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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124130
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】非接触式眼圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61B3/16 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032092
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 尚樹
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA20
4C316AB16
4C316FA12
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】小型化(軽量化)及び低コスト化が可能な非接触式眼圧計を提供する。
【解決手段】被検者自身による左右の被検眼Eの眼圧測定に用いられる非接触式眼圧計10において、左右の被検眼Eに対応して対を為して設けられ、左右の被検眼Eに流体(圧縮空気)を吹き付ける左右のノズル21bと、流体を左右のノズル21bの双方に供給する1個の流体供給装置(圧縮空気供給装置34d)と、を備え、左右のノズル21bが、流体供給装置から供給された流体を左右の被検眼Eに同時に吹き付ける。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者自身による左右の被検眼の眼圧測定に用いられる非接触式眼圧計において、
左右の前記被検眼に対応して対を為して設けられ、左右の前記被検眼に流体を吹き付ける左右のノズルと、
前記流体を左右の前記ノズルの双方に供給する1個の流体供給装置と、
を備え、
左右の前記ノズルが、前記流体供給装置から供給された前記流体を左右の前記被検眼に同時に吹き付ける非接触式眼圧計。
【請求項2】
左右の前記ノズルに対応して対を為して設けられ、左右の前記ノズルがそれぞれ取り付けられた左右のチャンバーを備え、
前記流体供給装置が、左右の前記チャンバーを介して左右の前記ノズルの双方に前記流体を供給する請求項1に記載の非接触式眼圧計。
【請求項3】
前記流体が圧縮空気であり、
前記流体供給装置が、
左右の前記チャンバーに接続されたシリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に設けられたピストンと、
前記シリンダ内で前記ピストンを移動させるアクチュエータと、
を備える請求項2に記載の非接触式眼圧計。
【請求項4】
前記流体が圧縮空気であり、
前記流体供給装置が、
ポンプと、
左右の前記チャンバーに対して流路を介して接続されており、前記ポンプによって内部が予め定めた設定圧力に加圧される空気室と、
前記空気室から前記流路への圧縮空気の供給量を調整するバルブと、
を備える請求項2に記載の非接触式眼圧計。
【請求項5】
前記流体が圧縮空気であり、
前記流体供給装置が、
左右の前記チャンバーに対して流路を介して接続されたシリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に設けられたピストンと、
一端と他端とを有し、前記一端が前記ピストンを前記シリンダの奥側に向かう第1方向に付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の前記他端に接続された固定部材と、
前記ピストンのピストン軸に係合した状態で前記ピストン軸を前記第1方向とは反対方向である第2方向に予め定められた距離だけ移動させた後、前記ピストン軸との係合を解除する直動機構と、
を備える請求項2に記載の非接触式眼圧計。
【請求項6】
前記流体が圧縮空気であり、
前記流体供給装置が、
前記圧縮空気を貯留するボンベと、
左右の前記チャンバーに対して流路を介して接続されており、前記ボンベから供給された圧縮空気を貯める蓄圧タンクと、
前記流路を開閉するバルブと、
を備える請求項2に記載の非接触式眼圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者自身による左右の被検眼の眼圧測定に用いられる非接触式眼圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼の角膜に向けてノズルから空気(流体)を吹き付けることで角膜を変形させてその変形状態を検出することにより、角膜に接触することなく被検眼の眼圧値を測定する非接触式眼圧計が知られている(特許文献1から3参照)。この非接触式眼圧計は、ノズルによる角膜への空気の吹き付けに合せて角膜に指標光を照射すると共に角膜にて反射された指標光の反射光の光量を検出し、角膜の変形状態が扁平状態(圧平状態)になった場合の反射光の光量と空気の圧力とに基づいて被検眼の眼圧値を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-047036号公報
【特許文献2】特開2018-143532号公報
【特許文献3】特開2001-238856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、緑内障の診断には眼圧値が指標として用いられる。この眼圧値は変動するので毎日(1日に複数回でも可)測定することが望ましい。この場合には、被検者自身が自宅で被検眼の眼圧測定を行うための眼圧計が必要となる。このような眼圧計として接触式眼圧計が知られているが、この接触式眼圧計の操作は煩雑である。このため、被検者が上記特許文献1から3(特に特許文献3)に記載されているような非接触式眼圧計を用いて自身の眼圧測定を実行可能にすることが要望されている。
【0005】
ここで、被検者自身で被検眼の眼圧測定を実行可能な非接触式眼圧計が片眼のみの眼圧測定に対応しているものである場合には、左右の被検眼の眼圧測定を順番に実行する必要がある。この場合には、眼圧測定、すなわち被検眼への圧縮空気の吹き付けを2回実行する必要あるので、被検者の不快感が増加してしまう。このため、非接触式眼圧計として両眼の眼圧測定に対応しているもの用いることが好ましいが、この場合には左右の被検眼への圧縮空気を吹き付ける2つのエア吹付機構を非接触式眼圧計に設ける必要があり、非接触式眼圧計の大型化(重量化の増加)及びコスト増加の問題が生じる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、小型化(軽量化)及び低コスト化が可能な非接触式眼圧計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するための非接触式眼圧計は、被検者自身による左右の被検眼の眼圧測定に用いられる非接触式眼圧計において、左右の被検眼に対応して対を為して設けられ、左右の被検眼に流体を吹き付ける左右のノズルと、流体を左右のノズルの双方に供給する1個の流体供給装置と、を備え、左右のノズルが、流体供給装置から供給された流体を左右の被検眼に同時に吹き付ける。
【0008】
この非接触式眼圧計によれば、左右のノズルに対して流体を供給する流体供給装置を1個に共通化することができる。
【0009】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、左右のノズルに対応して対を為して設けられ、左右のノズルがそれぞれ取り付けられた左右のチャンバーを備え、流体供給装置が、左右のチャンバーを介して左右のノズルの双方に流体を供給する。これにより、左右のノズルに対して流体を供給する流体供給装置を1個に共通化することができるので、非接触式眼圧計を小型化及び低コスト化することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、流体が圧縮空気であり、流体供給装置が、左右のチャンバーに接続されたシリンダと、シリンダ内に移動自在に設けられたピストンと、シリンダ内でピストンを移動させるアクチュエータと、を備える。これにより、非接触式眼圧計を小型化及び低コスト化することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、流体が圧縮空気であり、流体供給装置が、ポンプと、左右のチャンバーに対して流路を介して接続されており、ポンプによって内部が予め定めた設定圧力に加圧される空気室と、空気室から流路への圧縮空気の供給量を調整するバルブと、を備える。これにより、非接触式眼圧計を小型化及び低コスト化することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、流体が圧縮空気であり、流体供給装置が、左右のチャンバーに対して流路を介して接続されたシリンダと、シリンダ内に移動自在に設けられたピストンと、一端と他端とを有し、一端がピストンをシリンダの奥側に向かう第1方向に付勢する付勢部材と、付勢部材の他端に接続された固定部材と、ピストンのピストン軸に係合した状態でピストン軸を第1方向とは反対方向である第2方向に予め定められた距離だけ移動させた後、ピストン軸との係合を解除する直動機構と、を備える。これにより、非接触式眼圧計を小型化及び低コスト化することができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る非接触式眼圧計において、流体が圧縮空気であり、流体供給装置が、圧縮空気を貯留するボンベと、左右のチャンバーに対して流路を介して接続されており、ボンベから供給された圧縮空気を貯める蓄圧タンクと、流路を開閉するバルブと、を備える。これにより、複雑な流体供給装置を用いることなく、左右のノズルに対して流体を同時供給することができるので、非接触式眼圧計をより小型化及び低コスト化することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、非接触式眼圧計の小型化(軽量化)及び低コスト化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態の非接触式眼圧計の外観斜視図である。
図2】第1実施形態の非接触式眼圧計の上面図である。
図3】第1実施形態の非接触式眼圧計を被検者側から見た正面図である。
図4】光学系の一部及びエア吹付機構の一部を側方(X方向)側から見た側面概略図である。
図5】光学系の一部及びエア吹付機構の一部を上方(Y方向)側から見た上面概略図である。
図6】エア吹付機構を上方(Y方向)側から見た上面概略図である。
図7図6中の7-7線に沿うエア吹付機構の断面図である。
図8】制御装置の機能ブロック図である。
図9】被検者に対してミラーにより呈示される左右の被検眼の前眼部像の一例を示した図である。
図10】第1実施形態の非接触式眼圧計による左右の被検眼の眼圧測定処理の流れを示したフローチャートである。
