(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124125
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】フォトンカウンティングCT装置およびフォトンカウンティングCT装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240905BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240905BHJP
【FI】
A61B6/03 330Z
A61B6/03 320R
A61B6/03 373
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032083
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 輝
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093CA35
4C093EA07
4C093EB13
4C093FA32
(57)【要約】
【課題】半導体検出器の温度を安定させることで、検出結果の精度を向上させること。
【解決手段】実施形態のフォトンカウンティングCT装置は、半導体検出器と、半導体検出器により検出された検出データの処理を行う処理回路とを有する検出器モジュールを持つ。処理回路は、X線のばく射の停止期間において疑似的に動作する疑似動作を行うことで発熱する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体検出器と、前記半導体検出器により検出された検出データの処理を行う処理回路とを有する検出器モジュールを備えるフォトンカウンティングCT装置であって、
前記処理回路は、X線のばく射の停止期間において疑似的に動作する疑似動作を行うことで発熱する、
フォトンカウンティングCT装置。
【請求項2】
前記処理回路は、予め設定された基準温度に維持されるように、前記疑似動作を行う、
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置。
【請求項3】
前記基準温度は、前記X線のばく射時の前記処理回路の推定温度である、
請求項2に記載のフォトンカウンティングCT装置。
【請求項4】
被検体の撮影条件を取得する取得部と、
取得された前記撮影条件での前記処理回路の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に応じた前記疑似動作の動作量を決定する決定部と、
決定された前記動作量に基づく疑似動作制御信号を前記処理回路に入力する制御部と、
を備える、
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置。
【請求項5】
前記検出器モジュールの温度を取得する取得部と、
取得された前記温度と前記X線のばく射時の前記検出器モジュールの推定温度との差分に基づいて前記処理回路の発熱量を算出し、算出した前記発熱量に応じた前記疑似動作の動作量を決定する決定部と、
決定された前記動作量に基づく疑似動作制御信号を前記処理回路に入力する制御部と、
を備える、
請求項1に記載のフォトンカウンティングCT装置。
【請求項6】
前記取得部、前記決定部、および前記制御部による一連の動作が、前記X線のばく射の開始まで繰り返される、
請求項5に記載のフォトンカウンティングCT装置。
【請求項7】
前記半導体検出器は、チャンネル方向に配列された複数の検出ユニットを備え、
前記複数の検出ユニットの内、前記チャンネル方向の中央領域に位置する前記検出ユニットに対応する前記処理回路の動作量が、端部領域に位置する前記検出ユニットに対応する前記処理回路の動作量よりも大きくなるように制御される、
請求項1から6のいずれか一項に記載のフォトンカウンティングCT装置。
【請求項8】
前記検出器モジュールを冷却する冷却装置をさらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載のフォトンカウンティングCT装置。
【請求項9】
半導体検出器と、前記半導体検出器の近傍に配置された発熱体とを備えるフォトンカウンティングCT装置であって、
前記発熱体は、X線のばく射の停止期間において疑似的に動作する疑似動作を行うことで発熱する、
フォトンカウンティングCT装置。
【請求項10】
半導体検出器と、前記半導体検出器により検出された検出データの処理を行う処理回路とを有する検出器モジュールを備えるフォトンカウンティングCT装置の制御方法であって、
前記処理回路にX線のばく射の停止期間において疑似的に動作する疑似動作を行わせることで、前記処理回路を発熱させる、
フォトンカウンティングCT装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、フォトンカウンティングCT装置およびフォトンカウンティングCT装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトンカウンティングCT装置(Photon Counting Computed Tomography;PCCT)に用いられる半導体検出器は、出力特性の温度依存性が大きく、温度を一定にして用いることが求められる。他方で、高速な検出データ読み出しのため、半導体検出器と処理回路(特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit;ASIC)等)とは距離を出来るだけ短くすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理回路は半導体検出器に入射したX線フォトンの数に従い動作するため、ばく射時または非ばく射時、或いは入射フォトンの数により発熱量が変動し、これに伴って半導体検出器の温度が変動する。特に、アイドル時からX線ばく射開始時の処理回路の温度変化が顕著である。このように状況に応じて半導体検出器の温度が変動することで、スキャン時やキャリブレーション時の検出結果の精度(生成されるCT画像の画質)に問題が生じる場合があった。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、半導体検出器の温度を安定させることで、検出結果の精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のフォトンカウンティングCT装置は、半導体検出器と、半導体検出器により検出された検出データの処理を行う処理回路とを有する検出器モジュールを持つ。処理回路は、X線のばく射の停止期間において疑似的に動作する疑似動作を行うことで発熱する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の一例を示す図。
