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特開2024-124118フルオロアルキル化合物の製造方法、フルオロアルキル化剤、フルオロアルキル化剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124118
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】フルオロアルキル化合物の製造方法、フルオロアルキル化剤、フルオロアルキル化剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/361 20060101AFI20240905BHJP
   C07C 315/00 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 317/14 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 45/46 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 309/04 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 303/22 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 19/08 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 43/12 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 41/18 20060101ALI20240905BHJP
   C07F 7/12 20060101ALI20240905BHJP
   C07F 7/14 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 33/46 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 29/64 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 43/178 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 323/09 20060101ALI20240905BHJP
   C07C 319/14 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C07C17/361
C07C315/00 CSP
C07C49/84 A
C07C317/14
C07C45/46
C07C309/04
C07C303/22
C07C19/08
C07C43/12
C07C41/18
C07F7/12 R
C07F7/14
C07C33/46
C07C29/64
C07C43/178 A
C07C41/30
C07C323/09
C07C319/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032067
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】597065282
【氏名又は名称】三菱マテリアル電子化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】根上(渡部) 陽太
(72)【発明者】
【氏名】松村 典明
(72)【発明者】
【氏名】神谷 武志
【テーマコード(参考)】
4H006
4H049
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB81
4H006AB84
4H006AC26
4H006AC41
4H006AC44
4H006AC62
4H006FC50
4H006FE11
4H006FE71
4H006FE74
4H006GP01
4H006TA02
4H006TA04
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ11
4H049VR24
4H049VS12
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】
【課題】フルオロアルキルスルホン酸またはカルボン酸の類似体から誘導できるフルオロアルキル化剤およびフルオロアルキル化剤の製造方法、並びに当該フルオロアルキル化剤を用いたフルオロアルキル化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式[1]または下記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤と、求電子剤とを用いてフルオロアルキル化反応を行う工程を有する、フルオロアルキル化合物の製造方法。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]または下記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤と、求電子剤とを用いてフルオロアルキル化反応を行う工程を有する、フルオロアルキル化合物の製造方法。
【化1】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【化2】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記求電子剤が、下記一般式[3]で表されるプロトン供与体であり、
下記一般式[4]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、請求項1に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【化3】
(式中、Rは、水素原子、金属原子または置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Xは、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を表す。)
【化4】
(式中、Rfは、スルホン酸カリウム構造もしくはベンゾイル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記求電子剤が下記一般式[5]で表されるケイ素化合物であり、
下記一般式[6]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、請求項1に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【化5】
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基、もしくは炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を含むアルコキシ基を表し、Xは、ハロゲン原子もしくは炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を含むアルコキシ基を表す。)
【化6】
(式中、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基、もしくは炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を含むアルコキシ基を表す。)
【請求項4】
前記求電子剤が下記一般式[7]で表されるカルボニル化合物であり、
下記一般式[8]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、請求項1に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【化7】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。)
【化8】
(式中、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。)
【請求項5】
前記求電子剤が下記一般式[9]で表されるジスルフィド化合物であり、
下記一般式[10]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、請求項1に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【化9】
(式中、Rは、炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。)
【化10】
(式中、Rは、炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項6】
下記一般式[11]で表される、フルオロアルキル化剤。
【化11】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Xは、水酸基、金属塩(例えば、-OK、-ONa)、炭素数1~4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アミノ基、炭素数1~4のアルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、プロピルアミノ基)またはハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素)を表す。)
【請求項7】
下記一般式[12]で表される、フルオロアルキル化剤。
【化12】
(式中、R10とR11は、同一もしくは独立の、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。)
【請求項8】
下記一般式[13]または下記一般式[14]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体と、下記一般式[15]で表される芳香族化合物とを反応させて、下記一般式[1]で表されるフルオロアルキル化剤を得る工程を有する、フルオロアルキル化剤の製造方法。
【化13】
(式中、RfとRfは、同一もしくは独立の、置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐もしくは環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、RfとRfは連結して、4~7員環を形成してもよい。)
【化14】
(式中、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。)
【化15】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。)
【化16】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項9】
下記一般式[16]または下記一般式[17]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体と、下記一般式[18]で表される芳香族化合物とを反応させて、下記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤を得る工程を有する、フルオロアルキル化剤の製造方法。
【化17】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【化18】