図11】第2実施形態の非接触式眼圧計のエア吹付機構に設けられている圧縮空気供給装置を説明するための説明図である。
図12】第2実施形態の圧縮空気供給装置に設けられている固定弁(符号XIIA参照)及び回転弁(符号XIIB参照)の正面図である。
図13】第3実施形態の非接触式眼圧計のエア吹付機構に設けられている圧縮空気供給装置を説明するための説明図である。
図14】第3実施形態の非接触式眼圧計のエア吹付機構に設けられている圧縮空気供給装置を説明するための説明図である。
図15】第4実施形態の非接触式眼圧計のエア吹付機構に設けられている圧縮空気供給装置を説明するための説明図である。
図16】第5実施形態の非接触式眼圧計を説明するための説明図である。
図17】第6実施形態の非接触式眼圧計を説明するための説明図である。
図18】第7実施形態の非接触式眼圧計の光学系の一部及びエア吹付機構を側方(X方向)側から見た側面概略図である。
図19】左右の表示部により被検者に対して呈示される左右の前眼部像の一例を示した説明図である。
図20】第7実施形態の非接触式眼圧計の変形例を示した外観斜視図である。
図21】筐体の前面の変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の非接触式眼圧計10の外観斜視図である。図2は、第1実施形態の非接触式眼圧計10の上面図である。図3は、第1実施形態の非接触式眼圧計10を被検者側から見た正面図である。なお、図中のX方向は被検者を基準とした左右方向(被検眼Eの眼幅方向)であり、Y方向は上下方向である。また、X方向及びY方向の双方に直交するZ方向は、被検者に近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向)である。
【0017】
図1から図3に示すように、非接触式眼圧計10は、被検者自身による左右の被検眼E(両眼)の眼圧測定に用いられるものであり、例えば眼科(医療機関)から被検者に貸与される。この非接触式眼圧計10は、左右の被検眼Eの眼圧測定を同時に実行するために、双眼鏡型の形状を有する。非接触式眼圧計10による左右の被検眼Eの眼圧測定時には、最初に、被検者が左右の被検眼Eに対する非接触式眼圧計10のXY方向の手動アライメントである手動XYアライメントを実行する。次いで、非接触式眼圧計10がZ方向の自動アライメントである自動Zアライメントを実行する。そして、非接触式眼圧計10が、左右の被検眼Eの角膜Ecに向けて左右のノズル21bから圧縮空気(ガスなどの各種流体を含む)を吹き付けることで角膜Ecを変形させてその変形状態を検出することにより、角膜Ecに接触することなく左右の被検眼Eの眼圧値を同時測定する。
【0018】
非接触式眼圧計10には、光学系20が左右の被検眼Eに対応して対を為して設けられている。また、非接触式眼圧計10には、エア吹付機構34が設けられている。さらに、非接触式眼圧計10には、左右の光学系20及びエア吹付機構34を収納する筐体11が設けられている。筐体11は、左右の被検眼Eの眼圧測定時に被検者により把持される。また、筐体11内には、制御装置16(図4参照)が設けられている。
【0019】
左右の光学系20は、被検者に対する被検眼Eの前眼部像EP(図4参照)の呈示、被検眼Eに対する各種光束(視標、指標)の投影、前眼部像EPの撮像、被検眼Eに対する非接触式眼圧計10の自動Zアライメント、及び眼圧測定時の被検眼Eの変形状態の検出等を実行する。なお、被検眼E(左眼)に対応した光学系20と、被検眼E(右眼)に対応した光学系20と、は基本的に同じ構成である。このため、左右の被検眼Eの一方に対応した光学系20を代表例として説明する。
【0020】
エア吹付機構34は、左右の被検眼Eの眼圧測定時に左右のノズル21bから左右の被検眼Eの角膜Ecに対して圧縮空気を同時に吹き付ける。
【0021】
図4は、光学系20の一部及びエア吹付機構34の一部を側方(X方向)側から見た側面概略図である。図5は、光学系20の一部及びエア吹付機構34の一部を上方(Y方向)側から見た上面概略図である。なお、光学系20は、図4から図5に示した構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0022】
図4及び図5に示すように、光学系20は、大別して、前眼部像呈示光学系21と、前眼部観察光学系21Aと、XYアライメント指標投影光学系22と、固視標投影光学系23と、レチクル投影光学系23Aと、圧平検出光学系24と、Zアライメント指標投影光学系25と、Zアライメント検出光学系26と、を備える。
【0023】
前眼部像呈示光学系21は、空気吹き付け用のノズル21bの先端部が貫通する前眼部窓ガラス21cを通して、被検者(被検眼E)に対して被検眼Eの前眼部像EPを呈示する。この前眼部像呈示光学系21には、前眼部照明光源21a(図5参照)が設けられている。また、前眼部像呈示光学系21は、Z方向に平行な光軸O1(光学系20の主光軸)を有している。この光軸O1上には、ノズル21b、前眼部窓ガラス21c、チャンバー34a(ガラス板34b、チャンバー窓ガラス21d)、ハーフミラー21e、ハーフミラー21f、レンズ21g、バリアブルクロスシリンダ(Variable Cross Cylinder:VCC)レンズであるVCCレンズ21h、レンズ21i、ハーフミラー21j、ハーフミラー21k、及びミラー21mが設けられている。
【0024】
前眼部照明光源21aは、前眼部窓ガラス21cの周囲位置に複数個設けられており、被検眼Eの前眼部を直接照明する。
【0025】
ノズル21bは、後述するエア吹付機構34のチャンバー34aに接続しており、被検眼Eの角膜Ecに圧縮空気を吹き付ける。このノズル21bの先端部は、前眼部窓ガラス21cを貫通している。
【0026】
前眼部照明光源21aによる照明により被検眼Eの前眼部で反射された光(以下、入射光という)は、ノズル21bの外側を通り、前眼部窓ガラス21c、チャンバー34a(ガラス板34b、チャンバー窓ガラス21d)、ハーフミラー21e、ハーフミラー21f、レンズ21g、VCCレンズ21h、レンズ21i、ハーフミラー21j、及びハーフミラー21kを通過して、ミラー21mに入射する。
【0027】
ミラー21mは、左右の前眼部像呈示光学系21を跨るように1個だけ設けられている(図2参照)。ミラー21mは、前眼部窓ガラス21cからハーフミラー21kを経て入射した入射光を反射する。この反射光は、入射光が通った経路と同じ経路を逆向きに進行して被検眼E(眼底Ef)に入射する。これにより、被検者(左右の被検眼E)に対して左右の被検眼Eの前眼部像EP(虚像)が呈示される。前眼部像EP(虚像)は、被検眼Eの眼底Ef及び後述のレチクル投影光学系23Aと共役関係にある。なお、ミラー21mが左右の前眼部像呈示光学系21ごとに個別に設けられていてもよい。
【0028】
ハーフミラー21eは、光軸O1から光軸O2を分岐させる。ハーフミラー21fは、光軸O1から光軸O3を分岐させる。
【0029】
VCCレンズ21h及びレンズ21iは被検眼Eの矯正光学系である。これらVCCレンズ21h及びレンズ21iを変位(回転、移動)させることで、被検眼Eのピントをミラー21mにより呈示される前眼部像EPに合わせることができる。
【0030】
VCCレンズ21hは、被検眼Eの円柱度数(Cylinder:C、乱視度数)及び乱視軸(AXIS:A、乱視軸角度)に応じて被検眼Eの乱視を矯正する。VCCレンズ21hは、正及び負の一対のシリンダーレンズを有する。一対のシリンダーレンズは、光軸O1を中心として光軸O1の軸周り方向に歯車を介して互いに反対方向に回転可能である(図4中の矢印A1参照)。また、一対のシリンダーレンズは、光軸O1を中心として光軸O1の軸周り方向に歯車を介して一体に同一方向に回転可能(図4中の矢印A2参照)である。この2つの設定により、被検眼Eの乱視(円柱度数、乱視軸)を矯正可能である。なお、VCCレンズ21h(一対のシリンダーレンズ)の設定は、手動操作又は自動(電動駆動)で実行することができる。
【0031】
レンズ21iは、光軸O1(Z方向)に沿って移動可能である(図4中の矢印A3参照)。被検眼Eの球面度数(Sphere:S)に応じてレンズ21iを光軸O1(Z方向)に沿って移動させることで、被検眼Eの球面度数(近視、遠視)を矯正することができる。これにより、ミラー21mにより呈示される前眼部像EPに対して被検眼Eのピントを合わせることができる。なお、レンズ21iの移動は、手動操作又は自動(電動駆動)で実行することができる。また、高齢者は水晶体の調整が困難であるので3D(ディオプタ)程度の加入度数を加えた設定にしてもよく、さらにこの設定を標準設定にしてもよい。
【0032】
ハーフミラー21jは、光軸O1から光軸O4を分岐させる。ハーフミラー21kは、光軸O1から光軸O5を分岐させる。
【0033】
前眼部観察光学系21A(図4参照)は、被検眼Eの前眼部からの入射光を撮像する。前眼部観察光学系21Aは、ハーフミラー21Aaと、レンズ21Abと、撮像素子21Acとを備える。なお、前眼部観察光学系21Aは、ハーフミラー21eを前眼部像呈示光学系21と共用している。
【0034】
ハーフミラー21Aaは、光軸O2上に配置されており、ハーフミラー21eにより反射された入射光をレンズ21Abに向けて反射する。また、ハーフミラー21Aaは、後述のコリメータレンズ22fから入射するXYアライメント指標光を透過して、ハーフミラー21eに向けて出射する。
【0035】
レンズ21Abは、ハーフミラー21Aaにより反射された入射光を撮像素子21Acの受光面上に結像する。
【0036】
撮像素子21Acは、例えばCCD(Charge Coupled Device)型又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型のイメージセンサが用いられる。撮像素子21Acは、その受光面に入射した入射光を撮像して被検眼Eの前眼部像EP(撮像信号)を生成し、この前眼部像EPを後述の制御装置16へ出力する。
【0037】
XYアライメント指標投影光学系22(図4参照)は、光軸O2上に設けられており、XYアライメント指標光を被検眼Eの角膜Ecに正面から投影する。なお、本実施形態では、XYアライメント指標光は赤外光である。このため、XYアライメント指標光は、手動XYアライメントには直接利用はされず、被検眼Eの眼圧測定に用いられる。
【0038】
XYアライメント指標投影光学系22は、XYアライメント用光源22aと、集光レンズ22bと、開口絞り22cと、ピンホール板22dと、光軸O2上に配置されたダイクロイックミラー22e及びコリメータレンズ22fと、を有する。なお、XYアライメント指標投影光学系22は、ハーフミラー21Aaを前眼部観察光学系21Aと共用し、ハーフミラー21eを前眼部像呈示光学系21と共用している。
【0039】
