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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012414
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】衛生材用多層スパンボンド不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20240123BHJP
   D01F 8/06 20060101ALI20240123BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20240123BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20240123BHJP
【FI】
D04H3/147
D01F8/06
D04H1/4374
D04H3/007
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185066
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2021139958の分割
【原出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0110728
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520080171
【氏名又は名称】東レ尖端素材株式会社
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INC.
【住所又は居所原語表記】(Imsu-dong)300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チュ ウォン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ ウォン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ユン ド キュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク ソ ジン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】強度に優れていて、伸びることなく、切断が容易であると共に、柔らかい触感を有して、衛生用品に適した多層スパンボンド不織布を提供する。
【解決手段】芯鞘型複合繊維を含む第1不織布層と、該第1不織布層の少なくとも1面に積層された第2不織布層と、を含み、前記芯鞘型複合繊維は、芯部用樹脂および鞘部用樹脂をそれぞれ紡糸して得られた紡糸体を含み、前記芯部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~40であるポリプロピレン樹脂を含み、前記鞘部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であるポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする衛生材用多層スパンボンド不織布とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合繊維を含む第1不織布層と、
該第1不織布層の少なくとも1面に積層された第2不織布層と、を含み、
前記芯鞘型複合繊維は、芯部用樹脂および鞘部用樹脂をそれぞれ紡糸して得られた紡糸体を含み、
前記芯部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~40であるポリプロピレン樹脂を含み、
前記鞘部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であるポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項2】
前記芯部用樹脂および鞘部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIの差が、下記の関係式1を満たすことを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布:
[関係式1]
5 ≦ l MI - MI′l ≦ 30
前記関係式1において、MIは芯部用樹脂のメルトフローインデックスを意味し、MI′は鞘部用樹脂のメルトフローインデックスを意味する。
【請求項3】
