(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124140
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】多孔質体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 67/20 20060101AFI20240905BHJP
C08J 9/24 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B29C67/20 D
C08J9/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032108
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】591052181
【氏名又は名称】司フエルト商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 貴大
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AA17
4F074AA32
4F074AA38
4F074AA46
4F074AA57
4F074AA65
4F074AA70
4F074AA71
4F074AA76
4F074AA78
4F074CA52
4F074DA59
4F214AA03
4F214AA13
4F214AA15
4F214AA16
4F214AA23
4F214AA24
4F214AA28
4F214AA29
4F214AA31
4F214AC04
4F214AG20
4F214AM28
4F214UA34
4F214UB01
4F214UF30
4F214UG27
(57)【要約】
【課題】合成樹脂粉末の疎密を抑制できるように圧縮して焼結し、求められる品質を有する多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】多孔質体の製造方法は、合成樹脂粉末2を金型8に設けた各貫通孔15に充填する充填ステップと、該充填ステップの後、各貫通孔15内のエアを吸引することで、貫通孔15内の合成樹脂粉末2全体に圧縮荷重を付与する吸引圧縮ステップと、を含む。これにより、合成樹脂粉末の疎密を抑制できるように圧縮して焼結し、求められる品質を有する多孔質体を製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂粉末を焼結してなる多孔質体の製造方法であって、
合成樹脂粉末を金型に設けた充填空間に充填する充填ステップと、
該充填ステップの後、前記充填空間内のエアを吸引することで、前記充填空間内の合成樹脂粉末全体に圧縮荷重を付与する吸引圧縮ステップと、
を含むことを特徴とする多孔質体の製造方法。
【請求項2】
前記吸引圧縮ステップの後、合成樹脂粉末が充填された前記充填空間を閉塞する閉塞ステップと、
該閉塞ステップの後、前記充填空間内を加熱して合成樹脂粉末を焼結する焼結ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の多孔質体の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質体は、細長い棒状体であることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質体の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質体は、塗布具のペン芯に採用されることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質体の製造方法。
【請求項5】
合成樹脂粉末を焼結してなる多孔質体の製造装置であって、
合成樹脂粉末が充填される充填空間を有する金型と、
該金型の充填空間と連通して、該充填空間内のエアを吸引する吸引ポンプと、
を備えることを特徴とする多孔質体の製造装置。
【請求項6】
前記金型の充填空間と連通する吸引空間を有する吸引部材と、
