(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124110
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池システムを備えた移動体
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04007 20160101AFI20240905BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20240905BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240905BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240905BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240905BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240905BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240905BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20240905BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240905BHJP
【FI】
H01M8/04007
H01M8/0612
H01M8/04746
H01M8/04701
H01M8/04 Z
H01M8/00 Z
H01M8/04858
B60L58/40
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032054
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】515090628
【氏名又は名称】株式会社スリーダムアライアンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 正成
(72)【発明者】
【氏名】原 直樹
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD01
5H125EE31
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA03
5H127BA05
5H127BA12
5H127BA21
5H127BA32
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB17
5H127BB33
5H127BB34
5H127BB37
5H127DC12
5H127DC32
5H127DC42
5H127DC72
5H127DC96
5H127EE12
(57)【要約】
【課題】発電効率を高めた燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池システム1は、熱交換器14、燃料ガス生成部13、改質器12、燃料電池部11を備える。熱交換器14は、外部から供給された空気を加熱する。燃料ガス生成部13は、外部から供給された燃料から燃料ガスを生成する。改質器12は、燃料ガスを、水素を含むガスに改質する。燃料電池部11は、熱交換器14によって加熱された空気と、水素を含むガスとに基づいて、発電を行う。燃料電池部11は、改質器12での改質反応温度よりも高い温度で動作し、発電によって加熱されたガスを、改質器12に供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給された空気を加熱する熱交換器と、
外部から供給された燃料から燃料ガスを生成する燃料ガス生成部と、
前記燃料ガスを、水素を含むガスに改質する改質器と、
前記熱交換器によって加熱された前記空気と、前記水素を含むガスとに基づいて、発電を行う燃料電池部と、
を具備し、
前記燃料電池部は、前記改質器での改質反応温度よりも高い温度で動作し、発電によって加熱されたガスを、前記改質器に供給する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池部の発電によって加熱された前記ガスを、前記熱交換器又は前記燃料ガス生成部の少なくとも一方に供給する、請求項1の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料電池部と前記燃料を貯蔵する燃料タンクとの間に備えられ、前記燃料電池部の熱を前記燃料タンクに伝える熱伝導体をさらに具備する、請求項1の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料電池部の発電によって加熱された前記ガスを、前記改質器に供給する熱循環を維持するための電力を蓄積する蓄積部をさらに具備する、請求項1の燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1の燃料電池システムと、
前記燃料電池システムからの電力を動力に変換する動作と、動力を電力に変換する動作との両方が可能なモーターシステムと、
を具備し、
前記燃料電池システムは、前記モーターシステムによって発生された電力に基づいて、前記改質器を加熱する加熱部をさらに具備する、
移動体。
【請求項6】
請求項1の燃料電池システムと、
前記燃料電池システムからの電力を動力に変換する第1の動作と、動力を電力に変換する第2の動作との両方が可能なモーターシステムと、
前記モーターシステムで変換された電力を蓄電する蓄電部と、
を具備し、
前記モーターシステムで前記第1の動作を行わない場合に、前記燃料電池システムは、所定量の電力を発電し、
前記蓄電部は、前記所定量の電力を蓄電し、
前記モーターシステムは、前記第1の動作を再開する場合に、前記蓄電部に蓄電された電力を使用する、
移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池による発電により発生する熱の利用を最適化した燃料電池システム及び燃料電池システムを備えた移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池では、電解質の材料として用いられるイオン交換膜に、パーフルオロカーボンスルホン酸に代表されるような、水を媒介としてイオン伝導が行われる材料が用いられる。このような固体高分子形燃料電池の温度が100℃を超えた場合、水が蒸発し十分なイオン伝導が困難になる。このため、固体高分子形燃料電池は、一般的に約80℃以下で運転されている。
【0003】
その一方で、燃料電池を100℃以上で運転できれば、燃料電池の冷却を軽減することができ、燃料電池システムを簡素化できる。さらに、燃料電池の運転温度を高くすることができれば、発電効率が向上する。
【0004】
上記のような実情から、100℃以上で運転可能な燃料電池として、例えば、特許文献1(特許第6618242号公報)が提案されている。
【0005】
特許文献1では、金属イオン、オキソアニオン、及びプロトン配位性分子を含み、オキソアニオン及び/又はプロトン配位性分子が、金属イオンに配位して配位高分子を形成しているプロトン伝導体と、エンジニアリングプラスチックを含む樹脂の樹脂フィラーと、を含むプロトン伝導膜を用いることで、100℃を超える温度での運転を実現している。
【0006】