(式中、RfとRfは、同一もしくは独立の、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐もしくは環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、RfとRfは連結して、4~7員環を形成してもよい。)
【化19】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。)
【化20】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロアルキル化剤を用いたフルオロアルキル化合物の製造方法、フルオロアルキル化剤、およびフルオロアルキル化剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロアルキル基は、医薬、農薬、機能性材料等に含まれる重要な官能基として知られている。フルオロアルキル基を様々な化合物へ導入する効率的な方法が求められている。
【0003】
フルオロアルキル化剤として代表的なものとしては、求核的なフルオロアルキル化剤である、(トリフルオロメチル)トリメチルシランが知られている。一方、求電子的なフルオロアルキル化剤としては、Togni等によって開発された1-トリフルオロメチル-1,2-ベンゾヨードキソール-3(1H)-オン(Togni試薬II)が知られている。
【0004】
既存のフルオロアルキル化剤は、分解性や爆発性があるものが多い。なかでも、例えば、(トリフルオロメチル)トリメチルシランは空気中で容易に加水分解することが知られており、Togni試薬IIは爆発の危険性が知られている。このように、(トリフルオロメチル)トリメチルシランとTogni試薬IIは、安定性や安全面で課題があるため、工業的に有利とはいえない。
【0005】
加えて、既存のフルオロアルキル化剤のほとんどはトリフルオロメチル化剤であり、導入できるフルオロアルキル基が非常に限られていた。その一因としては、トリフルオロメチル化剤の原料となるフルオロメタンやトリフルオロヨードメタン等のトリフルオロメチル化合物は工業的に製造され入手が容易である一方で、多様なフルオロアルキル化剤を合成するために入手が容易なフルオロアルキル化合物が少ないことが挙げられる。
【0006】
フルオロアルキルスルホン酸またはカルボン酸は、電解フッ素化を始めとする手法で工業的に製造されている化合物であり、比較的入手が容易かつ安価である。さらに、トリフルオロメチル基に限らず、多様なフルオロアルキル基を有するスルホン酸またはカルボン酸が合成されている。
【0007】
一般的に、フルオロアルキルスルホン酸の炭素-硫黄結合を切断することは難しいとされているため、フルオロアルキルスルホン酸の誘導体をフルオロアルキル化剤として用いることは困難だと考えられていた。
例えば、フルオロアルキルスルホン酸の誘導体であるフルオロアルキルスルホニルフルオリドを還元剤でフルオロアルキルスルフィン酸に変換し、一電子酸化剤存在下、アルケンと反応させることでフルオロアルキル化することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この反応では、基質はアルケンに限られていた。
【0008】
フルオロアルキルカルボン酸やその誘導体は、フルオロアルキルスルホン酸を用いる例に比べて、いくつかのフルオロアルキル化反応が知られている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。ただし、多くの場合、反応性の高いフルオロアルキル化剤への変換や高価な金属触媒を要した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第105693464号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/104589号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Dehang Yin; Dengquan Su; Jian Jin. Cell Reports Physical Science (2020), 1(8), 100141.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、フルオロアルキルスルホン酸またはカルボン酸の類似体から誘導できるフルオロアルキル化剤およびフルオロアルキル化剤の製造方法、並びに当該フルオロアルキル化剤を用いたフルオロアルキル化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、多様なフルオロアルキル構造を合成可能で、かつ比較的入手容易なフルオロアルキルスルホン酸またはカルボン酸の類似体から誘導できるフルオロアルキル化剤の簡便かつ系統的な製造手法を発明した。さらに、得られたフルオロアルキル化剤を用いることで、医薬、農薬、機能性材料等の分野に多様なフルオロアルキル化合物を提供することが可能となることを見出した。
【0013】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]下記一般式[1]または下記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤と、求電子剤とを用いてフルオロアルキル化反応を行う工程を有する、フルオロアルキル化合物の製造方法。
【0014】
【化1】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【0015】
【化2】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【0016】
[2]前記求電子剤が、下記一般式[3]で表されるプロトン供与体であり、
下記一般式[4]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、[1]に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【0017】
【化3】
(式中、Rは、水素原子、金属原子または置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Xは、酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を表す。)
【0018】
【化4】
(式中、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【0019】
[3]前記求電子剤が下記一般式[5]で表されるケイ素化合物であり、
下記一般式[6]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、[1]に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【0020】
【化5】
(式中、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基、もしくは炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を含むアルコキシ基を表し、Xは、ハロゲン原子もしくは炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を含むアルコキシ基を表す。)
【0021】
【化6】
(式中、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基、もしくは炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を含むアルコキシ基を表す。)
【0022】
[4]前記求電子剤が下記一般式[7]で表されるカルボニル化合物であり、
下記一般式[8]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、[1]に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【0023】
【化7】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。)
【0024】
【化8】
(式中、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。)
【0025】
[5]前記求電子剤が下記一般式[9]で表されるジスルフィド化合物であり、
下記一般式[10]で表されるフルオロアルキル化合物を得る、[1]に記載のフルオロアルキル化合物の製造方法。
【0026】
【化9】
(式中、Rは、炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。)
【0027】
【化10】
(式中、Rは、炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【0028】
[6]下記一般式[11]で表される、フルオロアルキル化剤。
【0029】
【化11】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Xは、水酸基、金属塩(例えば、-OK、-ONa)、炭素数1~4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)、アミノ基、炭素数1~4のアルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、プロピルアミノ基)またはハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素)を表す。)
【0030】
[7]下記一般式[12]で表される、フルオロアルキル化剤。
【0031】
【化12】
(式中、R10とR11は、同一もしくは独立の、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。)
【0032】
[8]下記一般式[13]または下記一般式[14]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体と、下記一般式[15]で表される芳香族化合物とを反応させて、下記一般式[1]で表されるフルオロアルキル化剤を得る工程を有する、フルオロアルキル化剤の製造方法。
【0033】
【化13】
(式中、RfとRfは、同一もしくは独立の、置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐もしくは環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、RfとRfは連結して、4~7員環を形成してもよい。)
【0034】
【化14】
(式中、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、Xは、ハロゲン原子を表す。)
【0035】
【化15】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。)
【0036】
【化16】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【0037】
[9]下記一般式[16]または下記一般式[17]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体と、下記一般式[18]で表される芳香族化合物とを反応させて、下記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤を得る工程を有する、フルオロアルキル化剤の製造方法。
【0038】