XYアライメント用光源22aは赤外光を出射する。コリメータレンズ22fは、その焦点がピンホール板22dに一致するように、XYアライメント指標投影光学系22の光路上に配置されている。このXYアライメント指標投影光学系22では、XYアライメント用光源22aから出射された赤外光が、集光レンズ22bにより集束されつつ開口絞り22cを通過して、ピンホール板22dの穴部へと導かれる。
【0040】
ピンホール板22dの穴部を通過した赤外光は、ダイクロイックミラー22eにより反射されてコリメータレンズ22fへと導かれ、さらにコリメータレンズ22fで平行光とされた後でハーフミラー21Aaに向けて出射される。この赤外光の平行光は、ハーフミラー21Aaを透過してさらにハーフミラー21eで反射された後、前眼部像呈示光学系21の光軸O1に沿って被検眼Eに向けて進行する。これにより、赤外光の平行光は、チャンバー34a(ガラス板34b、チャンバー窓ガラス21d)を透過した後、ノズル21bの内部を通過することでXYアライメント指標光として被検眼Eに入射する。
【0041】
被検眼Eに入射したXYアライメント指標光は、角膜Ec等で反射してプルキンエ像Lp(図19参照)を形成する。なお、XYアライメント指標光は、コリメータレンズ22fにより角膜Ecの頂点(角膜頂点)へ平行光束で照射される(図4では図示を省略)。このプルキンエ像Lpを含む被検眼Eの前眼部像EPは、ノズル21bの内側及び外側(主に外側)を通って既述の前眼部観察光学系21Aに入射し、この前眼部観察光学系21Aで撮像可能である。これにより、前眼部観察光学系21Aが撮像した前眼部像EP内でのプルキンエ像Lpの位置に基づいて、手動XYアライメントが適正に実行された否かを確認することができる。
【0042】
固視標投影光学系23(図4参照)は、被検眼Eに固視標光を投影する。この固視標投影光学系23は、光軸O4に沿って配置された固視標用光源23aとコリメータレンズ23bとを有する。また、固視標投影光学系23は、ハーフミラー21jを前眼部像呈示光学系21と共用している。
【0043】
固視標用光源23aは、眼底Efと共役な位置に配置されており、可視光を固視標光として出射する。この固視標光は、コリメータレンズ23bにより略平行光とされてハーフミラー21jに向けて出射され、ハーフミラー21jで反射されることで前眼部観察光学系21Aの光軸O1に沿って被検眼Eに向けて進行する。これにより、固視標光は、レンズ21iからチャンバー34a(ガラス板34b、チャンバー窓ガラス21d)を透過した後、ノズル21bの内部を通過して被検眼Eに入射する。この固視標光を被検者に固視目標として注視させることにより、被検者の視線を固定可能である。
【0044】
なお、固視標投影光学系23を光軸O4上に設ける代わりに、固視標用光源23aを光軸O2上に設けて、ダイクロイックミラー22e、コリメータレンズ22f、ハーフミラー21Aa、及びハーフミラー21eなどを介して、被検眼Eに固視標光を投影してもよい。ここで被検眼Eが強度近視である場合には、眼底Efで固視標光がボケてしまうので、固視標用光源23aは光軸O4上に設けること好ましい。
【0045】
レチクル投影光学系23A(図4参照)は、被検眼Eに赤十字レチクル光Lrを投影する。このレチクル投影光学系23Aは、光軸O5上に配置されたレチクル光源23Aaとレンズ23Abとを有する。また、レチクル投影光学系23Aは、ハーフミラー21kを前眼部像呈示光学系21と共用している。
【0046】
レチクル光源23Aaは、可視光である赤十字レチクル光Lrを出射する。この赤十字レチクル光Lrは、レチクル光源23Aaからレンズ23Abを経てハーフミラー21kに向けて出射され、ハーフミラー21kで反射されることで前眼部観察光学系21Aの光軸O1に沿って被検眼Eに向けて進行する。これにより、赤十字レチクル光Lrは、ハーフミラー21jからチャンバー34a(ガラス板34b、チャンバー窓ガラス21d)を透過した後、ノズル21bの内部を通過して被検眼Eに入射する。これにより、被検眼Eに赤十字レチクル光Lrが投影される。この被検眼Eに投影された赤十字レチクル光Lrは、被検者による非接触式眼圧計10の手動XYアライメントに利用される。
【0047】
圧平検出光学系24(図4参照)は、角膜Ecで反射されたXYアライメント指標光の反射光であるXY指標反射光を受光して、このXY指標反射光の光量を示す受光信号を後述の制御装置16へ出力する。圧平検出光学系24は、光軸O3に沿って配置されたレンズ24aとピンホール板24bと受光センサ24cとを有する。なお、圧平検出光学系24は、ハーフミラー21fを前眼部像呈示光学系21と共用している。
【0048】
レンズ24aは、角膜Ecの表面が平面とされた場合に、XY指標反射光をピンホール板24bの開口に集光させる。ピンホール板24bの開口は、レンズ24aの焦点位置に設けられている。
【0049】
受光センサ24cは、例えば受光したXY指標反射光の光量に応じた受光信号を出力するフォトダイオードである。受光センサ24cは受光信号を制御装置16へ出力する。
【0050】
XY指標反射光は、ノズル21bの内部、チャンバー34a(ガラス板34b、チャンバー窓ガラス21d)、及びハーフミラー21eを透過してハーフミラー21fに至る。そして、XY指標反射光の一部は、ハーフミラー21fで反射された後、レンズ24aを経てピンホール板24bに入射する。
【0051】
圧平検出光学系24は、ノズル21bからの圧縮空気の吹き付けにより角膜Ecの表面が平らな扁平状態(圧平状態)になった場合に、圧平検出光学系24に進行してきたXY指標反射光の全体を、ピンホール板24bを通して受光センサ24cに到達させる。また、圧平検出光学系24は、角膜Ecが扁平状態以外の状態ではXY指標反射光をピンホール板24bで部分的に遮りつつ受光センサ24cに到達させる。従って、圧平検出光学系24から出力されるXY指標反射光の受光信号の信号強度は、角膜Ecの表面が凸状態から扁平状態に変化するのに従って次第に増加し、さらに扁平状態から凹状態に変化するのに従って次第に減少する。
【0052】
Zアライメント指標投影光学系25(図5参照)は、角膜Ecに対して、斜め方向から自動Zアライメント用のZアライメント指標光を投影する。このZアライメント指標投影光学系25は、光軸O6上に沿って、Zアライメント用光源25aと、集光レンズ25bと、開口絞り25cと、ピンホール板25dと、コリメータレンズ25eと、を備える。
【0053】
Zアライメント用光源25aは、赤外光(例えば波長860nm)を出射する。開口絞り25cは、コリメータレンズ25eに関して角膜Ecの頂点と共役な位置に設けられている。コリメータレンズ25eは、ピンホール板25dの穴部に焦点を一致させるように配置されている。
【0054】
Zアライメント用光源25aから出射された赤外光は、集光レンズ25bにより集光されつつ開口絞り25cを通過してピンホール板25dへと進行する。そして、ピンホール板25dの穴部を通過した赤外光は、コリメータレンズ25eで平行光とされた後に、Zアライメント指標光として被検眼Eに入射して、角膜Ecで反射されることにより被検眼Eに輝点像を形成する。
【0055】
Zアライメント検出光学系26(図5参照)は、Zアライメント指標光の角膜Ecによる反射光(以下、Z指標反射光と略す)を受光して、光学系20と角膜EcとのZ方向の位置関係を検出する。このZアライメント検出光学系26は、光軸O7上に沿って、結像レンズ26aと、シリンドリカルレンズ26bと、受光センサ26cと、を有している。
【0056】
シリンドリカルレンズ26bは、Y方向にパワーを有するものが用いられる。受光センサ26cは、その受光面におけるZ指標反射光の受光位置を検出可能なセンサであり、例えばラインセンサ又はPSD(Position Sensitive Detector)が用いられる。
【0057】
Z指標反射光は、結像レンズ26aで集束した後にシリンドリカルレンズ26bへと進行し、このシリンドリカルレンズ26bによりY方向に集光されることで受光センサ26c上に輝点像を形成する。
【0058】
受光センサ26cは、XZ平面内においては結像レンズ26aに関して、Zアライメント指標投影光学系25により被検眼Eに形成された前述の輝点像と共役な位置関係にある。また、受光センサ26cは、YZ平面内においては結像レンズ26a及びシリンドリカルレンズ26bに関して、角膜Ecの頂点と共役な位置関係にある。すなわち、受光センサ26cは開口絞り25cと共役関係にあるので、Y方向に角膜Ecがずれたとしても角膜Ecの表面におけるZ指標反射光は効率良く受光センサ26cに入射する。そして、受光センサ26cは、シリンドリカルレンズ26bにより集光された輝点像の受光信号を制御装置16へと出力する。
【0059】
図6は、エア吹付機構34を上方(Y方向)側から見た上面概略図である。図7は、図6中の7-7線に沿うエア吹付機構34の断面図である。なお、エア吹付機構34は、図6から図7に示した構成に限定されず、適宜変更可能である。
【0060】
図6及び図7と、既述の図4とに示すように、エア吹付機構34は、左右の被検眼Eの眼圧測定時に左右の角膜Ecに対してその表面を凸状態から扁平状態に変形可能な圧力の圧縮空気を同時に吹き付ける。このエア吹付機構34は、左右の被検眼Eに対応して対を為して設けられた左右のノズル21b及びチャンバー34aと、1個の圧力センサ34cと、1個の圧縮空気供給装置34dと、流路34e(連通管ともいう)と、を含む。
【0061】
左右のノズル21bは、それぞれ透明なガラス板34bを介して、左右のチャンバー34aに取り付けられてる。左右のチャンバー34a内には、ノズル21bと対向する位置にチャンバー窓ガラス21dが設けられている。
【0062】
圧縮空気供給装置34dは、本発明の流体供給装置に相当する。圧縮空気供給装置34dは、左右のノズル21b及びチャンバー34aで共通化されており、圧縮空気を生成して左右のチャンバー34aに同時に供給する。この圧縮空気供給装置34dは、大別してシリンダ34d1とピストン34d2とソレノイド34d3とにより構成されている(図7参照)。
【0063】
シリンダ34d1は、流路34eを介して左右のチャンバー34aに接続している。これにより、シリンダ34d1の内部と左右のチャンバー34aの内部とが連通する。また、シリンダ34d1の内部にはピストン34d2が移動自在に設けられている。これらシリンダ34d1及びピストン34d2により空気の圧縮室が構成される。
【0064】
ソレノイド34d3は、シリンダ34d1内でピストン34d2を移動させる公知のソレノイドアクチュエータである。このソレノイド34d3は、制御装置16の制御下、ピストン34d2を移動させてシリンダ34d1内の空気を圧縮する。これにより、流路34e及び左右のチャンバー34aを介して、左右のノズル21bから左右の被検眼Eの角膜Ecに向けて圧縮空気が同時に吹き付けられる。なお、ソレノイド34d3以外の公知の各種アクチュエータを用いてよい。
【0065】
流路34eは、後述の自動Zアライメント(左右の鏡胴部12等のZ方向移動)を妨げないような構成、例えばその少なくとも一部が自動Zアライメントに応じて変形可能或いは可撓性を有する。また、流路34e内には圧力センサ34cが設けられている。