【
図2】実施形態に係る架台装置10およびX線検出器15の構成の一例を示した斜視図。
【
図3】実施形態に係るDAS16-1の構成の一例を示す図。
【
図4】実施形態に係るX線検出器15の温度変化の様子を説明する図。
【
図5】実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の第1処理(固定疑似動作)の流れの一例を示すシーケンス図。
【
図6】実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の第2処理(スキャンプランに応じた変動疑似動作)の流れの一例を示すシーケンス図。
【
図7】実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の第3処理(検出器温度に応じた変動疑似動作)の流れの一例を示すシーケンス図。
【
図8】変形例に係る疑似動作時のX線検出器15の発熱量制御を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態のフォトンカウンティングCT装置およびフォトンカウンティングCT装置の制御方法について説明する。
【0009】
<実施形態>
[フォトンカウンティングCT装置の構成]
図1は、実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の一例を示す図である。本実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1は、X線をばく射しない非スキャン時(アイドル時)において、処理回路を疑似的に動作させる疑似動作を行うことで、半導体検出器の温度を安定させる。尚、非スキャン時(アイドル時)には、被検体のスキャン(本スキャン)を行う際における非スキャン時と、キャリブレーションを行う際における非スキャン時との両方が含まれる。
【0010】
フォトンカウンティングCT装置1は、エネルギー分解能に優れた半導体検出器等の直接型検出器を用いて、X線が透過した検査対象の物質を弁別した画像データを生成することができる。フォトンカウンティングCT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。フォトンカウンティングCT装置との用語は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40との全体を示すものであってもよいし、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40との少なくとも1つを示すものであってもよい。
図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。
【0011】
[架台装置10]
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18とを有する。X線検出器15と、DAS16とは、検出器モジュール20を構成する。
【0012】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0013】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0014】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0015】
X線高電圧装置14は、例えば、図示しない高電圧発生装置と、図示しないX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器等を含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0016】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号等でもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャンネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。X線検出器15は、「半導体検出器」の一例である。
【0017】
X線検出器15は、例えば、直接検出型の検出器である。X線検出器15としては、例えば、半導体の両端に電極が取り付けられた半導体ダイオードが適用可能である。半導体に入射したX線光子は、電子・正孔対に変換される。1つのX線光子の入射により生成される電子・正孔対の数は、入射したX線光子のエネルギーに依存する。電子と正孔とは、半導体の両端に形成された一対の電極に各々引き寄せられる。一対の電極は、電子・正孔対の電荷に応じた波高値を有する電気パルスを発生する。一個の電気パルスは、入射したX線光子のエネルギーに応じた波高値を有する。
【0018】
図2は、実施形態に係る架台装置10およびX線検出器15の構成の一例を示した斜視図である。X線検出器15は、複数の検出ユニット15a(パック)および各検出ユニット15aの温度を計測する温度センサ15bを備える。検出ユニット15aのそれぞれは、図示のチャンネル方向Cに並べられて配置される。また、温度センサ15bは、各検出ユニット15aの一端に配置される。尚、温度センサ15bは、DAS16に設けられてDAS16の温度を計測するものであってもよい。
【0019】
DAS16は、例えば、制御装置18からの制御信号に従って、X線検出器15により検出されたX線光子のカウント数を示すカウントデータを複数のエネルギービンについて収集する。複数のエネルギービンに関するカウントデータは、X線検出器15の応答特性に応じて変形された、X線検出器15への入射X線に関するエネルギースペクトラムに対応する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、および収集されたビューを示すビュー番号により識別されたカウントデータのデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。