前記芯鞘型複合繊維は、芯部および鞘部の重量比が1:0.25~1:4.0であることを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項4】
前記第2不織布層は、ポリエチレン繊維を含み、
前記ポリエチレン繊維は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であるポリエチレン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項5】
前記ポリエチレン繊維は、平均繊維直径が10~30μmであることを特徴とする請求項4に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項6】
前記第1不織布層および第2不織布層の坪量比が1:0.25~1:0.80であることを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項7】
多層スパンボンド不織布は、10~100g/mの坪量を有することを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項8】
多層スパンボンド不織布は、少なくとも1面の単位面積当たり10~35体積%のエンボスパターンを有することを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生材用多層スパンボンド不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
熱風や加熱ロールなどの熱エネルギーを利用して熱融着による成形を通じて製造できる複合繊維は、バルク性(bulkiness)を容易に得ることができるので、オムツ、ナプキン、生理用ナプキンなどの衛生材の原料として幅広く用いられている。ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系など多様な樹脂が用いられている。
【0003】
その中で、ポリエチレンを紡糸して製造した不織布は、低い融点によって触感が良好であり、柔軟性に優れていると知られている。韓国登録特許第1690837号には、ポリエチレンを使用して長繊維スポンボンドを製造する方法が開示されている。しかしながら、当該長繊維スポンボンドは、紡糸時に均一な紡糸が難しいだけでなく、低い強度によって切断時に伸びてしまうという問題があり、衛生材などに使用するのに適していないという問題があった。
【0004】
なお、ポリプロピレン繊維を含む不織布は、前記ポリエチレンを紡糸して製造した不織布と比較して、強度が高いという長所があるが、摩擦などによって不織布の表面に毛羽が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第1690837号(登録日:2016.12.22.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたもので、ポリプロピレンを芯部とし、ポリエチレンを鞘部とする芯鞘型複合繊維を含む第1不織布層および第2不織布層を含んで多層スポンボンドを製造することによって、触感が柔らかいながらも、所望のサイズで切断が容易な衛生材用多層スパンボンド不織布を製造しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の衛生材用多層スパンボンド不織布は、芯鞘型複合繊維を含む第1不織布層と、該第1不織布層の少なくとも1面に結合した第2不織布層と、を含むことができる。
【0008】
本発明の好ましい一実施例において、前記芯鞘型複合繊維は、芯部用樹脂および鞘部用樹脂をそれぞれ紡糸した紡糸体を含むことができる。
【0009】
本発明の好ましい一実施例において、前記芯部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~40であるポリプロピレン樹脂を含むことができる。
【0010】
本発明の好ましい一実施例において、前記鞘部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であるポリエチレン樹脂を含むことができる。
【0011】
本発明の好ましい一実施例において、前記芯部用樹脂および鞘部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIの差が、下記の関係式1を満たすことができる。
【0012】
[関係式1]
5 ≦ l MI - MI′l ≦ 30
【0013】
前記関係式1において、MIは芯部用樹脂のメルトフローインデックスを意味し、MI′は鞘部用樹脂のメルトフローインデックスを意味する。