前記充填空間と前記吸引空間との間に配置され、合成樹脂粉末の前記充填空間から前記吸引空間への侵入を防止するメッシュ部材と、を備え、
前記吸引部材の吸引空間が前記吸引ポンプと連通することを特徴とする請求項5に記載の多孔質体の製造装置。
【請求項7】
前記吸引部材と前記金型との間に配置され、互いの密着性が高められるシール部材を備えることを特徴とする請求項6に記載の多孔質体の製造装置。
【請求項8】
前記金型には、前記充填空間として複数の貫通孔が形成され、
前記多孔質体は、細長い棒状体であることを特徴とする請求項5に記載の多孔質体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂粉末を焼結してなる多孔質体の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質体の製造方法に係る従来技術として、特許文献1には、多孔質製品は、ポリエチレンポリマー粉末を金型に導入し、ポリエチレン粒子を軟化し、膨張させ、互いに接触させるのに十分な熱を付与する焼結法により形成することができ、適した方法としては、圧縮成形や注型が採用されること、また、多孔率の調整が必要とされる場合、比例的に低い圧力を粉末に作用させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されているように、従来の多孔質体の製造方法では、押し型と受け型との間の内部空間に合成樹脂粉末を充填した後、押し型を移動させてその内部空間の容積を縮小しつつ、合成樹脂粉末全体に圧縮荷重を付与した状態で加熱して焼結する製造方法が採用されている。
【0005】
しかしながら、この従来の製造方法では、押し型と受け型との間の内部空間に充填される合成樹脂粉末において、その圧縮方向に沿う、押し型及び受け型に近接した部位は、十分に圧縮されて粉末粒子が結合してその密度が高くなる一方、圧縮方向略中央部分は、十分に圧縮されず粉末粒子間の結合が不足してその密度が低くなる現象が発生する。これは、押し型と受け型との間に充填された粉末粒子へ付与される圧縮力が、圧縮方向両端部から圧縮方向略中央部に向かうにしたがって減衰してしまう現象のためである。このように、従来の製造方法では、多孔質体として、求められる品質が得られない虞がある。
【0006】
すなわち、この従来の製造方法によって、例えば、筆記具のペン芯(細長い棒状体)等に採用される多孔質体を製造すると、上述した現象が顕著に発生するために、紙面と接触するペン芯(多孔質体)の先端部分が硬く、良好な筆感が得られないばかりか、先端部分のインクの流れも阻害される。しかも、ペン芯の長手方向略中央部分は、上述したように、その密度が低くスカスカ状態で粉末粒子間の結合も不足しているために折れ強度が確保されず、組立工程でも問題が発生する虞がある。さらに、ペン芯の長手方向略中央部分は、毛細管力も低いので、インクの流通も十分に得ることができない。
【0007】
そして、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、合成樹脂粉末の疎密を抑制できるように圧縮して焼結し、求められる品質を有する多孔質体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1の多孔質体の製造方法に係る発明は、合成樹脂粉末を焼結してなる多孔質体の製造方法であって、合成樹脂粉末を金型に設けた充填空間に充填する充填ステップと、該充填ステップの後、前記充填空間内のエアを吸引することで、前記充填空間内の合成樹脂粉末全体に圧縮荷重を付与する吸引圧縮ステップと、を含むことを特徴とするものである。
請求項1の発明では、特に、吸引圧縮ステップにより、金型の充填空間内の合成樹脂粉末の疎密を抑制しながら圧縮することができ、その結果、合成樹脂粉末の密度が略均一であり、求められる品質を有する多孔質体を製造することができる。
【0009】
請求項2の多孔質体の製造方法に係る発明は、請求項1の発明において、前記吸引圧縮ステップの後、合成樹脂粉末が充填された前記充填空間を閉塞する閉塞ステップと、該閉塞ステップの後、前記充填空間内を加熱して合成樹脂粉末を焼結する焼結ステップと、を含むことを特徴とするものである。