また、特許文献2(特開2002―289231号公報)では、燃料電池式発電システムの稼働中に、燃料改質装置により製造供給される水素リッチガス中の水素と空気中の酸素とを電池スタックの固体高分子型の固体電解質内で反応させることにより発電を行う。この反応と並行して、特許文献2では、発電に伴い電池スタックで発生する排熱を熱源として、水蒸気添加器により、燃料改質装置による改質対象の気体状の炭化水素系の原燃料を加湿する。このように、燃料電池スタックの排熱を改質に活用することで発電効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6618242号公報
【特許文献2】特開2002―289231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2では、燃料電池スタックの排熱を炭化水素系燃料の蒸気化に利用しているが、燃料電池スタックの運転温度が約80℃以下であるため、排熱の利用は約80℃以下の範囲に限られる。
【0009】
特許文献1の方法により、燃料電池スタックの運転温度を100℃以上にした場合、燃料電池スタックの排熱の利用範囲は拡大する。しかしながら、特許文献1には排熱の利用に関する開示はない。
【0010】
本発明は、上記の実情を考慮してなされたものであり、燃料電池を例えば100℃以上などのような高温で動作させることで、システムを簡素化し、さらに、排熱の利用範囲を広げて発電効率を向上させる燃料電池システム及び燃料電池システムを備えた移動体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態によれば、燃料電池システムは、熱交換器、燃料ガス生成部、改質器、燃料電池部を備える。熱交換器は、外部から供給された空気を加熱する。燃料ガス生成部は、外部から供給された燃料から燃料ガスを生成する。改質器は、燃料ガスを、水素を含むガスに改質する。燃料電池部は、熱交換器によって加熱された空気と、水素を含むガスとに基づいて、発電を行う。燃料電池部は、改質器での改質反応温度よりも高い温度で動作し、発電によって加熱されたガスを、改質器に供給する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えば個体高分子型などのような燃料電池において排熱の利用により発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態に係る燃料電池システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態に係る燃料電池スタックの構成の一例を示す斜視図。
【
図3】第1の実施形態に係る燃料電池の構造の一例を示す断面図。
【
図4】第1の実施形態に係る燃料電池スタックの一例を示す断面図。
【
図5】第1の実施形態に係る改質器の外形の一例を示す斜視図。
【
図6】第1の実施形態に係る改質器の構造の一例を示す断面図。
【
図7】第1の実施形態に係る燃料ガス生成部の構成の一例を示すブロック図。
【
図8】第1の実施形態に係る熱交換器の外形の一例を示す斜視図。
【
図9】第1の実施形態に係る燃料電池システムの各部のレイアウトの一例を示すレイアウト図。
【
図10】第1の実施形態に係る燃料電池システムの運転時処理の一例を示すフローチャート。
【
図11】第2の実施形態に係る燃料電池システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図12】第2の実施形態に係る改質器の構造の一例を示す断面図。
【
図13】第2の実施形態に係る燃料ガス生成部の構成の一例を示すブロック図。
【
図14】第3の実施形態に係る燃料電池システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図15】適用例1の燃料電池車の構成の一例を示すブロック図。
【
図16】適用例1の燃料電池車の各部の状態の一例を示すグラフ。
【
図17】適用例1における定常運転の状態の後の処理の一例を示すフローチャート。
【
図18】適用例2の燃料電池車の構成の一例を示すブロック図。
【
図19】適用例2の燃料電池車の各部の状態の一例を示すグラフ。
【
図20】適用例2における定常運転の状態の後の処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<各実施形態共通:概要>
第1の実施形態に係る燃料電池システムは、燃料電池スタック(燃料電池部の一例)が燃料電池セルの電解膜が溶融しないで安定して動作できる温度の上限(例えば200℃)以下の範囲で動作する。第1の実施形態では、燃料電池スタック内で熱せられた高温の排出ガスにより、加圧された空気と、改質器を加熱する。加圧された空気は、燃料電池スタック内の温度付近(例えば150℃~200℃)まで加熱され、改質器も改質反応温度範囲(例えば150℃以上)に保たれる。改質器により生成された水素を含むガスと、加熱された圧縮空気は、冷却されることなく燃料電池スタックに送られ、燃料電池システムは、燃料電池スタック内部で化学反応により発電を行う。燃料電池スタックは熱せられて供給された高温のガスの熱と、発電による発熱と、ガス排出による放熱とで、燃料電池スタックが燃料電池セルの電解膜が溶融しないで安定して動作できる温度の上限(例えば200℃)以下の温度に安定する。すなわち、燃料電池システム全体として熱循環が保たれ、外部から熱エネルギーを加えることなく改質器が改質反応温度範囲に保たれる。各実施形態において数値は例示であり、適宜変更可能である。
【0015】
<第1の実施形態:構成>
図1は、第1の実施形態に係る燃料電池システム1の構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
第1の実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池スタック11と、改質器12と、燃料ガス生成(供給)部13と、熱交換器14と、を備える。
【0017】
燃料電池システム1の外部には、燃料タンク2と、燃料ポンプ3と、燃料供給弁4と、クリーナー5と、加圧コンプレッサー6が備えられる。
【0018】
<全実施形態共通:外部構成の作用>
燃料タンク2には、例えばメタノール又はメタンなどのような燃料が格納される。燃料がメタノールの場合、水と混合した燃料が燃料タンク2に貯蔵されてもよい。燃料ポンプ3により、燃料タンク2から燃料(液体又は気体を含む)が吸い出され、燃料調整弁4により燃料の供給量が調節され、燃料が燃料電池システム1に供給される。燃料調整弁4は、出力指示を受けて出力を上げる場合には、燃料供給量を増やし、出力を下げる場合には、燃料供給量を減らすように燃料供給量を調節する。
【0019】
燃料電池システム1には、燃料に加えて、空気、より具体的には、発電時の化学反応に使用する酸素(O2)が供給される。クリーナー5は、吸気した空気に含まれる塵などの不純物を取り除く。加圧コンプレッサー6は、クリーナー5から供給された空気を加圧して燃料電池システム1に供給する。
【0020】
<第1の実施形態:構成 燃料電池スタック11>
燃料電池スタック11は、水素と酸素を反応させて発電を行う。より具体的に説明すると、第1の実施形態において、燃料電池スタック11は、熱交換器14によって加熱された空気と、改質器12から供給された水素を含むガスとに基づいて、発電を行う。燃料電池スタック11は、改質器12での改質反応温度よりも高い温度で動作し、発電によって加熱されたガスを、少なくとも改質器12に供給する。さらに具体的に説明すると、燃料電池スタック11は、プロトン電解質膜を備え、熱交換器14で加熱された空気と、改質器12で改質された水素を含むガスに基づいて化学反応により発電を行い、加熱された排ガスを、少なくとも改質器12に供給する。燃料電池スタックは、例えば、固体高分子型としてもよい。
【0021】
燃料電池スタック11には、改質器12から水素を含み熱せられた高温のガスと、熱交換器14により燃料電池スタック11内部と同レベルの温度に加熱された加圧空気と、が供給され、後述する内部に備えた複数の燃料電池セルが水素(H
2)と酸素(O