【0066】
圧力センサ34cは、流路34e内の圧力、すなわち、左右のチャンバー34a内の圧力を示す圧力検出信号を制御装置16へ出力する。なお、圧力センサ34cを左右のチャンバー34a内にそれぞれ設けてもよい。この場合には、左右のチャンバー34aごとに、圧力センサ34cが圧力検出信号を制御装置16へ出力する。
【0067】
なお、本実施形態では左右のノズル21bに対応して左右のチャンバー34aが対を為して設けられているが、左右のノズル21bが1個のチャンバー34aに取り付けられていてもよい。すなわち、左右のノズル21bに対してチャンバー34a及び圧縮空気供給装置34dが共通化されていてもよい。
【0068】
図1から図3に戻って、筐体11のX方向両端部には、左右の被検眼Eに対応した左右の光学系20及びチャンバー34aをそれぞれ収納する鏡胴部12が対を為して設けられている。また、筐体11の被検者に対向する側の前面には、開口部11aが形成されている。この開口部11aのZ方向奥側には既述のミラー21mが配置されている。これにより、ミラー21mにより呈示される左右の被検眼Eの前眼部像EPには、被検者の眉間の像も含まれる(図9参照)。さらに、筐体11の上面(上面以外でも可)には、PD調整ダイヤル13と表示部18とが設けられている。さらにまた、筐体11の内部には圧縮空気供給装置34dが設けられている。
【0069】
左右の鏡胴部12は、それぞれ筐体11に対して少なくともX方向に移動自在に保持されている(図中の矢印AX参照)。なお、後述のZ駆動機構40(図8参照)により左右の鏡胴部12がそれぞれ筐体11に対してZ方向に移動自在に保持されていてもよい(図中の矢印AZ参照)。左右の鏡胴部12の被検者に対向する側の前面には、それぞれ左右の前眼部窓ガラス21cが保持され、さらに左右の前眼部窓ガラス21cの中央部にはそれぞれ左右のノズル21bの先端部が貫通している。また、左右の鏡胴部12の上面(上面以外でも可)には、球面度数調整ダイヤル14及び乱視調整ダイヤル15がそれぞれ設けられている。
【0070】
PD調整ダイヤル13は、左右の光学系20の光軸O1のX方向間隔を被検者の瞳孔間距離(Pupillary Distance:PD)に合わせて調整するPD調整に用いられる。PD調整ダイヤル13は、例えばダイヤル型の操作部材であり、Z方向に平行な回転軸を中心として回転自在に設けられている。このPD調整ダイヤル13を回転させることで、不図示の駆動伝達機構を介して、左右の鏡胴部12がX方向において互いに近づく方向に移動したり或いは互いに遠ざかる方向に移動したりする。これにより、PD調整ダイヤル13の回転方向及び回転量を調整することで、左右の光学系20の光軸O1のX方向間隔を被検者のPDに合わせることができる。
【0071】
球面度数調整ダイヤル14は、例えばダイヤル型の操作部材であり、X方向に平行な回転軸を中心として回転自在に設けられている。この球面度数調整ダイヤル14は、光軸O1(Z方向)に沿ったレンズ21iの位置調整に用いられる。球面度数調整ダイヤル14を回転させることで、不図示の駆動伝達機構を介して、レンズ21iが光軸O1(Z方向)に沿って移動する。これにより、被検眼Eの球面度数(S値)に応じて球面度数調整ダイヤル14の回転方向及び回転量を調整することで、ミラー21mにより呈示される前眼部像EPに対して被検眼Eのピントを合わせる、すなわち被検眼Eの球面度数を矯正(近視又は遠視を矯正)可能である。
【0072】
乱視調整ダイヤル15は、例えばつまみねじ型の操作部材であり、光軸O1を中心として光軸O1の軸周り方向(以下、光軸周り方向R1という、図1参照)に回転自在に設けられている。また、乱視調整ダイヤル15は、そのダイヤル中心軸(Z方向に垂直な軸)を中心としてダイヤル中心軸の軸周り方向(以下、中心軸周り方向R2という、図1参照)に回転自在に設けられている。この乱視調整ダイヤル15は、VCCレンズ21h(一対のシリンダーレンズ)を光軸O1の軸周り方向に互いに反対方向に回転させる「逆回転」と、光軸O1の軸周り方向に一体(同一方向)に回転させる「一体回転」と、に用いられる。
【0073】
乱視調整ダイヤル15を中心軸周り方向R2に回転させることで、不図示の駆動伝達機構を介して、一対のシリンダーレンズを光軸O1の軸周り方向に互いに逆方向に同角度だけ「逆回転」させることができる。なお、この駆動伝達機構は、例えば、一対のシリンダーレンズの一方と一体回転する第1傘車と、乱視調整ダイヤル15の基端部に設けられ且つ第1傘車に噛合する第2傘歯車と、第2傘歯車に噛合して一対のシリンダーレンズの他方と一体回転する第3傘車とにより構成される。また、乱視調整ダイヤル15を光軸周り方向R1に回転させることで、VCCレンズ21h(一対のシリンダーレンズ)を光軸O1の軸周り方向に「一体回転」させることができる。これにより、被検眼Eの円柱度数(C値)及び乱視軸(A値)に応じて、乱視調整ダイヤル15を光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2に回転操作することで、ミラー21mにより呈示される前眼部像EPに対して被検眼Eのピントを合わせる、すなわち被検眼Eの乱視を矯正可能である。
【0074】
非接触式眼圧計10では、左右の被検眼Eの眼圧測定前に被検者の一人ひとりに合わせて、PD調整ダイヤル13によるPD調整、左右の球面度数調整ダイヤル14によるレンズ21iの位置調整(球面度数矯正)、及び左右の乱視調整ダイヤル15によるVCCレンズ21hの回転調整(乱視矯正)を含む「事前調整」を実行する。この事前調整は、例えば、被検者による非接触式眼圧計10の初回使用前に実行される。また、事前調整を、一定期間ごと、例えば眼科で左右の被検眼Eの球面度数、円柱度数、乱視軸等が測定されるごとに実行してもよい。
【0075】
そして、非接触式眼圧計10では、事前調整を実行する調整モードとして、手動調整モードと自動調整モードとが選択可能である。手動調整モードは、被検者が各ダイヤル13~15の回転等を手動操作で実行するモードである。自動調整モードは、後述の制御装置16の制御の下、左右の被検眼Eの屈折検査結果[ここではSCA値(球面度数、円柱度数、乱視軸)]及び被検者のPD値に基づいて、各ダイヤル13~15の回転等を自動で実行するモードである。なお、本実施形態では自動調整モードが選択された場合にPD調整を自動で実行するが、PD調整を調整モードの種類に関係なく手動で実行してもよい。
【0076】
表示部18は、例えばタッチパネル式モニタが用いられる。表示部18は、後述の制御装置16の制御の下、撮像素子21Acにより撮像された被検眼Eの前眼部像EP、被検眼Eの眼圧測定結果、各種設定及び各種操作を行うためのメニュー画面などを表示する。また、表示部18には、後述の図8に示す入力受付部43或いは外部装置48から入力された左右の被検眼EのSCA値及び被検者のPD値等が表示される。
【0077】
図8は、制御装置16の機能ブロック図である。図8に示すように、制御装置16は非接触式眼圧計10の各部の動作を統括制御する。この制御装置16には、既述の左右の光学系20(各光学系21~26)、エア吹付機構34、及び表示部18の他に、Z駆動機構40、操作部42、ダイヤル駆動部44、及び送受信部46が接続されている。
【0078】
Z駆動機構40は、不図示のモータ等により構成されるアクチュエータである。このZ駆動機構40は、被検眼Eに対する非接触式眼圧計10の自動Zアライメント時に作動する。Z駆動機構40は、後述の制御装置16の制御の下、左右の鏡胴部12をそれぞれ独立してZ方向に移動させる。なお、Z駆動機構40が、左右の鏡胴部12をZ方向に移動させる代わりに、左右の鏡胴部12の内部で光学系20及びチャンバー34aをそれぞれZ方向に移動させてもよい。
【0079】
操作部42は、被検者の各種操作を受け付ける。この操作部42は、既述のPD調整ダイヤル13、球面度数調整ダイヤル14、及び乱視調整ダイヤル15の他に、入力受付部43を含む。
【0080】
入力受付部43は、筐体11に設けられた不図示の操作ボタン、及び表示部18(タッチパネル式モニタ)の表示画面などである。この入力受付部43は、例えば、非接触式眼圧計10の電源オンオフ操作、眼圧測定開始操作(アライメント開始操作)、自動調整モードの選択・実行操作、左右の被検眼EのSCA値と被検者のPD値の手動入力操作、及び左右の被検眼Eの眼圧値の出力操作等を受け付ける。
【0081】
ダイヤル駆動部44は、不図示のモータ等により構成されるアクチュエータであり、既述の自動調整モード時に作動する。このPD調整ダイヤル13は、後述の制御装置16の制御の下、PD調整ダイヤル13及び左右の球面度数調整ダイヤル14をそれぞれ回転させたり、左右の乱視調整ダイヤル15を光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2に回転させたりする。
【0082】
送受信部46は、公知の各種通信ネットワークを介して外部装置48と接続して、この外部装置48との間で各種データの遣り取りが可能な通信インターフェースである。外部装置48としては、例えば、眼科(医療機関)において被検者の左右の被検眼EのSCA値及び被検者のPD値を測定する眼科装置(複数台でも可)、或いは被検者ごとのSCA値及びPD値の測定結果を記憶したサーバ(パーソナルコンピュータ、携帯端末でも可)などが挙げられる。送受信部46は、通信ネットワークを介して外部装置48から被検者に対応するSCA値及びPD値を取得する。
【0083】
また、送受信部46は、左右の被検眼Eの眼圧測定完了後に入力受付部43が左右の被検眼Eの眼圧値の出力操作を受け付けた場合には、左右の被検眼Eの眼圧値の測定結果を、通信ネットワークを介して眼科等の外部装置48(SCA値等の送信元とは異なる外部装置48でも可)へ送信する。
【0084】
制御装置16は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置16の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0085】
制御装置16は、不図示の記憶部内の制御プログラムを読み出して実行することにより、光学系制御部50、調整制御部52、Zアライメント制御部54、吹付制御部56、測定制御部58、眼圧値演算部60、及び表示制御部62として機能する。なお、制御装置16の「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0086】
光学系制御部50は、非接触式眼圧計10の電源オン操作、或いは眼圧測定開始操作に応じて、前眼部像呈示光学系21の前眼部照明光源21a及び前眼部観察光学系21Aの撮像素子21Acを作動させる。これにより、左右の被検眼Eの前眼部の照明及び前眼部像EPの撮像が実行される。
【0087】