【化17】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【0039】
【化18】
(式中、RfとRfは、同一もしくは独立の、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐もしくは環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、RfとRfは連結して、4~7員環を形成してもよい。)
【0040】
【化19】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。)
【0041】
【化20】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、Rfは、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表す。)
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、フルオロアルキルスルホン酸またはカルボン酸の類似体から誘導できるフルオロアルキル化剤およびフルオロアルキル化剤の製造方法、並びに当該フルオロアルキル化剤を用いたフルオロアルキル化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明のフルオロアルキル化剤およびフルオロアルキル化剤の製造方法、並びにフルオロアルキル化剤を用いたフルオロアルキル化合物の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0044】
本発明は、上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤、および、前記フルオロアルキル化剤と、求電子剤とを用いてフルオロアルキル化反応を行う工程を有する、フルオロアルキル化合物の製造方法を含む。
【0045】
<フルオロアルキル化剤の製造>
本発明のフルオロアルキル化合物の製造方法の前過程である、フルオロアルキル化剤を製造する過程について説明する。
フルオロアルキル化剤は、上記一般式[13]もしくは上記一般式[14]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体、または上記一般式[16]または上記一般式[17]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体と、上記一般式[15]もしくは上記一般式[18]で表される芳香族化合物とを、ルイス酸存在下で反応させることによって生成される。
【0046】
上記一般式[1]、[2]、[13]~[18]において、Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表し、RfとRfは、同一もしくは独立の、スルホニル基もしくはカルボニル基からなる置換基または炭素原子間に1~5のエーテル結合性の酸素原子を有していてもよい炭素数1~10の直鎖、分岐または環状構造を有することもあるアルキル基であって、スルホニルもしくはカルボニルのα炭素上がフッ素もしくはトリフルオロメチル基などの炭素で置換されて水素を持たない構造のフルオロアルキル基を表し、RfとRfは連結して、4~7員環を形成してもよい。
【0047】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等を挙げることができる。
【0048】
置換基またはエーテル結合性の酸素原子を有していてもよいフルオロアルキル基としては、例えば、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-4-ブタン-1-スルホネート基、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロ-3-プロパン-1-スルホネート基、1,1,2,2-ブタフルオロ-2-エタン-1-スルホネート基、1,1,-ジフルオロ-1-メタン-1-スルホネート基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロペンチル基、ノナフルオロブチル基、ヘプタフルオロプロピル基、-CF(CF)OCFCFCF、-CF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF、-CF(CF)OCFCFOCF(CF)COC、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル基等を挙げることができる。
【0049】
本発明で用いられるルイス酸として、例えば、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化スズ、塩化亜鉛等が挙げることができる。上記一般式[13]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体、上記一般式[14]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体、上記一般式[16]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体、または上記一般式[17]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体に対するルイス酸の使用量は、モル比で0.5~10であり、好ましくは1.5~6である。ルイス酸の使用量が0.5未満の場合、フルオロアルキル化剤の生成量が十分でない。また、ルイス酸の使用量が10を超える場合は経済的でない。
【0050】
上記一般式[13]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体、上記一般式[14]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体、上記一般式[16]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体、または上記一般式[17]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体に対する、上記一般式[15]で表される芳香族化合物または上記一般式[18]で表される芳香族化合物は溶媒量を用いており、その使用量は、特に限定されないが、通常、質量比で2~15倍である。
【0051】
また、上記一般式[13]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体、上記一般式[14]で表されるフルオロアルキルスルホン酸誘導体、上記一般式[16]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体、または上記一般式[17]で表されるフルオロアルキルカルボン酸誘導体は、溶媒不在下でルイス酸を反応させてもよいが、非プロトン性溶媒を加えてもよい。非プロトン性溶媒としては、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン等のアルカン類等を挙げることができる。
反応温度は、特に限定されないが、通常、0℃~80℃である。
【0052】
<フルオロアルキル化反応>
次に、上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤と、求電子剤と反応させる過程について説明する。
フルオロアルキル化合物は、上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤と、求電子剤とを反応させることによって生成される。
【0053】
以降の化学反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことができる。反応に不活性な溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、ジメチスルホキシド等が挙げることができる。
反応温度は、-78℃~50℃であり、好ましくは-70℃~25℃である。
【0054】
<プロトン供与体のフルオロアルキル化>
上記一般式[3]で表されるプロトン供与体を求電子剤として用いて塩基を作用させた場合、上記一般式[4]で表される水素原子を有するフルオロアルキル化合物が得られる。
上記一般式[3]と上記一般式[4]において、置換基Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を表す。
【0055】
置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1-プロピル基、2-プロピル基、1-ブチル基、2-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-へプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基等を挙げることができる。
【0056】
置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基としては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等を挙げることができる。
【0057】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する上記一般式[3]で表されるプロトン供与体の使用量は、モル比で0.5~10であり、好ましくは1~5である。プロトン供与体の使用量が1未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、プロトン供与体の使用量が2を超える場合、経済的でない。
【0058】
プロトン供与体のフルオロアルキル化で用いられる塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等が挙げることができる。
【0059】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する塩基の使用量は、モル比で1~10であり、好ましくは2.5~5.0である。塩基の使用量が1未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、塩基の使用量が4を超える場合、生成したフルオロアルキル化合物の分解が進行する。
【0060】
<ケイ素化合物のフルオロアルキル化>
上記一般式[5]で表されるケイ素化合物を求電子剤として用いて還元剤を作用させた場合、上記一般式[6]で表されるケイ素原子を有するフルオロアルキル化合物が得られる。
【0061】
上記一般式[5]および上記一般式[6]において、置換基R、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基や不飽和結合を有してもよいアルキル基、アリール基、もしくは炭素数1~30のアルキル基または置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基を含むアルコキシ基を表す。
【0062】
置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、1-プロピル基、2-プロピル基、アリル基、アクリロイル基、1-ブチル基、2-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ブタジエニル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-へプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基等を挙げることができる。