2)とを化学反応させて発電を行う。反応を終えたガスは、
図1の破線で示すように、燃料電池スタック11外の例えば改質器12及び熱交換器14に排出される。燃料電池スタック11内部は高温のため、燃料電池スタック11内でガスの温度は上昇し、例えば改質器12及び熱交換器14に排出される排ガスは高温である。
【0022】
この時、燃料電池スタック11は、供給されるガスの温度(例えば150℃~200℃)による熱供給と、発電による発熱と、反応後の排ガスの排出による放熱により、燃料電池スタック11の上限温度(例えば200℃)以下に収まるように制御される。
【0023】
なお、燃料電池は、高温になるほど発電効率が高い。従って、電解質膜の溶融しない温度(例えば200℃)以下の範囲で、なるべく高い温度で運転することが望ましい。電解質膜は、例えば、プロトン電解質膜としてもよい。プロトン電解質膜は、例えば、無加湿又は低加湿な条件でプロトンの伝導が可能である。
【0024】
図2は、第1の実施形態に係る燃料電池スタック11内部の構成の一例を示す斜視図である。
【0025】
燃料電池スタック11は、筐体内部に、積層された複数のセル111-1~111-nを備える。セル111-1~111-nのそれぞれは同様の構成を有するとしてもよい。以下の説明において、セル111-1~111-nを区別することなく説明する場合、セル111と記す場合がある。セル111では、硬質のフレーム114に燃料電池112が備えられる。セル111にはアノード側の水素ガス吸入口113aと、カソード側の空気吸入口113cが備えられる。
【0026】
<第1の実施形態:燃料電池スタック11 セパレータ>
図3は、第1の実施形態に係る燃料電池112の構造の一例を示す断面図である。
【0027】
セル111の最外部には、セパレータ1121a及び1121cと呼ばれる金属板があり、内部を他の燃料電池112と隔離している。セパレータ1121a及び1121cには、多数の溝が形成され、水素(H2)及び酸素(O2)の通り道になっている。また、セパレータ1121a及び1121cは、導電性であり、発電された電力は、セパレータ1121a及び1121cを流れてセル111の外部に出力される。以下の説明において、セパレータ1121aと1121cとを区別することなく説明する場合、セパレータ1121と記す場合がある。
【0028】
<第1の実施形態:燃料電池スタック11 燃料極/空気極>
セパレータ1121a及び1121cの内側には、燃料極1122aと、空気極(酸素極)1122cが備えられる。燃料極1122aは、セパレータ1121aの溝1124aを通じて供給された水素(H2)を含むガスを均一化する。均一化されたガスは、燃料極内部1122aの触媒により電気分解され、電子(e-)と水素イオン(H+)に分離される。水素イオン(H+)は、電解質膜を透過し、空気極1122c側に移動する。
【0029】
空気極1122cは、セパレータ1121cの溝1124cを通じて供給された加圧空気を均一化する。均一化された空気においては、空気極1122c内部の触媒により空気に含まれる酸素(O2)と水素イオン(H+)が電子(e-)を取得し、水(H2O)に変化する。この反応により燃料極1122aから空気極1122cに電子(e-)が流れることで電力が発生する。なお、この反応により生成された水(H2O)は、燃料電池スタック11内が100℃を超える高温の為、水蒸気として排ガスとともに燃料電池スタック11外に排出される。
【0030】
<第1の実施形態:燃料電池スタック11 電解質膜>
電解質膜1123は、水素イオン(H+)を透過する固体の膜であり、第1の実施形態では例えば200℃で溶融しない材質により形成される。
【0031】
電解質膜1123は、例えば、ポリイミド多孔質膜である。電解質膜1123は、例えば、ポリイミドフィルムに多数の小孔を形成し、リン酸イオンを含侵させて形成される。電解質膜1123は、溶融しないで安定して動作できる温度の上限を有する。第1の実施形態において、電解質膜1123は、熱分解温度が高く、例えば200℃でも機能するものとする。
【0032】
電解質膜1123は、上記に限定されるものではなく、例えば200℃で無加湿又は低加湿の状態において水素イオンを伝導できればよい。
【0033】
具体的には、電解質膜1123として、例えば、非フッ素系プロトン導電性高分子膜であるポリフェニレンが用いられてもよい。
【0034】
溶融温度は、ポリフェニレンが500℃以上である。なお、電解質膜1123の材質として新たに高性能な素材が開発された場合は、適宜新素材が用いられてもよい。
【0035】
図4は、第1の実施形態に係る燃料電池スタック11の一例を示す断面図である。
【0036】
セル111が複数重ねられることで、セパレータ1121を介して、燃料電池112が直列接続される。その直列接続の両端にアノード側集電板117aとカソード側集電板117cが備えられ、筐体内に収められる。集電板117a及び117cは、セパレータ1121を介して流れる電子を集電する。集められた電子が、アノード側電極118aから外部に出力され外部電気負荷を経由してカソード側電極118cから燃料電池スタック11内部に戻ってくることで電流が流れる。
【0037】
アノード側吸気管115a及びカソード側吸気管115cは、それぞれ、水素ガス及び加圧空気を、各セル111の燃料電池に供給する。
【0038】
アノード排気管116a及びカソード側排気管116cは、吸気管115の反対側に設置され、各セル111の燃料電池から排出される排ガスを燃料電池スタック11外に排出する。
【0039】
図4の例では、アノード側吸気管115aから供給された水素は、セル111内を上から下に流れて、アノード側排気管116aを経由して燃料電池スタック11外部に排出される。
【0040】
カソード吸気管116cから供給された加圧空気は、セル111内を下から上に流れ、カソード排気管117cを経由して燃料電池スタック11外に排出される。
【0041】
冷却路119は、セパレータ1121の外側に形成された溝が組み合わさり、空間を形成している。この空間は、燃料電池スタック11外部と通じており、燃料電池スタック11の温度が運転温度の上限(例えば200℃)を超えて上昇した場合は、空気を通すことで冷却することができる。また、燃料電池スタック11が常時高出力で利用される場合は、冷却路119に冷媒を通して燃料電池スタック11が冷却されてもよい。
【0042】
<第1の実施形態:構成 改質器12>
改質器12は、メタノール又はメタンを改質し水素を発生する。
【0043】
改質は、水蒸気改質を主とするが、部分燃焼改質を併用してもよい。
【0044】
メタノール又はメタンは、エタノール、又は、その他の炭化水素系燃料と比較して低い温度(約150℃)で改質反応を示す。
【0045】
このため、第1の実施形態の燃料電池システム1では、メタノールと水蒸気を混ぜた(例えば1:1で混合)気体を燃料ガスとして用いる場合を例として説明するが、燃料ガスは、これに限定するものではない。
【0046】
燃料ガスとしては、例えば、メタンを用いてもよい。燃料ガスとしてメタンを用いる場合には、燃料ガス生成部13でメタンを水蒸気と混合することが必要になる。
【0047】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池システム1の改質器12は、改質温度(例えば、150℃)以上に保つように運転する。
【0048】
以下にメタノールの改質反応の化学式を示す。
【0049】
【0050】
化1は、水蒸気改質反応を示す化学式である。エタノール(CH3OH)が水と反応することで、水素(H2)と、二酸化炭素(CO2)を生じる。この時の化学反応により熱(57.7KJ/mol)が吸収される。
【0051】
【0052】
化2は、部分燃焼改質反応を示す化学式である。エタノール(CH3OH)が酸化反応することで、水素(H2)と、二酸化炭素(CO2)を生じる。この時の化学反応により熱(185.9KJ/mol)が発生する。