請求項2の発明では、合成樹脂粉末の密度が略均一となり、求められる品質を有する多孔質体を製造することができる。
【0010】
請求項3の多孔質体の製造方法に係る発明は、請求項1の発明において、前記多孔質体は、細長い棒状体であることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、従来の方法である金型等の移動によって圧縮して焼結する際に、合成樹脂粉末の疎密が発生し易くなる細長い棒状体の多孔質体を製造する際に、特に有効となる。
【0011】
請求項4の多孔質体の製造方法に係る発明は、前記多孔質体は、塗布具のペン芯に採用されることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、細長い棒状体である、塗布具のペン芯に採用される多孔質体を製造する際に、特に有効となる。要するに、多孔質体は、ペン芯として求められる品質を有するものである。なお、塗布具は、いわゆる筆記具をも含むものである。
【0012】
請求項5の多孔質体の製造装置に係る発明は、合成樹脂粉末を焼結してなる多孔質体の製造装置であって、合成樹脂粉末が充填される充填空間を有する金型と、該金型の充填空間と連通して、該充填空間内のエアを吸引する吸引ポンプと、を備えることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、特に、吸引圧縮ポンプにより、金型の、合成樹脂粉末が充填される充填空間内のエアを吸引することで、金型の充填空間内の合成樹脂粉末の疎密を抑制しながら圧縮することができる。これにより、請求項1の発明と同様に、合成樹脂粉末の密度が略均一であり、求められる品質を有する多孔質体を製造することができる。
【0013】
請求項6の多孔質体の製造装置に係る発明は、請求項5の発明において、前記金型の充填空間と連通する吸引空間を有する吸引部材と、前記充填空間と前記吸引空間との間に配置され、合成樹脂粉末の前記充填空間から前記吸引空間への侵入を防止するメッシュ部材と、を備え、前記吸引部材の吸引空間が前記吸引ポンプと連通することを特徴とするものである。
請求項6の発明では、メッシュ部材により、合成樹脂粉末の、金型の充填空間から吸引部材の吸引空間への侵入を防止することができ、金型の充填空間内にて、求められる品質を有する多孔質体を確実に製造することができる。また、金型の充填空間内からエアを吸引する、吸引ポンプを含む製造装置の構成を簡素化することができ、ひいては設備費等を軽減することができる。
【0014】
請求項7の多孔質体の製造装置に係る発明は、請求項6の発明において、前記吸引部材と前記金型との間に配置され、互いの密着性が高められるシール部材を備えることを特徴とするものである。
請求項7の発明では、シール部材により、吸引部材と金型との密着性を高めることができ、その結果、吸引ポンプによる金型の充填空間内からのエアの吸引効率を向上させることができる。
【0015】
請求項8の多孔質体の製造装置に係る発明は、請求項5の発明において、前記金型には、前記充填空間として複数の貫通孔が形成され、前記多孔質体は、細長い棒状体であることを特徴とするものである。
請求項8の発明では、請求項3及び4の発明と同様に、細長い棒状体である、塗布具のペン芯に採用される多孔質体を製造する際に、特に有効となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法及び製造装置によれば、合成樹脂粉末の疎密を抑制できるように圧縮して焼結し、求められる品質を有する多孔質体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る多孔質体の製造装置を構成する構成部材の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る多孔質体の製造装置であって、充填ステップ及び吸引圧縮ステップにて使用する構成部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る多孔質体の製造装置であって、閉塞ステップ及び焼結ステップにて使用する構成部材の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る多孔質体の製造方法を説明するための段階図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図4に基いて詳細に説明する。以下の説明の便宜上、図面(符号を正しく読める向き)を見て図面の下側を下端側と称し、上側を上端側と称する。なお、