【0020】
DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。DAS16は、半導体検出器により検出された検出データの処理を行う。DAS16は、「処理回路」の一例である。
【0021】
図3は、実施形態に係るDAS16の構成の一例を示す図である。DAS16は、X線検出素子の個数に応じたチャンネル数分の読出しチャンネルを備える。これら複数の読出しチャンネルは、ASIC等の集積回路に並列的に実装されている。
図3では、1読出しチャンネル分のDAS16-1の構成のみを示している。
【0022】
DAS16-1は、前置増幅回路61と、波形整形回路63と、複数の波高弁別回路65と、複数の計数回路67と、出力回路69とを有する。DAS16-1には、DAS16-1の温度を測定する温度センサ(不図示)が設けられている。前置増幅回路61は、接続先のX線検出素子からの検出電気信号DS(電流信号)を増幅する。例えば、前置増幅回路61は、接続先のX線検出素子からの電流信号を、当該電流信号の電荷量に比例した電圧値(波高値)を有する電圧信号に変換する。前置増幅回路61には波形整形回路63が接続されている。波形整形回路63は、前置増幅回路61からの電圧信号の波形を整形する。例えば、波形整形回路63は、前置増幅回路61からの電圧信号のパルス幅を縮小する。DAS16-1は、「処理回路」の一例である。
【0023】
波形整形回路63にはエネルギー帯域(エネルギービン)の数に対応する複数の計数チャンネルが接続されている。n個のエネルギービンが設定されている場合、波形整形回路63には、n個の計数チャンネルが設けられる。各計数チャンネルは、波高弁別回路65-nと、計数回路67-nとを有する。
【0024】
波高弁別回路65-nの各々は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値であるX線検出素子により検出されたX線フォトンのエネルギーを弁別する。例えば、波高弁別回路65-nは、比較回路653-nを有する。比較回路653-nの各々の一方の入力端子には、波形整形回路63からの電圧信号が入力される。比較回路653-nの各々の他方の入力端子には、異なる閾値に対応する参照信号TH(参照電圧値)が、制御装置18から供給される。
【0025】
例えば、エネルギービンbin1のための比較回路653-1には、参照信号TH-1が供給され、エネルギービンbin2のための比較回路653-2には、参照信号TH-2が供給され、エネルギービンbinnのための比較回路653-nには、参照信号TH-nが供給される。参照信号THの各々は、上限参照値と下限参照値とを有している。比較回路653-nの各々は、波形整形回路63からの電圧信号が、参照信号THの各々に対応するエネルギービンに対応する波高値を有している場合、電気パルス信号を出力する。例えば、比較回路653-1は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin1に対応する波高値である場合(参照信号TH-1とTH-2との間にある場合)、電気パルス信号を出力する。一方、エネルギービンbin1のための比較回路653-1は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin1に対応する波高値でない場合、電気パルス信号を出力しない。また、例えば、比較回路653-2は、波形整形回路63からの電圧信号の波高値がエネルギービンbin2に対応する波高値である場合(参照信号TH-2とTH-3との間にある場合)、電気パルス信号を出力する。
【0026】
計数回路67-nは、ビューの切替周期に一致する読出し周期で、波高弁別回路65-nからの電気パルス信号を計数する。例えば、計数回路67-nには、制御装置18から、各ビューの切替タイミングにトリガ信号TSが供給される。トリガ信号TSが供給されたことを契機として計数回路67-nは、波高弁別回路65-nから電気パルス信号が入力される毎に、内部メモリに記憶されているカウント数に1を加算する。次のトリガ信号が供給されたことを契機として計数回路67-nは、内部メモリに蓄積されたカウント数のデータ(すなわち、カウントデータ)を読み出し、出力回路69に供給する。また、計数回路67-nは、トリガ信号TSが供給される毎に内部メモリに蓄積されているカウント数を初期値に再設定する。このようにして計数回路67-nは、ビュー毎にカウント数を計数する。
【0027】
出力回路69は、X線検出器15に搭載されている複数の読出しチャンネル分の計数回路67-nに接続されている。出力回路69は、複数のエネルギービンの各々について、複数の読出しチャンネル分の計数回路67-nからのカウントデータを統合してビュー毎の複数の読出しチャンネル分のカウントデータを生成する。各エネルギービンのカウントデータは、チャンネルとセグメント(列)とエネルギービンとにより規定されるカウント数のデータの集合である。各エネルギービンのカウントデータは、ビュー単位でコンソール装置40に伝送される。ビュー単位のカウントデータをカウントデータセットCSと呼ぶ。さらに、出力回路69は、X線検出器15により検出された画素ごとに検出されたデータをコンソール装置40に伝送する。検出データには、この画素ごとに検出されたデータと、エネルギービンごとのカウントデータとの少なくとも一方が含まれる。
【0028】
検出器モジュール20は、例えば、コンソール装置40から出力される疑似動作制御信号PSに基づいて、疑似動作を行う。疑似動作とは、X線のばく射を伴わずに、検出器モジュール20のASIC(DAS16)を疑似的に動作させることを言う。検出器モジュール20は、このような疑似動作を行うことで、X線をばく射しない非スキャン時(アイドル時)において、X線検出器15(半導体検出器)の温度を安定させることができる。
【0029】
図4は、実施形態に係るX線検出器15の温度変化の様子を説明する図である。
