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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124082
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】光学ユニットおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20240905BHJP
   C09J 5/02 20060101ALI20240905BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240905BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240905BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240905BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240905BHJP
   B29C 65/48 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240905BHJP
   B32B 37/12 20060101ALI20240905BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G02B3/00 Z
C09J5/02
C09J201/00
C09J7/30
C09J11/08
C09J11/04
B29C65/48
B32B7/023
B32B37/12
B32B27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032009
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓起
(72)【発明者】
【氏名】本間 大海
(72)【発明者】
【氏名】岩浜 隆裕
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK53
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA23B
4F100CB04
4F100CB04B
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100EJ54
4F100EJ64
4F100EJ64A
4F100JB12A
4F100JN18
4F100JN18A
4F211AA39
4F211AG03
4F211AH74
4F211AR07
4F211AR11
4F211AR12
4F211TA03
4F211TC08
4F211TD11
4F211TH24
4F211TN45
4J004AA13
4J004AB05
4J004FA08
4J040EC001
4J040HD30
4J040HD36
4J040JB08
4J040KA03
4J040KA42
4J040LA06
4J040MA10
4J040NA18
4J040PA00
4J040PA02
(57)【要約】
【課題】より簡易な方法で第1基板と第2基板とを各レンズ部の全周に亘って接着することができるようにする。
【解決手段】複数のレンズ部11を有する、硬化性樹脂で構成されたレンズウェハーである第1基板1に第2基板2を接着して積層体を作製した後に、前記積層体をレンズ部11の間で切断することで複数の光学ユニットを製造する。第1基板1に第2基板2を接着する前に、第1基板1の第2基板2との対向面1aに、表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行う。表面処理の後に、第1基板1の対向面1aに、前記複数の光学ユニットのそれぞれの輪郭内で対応するレンズ部11が取り囲まれるように接着剤を塗布する。接着剤の塗布後、第1基板1に第2基板2を重ね合わせて前記接着剤を硬化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズ部を有する、硬化性樹脂で構成されたレンズウェハーである第1基板に第2基板を接着して積層体を作製した後に、前記積層体を前記複数のレンズ部の間で切断することで複数の光学ユニットを製造する方法であって、
前記第1基板に前記第2基板を接着する前に、前記第1基板の前記第2基板との対向面に、表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行い、
前記表面処理の後に、前記第1基板の前記対向面に、前記複数の光学ユニットのそれぞれの輪郭内で対応するレンズ部が取り囲まれるように接着剤を塗布し、