図1~
図4では、本実施形態では、多孔質体の製造装置1を縦置きで使用している様子を示しているが、横置きで使用してもよい。
【0019】
図1及び
図4を参照して、本発明の実施形態に係る多孔質体の製造装置1は、合成樹脂粉末2を金型8の各貫通孔15内で焼結する多孔質体の製造装置1である。詳しくは、本実施形態に係る多孔質体の製造装置1は、合成樹脂粉末2が充填される各貫通孔15(充填空間)を有する金型8と、該金型8の各貫通孔15と連通する吸引空間31を有する吸引部材9と、金型8の各貫通孔15と吸引部材9の吸引空間31との間に設けられた、合成樹脂粉末2の各貫通孔15から吸引空間31への侵入を防止するメッシュ部材10と、吸引部材9の吸引空間31と連通して、該金型8の各貫通孔15内のエアを吸引する吸引ポンプ11と、金型8の各貫通孔15の軸方向両端を閉塞する一対の閉塞部材13と、金型8の各貫通孔15内の合成樹脂粉末2を加熱して焼結させる加熱部材12と、を備えている。
【0020】
本実施形態に係る製造装置1にて製造される多孔質体5(
図4(d)参照)は、細長い棒状体であり、詳しくは、断面円形状の細長い棒状体である。なお、本実施形態では、細長い棒状体(多孔質体5)の外径は1.5mm~5.0mmの範囲内で設定され、長さは5.0mm~50mmの範囲内で設定される。なお、本実施形態に係る製造装置1では、多孔質体5の長さが長い程その作用効果(後述)を奏することができ、有効となる。また、多孔質体5は、筆記具を含む塗布具のペン芯として採用される。なお、細長い棒状体である多孔質体5は、その軸方向端部が、球面状など所望の形状に形成することは可能である。
【0021】
合成樹脂粉末2は、熱可塑性樹脂が採用され、例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂などが採用される。なお、合成樹脂粉末2の粒子の外径は20μm程度である。
【0022】
図1~
図3を参照して、金型8は、直方体状に構成される。金型8には、その四隅に位置決めピン17が挿通されるピン用孔20がそれぞれ貫通して形成される。金型8には、各ピン用孔20の内側に縦方向に沿って貫通孔15が複数形成される。なお、例えば、金型8の面積が200mm×100mmの場合、貫通孔15は150箇所程度形成される。貫通孔15の数量は特に限定されることはない。貫通孔15は、平面視円形状であって、細長い形状に形成される。金型8の各貫通孔15が、合成樹脂粉末2が充填される充填空間として機能する。各貫通孔15の内径及び金型8の上下方向に沿う寸法は、上述した多孔質体5の所望寸法に対応して設定される。
図1、
図3及び
図4(c)を参照して、貫通孔15は、後述する閉塞ステップ及び焼結ステップにおいて、軸方向両端に設けた一対の閉塞ピン28、28により閉塞される。金型8には、その上下面に閉塞部材13がそれぞれ当接するように一対配置される。
【0023】
図1、
図3及び
図4(c)を参照して、閉塞部材13には、複数の閉塞ピン28が金型8の各貫通孔15に整合するように一体的に設けられる。閉塞部材13は、板状に形成される。閉塞部材13の外形は、金型8の外形と一致する。閉塞部材13の四隅には、位置決めピン17が挿通されるピン用孔21がそれぞれ貫通して形成される。閉塞ピン28は、閉塞部材13の、金型8との対向面から金型8の貫通孔15に向かって僅かに突設される。特に、限定されないが、閉塞ピン28は、閉塞部材13の対向面から約0.5mm程度突設される。
【0024】
図1、
図2及び