図4の(A)に示すように、従来の疑似動作を行わない構成においては、非スキャン時(アイドル時)にはDAS16は動作しないためX線検出器15の温度は低いが、スキャン開始とともにDAS16が動作して温度が上昇し、これに伴ってX線検出器15の温度が上昇し、スキャン終了後は再びアイドル状態となりX線検出器15の温度が下降する。このように、従来構成においては、条件に応じて、X線検出器15の温度が変動する。
【0030】
一方、
図4の(B)に示すように、本実施形態では、従来のアイドル時に相当する期間においてDAS16が疑似動作を行うため、この間もX線検出器15の温度が高く保たれる。この結果、アイドル時とスキャン時とにおいて、X線検出器15の温度変化を低減させることができる。
【0031】
図1に戻り、回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。尚、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11等を支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0032】
フォトンカウンティングCT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0033】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する処理回路を有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受け付けて、架台装置10、寝台装置30、およびDAS16の動作を制御する。例えば、制御装置18は、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、DAS16のエネルギービン(参照信号TH)を制御する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0034】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、天板33を、支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。また、寝台駆動装置32は、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0035】
寝台駆動装置32は、天板33だけでなく、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム17が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板33の双方が移動可能な構成であってもよい。また、フォトンカウンティングCT装置1は、被検体Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、フォトンカウンティングCT装置1は、寝台装置30に代えて被検体支持機構を有し、架台装置10は、回転フレーム17を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0036】
[コンソール装置40]
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。本実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0037】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像データ、CT画像データ、被検体Pに関する情報、撮影条件等を記憶する。メモリ41は、例えば、架台装置10から伝送された複数のエネルギービンに関するカウントデータを記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、フォトンカウンティングCT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0038】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0039】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データを収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件、エネルギービンの設定条件等の入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。
【0040】
入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。尚、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0041】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、或いは無線通信モジュール等を含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。
【0042】
処理回路50は、フォトンカウンティングCT装置1の全体の動作や、架台装置10の動作、寝台装置30の動作を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成機能53、画像処理機能54、スキャン制御機能55、表示制御機能56、疑似動作制御機能57等を実行する。これらの構成要素は、例えば、ハードウェアプロセッサ(コンピュータ)がメモリ41に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。
【0043】
メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0044】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0045】
システム制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。システム制御機能51は、例えば、エネルギービンの設定を行う。システム制御機能51は、設定されたエネルギービンの設定条件を、制御装置18に出力する。
【0046】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対してオフセット補正処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行う。