【0063】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、4-アリルフェニル基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等を挙げることができる。
【0064】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する上記一般式[5]で表されるケイ素化合物の使用量は、モル比で1~10であり、好ましくは5~8である。ケイ素化合物の使用量が1未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、ケイ素化合物の使用量が10を超える場合、経済的でない。
【0065】
ケイ素化合物のフルオロアルキル化で用いられる還元剤として、例えば、マグネシウム、亜鉛、マンガン等が挙げることができる。
【0066】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する還元剤の使用量は、モル比で1~4であり、好ましくは1.5~2.5である。還元剤の使用量が1未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、還元剤の使用量が4を超える場合、経済的でない。
【0067】
<カルボニル化合物のフルオロアルキル化>
上記一般式[7]で表されるカルボニル化合物を求電子剤として用いて塩基を作用させた場合、上記一般式[8]で表される水酸基を有するフルオロアルキル化合物が得られる。
【0068】
上記一般式[7]および上記一般式[8]において、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。
【0069】
置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、1-プロピル基、2-プロピル基、アリル基、アクリロイル基、1-ブチル基、2-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ブタジエニル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-へプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基等を挙げることができる。
【0070】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、4-アリルフェニル基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等を挙げることができる。
【0071】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する上記一般式[7]で表されるカルボニル化合物の使用量は、モル比で0.5~4であり、好ましくは1~3である。カルボニル化合物の使用量が0.5未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、カルボニル化合物の使用量が4を超える場合、経済的でない。
【0072】
カルボニル化合物のフルオロアルキル化で用いられる塩基として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等が挙げることができる。
【0073】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する塩基の使用量は、モル比で1~4であり、好ましくは1.5~2.5である。塩基の使用量が1未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、塩基の使用量が4を超える場合、経済的でない。
【0074】
<ジスルフィドのフルオロアルキル化>
上記一般式[9]で表されるジスルフィド化合物を求電子剤として用いて塩基を作用させた場合、上記一般式[10]で表されるスルフィド結合を有するフルオロアルキル化合物が得られる。
【0075】
上記一般式[9]および上記一般式[10]において、置換基Rは、炭素数1~10の直鎖、分岐あるいは環状構造を有することもある置換基を有してもよいアルキル基、アリール基を表す。
【0076】
置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ビニル基、1-プロピル基、2-プロピル基、アリル基、アクリロイル基、1-ブチル基、2-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、ブタジエニル基、1-ペンチル基、1-ヘキシル基、1-へプチル基、1-オクチル基、1-ノニル基、1-デシル基等を挙げることができる。
【0077】
置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、4-アリルフェニル基、4-クロロフェニル基、4-メトキシフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、4-シアノフェニル基、4-ニトロフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等を挙げることができる。
【0078】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する上記一般式[9]で表されるジスルフィド化合物の使用量は、モル比で1~4であり、好ましくは1.5~2.5である。ジスルフィド化合物の使用量が1未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、ジスルフィド化合物の使用量が4を超える場合、経済的でない。
【0079】
ジスルフィド化合物のフルオロアルキル化で用いられる塩基として、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等が挙げることができる。
【0080】
上記一般式[1]または上記一般式[2]で表されるフルオロアルキル化剤に対する塩基の使用量は、モル比で1~4であり、好ましくは1.5~2.5である。塩基の使用量が1未満の場合、フルオロアルキル化合物の生成量が十分ではない。また、塩基の使用量が4を超える場合、経済的でない。
【0081】
本発明のフルオロアルキル化剤は、工業的に製造され容易に入手可能なフルオロアルキルスルホン酸およびカルボン酸から調製可能である。本発明のフルオロアルキル化剤を用いることでフルオロアルキル化合物の新たな製造法が可能となる。このため、医薬、農薬、機能性材料等の分野に、さらに多様なフルオロアルキル化合物を提供することが可能となる。これらのことから、本発明は、フルオロアルキル化合物を製造するためのフルオロアルキル化剤として非常に有用である。
【0082】
本発明は、既存のフルオロアルキル化剤では入手・調製するのが難しかった多様なフルオロアルキル構造を、入手容易なフルオロアルキルスルホン酸やカルボン酸からフルオロアルキル化剤を製造することを可能とし、それを用いることで多様なフルオロアルキル化合物の製造ができる。さらにそれだけではなく、本発明者等は、従来、炭素-硫黄結合や炭素-炭素結合の切断が難しいと考えられていたためにフルオロアルキル化剤としては使われてこなかったフルオロアルキルスルホン酸やカルボン酸を誘導化することでフルオロアルキル化剤として働くことを見出した。さらに、得られたフルオロアルキル化剤を用いることで、医薬、農薬、機能性材料等の分野に、さらに多様なフルオロアルキル化合物を提供することが可能となるため、産業上の利用価値も高い。
【実施例0083】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例、比較例の分析に使用したNMR装置は、Bruker社製AVANCE 400(H-NMR:400MHz、19F-NMR:376MHz)である。H-NMRでは、テトラメチルシランを0ppmの基準値とし、19F-NMRでは、トリクロロフルオロメタンを0ppmの基準値とした。
【0085】
[実施例1]
上記一般式[1]のRがフェニル基、Rfが-CFCFCFSOK基である、下記式(1)で表される化合物を合成した。
【0086】
【化21】
【0087】
窒素雰囲気下、塩化アルミニウム(17.73g、133mmol)をベンゼン(200mL)に加え、0℃に冷却した。これにヘキサフルオロ-1,3-プロパンジスルホン酸無水物(26.07g、88.6mmol)をゆっくり加え、室温で17時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(200mL)でクエンチした。得られた反応液に酢酸エチル(200mL)を加え分液した後、有機層を2M塩酸水溶液(100mL)で1回洗浄し、得られた有機層を2M水酸化カリウム水溶液(100mL)で2回洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物に、2-プロパノール(50mL)を加え、80℃で1時間攪拌した後、0℃の氷浴で5時間攪拌し、懸濁液を得た。当該懸濁液を濾過し、2-プロパノール(20mL)で洗浄し、固体を減圧下で乾燥することで、上記式(1)で表される化合物を64%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(1)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重アセトン):δ-111.75~-111.85(m,2F),-115.02~-115.11(m,2F),-119.02~-119.05(m,2F).
【0088】
[実施例2]
上記式(1)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CFCFCFSOK基に置換し、下記式(2)で表される化合物を合成した。
【0089】
【化22】
【0090】
窒素雰囲気下、上記式(1)で表される化合物(0.50g、1.22mmol)およびtert-ブチルアルコール(116μL、1.22mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に加えた。これにカリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M,3.05mL、3.05mmol)をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(10mL)でクエンチした。得られた反応液に酢酸エチル(20mL)を加え分液した後、水槽を酢酸エチル(10mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、水(20mL)に溶かし、0.5M水酸化カリウム水溶液(2.4mL)を加え、溶媒を減圧下で留去した。得られた組成生物に、エタノール(30mL)を加え、室温で1時間攪拌した後、懸濁液を得た。当該懸濁液を濾過し、エタノール(20mL)で洗浄し、固体を減圧下で乾燥することで、上記式(2)で表される化合物を97%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(2)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重水):δ-116.56~-116.60(m,2F),-129.72~-129.78(m,2F),-137.55~-137.75(m,2F).