前記接着剤の塗布後に前記第1基板に前記第2基板を重ね合わせて前記接着剤を硬化させる、光学ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記第1基板の前記対向面に表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行う際、前記第1基板の前記対向面の表面自由エネルギーを26~73mJ/m2とする、請求項1に記載の光学ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記接着剤中には、単分散真球フィラーが分散している、請求項1または2に記載の光学ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記第1基板の前記対向面における前記第2基板と接着される部分はフラットであり、
前記第2基板の前記第1基板との対向面における前記第1基板と接着される部分はフラットである、請求項1または2に記載の光学ユニットの製造方法。
【請求項5】
レンズ部を有する、硬化性樹脂で構成された第1素子と、
前記第1素子と重なり合う第2素子と、
前記レンズ部を取り囲むように前記第1素子と前記第2素子との間に介在する、単分散真球フィラーを含む接着層と、
を備える、光学ユニット。
【請求項6】
前記第1素子の前記第2素子との対向面および前記第2素子の前記第1素子との対向面には、前記接着層を収容する溝が形成されていない、請求項5に記載の光学ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学ユニットの製造方法およびその製造方法の一態様により得られる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の光学ユニットを同時に製造するために、複数のレンズ部を有するレンズウェハーを用いた光学ユニットの製造方法が知られている。具体的に、この製造方法では、まず複数のレンズ部を有するレンズウェハーである第1基板に、同様のレンズウェハーまたは遮光板などである第2基板を接着して積層体を作製する。その後、その積層体をレンズ部の間で切断することで、複数の光学ユニットが製造される。
【0003】
第1基板と第2基板の接着には接着剤が用いられる。例えば、特許文献1には、第1基板および第2基板として、レンズ部がマトリクス状に並ぶレンズウェハー(特許文献1では「ウェハスケールレンズ」と称呼)を用いた光学ユニットの製造方法が開示されている。第1基板の第2基板との対向面には、隣り合うレンズ部の間を通って当該対向面を横切るように格子状に溝が設けられており、第2基板の第1基板との対向面には、隣り合うレンズ部の間を通って当該対向面を横切るように格子状に溝が設けられている。
【0004】
特許文献1に開示された光学ユニットの製造方法では、まず第1基板の対向面と第2基板の対向面とを面接触させて重合体を形成する。このとき、第1基板の溝と第2基板の溝とが合致することで、第1基板と第2基板の重合体の端面に両端が開口する注入空間が形成される。その後、その注入空間に接着剤を充填して硬化させることで、第1基板と第2基板とが接着された積層体が作製される。
【0005】
なお、第1基板の対向面に設けられる溝の幅および第2基板の対向面に設けられる溝の幅は、積層体の切断に使用されるダイシング刃の幅よりも大きい。このため、積層体を切断した後は、切断面である外周面の全周に亘って接着層が存在する光学ユニットが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5254139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の光学ユニットの製造方法によれば、第1基板と第2基板とが各レンズ部の全周に亘って接着される。このため、積層体を切断する際には、第1基板と第2基板の間のレンズ部に沿う隙間に、切削粉や切断に用いられる水が浸入することを防ぐことができる。
【0008】
しかしながら、特許文献1の光学ユニットの製造方法では、第1基板の溝と第2基板の溝とで形成される、第1基板と第2基板の重合体の端面に両端が開口する注入空間に接着剤を充填するので、その注入空間に全長に亘って接着剤を隙間なく充填することが困難である。
【0009】
そこで、本開示は、より簡易な方法で第1基板と第2基板とを各レンズ部の全周に亘って接着することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、複数のレンズ部を有する、硬化性樹脂で構成されたレンズウェハーである第1基板に第2基板を接着して積層体を作製した後に、前記積層体を前記複数のレンズ部の間で切断することで複数の光学ユニットを製造する方法であって、前記第1基板に前記第2基板を接着する前に、前記第1基板の前記第2基板との対向面に、表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行い、前記表面処理の後に、前記第1基板の前記対向面に、前記複数の光学ユニットのそれぞれの輪郭内で対応するレンズ部が取り囲まれるように接着剤を塗布し、前記接着剤の塗布後に前記第1基板に前記第2基板を重ね合わせて前記接着剤を硬化させる、光学ユニットの製造方法を提供する。
【0011】