また同時に光学系制御部50は、XYアライメント指標投影光学系22のXYアライメント用光源22a、固視標投影光学系23の固視標用光源23a、レチクル投影光学系23Aのレチクル光源23Aa、Zアライメント指標投影光学系25のZアライメント用光源25a、及びZアライメント検出光学系26の受光センサ26cを作動させる。これにより、左右の被検眼EへのXYアライメント指標光、固視標光、赤十字レチクル光Lr、及びZアライメント指標光の投影が実行されると共に、受光センサ26cによるZ指標反射光の検出が可能になる。なお、自動調整モード又は手動調整モードの完了前では被検者は固視標光を視認し、自動調整モード又は手動調整モードの完了後(アライメント完了前)では赤十字レチクル光Lr及び前眼部像EPを視認し、アライメント完了後には赤十字レチクル光Lr、前眼部像EP及び固視標光を視認する。
【0088】
調整制御部52は、入力受付部43で自動調整モードが選択された場合に作動する。調整制御部52は、被検者が手動入力操作で入力受付部43に入力した被検者のPD値、或いは送受信部46が外部装置48から受信したPD値を取得する。そして、調整制御部52は、取得したPD値に基づいて、ダイヤル駆動部44を駆動してPD調整ダイヤル13を回転させることでPD調整を実行する。
【0089】
具体的には調整制御部52は、PD値と、PD調整ダイヤル13の回転位置と、の関係を示すPD調整情報を予め取得している。そして、調整制御部52は、取得したPD値に基づいてPD調整情報を参照して、PD調整ダイヤル13の回転方向及び回転量を決定し、この決定結果に基づいてダイヤル駆動部44を駆動してPD調整ダイヤル13を回転させる。
【0090】
また、調整制御部52は、被検者が手動入力操作で入力受付部43に入力した左右の被検眼EのSCA値、或いは送受信部46が外部装置48から受信した左右の被検眼EのSCA値を取得する。そして、調整制御部52は、取得した左右の被検眼EのSCA値に基づいてダイヤル駆動部44を駆動して、左右の球面度数調整ダイヤル14の回転(レンズ21iの位置調整による球面度数矯正)と、左右の乱視調整ダイヤル15の光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2の回転(VCCレンズ21hの一体回転・逆回転による乱視矯正)と、を実行する。
【0091】
具体的には調整制御部52は、被検眼EのS値と、球面度数の矯正後のレンズ21iの位置と、の関係を示す球面度数矯正情報を予め取得している。また、調整制御部52は、被検眼EのCA値と、乱視(円柱度数、乱視軸)の矯正後のVCCレンズ21hの回転方向(光軸周り方向R1、中心軸周り方向R2)及び回転量を示す乱視矯正情報を予め取得している。これにより、調整制御部52は、取得した左右の被検眼EのSCA値に基づいて球面度数矯正情報及び乱視矯正情報を参照することで、球面度数の矯正後の左右のレンズ21iの位置と、左右のVCCレンズ21hの回転方法(一体回転、逆回転)及び回転量と、を決定する。そして、調整制御部52は、これらの決定結果に基づいてダイヤル駆動部44を駆動して、左右の球面度数調整ダイヤル14を回転させたり、左右の乱視調整ダイヤル15を光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2に回転させたりする。その結果、左右のレンズ21i及び左右のVCCレンズ21hによって、左右の被検眼Eの球面度数及び乱視(円柱度数、乱視軸)が矯正される。
【0092】
なお、手動調整モード時には、最初に被検者が、左右の光学系20の光軸O1のX方向間隔が被検者のPDに合うようにPD調整ダイヤル13を回転させる。次いで、前眼部照明光源21aを作動させた状態で、被検者が左右の前眼部窓ガラス21cを通してミラー21m(前眼部像EPの虚像)を確認する。そして、被検者が、左右の被検眼Eのピントが左右の前眼部像EPに合うように、すなわちピントが合った左右の前眼部像EPがミラー21mにより呈示されるように、左右の球面度数調整ダイヤル14を回転させたり、左右の乱視調整ダイヤル15を光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2に回転させたりする。
【0093】
図9は、被検者に対してミラー21mにより呈示される左右の被検眼Eの前眼部像EPの一例を示した図である。なお、図9の符号9Aは自動調整モード又は手動調整モード完了後の状態を示し、図9の符号9Bは手動XYアライメントの実行中の状態を示す。
【0094】
図9の符号9Aに示すように、自動調整モード又は手動調整モードが完了すると、左右のレンズ21i及び左右のVCCレンズ21hによって左右の被検眼Eの球面度数及び乱視が矯正される。この場合には被検者は、左右の被検眼EのSCA値に合わせて矯正された眼鏡を通して、ミラー21mにより呈示される前眼部像EPの虚像を見るのと同じ状態になる。その結果、左右の被検眼Eのピントを左右の前眼部像EPに合わせることができるので、被検者に対してピントが合った左右の前眼部像EPが呈示される。
【0095】
図9の符号9Bに示すように、ミラー21mにより呈示される左右の被検眼Eの前眼部像EPには、左右のレチクル投影光学系23Aにより左右の被検眼Eにそれぞれ投影される赤十字レチクル光Lrの像が含まれる。
【0096】
左右の赤十字レチクル光Lrの像は、手動XYアライメントの目標位置を示す。このため、ミラー21mにより呈示される「左右の赤十字レチクル光Lrの像」及び「左右の前眼部像EP」とは、左右の被検眼Eの位置(現在位置)と、手動アライメントの目標位置との位置関係(ズレ方向及びズレ量)を示すアライメント支援画像を構成する。これにより、被検者は、左右の前眼部像EPが示す左右の被検眼Eの瞳孔の位置と、左右の赤十字レチクル光Lrの像との位置関係に基づいて、両者が一致(略一致を含む)するように、非接触式眼圧計10のXY方向位置を調整する手動XYアライメントを実行可能である。
【0097】
そして、被検者が手動XYアライメントを実行すると、Zアライメント指標投影光学系25から出射されたZアライメント指標光が角膜Ecの頂点近傍に入射することで、この頂点近傍で反射されたZ指標反射光がZアライメント検出光学系26の受光センサ26cで検出可能になる。すなわち自動Zアライメントの実行が可能になる。
【0098】
図8に戻って、Zアライメント制御部54は、左右の光学系20(Zアライメント検出光学系26)の受光センサ26cでZ指標反射光がそれぞれ検出可能になった場合に作動する。そして、Zアライメント制御部54は、左右の受光センサ26cからそれぞれ出力される受光信号に基づいて、被検眼E(左眼)と左眼に対応する光学系20とのZ方向距離と、被検眼E(右眼)と右眼に対応する光学系20とのZ方向距離と、を演算する。次いで、Zアライメント制御部54は、左右の被検眼EごとのZ方向距離の演算結果に基づいて、Z駆動機構40を駆動して左右の鏡胴部12を個別にZ方向に移動させることで、左右の被検眼Eごとに自動Zアライメントを実行する。
【0099】
吹付制御部56は、自動Zアライメントが完了した場合に作動する。吹付制御部56は、圧縮空気供給装置34dに圧縮空気を生成させる。これにより、圧縮空気供給装置34dから流路34eを介して左右のチャンバー34aに圧縮空気が同時供給されることで、左右のノズル21bから圧縮空気が噴出して、左右の被検眼Eの角膜Ecに対して圧縮空気が同時に吹き付けられる。
【0100】
測定制御部58は、吹付制御部56の作動前或いはその作動に合せて作動する。この測定制御部58は、左右の被検眼Eの角膜Ecに圧縮空気が吹き付けられている間、左右のXYアライメント指標投影光学系22及び圧平検出光学系24を制御して、左右の被検眼Eごとに、角膜Ecに対するXYアライメント指標光の投影と、受光センサ24cによるXY指標反射光の受光と、を連続的に実行させる。これにより、左右の被検眼Eごとに、受光センサ24cがXY指標反射光の受光信号を連続的に眼圧値演算部60へ出力する。
【0101】
また同時に測定制御部58は、圧力センサ34cによる圧力検出を連続的に実行させる。これにより、圧力センサ34cが圧力検出信号を連続的に眼圧値演算部60へ出力する。
【0102】
眼圧値演算部60は、左右の圧平検出光学系24の受光センサ24cからのXY指標反射光の受光信号の入力に応じて作動して、左右の圧縮空気供給装置34dの作動停止後に左右の被検眼Eの眼圧値を演算する。
【0103】
例えば眼圧値演算部60は、左右の被検眼Eごとに、XY指標反射光の受光信号に基づいて圧平波形(XY指標反射光の光量の時間変化を示す信号波形)のピークの重心位置或いは最大値を演算する。そして、眼圧値演算部60は、左右の被検眼Eごとに、ピークの重心位置或いは最大値に対応する受光信号の信号強度(光量)及び圧力センサ34cの検出結果(空気の圧力)に基づいて、公知の方法で被検眼Eの眼圧値を演算する。なお、被検眼Eの眼圧値の演算方法は、上述の方法に限定されるものではなく、公知の各種方法を採用可能である。眼圧値演算部60は、左右の被検眼Eごとの眼圧値の演算結果を表示制御部62へ出力する。
【0104】
表示制御部62は、表示部18の表示を制御する。例えば、表示制御部62は、左右の前眼部観察光学系21Aにより撮影された左右の被検眼Eの前眼部像EPを表示部18に表示させる。また、表示制御部62は、眼圧値演算部60による左右の被検眼Eの眼圧値の演算後に、これら眼圧値の演算結果を表示部18に表示させる。
【0105】
さらに、表示制御部62は、自動調整モード時には、調整制御部52が取得した左右の被検眼EのSCA値及び被検者のPD値を表示部18に表示させる。
【0106】
なお、非接触式眼圧計10へのSCA値及びPD値の入力と、表示部18によるSCA値及びPD値の表示とは手動調整モード時にも実行してもよい。さらにまた、制御装置16が、手動調整モード時に被検者のSCA値及びPD値に基づいて各ダイヤル13~15の回転方向及び回転量と、及び乱視調整ダイヤル15の回転方向(光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2)及び回転量とを決定して、これらの決定結果を表示部18に表示させてもよい。さらにこの場合には、被検者のSCA値及びPD値の設定値(目標値)と、各ダイヤル13~15の回転位置検出結果に基づいた現在のSCA値及びPD値(現在値)とを表示部18に表示させてもよい。
【0107】
[第1実施形態の非接触式眼圧計の作用]
図10は、上記構成の第1実施形態の非接触式眼圧計10による左右の被検眼Eの眼圧測定処理の流れを示したフローチャートである。図10に示すように、被検者による非接触式眼圧計10の初回使用前、或いは一定期間経過後などには「事前調整」が必要になるのでステップS2に進む(ステップS1でYES)。なお、事前調整が不要である場合には後述のステップS3に進む(ステップS1でNO)。
【0108】
ステップS2の事前調整の調整モードとして手動調整モードが選択されている場合には、被検者がPD調整ダイヤル13、左右の球面度数調整ダイヤル14、及び左右の乱視調整ダイヤル15を操作する。
【0109】