【0091】
[実施例3]
上記一般式[1]のRがトリル基、Rfが-CFCFCFSOK基である、下記式(3)で表される化合物と下記式(4)で表される化合物を合成した。
【0092】
【化23】
【0093】
実施例1で用いたベンゼンに替えてトルエンを用いたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、上記式(3)で表される化合物と上記式(4)で表される化合物の混合物を66%収率で得た。上記式(3)で表される化合物と上記式(4)で表される化合物の混合比は、モル比で1:2であった。
19F-NMR分析により、上記式(3)で表される化合物と上記式(4)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重メタノール):δ-112.13~-112.68(m,2F),-115.35~-115.51(m,2F),-119.62~-119.99(m,2F).
【0094】
[実施例4]
上記式(3)で表される化合物と上記式(4)で表される化合物の混合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CFCFCFSOK基に置換し、上記式(2)で表される化合物を合成した。
実施例2における上記式(1)で表される化合物に替えて上記式(3)で表される化合物と上記式(4)で表される化合物の混合物を用いたこと以外は実施例2と同じ操作を行い、上記式(2)で表される化合物を90%収率で得た。
【0095】
[実施例5]
上記一般式[1]中のRがo-キシリル基、Rfが-CFCFCFSOK基である、下記式(5)で表される化合物と下記式(6)で表される化合物を合成した。
【0096】
【化24】
【0097】
実施例1で用いたベンゼンに替えてo-キシレンを用いたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、上記式(5)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物の混合物を65%収率で得た。上記式(5)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物の混合比は、モル比で1:2であった。
19F-NMR分析により、上記式(5)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重メタノール):δ-111.93~-112.72(m,2F),-115.35~-115.51(m,2F),-119.64~-120.02(m,2F).
【0098】
[実施例6]
上記式(5)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物の混合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CFCFCFSOK基に置換し、上記式(2)で表される化合物を合成した。
実施例2における上記式(1)で表される化合物に替えて上記式(5)で表される化合物と上記式(6)で表される化合物の混合物を用いたこと以外は実施例2と同じ操作を行い、上記式(2)で表される化合物を88%収率で得た。
【0099】
[実施例7]
上記一般式[1]中のR1がm-キシリル基、Rfが-CFCFCFSOK基である、下記式(7)で表される化合物を合成した。
【0100】
【化25】
【0101】
実施例1で用いたベンゼンに替えてm-キシレンを用いたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、上記式(7)で表される化合物を60%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(7)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重メタノール):δ-112.38~-112.47(m,2F),-115.39~-115.48(m,2F),-120.00~-120.03(m,2F).
【0102】
[実施例8]
上記式(7)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CFCFCFSOK基に置換し、上記式(2)で表される化合物を合成した。
実施例2における上記式(1)で表される化合物に替えて上記式(7)で表される化合物を用いたこと以外は実施例2と同じ操作を行い、上記式(2)で表される化合物を89%収率で得た。
【0103】
[実施例9]
上記一般式[1]中のRがp-キシリル基、Rfが-CFCFCFSOK基である、下記式(8)で表される化合物を合成した。
【0104】
【化26】
【0105】
実施例1で用いたベンゼンに替えてp-キシレンを用いたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、上記式(8)で表される化合物を76%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(8)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重メタノール):δ-111.94~-112.01(m,2F),-115.06~-115.14(m,2F),-119.76(m,2F).
【0106】
[実施例10]
上記式(8)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CFCFCFSOK基に置換し、上記式(2)で表される化合物を合成した。
実施例2における上記式(1)で表される化合物に替えて上記式(8)で表される化合物を用いたこと以外は実施例2と同じ操作を行い、上記式(2)で表される化合物を87%収率で得た。
【0107】
[実施例11]
上記一般式[1]中のRがフェニル基、Rfが-CFCFSOK基である、下記式(9)で表される化合物を合成した。
【0108】
【化27】
【0109】
実施例1で用いたヘキサフルオロ-1,3-プロパンジスルホン酸無水物に替えてブタフルオロ-1,2-エタンジスルホン酸無水物を用いたこと以外は実施例1と同じ操作を行い、上記式(9)で表される化合物を68%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(9)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重メタノール):δ-111.04~-111.07(m,2F),-113.47~-113.54(m,2F).
【0110】
[実施例12]
上記式(9)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CFCFSOK基に置換し、下記式(10)で表される化合物を合成した。
実施例2における上記式(1)で表される化合物に替えて上記式(9)で表される化合物を用いたこと以外は実施例2と同じ操作を行い、下記式(10)で表される化合物を95%収率で得た。
19F-NMR分析により、下記式(10)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重メタノール):δ-125.28(dt,2F),-137.32(dt,2F).
【0111】
【化28】
【0112】
[実施例13]
上記一般式[1]中のRがフェニル基、Rfがノナフルオロブチル基である、下記式(11)で表される化合物を合成した。
【0113】
【化29】
【0114】
窒素雰囲気下、塩化アルミニウム(1.72g、12.9mmol)をベンゼン(20mL)に加え、0℃に冷却した。これにノナフルオロブタンスルホン酸無水物(5.00g、8.59mmol)をゆっくり加え、室温で17時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(20mL)でクエンチした。得られた反応液に酢酸エチル(20mL)を加え分液した後、有機層を2M塩酸水溶液(10mL)で1回洗浄し、得られた有機層を2M水酸化カリウム水溶液(10mL)で2回洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を減圧蒸留することで、上記式(11)で表される化合物を52%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(11)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-80.77~-80.82(m,3F),-111.59~-111.67(m,2F),-120.85~-120.91(m,2F),-125.95~-126.04(m,2F).
【0115】
[実施例14]
上記式(11)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基をノナフルオロブチル基に置換し、下記式(12)で表される化合物を合成した。
【0116】
【化30】
【0117】
窒素雰囲気下、上記式(11)で表される化合物(0.50g、1.39mmol)およびtert-ブチルアルコール(132μL、1.39mmol)をテトラヒドロフラン(5.0mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M,3.47mL、3.47mmol)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して、発生した気体をコールドトラップで捕集し、上記式(12)で表される化合物を73%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(12)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-81.17~-81.38(m,3F),-127.75~-127.93(m,2F),-130.13~-130.34(m,2F),-137.42~-137.77(m,2F).