また、本開示は、レンズ部を有する、硬化性樹脂で構成された第1素子と、前記第1素子と重なり合う第2素子と、前記レンズ部を取り囲むように前記第1素子と前記第2素子との間に介在する、単分散真球フィラーを含む接着層と、を備える、光学ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、より簡易な方法で第1基板と第2基板とを各レンズ部の全周に亘って接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る光学ユニットの製造方法で用いられる第1基板および第2基板の斜視図である。
図2】前記第1基板と前記第2基板とが接着された積層体の斜視図である。
図3】(a)は光学ユニットの断面図、(b)はその要部拡大図である。
図4】第1基板の対向面への接着剤の塗布方法を説明するための図である。
図5】第1変形例の接着剤の塗布方法を説明するための図である。
図6】第2変形例の接着剤の塗布方法を説明するための図である。
図7】第3変形例の接着剤の塗布方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で説明する各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0015】
図1に、一実施形態に係る光学ユニットの製造方法で用いられる第1基板1および第2基板2を示す。本実施形態では、第1基板1および第2基板2が円形状であるが、第1基板1および第2基板2の形状は正方形状などのその他の形状であってもよい。
【0016】
第1基板1は、複数のレンズ部11を有するレンズウェハーである。レンズ部11はマトリクス状に並んでいる。本実施形態では、第2基板2も、複数のレンズ部21を有するレンズウェハーである。レンズ部21はレンズ部11と同じピッチでマトリクス状に並んでいる。ただし、第2基板2は、第1基板1のレンズ部11に対応する位置に開口を有する遮光板であってもよいし、第1基板1であるレンズウェハーとその他のレンズウェハーとの間に介在するスペーサであってもよい。
【0017】
光学ユニットの製造方法では、まず図2に示すように第1基板1に第2基板2を接着して積層体3を作製する。本実施形態では、第1基板1の第2基板2との対向面1a(図1参照)における第2基板2と接着される部分、および第2基板2の第1基板1との対向面2a(図1参照)における第1基板1と接着される部分がフラットである。その後、積層体3をレンズ部11,21の間で切断することで、複数の光学ユニット4(図3(a)参照)が製造される。
【0018】
第1基板1および第2基板2であるレンズウェハーは、硬化性樹脂で構成されている。第1基板1と第2基板2とでは、同じ硬化性樹脂が用いられてもよいし、異なる硬化性樹脂が用いられてもよい。
【0019】
硬化性樹脂は、加熱により、又は紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射により硬化する樹脂である。硬化性樹脂は特に限定されないが、硬化性樹脂としてはエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0020】
例えば、硬化性樹脂は、脂環エポキシ化合物、シロキサン化合物、カチオン重合性化合物のいずれかを含んでもよい。脂環エポキシ化合物は、少なくとも1つのエポキシ基で置換された脂環を有する化合物である。シロキサン化合物は、分子内に2以上のエポキシ基を有し、さらにシロキサン結合(Si-O-Si)により構成されたシロキサン骨格を少なくとも有する化合物である。カチオン重合性化合物は、少なくとも1つのカチオン硬化性官能基を有する化合物である。
【0021】
積層体3を作製する際は、第1基板1に第2基板2を接着する前に、第1基板1の対向面1aに、表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行う。これにより、第1基板1の対向面1aの濡れ性が改善される。第1基板1の対向面1aの表面自由エネルギーを上昇させる表面処理としては、エキシマ処理、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線オゾン処理などを用いることができる。
【0022】
例えば、エキシマ処理では、第1基板1を処理室内に配置して、第1基板の対向面1aをエキシマランプを用いて酸化させる。処理室内の酸素濃度は、例えば5~18%である。
【0023】
第1基板1の対向面1aの表面処理では、第1基板1の対向面1aの表面自由エネルギーを、26~73mJ/m2とすることが好ましい。表面自由エネルギーが26mJ/m2を下回ると接着剤5が第1基板1の対向面1aから弾かれて塗布状態を維持できなくなり、表面自由エネルギーが73mJ/m2を上回ると接着剤5が第1基板1の対向面1a上で濡れ広がって塗布状態を維持できなくなるからである。
【0024】
なお、表面自由エネルギーは、OWRK(Owens Wendt Rable Kaelble)法によって算出される。OWRK法で使用する接触角の測定方法は、JIS K 6769に規定されている。例えば、表面自由エネルギーが26~73mJ/m2である対向面1aの水に対する接触角は26度以上87度以下である。第1基板1の対向面1aの表面自由エネルギーは、より好ましくは30~69mJ/m2であり、さらに好ましくは34~65mJ/m2である。