図4(a)、(b)を参照して、後述する充填ステップ及び吸引圧縮ステップでは、金型8の下端面に吸引部材9が配置される。吸引部材9は、板状に形成される。吸引部材9の外形は、金型8の外形と一致する。吸引部材9の四隅には、位置決めピン17が挿通されるピン用孔22がそれぞれ貫通して形成される。吸引部材9の内部には吸引空間31が形成される。吸引部材9には、吸引空間31と連通する吸引孔32が複数形成される。各吸引孔32は、吸引部材9の上端面から穿設される。各吸引孔32は、金型8の各貫通孔15とそれぞれ整合して連通される。吸引部材9の側面には、吸引空間31と連通するカプラー34が接続される。当該カプラー34に吸引ポンプ11の吸引ホース36が接続される。吸引ホース36の途中には、エアタンク37が配置される。エアタンク37の開閉コック38は、吸引ホース36の、エアタンク37から先端までの間に配置される。
【0025】
図1、
図2及び
図4(a)、(b)を参照して、後述する充填ステップ及び吸引圧縮ステップでは、金型8と吸引部材9との間に、互いの密着性を高めるべくシール部材14が配置される。シール部材14は、板状に形成される。シール部材14の外形は、金型8の外形と一致する。シール部材14の四隅には、位置決めピン17が挿通されるピン用孔23がそれぞれ貫通して形成される。シール部材14は、金型8と吸引部材9との互いの対向面の凹凸に追従するように微小に変形自在な柔らかいゴム製やシリコン樹脂製などが採用される。シール部材14には、金型8の下端側に吸引部材9が配置されたとき、金型8の各貫通孔15と、吸引部材9の各吸引孔32との間に位置するメッシュ部材10が一体的に設けられる。メッシュ部材10は、金型8の各貫通孔15及び吸引部材9の各吸引孔32に対応して設けられる。メッシュ部材10は、上下方向に沿って複数枚重ねられて設けられる。メッシュ部材10は、本実施形態では3枚~5枚程度重ねられる。
【0026】
金型8の各貫通孔15内に所定の外径(20μm)を有する合成樹脂粉末2が充填されている場合、メッシュ部材10は、吸引ポンプ11による吸引時、エアは通過できる一方、合成樹脂粉末2の、金型8の各貫通孔15から吸引部材9の各吸引孔32への侵入を防止する機能を有する。メッシュ部材10は、例えば材質としてステンレスワイヤを編み込んだ鋼材が採用される。なお、金型8の各貫通孔15内に外径が相違する合成樹脂粉末2が混在している場合には、所定の外径を有するものより小さい外径を有するものは、メッシュ部材10を通過でき、所定の外径を有するものだけが各貫通孔15内に残存するので、メッシュ部材10により各貫通孔15内の合成樹脂粉末2に対してその外径寸法に基づいて選別することもできる。これにより、貫通孔15内の合成樹脂粉末2全域に亘ってその粒子間の空隙率を略均一にすることができる。
【0027】
図1、
図3及び
図4(d)を参照して、後述する焼結ステップでは、一対の閉塞部材13、13の、金型8側とは反対側の面に一対の加熱部材12、12が配置される。加熱部材12は、板状に形成される。加熱部材12の外形は、金型8の外形と一致する。加熱部材12の四隅には、位置決めピン17が挿通されるピン用孔24がそれぞれ貫通して形成される。加熱部材12の内部には、電流を流すことで発熱する電熱コイル42が配置される。そして、一対の加熱部材12、12内の電熱コイル42、42に電流を流すことで一対の加熱部材12、12が発熱して、金型8の各貫通孔15内を所定温度にて加熱することができる。
【0028】
次に、以上説明した本実施形態に係る多孔質体の製造装置1を用いた、本実施形態に係る多孔質体5の製造方法を
図4に基づいて、適宜
図2及び
図3も参照して詳細に説明する。
本実施形態に係る多孔質体5の製造方法は、充填ステップ→吸引圧縮ステップ→閉塞ステップ→焼結ステップの順で実施される。そしてまず、充填ステップを実施する。すなわち、充填ステップでは、
図2及び
図4(a)及び(b)を参照して、金型8の下端面に、各メッシュ部材10を含むシール部材14を配置して、シール部材14の下端面に、吸引部材9を配置する。
【0029】