【0014】
本発明の好ましい一実施例において、前記芯鞘型複合繊維は、芯部および鞘部の重量比が1:0.25~1:4.0でありうる。
【0015】
本発明の好ましい一実施例において、前記第2不織布層は、ポリエチレン繊維を含むことができる。
【0016】
本発明の好ましい一実施例において、前記ポリエチレン繊維は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であるポリエチレン樹脂を含むことができる。
【0017】
本発明の好ましい一実施例において、前記ポリエチレン繊維は、平均繊維直径が10~30μmでありうる。
【0018】
本発明の好ましい一実施例において、前記第1不織布層および第2不織布層の坪量比が1:0.25~1:0.80でありうる。
【0019】
本発明の好ましい一実施例において、多層スパンボンド不織布は、坪量が10~100g/mでありうる。
【0020】
本発明の好ましい一実施例において、多層スパンボンド不織布は、少なくとも1面の単位面積当たり10~35体積%のエンボスパターンを有することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、所望のサイズで切断が容易であり、毛羽発生が少なく、かつ触感も柔らかいので、オムツ、生理用ナプキンなどの衛生材に使用するのに適した多層スパンボンド不織布を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の衛生材用多層スポンボンドについてより具体的に説明する。
【0023】
前記スパンボンド不織布は、第1不織布層および第2不織布層を含むことができ、前記第1不織布層の少なくとも1面に第2不織布層を積層した多層構造でありうる。
【0024】
また、前記第1不織布層および第2不織布層は、それぞれスパンボンド不織布でありうるが、これに制限するものではない。
【0025】
また、前記第2不織布層は、第1不織布層の少なくとも1面に形成され得、具体的には、1面または両面に形成され得る。
【0026】
前記第1不織布層は、芯鞘型複合繊維を含むことができ、前記芯鞘型複合繊維は、芯部
用樹脂を芯部に、鞘部用樹脂を鞘部にそれぞれ紡糸した紡糸体を含むことができ、好ましくは、前記芯部はポリプロピレン繊維を含むことができ、前記鞘部はポリエチレン繊維を含むことができる。
【0027】
また、前記芯鞘型複合繊維は、芯部および鞘部の重量比が1:0.25~1:4.0であり得、好ましくは、1:0.50~1:2.0であり得、より好ましくは1:0.70~1:1.5でありうる。もし、鞘部が0.25重量比未満の場合、鞘部のポリエチレンが芯部の面積を十分に覆わないため、第2不織布層との接着力が低くなり、その結果、多層スパンボンド不織布において第1不織布層と第2不織布層が大きい力を加えなくても容易に剥離される問題があり得、4.0重量比を超過する場合、多層スパンボンド不織布の全体強度がポリエチレン単一不織布に比べて低い問題が発生することがある。
【0028】
また、前記芯部用樹脂および鞘部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIの差が、下記の関係式1を満たすことができ、好ましくは、前記メルトフローインデックスMIの差が5~25であり得、より好ましくは7~20でありうる。もし、前記メルトフローインデックスの差が前記範囲を外れる場合、前記スパンボンド不織布のMD(Machine direction)引張強度およびCD(Cross direction)引張強度が低下したり、引張強度の向上程度が微小になる問題が発生することがある。
【0029】
[関係式1]
5 ≦ l MI - MI′l ≦ 30
【0030】
前記関係式1において、芯部MIは芯部用樹脂のメルトフローインデックスを意味し、鞘部MI’は鞘部用樹脂のメルトフローインデックスを意味する。
【0031】
前記芯部用樹脂および鞘部用樹脂のメルトフローインデックスを具体的に説明すると、まず、前記芯部用樹脂は、ポリプロピレン樹脂を含むことができ、前記ポリプロピレン樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~40であり得、好ましくは15~40であり得、より好ましくは20~40でありうる。もし、メルトフローインデックスが10未満の場合、過度な圧力が発生するほか、高分子量の特性によって繊維が硬くなって、多層スパンボンド不織布の柔らかい触感を損傷させることがあり、40を超過する場合、引張強度が低下する問題があり得る。
【0032】