【0053】
図5は、第1の実施形態に係る改質器12の外形の一例を示す斜視図である。
【0054】
図6は、第1の実施形態に係る改質器12の構造の一例を示す断面図である。
【0055】
図5及び
図6で示す例では、改質器12は、通気孔121と、スリッド122と、プレートフィン123と、改質触媒124と、を備えている。
【0056】
通気孔121は、
図5及び
図6の例では上面から底面に貫通し、熱せられた高温の排ガスが通過する。プレートフィン123は、スリッド122の側面を構成し、熱伝導性の高い素材である。内部には通気孔があり、高温の排ガスが通ることで熱が伝達され高温に加熱される。プレートフィン123の表面には改質触媒124が塗布されている。改質触媒124は、例えば、銅を含む素材である。そして、燃料ガスが供給されると、改質反応温度まで上昇した改質触媒124のスリッドを燃料ガスが通過する際に改質反応が起こり、燃料ガスが水素と二酸化炭素に改質された改質ガスとして排出される。
【0057】
なお、
図5及び
図6の例では、スリッド122や通気孔121は簡易化して示したが、凹凸又は湾曲等を形成して表面積を増やし、温度伝導及び改質の効率を向上させてもよい。
【0058】
また、
図5及び
図6の例では、高熱の排ガスの流路と、燃料ガスの流路が公差する構造を示したが、並行して流入するように構成してもよい。
【0059】
また、排ガスの加熱に加えて、プレートフィン123内に電気的に加熱可能な電熱線を備えて改質器12を発熱してもよい。
【0060】
以上述べたように、第1の実施形態に係る燃料電池システム1では、改善が水蒸気改質を主体とするため、熱吸収が起こる。熱吸収は改質器12の温度を低下する方向に作用する。しかしながら、第1の実施形態に係る燃料電池システム1では、燃料電池スタック11から改質器12へ供給された高温の排ガスにより改質器12が加熱され、改質反応温度(例えば150℃)以上が維持される。また、改質器12から燃料電池スタック11に供給される水素を含む改質ガスは、冷却されることなく燃料電池スタック11に供給される。
【0061】
なお、排ガスによる熱供給が低下し、改質器12の温度が低下した場合は、一時的に、部分燃焼改質反応を行って温度が上昇するように制御してもよい。この場合、燃料ガス生成部13は、燃料ガスに空気を混合して改質器12に供給してもよい。
【0062】
第1の実施形態に係る燃料電池システム1の始動時(改質器12の温度が改質反応温度以下の状態から運転を開始する場合)は、改質器12を改質可能な温度まで加熱させてもよい。この場合、燃料ガス生成部13から改質器12に供給される燃料ガスを改質器12内で燃焼させて改質器12を加熱してもよいし、バーナー等で燃料を燃焼して改質器12外部を加熱してもよい。燃料ガスを改質器12内で燃焼させる場合、燃料ガス生成部13は、始動時に燃料ガスに空気を混合して改質器12に供給してもよい。
【0063】
<第1の実施形態:構成 燃料ガス生成部13>
燃料ガス生成部13は、供給される燃料を気体化し、改質反応温度(例えば150℃)付近まで上昇した燃料ガスを改質器12に供給する。燃料が例えばメタノールと水を混合した液体燃料の場合、燃料ガス生成部13は、燃料を一旦蒸発させ気化した後に、改質反応温度まで上昇させる。
【0064】
燃料ガス生成部13は、例えばメタンを燃料として使用する場合、燃料を気化することなく、水蒸気と混合して混合ガスを改質反応温度まで上昇させてもよい。
【0065】
図7は、第1の実施形態に係る燃料ガス生成部13の構成の一例を示すブロック図である。
【0066】
燃料ガス生成部13は、インジェクタ131と、加熱フィン132と、加熱部133とで構成される。
【0067】
インジェクタ131は、液体燃料として供給されたメタノールを、加熱フィン132内の空間に噴霧する。加熱フィン132は、加熱部133により熱せられているので、内部に噴霧された霧状の燃料が気化し、改質温度付近まで燃料の温度を上昇させる。改質温度付近まで加熱された燃料の気体は、燃料ガスとして改質器12に供給される。
【0068】
<第1の実施形態:構成 熱交換器14>
熱交換器14は、燃料電池スタック11からの排ガスの熱を伝熱し、吸入した加圧空気を加熱する。
【0069】
図8は、第1の実施形態に係る熱交換器14の外形の一例を示す斜視図である。
【0070】
熱交換器14は、通気孔141と、フィン142とを備える。
【0071】
燃料電池スタック11から熱交換器14に供給された高温の排ガスがフィン142の隙間を通り抜ける際にフィン142を加熱する。
【0072】
加圧コンプレッサー6から熱交換器14に供給された加圧空気は、通気孔141を通り抜ける際に、加熱されたフィン142から熱を吸熱し、高温になり排出される。
【0073】
なお、熱交換器14は、上記形態に限定されるものではなく、様々な様態が考えられる。
熱交換器14は、燃料電池スタック11から熱交換器14に供給された排ガスの熱で、熱交換器14が加圧コンプレッサー6から吸入した加圧空気を加熱できる構成であればよい。
【0074】
<第1の実施形態:各部のレイアウト>
第1の実施形態に係る燃料電池システム1は、燃料電池スタック11からの排熱を各部の加熱に利用するため、各部のレイアウトが重要になる。
【0075】
図9は、第1の実施形態に係る燃料電池システム1の各部のレイアウトの一例を示すレイアウト図である。
【0076】
<第1の実施形態:各部のレイアウト 各部の説明>
図9中の破線は、加圧空気の流れを示し、点線は燃料ガスの流れを示している。
【0077】
配管15a~15fは、加圧空気又は改質ガスの流路である。配管15aは吸入した加圧空気を燃料電池スタック11まで運ぶ。配管15bは、改質器12で改質された改質ガスを燃料電池スタック11まで運ぶ。配管15cは、燃料電池スタック11からの排ガスを改質器12及び熱交換器14に運ぶ。なお、排ガスにおける水素及び酸素は化学反応により水蒸気になる。配管15dは、熱交換器14から排出された排ガスを燃料ガス生成部13に運ぶ。配管15eは、改質器12から排出された排ガスを燃料ガス生成部13に運ぶ。このように、排ガスを燃料ガス生成部13に供給し、燃料ガス生成部13において排ガスの熱を燃料ガスの生成に必要な熱として利用してもよい。配管15fは、排ガスを燃料電池システム1外部に排出する。
【0078】
<第1の実施形態:各部のレイアウト 排ガスの作用>
排ガスは、燃料電池スタック11内で、発電時の化学反応による発熱により加熱された極(燃料極1122a及び空気極1122c)から熱を吸収し、高温の状態で燃料電池スタック11外部に排出され、配管15cを通って改質器12及び熱交換器14に運ばれる。改質器12では、排ガスの熱により、改質器12内部の改質触媒124が加熱される。熱交換器14では、排ガスの熱が、熱交換器14の作用により、配管15a内を流れる加圧空気に伝熱され、加圧空気の温度が排ガスの温度付近まで上昇する。改質器12及び熱交換器14から排出された排ガスは、燃料ガス生成部13に供給され、残りの熱で燃料及び燃料ガスを加熱してもよい。そして、大半の熱を放出した排ガスは、配管15fから燃料電池システム1外部に排出される。
【0079】
以上説明したように、第1の実施形態においては、各配管15を可能な限り短くなるように、各部を近くにレイアウトし、配管15からの放熱を少なくし、排熱で効率的に各部を加熱する。
【0080】
第1の実施形態において、加圧空気及び改質器12の改質触媒124は、改質反応温度まで加熱できることが望ましく、燃料ガス生成部131を加熱する場合は、燃料ガスを改質反応温度まで、液体燃料を沸点付近まで加熱できることが望ましい。このように、各部での加熱温度は異なるため、燃料電池システム1においては加熱温度が高い順に排ガスを通して加熱することが望ましい。
