(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124102
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】車両用給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20240905BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240905BHJP
B60L 53/38 20190101ALI20240905BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240905BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
B60L53/38
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032041
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000146434
【氏名又は名称】株式会社城南製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 雄太
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105AA03
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC25
5H125BE02
5H125DD02
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】車両の傾きに対応することができると共に、送電ケースを安定して支持することができる車両用給電装置を提供する。
【解決手段】車両が駐車される駐車スペースの設置面10に設置されて、車両に搭載された受電装置22に電力を供給する車両用給電装置12であって、受電装置22に内蔵された受電コイルに対して非接触で電力を供給する送電コイル31aが取り付けられた送電ケース31と、コイルスプリング51によって、送電ケース31を弾性的に支持する弾性支持部32と、弾性支持部32を支持し、弾性支持部32を介して送電ケース31を昇降方向に昇降させる昇降機構34と、を備えた。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が駐車される駐車スペースの設置面に設置されて、前記車両に搭載された受電装置に電力を供給する車両用給電装置であって、
前記受電装置に内蔵された受電コイルに対して非接触で電力を供給する送電コイルが取り付けられた送電ケースと、
弾性部材によって、前記送電ケースを弾性的に支持する弾性支持部と、
前記弾性支持部を支持し、前記弾性支持部を介して前記送電ケースを昇降方向に昇降させる昇降機構と、を備えたことを特徴とする車両用給電装置。
【請求項2】
前記昇降機構の駆動によって、前記弾性部材を圧縮させる圧縮機構を、更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用給電装置。
【請求項3】
前記弾性支持部は、前記昇降方向を伸縮方向とするコイルスプリングによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用給電装置。
【請求項4】
前記昇降機構は、シザーリフトによって構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用給電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用給電装置(車両用送電装置)として、例えば、送電コイルが取り付けられた送電ケースを、スプリングによって弾性的に支持するものがある(特許文献1参照)。この車両用給電装置は、送電コイルが取り付けられた送電ケースと、送電ケースを弾性的に支持する4つのスプリングと、一端がそれぞれ送電ケースに取り付けられた2本のワイヤと、2本のワイヤを巻き取り、又は繰り出して、送電ケースを昇降させる駆動ユニットと、を備えている。この車両用給電装置では、駆動ユニットを駆動して、送電ケースを車両に向かって上昇させることで、車両の受電装置に対し送電ケースを面接触させ、この状態で給電を行う。そして、この車両用給電装置では、受電装置と送電ケースとが面接触した状態が維持されるように、4つのスプリングによって送電ケースが弾性的に支持されることで、車両が傾いたとき、受電装置の傾きに追従して、送電ケースを傾かせることができる。これにより、車両が傾くことによる充電効率の低下を抑制することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の車両用給電装置では、給電に際し、送電ケースの上昇によって伸びた状態のスプリングで送電ケースを支持するため、送電ケースの支持が安定せず、送電ケースが車両の前後方向や左右方向に位置ズレする虞があった。