また、前記鞘部用樹脂は、ポリエチレン樹脂であり得、前記ポリエチレン樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であり得、好ましくは10~40であり得、より好ましくは15~30でありうる。もし、前記メルトフローインデックスが10未満の場合、高い粘度によって押出機に過度な圧力が加えられて、紡糸性が不良になる問題点があり得、50を超過する場合、低粘度によって安定した紡糸が困難であり、延伸冷却時に繊維が容易に切れて引張強度が低下する問題が発生することがある。
【0033】
なお、前記芯鞘型複合繊維は、ポリプロピレン繊維を芯部として含むことによって、ポリエチレン繊維に比べて強度が向上するという長所があり、不織布の切断工程時に不織布が伸びないから、離型率に優れている。
【0034】
また、前記芯鞘型複合繊維は、ポリエチレン繊維を鞘部として含むことによって、前記複合繊維を含んで製造された不織布は、他の基材との接合力が向上し、柔らかい触感を有することができる。
【0035】
なお、前記第2不織布層は、ポリエチレン樹脂を紡糸して製造されたポリエチレン繊維を含むことができる。前記ポリエチレン繊維の平均直径が10~30μmであり得、好ましくは10~20μmでありうる。もし、繊維の直径が10μm未満の場合、不織布の強度が大きく減少し、安定した紡糸が困難であり、所望の不織布の形態を得にくいという問題があり得る。もし、繊維の直径が30μmを超過する場合、不織布のウェブ形成が粗末になって、20~30%の強度低下が発生することがある。
【0036】
また、前記ポリエチレン樹脂は、ASTM D1238法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であり得、好ましくは10~45でありうる。もし、メルトフローインデックスが10未満の場合、高い粘度によって押出機に過度な圧力が加えられる問題点があり得、50を超過する場合、低粘度によって安定した紡糸が困難であり、延伸冷却時に繊維が容易に切れるという短所がある。
【0037】
なお、前記スパンボンド不織布は、前記第1不織布層および第2不織布層を1:0.25~1:0.80の坪量比で含むことができ、好ましくは1:0.30~1:0.50でありうる。もし、第2不織布層が0.80坪量比を超過して含まれる場合、多層スパンボンド不織布に含まれる軟質、低強度のポリエチレン繊維の量が増加して、毛羽が容易に発生する問題があり得、第2不織布層が0.25坪量比未満で含まれる場合、相対的に高強度のポリプロピレン繊維の量が増加して、不織布が硬くなって、衛生材用不織布に適しない問題があり得る。
【0038】
また、前記スパンボンド不織布の全体坪量が10~100g/mであり得、好ましくは15~95g/mでありうる。もし、全体坪量が10g/m未満の場合、安定した紡糸が困難であり、目的とする強度が得られないことがあり、100g/mを超過する場合、製造工程中にエンボスロールに強い付着ができて、生産性が大きく低下する問題があり得る。
【0039】
なお、前記スパンボンド不織布は、少なくとも1面の単位面積当たり10~35体積%のエンボスパターンを有し、好ましくは15~30体積%のエンボスパターンを有することができるが、これに特に限定されるものではない。前記範囲でエンボスパターンを有する場合、衛生材への利用が容易になり得る。
【0040】
なお、前記スパンボンド不織布は、MD(Machine direction)引張強度が10~100N/5cmであり得、好ましくは10.0~20.0N/5cmであり得、より好ましくは10.0~19.0N/5cmでありうる。もし、前記MD引張強度が10N/5cm未満の場合、低い強度によって不織布を切断するとき、容易に伸びてしまう問題があり得、100N/5cmを超過する場合、不織布を切断、加工するのに問題があって、衛生材用に適しないという問題が発生することがある。
【0041】
なお、前記スパンボンド不織布は、CD(Cross direction)引張強度が5~80N/5cmであり得、好ましくは5.0~11.5N/5cmであり得、より好ましくは6.0~11.5N/5cmでありうる。もし、前記CD引張強度が5N/5cm未満の場合、低い強度によって不織布を切断するとき、容易に伸びてしまい、衛生材用への利用が難しいという問題があり得、80N/5cmを超過する場合、不織布を切断、加工することに問題があるので、衛生材用に適しないという問題が発生することがある。
【0042】
この際、前記MD引張強度およびCD引張強度が本発明の範囲を外れる場合、不織布の切断固定で不織布が伸びてしまうという問題が発生することがあり、衛生材への利用に適していない問題があり得る。
