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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124099
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
H02K1/28 Z
H02K1/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032037
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 雅之
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601EE19
5H601GA02
5H601GA24
5H601GC12
5H601JJ05
5H601KK15
(57)【要約】
【課題】焼き嵌めによりロータコアをシャフトに固定する場合に、サイドプレートとの間に生じ得る隙間を焼き嵌めの冷却時に自動的に詰めることが可能な回転電機を提供する。
【解決手段】回転電機10は、シャフト14と、シャフト14が貫通可能な第1の開口部16sを備える電磁鋼板16aを積層して形成され、シャフト14の外周面14aに加熱することで固定可能なロータコア16と、シャフト14が貫通可能な第2の開口部18sとシャフト14の軸方向におけるロータコア16の端面16aaと接触して固定位置を定める位置決め面18aとを備える、熱膨張または熱収縮するサイドプレート18と、ロータコア16の径方向外側に配置されるステータ12と、を備え、各電磁鋼板16aの第1の開口部16sを形成する周縁領域は、シャフト14の外周面14aに近づくほどサイドプレート18の位置決め面18aから離間する傾斜部22を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸となるシャフトと、
前記シャフトが貫通可能な第1の開口部を備える円盤状の電磁鋼板を複数枚積層して形成され、前記シャフトの外周面に加熱することで固定可能なロータコアと、
前記シャフトが貫通可能な第2の開口部と、前記シャフトの軸方向における前記ロータコアの端面と接触して固定位置を定める位置決め面とを備える、円盤状で熱膨張または熱収縮するサイドプレートと、
前記ロータコアの径方向外側に配置されるステータと、
を備え、
前記ロータコアを構成するそれぞれの前記電磁鋼板の前記第1の開口部を形成する周縁領域は、前記シャフトの前記外周面に近づくほど前記サイドプレートの前記位置決め面から離間する傾斜部を備える、回転電機。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記電磁鋼板の前記周縁領域を前記離間する方向に屈曲させて形成されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記傾斜部は、前記電磁鋼板の前記周縁領域のうち前記外周面に対向する端面に形成されている、請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品の多くに回転電機が利用されている。例えば、自動車において、駆動源や発電機となり得る回転電機が利用されている。回転電機は、シャフト、ロータコア、ステータ等を主要部品として構成されている。例えば、インナーロータタイプの回転電機は、シャフトにロータコアが固定され、ロータコアの半径方向外側に僅かな隙間を空けてステータが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-137790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャフトに対するロータコアの固定構造は種々あるが、例えば、焼き嵌めを用いて固定する構造がある。焼き嵌めは、例えば、電磁鋼板を積層して構成したロータコアを加熱することで膨張させ、シャフトの直径より小さな開口部を拡径させてシャフトを挿入する。開口部が拡径した状態でロータコアを冷やすことにより、ロータコア(開口部)が収縮して、締め代が形成され、ロータコアをシフトに強固に固定することができる。
【0005】
ところで、ロータコアをシャフトに固定する場合、シャフトにおけるロータコアの軸方向の位置決め、軸バランス修正、磁束漏れ等を防ぐ目的のためにサイドプレートを用いる場合がある。サイドプレートは、安価で加工が容易な金属(例えば鉄、アルミニウム等)を用いる場合がある。この場合、焼き嵌めのために加熱したロータコアの熱がサイドプレートにも伝わり、サイドプレートも膨張する。その後、冷却されると、ロータコアとサイドプレートとでそれぞれ熱収縮が発生し、ロータコアとサイドプレートとの間に隙間が生じて、サイドプレートのガタつきや異音の発生の原因になる虞があった。