【0081】
<第1の実施形態:処理の流れ>
次に燃料電池システム1の運転に係る処理の流れについて説明する。
【0082】
以降説明する運転処理は、例えばマイコンなどのプロセッサ又はコントローラにより実行されるプログラムにより実現されてもよい。運転処理は、各部を制御する制御部により燃料電池システム1内部で実行されてもよい。運転処理は、外部から燃料電池システム1内の各部を制御することにより実行されてもよい。
【0083】
図10は、第1の実施形態に係る燃料電池システム1を運転する際の処理の一例を示すフローチャートである。
【0084】
先ず、燃料電池システム1の運転を開始すると、改質器12で水素を発生できるように改質器12の温度が改質反応温度(例えば150℃以上)まで上昇される(S1)。次に、改質器12内部の改質触媒124が改質反応温度に達したか否かが確認され(S2)、改質反応温度に達していない場合は、改質器加熱S1に戻って加熱が継続される。
【0085】
改質器12が改質反応温度に達した場合は、燃料電池スタック11による発電が開始される(S3)。この時、燃料電池システム1全体を動作させて、燃料ガス生成部13から改質器12に燃料ガスが供給され、改質器12で燃料ガスが改質され、改質ガスが改質器12から燃料電池スタック11に供給される。並行して、加圧空気が燃料電池スタック11に供給される。燃料電池スタック11は、改質ガスに含まれる水素と、加圧空気に含まれる酸素が化学反応し発電を行う。また、燃料電池スタック11は、発電の際に熱を発生するので燃料電池スタック11の温度は徐々に上昇する。
【0086】
次に、燃料電池スタック11の温度が確認され、燃料電池スタック11の温度が改質反応温度を超えたか否か判定される(S4)。燃料電池スタック11の温度が改質反応温度を超えていない場合は、再度燃料電池スタック11の温度が確認され、改質反応温度を超えるまで待ち状態となる。燃料電池スタック11の温度が改質反応温度を超えた場合は、燃料電池システム1は次の処理に移行する。
【0087】
次に、改質器12の加熱が停止される(S5)。燃料電池スタック11の温度が改質反応温度を超えた場合は、燃料電池スタック11からの排ガスの熱で、改質器12が加熱され、改質温度が維持され、燃料電池システム1は定常運転に移行する。定常運転とは、燃料電池システム1で改質器12の加熱を行わず、燃料電池システム1内での熱循環(例えば、燃料電池スタック11の発熱によって加熱されたガスを、改質器12に供給する熱循環)が保たれた状態で発電を行う運転状態を示している。この時、燃料電池システム1の発電を高効率にすることができる。
【0088】
定常運転中は、改質器12の温度が改質反応温度以下に低下していないか確認される(S6)。発電出力に変動があり発電量が低下すると、排ガスの供給も低下する。このため、改質器12の温度が維持できなくなる可能性があるので、定期的に改質器12の温度が監視される。改質器12の温度が改質器12の改質反応温度の下限付近まで低下した場合は、改質器12が再度加熱される(S7)。改質器12の温度が低下していない場合は、改質器再加熱S7は実行しない。
【0089】
次に、発電を終了するかが判定され(S8)、終了する場合は、燃料供給が停止され、燃料電池システム1の発電が停止される(S9)。発電を終了しない場合は、改質器温度低下判定S6に戻って処理が繰り返される。
【0090】
以上説明したように、第1の実施形態に係る燃料電池システム1においては、改質器12の温度が改質反応温度を維持するように制御され、燃料電池システム1の運転が行われる。
【0091】
なお、処理の流れの各所で判定に使用した改質反応温度に関して、例えばおおむね150℃を改質反応を開始する温度としてもよい。改質反応温度が高くなるほど改質効率は高まる。従って、各判定は共通の値を用いる必要はなく、改質反応温度は例えば150℃以上で適切な温度を設定可能である。
【0092】
<第1の実施形態:効果>
以上説明したように、第1の実施形態に係る燃料電池システム1によれば、燃料電池スタック11を改質器12よりも高い温度で運転し、改質器12及び加圧空気を加熱するためのエネルギーに燃料電池スタック11の排熱を利用することで、高効率な発電が実現される。さらに、燃料電池スタック11に、改質ガスを供給する際に冷却する必要がないため、燃料電池システム1は簡易な構成で実現できるため、システムのコストを低減することができる。さらに、第1の実施形態に係る燃料電池システム1においては、一般的な固体高分子形燃料電池よりも高温で燃料電池スタック11が運転されるため、発電効率が向上する。
【0093】
<第2の実施形態:概要>
第2の実施形態に係る燃料電池システムは、上記第1の実施形態に係る燃料電池システム1の特徴に加えて、排ガスの熱を燃料ガス生成部13にも供給する特徴を有する。
【0094】
また、第2の実施形態に係る燃料電池システムは、改質器12内部にも発熱機構を備え、始動時及び改質器12の温度低下時に外部から改質器12に電力供給することで改質器12を加熱可能な構成を有する。
【0095】
<第2の実施形態:構成>
図11は、第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0096】
第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aの構成は、第1の実施形態と類似である。第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aは、燃料電池スタック11からの排ガスが、燃料ガス生成部13Aに供給されていることと、改質器12Aに対して外部から電力を供給できる構成を有する点が、第1の実施形態に係る燃料電池システム1と異なる。燃料電池システム1Aは、例えばモーターシステムによって発生された電力に基づいて、改質器12Aを加熱する加熱部(電熱線)を備える。
【0097】
以降各部を説明するが、第1の実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0098】
<第2の実施形態:構成 改質器12A>
図12は、第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aの改質器12Aの構造の一例を示す断面図である。改質器12Aにおいては、プレートフィン123内部に電熱線125が組み込まれている。
【0099】
外部電源から電熱線125に電流が流れると、電熱線125が発熱しプレートフィン123が加熱され、さらに改質触媒124が加熱される。
【0100】
燃料電池システム1Aの始動時又は改質器12Aの温度が低下した場合に電熱線125により加熱が行われ、改質触媒124が改質反応温度に維持される。
【0101】
<第2の実施形態:構成 燃料ガス生成部13A>
図13は、第2の実施形態に係る燃料ガス生成部13Aの構成の一例を示すブロック図である。
【0102】
第2の実施形態に係る燃料ガス生成部13Aは、第1の実施形態に係る燃料ガス生成部13の構成に加えて、熱交換器134と、熱交換器135を備える。
【0103】
熱交換器134は、液体燃料であるメタノールを排ガスの熱で加熱する。
【0104】
この時、メタノールの沸点(例えば64.7℃)よりも多少低い温度(例えば50℃~60℃の範囲)まで加熱する。
【0105】
熱交換器135は、加熱管内に噴霧されたメタノールの温度を、排ガスの熱で、改質反応温度付近(例えば130℃~150℃の範囲)まで上昇させる。
【0106】
<第2の実施形態:効果>