【0043】
なお、前記スパンボンド不織布は、下記の関係式2によって測定された離型率が1.00~1.10でありうる。
【0044】
[関係式2]
離型率=切断後の長さの和/切断前の長さ
【0045】
前記関係式2において、離型率は、前記スパンボンド不織布を幅×間隔5cm×10cmで切断して試験片を製造し、前記試験片の長さを「切断前の長さ」とし、前記試験片を3等分に切断した後、前記3等分された試験片の長さの和を「切断後の長さの和」とする。
【0046】
上述した多層スパンボンド不織布は、均一性が良好であり、ポリエチレン固有の柔らかい感触を示し、使用時に幅が収縮する問題を解決できる十分な強度を有し、摩擦などによる毛羽発生が抑制されて、多様な分野への利用が可能である。特に、使い捨てオムツおよび生理用ナプキンの内外部カバー、サイドギャザーなど人体と接触する部分に容易に使用が可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の衛生材用多層スパンボンド不織布の製造方法は、第1紡糸浴液および第2紡糸浴液をそれぞれ準備する第1段階と、第1不織布層および第2不織布層をそれぞれ形成する第2段階と、前記第1不織布層および第2不織布層をエンボシングカレンダー(embossing calendar)工程を用いてラミして、多層スパンボンド不織布を製造する第3段階と、を含むことができる。
【0048】
まず、第1段階の第1紡糸浴液は、ポリプロピレン樹脂を高温の押出機に投入して溶融したものであり得、第2紡糸浴液は、ポリエチレン樹脂を高温の押出機に投入して溶融したものであり得、前記第1紡糸浴液および第2紡糸浴液は、それぞれ独立して、準備することができる。
【0049】
また、前記第2紡糸浴液に通常的に知られた熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、潤滑剤、染料、顔料などをさらに含むことができ、本発明の目的を毀損しない範囲で含むことができる。
【0050】
次に、第2段階の第1不織布層は、前記第1紡糸浴液を芯部に紡糸し、前記第2紡糸浴液を鞘部に紡糸して、紡糸体を収得する段階と、前記紡糸体を冷却する段階と、前記段階を行った紡糸体を延伸および固化させる段階と、前記段階を行った紡糸体を連続的に駆動される多孔性のスクリーンベルトを用いて第1不織布層を形成する段階と、を含んで形成することができる。
【0051】
これとは別途に、前記第2不織布層は、前記第1不織布層とそれぞれ独立して製造することができ、前記第2不織布層は、前記第2紡糸浴液を紡糸して形成することができ、具体的に説明すると、前記第2紡糸浴液を紡糸して紡糸体を収得する段階と、前記紡糸体を冷却する段階と、前記段階を行った紡糸体を延伸および固化させる段階と、前記段階を行った紡糸体を連続的に駆動される多孔性のスクリーンベルトを用いて第2不織布層を形成する段階と、を含んで形成することができる。
【0052】
次に、第3段階のエンボシングカレンダー工程は、80~160℃で行われ、好ましくは85~155℃で行われ得る。
【0053】
また、前記エンボシングカレンダー工程は、3ロール(3 roll)で構成され得、
具体的には、中間に平ロール(flat roll)が位置することができ、残りは、2つのロールが互いに異なるエンボス率を有するものでありうる。
【0054】
次に、第3段階を行うことで製造された多層スパンボンド不織布は、巻き取り工程を用いてロール形態で準備することができ、目的によって適合した幅でスリッティング(slitting)された形態で準備することができるが、これに制限するものではない。
【0055】
上述した課題を解決するために、本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、いろいろな異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0056】
[実施例]
準備例1-1:第1不織布層の製造
メルトフローインデックスMIが25であるポリプロピレン樹脂(LG化学、MH7700S)を含む第1紡糸浴液およびメルトフローインデックスMI′が17であるポリエチレン樹脂(Dow,Aspun 6850A)を含む第2紡糸浴液をそれぞれ準備した。
【0057】
この際、下記の関係式1-1によって計算された前記芯部用樹脂および鞘部用樹脂のメルトフローインデックスMIの差が8である。
【0058】
[関係式1-1]
l MI - MI′l
【0059】
前記関係式1-1において、MIは芯部用樹脂のメルトフローインデックスを意味し、MI′は鞘部用樹脂のメルトフローインデックスを意味する。
【0060】