【0006】
本発明の目的は、焼き嵌めによりロータコアをシャフトに固定する場合に、サイドプレートとの間に生じ得る隙間を、焼き嵌めの冷却時に自動的に詰めることが可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る回転電機は、回転軸となるシャフトと、前記シャフトが貫通可能な第1の開口部を備える円盤状の電磁鋼板を複数枚積層して形成され、前記シャフトの外周面に加熱することで固定可能なロータコアと、前記シャフトが貫通可能な第2の開口部と、前記シャフトの軸方向における前記ロータコアの端面と接触して固定位置を定める位置決め面とを備える、円盤状で熱膨張または熱収縮するサイドプレートと、前記ロータコアの径方向外側に配置されるステータと、を備え、前記ロータコアを構成するそれぞれの前記電磁鋼板の前記第1の開口部を形成する周縁領域は、前記シャフトの前記外周面に近づくほど前記サイドプレートの前記位置決め面から離間する傾斜部を備える。
【0008】
この構成によれば、例えば、焼き嵌めのために加熱されたロータコアが冷却される場合、各電磁鋼板の径方向の収縮力が傾斜部に作用し、各電磁鋼板の姿勢をサイドプレート側に倒していく。その結果、サイドプレートとロータコアの熱収縮によって当該サイドプレートとロータコアとの間に生じた隙間を各電磁鋼板の姿勢変化により詰めることが可能になる。
【0009】
また、本発明に係る回転電機の前記傾斜部は、例えば、前記電磁鋼板の前記周縁領域を前記離間する方向に屈曲させて形成されてもよい。
【0010】
この構成によれば、例えば、傾斜部を容易に形成することができるとともに、屈曲角度や第1の開口部を形成する周縁領域(端部)からの距離に応じて、姿勢変化量の調節を容易に行う、隙間の詰めを効果的かつ確実に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係る回転電機の前記傾斜部は、例えば、前記電磁鋼板の前記周縁領域のうち前記外周面に対向する端面に形成されてもよい。
【0012】
この構成によれば、例えば、傾斜部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、焼き嵌めによりロータコアをシャフトに固定する場合に、サイドプレートとの間に生じ得る隙間を、焼き嵌めの冷却時に自動的に詰めることが可能な回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態に係る回転電機の全体を示す例示的かつ模式的な断面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る回転電機の傾斜部の詳細を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る回転電機において隙間を詰める姿勢変形の状態を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。
図4図4は、実施形態に係る回転電機において隙間が詰まる様子を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る回転電機の傾斜部の詳細を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る回転電機において隙間を詰める姿勢変形の状態を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
第1実施形態.
図1を用いて、本発明の実施形態の回転電機10の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る回転電機10の全体を示す例示的かつ模式的な断面図である。
【0017】
回転電機10は、ステータ12と、シャフト14と、ロータコア16と、サイドプレート18と、押圧プレート20等を主構成部品として構成されている。
【0018】
ステータ12は、ロータコア16の径方向外側に配置される。ステータ12は、例えば、リング状の薄い電磁鋼板を複数枚積層して構成される。ステータ12は、図示を省略しているが、内周側に複数のスロットを有している。スロットには、コイル(不図示)が複数巻回されている。ステータ12の各コイルに流す電流の方向を順次切り替えることにより回転磁界を発生させることができる。
【0019】