【0118】
[実施例15]
上記一般式[1]中のRがフェニル基、Rfがヘプタフルオロプロピル基である、下記式(13)で表される化合物を合成した。
【0119】
【化31】
【0120】
実施例13で用いたノナフルオロブタンスルホン酸無水物に替えてヘプタフルオロプロパンスルホン酸無水物を用いたこと以外は実施例13と同じ操作を行い、上記式(13)で表される化合物を56%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(13)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-80.71~-80.76(m,3F),-112.30~-112.34(m,2F),-124.24~-124.25(m,2F).
【0121】
[実施例16]
上記式(13)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基をヘプタフルオロプロピル基に置換し、下記式(14)で表される化合物を合成した。
実施例14における上記式(11)で表される化合物に替えて上記式(13)で表される化合物を用いたこと以外は実施例14と同じ操作を行い、下記式(14)で表される化合物を69%収率で得た。
19F-NMR分析により、下記式(14)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-82.27~-82.31(m,3F),-132.65~-132.69(m,2F),-137.52~-137.71(m,2F).
【0122】
【化32】
【0123】
[実施例17]
上記一般式[2]中のR1がフェニル基、Rfが-CF(CF)OCFCFCF基である、下記式(15)で表される化合物を合成した。
【0124】
【化33】
【0125】
窒素雰囲気下、塩化アルミニウム(9.96g、74.7mmol)をベンゼン(20mL)に加え、50℃に加熱した。これにペルフルオロ(2-メチル-3-オキサヘキサノイル)フルオリド(9.26g、27.9mmol)をゆっくり加え、室温で7時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(20mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(40mL)を加え分液した後、有機層を2M塩酸水溶液(10mL)で1回洗浄し、得られた有機層を2M水酸化カリウム水溶液(10mL)で2回洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を減圧蒸留することで、上記式(15)で表される化合物を55%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(15)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-78.09~-78.56(m,1F),-80.54(m,3F),-81.28~-81.32(m,3F),-82.74~-83.19(m,1F),-128.47~-128.54(m,1F),-129.52~-129.54(m,2F).
【0126】
[実施例18]
上記式(15)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CF(CF)OCFCFCF基に置換し、下記式(16)で表される化合物を合成した。
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、6.41mL、6.41mmol)およびtert-ブチルアルコール(0.61mL、6.41mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、上記式(15)で表される化合物(1.00g、2.56mmol)のTHF溶液(10mL)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(30mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(20mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた液体を減圧下で蒸留することで、下記式(16)であらわされる化合物を82%収率で得た。
19F-NMR分析により、下記式(16)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-81.51~-81.53(m,3F),-84.00~-84.02(m,3F),-84.98~-87.26(m,2F),-129.86~-129.92(m,2F),-145.73~-145.96(m,1F).
【0127】
【化34】
【0128】
[実施例19]
上記一般式[2]中のR1がフェニル基、Rfが-CF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF基である、下記式(17)で表される化合物を合成した。
【0129】
【化35】
【0130】
実施例17で用いたペルフルオロ(2-メチル-3-オキサヘキサノイル)フルオリドに替えてペルフルオロ(2,5-ジメチル-3,6-ジオキサノナノイル)フルオリドを用いたこと以外は実施例17と同じ操作を行い、上記式(17)で表される化合物を76%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(17)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-77.27~-78.48(m,1F),-80.02~-80.11(m,3F),-80.76~-81.69(m,9F),-128.41~-128.62(m,1F),-128.64~-129.66(m,2F),-144.95~-145.23(m,1F).
【0131】
[実施例20]
上記式(17)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCF基に置換し、下記式(18)で表される化合物を合成した。
実施例18における上記式(15)で表される化合物に替えて上記式(17)で表される化合物を用いたこと以外は実施例18と同じ操作を行い、下記式(18)で表される化合物を79%収率で得た。
19F-NMR分析により、下記式(18)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-80.10~-80.25(m,3F),-81.40~-81.52(m,3F),-81.77~-81.92(m,2F),-83.46~-86.33(m,5F),-129.73~-129.79(m,2F),-145.14~-145.30(m,1F),-145.67~-145.94(m,1F).
【0132】
【化36】
【0133】
[実施例21]
上記一般式[11]中のRがフェニル基、Xがカリウムである、下記式(19)で表される化合物を合成した。
【0134】
【化37】
【0135】
窒素雰囲気下、塩化アルミニウム(25.6g、192mmol)をベンゼン(40mL)に加え、50℃に加熱した。これに2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-4-(フルオロスルホニル)ブタノイルフルオリド(20.0g、71.2mmol)をゆっくり加え、室温で2時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(200mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(200mL)を加え分液した後、有機層を2M塩酸水溶液(100mL)で2回洗浄し、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)で2回洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を減圧蒸留した後に水(10mL)と炭酸カリウム(0.49g、0.0035mmol)を加え、室温で1時間攪拌した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物に2-プロパノール(10mL)を加え70℃に加熱した後に濾過し、得られた固体を減圧乾燥することで、上記式(19)で表される化合物を5%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(19)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重アセトニトリル):δ-113.51~-113.57(m,2F),-114.25~-114.32(m,2F),-120.52(m,2F).