そして、ドイツReifenhauser社のスポンボンド製造設備を用いて前記第1紡糸浴液を芯部に紡糸し、これとは別途に、前記第2紡糸浴液を鞘部に紡糸して、紡糸体を収得した。
【0061】
そして、前記紡糸体を22℃下で冷却した。
【0062】
そして、前記段階を行った紡糸体を1:1.3の延伸比で延伸させた後、固化させて、芯鞘型複合繊維を製造した。
この際、前記芯鞘型複合繊維は、芯部および鞘部を1:1.00重量比で含む。
【0063】
そして、前記段階を行った紡糸体を多孔性のスクリーンベルトを用いて第1不織布層(ウェブ)を製造した。
この際、前記第1不織布層の坪量は15g/mである。
【0064】
準備例1-2~準備例1-12:第1不織布層の製造
芯部用樹脂のメルトフローインデックスMI、鞘部用樹脂のメルトフローインデックスMI、芯部用樹脂および鞘部用樹脂のメルトフローインデックスMIの差、芯部および鞘部の重量比または第1不織布層の坪量を下記の表1~表3のようにして、準備例1-1と同一に第1不織布層を製造することによって、準備例1-2~準備例1-12を実施した。
【0065】
準備例2-1:第2不織布層の製造
メルトフローインデックスが17であるポリエチレン樹脂(Dow,Aspun 68
50A)を含む第2紡糸浴液を準備した。
【0066】
そして、ドイツReifenhauser社のスポンボンド製造設備を用いて前記第2紡糸浴液を紡糸して、紡糸体を収得した。
【0067】
そして、前記紡糸体を22℃下で冷却した。
【0068】
そして、前記段階を行った紡糸体を1:1.3の延伸比で延伸させた後、固化させて、ポリエチレン繊維を製造した。
この際、前記ポリエチレン繊維の独立したフィラメント10本の直径を測定したとき、その平均値が10μmであり、これは紡糸速度を用いて調節した。
【0069】
そして、前記ポリエチレン繊維を多孔性のスクリーンベルトを通じて第2不織布層(ウェブ)を製造した。
この際、前記第2不織布層の坪量が5g/mである。
【0070】
準備例2-2~準備例2-4:第2不織布層の製造
ポリエチレン繊維の平均直径または第2不織布層の坪量を下記の表2および表3のようにして、準備例2-1と同一に第2不織布層を製造することによって、準備例2-2~準備例2-4を実施した。
【0071】
比較準備例1-1~比較準備例1-14:第1不織布層の製造
芯部用樹脂のメルトフローインデックスMI、鞘部用樹脂のメルトフローインデックスMI、芯部用樹脂および鞘部用樹脂のメルトフローインデックスMIの差、芯部および鞘部の重量比または第1不織布層の坪量を下記の表3~表6のようにして、準備例1-1と同一に第1不織布層を製造することによって、比較準備例1-1~比較準備例1-14を実施した。
【0072】
比較準備例1-15:不織布の製造
メルトフローインデックスMIが25であるポリプロピレン樹脂(LG化学、MH7700S)を含む第1紡糸浴液を準備した。
【0073】
そして、ドイツReifenhauser社のスポンボンド製造設備を用いて前記第1紡糸浴液を紡糸して紡糸体を収得した。
【0074】
そして、前記紡糸体を22℃下で冷却した。
【0075】
そして、前記段階を行った紡糸体を1:1.3の延伸比で延伸させた後、固化させて、ポリプロピレン繊維を製造した。
【0076】
そして、前記ポリプロピレン繊維を多孔性のスクリーンベルトを用いてポリプロピレン単層不織布を製造した。
この際、前記ポリプロピレン単層不織布は、坪量が20g/mである。
【0077】
比較準備例1-16:不織布の製造
メルトフローインデックスが17であるポリエチレン樹脂(Dow,Aspun 6850A)を含む第2紡糸浴液を準備した。
【0078】
そして、ドイツReifenhauser社のスポンボンド製造設備を用いて前記第2紡糸浴液を紡糸して紡糸体を収得した。
【0079】
そして、前記紡糸体を22℃下で冷却した。
【0080】
そして、前記段階を行った紡糸体を1:1.3の延伸比で延伸させた後、固化させて、ポリエチレン繊維を製造した。
【0081】
そして、前記ポリエチレン繊維を多孔性のスクリーンベルトを用いてポリエチレン単層不織布を製造した。
【0082】
この際、前記ポリエチレン単層不織布は、坪量が20g/mである。
【0083】
比較準備例2-1~比較準備例2-4:第2不織布層の製造
ポリエチレン繊維の平均直径または第2不織布層の坪量を下記の表5および表6のようにして、準備例2-1と同じ方法で第2不織布層を製造することによって、比較準備例2-1~比較準備例2-4を実施した。
【0084】
実験例1:紡糸性の評価