シャフト14は、回転電機10の回転軸であり、例えば剛性の高い鉄、ステンレス材等で構成されている。回転電機10を電動機(モータ)として機能させる場合、シャフト14は出力軸となり、回転電機10を発電機として機能させる場合は、シャフト14は入力軸として機能する。シャフト14の外周面14aの一部には、サイドプレート18の装着位置を規定する、径方向外側に突出する例えばフランジ14tが形成されている。
【0020】
ロータコア16は、シャフト14が貫通可能な第1の開口部16sを備える円盤状の電磁鋼板16aを複数枚積層して形成される。ロータコア16の外周領域には、周方向に沿って複数の永久磁石(不図示)が埋め込み可能である。回転電機10が電動機として機能する場合、ステータ12で発生した回転磁界に対して永久磁石が吸引と反発を繰り返すことによりロータコア16に回転力が発生する。すなわち、シャフト14を回転させる。回転電機10が発電機として機能する場合、シャフト14(ロータコア16)が、外力により回転させられることにより永久磁石がステータ12に巻回されたコイルの磁界を横切り、コイルに電流が流れて発電することできる。
【0021】
このように、ロータコア16はシャフト14に対して強固に固定する必要がある。そのため、本実施形態のロータコア16は、焼き嵌めによってシャフト14に固定する。この場合、円盤状の電磁鋼板16aの内径側に形成される第1の開口部16sの直径はシャフト14の外径より締め代分だけ小さく形成されている。ロータコア16は、接着や溶接等の固定手段を用いて積層された複数の電磁鋼板16aが一体化されている。ロータコア16は、所定の温度、例えば、150℃~250℃程度に加熱することにより、膨張する。すなわち、第1の開口部16sが拡径し、第1の開口部16sにシャフト14が挿入可能となる。その後、ロータコア16は、冷却されることにより熱収縮して、第1の開口部16sが元の直径に戻ることにより、締め代が復元され、シャフト14に対するロータコア16の焼き嵌めによる固定が実現される。
【0022】
サイドプレート18は、シャフト14が貫通可能な第2の開口部18sと、シャフト14の軸方向におけるロータコア16の端面16aaと接触して固定位置を定める位置決め面18aとを備える円盤状の部材である。サイドプレート18は、ロータコア16の焼き嵌め時の位置決めを行うための部材であり、シャフト14に対して遊嵌状態で装着される。したがって、円盤状のサイドプレート18の内径側に形成される第2の開口部18sの直径はシャフト14の外径より僅かに大きく形成されている。サイドプレート18は、例えば加工が容易であり、軽量であり、安価な材料で構成される。サイドプレート18は、例えば、鉄、アルミニウム材等で形成可能である。サイドプレート18は、位置決め面18aをロータコア16の端面16aaに当接させることによりシャフト14上におけるロータコア16の固定位置の位置決めを行うことができる。
【0023】
押圧プレート20は、サイドプレート18と同様に、シャフト14が貫通可能な第3の開口部20sと、シャフト14の軸方向におけるロータコア16の端面16abと接触して固定位置を定める押圧面20aとを備える円盤状の部材である。押圧プレート20は、ロータコア16の焼き嵌め後(冷却後)にシャフト14に例えば圧入固定される部材である。したがって、円盤状の押圧プレート20の内径側に形成される第3の開口部20sの直径はシャフト14の外径より僅かに小さく形成されている。押圧プレート20は、例えば加工が容易であり、軽量であり、安価な材料で構成される。押圧プレート20は、例えば、鉄、アルミニウム材等で形成可能である。押圧プレート20は、押圧面20aをロータコア16の端面16abに当接させることによりシャフト14上におけるロータコア16の固定および運用時の位置ずれ防止を行うことができる。なお、押圧プレート20において第3の開口部20sの押圧面20a側には、ロータコア16の後述する傾斜部22を逃げてロータコア16の端面16abと押圧面20aとを密着させるための逃げ部20bが形成されている。この逃げ部20bは、ロータコア16の傾斜部22の形状が逃げられればよく、傾斜部22の形状に対応する形でなくてもよい。例えば、矩形の切欠きでもよい。また、押圧プレート20の固定方法は、圧入に限らず、他の固定方法を用いてもよい。
【0024】
本実施形態のロータコア16は、各電磁鋼板16aが図1に示す傾斜部22を備えることで、焼き嵌めする際に発生し得る不具合を回避することができる。具体的には、焼き嵌めの冷却の際に、サイドプレート18とロータコア16の熱収縮によるサイドプレート18とロータコア16との間に発生する隙間を抑制することができる。詳細を以下に説明する。