以上述べたように、第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aは、燃料ガス生成部13Aで必要な熱も燃料電池スタック11からの排ガスの熱を利用することができるため、第1の実施形態と比較して、さらに発電効率を高めることができる。また、第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aは、発電電力の出力が安定して一定の範囲に収まっている場合、熱循環が良好に行われ、外部エネルギーを使用して加熱する必要はない。出力変動が大きいシステムでは、一時的に出力が低下すると、熱循環が崩れる場合が考えられる。第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aにおいては、このように出力変動が大きい場合であっても外部のバッテリー(蓄電部)などからの電力供給を受け改質器12Aを直接加熱することができ、改質器12Aの温度制御を適切に行うことができる。これにより、第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aにおいては、出力変動が大きくても安定した運転が可能になる。
【0107】
<第3の実施形態:概要>
第3の実施形態に係る燃料電池システムは、燃料電池スタック11からの排ガスが通る配管にヒーターを備え、燃料電池スタック11の出力が低下して排ガスの温度が低下した場合には、ヒーターによる加熱を行い、燃料電池スタック11からの排ガスの温度を一定以上に保つことで、燃料電池システムでの熱循環を維持する。また、燃料電池スタック11からの伝導熱で燃料タンク2内の燃料を温める。
【0108】
<第3の実施形態:構成>
図14は、第3の実施形態に係る燃料電池システム1Bの構成の一例を示すブロック図である。
図14は、第2の実施形態に係る燃料電池システム1Aの構成に加えて、ヒーター16と、熱伝導体17とを備える。
【0109】
<第3の実施形態:構成 ヒーター16>
ヒーター16は、燃料電池スタック11からの排ガスを吸気及び加熱し、加熱した排ガスを熱交換器14、改質器12A、及び、燃料ガス生成部13Aのうちの少なくとも一つに供給する。
【0110】
ヒーター16での加熱は、燃料電池システム1B外部から電力供給を受けて、電熱線などで電力により行われてもよいし、燃料タンク2に貯蔵された燃料を燃焼して行われてもよい。ヒーター16は、常に排ガスを加熱する必要はなく排出する排ガスの熱量が所定の熱量を下回った場合に、不足分の熱量を供給するように排ガスを加熱してもよい。
【0111】
ヒーター16による加熱の熱量は、吸気した排ガスの温度と排ガスの流量から判断されてもよい。また、所定の熱量は、燃料電池システム1Bでの熱循環が良好に行われるために必要な熱量の設計値から決められてもよい。
【0112】
<第3の実施形態:構成 熱伝導体17>
熱伝導体17は、燃料電池スタック11と燃料を貯蔵する燃料タンク2との間に備えられ、燃料電池スタック11の熱を燃料タンク22に伝える。より具体的には、熱伝導体17は、熱伝導率の高い物質で構成され、燃料電池スタック11の筐体表面に接触し、燃料電池スタック11の熱を燃料タンク2に伝導し、燃料タンク2に格納された燃料を加熱する。燃料電池スタック11は、高出力状態が続くと、発熱量が多くなり排ガスによる熱排出だけでは燃料電池スタック11の上限温度を超えることも考えられる。こうした場合に、熱伝導体17により燃料電池スタック11からの放熱を行い、燃料電池スタック11の温度を下げる。
【0113】
<第3の実施形態:効果>
以上述べたように、第3の実施形態に係る燃料電池システム1Bは、第2の実施形態と同様に、第3の実施形態に係る燃料電池システム1Bが負荷変動の大きいシステムであり出力が低下しても、ヒーター16で燃料電池スタック11からの排ガスを加熱することで良好な熱循環を維持することができる。また、高負荷時に燃料電池スタック11の温度が上昇しても燃料電池スタック11の熱が熱伝導体17により放熱されるので出力上限を拡大することができる。また、燃料タンク2内の燃料が加熱され発電効率をさらに高くすることができる。
【0114】
<適用例1:概要>
適用例1は、第2の実施形態に係る燃料電池システム1A又は第3の実施形態に係る燃料電池システム1Bを、移動体の一例である燃料電池車Vaに適用したものである。自動車のため加速、減速、一時停止など動力源であるモーターの出力変動は大きい。従って、適用例1では、減速時にモーターが発電し、その発電電力で改質器12Aを加熱することで、減速に伴い発電が停止した場合に起こる改質器12Aの温度低下を補って発電再開時の応答性を高めている。
【0115】
<適用例1:構成>
図15は、適用例1の燃料電池車Vaの構成の一例を示すブロック図であり、燃料電池システムV1と、空気供給部V2と、燃料供給部V3と、駆動指示部V4と、モーターV5とを備えている。
【0116】
<適用例1:構成 燃料電池システムV1>
燃料電池システムV1は、第2の実施形態に係る燃料電池システム1A又は第3の実施形態に係る燃料電池システム1Bに相当する。
【0117】
<適用例1:構成 空気供給部V2>
空気供給部V2は、クリーナー5と、加圧コンプレッサー6とを備えて一体とした構成を有する。空気供給部V2の各部の機能は、第1の実施形態で説明したので省略する。
【0118】
<適用例1:構成 燃料供給部V3>
燃料供給部V3は、燃料タンク2と、燃料ポンプ3と、燃料調整弁4とを備えて一体とした構成を有する。燃料供給部V3の各部の機能は、第1の実施形態で説明したので省略する。
【0119】
<適用例1:構成 駆動指示部V4>
駆動指示部V4は、燃料電池車Vaの運転者の運転操作を燃料電池システムV1及びモーターV5に駆動出力として指示する。駆動指示部V4は、例えば図示しないブレーキシステム等にも駆動指示を行うが、適用例1では説明を省略する。
【0120】
駆動指示部V4は、運転者の図示しないアクセルペダルの踏み込みにより、出力の上昇を指示したり、緩めることによる出力の低下を指示したりする。出力の上昇が指示された場合には、燃料電池システムV1は発電量を増加し、モーターV5は駆動出力を上昇する。出力の低下が指示された場合には、燃料電池システムV1は発電量を低下し、モーターV5は駆動出力を低下する。
【0121】
<適用例1:構成 モーターV5>
モーターは、燃料電池システムV1からの電力を動力に変換する第1の動作と、動力を電力に変換する第2の動作との両方が可能である。より具体的に説明すると、モーターV5は、電力を回転動力に変換する。また、モーターV5は、外部からの回転動力により発電するジェネレータとしても機能する。モーターV5は、燃料電池車Vaの動力源であり、モーターV5の回転動力が車輪に伝動されることで燃料電池車Vaは移動する。また、減速時にモーターV5は制動力を生じ発電する。この時の制動力を回生ブレーキと呼び、発電される電力は回生電力と呼ぶ。モーターV5は、モーターシステムと言い換えてもよい。
【0122】
<適用例1:構成 作用>
図16を用いて本適用例の作用を説明する。
【0123】
図16は、適用例1の燃料電池車Vaの各部の状態の一例を示すグラフである。
図16のグラフは、適用例1における車体速度と、モーター出力と、燃料電池システム発電量と、改質器温度との関係を示す。
【0124】
横軸は時間で各グラフ共通の時間軸で示している。横軸は左側を起点とし、右に進むに従って時間が経過する。起点において、燃料電池システムV1は定常運転中である。
【0125】
モーター出力は、正側と負側の領域がある。モーターV5は、正側では駆動状態で動作しており、負側では制動状態で回生ブレーキが動作している。改質器12Aの温度のグラフに示す破線は、改質反応温度の範囲を示しており、下の破線が改質反応温度下限値で、上の破線が改質反応温度上限値である。改質器温度グラフの実線は適用例1が作用した場合の温度推移であり、点線は適用例1が作用しなかった場合の温度推移である。
【0126】
<適用例1:作用 期間t1>
車体が一定速度で定速運行している期間t1では、モーターV5の出力が一定で、燃料電池システムV1の発電量も一定値で安定している。従って、改質器12Aの温度も安定している。