【0136】
[実施例22]
上記式(19)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CFCFCFSOK基に置換し、上記式(2)で表される化合物を合成した。
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、0.68mL、0.68mmol)およびtert-ブチルアルコール(0.07mL、0.68mmol)をテトラヒドロフラン(5mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、上記式(19)で表される化合物(0.10g、0.27mmol)のTHF溶液(5mL)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(10mL)でクエンチした。得られた反応液に酢酸エチル(10mL)を加え分液した後、水槽を酢酸エチル(10mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、水(10mL)に溶かし、0.1M水酸化カリウム水溶液(5.6mL)を加え、溶媒を減圧下で留去した。得られた組成生物に、エタノール(10mL)を加え、室温で1時間攪拌した後、懸濁液を得た。当該懸濁液を濾過し、エタノール(5mL)で洗浄し、固体を減圧下で乾燥することで、上記式(2)で表される化合物を83%収率で得た。
【0137】
[実施例23]
上記一般式[12]中のR10およびR11がフェニル基である、下記式(20)で表される化合物を合成した。
【0138】
【化38】
【0139】
窒素雰囲気下、塩化アルミニウム(19.8g、149mmol)をベンゼン(40mL)に加え、50℃に加熱した。これに2,2’-[(テトラフルオロエチレン)ジオキシ]ビス(2,3,3,3-テトラフルオロプロパノイル)=ジフルオリド(11.7g、27.6mmol)をゆっくり加え、室温で5時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(100mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(100mL)を加え分液した後、有機層を2M塩酸水溶液(100mL)で1回洗浄し、得られた有機層を2M水酸化カリウム水溶液(100mL)で1回洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を減圧蒸留することで、上記式(20)で表される化合物を54%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(20)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-80.18~-80.20(m,6F),-82.25~-82.99(m,2F),-86.03~-86.66(m,2F),-128.35~-128.50(m,2F).
【0140】
[実施例24]
上記式(20)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、tert-ブチルアルコールのアルコキシ基を-CF(CF)OCFCFOCF(CF)-基に置換し、下記式(21)で表される化合物を合成した。
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M,9.20mL、9.20mmol)およびtert-ブチルアルコール(1.95mL、18.4mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、上記式(20)で表される化合物(1.00g、1.84mmol)のTHF溶液(10mL)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(30mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(20mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。液体を減圧下で蒸留することで、下記式(21)であらわされる化合物を76%収率で得た。
19F-NMR分析により、下記式(21)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-83.78~-83.82(m,6F),-88.64~-91.17(m,4F),-145.16~-145.32(m,2F).
【0141】
【化39】
【0142】
[実施例25]
上記式(11)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、金属水酸化物もしくはカリウムtert-ブトキシドを水素源に用いて-CFCFCFSOK基で置換し、上記式(2)で表される化合物を合成した。
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、1.52mL、1.52mmol)および水酸化カルシウム(0.045g、0.61mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に加えた。これに上記式(11)で表される化合物(0.25g、0.61mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(5mL)をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した。その後、2M塩酸水溶液(10mL)でクエンチした。得られた反応液に酢酸エチル(10mL)を加え分液した後、水槽を酢酸エチル(10mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物を、水(10mL)に溶かし、0.1M水酸化カリウム水溶液(5.6mL)を加え、溶媒を減圧下で留去した。得られた組成生物に、エタノール(10mL)を加え、室温で1時間攪拌した後、懸濁液を得た。当該懸濁液を濾過し、エタノール(5mL)で洗浄し、固体を減圧下で乾燥することで、上記式(2)で表される化合物を91%収率で得た。
【0143】
[実施例26]
上記式(11)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、クロロトリメチルシランの塩素置換基をノナフルオロブチル基に置換し、下記式(22)で表される化合物を合成した。
【0144】
【化40】
【0145】
窒素雰囲気下、上記式(11)で表される化合物(0.20g、0.92mmol)およびクロロトリメチルシラン(350μL、2.78mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(2.0mL)に加えた。これにマグネシウム(27.0mg、1.11mmol)を加え、17時間攪拌した。得られた反応液を2M塩酸水溶液(10mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(10mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。粗生成物に内部標準としてベンゾトリフルオリドを加えNMR収率を求めた。上記式(22)で表される化合物の収率は16%であった。
19F-NMR分析により、上記式(22)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-80.74~-80.79(m,3F),-120.93~-120.94(m,2F),-125.95~-126.03(m,2F),-128.66~-128.73(m,2F).
【0146】
[実施例27]
上記式(11)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、ベンズアルデヒドのカルボニル炭素にノナフルオロブチル基を導入し、下記式(23)で表される化合物を合成した。
【0147】
【化41】
【0148】
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M,3.48mL、3.48mmol)およびベンズアルデヒド(0.42mL、4.16mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、上記式(11)で表される化合物(0.50g、1.39mmol)のTHF溶液(10mL)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(50mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(20mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた液体を減圧下で蒸留することで、上記式(23)で表される化合物を71%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(23)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-82.30~-82.48(m,3F),-117.40~-127.70(m,6F).
【0149】
[実施例28]
上記式(15)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、ベンズアルデヒドのカルボニル炭素に-CF(CF)OCFCFCF基を導入し、下記式(24)で表される化合物を合成した。
【0150】
【化42】
【0151】
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、3.20mL、3.20mmol)およびベンズアルデヒド(0.39mL、3.84mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、上記式(15)で表される化合物(0.50g、1.28mmol)のTHF溶液(10mL)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(50mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(20mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。得られた液体を減圧下で蒸留することで、上記式(24)で表される化合物を44%収率で得た。
19F-NMR分析により、上記式(24)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-78.70~-78.99(m,3F),-80.33~-82.20(m,5F),-129.29~-129.50(m,2F),-136.74~-142.81(m,1F).
【0152】
[実施例29]
上記式(11)で表される化合物をフルオロアルキル化剤として用い、ジフェニルジスルフィドのフェニルスルフィドをノナフルオロブチル基に置換し、下記式(25)で表される化合物を合成した。
【0153】
【化43】
【0154】
窒素雰囲気下、上記式(11)で表される化合物(0.20g、0.92mmol)およびジフェニルジスルフィド(0.24g、1.11mmol)をテトラヒドロフラン(2.0mL)に加えた。これを0℃まで冷却し、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M,1.39mL、1.39mmol)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液をゆっくり室温まで昇温した後、2M塩酸水溶液(10mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(10mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。粗生成物に内部標準としてベンゾトリフルオリドを加えNMR収率を求めた。上記式(25)で表される化合物の収率は10%であった。
19F-NMR分析により、上記式(25)で表される化合物が得られたことを確認した。
19F-NMR(重クロロホルム):δ-81.03~-81.08(m,3F),-87.10~-87.17(m,2F),-120.07~-120.17(m,2F),-125.59~-125.67(m,2F).