【0025】
上述のように構成される回転電機10を組み立てる場合、一例として、まず、シャフト14のフランジ14tが下側になるように、軸方向が上下になるように配置する。その姿勢で、サイドプレート18を遊嵌状態で挿入して、フランジ14tの位置に配置する。
【0026】
続いて、所定の温度(例えば150℃~250℃)に加熱して、第1の開口部16sを含め全体を膨張させたロータコア16の第1の開口部16sをシャフト14に挿入する。その結果、ロータコア16の自重によりロータコア16の端面16aaがサイドプレート18の位置決め面18aに密着する。このとき、前述したように、ロータコア16の熱がサイドプレート18に伝達され、サイドプレート18も膨張する。
【0027】
上述したように、例えば、アルミニウム製のサイドプレート18の場合、熱膨張率は、ロータコア16の熱膨張率より大きいので、より大きく膨張する。そして、ロータコア16およびサイドプレート18が冷却されると、サイドプレート18の膨張により当該サイドプレート18から離間する方向(矢印X1方向)に押し戻されたロータコア16が、その押し戻された位置で収縮して固定される。その結果、仮にロータコア16を構成する各電磁鋼板16aに本実施形態の特徴である傾斜部22が存在しない場合、サイドプレート18とロータコア16との間に隙間Sが発生した状態のままロータコア16の固定処理が終了してしまう。一方、本実施形態のロータコア16を構成する各電磁鋼板16aは、傾斜部22を備え、ロータコア16が冷却される過程で、隙間Sの発生を抑制する。
【0028】
上述したサイドプレート18とロータコア16との間の隙間Sの抑制について、図2図3を用いて詳細に説明する。図2は、第1実施形態に係る回転電機10の傾斜部22の詳細を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。また、図3は、第1実施形態に係る回転電機10において隙間Sを詰める姿勢変形の状態を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。
【0029】
まず、各電磁鋼板16aに形成される傾斜部22について説明する。図2に拡大表示されるように、傾斜部22は、ロータコア16を構成するそれぞれの電磁鋼板16aの第1の開口部16sを形成する周縁領域に、シャフト14の外周面14aに近づくほど、シャフト14に装着されたサイドプレート18の位置決め面18aから離間するように形成されている。第1実施形態の傾斜部22は、例えば、電磁鋼板16aの周縁領域(第1の開口部16sの形成側の領域)を位置決め面18aから離間する方向に屈曲させて形成されている。この場合、サイドプレート18の位置決め面18aから離間する方向の傾斜部22の屈曲角度θは、電磁鋼板16aの厚みや直径等によって異なるが、予め試験等により隙間Sの発生量やその隙間Sが詰まるために必要な傾斜量等を決定する。電磁鋼板16aの厚みが例えば0.25mmで隙間Sが30~40μm程度の場合、電磁鋼板16aの屈曲角度θは、例えばθ=0.5°~7°程度とすることができる。また、傾斜部22の屈曲部長さ(径方向の長さ)tは、例えば最大でt=10mm程度とすることができる。
【0030】
上述したような傾斜部22を備える電磁鋼板16a(ロータコア16)が焼き嵌めの際に冷却されると、図2に示されるように、熱収縮に伴いロータコア16の径方向内側に収縮力Faが働く。そして、図2図3に示されるように、ロータコア16の第1の開口部16sの縮径に伴い、第1の開口部16sを形成する周縁領域が、シャフト14の外周面14aに当接すると、その当接点Pを支点として、傾斜部22の屈曲部22aに収縮力Faが集中してさらに屈曲させる(屈曲角度θを増加させる)。その結果、電磁鋼板16aは矢印X1方向の力を受け、その反作用として矢印X2方向の反力が発生し、電磁鋼板16aの端面16aaをサイドプレート18の位置決め面18aに向かって押圧する付勢力Fが生じる。その結果、電磁鋼板16aが矢印X2方向に姿勢を倒し込み、破線の電磁鋼板16aの姿勢から実線の電磁鋼板16aの姿勢に推移することにより、サイドプレート18とロータコア16との間の隙間Sを埋めることができる。この場合、電磁鋼板16a(ロータコア16)が冷却により径方向内側(シャフト14の外周面14a側)に収縮する締め代の発生過程で、姿勢が矢印X2方向に姿勢が倒れ込むので、シャフト14に対するロータコア16の焼き嵌めと屈曲部22aの屈曲増加による隙間Sの詰め量Saの付与が同時に実施される。この場合、焼き嵌め時の冷却により電磁鋼板16a(ロータコア16)の形状を変化させるので、シャフト14に対するロータコア16の焼き嵌めと隙間Sを詰めた状態の維持を恒久的に行うことができる。