【0025】
第1基板1の対向面1aの表面処理後、図4に示すように、第1基板1の対向面1aに、複数の光学ユニット4のそれぞれの輪郭40内で対応するレンズ部11が取り囲まれるように接着剤5を塗布する。
【0026】
本実施形態では、隣り合うレンズ部11の間での切断を一度だけ行うため、隣り合う光学ユニット4の輪郭40同士の間の距離は、積層体3の切断に使用されるダイシング刃の幅と同じである。ただし、隣り合う光学ユニット4の輪郭40同士の間の距離がダイシング刃の幅よりも大きくされ、隣り合うレンズ部11の間での切断が複数回行われてもよい。
【0027】
図4では、各光学ユニット4の輪郭40内で、輪郭40の四辺に沿ってレンズ部11の回りを一周するように接着剤5が塗布される。このため、接着剤5が各レンズ部11の回りに全周に亘って塗布される。ただし、図5に示すように、接着剤5の最終塗布部が接着剤5の初期塗布部から離間するように接着剤5が塗布されてもよい。すなわち、各レンズ部11の回りにほぼ全周に亘って接着剤5が塗布される限り、各レンズ部11の周囲に部分的に接着剤5が塗布されない領域が残されてもよい。
【0028】
あるいは、図6に示すように、まずマトリクス状に並ぶレンズ部11の行と平行に接着剤5を塗布して、隣り合う光学ユニット4の輪郭40同士の間の距離よりも幅の広い帯状部51を形成し、その後に、帯状部51の間に、マトリクス状に並ぶレンズ部11の列と平行に接着剤5を塗布して、隣り合う光学ユニット4の輪郭40同士の間の距離よりも幅の広い短冊部52を形成してもよい。図5では、短冊部52が帯状部51から離間しているが、短冊部52は帯状部51とつながっていてもよい。
【0029】
さらには、図7に示すように、縦横2つずつの4つのレンズ部11のうちの対角に位置する2つのレンズ部11を連続して取り囲むように接着剤5を塗布して、斜め八字部53を形成してもよい。この場合、接着剤5の塗布は、行および列のそれぞれでレンズ部11の2ピッチおきに行われる。
【0030】
本実施形態では、接着剤5中に単分散真球フィラー6(図3(b)参照)が分散している。この単分散真球フィラー6は、第1基板1の対向面1aにおける第2基板2と接着される部分と第2基板2の対向面2aにおける第1基板1と接着される部分との間に一定のクリアランスを確保するためのものである。例えば、接着剤5は、主成分としてエポキシ化合物を含むと共に、その他の成分としてオキセタン化合物、光酸発生剤(光開始剤)、シランカップリング剤などを含む。また、単分散真球フィラー6は、例えば、ジビニルベンゼン重合体やシリカで構成されている。
【0031】
ここで、粒子径や形状等の粒子特性が均質な微粒子群を単分散微粒子と呼び、「単分散真球フィラー」とは、粒径分布の標準偏差と50%平均径の比で定義される変動係数CV(Coefficient of Variation)値が10%以下の粒子群を指す。なお、粒子の単分散性を示すCV値は、CV[%]=(σ/D)×100で定義される(σ:標準偏差、D:平均粒径)。
【0032】
例えば、フィラー中の粒子径は1~100μmである。フィラー中の粒子径は5~50μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。
【0033】
また、接着剤5中のフィラーの分散状態としては、例えば、1mm2の接着剤5に対してフィラー中の粒子が1~1000個である。1mm2の接着剤5に対するフィラー中の粒子の個数は、10~200個であることが好ましく、15~100個であることがより好ましい。
【0034】
第1基板1の対向面1aへの接着剤の塗布後、第1基板1に第2基板2を重ね合わせて接着剤5を硬化させる。その後、上述したように積層体3をレンズ部11,21の間で切断することで、複数の光学ユニット4が製造される。
【0035】
図3(a)に示すように、各光学ユニット4は、レンズ部11を有する第1素子10と、第1素子10と重なり合う、レンズ部21を有する第2素子20と、レンズ部11を取り囲むように第1素子10と第2素子20との間に介在する接着層50を含む。
【0036】
第1素子10は第1基板1の一部であるため、第1基板1と同じ硬化性樹脂で構成されている。同様に、第2素子20は第2基板2の一部であるため、第2基板2と同じ硬化性樹脂で構成されている。接着層50は、硬化した接着剤5の一部である。
【0037】
本実施形態では、上述したように第1基板1の対向面1aにおける第2基板2と接着される部分、および第2基板2の対向面2aにおける第1基板1と接着される部分がフラットであるので、第1素子10の第2素子20との対向面10aおよび第2素子20の第1素子10との対向面20aには、接着層50を収容する溝が形成されていない。
【0038】