一方、事前調整の調整モードとして自動調整モードが選択されている場合には、予め被検者が左右の被検眼EのSCA値及び被検者のPD値を入力受付部43に入力したり、或いは送受信部46が外部装置48から左右の被検眼EのSCA値及び被検者のPD値を受信したりする。これにより、調整制御部52が事前に左右の被検眼EのSCA値及び被検者のPD値を取得している。
【0110】
次いで、被検者が自動調整モードの実行操作を入力受付部43に入力すると、調整制御部52が、先に取得したPD値及びSCA値に基づいて調整制御部52がダイヤル駆動部44を駆動して、PD調整ダイヤル13及び左右の球面度数調整ダイヤル14の回転と、左右の乱視調整ダイヤル15の光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2の回転と、を実行する。
【0111】
このような事前調整によって、左右の光学系20の光軸O1のX方向間隔が被検者のPDに一致(略一致を含む)する。また、左右のレンズ21i及び左右のVCCレンズ21hにより左右の被検眼Eの球面度数と乱視(円柱度数、乱視軸)とが矯正(ほぼ矯正を含む)される。その結果、左右の被検眼Eのピントをミラー21mにより呈示される左右の前眼部像EPに合わせることができる。なお、事前調整は、後述のステップS3の後に実行してもよい。
【0112】
被検者は、事前調整が完了した場合或いは事前調整が不要な場合には、入力受付部43に対して非接触式眼圧計10の電源オン操作を行い、その操作後にさらに眼圧測定開始操作を入力する(ステップS3)。この電源オン操作又は眼圧測定開始操作に応じて光学系制御部50が、前眼部照明光源21a、撮像素子21Ac、XYアライメント用光源22a、固視標用光源23a、レチクル光源23Aa、Zアライメント用光源25a、及び受光センサ26cを作動させる。これにより、左右の被検眼Eの前眼部の照明及び前眼部像EPの撮像と、左右の被検眼EへのXYアライメント指標光、固視標光、赤十字レチクル光Lr、及びZアライメント指標光の投影と、が実行される。また、受光センサ26cがZ指標反射光を検出可能になる。
【0113】
被検者は、例えばテーブル等に両肘をついた状態で筐体11を両手で把持した後、両眼(左右の被検眼E)で左右の前眼部窓ガラス21cの奥側を覗き込む。被検者の球面度数及び乱視に対応した事前調整は完了しているので、左右のレンズ21i及び左右のVCCレンズ21hによって左右の被検眼Eの球面度数及び乱視の矯正は完了している。その結果、左右の被検眼Eのピントがミラー21mにより呈示される前眼部像EPに合うことで、既述の図9の符号9Bに示したように被検者に対してピントが合った左右の前眼部像EP及び赤十字レチクル光Lrの像が呈示される。これにより、左右の被検眼Eの近視、遠視、及び乱視等に関係なく、被検者は左右の前眼部像EP及び赤十字レチクル光Lrの像を明瞭に視認可能になる。その結果、被検者自身による手動XYアライメントが実行可能になる。
【0114】
次いで、被検者は、ミラー21mにより呈示される左右の前眼部像EPが示す左右の被検眼Eの瞳孔と左右の赤十字レチクル光Lrとの位置関係に基づいて、両者が一致するように、非接触式眼圧計10の手動XYアライメントを実行する(ステップS4)。手動XYアライメントでは、被検者が顔を動かしたり、筐体11を動かしたり、或いはその両方を実行したりする。この手動XYアライメントは、既述のZ指標反射光が左右の受光センサ26cで検出可能な範囲内に非接触式眼圧計10が位置調整されるまで、すなわち自動Zアライメントが実行可能になるまで継続される(ステップS5でNO)。
【0115】
自動Zアライメントが実行可能になると(ステップS5でYES)、Zアライメント制御部54が、左右の受光センサ26cからそれぞれ出力される受光信号に基づいて、左右の被検眼Eと左右の光学系20とのZ方向距離とを演算する。次いで、Zアライメント制御部54が、左右の被検眼EごとのZ方向距離の演算結果に基づいて、Z駆動機構40を駆動して左右の鏡胴部12を個別にZ方向に移動させることで、左右の被検眼Eごとに自動Zアライメントを実行する(ステップS6)。
【0116】
自動Zアライメントが完了すると、吹付制御部56が、圧縮空気供給装置34dに圧縮空気を生成させる。これにより、圧縮空気供給装置34dから流路34eを介して左右のチャンバー34aに圧縮空気が同時供給されることで、左右のノズル21bから圧縮空気が噴出して左右の被検眼Eの角膜Ecに対して圧縮空気が同時に吹き付けられる(ステップS7)。左右の角膜Ecに対する圧縮空気の吹き付けを1回で済ませられるので、被検者の不快感を軽減することができる。
【0117】
そして、圧縮空気の吹き付けが実行されている間、測定制御部58が、左右のXYアライメント指標投影光学系22及び圧平検出光学系24を制御して、左右の被検眼Eごとに、角膜Ecに対するXYアライメント指標光の投影と、受光センサ24cによるXY指標反射光の受光及び受光信号の眼圧値演算部60への出力と、を実行させる。
【0118】
次いで、眼圧値演算部60が、左右の受光センサ24cから出力される受光信号に基づき圧平波形のピークの重心位置を演算して、左右の被検眼Eごとに、重心位置に対応する受光信号の信号強度及び圧力センサ34cの検出結果に基づいて眼圧値を演算する(ステップS8)。そして、眼圧値演算部60は、左右の被検眼Eの眼圧値の演算結果を表示制御部62へ出力する。これにより、表示制御部62が、左右の被検眼Eの眼圧値の演算結果を表示部18に表示させる。
【0119】
被検者は、表示部18に表示された左右の被検眼Eの眼圧値に特に問題がなければ(例えば異常値でなければ)、入力受付部43に対して出力操作を入力する。これにより、送受信部46が、左右の被検眼Eの眼圧値を眼科等の外部装置48へ出力する(ステップS9)。その結果、被検者の左右の被検眼Eの眼圧値が外部装置48に保存される。
【0120】
以上のように第1実施形態の非接触式眼圧計10では、左右のノズル21bに対して圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置34dを共通化することで、左右のノズル21bごとに圧縮空気供給装置34dを個別に設ける必要がなくなる。また、非接触式眼圧計10(筐体11)内における圧縮空気供給装置34dの設置スペースを減らすことができる。その結果、非接触式眼圧計10を小型化(軽量化)及び低コスト化することができる。
【0121】
[第2実施形態]
図11は、第2実施形態の非接触式眼圧計10のエア吹付機構34に設けられている圧縮空気供給装置34dを説明するための説明図である。なお、第2実施形態の非接触式眼圧計10は、圧縮空気供給装置34dの構成が異なる点を除けば上記第1実施形態の非接触式眼圧計10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0122】
図11に示すように、第2実施形態の圧縮空気供給装置34dは、マイクロエアーポンプ100と、ポンプ室101と、可変バルブ装置102と、を備える。
【0123】
マイクロエアーポンプ100は、本発明のポンプに相当するものであり、ポンプ室101に接続している。このマイクロエアーポンプ100は、吹付制御部56の制御の下、左右の被検眼Eの眼圧測定時にポンプ室101の内部を予め定めた設定圧力に加圧する。
【0124】
ポンプ室101は、本発明の空気室に相当するものであり、気密性を有している。ポンプ室101は、可変バルブ装置102を介して流路34e(左右のチャンバー34a)に連通している。なお、ポンプ室101の内部に圧力センサ34cを設けてもよい。
【0125】
可変バルブ装置102は、本発明のバルブに相当するものであり、ポンプ室101に設けられている。この可変バルブ装置102は、吹付制御部56の制御の下、左右の被検眼Eの眼圧測定時にポンプ室101に接続している流路34eの開閉、すなわちポンプ室101から流路34e(左右のチャンバー34a)に供給される圧縮空気の供給量を調整する。
【0126】
可変バルブ装置102は、例えば、固定弁102aと、回転弁102bと、シャフト102cと、ギア102dと、ピニオンギア102eと、モータ102fとにより構成されている。
【0127】
図12は、第2実施形態の圧縮空気供給装置34dに設けられている固定弁102a(符号XIIA参照)及び回転弁102b(符号XIIB参照)の正面図である。
【0128】
図12に示すように、固定弁102aは、ポンプ室101の内部に開口している流路34eの開口部に固定されている。回転弁102bは、シャフト102cの先端部に固定されており、シャフト102cと一体に回転する。この回転弁102bは、固定弁102aに対して摺動可能な状態で接触している。固定弁102aには開口104(図12の符号XIIA参照)が設けられ、回転弁102bには開口105(符号XIIB参照)が設けられている。固定弁102aに対して回転弁102bを回転させることで、開口104と開口105とが重なる面積が変化し、バルブとしての通気量(コンダクタンス)が調整される。また、開口104と開口105とが重ならないように回転弁102bを回転させることで、流路34eの開口部が閉塞される。
【0129】
図11に戻って、シャフト102cの基端部にはギア102dが固定されている。ギア102dは、モータ102fの回転軸に固定されたピニオンギア102eに噛合している。
【0130】
モータ102fは、吹付制御部56の制御の下、左右の被検眼Eの眼圧測定時に、ピニオンギア102e、ギア102d、及びシャフト102cを介して、回転弁102bを回転させることで、ポンプ室101から流路34e(左右のチャンバー34a)に供給される圧縮空気の供給量を調整する。
【0131】
左右の被検眼Eの眼圧測定時には、吹付制御部56の制御の下、可変バルブ装置102により流路34eの開口部を閉塞した状態でマイクロエアーポンプ100を作動させて、ポンプ室101内の圧力を所定の設定圧力まで上昇させる。そして、吹付制御部56は、自動Zアライメントの完了後、可変バルブ装置102を制御して流路34eの開口部を開く。これにより、ポンプ室101内の圧縮空気が流路34eを介して左右のチャンバー34aに同時供給される。その結果、上記第1実施形態と同様に、左右のノズル21bから左右の被検眼Eの角膜Ecに対して圧縮空気が同時に吹き付けられる。
【0132】
[第3実施形態]
図13及び図14は、第3実施形態の非接触式眼圧計10のエア吹付機構34に設けられている圧縮空気供給装置34dを説明するための説明図である。なお、第3実施形態の非接触式眼圧計10は、圧縮空気供給装置34dの構成が異なる点を除けば上記第1実施形態の非接触式眼圧計10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0133】
図13に示すように、第3実施形態の圧縮空気供給装置34dは、シリンダ110と、ピストン111と、コイルばね112と、ばね固定壁113と、台形螺子114と、モータ115と、ストッパ116と、ストッパ117と、ラック118と、ピニオン119と、モータ120と、を備える。