【0005】
そこで、本発明は、車両の傾きに対応することができると共に、送電ケースを安定して支持することができる車両用給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、車両が駐車される駐車スペースの設置面に設置されて、前記車両に搭載された受電装置に電力を供給する車両用給電装置であって、前記受電装置に内蔵された受電コイルに対して非接触で電力を供給する送電コイルが取り付けられた送電ケースと、弾性部材によって、前記送電ケースを弾性的に支持する弾性支持部と、前記弾性支持部を支持し、前記弾性支持部を介して前記送電ケースを昇降方向に昇降させる昇降機構と、を備えたことを特徴とする車両用給電装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用給電装置は、車両の傾きに対応することができると共に、送電ケースを安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用給電装置を適用した車両用充電システムの全体構成を示す構成図である。
【
図3】(a)は、送電ケースを上昇させた状態における車両用給電装置を示した側面図であり、(b)は、送電ケースを下降させた状態における車両用給電装置を示した側面図である。
【
図4】(a)は、車両用給電装置を示した正面図であり、(b)は、車両用給電装置を示した平面図である。
【
図5】キャリアベースを省略した車両用給電装置を示した裏面斜視図である。
【
図6】(a)は、送電ケースを省略した車両用給電装置を示した斜視図であり、(b)は、送電ケースを省略した車両用給電装置を示した平面図である。
【
図7】車両が傾いたときの送電ケース及び弾性支持部の挙動を模式的に示した説明図である。
【
図8】送電ケース、弾性支持部及びキャリアベースを省略した車両用給電装置を示した、コイルスプリング圧縮前(a)及びコイルスプリング圧縮後(b)の斜視図である。
【
図9】車両用給電装置における送電ケースの下降動作を示した説明図である。
【
図10】車両用給電装置における送電ケースの上昇動作を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両用給電装置を適用した車両用充電システムについて説明する。この車両用充電システムは、駐車スペースに駐車された車両を充電するシステムである。特に、本車両用充電システムは、車両の傾きに対応することができると共に、送電ケースを安定して支持することができる送電ケースの支持・昇降構造を採用したものである。なお、以下、各図に示す通り、左右、前後及び上下を規定して説明する。また、駐車スペースにおける地面を設置面と呼称する。これに対し、車両の前後左右方向及び車両用給電装置の前後左右方向は、設置面と平行しており、車両の上下方向及び車両用給電装置の上下方向は、設置面に直交する方向である。
【0010】
(車両用充電システム1の構成)
図1に示すように、車両用充電システム1は、車両11が駐車される駐車スペースの設置面10に設置され、車両11に搭載された受電装置22に電力を供給する車両用給電装置12と、電源ケーブル13を介して車両用給電装置12を接続した電源設備14と、から構成される。
【0011】
車両11は、例えば、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車等の二次電池式の電気自動車であり、車両11の下部に搭載されて受電コイル21が内蔵される受電装置22と、受電装置22と電気的に接続された蓄電池23とが設けられている。車両11は、受電装置22の真下に車両用給電装置12が位置するように駐車されており、受電装置22は、車両用給電装置12と対向する対向面22aを有している。本実施形態では、受電装置22の対向面22aが車両11の下面11aと平行となるように、受電装置22が配置されている。
【0012】
電源設備14は、例えば商用電源、自家発電機、バッテリー等の蓄電装置からなる。電源設備14は、図示しない電源供給部から供給される商用交流電力を高周波の電力に変換し、電源ケーブル13を介して当該電力を車両用給電装置12に出力する。
【0013】
(車両用給電装置の構成)
図2乃至
図4に示すように、車両用給電装置12は、送電コイル31aが取り付けられた送電ケース31と、コイルスプリング51によって送電ケース31を弾性的に支持する弾性支持部32と、弾性支持部32を搭載したキャリアベース33と、キャリアベース33を上下方向(昇降方向)に昇降させる昇降機構34と、設置面10に設置されると共に、昇降機構34を搭載するベース35と、キャリアベース33に取り付けられ、非使用時に弾性支持部32のコイルスプリング51を圧縮させる一対の圧縮機構36(
図5参照)と、を備えている。すなわち、キャリアベース33は、送電ケース31、弾性支持部32及び圧縮機構36を搭載し、昇降機構34は、キャリアベース33を介して弾性支持部32を支持し、キャリアベース33及び弾性支持部32を介して、送電ケース31を上下方向に昇降させる。なお、コイルスプリング51は、弾性部材の一例である。