そして、金型8、シール部材14及び吸引部材9の各ピン用孔20、23、22に位置決めピン17をそれぞれ挿通して、金型8、シール部材14及び吸引部材9を位置決めして一体化する。すると、金型8の各貫通孔15と、吸引部材9の各吸引孔32との位置がそれぞれ一致する。また、各貫通孔15と各吸引孔32との間にメッシュ部材10がそれぞれ配置される。さらに、金型8の下端面と、吸引部材9の上端面とが、シール部材14を介して隙間なく密着する。なお、吸引部材9のカプラー34には、吸引ポンプ11の吸引ホース36が接続される。続いて、金型8の各貫通孔15の上端側開口から合成樹脂粉末2を充填する。このとき、合成樹脂粉末2を、金型8の各貫通孔15内に、その上端側開口周辺にあふれるまで充填する。
【0030】
次に、吸引圧縮ステップを実施する。すなわち、吸引圧縮ステップでは、
図2及び
図4(b)を参照して、吸引ポンプ11を作動させたのち、エアタンク37の開閉コック38を開く。すると、吸引部材9の吸引空間31及び各吸引孔32を経由して、金型8の各貫通孔15(充填空間)内のエアが一気に吸引される。すると、各貫通孔15内の合成樹脂粉末2にはその全体に亘って略均一に圧縮荷重が付与されて、金型8の各貫通孔15の上端周辺にあふれていた合成樹脂粉末2も各貫通孔15内に移動し、圧縮される。なお、ここで言及する圧縮とは、貫通孔15内の合成樹脂粉末2全域の粒子間の空隙率が所定値となるように、合成樹脂粉末2全体の容積が縮小されることを意味する。その結果、各貫通孔15内の合成樹脂粉末2は、部位によって疎密とならず、各貫通孔15内の合成樹脂粉末2全域に亘ってその密度が略均一となる。言い換えれば、各貫通孔15内の合成樹脂粉末2全域に亘ってその粒子間の空隙率が略均一となる。なお、吸引ポンプ11による吸引圧は、合成樹脂粉末2の粒子間の所望の空隙率に対応して適宜設定される。
【0031】
この吸引圧縮ステップ時、金型8の下端面と吸引部材9の上端面との間にシール部材14が介在されているので、吸引ポンプ11による金型8の各貫通孔15内からのエアの吸引効率を向上させることができる。また、金型8の各貫通孔15と吸引部材9の各吸引孔32との間には、メッシュ部材10が配置されているので、吸引ポンプ11による吸引時、金型8の各貫通孔15内の合成樹脂粉末2(所定の外径のもの)が吸引部材9の各吸引孔32に吸引される現象を防止することができる。
【0032】
次に、閉塞ステップを実施する。すなわち、閉塞ステップでは、金型8、シール部材14及び吸引部材9の各ピン用孔20、23、22から位置決めピン17を抜いて、シール部材14を含む吸引部材9、及びエアタンク37を含む吸引ポンプ11を取り除く。なお、金型8からシール部材14及び吸引部材9を取り除いても、金型8の各貫通孔15内の合成樹脂粉末2は各貫通孔15から落下することはない。続いて、
図3及び
図4(c)を参照して、一対の閉塞部材13、13を、金型8の上方及び下方から、金型8の上下面に当接するようにそれぞれ配置する。また、
図3及び
図4(d)を参照して、一対の加熱部材12、12を、一対の閉塞部材13、13の金型8側とは反対側の面それぞれに当接するように配置する。続いて、一対の加熱部材12、12、一対の閉塞部材13、13及び金型8の各ピン用孔24、21、20に位置決めピン17をそれぞれ挿通して、一対の加熱部材12、12、一対の閉塞部材13、13及び金型8を位置決めして一体化する。
【0033】
これによって、
図4(c)を参照して、一対の閉塞部材13、13の閉塞ピン28、28が、金型8の各貫通孔15の軸方向両端部内に僅かに挿入されて、金型8の各貫通孔15が、内部に合成樹脂粉末2が充填された状態で閉塞される。なお、一対の閉塞部材13、13の閉塞ピン28、28が、金型8の各貫通孔15の軸方向両端部内に僅かに挿入されることで、各貫通孔15内に焼結製造された多孔質体5の軸方向端部のバリ防止が可能になり、また各貫通孔15内の合成樹脂粉末2に対して僅かに圧縮荷重を付与することができる。
【0034】
次に、焼結ステップを実施する。すなわち、焼結ステップでは、
図3及び
図4(d)を参照して、一対の加熱部材12、12内の電熱コイル42、42に電流を流すことで、金型8の各貫通孔15内を所定温度にて加熱して、各貫通孔15内の合成樹脂粉末2を焼結する。その結果、金型8の貫通孔15内には、断面円形状の細長い棒状体で構成される多孔質体5が製造される。
【0035】