【0134】
シリンダ110の先端側には、流路34eと接続する接続部110aが設けられている。また、シリンダ110の基端側は開放されている。このシリンダ110の内部には、シリンダ110の基端側の開口部からピストン111が挿入されている。
【0135】
ピストン111は、シリンダ110の内部においてその軸方向に沿って移動自在に設けられている。このピストン111は、ピストン軸111aの先端部に固定されている。また、ピストン111にはコイルばね112の一端が接触している。
【0136】
ピストン軸111aは、コイルばね112の内側に収まるように配置されている。ピストン軸111aの先端部は、シリンダ110の基端側の開口部からシリンダ110の内部に挿入されてピストン111に固定されている。ピストン軸111aは、ピストン111と一体にシリンダ110の軸方向に沿って移動する。
【0137】
コイルばね112は、本発明の付勢部材に相当するものであり、ピストン111に接触する一端と、ばね固定壁113に接続される他端と、を有する。コイルばね112は、ピストン111をシリンダ110の奥側に向かう第1方向D1に向けて付勢する。なお、コイルばね112の代わりに弾性変形な各種の付勢部材を用いてもよい。
【0138】
ばね固定壁113は、本発明の固定部材に相当する。このばね固定壁113は、ピストン軸111aが挿通される挿通穴を有しており、シリンダ110の基端側から突出しているピストン軸111aに沿って移動可能である。ばね固定壁113は、台形螺子114及びモータ115によりピストン軸111aに沿って移動されると共に、その位置が固定される。
【0139】
台形螺子114は、ばね固定壁113に形成された不図示の雌螺子部に螺合している。台形螺子114はモータ115により回転される。モータ115が台形螺子114を回転させることで、ばね固定壁113がピストン軸111aに沿って移動する。また、モータ115の回転を停止させることでばね固定壁113の位置が固定される。ばね固定壁113は、ピストン111がシリンダ110の奥まで押し込まれた状態でコイルばね112が圧縮状態になるように位置調整されている。これにより、コイルばね112は、ピストン111を第1方向D1に常時付勢する。なお、ばね固定壁113の位置は、位置検出センサ122により検出可能である。
【0140】
ストッパ116は、第1方向D1の反対方向を第2方向D2とした場合に、ばね固定壁113よりも第2方向D2側の位置でピストン軸111aに固定されている。ストッパ117は、ピストン軸111aが挿通される挿通穴を有しており、ストッパ116よりも第2方向D2側の位置で筐体11の内部に固定されている。ストッパ116とストッパ117との接触により、ピストン軸111a及びピストン111の第1方向D1側への移動が規制される。これにより、ピストン111がシリンダ110の奥側の部分に接触する際の衝撃を緩和したり、或いはシリンダ110の奥側の部分へのピストン111の接触を防止したりすることができる。
【0141】
ラック118は、ピストン軸111aの基端部に形成されている。このラック118にはピニオン119が噛合している。ピニオン119には歯が全周に形成されておらず、その外周面には一部歯が形成されていない部分が存在する。
【0142】
モータ120は、ピストン軸111a、ラック118、及びピニオン119と共に本発明の直動機構を構成するものであり、吹付制御部56の制御の下、左右の被検眼Eの眼圧測定時にピニオン119を図中の回転方向R1に回転させる。これにより、ピニオン119がラック118に噛合(係合)している状態では、ラック118及びピストン軸111aを介してピストン111を第2方向D2側に移動可能である。なお、ピニオン119の回転角はホールIC123により検出可能である。
【0143】
第3実施形態の吹付制御部56は、左右の被検眼Eの眼圧測定時(自動Zアライメントの完了後)には、図14に示すように、モータ120によりピニオン119を回転方向R1に回転させることで、ピストン111を第2方向D2側に移動させる。これにより、コイルばね112が圧縮されてコイルばね112の復元力が増加する。また、ピストン111の移動に伴い、ピストン111とシリンダ110の奥側の部分との間に空間125が形成される。
【0144】
ピニオン119の回転が継続して、ピニオン119の外周面の中で歯の無い部分がラック118に到達すると、ピストン111が元の位置から第2方向D2側に予め定められた距離だけ移動された状態で、ピニオン119とラック118との噛合(係合)が解除される。これにより、コイルばね112の復元力によりピストン111が第1方向D1側に付勢されて、空間125内の空気が圧縮されることで圧縮空気が生成される。この圧縮空気は、接続部110a及び流路34eを介して左右のチャンバー34aに同時供給される。その結果、上記第1実施形態と同様に、左右のノズル21bから左右の被検眼Eの角膜Ecに対して圧縮空気が同時に吹き付けられる。
【0145】
なお、ピニオン119の歯が形成されている範囲を調整したり、或いはモータ115を駆動してばね固定壁113の位置を調整したりすることで、モータ120を駆動した際のコイルばね112の圧縮量を調整することができる。これにより、左右の被検眼Eの角膜Ecに吹き付ける圧縮空気の圧力を調整することができる。
【0146】
[第4実施形態]
図15は、第4実施形態の非接触式眼圧計10のエア吹付機構34に設けられている圧縮空気供給装置34dを説明するための説明図である。なお、第4実施形態の非接触式眼圧計10は、圧縮空気供給装置34dの構成が異なる点を除けば上記第1実施形態の非接触式眼圧計10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0147】
図15に示すように、第4実施形態の圧縮空気供給装置34dは、ボンベ130と、圧力レギュレータ131と、蓄圧タンク132と、電磁弁133と、を備える。
【0148】
ボンベ130は圧縮空気を貯留する。このボンベ130内の圧縮空気の圧力は後述の蓄圧タンク132内の圧縮空気の圧力の最大値よりも高く設定されている。ここで、眼圧測定時の角膜Ecに対する圧縮空気の1回の噴射量は約3.3mlである。このため、ボンベ130として例えば市販のミニCOカートリッジ(直径40mm、長さ134mm、容量98ml、内圧41.7MPa)を利用すると、約12000回の圧縮空気の噴射が可能である。なお、ボンベ130は貸与元の眼科等で容易に交換可能であることが好ましい。
【0149】
圧力レギュレータ131は、ボンベ130から供給される圧縮空気の圧力を所定の設定圧力に一定に保った状態で、圧縮空気を蓄圧タンク132へ出力する。
【0150】
蓄圧タンク132は、圧力レギュレータ131によって調整された所定の設定圧力の圧縮空気を貯める。この蓄圧タンク132は、左右のノズル21bから左右の被検眼Eの角膜Ecに対して吹き付けられる圧縮空気の量(容積)に対して、十分に余裕を持った容積を有する。また、蓄圧タンク132は、電磁弁133を介して流路34e(左右のチャンバー34a)に接続されている。
【0151】
電磁弁133は本発明のバルブに相当する。この電磁弁133は、吹付制御部56の制御の下、左右の被検眼Eの眼圧測定時に蓄圧タンク132に接続している流路34eの開閉、すなわち蓄圧タンク132から流路34e(左右のチャンバー34a)に供給される圧縮空気の供給量を調整する。
【0152】
左右の被検眼Eの眼圧測定時には、吹付制御部56の制御の下、電磁弁133により流路34eを閉塞した状態で、ボンベ130から圧力レギュレータ131を介して蓄圧タンク132に圧縮空気を供給し、この蓄圧タンク132内の圧縮空気の圧力を所定の設定圧力に調整する。そして、吹付制御部56は、自動Zアライメントの完了後、電磁弁133を開いて流路34eを開放する。これにより、蓄圧タンク132内の圧縮空気が流路34eを介して左右のチャンバー34aに同時供給される。その結果、上記第1実施形態と同様に、左右のノズル21bから左右の被検眼Eの角膜Ecに対して圧縮空気が同時に吹き付けられる。なお、適切なタイミングで電磁弁133を閉じることで、左右のノズル21bから噴出する圧縮空気の量を調整可能である。
【0153】
このように第4実施形態では圧縮空気供給装置34dとしてボンベ130を利用することで、上記各実施形態のように複雑な機構を用いることなく圧縮空気を流路34eに供給することができる。これにより、第4実施形態では、圧縮空気供給装置34dを上記各実施形態よりも小型化及び低コスト化することができる。
【0154】
[第5実施形態]
図16は、第5実施形態の非接触式眼圧計10を説明するための説明図である。上記各実施形態の非接触式眼圧計10では、左右の被検眼Eの眼圧測定時に被検者が筐体11を把持する必要があるが、例えば図16に示すように、上記各実施形態の非接触式眼圧計10にその筐体11を保持するスタンド70(保持台)を設けてもよい。なお、スタンド70は、筐体11に対して分離可能或いは分離不能であってもよい。また、スタンド70は平面上に設置可能なものに限定されず、各種の被取付部に取り付け可能なものあってもよい。これにより、左右の被検眼Eの眼圧測定時に被検者が非接触式眼圧計10を把持する必要がなくなるので、眼圧測定時に手振れの発生が確実に防止される。
【0155】
[第6実施形態]
図17は、第6実施形態の非接触式眼圧計10を説明するための説明図である。上記各実施形態の非接触式眼圧計10は双眼鏡型であるが、図17に示すように、非接触式眼圧計10がヘッドマウントディスプレイ型であってもよい。この場合には非接触式眼圧計10は、被検者の頭部に装着可能であって且つ上記各実施形態で説明した左右の鏡胴部12(左右の光学系20及び共通のエア吹付機構34)を内蔵した筐体11Aを備える。また、筐体11Aには、上記各実施形態と同様の各ダイヤル13~15が設けられていると共に、図示は省略するが表示部18が設けられている。これにより、上記第5実施形態と同様に眼圧測定時に被検者が非接触式眼圧計10を把持する必要がなくなるので、眼圧測定時に手振れの発生が確実に防止される。
【0156】
[第7実施形態]
図18は、第7実施形態の非接触式眼圧計10の光学系20の一部及びエア吹付機構34を側方(X方向)側から見た側面概略図である。上記各実施形態の非接触式眼圧計10では、被検者に対してミラー21mにより左右の前眼部像EP(虚像)を呈示しているが、第7実施形態の非接触式眼圧計10では被検者に対して左右の表示部21qにより左右の前眼部像EP(実像)を呈示する。
【0157】
図18に示すように、第7実施形態の非接触式眼圧計10は、ミラー21mの代わりに左右の前眼部像呈示光学系21にそれぞれ表示部21qが設けられている点を除けば、上記各実施形態の非接触式眼圧計10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。なお、第7実施形態では、レチクル光源23Aaが可視光の赤十字レチクル光Lrを出射する代わりに、赤外光(撮像素子21Acで検出可能な波長域の光)の赤十字レチクル光Lrを出射してもよい。