【0014】
送電ケース31は、板状の送電パッド41(
図3参照)と、板状の送電パッド41を収容するケース本体42と、を有している。送電パッド41は、送電コイル31aを格納しており、ケース本体42の天壁の裏側に取り付けられている。本実施形態では、
図3に示すように、ケース本体42の表面42aと受電装置22の対向面22aとを接触させた状態で、送電コイル31aから受電コイル21に対し電力を供給する。送電コイル31aから受電コイル21への電力の供給は、静電誘導を用いて非接触で行われる。
【0015】
また、
図5に示すように、ケース本体42には、圧縮機構36の回動レバー93(後述する)と係合する倒立角「U」字状の左右一対の被係合部43が設けられている。詳細は後述するが、この一対の被係合部43が、圧縮機構36の回動レバー93と係合することで、圧縮機構36によるコイルスプリング51の圧縮が行われる。
【0016】
図6に示すように、弾性支持部32は、前後方向及び左右方向に並んで配設されると共に、上下方向を伸縮方向とする4つのコイルスプリング51によって構成されている。各コイルスプリング51は、上端部がキャリアベース33に固定され、下端部が送電ケース31のケース本体42に固定されており、キャリアベース33を受けとして、送電ケース31を弾性的に支持している。すなわち、キャリアベース33と送電ケース31との間に、4つのコイルスプリング51を介在させた構成となっている。また、
図3(a)に示すように、昇降機構34により送電ケース31を上昇させた状態では、4つのコイルスプリング51が圧縮した状態となり、この圧縮された4つのコイルスプリング51によって、送電ケース31を受電装置22に押圧して、送電ケース31の表面42aを受電装置22の対向面22aに面接触させる。圧縮状態の4つのコイルスプリング51によって、受電装置22に面接触した送電ケース31を弾性的に支持することで、送電ケース31の姿勢を受電装置22に追従させることができる。これにより、車両11が傾いた場合にも、受電コイル21と送電コイル31aとの位置関係を最適な状態に維持することができる。
【0017】
詳細には、
図7に示すように、車両11が傾いて受電装置22が水平姿勢から傾いた場合、各コイルスプリング51が、受電装置22と送電ケース31との面接触状態を維持するように伸縮し、送電ケース31を受電装置22と追従するように傾かせる。これにより、受電装置22と送電ケース31とが平行状態を維持され、送電コイル31aと受電コイル21との位置関係が平行状態に維持される。
【0018】
また、圧縮状態の4つのコイルスプリング51によって、受電装置22に面接触した送電ケース31を弾性的に支持することで、乗客の車両11に対する乗り降りによって車高変動が生じた場合にも、受電コイル21と送電コイル31aとの位置関係を最適な状態に維持することができる。具体的には、車両11の車高変動が生じて受電装置22が上下動した場合、各コイルスプリング51が、受電装置22と送電ケース31との面接触状態を維持するように伸縮し、送電ケース31を受電装置22と追従するように上下動させる。これにより、受電装置22と送電ケース31との面接触状態を維持され、送電コイル31aと受電コイル21との離間距離が最適値に維持される。
【0019】
図6に示すように、キャリアベース33は、ベース本体61と、ベース本体61に形成され、4つのコイルスプリング51の下端部をそれぞれ着座する4つのスプリング着座部62と、を備えている。各スプリング着座部62は、ベース本体61の底壁よりも低い位置で各コイルスプリング51の下端部を着座固定している。
【0020】
昇降機構34は、左右一対のシザーリフト71によって構成されている。一対のシザーリフト71は、前後対称の構成となっており、各シザーリフト71は、直動型のアクチュエータ81と、アクチュエータ81の出力軸に取り付けられた進退動部材82と、進退動部材82に連結されたパンタアーム83と、を備えている。パンタアーム83は、下端部がベース35に連結され、上端部がキャリアベース33に連結されている。
【0021】
アクチュエータ81を順駆動(前進駆動)すると、アクチュエータ81の出力軸に取り付けられた進退動部材82が前進し、これに伴って、進退動部材82に連結されたパンタアーム83が作動することで、キャリアベース33を平行に下降させる。一方、アクチュエータ81を逆駆動(後退駆動)すると、アクチュエータ81の出力軸に取り付けられた進退動部材82が後退し、これに伴って、進退動部材82に連結されたパンタアーム83が作動することで、キャリアベース33を平行に上昇させる。これらによって、昇降機構34は、キャリアベース33及び弾性支持部32を介して、送電ケース31を平行にかつ上下方向に昇降させる。
【0022】
本実施形態では、車両用給電装置12による給電時には、昇降機構34によって、送電ケース31が受電装置22に接触するケース接触位置A1(
