。吸入圧空間Kは、導入孔67と連通している。モータ室S1内の冷媒は、連通路Rから導入孔67を通って吸入圧空間Kにも流れ込む。
【0067】
図2(a)に示すように、プレート80は、複数のピン挿通孔81を有している。複数のピン挿通孔81は、プレート80の周方向において間隔を空けて配置されている。各ピン挿通孔81は、プレート80を板厚方向に貫通している。ピン47は、ピン挿通孔81に挿通されている。また、プレート80は、排出孔82を有している。排出孔82は、プレート80を板厚方向に貫通している。
【0068】
図2(b)及び図3に示すように、排出孔82は、背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっている。本実施形態では、排出孔82は、複数の背圧供給溝49のうち、一部の背圧供給溝49と重なっている。詳しくは、排出孔82は、6つの背圧供給溝49のうち、重力方向Zにおいて最も下側に位置する背圧供給溝49aと重なっている。したがって、排出孔82は、重力方向Zにおいて回転軸12よりも下側で背圧供給溝49と重なっている。また、本実施形態では、排出孔82全体が背圧供給溝49と重なっている。
【0069】
<背圧室>
ハウジング11内には、背圧室S4が形成されている。背圧室S4は、第1背圧空間S41と、第2背圧空間S42と、第3背圧空間S43とを有している。
【0070】
第1背圧空間S41は、軸支ハウジング40と可動スクロール70とによって区画されている。詳しくは、第1背圧空間S41は、軸支ハウジング40の周壁42の内周面と可動スクロール70の収容凹部73の内面とによって区画されている。第1背圧空間S41は、背圧導入通路77によって圧縮室S3と連通している。背圧導入通路77は、圧縮室S3内の冷媒を第1背圧空間S41に導入する。
【0071】
第2背圧空間S42は、軸支ハウジング40とプレート80とによって区画されている。詳しくは、第2背圧空間S42は、軸支ハウジング40の背圧室形成凹部48の内面とプレート80の第1面80aとによって区画されている。第2背圧空間S42は、背圧供給溝49によって第1背圧空間S41と連通している。背圧供給溝49は、第1背圧空間S41内の冷媒を第2背圧空間S42に供給する。
【0072】
軸支ハウジング40の端面40aにおける背圧室形成凹部48よりも内側に位置する部分とプレート80の第1面80aとが当接することによって、第1背圧空間S41内の冷媒が第2背圧空間S42に漏れることが規制されている。また、軸支ハウジング40の端面40aにおける背圧室形成凹部48よりも外側に位置する部分とプレート80の第1面80aとが当接することによって、第2背圧空間S42内の冷媒が連通路Rに漏れることが規制されている。
【0073】
図3及び図4に示すように、可動スクロール70が固定スクロール60に対して公転運動することによって、プレート80に対する可動スクロール70の位置は変化する。プレート80の排出孔82は、図3に示すように吸入圧空間Kと連通する排出状態と、図4に示すように可動スクロール70と対向する非排出状態とを取り得る。排出孔82は、固定スクロール60に対する可動スクロール70の公転運動に伴い、排出状態と非排出状態とで切り替わる。
【0074】
図3に示すように、排出孔82が排出状態であるとき、第2背圧空間S42と吸入圧空間Kとは、排出孔82によって連通している。このため、第2背圧空間S42内の冷媒は、排出孔82から吸入圧空間Kに排出される。一方、図4に示すように、排出孔82が非排出状態であるとき、第2背圧空間S42と吸入圧空間Kは連通していない。このため、第2背圧空間S42内の冷媒は、吸入圧空間Kに排出されない。このように排出孔82は、第2背圧空間S42と吸入圧空間Kとを連通可能である。排出孔82は、第2背圧空間S42内の冷媒を吸入圧空間Kに排出可能である。
【0075】
第3背圧空間S43は、可動スクロール70とプレート80とによって区画されている。詳しくは、第3背圧空間S43は、可動スクロール70の自転規制凹部74の内面とプレート80の第2面80bとによって区画されている。第3背圧空間S43は、固定スクロール60に対する可動スクロール70の公転運動により、可動スクロール70の自転規制凹部74の開口がプレート80によって覆われた際に形成される空間である。
【0076】
第3背圧空間S43は、第1背圧空間S41と連通している。第3背圧空間S43は、プレート80を介して第2背圧空間S42と回転軸12の軸方向に並んでいる。第3背圧空間S43は、吸入圧空間Kの内側に位置している。なお、可動スクロール70の突出部76とプレート80とが当接することによって、自転規制凹部74内の冷媒が吸入圧空間Kに漏れることが規制されている。
【0077】
圧縮室S3において圧縮された冷媒は、背圧導入通路77を通って背圧室S4の第1背圧空間S41に導入される。可動スクロール70の可動基板71の中央部は、第1背圧空間S41内に導入された冷媒の圧力によって固定スクロール60に向けて付勢される。