また、本実施形態では、上述したように光学ユニット4の製造時に用いられる接着剤5中に単分散真球フィラー6が分散しているので、図3(b)に示すように、接着層50が単分散真球フィラー6を含む。つまり、単分散真球フィラー6によって接着層50の厚さが均一に確保されている。
【0039】
以上説明した本実施形態の製造方法では、次の効果が得られる。第1基板1の対向面1aに表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行わない場合には、第1基板1の対向面1aに、各光学ユニット4の輪郭40内でレンズ部11が取り囲まれるように接着剤5を塗布しても、その状態が維持されずに、接着剤5が特定の箇所に集束する現象が発生する。これに対し、本実施形態のように第1基板1の対向面1aに表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行えば、各光学ユニット4の輪郭40内でレンズ部11が取り囲まれるように接着剤5を塗布した後もその状態が維持される。すなわち、第1基板1の対向面1aに接着剤5を塗布するという簡易な方法で、第1基板1と第2基板2とを各レンズ部11の全周に亘って接着することができる。このため、積層体3を切断する際には、第1基板1と第2基板2の間のレンズ部11に沿う隙間に、切削粉や切断に用いられる水が浸入することを防ぐことができる。
【0040】
ところで、特許文献1のように第1基板および第2基板の対向面同士が面接触する場合には、接着剤が、表面張力で対向面同士の間を通ってレンズ部まで侵入するおそれがある。特に、第1基板の溝と第2基板の溝とで形成される注入空間への接着剤の充填を容易とするために低粘度の接着剤を用いた場合には、その傾向が高くなる。これに対し、本実施形態のように第1基板1の対向面1aにおける第2基板2と接着される部分と第2基板2の対向面2aにおける第1基板1と接着される部分との間にクリアランスが設けられていれば、そのような不具合を防止することができる。
【0041】
(変形例)
前記実施形態では、接着剤5中に単分散真球フィラー6が分散していたが、単分散真球フィラー6を含まない接着剤5を用いることも可能である。この場合、接着剤5の硬化後の接着層50の厚さ(第1基板1の対向面1aにおける第2基板2と接着される部分と第2基板2の対向面2aにおける第1基板1と接着される部分との間のクリアランス)を一定とするために、第1基板1と第2基板2の一方に、他方に当接する当接部を設けることが好ましい。
【0042】
これに対し、前記実施形態のように単分散真球フィラーが分散する接着剤5を用いれば、接着剤5のみで、接着層50の厚さを一定に保つことができる。
【0043】
また、第1基板1の対向面1aにおける第2基板2と接着される部分、および第2基板2の対向面2aにおける第1基板1と接着される部分は、必ずしもフラットである必要はない。例えば、第1基板1の対向面1aにおける第2基板2と接着される部分、および第2基板2の対向面2aにおける第1基板1と接着される部分には、接着剤5によって満たされる溝が形成されてもよい。この場合、製造後の光学ユニット4では、第1素子10の対向面10aおよび第2素子20の対向面20aに接着層50を収容する溝が形成される。
【0044】
これに対し、前記実施形態のように、第1基板1の対向面1aにおける第2基板2と接着される部分、および第2基板2の対向面2aにおける第1基板1と接着される部分がフラットであれば、第1基板1および第2基板2の強度を確保することができる。また、製造後の光学ユニット4においては、第1素子10および第2素子20の強度を確保することができる。
【実施例0045】
以下、本開示を実施例により説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
比較例1および実施例1~8の基板の表面上に接着剤を線状に塗布し、時間経過しても接着剤が線状に保たれるかを確認した。接着剤としては、エポキシ樹脂を主成分としたレジナス化成社製のUV硬化性接着剤UVA-6790 K10を用いた。
【0047】
比較例1では、基板としてダイセル社製のCELVENUS OTM107を用い、表面処理は行わなかった。実施例1~3,6~8では、基板として同じCELVENUS OTM107を用い、表面に表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行った。実施例4,5では、基板としてダイセル社製のCELVENUS OTL101を用い、表面に表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行った。なお、CELVENUS OTM107は、エポキシ系樹脂で構成されるとともに、脂環エポキシ化合物、シロキサン化合物およびカチオン重合性化合物を含み、CELVENUS OTL101は、エポキシ系樹脂で構成されるとともに、脂環エポキシ化合物およびカチオン重合性化合物を含む。
【0048】
実施例1~5では、光照射装置(ウシオ社製SUS956)を用い、表面処理として基板の表面にエキシマ光を照射するエキシマ処理を行った。条件としては、酸素濃度15%、ステージ温度40度、光源高さ3mmとし、実施例1~3,6~8で照射時間を異ならせた。具体的に、実施例1では5秒、実施例2では30秒、実施例3では300秒、実施例4では3秒、実施例5では10秒とした。