図3(a)参照)に、キャリアベース33を上昇させ、車両用給電装置12の未使用時には、昇降機構34によって、最大下降位置A2(
図3(b)参照)に、キャリアベース33を下降させる。ケース接触位置A1は、受電装置22の高さに基づいて設定されており、送電ケース31と受電装置22との接触によって、各コイルスプリング51が所定範囲の圧縮状態となる位置になっている。所定範囲の圧縮状態とは、例えば、上記した車両11の傾きや車高変動に対応可能な圧縮状態である。なお、ケース接触位置A1を設定するための受電装置22の高さは、複数種の車両11における平均値を用いても良いし、センサー等によって、車両11における受電装置22の高さを検出し、これを用いる構成であってもよい。
【0023】
図8に示すように、一対の圧縮機構36は、一対のシザーリフト71にそれぞれ対応しており、一対のシザーリフト71と同様、前後対称の構成となっている。各圧縮機構36は、キャリアベース33に対し前後方向に移動自在に支持されたラック部材91と、キャリアベース33に対し回転自在に支持されると共にラック部材91のラックギア91bと噛合する前後一対のピニオン92と、一対のピニオン92にそれぞれ軸着されると共にキャリアベース33の被係合部43と係合する前後一対の回動レバー93と、を備えている。
【0024】
ラック部材91には、一対のピニオン92をそれぞれ収容する前後一対の長孔91aが形成されており、各長孔91aの内面には、各ピニオン92と噛合するラックギア91bが形成されている。一対の長孔91aのラックギア91bは、一方が、長孔91aの上内面に形成され、他方が、長孔91aの下内面に形成されている。そのため、一対のラックギア91bに噛み合う一対のピニオン92は、ラック部材91の前後方向の移動に伴って、相互に逆方向に回転する。
【0025】
また、ラック部材91は、キャリアベース33が最大下降位置A2に位置するときに、昇降機構34の進退動部材82に係合する係合板部91cが形成されている。キャリアベース33が最大下降位置A2に位置し、係合板部91cが進退動部材82に係合した状態で、アクチュエータ81を駆動すると、進退動部材82の進退動に伴って、ラック部材91が前後方向に進退動する。このラック部材91が進退動によって、ラック部材91のラックギア91bと噛合するピニオン92が回転する。
【0026】
一方、各回動レバー93は、基端部がピニオン92に軸着された長手状の部材であり、通常状態では、
図8(a)に示すように、前後方向に平行な横倒し姿勢となっている。そして、
図8(b)に示すように、各ピニオン92に軸着された各回動レバー93は、ラック部材91の前進に伴って各ピニオン92が回転すると、これに伴って90度回動し、上下方向に平行な倒立姿勢となる。各回動レバー93が横倒し姿勢から倒立姿勢になることで、回動レバー93に係合した被係合部43を介して送電ケース31が下方に引き下げられ、コイルスプリング51が圧縮される。なお、一対のピニオン92が相互に逆回転するため、これに軸着された一対の回動レバー93は、相互に逆方向に回動する。なお、一対のピニオン92が同じ方向に回転し、回動レバー93が同じ方向に回動する構成であってもよい。
【0027】
すなわち、
図8(b)に示すように、キャリアベース33が最大下降位置A2に位置し、係合板部91cが進退動部材82に係合した状態で、アクチュエータ81が順駆動すると、進退動部材82に係合したラック部材91が前進し、これに伴って、ラック部材91のラックギア91bと噛合する各ピニオン92が回転する。そして、各ピニオン92の回転に伴って、各ピニオン92に軸着された各回動レバー93が回動し、横倒し姿勢から倒立姿勢になる。これに伴って、各回動レバー93に係合した被係合部43を介し、送電ケース31が引き下げられて、送電ケース31をキャリアベース33に接近させる。これによって、送電ケース31とキャリアベース33との間に介在された各コイルスプリング51を圧縮させる。このように、圧縮機構36は、昇降機構34におけるアクチュエータ81の駆動によって、各コイルスプリング51を圧縮させる。
【0028】
(送電ケースの下降動作)
次に
図9を参照して、車両用給電装置12における送電ケース31の下降動作について説明する。
図9(a)に示すように、送電ケース31の下降動作は、キャリアベース33がケース接触位置A1に位置した状態から行われる。
図9(b)に示すように、送電ケース31の下降動作では、まず、昇降機構34のアクチュエータ81を順駆動することで、昇降機構34によって、キャリアベース33を最大下降位置A2に下降させる。すなわち、昇降機構34のアクチュエータ81を順駆動し、アクチュエータ81の出力軸に取り付けられた進退動部材82を前進させて、進退動部材82に連結されたパンタアーム83を作動させることで、キャリアベース33を最大下降位置A2に下降させる。キャリアベース33を最大下降位置A2に下降させると、送電ケース31が受電装置22から離間し、圧縮機構36におけるラック部材91の係合板部91cが、進退動部材82に係合した状態となる。