【0078】
第1背圧空間S41に導入された冷媒の一部は、自転規制凹部74内に流れることによって、第3背圧空間S43に導入される。可動スクロール70の可動基板71の外周側の部位は、第3背圧空間S43内の冷媒の圧力によって固定スクロール60に向けて付勢される。また、プレート80は、第3背圧空間S43内の冷媒の圧力によって、軸支ハウジング40に向けて押圧される。
【0079】
第1背圧空間S41に導入された冷媒の一部は、各背圧供給溝49を通って第2背圧空間S42に供給される。プレート80は、第2背圧空間S42内の冷媒の圧力によって、可動スクロール70に向けて押圧される。第2背圧空間S42に供給された冷媒がプレート80を押圧する方向は、第3背圧空間S43に導入された冷媒がプレート80を押圧する方向と反対方向である。これにより、プレート80が板厚方向に変形することが抑制される。また、可動スクロール70は、第2背圧空間S42内の冷媒の圧力によっても、プレート80を介して固定スクロール60に向けて付勢される。
【0080】
このように背圧室S4は、圧縮室S3において圧縮された冷媒が導入されることにより、可動スクロール70を固定スクロール60に向けて付勢する。可動スクロール70が固定スクロール60に向けて付勢されると、可動渦巻壁72の先端面が固定基板61の第2面61bに押し付けられるため、圧縮室S3の密閉性が確保される。
【0081】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
プレート80は、排出孔82を有している。排出孔82は、プレート80を貫通している。排出孔82は、第2背圧空間S42と吸入圧空間Kとを連通可能である。排出孔82は、複数の背圧供給溝49のうち、重力方向Zにおいて最も下側に位置する背圧供給溝49aと回転軸12の軸方向に重なっている。第1背圧空間S41から排出孔82と重ならない背圧供給溝49に流れた冷媒は、第2背圧空間S42に供給される。第2背圧空間S42に供給された冷媒は、背圧室形成凹部48に沿ってプレート80の周方向に流れた後、排出孔82から吸入圧空間Kに排出される。第1背圧空間S41から排出孔82と重なる背圧供給溝49aに流れた冷媒は、第2背圧空間S42を流れることなく、排出孔82から吸入圧空間Kに排出される。したがって、第1背圧空間S41内の冷媒を吸入圧空間Kに排出しやすい。
【0082】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)プレート80は、排出孔82を有している。排出孔82は、プレート80を貫通している。排出孔82は、第2背圧空間S42と吸入圧空間Kとを連通可能である。排出孔82は、第2背圧空間S42内の冷媒を吸入圧空間Kに排出可能である。このような排出孔82は、第1背圧空間S41と第2背圧空間S42とを連通させる背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっている。このため、第1背圧空間S41から排出孔82と重なる背圧供給溝49に流れた冷媒は、第2背圧空間S42を流れることなく、排出孔82から吸入圧空間Kに排出される。したがって、第1背圧空間S41内の冷媒を吸入圧空間Kに排出しやすい。その結果、背圧室S4内の圧力が過剰に上昇することによる固定スクロール60と可動スクロール70との摺動抵抗、及び可動スクロール70とプレート80との摺動抵抗の増大を抑制できる。
【0083】
(2)例えば、排出孔82が可動スクロール70と対向する非排出状態のみを取る場合、背圧室S4と吸入圧空間Kとは連通しない。このため、背圧室S4内の冷媒は吸入圧空間Kに排出されない。一方、排出孔82が吸入圧空間Kと連通する排出状態のみを取る場合、背圧室S4と吸入圧空間Kとは排出孔82によって常に連通した状態になる。このため、背圧室S4内の冷媒が吸入圧空間Kに過剰に排出されることによって、背圧室S4内の圧力が低下しすぎるおそれがある。背圧室S4内の圧力が低下しすぎると、可動スクロール70を固定スクロール60に付勢する付勢力が不足する。これに対し、本実施形態では、排出孔82は、固定スクロール60に対する可動スクロール70の公転運動に伴い、排出状態と非排出状態とで切り替わる。したがって、背圧室S4内の圧力が低下しすぎることを回避しつつ、背圧室S4内の冷媒を吸入圧空間Kに排出することができる。
【0084】
(3)スクロール型圧縮機10の起動時において、第1背圧空間S41内の冷媒は、重力によって重力方向Zの下側に溜まっている。本実施形態の排出孔82は、重力方向Zにおいて回転軸12よりも下側で回転軸12の軸方向において背圧供給溝49と重なっている。このため、第1背圧空間S41内において重力方向Zの下側に溜まっている冷媒は、排出孔82と重なっている背圧供給溝49に流れやすい。したがって、第1背圧空間S41内の冷媒を吸入圧空間Kにより排出しやすい。
