(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124143
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】二次電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240905BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240905BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240905BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H01M50/204 401D
H01M50/507
H01M10/48 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032111
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 健也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦美
(72)【発明者】
【氏名】首藤 正志
(72)【発明者】
【氏名】小山 泰平
【テーマコード(参考)】
5H030
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H030FF22
5H030FF32
5H030FF43
5H030FF44
5H040AT02
5H040AT06
5H043CA05
(57)【要約】
【課題】モジュールを形成する複数のセルがモジュールケース内で膨れる際に、セルの膨れが微小な段階であっても膨れを正確に検知する。
【解決手段】発電要素が内部に収容された外装容器、及び該外装容器に形成された端子を有する複数の二次電池セルと、絶縁性能を有し、複数の該二次電池セルを該二次電池セルの長側面が互いに向かい合うように並べて収容するケースと、該ケースに収容された複数の該二次電池セルのうち隣り合う二つの前記端子を電気的に接続するバスバーと、前記バスバーを介して前記二次電池セルと電気的に接続され前記二次電池セルの温度及び電圧を測定する監視装置と、前記外装容器の前記端子が形成された端子面を検知面とし、該端子面を介して前記二次電池セルの変形を検知する検知装置と、を備える二次電池モジュール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素が内部に収容された外装容器、及び該外装容器に形成された端子を有する複数の二次電池セルと、
絶縁性能を有し、複数の該二次電池セルを該二次電池セルの長側面が互いに向かい合うように並べて収容するケースと、
該ケースに収容された複数の該二次電池セルのうち隣り合う二つの前記端子を電気的に接続するバスバーと、
前記バスバーを介して前記二次電池セルと電気的に接続され前記二次電池セルの温度及び電圧を測定する監視装置と、
前記外装容器の前記端子が形成された端子面を検知面とし、該端子面を介して前記二次電池セルの変形を検知する検知装置と、
を備える二次電池モジュール。
【請求項2】
前記検知装置は、前記端子面に接触し該端子面を介して前記二次電池セルの温度を測定しつつ、該端子面との該接触が外れることで該二次電池セルの変形を検知する、
請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項3】
前記検知装置は、前記ケースに収容された複数の前記二次電池セルのうち、該ケース内の該二次電池セルの並ぶ方向における端位置に位置する該二次電池セルの変形を検知する、
請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項4】
前記検知装置は、前記監視装置と一体化されている請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項5】
前記検知装置を複数備え、
前記ケースに収容された複数の該二次電池セルのうちの一つについて、複数の前記検知装置が前記端子面を介して変形を検知し、
前記監視装置が、複数の前記検知装置のそれぞれの検知情報を総合して、前記二次電池セルの変形の有無を判断する、
請求項4に記載の二次電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の二次電池セル(以下、セルとする)をモジュールケースに並べて収容し、導電部材によって電気的に接続した二次電池モジュール(以下、モジュールとする)が知られている。該モジュールは、車両や電子機器、その他産業用の電源として用いられている。角柱型のセルの外装容器(セル缶)の材料は、例えばアルミが使用されており、モジュールは、充放電条件によってセルの内圧が上昇し、複数のセルが膨れる現象が起こる。また、モジュールにおいては、セル同士がセルの短手方向において近接して並べて配置されていることが多い。そして、上記セルの膨れは、モジュール内の全セルに略同時に発生して、経過とともにモジュールケースを破壊するほどの変形となるため、各セルの膨れを検知することが必要となる。
【0003】
従来、モジュールを点検する作業者がセルの膨れをセルに巻かれたラベルの変化により判定する技術、個々のセルにバンドを取り付けて膨れに対する抑えの機能を持たせる技術、又はモジュールケース内においてセルを冷却する冷媒を循環させるファンの負荷の変化量からセルの膨れを推定する技術等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-9734号公報
【特許文献2】特開2018-152156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、モジュールにおいては、複数のセルがケースに収容されているため、セルの膨れを、ラベルを介して目視により判定することは難しい。また、個々のセルに膨れ抑制のための金属製バンドを取り付けることは、セル及びモジュールの製造コストを押し上げる。また、セルを冷却する冷媒を循環させるファンの負荷の変化量からセルの膨れを推定する場合には、セルの膨れを検知できる箇所が限定されるとともに、誤検知も多く、且セルの冷却を行っていない場合にはセルの膨れを検知できない。
【0006】