【0029】
その後、
図9(c)に示すように、アクチュエータ81を更に順駆動することで、圧縮機構36によって、各コイルスプリング51を圧縮させる。すなわち、アクチュエータ81を順駆動して、進退動部材82を更に前進させ、進退動部材82に係合したラック部材91を前進させる。これによって、ラック部材91のラックギア91bと噛合する一対のピニオン92を回転させ、一対のピニオン92に軸着された一対の回動レバー93を横倒し姿勢から倒立姿勢に回動させる。これによって、送電ケース31を引き下げて、送電ケース31をキャリアベース33に接近させ、送電ケース31とキャリアベース33との間に介在された各コイルスプリング51を圧縮させる。これにより、本下降動作を終了する。
【0030】
(送電ケースの上昇動作)
次に
図10を参照して、車両用給電装置12における送電ケース31の上昇動作について説明する。
図10(a)に示すように、送電ケース31の上昇動作は、キャリアベース33が最大下降位置A2に位置し、圧縮機構36によって各コイルスプリング51を圧縮させた状態から行われる。
図10(b)に示すように、送電ケース31の上昇動作では、まず、昇降機構34のアクチュエータ81を逆駆動することで、圧縮機構36による各コイルスプリング51の圧縮を解放する。すなわち、アクチュエータ81を逆駆動して、進退動部材82を後退させ、進退動部材82に係合したラック部材91を後退させる。これによって、ラック部材91のラックギア91bと噛合する一対のピニオン92を回転させ、一対のピニオン92に軸着された一対の回動レバー93を倒立姿勢から横倒し姿勢に回動させる。これによって、送電ケース31を引き下げる力を解放し、各コイルスプリング51の圧縮を解放する。
【0031】
その後、
図10(c)に示すように、アクチュエータ81を更に逆駆動することで、昇降機構34によって、キャリアベース33をケース接触位置A1に上昇させる。すなわち、昇降機構34のアクチュエータ81を逆駆動し、アクチュエータ81の出力軸に取り付けられた進退動部材82を後退させて、進退動部材82に連結されたパンタアーム83を作動させることで、キャリアベース33をケース接触位置A1に上昇させる。キャリアベース33をケース接触位置A1に上昇させると、送電ケース31が受電装置22に接触し、圧縮状態のコイルスプリング51によって送電ケース31を支持した状態となる。
【0032】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、送電ケース31を弾性的に支持する弾性支持部32を備えたことで、車両11が傾いた場合に対応することができる。すなわち、車両11が傾いた場合にも、送電ケース31を受電装置22に追従させることができるため、受電コイル21と送電コイル31aとを平行な状態に維持することができる。
一方で、弾性支持部32とは別に、送電ケース31を昇降させる昇降機構34を備えたことで、コイルスプリング51の長さを短くすることができると共に、送電ケース31の上昇に伴って伸びた状態のコイルスプリング51で送電ケース31を支持する構成を排除することができ、送電ケース31を安定して支持することができる。これによって、送電ケース31が前後方向や左右方向に位置ズレするのを抑制することができる。これにより、受電コイル21と送電コイル31aとの前後左右方向の位置関係を最適な状態に維持することができる。
すなわち、弾性支持部32と昇降機構34とを備えた構成によって、受電コイル21と送電コイル31aとの位置関係を最適な状態にすることができ、受電コイル21及び送電コイル31aによる充電効率を向上させることができる。
【0033】
また、上記実施形態の構成によれば、受電装置22の傾きに合わせて、送電ケース31の傾きを調整する構成として、弾性部材(例えばコイルスプリング51)によって、送電ケース31を弾性的に支持する構成を採用したことで、受電装置22の傾きを検出するセンサー類や、送電ケース31の傾きを調整するための駆動部等を必要としないため、車両用給電装置12を簡単な構成にすることができる。
【0034】
また、上記実施形態の構成によれば、昇降機構34の駆動によって弾性部材(例えばコイルスプリング51)を圧縮させる圧縮機構36を備えたことで、車両用給電装置12の非使用時における送電ケース31の高さを低くすることができ、車両用給電装置12の非使用時において、車両用給電装置12をコンパクトにすることができる。また、昇降機構34の駆動を利用してコイルスプリング51を圧縮させる構成であるため、圧縮機構36が駆動部を有する必要がなく、圧縮機構36を簡単な構成にすることができる。
【0035】