【0085】
(4)軸支ハウジング40には、背圧供給溝49が複数設けられている。複数の背圧供給溝49は、プレート80の周方向において間隔を空けて並んでいる。例えば、排出孔82が全ての背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっている場合、背圧室S4内の冷媒が吸入圧空間Kに過剰に排出されることによって、背圧室S4内の圧力が低下しすぎるおそれがある。これに対し、本実施形態では、排出孔82は、複数の背圧供給溝49のうち、1つの背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっている。したがって、背圧室S4内の冷媒が吸入圧空間Kに過剰に排出されることにより背圧室S4内の圧力が低下しすぎることを回避しやすい。
【0086】
(5)本実施形態の背圧供給溝49は、プレート80の径方向に沿って延びる直線状の溝である。このため、例えば、背圧供給溝49がプレート80の径方向に延びる部分とプレート80の周方向に延びる部分とを有している場合と比較して、第1背圧空間S41から排出孔82までの冷媒の径路が短くなる。したがって、第1背圧空間S41内の冷媒を吸入圧空間Kにより排出しやすい。
【0087】
(6)背圧室S4は、第1背圧空間S41及び第2背圧空間S42に加えて、可動スクロール70とプレート80とによって区画されるとともに第1背圧空間S41と連通する第3背圧空間S43を有している。このため、可動スクロール70の可動基板71の外周側の部位は、第3背圧空間S43内の冷媒の圧力によって固定スクロール60に向けて付勢される。つまり、可動基板71は、中央部が第1背圧空間S41内の冷媒の圧力によって固定スクロール60に向けて付勢されるだけでなく、外周側の部位も固定スクロール60に向けて付勢される。したがって、可動スクロール70を固定スクロール60に向けて安定的に付勢することができる。また、第3背圧空間S43は第1背圧空間S41と連通しているため、第1背圧空間S41の容積は実質的に増大することになる。この場合でも、排出孔82と背圧供給溝49とが重なっていることにより、第1背圧空間S41内及び第3背圧空間S43内の冷媒を吸入圧空間Kに排出しやすい。
【0088】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0089】
○ 上記実施形態では、排出孔82全体が背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっていたが、排出孔82の一部が背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっていてもよい。すなわち、排出孔82の少なくとも一部が背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっていればよい。
【0090】
○ 排出孔82の大きさは適宜変更されてもよい。排出孔82の大きさは、背圧室S4から吸入圧空間Kに排出される冷媒の量と背圧室S4内の圧力とのバランスに基づいて設定される。排出孔82が大きいほど、背圧室S4から吸入圧空間Kに排出される冷媒の量は多くなる。
【0091】
○ 排出孔82が回転軸12の軸方向において背圧供給溝49と重なるのであれば、排出孔82の位置は適宜変更されてもよい。排出孔82の位置を変更すると、排出孔82が排出状態となる時間と非排出状態となる時間の比率が変化する。排出孔82が排出状態となる時間が長いほど、背圧室S4から吸入圧空間Kに排出される冷媒の量は多くなる。排出孔82の位置は、背圧室S4から吸入圧空間Kに排出する冷媒の量と背圧室S4内の圧力とのバランスに基づいて設定される。
【0092】
○ 上記実施形態では、軸支ハウジング40は複数の背圧供給溝49を有していたが、1つの背圧供給溝49を有していてもよい。
○ プレート80は、背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なる排出孔82を複数有していてもよい。つまり、排出孔82と背圧供給溝49とが重なる箇所は複数箇所であってもよい。
【0093】
○ 排出孔82は、複数の背圧供給溝49のうち、重力方向Zにおいて最も下側に位置する背圧供給溝49a以外の背圧供給溝49と回転軸12の軸方向に重なっていてもよい。
【0094】
○ 排出孔82は、重力方向Zにおいて回転軸12よりも上側又は回転軸12と同じ高さで回転軸12の軸方向において背圧供給溝49と重なっていてもよい。
○ 背圧供給溝49は、第1背圧空間S41と第2背圧空間S42とを連通させることによって第1背圧空間S41内の冷媒を第2背圧空間S42に供給できるのであれば、プレート80の径方向に沿って延びる直線状の溝でなくてもよい。背圧供給溝49は、例えば、プレート80の径方向に沿って延びる部分と、プレート80の周方向に延びる部分とを有していてもよい。