【0047】
再構成機能53は、検出データ(カウントデータ)に基づいて被検体Pに関するフォトンカウンティングCT画像を再構成する。再構成機能53は、複数のエネルギービンに関するカウントデータ、被検体Pへの入射X線のエネルギースペクトラム、およびメモリ41に記憶された検出器応答特性を表す応答関数に基づいて、複数の基底物質各々に関するX線吸収量を算出する。このように基底物質毎にX線吸収量を得る処理は物質弁別とも呼ばれている。基底物質としては、カルシウム、石灰化、骨、脂肪、筋肉、空気、臓器、病変部、硬部組織、軟部組織、造影物質等のあらゆる物質に設定可能である。再構成機能53は、算出された複数の基底物質各々に関するX線吸収量に基づいて、当該複数の基底物質のうちの画像化対象の基底物質の空間分布を表現するフォトンカウンティングCT画像を再構成し、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。
【0048】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面の断面像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0049】
スキャン制御機能55は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能55は、位置決め画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0050】
表示制御機能56は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI画像等を、ディスプレイ42に表示させる。
【0051】
疑似動作制御機能57は、検出器モジュール20(DAS16)による疑似動作の制御を行う。疑似動作制御機能57は、例えば、取得機能571と、決定機能572と、制御機能573とを備える。
【0052】
取得機能571は、例えば、入力インターフェース43を介して入力された、被検体Pの撮影条件(スキャンプラン)を取得する。撮影条件には、X線の大きさ(管電圧、管電流)、被検体Pの大きさ(体重)、年齢、性別等の被検体情報等が含まれる。また、取得機能571は、X線検出器15(或いはDAS16)に設けられた温度センサ15bにより計測された温度を取得する。取得機能571は、「取得部」の一例である。
【0053】
決定機能572は、取得された撮影条件でのX線のばく射時のDAS16の発熱量(推定温度)を算出し、算出した発熱量に応じたDAS16の疑似動作の動作量を決定する。また、決定機能572は、取得された検出器モジュール20(X線検出器15、DAS16)の温度とX線のばく射時の検出器モジュール20の推定温度との差分に基づいてDAS16の発熱量を算出し、算出した発熱量に応じたDAS16の疑似動作の動作量を決定する。決定機能572は、「決定部」の一例である。
【0054】
制御機能573は、決定された動作量に基づく疑似動作制御信号PSをDAS16に入力する。DAS16は、この疑似動作制御信号PSに応じて、疑似動作を行う。制御機能573は、「制御部」の一例である。
【0055】
上記構成により、フォトンカウンティングCT装置1は、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュート等のスキャン態様で被検体Pのスキャンを行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。コンベンショナルスキャンとは、天板33を静止させた状態で回転フレーム17を回転させて被検体Pを円軌道でスキャンする態様である。ステップアンドシュートとは、天板33の位置を一定間隔で移動させて、コンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0056】
[処理フロー]
[第1処理(固定疑似動作)]
次に、フォトンカウンティングCT装置1の疑似動作処理の一例を説明する。
図5は、実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の第1処理(固定疑似動作)の流れの一例を示すシーケンス図である。
図5に示す第1処理は、フォトンカウンティングCT装置1のアイドル時に実行される。
【0057】
まず、コンソール装置40の決定機能572は、DAS16が予め設定された基準温度に維持されるように、DAS16の疑似動作の動作量を決定する(ステップS101)。基準温度は、例えば、スキャン時(X線のばく射時)のDAS16の推定温度である。
【0058】
次に、コンソール装置40の制御機能573は、決定された動作量に基づく疑似動作制御信号PSをDAS16に送信する(ステップS103)。
【0059】
次に、検出器モジュール20のDAS16は、疑似動作制御信号PSに応じて、疑似動作を行う(ステップS105)。DAS16は、疑似動作を行うことで、X線をばく射しない非スキャン時(アイドル時)において、X線検出器15(半導体検出器)の温度を上昇させることができる。その後、スキャン開始とともに、DAS16は、疑似動作を停止する。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0060】
[第2処理(変動疑似動作)]
次に、フォトンカウンティングCT装置1の疑似動作処理の他の例を説明する。
図6は、実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の第2処理(スキャンプランに応じた変動疑似動作)の流れの一例を示すシーケンス図である。
図6に示す第2処理は、フォトンカウンティングCT装置1のアイドル時に実行される。
【0061】
まず、コンソール装置40の取得機能571は、操作者により入力インターフェース43を介して入力された、被検体Pのスキャンプランを取得する(ステップS201)。
【0062】
次に、決定機能572は、取得された撮影条件でのDAS16の発熱量(例えば、平均発熱量)を算出する(ステップS203)。次に、決定機能572は、算出した発熱量に応じたDAS16の疑似動作の動作量を決定する(ステップS205)。
【0063】