また、上記実施形態の構成によれば、キャリアベース33のスプリング着座部62を、キャリアベース33の底壁よりも低くすることで、コイルスプリング51の長さを最適な寸法に調整することができる。すなわち、送電ケース31を安定して支持することのみ考慮すれば、コイルスプリング51は短いほど良いが、コイルスプリング51が短すぎると、圧縮時のバネ力が過大になり、この過大なバネ力によって、コイルスプリング51自身やコイルスプリング51の周辺部品(例えば、送電ケース31や圧縮機構36等)を破損する虞がある。そのため、キャリアベース33のスプリング着座部62を、キャリアベース33の底壁よりも低くし、コイルスプリング51の長さを、圧縮時に過大なバネ力が生じない程度の寸法にすることで、送電ケース31を安定して支持する構成を維持しつつ、圧縮時のバネ力が過大になるのを抑制することができる。
【0036】
(その他の実施形態について)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0037】
例えば、上記実施形態においては、弾性支持部32を、4つのコイルスプリング51によって構成したが、これに限るものではない。すなわち、弾性支持部32を、単一のコイルスプリング51によって構成してもよいし、弾性支持部32を、4つ以外の複数個のコイルスプリング51によって構成してもよい。すなわち、弾性支持部32における、送電ケース31を弾性的に支持する弾性部材の数は、任意である。
【0038】
また、上記実施形態においては、弾性支持部32で送電ケース31を弾性的に支持する弾性部材として、コイルスプリング51を用いる構成であったが、板バネ(リーフスプリング)やトーションスプリング等の他のバネ部材を用いる構成であってもよい。また、弾性部材として、ゴムや発泡樹脂等の弾性体を用いる構成であってもよい。すなわち、弾性部材は、所定以上の弾性を有し、昇降方向に伸縮可能な部材であれば、コイルスプリング51やバネ部材に限るものではない。
【0039】
また、上記実施形態においては、昇降機構34を、一対のシザーリフト71によって構成したが、これに限るものではない。すなわち、昇降機構34を、単一のシザーリフト71によって構成してもよいし、3つ以上のシザーリフト71によって構成してもよい。また、上記実施形態では、1段のシザーリフト71を用いたが、複数段のシザーリフト71を用いてもよい。
【0040】
また、上記実施形態においては、昇降機構34を、シザーリフト71によって構成したが、これに限るものではない。すなわち、昇降機構34は、キャリアベース33を平行にかつ上下方向に昇降可能なものであればよく、例えば、上下方向を進退方向とする直動型アクチュエータを用いて、キャリアベース33を昇降させる構成であってもよいし、パンタアーム83以外のリンク機構を用いて、キャリアベース33を昇降させる構成であってもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、圧縮機構36によるコイルスプリング51の圧縮を、昇降機構34によるキャリアベース33の下降完了後に行う構成であったが、圧縮機構36によるコイルスプリング51の圧縮を、昇降機構34によるキャリアベース33の下降中に行う構成であってもよいし、圧縮機構36によるコイルスプリング51の圧縮を、昇降機構34によるキャリアベース33の下降前に行う構成であってもよい。
【0042】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施形態から把握される技術思想について、実施形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、請求の範囲における構成要素を実施形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0043】
《1》車両(11)が駐車される駐車スペースの設置面(10)に設置されて、前記車両(11)に搭載された受電装置(22)に電力を供給する車両用給電装置(12)であって、前記受電装置(22)に内蔵された受電コイル(21)に対して非接触で電力を供給する送電コイル(31a)が取り付けられた送電ケース(31)と、弾性部材(51)によって、前記送電ケース(31)を弾性的に支持する弾性支持部(32)と、前記弾性支持部(32)を支持し、前記弾性支持部(32)を介して前記送電ケース(31)を昇降方向に昇降させる昇降機構(34)と、を備えたことを特徴とする車両用給電装置(12)。
《2》前記昇降機構(34)の駆動によって、前記弾性部材(51)を圧縮させる圧縮機構(36)を、更に備えたことを特徴とする《1》に記載の車両用給電装置(12)。
《3》前記弾性支持部(32)は、前記昇降方向を伸縮方向とするコイルスプリング(51)によって構成されていることを特徴とする《1》又は《2》に記載の車両用給電装置(12)。
《4》前記昇降機構(34)は、シザーリフト(71)によって構成されていることを特徴とする《1》乃至《3》のいずれか1つに記載の車両用給電装置(12)。
【符号の説明】
【0044】
10:設置面、 11:車両、 12:車両用給電装置、 21:受電コイル、 22:受電装置、 31:送電ケース、 31a:送電コイル、 32:弾性支持部、 34:昇降機構、 36:圧縮機構、 51:コイルスプリング、 71:シザーリフト