【0031】
図4は、サイドプレート18とロータコア16との間の隙間Sが発生している状態から隙間Sが詰まった状態の推移を説明する例示的かつ模式的な図である。
【0032】
上述したように、シャフト14にロータコア16を焼き嵌めするために、サイドプレート18をシャフト14に装着後、ロータコア16を所定温度まで加熱した状態で、サイドプレート18で定められる位置に密着状態で装着させる。このとき、加熱されたロータコア16の熱がサイドプレート18にも伝わり、サイドプレート18を熱膨張させる。例えば、サイドプレート18の径が符号18bで示す位置まで拡径する。また、サイドプレート18は、厚み方向にも熱膨張して、サイドプレート18の位置決め面18aがロータコア16の端面16aaを矢印X1方向に押し戻す。その状態で冷却が始まるとサイドプレート18およびロータコア16は熱収縮を開始する。ロータコア16は径方向内側に収縮して第1の開口部16sを形成する内径部がシャフト14の外周面14aに接触して、外周面14aにおける焼き嵌めによる固定位置が決定される。一方、サイドプレート18も径方向内側および厚み方向の熱収縮が始まる。この場合、厚み方向の熱収縮により、サイドプレート18の位置決め面18aとロータコア16の端面16aaとの間に隙間Sが生じる。なお、図4の上段の場合、図示の簡略化のため、位置決め面18aと端面16aaとの間に隙間Sが生じている状態を示しているが、フランジ14tとサイドプレート18との間に隙間が生じる場合もある。いずれの場合も冷却後に遊嵌状態となるサイドプレート18に対して隙間が発生し、サイドプレート18の軸方向のがたつきや異音の発生等の原因になり得る。
【0033】
本実施形態の回転電機10の電磁鋼板16a(ロータコア16)の場合、図3で説明したように、電磁鋼板16aの径方向内側への熱収縮による収縮力Faにより傾斜部22の屈曲部22aの角度が増加し、電磁鋼板16aの外周側が矢印X2方向に倒れ込むように姿勢を変化させ、位置決め面18aと端面16aaとが接触する(隙間Sが詰まる)。さらに、収縮力Faが作用し続ければ、端面16aaが位置決め面18aを押す付勢力Fがサイドプレート18をフランジ14tに押し付ける。つまり、図4の下段に示すように、サイドプレート18の熱収縮によって発生した隙間Sを、ロータコア16(電磁鋼板16a)の焼き嵌めの過程(冷却過程)で、スムーズかつ容易に、完全に詰めることが可能になる。その結果、サイドプレート18のガタつきやそのガタつきによる異音の発生を防止することができる。
【0034】
第2実施形態.
図5および図6を用いて第2実施形態を説明する。図5は、第2実施形態に係る回転電機10のロータコア24の傾斜部26の詳細を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。また、図6は、第2実施形態に係る回転電機10において隙間Sを詰める姿勢変形の状態を示す例示的かつ模式的な拡大断面図である。
【0035】
第2実施形態のロータコア24の場合も複数の電磁鋼板24aを積層して構成されている。なお、第1実施形態のロータコア16(電磁鋼板16a)と第2実施形態のロータコア24(電磁鋼板24a)とは、傾斜部の形成態様が異なるのみで、他の構成は実質的に同じであり、同等の構成には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
第2の実施形態のロータコア24の傾斜部26は、電磁鋼板24aの周縁領域(第1の開口部24s)のうちシャフト14の外周面14aに対向する端面26aに形成されている。例えば、端面26aがシャフト14の外周面14aに近づくほどサイドプレート18の位置決め面18aから離間するようにカットされている。傾斜部26は、例えば、断面が略三角形になるようにカットされている。
【0037】
傾斜部26を備える電磁鋼板24a(ロータコア24)が焼き嵌めの際に冷却されると、図5に示されるように、第1の実施形態と同様に、収縮に伴いロータコア24の径方向内側に収縮力Faが働く。そして、図5図6に示されるように、ロータコア24の第1の開口部24sの縮径に伴い、第1の開口部24sを形成する周縁領域が、シャフト14の外周面14aに当接すると、その当接点Pの位置、すなわち、傾斜部26(端面26a)に収縮力Faが集中して、傾斜部26が押し潰される。その結果、電磁鋼板24aは矢印X1方向の力を受け、当接点Pにおいて、反作用として矢印X2方向の反力が発生し、電磁鋼板24aの端面24aaがサイドプレート18の位置決め面18aに向かって押圧する付勢力Fが生じるとともに、傾斜部26の端面26aの変形により端面24aaが位置決め面18aに向かって移動する。