【0049】
実施例6~8では、スイッチバック自動走式コロナ処理装置(ウェッジ社製、CTW-0212)を用い、表面処理としてコロナ放電を行った。条件としては、高周波電源の印加電力0.2kW、高さ設定1mmとし、実施例6~8で回数を異ならせた。具体的に、実施例6では1回、実施例7では4回、実施例8では8回とした。
【0050】
また、接触角測定器(共和界面科学社製、DropMaster DM701)を用いた液適法により、比較例1および実施例1~8の基板の表面(実施例1~8では表面処理後の表面)に対する純水またはジヨードメタンの接触角を測定した。滴下量は2μL、待機時間は1000msとし、5点測定の平均値を算出した。
【0051】
比較例1および実施例1~8の基板種類および表面処理条件、ならびに接触角測定結果および時間経過による接着剤塗布状態の観察結果を表1に示す。なお、表1中の〇は接着剤が線状に保たれていることを示し、×は接着剤が線状に保たれないか、塗布後の接着剤の高さが変化していることを示す。
【表1】
【0052】
表1から、基板の表面に表示面自由エネルギーを上昇させる処理を行えば、接着剤が10分以上は線状に保たれることが分かる。特に、表面自由エネルギーを30~73mJ/m2とした実施例2,4~8では60分経過しても接着剤が良好な状態で線状に保たれていた。
【0053】
(まとめ)
第1の態様として、本開示は、複数のレンズ部を有する、硬化性樹脂で構成されたレンズウェハーである第1基板に第2基板を接着して積層体を作製した後に、前記積層体を前記複数のレンズ部の間で切断することで複数の光学ユニットを製造する方法であって、前記第1基板に前記第2基板を接着する前に、前記第1基板の前記第2基板との対向面に、表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行い、前記表面処理の後に、前記第1基板の前記対向面に、前記複数の光学ユニットのそれぞれの輪郭内で対応するレンズ部が取り囲まれるように接着剤を塗布し、前記接着剤の塗布後に前記第1基板に前記第2基板を重ね合わせて前記接着剤を硬化させる、光学ユニットの製造方法を提供する。
【0054】
第1基板の対向面に表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行わない場合には、第1基板の対向面に、各光学ユニットの輪郭内でレンズ部が取り囲まれるように接着剤を塗布しても、その状態が維持されずに、接着剤が特定の箇所に集束する現象が発生する。これに対し、上記の構成のように第1基板の対向面に表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行えば、各光学ユニットの輪郭内でレンズ部が取り囲まれるように接着剤を塗布した後もその状態が維持される。すなわち、第1基板の対向面に接着剤を塗布するという簡易な方法で、第1基板と第2基板とを各レンズ部の全周に亘って接着することができる。
【0055】
第2の態様として、第1の態様において、例えば、前記第1基板の前記対向面に表面自由エネルギーを上昇させる表面処理を行う際、前記第1基板の前記対向面の表面自由エネルギーを26~73mJ/m2としてもよい。
【0056】
第3の態様として、第1または第2の態様において、前記接着剤中には、単分散真球フィラーが分散してもよい。この構成によれば、接着剤のみで、接着剤の硬化後の接着層の厚さを一定に保つことができる。
【0057】
第4の態様として、第1~第3の態様の何れかにおいて、前記第1基板の前記対向面における前記第2基板と接着される部分はフラットであり、前記第2基板の前記第1基板との対向面における前記第1基板と接着される部分はフラットであってもよい。この構成によれば、第1基板および第2基板の強度を確保することができる。
【0058】
また、本開示は、レンズ部を有する、硬化性樹脂で構成された第1素子と、前記第1素子と重なり合う第2素子と、前記レンズ部を取り囲むように前記第1素子と前記第2素子との間に介在する、単分散真球フィラーを含む接着層と、を備える、光学ユニットを提供する。この構成によれば、単分散真球フィラーによって接着層の厚さが均一に確保される。
【0059】
第6の態様として、第5の態様において、例えば、前記第1素子の前記第2素子との対向面および前記第2素子の前記第1素子との対向面には、前記接着層を収容する溝が形成されていなくてもよい。この構成によれば、第1素子および第2素子の強度を確保することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 第1基板
1a 対向面
10 第1素子
10a 対向面
11 レンズ部
2 第2基板
2a 対向面
20 第2素子
20a 対向面
21 レンズ部
3 積層体
4 光学ユニット
40 輪郭
5 接着剤
50 接着層
6 単分散真球フィラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7