準備例1-1~準備例1-12および比較準備例1-1~比較準備例1-16で製造された第1不織布層と、これとは別途に準備される準備例2-1~準備例2-4および比較準備例2-1~比較準備例2-4で製造された第2不織布層をそれぞれ製造する工程中、30分間連続的な紡糸を行うことで不織布を構成する長繊維が3回以上切れる場合を紡糸性が「不適合」したものと判断し、3回未満で切れる場合を「良好」と判断し、その結果を下記の表1~表6に示した。
【0085】
実施例1:多層スパンボンド不織布の製造
準備例1-1で製造された第1不織布層および準備例2-1で製造された第2不織布層をエンボシングカレンダー(embossing calendar)工程を用いて145℃下でラミして、多層スパンボンド不織布を製造した。
この際、前記多層スパンボンド不織布は、1面に単位面積当たり18体積%のエンボスパターンを有する。
【0086】
実施例2~実施例13:多層スパンボンド不織布の製造
第1不織布層または第2不織布層を下記の表1~表3に示したように、それぞれ準備例1-2~準備例1-12および準備例2-2~準備例2-4で製造された不織布層を使用して、実施例1と同じ方法で多層スパンボンド不織布を製造することによって、実施例2~実施例13を実施した。
【0087】
比較例1~比較例15:多層スパンボンド不織布の製造
第1不織布層または第2不織布層を下記の表3~表6に示したように、それぞれ比較準備例1-1~比較準備例1-14および比較準備例2-1~比較準備例2-4で製造された不織布層を使用して、実施例1と同じ方法で多層スパンボンド不織布を製造することによって、比較例1~比較例15を実施した。
【0088】
比較例16~比較例17:スパンボンド不織布の製造
比較準備例1-15~比較準備例1-16で製造された不織布をそれぞれエンボシングカレンダー(embossing calendar)工程を145℃下で行うことで、スパンボンド不織布を製造した。
この際、前記スパンボンド不織布は、1面に単位面積当たり18体積%のエンボスパターンを有する。
【0089】
実験例2:スパンボンド不織布物性の評価
実施例1~実施例13および比較例1~比較例17で製造されたスパンボンド不織布を下記のような方法で評価した結果値を下記の表1~表6に示した。
【0090】
(1)柔軟性の評価(摩擦係数の測定)
KS M 3009方法によって、摩擦係数測定設備を作動させて、測定装置が自動で傾くと、プレート(plate)が下方へ滑ってセンサーを押圧することで停止することになる。この際、停止状態における角度値を変換して摩擦係数を求めた。この評価は、繊維の柔らかさと関連したものである。
【0091】
(2)MD(Machine direction)およびCD(Cross direction)引張強度の測定
引張強伸度機(Instron)測定設備を用いてKSK 0520法によって試験方幅5cm、間隔10cmの試験片を引張速度500mm/minの条件で引っ張ることで、最大荷重を測定した。
【0092】
(3)離型率の測定
離型率を下記の関係式2によって測定した。
【0093】
[関係式2]
離型率=切断後の長さの和/切断前の長さ
【0094】
前記関係式2において離型率は、不織布を幅×間隔5cm×10cmで切断した試験片を準備し、前記試験片の長さを「切断前の長さ」とし、前記「切断後の長さの和」は、前記試験片を3等分で切断した後、3等分された試験片の長さの和を意味する。
【0095】
(4)毛羽発生の評価
不織布の表面の毛羽発生を目視で観察して、毛羽が発生する場合、「○」で表記し、毛羽が発生しない場合、「×」で表記した。
【0096】
(5)層間剥離の観察評価
スパンボンド不織布を24時間観察し、層間剥離が起こる場合、「有」で表記し、層間剥離が起こらない場合、「無」で表記した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
【表5】
【0102】
【表6】
【0103】
前記表1~表6を参照すると、実施例1~実施例13は、いずれも、優れた紡糸性、摩擦係数、引張強度、離型率を有することが示され、毛羽および層間剥離が発生しないため、衛生材用に適した多層スパンボンド不織布が製造されたことを確認することができた。
【0104】
他方で、芯部形成用樹脂のメルトフローインデックスMIが10未満である比較例1は、メルトフローインデックスが10である場合(実施例3)と比較して、過度に低いメルトフローインデックスによって紡糸性が不良であると共に、多層スパンボンド不織布の表面が柔らかくなく、かつ硬いという問題があった。
【0105】
また、芯部形成用樹脂のメルトフローインデックスMIが40を超過する比較例2および比較例3は、メルトフローインデックスが40である場合(実施例7)と比較して、多層スパンボンド不織布の引張強度が低下するという問題があった。