以上説明した、本発明の実施形態に係る多孔質体の製造装置1は、合成樹脂粉末2が充填される各貫通孔15を有する金型8と、該金型8の各貫通孔15と連通して、該金型8の各貫通孔15内のエアを吸引する吸引ポンプ11と、金型8の各貫通孔15の軸方向両端を閉塞する一対の閉塞部材13と、金型8の各貫通孔15内の合成樹脂粉末2を加熱して焼結させる一対の加熱部材12と、を備え、これらの吸引ポンプ11、閉塞部材13、加熱部材12を金型8に対して、吸引圧縮ステップと閉塞ステップとの間にて組み変えることによって、容易に多孔質体5を製造している。
【0036】
そして、この製造装置1を用いて、合成樹脂粉末2を金型8に設けた各貫通孔15に充填する充填ステップと、該充填ステップの後、各貫通孔15内のエアを吸引することで、各貫通孔15内の合成樹脂粉末2全体に圧縮荷重を付与する吸引圧縮ステップと、吸引圧縮ステップの後、合成樹脂粉末2が充填された金型8の各貫通孔15を閉塞する閉塞ステップと、該閉塞ステップの後、金型8の各貫通孔15内を加熱して合成樹脂粉末2を焼結する焼結ステップと、を実施することができる。
これにより、金型8の各貫通孔15内の合成樹脂粉末2の疎密を抑制しながら圧縮することができ、その結果、金型8の各貫通孔15内に、合成樹脂粉末2全域に亘ってその密度が略均一(合成樹脂粉末2全域に亘ってその粒子間の空隙率が略均一)であって、求められる品質を有する多孔質体5を製造することができる。要するに、本実施形態は、製造される多孔質体5の外径が1.5mm~5.0mmの範囲内、また長さが5.0mm~50mmの範囲内に設定される場合に特に有効となる。
【0037】
また、本実施形態に係る多孔質体の製造装置1は、金型8の各貫通孔15と連通する吸引空間31を有する吸引部材9と、金型8の各貫通孔15と吸引部材9の吸引孔32(吸引空間31)との間に配置され、合成樹脂粉末2の、各貫通孔15から吸引部材9の吸引空間31への侵入を防止するメッシュ部材10と、を備えている。
そして、吸引部材9の吸引空間31に連通されるエアタンク37の開閉コック38が開栓された際、メッシュ部材10により、合成樹脂粉末2の、金型8の各貫通孔15から吸引部材9の吸引空間31への侵入を防止することができ、金型8の各貫通孔15内にて、求められる品質を有する多孔質体5を確実に製造することができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る多孔質体の製造装置1では、吸引部材9と金型8との間には、互いの密着性が高められるシール部材14を備えている。
そして、シール部材14により、吸引ポンプ11(エアタンク37)による金型8の各貫通孔15内からのエアの吸引効率を向上させることができ、この点からも、金型8の各貫通孔15内にて、求められる品質を有する多孔質体5を確実に製造することができる。
【0039】
さらにまた、上述した本実施形態は、細長い棒状体である、筆記具を含む塗布具のペン芯に採用される多孔質体5を製造する際に、特に有効となる。言い換えれば、本実施形態にて製造された多孔質体5は、ペン芯として求められる品質を有するものである。すなわち、ペン芯として採用された多孔質体5は、紙面と接触するペン芯の先端部分が極端に硬くなく適宜硬さとなり、良好な筆感を得ることができる。しかも、ペン芯(多孔質体5)の先端部分には適宜の空隙が設けられるので、インクの流通も阻害されることはない。また、ペン芯(多孔質体5)の長手方向全域において折れ強度を確保することができ、組立工程において、折れるなどの問題を解消することもできる。さらに、ペン芯(多孔質体5)の長手方向全域において、所望の毛細管力を有しているので、インクの所望流通を十分に得ることができる。
【0040】
さらにまた、本実施形態では、吸引ポンプ11による吸引圧を適宜設定することで、多孔質体5全体の空隙率を適宜設定することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 製造装置,2 合成樹脂粉末,5 多孔質体,8 金型,9 吸引部材,10 メッシュ部材,11 吸引ポンプ,15 貫通孔(充填空間),31 吸引空間,40 シール部材