その結果、電磁鋼板24aが矢印X2方向に姿勢を倒し込み、破線の電磁鋼板24aの姿勢から実線の電磁鋼板24aの姿勢に推移することにより、サイドプレート18とロータコア24との間の隙間S埋めることができる。この場合、電磁鋼板24a(ロータコア24)が冷却により径方向内側(シャフト14の外周面14a側)に収縮する締め代の発生の過程で、姿勢が矢印X2方向に倒れ込むので、シャフト14に対するロータコア24の焼き嵌めと端面26aの変形による端面24aaの移動による隙間Sの詰め量Saの付与が同時に実施される。この場合、焼き嵌め時の冷却により電磁鋼板24a(ロータコア24)の形状を変化させることで、シャフト14に対するロータコア16の焼き嵌めと隙間Sを詰めた状態の維持を恒久的に行うことができる。
【0038】
なお、上述したように、傾斜部26の端面26aの押し潰しによる変形は、第1実施形態の電磁鋼板16aの傾斜部22の屈曲部22aの変形より少ない。その結果、第2実施形態の傾斜部26による隙間Sの詰め量Saは第1実施形態の傾斜部22の詰め量Saより少なくなる傾向があるが、加工が容易であり、コスト軽減に寄与することができる。したがって、回転電機(ロータコア)の大きさ等に基づく隙間Sの大きさ等に応じて、傾斜部の形成方法を選択するようにすることが望ましい。
【0039】
(本実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態に係る回転電機10は、回転軸となるシャフト14と、シャフト14が貫通可能な第1の開口部16s(24s)を備える円盤状の電磁鋼板16a(24a)を複数枚積層して形成され、シャフト14の外周面14aに加熱することで固定可能なロータコア16(24)と、シャフト14が貫通可能な第2の開口部18sと、シャフト14の軸方向におけるロータコア16(24)の端面16aa(24aa)と接触して固定位置を定める位置決め面18aとを備える、円盤状で熱膨張または熱収縮するサイドプレート18と、ロータコア16(24)の径方向外側に配置されるステータ12と、を備える。ロータコア16(24)を構成するそれぞれの電磁鋼板16a(24a)の第1の開口部16s(24s)を形成する周縁領域は、シャフト14の外周面14aに近づくほどサイドプレート18の位置決め面18aから離間する傾斜部22(26)を備える。これによって、例えば、焼き嵌めのために加熱されたロータコア16(24)が冷却される場合、各電磁鋼板16a(24a)の径方向の収縮力が傾斜部22(26)に作用し、各電磁鋼板16a(24a)の姿勢をサイドプレート18側に倒していく。その結果、サイドプレート18の縮小によって生じた隙間Sを各電磁鋼板16a(24a)の姿勢変化により詰めることが可能になる。
【0040】
また、本実施形態の回転電機10の傾斜部22は、例えば、電磁鋼板16aの周縁領域を離間する方向に屈曲させて形成されてもよい。これによって、例えば、傾斜部22を容易に形成することができるとともに、屈曲角度θや第1の開口部16sを形成する周縁領域(端部)からの距離に応じて、姿勢変化量の調節を容易に行うことができる。
【0041】
また、本実施形態の回転電機10の傾斜部26は、例えば、電磁鋼板24aの周縁領域のうち外周面14aに対向する端面26aに形成されてもよい。これによって、例えば、傾斜部26を容易に形成することができる。
【0042】
このように、本実施形態の回転電機10は、焼き嵌めによりロータコア16(24)をシャフト14に固定する場合に、サイドプレート18との間に生じ得る隙間Sを、焼き嵌めの冷却時に自動的に詰めることを可能にすることができる。
【0043】
なお、上述した実施形態において、回転電機10は、車両の駆動源として利用するものとして説明したが、サイドプレート18を備え、ロータコア16(24)を焼き嵌めにより固定する回転電機であれば、本実施形態の構成を適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 回転電機
12 ステータ
14 シャフト
14a 外周面
14t フランジ
16,24 ロータコア
16a,24a 電磁鋼板
16aa,16ab 端面
16s,24s 第1の開口部
18 サイドプレート
18a 位置決め面
18s 第2の開口部
20 押圧プレート
20a 押圧面
20b 逃げ部
22,26 傾斜部
22a 屈曲部
26a 端面
Fa 収縮力
F 付勢力
P 当接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6