【0127】
<適用例1:作用 期間t2>
車体が減速している期間t2では、モーターV5は回生ブレーキにより発電している。一方、モーターV5は電力を消費しないため、燃料電池システムV1は発電を停止する。改質器を加熱しないシステムにおいては、システム内での熱循環が停止するため、改質器の温度は、点線で示すように徐々に低下していく。しかしながら、適用例1の燃料電池システムV1においては、モーターV5の回生ブレーキによる発電電力を改質器12Aに供給し、改質器12Aが温められることで、期間t2において実線で示すように改質器12Aの温度が維持される。
【0128】
<適用例1:作用 期間t3>
車体が一時停止している期間t3では、モーターV5と燃料電池システムV1双方とも停止している。従って改質器12Aの温度も徐々に低下していく。改質器を加熱しないシステムのケースでは、改質器温度が改質反応温度を下回るので、発電を再開する前に事前に改質器温度を改質反応温度範囲まで上昇させる加熱動作をする必要がある。しかし、実線で示す改質器12Aの温度は、期間t3において改質反応温度範囲内であり、発電を再開する前に事前に改質器温度を改質反応温度範囲外から改質反応温度範囲内まで加熱する動作を行うことなく再始動できる。
【0129】
<適用例1:作用 期間t4>
車体が加速している期間t4では、加速するためにモーターV5は高出力で駆動する。それに伴い燃料電池システムV1も高い発電量で運転される。従って、改質器12Aの温度は徐々に上昇していく。
【0130】
<適用例1:作用 まとめ>
以上述べたように、適用例1においては、減速時にモーターV5で発電される回生電力で改質器12Aが加熱されることにより、燃料電池システムV1が停止中でも改質器12Aの温度を維持することができる。このため、短い期間の停止であれば、改質反応温度範囲外から改質反応温度範囲内まで改質器を加熱してから発電を開始する必要がない。これにより、改質反応温度範囲外から改質反応温度範囲内まで加熱するためのエネルギー供給を不要とすると共に、再発進の応答性が高くなる。このように適用例1では、燃料電池システムV1を始動から行う頻度を低減することができ、発電効率の向上及び電力供給の応答性を高めることができる。
【0131】
<適用例1:処理の流れ>
図17は、適用例1の燃料電池システムV1における定常運転の状態から後の処理の一例を示すフローチャートである。
【0132】
適用例1の燃料電池システムV1の始動は、第1の実施形態で説明した
図10のフローチャートの運転開始の処理のS1~S5にそって実行される。
図10のフローチャートの処理のS5の改質器加熱停止以降は、定常運転の状態である。
【0133】
図17のフローチャートに示す定常運転の状態の後の処理では、先ず運転を終了するかが判定され(S101)、終了する場合は、発電が停止され(S103)、運転が終了される。運転を終了しない場合は、駆動指示部V4から指示される駆動指示に基づいてモーターV5の出力が取得される(S102)。
【0134】
次に、モーターV5が回生ブレーキ中か否かが判定される(S104)。回生ブレーキ中の場合は、燃料電池システムV1の発電が停止される(S105)。次に、モーターV5からの回生電力で、改質器12Aが加熱される(S106)。回生ブレーキ中でない場合は、発電停止S105及び改質器12Aの加熱S106は行われない。
【0135】
次に、モーターV5が停止中か否かが判定され(S107)、モーターV5が停止中の場合は、燃料電池システムV1が発電中か否かが判定される(S108)。燃料電池システムV1が発電している場合には、発電が停止される(S110)。燃料電池システムV1が発電していない場合は、発電停止S110は行われない。モーターV5が停止中でない場合は、取得したモーター出力に応じた発電出力が設定され、発電が継続される(S109)。発電出力設定S109を終えたら最初のS101に戻り運転終了判定S101が再度行われる。
【0136】
次に、モーターV5を始動するか否かが判定され(S111)、モーターV5を始動する場合は、改質器12の温度が改質反応下限温度よりも高いか否かが判定される(S112)。改質器12の温度が改質反応下限温度よりも高い場合(S112で「Y」を選択)には、モーターV5の出力に応じた発電出力が設定され(S113)、燃料電池システムV1は、発電を開始する(S114)。改質器12の温度が改質反応下限温度を下回っている場合(S112で「N」を選択)には、
図10で示す運転開始の処理に移行する。
【0137】
モーターV5を始動しない場合(S111で「N」を選択)、又は、発電開始S114を実行した場合は、最初のS101に戻り運転終了判定S101が再度行われる。
【0138】
<適用例1:効果>
以上述べたように、適用例1の処理によれば、回生ブレーキ中は改質器12Aが加熱され、燃料電池スタック11による発電が停止しても短時間であれば燃料電池システムV1の始動から行うことなく、迅速に燃料電池システムV1を発電状態に復帰できる。これにより、適用例1の燃料電池システムV1では、燃料電池スタック11から改質器12Aに供給される高温の排ガスにより改質器12Aを加熱するため、エネルギーを使用する頻度を低減することができ、発電効率を向上させることができる。また、燃料電池システムV1の始動を行う頻度が低減するため、電力供給の応答性が向上する。
【0139】
<適用例2:概要>
適用例2では、第1乃至第3の実施形態に係る燃料電池システム1,1A,1Bのうちいずれかの燃料電池システムを燃料電池車Vbに適用する。燃料電池車Vbは、自動車であるため、加速、減速、一時停止など駆動機構であるモーターの出力変動は大きいが、バッテリーを搭載して燃料電池システムの変動が小さくなるように制御を行う。適用例2における燃料電池システムでは、燃料電池スタック11から他の構成要素への熱循環が安定する。
【0140】
<適用例2:構成>
図18は、適用例2の燃料電池車Vbの構成の一例を示すブロック図である。
【0141】
適用例2の燃料電池車Vbは、適用例1の燃料電池車Vaの構成に加えてバッテリーV6を備える。燃料電池車Vbの燃料電池システムV1Aは、第1乃至第3の実施形態に係る燃料電池システム1,1A,1Bのうちいずれかとしてもよい。
【0142】
<適用例2:構成 バッテリーV6>
バッテリーV6は、燃料電池システムV1Aの熱循環を維持するための電力を蓄電する。バッテリーV6は、例えば、燃料電池システムV1Aで発電した電力又はモーターV5で発電した回生電力(動力を電力に変換する動作で変換された電力)を蓄電する。バッテリーV6に蓄電された電力は、モーターV5の駆動に利用される。バッテリーV6の蓄電容量は大きいほどよいが、回生ブレーキで所定の速度減速したときに発電される電力と、減速後に電力を消費することなく後述するアイドリング発電が所定時間継続した場合の発電電力との双方を蓄電できる容量が確保できていることが望ましい。バッテリーV6は、燃料電池システムV1Aの一部としてもよい。
【0143】
所定の速度とは、回生ブレーキで減速可能な速度の参考値であり、例えば40Km/hとしてもよい。この所定の速度は、例えば、40Km/hで走行中に回生ブレーキで停止できることを示し、また、70Km/hで走行中に30Km/hまで減速できることを示している。なお、所定の速度は、車体(燃料電池車Vb)の重量、バッテリーV6の蓄電容量、モーター出力などの特性に応じて決めればよい。
【0144】
アイドリング発電とは、燃料電池システムV1Aの熱循環を維持するために最低限必要な発電量を示している。適用例2は、発電を完全に停止することなく、アイドリング発電を行うことにより、改質器12の温度を改質反応温度範囲内に維持する特徴を有する。
【0145】