【0158】
表示部21qは、例えば、公知の液晶モニタ或いは有機エレクトロルミネッセンスモニタなどの各種モニタが用いられる。被検眼E(左眼)に対応する表示部21qは、制御装置16の制御の下、左眼に対応する前眼部観察光学系21Aの撮像素子21Acで連続的に撮像された前眼部像EPを連続表示する。また、被検眼E(右眼)に対応する表示部21qは、制御装置16の制御の下、右眼に対応する前眼部観察光学系21Aの撮像素子21Acで連続的に撮像された前眼部像EPを連続表示する。これにより、手動調整モード時及び手動XYアライメント時において、左右の被検眼Eごとに、被検眼Eに対して表示部21qに表示される前眼部像EP(実像)がリアルタイムに呈示される。なお、表示部21qの表示面[前眼部像EP(実像)]は、被検眼Eの眼底Ef及びレチクル投影光学系23Aと共役関係にある。
【0159】
図19は、左右の表示部21qにより被検者に対して呈示される左右の前眼部像EPの一例を示した説明図である。なお、左右の表示部21qにより呈示される左右の前眼部像EPには、既述の赤十字レチクル光Lrの像の他に、XYアライメント指標光(赤外光)が左右の被検眼Eの角膜Ecの表面及び水晶体等で反射することにより生じるプルキンエ像Lpが含まれる。
【0160】
図19に示すように、左右の表示部21qに表示される左右の前眼部像EPは、それぞれ左右の赤十字レチクル光Lrの像を含んでいる。そして、上記各実施形態と同様に事前調整(自動調整モード又は手動調整モード)が完了すると、左右のレンズ21i及び左右のVCCレンズ21hによって左右の被検眼Eの球面度数及び乱視が矯正される。その結果、左右の被検眼Eのピントを左右の前眼部像EP(表示部21qの表示面)に合わせることができるので、被検者に対してピントが合った左右の前眼部像EPが呈示される。これにより、被検者は、上記各実施形態と同様に手動XYアライメントを実行可能である。なお、左右の前眼部像EPに表示されるプルキンエ像Lpに基づいて被検者が手動XYアライメントの目標位置を決定して、手動XYアライメントを実行してもよい。
【0161】
以上のように第7実施形態の非接触式眼圧計10では、事前調整により左右の被検眼Eのピントを左右の表示部21qにより呈示される前眼部像EPに合わせることができるので、上記各実施形態と同様に手動XYアライメントを精度良く実行することができる。
【0162】
図20は、第7実施形態の非接触式眼圧計10の変形例を示した外観斜視図である。第7実施形態の非接触式眼圧計10の筐体11及び左右の鏡胴部12を、図20に示すような筐体11B及び左右の鏡胴部12Bに変更してもよい。なお、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
【0163】
筐体11Bの上面(上面以外でも可)には、表示部18が設けられている。また、筐体11BのX方向両端部には、左右の鏡胴部12BがそれぞれX方向に移動自在に保持されている(図中の矢印AX参照)。これにより、左右の鏡胴部12Bを、被検者による手動移動操作によりX方向に移動させたり、或いは不図示の駆動機構を駆動してX方向に移動させたりすることができる。これにより、手動調整モード時には被検者の手動移動操作によりPD調整が可能であり、自動調整モード時には制御装置16(調整制御部52)が被検者のPD値に基づいて駆動機構を駆動することでPD調整が可能である。
【0164】
筐体11B及び左右の鏡胴部12Bには、上記第7実施形態と同様の左右の光学系20と、共通のエア吹付機構34とが設けられている。また、左右の鏡胴部12Bは、上記第7実施形態と同様の球面度数調整ダイヤル14及び乱視調整ダイヤル15を備えており、さらに手動調整モード或いは自動調整モードでの事前調整が可能である。これにより、左右の被検眼Eのピントを左右の前眼部像EP(表示部21qの表示面)に合わせることができるので、手動XYアライメントを精度良く実行可能である。
【0165】
[その他]
圧縮空気供給装置34dは、上記第1実施形態から上記第4実施形態で説明したものに限定されず、圧縮空気を生成可能であれば特に限定はされない。例えば、圧縮空気供給装置34dとしてブロアファンを用いてもよい。
【0166】
上記各実施形態では、左右の球面度数調整ダイヤル14及び左右の乱視調整ダイヤル15を手動又は自動で回転させることで、左右のレンズ21iの移動及び左右のVCCレンズ21hの光軸周り方向R1又は中心軸周り方向R2の回転を実行しているが、ダイヤル以外の各種操作部材(電動駆動型の操作部材及び駆動機構を含む)を代わりに使用してもよい。なお、各種操作部材には、表示部18(タッチパネル式モニタ)も含まれる。
【0167】
上記各実施形態では、PD調整ダイヤル13を手動又は自動で回転させることでPD調整を実行しているが、上述のダイヤル以外の各種操作部材を代わりに使用してもよい。また、公知の双眼鏡で採用されている眼幅調整機構のように、筐体11(筐体11B)に対して左右の鏡胴部12(鏡胴部12B)をそれぞれZ方向に平行な回転軸により回転自在に取り付けてもよい。この場合には、各回転軸を中心として左右の鏡胴部12を自動又は手動で回転させることでPD調整を実行する。
【0168】
上記各実施形態では、手動XYアライメント用のアライメント指標光として赤十字レチクル光Lrを被検眼Eに投影しているが、赤十字レチクル光Lr以外の各種アライメント指標光(固視標光を含む)を投影してもよい。なお、ミラー21mを使用する実施形態では、可視光のアライメント指標光を使用する。
【0169】
上記各実施形態では、レチクル投影光学系23Aが赤十字レチクル光Lrを被検眼Eに投影しているが、例えばミラー21mの所定位置に赤十字レチクル(アライメント)を示すマークを設けたり、表示部21qの表示面の所定位置に赤十字レチクルの像を表示させたりしてもよい。この場合もミラー21m或いは表示部21qにより被検者に呈示される「左右の赤十字レチクル」及び「左右の前眼部像EP」は、被検眼Eの現在位置と手動アライメントの目標位置との位置関係を示すアライメント支援画像を構成する。また、光学系20から被検眼Eの前眼部に入射する光束(平行光束)をφ1mm程度に絞ることで、XYアライメントが完了した状態で被検者が固視標光(固視輝点像)を視認可能になる。このため、固視標光(固視輝点像)を、被検眼Eの現在位置と手動アライメントの目標位置との位置関係を示すアライメント支援画像として用いてもよい。
【0170】
上記各実施形態の非接触式眼圧計10は、事前調整の調整モードとして自動調整モードと手動調整モードとを選択可能であるが、いずれか一方の調整モードのみを有してもよい。これにより、例えば、非接触式眼圧計10が手動調整モードのみを有している場合にはダイヤル駆動部44を省略することができる。また逆に、非接触式眼圧計10が自動調整モードのみを有している場合には各ダイヤル13~15を省略することができる。その結果、非接触式眼圧計10の小型化及び低コスト化が図れる。
【0171】
上記各実施形態では、被検眼Eの球面度数及び乱視(円柱度数、乱視軸)を矯正する矯正光学系として変位可能なレンズ21i及びVCCレンズ21hを例に挙げて説明したが、レンズ21i及びVCCレンズ21hのいずれか一方(例えば球面度数を矯正するレンズ21i)のみを設けてもよい。また、被検眼Eのピントを前眼部像EP(アライメント支援画像)に合わせることが可能であれば、矯正光学系の種類、数、及び組み合わせは特に限定はされない。さらに上記各実施形態の左右の光学系20において、ミラーなどを用いることで、例えば圧平検出光学系24、XYアライメント用光源22a、及び前眼部観察光学系21Aなどを共通化してもよい。
【0172】
図21は、筐体11の前面の変形例を説明するための説明図である。上記第1実施形態等では、筐体11の被検者に対向する側の前面には開口部11aを形成しているが(図1図3図16等参照)、図21に示すように開口部11aを窓ガラス11bで覆ってもよく、さらに窓ガラス11bを上記第1実施形態等の左右の前眼部窓ガラス21cとして機能させてもよい。
【符号の説明】
【0173】
10 非接触式眼圧計
11 筐体
11A 筐体
11B 筐体
11a 開口部
11b 窓ガラス
12 鏡胴部
12B 鏡胴部
13 PD調整ダイヤル
14 球面度数調整ダイヤル
15 乱視調整ダイヤル
16 制御装置
18 表示部
20 光学系
21 前眼部像呈示光学系
21A 前眼部観察光学系
21Aa ハーフミラー
21Ab レンズ
21Ac 撮像素子
21a 前眼部照明光源
21b ノズル
21c 前眼部窓ガラス
21d チャンバー窓ガラス
21e ハーフミラー
21f ハーフミラー
21g レンズ
21h VCCレンズ
21i レンズ
21j ハーフミラー
21k ハーフミラー
21m ミラー
21q 表示部
22 XYアライメント指標投影光学系
22a XYアライメント用光源
22b 集光レンズ
22c 開口絞り
22d ピンホール板
22e ダイクロイックミラー
22f コリメータレンズ
23 固視標投影光学系
23A レチクル投影光学系
23Aa レチクル光源
23a 固視標用光源
23b コリメータレンズ
24 圧平検出光学系
24a レンズ
24b ピンホール板
24c 受光センサ
25 Zアライメント指標投影光学系
25a Zアライメント用光源
25b 集光レンズ
25c 開口絞り
25d ピンホール板
25e コリメータレンズ
26 Zアライメント検出光学系
26a 結像レンズ
26b シリンドリカルレンズ
26c 受光センサ
34 エア吹付機構
34a チャンバー
34b ガラス板
34c 圧力センサ
34d 圧縮空気供給装置
34d1 シリンダ
34d2 ピストン
34d3 ソレノイド
34e 流路
40 Z駆動機構
42 操作部
43 入力受付部
44 ダイヤル駆動部
46 送受信部
48 外部装置
50 光学系制御部
52 調整制御部
54 Zアライメント制御部
56 吹付制御部
58 測定制御部
60 眼圧値演算部
62 表示制御部
70 スタンド
100 マイクロエアーポンプ
101 ポンプ室
102 可変バルブ装置
102a 固定弁
102b 回転弁
102c シャフト
102d ギア
102e ピニオンギア
102f モータ
104 開口
105 開口
110 シリンダ
110a 接続部
111 ピストン
111a ピストン軸
112 コイルばね
113 ばね固定壁
114 台形螺子
115 モータ
116,117 ストッパ
118 ラック
119 ピニオン
120 モータ
122 位置検出センサ
123 ホールIC
125 空間
130 ボンベ
131 圧力レギュレータ
132 蓄圧タンク
133 電磁弁
D1 第1方向
D2 第2方向
E 被検眼
EP 前眼部像
Ec 角膜
Ef 眼底
Lp プルキンエ像
Lr 赤十字レチクル光
O1~O7 光軸
R1 回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21