【0095】
○ 背圧室S4には、圧縮室S3において圧縮された冷媒の代わりに吐出室S2に吐出された冷媒が導入されてもよい。
○ 可動基板71に対して固定基板61とは反対側に対向配置される対向壁は、ハウジング11の一部でなくてもよい。対向壁は、ハウジング11内に収容される部材であってもよい。
【0096】
○ スクロール型圧縮機10は、回転軸12の軸方向が重力方向Zに対して直交する姿勢で車両に搭載されていなくてもよい。車両へのスクロール型圧縮機10の搭載方向は適宜変更されてもよい。
【0097】
○ スクロール型圧縮機10は、電動モータ13によって駆動されるタイプでなくてもよい。スクロール型圧縮機10は、例えば、車両のエンジンによって駆動されるタイプであってもよい。
【0098】
○ スクロール型圧縮機10は、車両に搭載されていなくてもよい。スクロール型圧縮機10は、車両空調装置に用いられなくてもよい。スクロール型圧縮機10は、例えば、燃料電池車に搭載されていてもよい。スクロール型圧縮機10は、燃料電池に供給される流体としての空気を圧縮部14により圧縮するものであってもよい。
【0099】
[付記]
上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
[1]流体が吸入される吸入室を有するハウジングと、前記ハウジングに対して回転可能に支持される回転軸と、固定基板、前記固定基板から立設された固定渦巻壁、及び前記固定基板から立設されるとともに前記固定渦巻壁を取り囲む筒状の固定外周壁を有し、前記ハウジングに固定される固定スクロールと、前記固定基板と対向する可動基板、及び前記可動基板から前記固定基板に向けて立設されるとともに前記固定渦巻壁と噛み合う可動渦巻壁を有し、前記固定外周壁の内側に配置され、前記回転軸の回転に伴い前記固定スクロールに対して公転運動する可動スクロールと、前記可動基板に対して前記固定基板とは反対側に対向配置される対向壁と、前記可動基板と前記対向壁との間に介在される環状のプレートと、前記固定外周壁と前記可動スクロールと前記プレートとによって区画され、前記吸入室から前記流体が流入する吸入圧空間と、前記対向壁における前記プレートと対向する対向面から凹む環状の背圧室形成凹部と、前記可動スクロールと前記対向壁とによって区画される第1背圧空間、及び前記プレートと前記背圧室形成凹部とによって区画される第2背圧空間を有し、前記可動スクロールを前記固定スクロールに向けて付勢する背圧室と、前記対向面から凹むとともに前記第1背圧空間と前記第2背圧空間とを連通させ、前記第1背圧空間内の前記流体を前記第2背圧空間に供給する背圧供給溝と、前記プレートを貫通するとともに前記第2背圧空間と前記吸入圧空間とを連通可能であり、前記第2背圧空間内の前記流体を前記吸入圧空間に排出可能な排出孔と、を備えたスクロール型圧縮機であって、前記排出孔の少なくとも一部は、前記回転軸の軸方向において前記背圧供給溝と重なっていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【0100】
[2]前記排出孔は、前記固定スクロールに対する前記可動スクロールの公転運動に伴い、前記吸入圧空間と連通する排出状態と前記可動スクロールと対向する非排出状態とで切り替わる[1]に記載のスクロール型圧縮機。
【0101】
[3]前記排出孔は、重力方向において前記回転軸よりも下側で前記回転軸の軸方向において前記背圧供給溝と重なっている[1]又は[2]に記載のスクロール型圧縮機。
[4]前記対向壁には、前記背圧供給溝が複数設けられ、複数の前記背圧供給溝は、前記プレートの周方向において間隔を空けて並んでおり、前記排出孔は、複数の前記背圧供給溝のうち、一部の前記背圧供給溝と前記回転軸の軸方向に重なっている[1]~[3]の何れか1つに記載のスクロール型圧縮機。
【0102】
[5]前記背圧供給溝は、前記プレートの径方向に沿って延びる直線状の溝である[1]~[4]の何れか1つに記載のスクロール型圧縮機。
[6]前記背圧室は、前記可動スクロールと前記プレートとによって区画されるとともに前記第1背圧空間と連通する第3背圧空間を有している[1]~[5]の何れか1つに記載のスクロール型圧縮機。
【符号の説明】
【0103】
10…スクロール型圧縮機、11…ハウジング、12…回転軸、40…対向壁としての軸支ハウジング、40a…対向面としての端面、48…背圧室形成凹部、49…背圧供給溝、60…固定スクロール、61…固定基板、62…固定渦巻壁、63…固定外周壁、70…可動スクロール、71…可動基板、72…可動渦巻壁、80…プレート、82…排出孔、K…吸入圧空間、S1…吸入室としてのモータ室、S4…背圧室、S41…第1背圧空間、S42…第2背圧空間、S43…第3背圧空間、Z…重力方向。
図1
図2
図3
図4