アイドリング発電が継続する所定時間をアイドリング発電継続時間と呼ぶ。アイドリング発電で発電した電力は、モーターV5で消費するか、又は、バッテリーV6に蓄電する。バッテリーV6の蓄電量が所定値以上になった(例えば一杯になった)場合は、所定値以上バッテリーV6に充電を行うと危険な状態になるため、アイドリング発電を停止する。このアイドリング発電継続時間は、減速時の状況により変動するが、平均的な時間を決めておくことで適用例2の燃料電池車Vbが停止して再度動きだす場合に、反応よく動き出せる停止時間の目安になる。
【0146】
なお、所定の速度及びアイドリング発電継続時間は、走行状態及びバッテリーV6の劣化に影響を受ける。所定の速度及びアイドリング発電継続時間は、燃料電池車Vbを使用する際に参考値として用いられるべき数値としてもよい。
【0147】
<適用例2:作用>
図19は、適用例2の燃料電池車Vbの各部の状態の一例を示すグラフである。
図19のグラフは、適用例2による車体速度と、モーター出力と、燃料電池システム発電量と、バッテリー蓄電量との関係を示す。
【0148】
車体速度とモーター出力に関するグラフは、適用例1で説明した
図16と同じであるため説明を省略する。
【0149】
燃料電池システム発電量のグラフに示す破線は、アイドリング発電量を示している。
【0150】
<適用例2:作用 t2>
車体が減速している期間t2では、モーターV5が回生ブレーキにより発電を始めると、燃料電池システムV1Aは、アイドリング発電量まで発電量を低下させる。これにより、バッテリーV6には、モーターV5の回生電力と燃料電池システムV1Aによるアイドリング発電量が蓄電されるため、バッテリーV6の蓄電量は時間の経過とともに増加する。
【0151】
<適用例2:作用 t3>
車体が停止している期間t3では、モーターV5からの回生電力は停止するが、燃料電池システムV1Aによるアイドリング発電は継続しているため、アイドリング発電量がバッテリーV6に蓄電され、時間の経過とともにバッテリーV6の蓄電量は増加する。
【0152】
<適用例2:作用 t4>
車体が加速している期間t4では、モーターV5は高出力で運転しているが、燃料電池システムV1Aは、アイドリング発電を継続している。モーターV5の出力に対して不足した電力は、バッテリーV6からの放電によって賄われる。このため、バッテリーV6の蓄電量は時間経過とともに低下する。バッテリーV6の蓄電電力がなくなると、燃料電池システムV1Aは発電量を増加し、燃料電池システムV1Aの発電電力のみでモーターV5を駆動する。
【0153】
<適用例2:作用 まとめ>
以上述べた第2の適用例において、バッテリーV6はモーターV5で変換された電力を蓄電する。燃料電池システムV1Aは、モーターV5で電力を動力に変換する動作を行わない場合に、所定量の電力を発電する。バッテリーV6は、この所定量の電力を蓄電する。モーターV5は、燃料電池システムV1Aからの電力を動力に変換する動作を再開する場合に、バッテリーV6に蓄積された電力を使用する。適用例2の燃料電池車Vbでは、モーターV5が停止した場合と、回生ブレーキで発電している場合とのいずれにおいても、燃料電池システムV1Aの発電を止めることなく運転し、バッテリーV6に蓄電された電力をモーターV5が駆動する際に使用する。つまり、燃料電池システムV1Aが負荷変動の大きいシステムであっても、燃料電池システムV1Aは、バッテリーV6の蓄電により消費電力の変動を吸収して発電出力の変動幅を小さくすることができる。従って、燃料電池システムV1Aの再始動にかかるエネルギー消費を抑えるとともに、燃料電池システムV1Aの再始動による応答性の低下を防止することができる。
【0154】
<適用例2:処理の流れ>
図20は、適用例2の燃料電池システムV1Aにおける定常運転の状態の後の処理の一例を示すフローチャートである。
【0155】
先ず、駆動制御部V4からの駆動指示に基づいてモーターV5の出力が取得される(S201)。
【0156】
次に、モーターV5が駆動中か否かが判定される(S202)。例えば、モーターV5が電力を必要としているかが判定される。モーターV5が駆動中でない場合には、モーターV5は回生ブレーキ動作中か、又は、停止中のどちらかである。モーターV5が駆動中ではない場合、燃料電池システムV1Aの発電量がアイドリング発電量に設定される(S203)。モーターV5が駆動中の場合には、バッテリー残量があるか否かが判定される(S204)。バッテリーV6の蓄電量に残量がある場合には、燃料電池システムV1Aの発電量がアイドリング発電量に設定される(S205)。バッテリーV6の蓄電量に残量がない場合には、燃料電池システムV1Aの発電量が、モーターV5の出力に応じた発電量に設定される(S206)。
【0157】
S203、S205、S206の後、バッテリーV6の蓄電容量に空きがあるか否かが判定される(S207)。バッテリーV6の蓄電容量に空きがない場合には、燃料電池システムV1Aの発電が停止される(S209)。バッテリーV6の蓄電容量に空きがあると判定された場合には、運転を終了するか否かが判定される(S208)。運転を終了しない場合は、最初のモーター出力取得S201に戻って最初から処理が繰り返される。運転を終了する場合は、燃料電池システムV1Aの発電が停止され(S209)、燃料電池システムV1Aの運転が終了される。一旦燃料電池システムV1Aが発電を停止し、運転を停止した後、発電を再開する場合は、
図10で説明した運転開始処理が実行される。
【0158】
以上述べたように、モーターV5が電力を消費していない場合か、バッテリーV6に蓄電電力がある場合には、燃料電池システムV1Aはアイドリング発電を行い、バッテリーV6に蓄電する。モーターV5が駆動中で、バッテリーV6に蓄電電力がある場合にはバッテリーV6の蓄電電力が優先的に使用される。これにより、燃料電池システムV1Aが発電を停止する頻度を低下させると共に、燃料電池システムV1Aの発電量の変動を小さく抑えることができる。
【0159】
なお、バッテリーV6の蓄電電力が優先して使用される場合に、単位時間あたりにバッテリーV6から引き出せる電力が例えば所定値に制限されることにより、燃料電池システムV1Aの発電量の変動をさらに抑えることができる。また、出力変動が滑らかに変動するように、バッテリーV6から引き出せる電力を変動させてもよい。例えば、アイドリング発電電力又は回生電力をバッテリーV6に蓄電して、燃料電池システムV1Aでの発電量の変動を小さくする目的で、バッテリーV6の蓄電電力が使用されることは本発明の技術的範囲に含まれる。
【0160】
また、適用例2として燃料電池車Vbが説明されているが、燃料電池システムV1Aを適用可能な分野は燃料電池車Vbに限定されない。燃料電池システムV1Aは、負荷変動の大きいシステムに燃料電池を適用する各種の分野に適用可能である。回生電力がない場合は、バッテリーV6はアイドリング発電電力のみを蓄電してもよいし、回生電力に替えて別の発電電力を蓄電してもよい。
【0161】
<適用例2:効果>
適用例2においては、以上述べた適用例2の燃料電池車Vbのように負荷変動が大きい場合であっても、燃料電池システムV1が発電を停止する頻度を低下させることができ、燃料電池システムV1の発電量の変動を抑えて安定的に運転することができる。
【0162】
これにより、改質器12Aの加熱に必要なエネルギーを抑えるとともに、急激な発電量の増加による燃料電池スタック11の過熱を抑えるための構成を簡略化でき、システムのコスト低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0163】
1,1A,1B,V1,V1A…燃料電池システム、2…燃料タンク、3…燃料ポンプ、4…燃料調整弁、5…クリーナー、6…加圧コンプレッサー、11…燃料電池スタック、12,12A…改質器、13,13A…燃料ガス生成部、14…熱交換器、15a~15f…配管、V2…空気供給部、V3…燃料供給部、V4…駆動指示部、V5…モーター、V6…バッテリー