次に、コンソール装置40の制御機能573は、決定された動作量に基づく疑似動作制御信号PSをDAS16に送信する(ステップS207)。
【0064】
次に、検出器モジュール20のDAS16は、疑似動作制御信号PSに応じて、疑似動作を行う(ステップS209)。DAS16は、疑似動作を行うことで、X線をばく射しない非スキャン時(アイドル時)において、X線検出器15(半導体検出器)の温度を上昇させることができる。第2処理(変動疑似動作)では、撮影条件に応じて算出された発熱量に基づいて動作量が決定されているため、非スキャン時のX線検出器15を、スキャン時により精緻に近づけることができる。その後、スキャン開始とともに、DAS16は、疑似動作を停止する。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0065】
[第3処理(変動疑似動作)]
次に、フォトンカウンティングCT装置1の疑似動作処理の他の例を説明する。
図7は、実施形態に係るフォトンカウンティングCT装置1の第3処理(検出器温度に応じた変動疑似動作)の流れの一例を示すシーケンス図である。
図7に示す第3処理は、フォトンカウンティングCT装置1のアイドル時に実行される。
【0066】
まず、コンソール装置40の決定機能572は、DAS16が予め設定された基準温度に維持されるように、DAS16の疑似動作の動作量を決定する(ステップS301)。
【0067】
次に、制御機能573は、決定された動作量に基づく疑似動作制御信号PSをDAS16に送信する(ステップS303)。
【0068】
次に、検出器モジュール20のDAS16は、疑似動作制御信号PSに応じて、疑似動作を行う(ステップS305)。DAS16は、疑似動作を行うことで、X線をばく射しない非スキャン時(アイドル時)において、X線検出器15(半導体検出器)の温度を上昇させることができる。
【0069】
DAS16が疑似動作を行っている間、検出器モジュール20(X線検出器15、DAS16)に設けられた温度センサ15bは温度を計測し、温度情報をコンソール装置40に送信する(ステップS307)。
【0070】
次に、決定機能572は、取得された温度に基づいて、検出器モジュール20の温度をスキャン時の温度に近付けるための発熱量を算出し、算出した発熱量に応じたDAS16の疑似動作の動作量を決定することで、疑似動作の調整を行う(ステップS309)。
【0071】
次に、制御機能573は、決定された動作量(調整済み動作量)に基づく疑似動作制御信号PSをDAS16に送信する(ステップS311)。
【0072】
次に、検出器モジュール20のDAS16は、疑似動作制御信号PSに応じて、調整済み動作量での疑似動作を行う(ステップS305)。すなわち、取得機能571、決定機能572、および制御機能573による一連の動作が、記X線のばく射の開始まで繰り返される。このような検出器モジュール20(X線検出器15、DAS16)の温度と、DAS16の疑似動作の動作量とのPID(Proportional Integral Differential)制御を行うことで、非スキャン時の検出器モジュール20の温度を、スキャンの開始までに、スキャン時の温度に近付ける制御を行うことができる。その後、スキャン開始とともに、DAS16は、疑似動作を停止する。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0073】
<変形例>
[X線検出器の形状に応じた疑似動作制御]
次に、変形例について説明する。
図8は、変形例に係る疑似動作時のX線検出器15の発熱量制御を説明する図である。
図8に示すように、X線検出器15には、複数の検出ユニット15a(パック)がチャンネル方向Cに並べられて配置される。スキャン時にX線管11から照射されX線検出器15に到達するX線量は、端部領域ERに位置する検出ユニット15aよりも、中央領域CRに位置する検出ユニット15aの方が大きくなる。これに伴い、中央領域CRに位置する検出ユニット15aの温度上昇は、端部領域ERに位置する検出ユニット15aの温度上昇よりも大きくなる。この温度上昇の度合いの差異を考慮し、疑似動作において、中央領域CRに位置する検出ユニット15aに対応するDAS16の動作量が、端部領域ERに位置する検出ユニット15aに対応するDAS16の動作量よりも大きくなるように制御する。
【0074】
[冷却装置]
検出器モジュール20において疑似動作を行った結果、アイドル時およびスキャン時のトータルでのX線検出器15の平均温度が上がってしまい、X線検出器15の特性が劣化する、或いはX線検出器15の動作上限温度にかかってしまうことが懸念される。このため、検出器モジュール20内に冷却装置(不図示)を設け、検出器温度安定制御に足るように、架台装置10内の全体を冷やすように制御する。
【0075】
[DAS16以外の装置の疑似制御]
上記の実施形態においては、検出器モジュール20のDAS16を疑似動作させる構成を説明したが、疑似動作の対象はこれに限らない。X線検出器15の近傍に設置された発熱体を用いて同様の疑似動作制御を行ってもよい。この場合、本スキャン中の温度制御も同様の手法で行うことが可能となる。
【0076】
以上説明した実施形態によれば、X線検出器15(半導体検出器)と、X線検出器15により検出された検出データの処理を行うDAS16(処理回路)とを有する検出器モジュール20を備えるフォトンカウンティングCT装置1において、処理回路は、X線のばく射の停止期間において疑似的に動作する疑似動作を行うことで発熱することで、半導体検出器の温度を安定させ、検出結果の精度を向上させることができる。
【0077】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…フォトンカウンティングCT装置,10…架台装置,11…X線管,12…ウェッジ,13…コリメータ,14…X線高電圧装置,15…X線検出器,16…データ収集システム,17…回転フレーム,18…制御装置,30…寝台装置,31…基台,32…寝台駆動装置,33…天板,34…支持フレーム,40…コンソール装置,41…メモリ,42…ディスプレイ,43…入力インターフェース,44…ネットワーク接続回路,50…処理回路,51…システム制御機能,52…前処理機能,53…再構成機能,54…画像処理機能,55…スキャン制御機能,56…表示制御機能,57…疑似動作制御機能,571…取得機能,572…決定機能,573…制御機能