【0155】
[比較例1]
上記一般式[1]中のRfにフッ素が入っていないアルキル基を有する下記式(26)で表される化合物を用いてフルオロアルキル化剤と同様の条件を作用させたが、下記式(26)で表される出発原料が96%収率で回収された。
【0156】
【化44】
【0157】
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、4.00mL、4.00mmol)およびtert-ブチルアルコール(0.38mL、4.00mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、化合物(26)(0.25g、1.60mmol)のTHF溶液(10mL)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(30mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(20mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。固体を減圧下で乾燥することで、上記式(26)で表される化合物を96%収率で得た。
【0158】
[比較例2]
上記一般式[2]中のRfにフッ素が入っていないアルキル基を有する下記式(27)で表される化合物を用いてフルオロアルキル化剤と同様の条件を作用させたが、下記式(27)で表される出発原料が84%収率で回収された。
【0159】
【化45】
【0160】
窒素雰囲気下、カリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、5.20mL、5.20mmol)およびtert-ブチルアルコール(0.49mL、5.20mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に加えた。これを-70℃まで冷却し、化合物(27)(0.25g、2.08mmol)のTHF溶液(10mL)をゆっくり加え、1時間攪拌した。得られた反応液を室温まで昇温して1時間攪拌した後、2M塩酸水溶液(30mL)でクエンチした。得られた反応液にクロロホルム(20mL)を加え分液した後、水層をクロロホルム(20mL)で1回抽出し、すべての有機層を合わせて飽和食塩水(20mL)で洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒を減圧下で留去した。固体を減圧下で乾燥することで、上記式(27)で表される化合物を84%安息香酸をそれぞれ12%収率で得た。
【0161】
[比較例3]
上記一般式[1]中のRにアリール基ではなくアリールオキシ基を有する下記式(28)で表される化合物を用いてフルオロアルキル化剤と同様の条件を作用させた場合、下記式(2)で表される目的物は7%収率に留まり、下記式(29)で表されるジスルホン酸が主生成物として93%収率で得られた。
【0162】
【化46】
【0163】
窒素雰囲気下、上記式(28)で表される化合物(1.00g、2.34mmol)およびtert-ブチルアルコール(222μL、2.34mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に加えた。これにカリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、5.85mL、5.85mmol)をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した後、内部標準としてベンゾトリフルオリドを加えNMR収率を求めた。上記式(2)で表される化合物の収率は7%、上記式(29)で表される化合物の収率は93%であった。
【0164】
[比較例4]
上記一般式[1]中のRにアリール基ではなく酸素置換基を有する下記式(29)で表される化合物を用いてフルオロアルキル化剤と同様の条件を作用させた場合、下記式(29)で表される出発原料が定量的に回収された。
【0165】
【化47】
【0166】
窒素雰囲気下、上記式(29)で表される化合物(0.91g、2.34mmol)およびtert-ブチルアルコール(222μL、2.34mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5.0mL)に加えた。これにカリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M,5.85mL、5.85mmol)をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した後、内部標準としてベンゾトリフルオリドを加えNMR収率を求めた。上記式(29)で表される化合物が定量的に回収された。
【0167】
[比較例5]
上記一般式[2]中のRにアリール基ではなくアリールオキシ基を有する下記式(30)で表される化合物を用いてフルオロアルキル化剤と同様の条件を作用させた場合、下記式(18)で表される目的物は18%収率に留まり、下記式(31)で表されるジスルホン酸が主生成物として82%収率で得られた。
【0168】
【化48】
【0169】
窒素雰囲気下、上記式(30)で表される化合物(0.50g、0.87mmol)およびtert-ブチルアルコール(0.25mL、2.62mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に加えた。これにカリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、2.18mL、2.18mmol)をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した後、内部標準としてベンゾトリフルオリドを加えNMR収率を求めた。上記式(18)で表される化合物の収率は18%、上記式(31)で表される化合物の収率は82%であった。
【0170】
[比較例6]
一般式[2]中のRにアリール基ではなく酸素置換基を有する下記式(31)で表される化合物を用いてフルオロアルキル化剤と同様の条件を作用させた場合、下記式(31)で表される出発原料が定量的に回収された。
【0171】
【化49】
【0172】
窒素雰囲気下、上記式(31)で表される化合物(0.50g、1.15mmol)およびtert-ブチルアルコール(0.27mL、2.88mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に加えた。これにカリウムtert-ブトキシドのTHF溶液(1M、2.88mL、2.88mmol)をゆっくり加え、室温で1時間攪拌した後、内部標準としてベンゾトリフルオリドを加えNMR収率を求めた。上記式(31)で表される化合物が定量的に回収された。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明は、既存のフルオロアルキル化剤では例の少ない、長鎖のフルオロアルキル基や、エーテル構造、官能基を有する構造など幅広いフルオロアルキル構造を導入できる、フルオロアルキルスルホン酸またはカルボン酸から誘導できるフルオロアルキル化剤、および当該フルオロアルキル化剤を使用したフルオロアルキル化反応を提供する。本発明に係るフルオロアルキル化剤により、種々の求電子剤を用いて、医薬、農薬、機能性材料等の分野で活用される多様なフルオロアルキル化合物を提供することが可能となる。例えば、上記一般式[4]の水素を有するフルオロアルキル化合物は溶媒、冷媒、作動流体など熱媒体として有用である。上記一般式[6]のケイ素を有するフルオロアルキル化合物は表面処理剤、表面改質剤として有用である。一般式[13]のヒドロキシ基を有するフルオロアルキル化合物や上記一般式[10]のスルフィド化合物は有機合成中間体やポリマー原料などとして有用である。