【0106】
また、鞘部形成用樹脂のメルトフローインデックスMI′が10未満である比較例4は、メルトフローインデックスが10である場合(実施例4)と比較して、高粘度によって紡糸性が不良であるという問題があった。
【0107】
また、鞘部形成用樹脂のメルトフローインデックスMI′が50を超過する比較例5および比較例6は、メルトフローインデックスが50である場合(実施例5および実施例6)と比較して、低粘度によって多層スパンボンド不織布の引張強度が低下するという問題があった。
この際、前記比較例6および比較例8は、芯部形成用樹脂および鞘部形成用樹脂のメルトフローインデックスの差が30を超過するにつれて、引張強度がさらに顕著に低くなる
ことを確認することができた。
【0108】
また、芯部形成用樹脂および鞘部形成用樹脂のメルトフローインデックスの差が5未満である比較例7は、多層スパンボンド不織布の引張強度の向上程度が微小であり、かえって引張強度が多少低くなることを確認することができた。
【0109】
また、鞘部が0.25重量比未満で含まれた比較例9は、鞘部が0.25重量比で含まれた場合(実施例8)と比較して、第1不織布層および第2不織布層の接着強度が減少するにつれて、層間剥離が発生することを確認することができた。
【0110】
また、鞘部が4.0重量比を超過して含まれた比較例10は、鞘部が4.0重量比で含まれた場合(実施例10)と比較して、多層スパンボンド不織布の引張強度が顕著に減少し、不織布の表面に毛羽が観察されるという問題があった。
【0111】
また、第2不織布層を形成するポリエチレン繊維の平均直径が10μm未満である比較例12は、平均直径が10μmである場合(実施例1)と比較して、紡糸安定性(紡糸性)が非常に不良であるという問題があり、不均一な吐出によって所望の形状の不織布が製造されないという問題があった。
【0112】
また、第2不織布層が0.25坪量比未満の比較例13の場合、第2不織布層が0.25坪量比である場合(実施例12)と比較して、高い強度を有するにつれて、硬い質感を有するから、衛生材への使用が不可能であるという問題があった。
【0113】
また、第2不織布層が0.80坪量比を超過した比較例14および比較例15は、第2不織布層が0.80坪量比に近接した実施例13と比較して、不織布の表面に毛羽が発生し、不織布の強度が過度に低くなり、離型率が高まって、所望のサイズで切断が難しいという問題があった。
【0114】
また、比較例16の場合、表面の摩擦が過度であるという問題があり、比較例17の場合、不織布の引張強度が顕著に低くなるという問題があった。
【0115】
本発明の単純な変形や変更は、この分野における通常の知識を有する者が容易に実施でき、このような変形や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘型複合繊維を含む第1不織布層と、
該第1不織布層の少なくとも1面に積層された第2不織布層と、を含み、
前記芯鞘型複合繊維は、芯部用樹脂および鞘部用樹脂をそれぞれ紡糸して得られた紡糸体を含み、
前記芯部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~40であるポリプロピレン樹脂を含み、
前記芯部用樹脂および前記鞘部用樹脂は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIの差が下記の関係式1を満たし、
前記第2不織布層は、ASTM D1238方法に基づいて測定されたメルトフローインデックスMIが10~50であるポリエチレン樹脂で構成されたポリエチレン繊維を含み、
前記第1不織布層および前記第2不織布層の坪量比が1:0.25~1:0.80であることを特徴とする衛生材用多層スパンボンド不織布。
[関係式1]
7≦|MI-MI′|≦30
前記関係式1において、MIは前記芯部用樹脂のメルトフローインデックスを意味し、MI′は前記鞘部用樹脂のメルトフローインデックスを意味する。
【請求項2】
前記芯鞘型複合繊維は、芯部および鞘部の重量比が1:0.25~1:4.0であることを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項3】
前記ポリエチレン繊維は、平均繊維直径が10~30μmであることを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。
【請求項4】
多層スパンボンド不織布は、10~100g/mの坪量を有することを特徴とする請求項1に記載の衛生材用多層スパンボンド不織布。