モジュールにおいては、複数のセルがモジュールケース内で例えば略同時に膨れる際に、セルの膨れが微小な段階から検知できるようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本実施形態の二次電池モジュールは、発電要素が内部に収容された外装容器、及び該外装容器に形成された端子を有する複数の二次電池セルと、絶縁性能を有し、複数の該二次電池セルを該二次電池セルの長側面が互いに向かい合うように並べて収容するケースと、該ケースに収容された複数の該二次電池セルのうち隣り合う二つの前記端子を電気的に接続するバスバーと、前記バスバーを介して前記二次電池セルと電気的に接続され前記二次電池セルの温度及び電圧を測定する監視装置と、前記外装容器の前記端子が形成された端子面を検知面とし、該端子面を介して前記二次電池セルの変形を検知する検知装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態のモジュールの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のモジュールにおける、セルとバスバーと検知装置との配置関係を説明するための斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のモジュールにおけるセルと監視装置との配置関係を説明するための斜視図である。
【
図4】
図4は、ケース内でセルが膨らむ前の状態を、セルの高さ方向に沿って切断して示す断面図である。
【
図5】
図5は、ケース内でセルが膨らんだ状態を、セルの高さ方向に沿って切断して示す断面図である。
【
図6】
図6は、モジュールにおける複数のセルの膨れる量の違いを、セルの短側面側から見て説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、
図1~
図3を用いて二次電池モジュール1(以下、モジュール1とする)の例示的かつ模式的な実施形態を開示する。モジュール1は、組電池とも称される。
なお、以下の説明では、X軸Y軸Z軸直交座標系を用いる。X軸方向は、+X方向と-X方向とを含む。Y軸方向は、+Y方向と-Y方向とを含む。Z軸方向は、例えば上方向である+Z方向と、下方向である-Z方向とを含む。
図1~
図3において、例えば、X軸Y軸平面は水平面であり、Z軸方向は鉛直方向である。
【0010】
本実施形態のモジュール1は、複数の二次電池セル2(以下、セル2とする)と、絶縁性能を有し複数のセル2を収容するケース5と、ケース5に収容された複数のセル2のうち隣り合う二つの端子を電気的に接続するバスバー3と、バスバー3を介してセル2と電気的に接続されセル2の温度及び電圧を測定する監視装置4と、セル2の外装容器20の端子面203を検知面とし、端子面203を介してセル2の変形を検知する検知装置6と、を備える。
【0011】
例えば、モジュール1では、複数のセル2が電気的に直列に接続される直列接続構造、及び、複数のセル2が電気的に並列に接続される並列接続構造の少なくとも一方が、形成される。
【0012】
セル2は、例えば、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された扁平又は略直方体形状の外装容器20と、外装容器20内に非水電解液と共に収容された発電要素27と、を備えている。即ち、セル2は、例えば、角柱型の缶セルである。
【0013】
外装容器20は、有底矩形筒状の容器本体200と、容器本体200の図示しない開口に溶融等によって一体的に取り付けられた蓋201と、を有する。そして、蓋201のZ軸方向における上面を、端子面203とする。そして、端子面203の長手方向(X軸方向)の両側となる領域に、正極端子23と負極端子24との2種類の端子が間隔を空けて形成されている。
【0014】
また、セル2は、端子面203の中央に外装容器20内に発生したガスを排出するラブチャー25、及び非水電解液を外装容器20の内部に注入するための注液口26を備えている。ラブチャー25は、例えば、蓋201の正極端子23と負極端子24との間に位置する薄肉部にX字状の溝部を設けたものである。
【0015】
外装容器20は、Z軸方向において端子面203に対向する底面204と、底面204から連続する側面である一対の短側面205、底面204から連続する側面である一対の長側面206と、を有している。一対の短側面205は、
図1においては、X軸方向において対向する面である。一対の長側面206は、Y軸方向において対向する面である。また、ケース5に複数収容されたセル2の長側面206同士が、Y軸方向において対向する。平常時のセル2の端子面203、底面204、一対の短側面205、及び一対の長側面206は、平坦面となっている。
【0016】
電流入出力用の正極端子23及び負極端子24は、蓋201にかしめ固定されるか、あるいは蓋201を成形する際に鋳込まれることで、蓋201に取り付けられている。正極端子23及び負極端子24は、蓋201と電気的に絶縁されている。正極端子23及び負極端子24は、例えば、略平坦な平板状に形成されている。
【0017】
外装容器20内に収容され破線で簡略化して示す発電要素27は、その正極が正極端子23と電気的に接続している。発電要素27の負極は、負極端子24と電気的に接続している。発電要素27は例えば、倦回型電極群を含む。
【0018】
ケース5は、電気的絶縁性を有する材料から形成される。ケース5を形成する材料としては、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート及びポリブチレンテレフタレート等の樹脂が挙げられる。ケース5には、例えば、9個のセル2が収容される。ケース5内において、一つのセル2と、該一つのセル2の隣に位置する別のセル2とは、X軸方向における正極端子23及び負極端子24の位置が反対になっている。ここで、ケース5に収容された複数のセル2を、一つのセル列2Aとする。
【0019】
ケース5は、箱部51を備えている。箱部51は、ケース5の長手方向(Y軸方向)において対向する一対の側壁512と、ケース5の短手方向(X軸方向)において対向する一対の側壁513と、底板515と、を備える。一対の側壁512、一対の側壁513及び底板515は一体的に形成されている。
【0020】
箱部51は、複数枚の仕切り壁516を備える。各仕切り壁516は、Y軸方向において一対の側壁512の間に配置される。互いに対して等間隔を空けて離れて配置される例えば8枚の仕切り壁516によって、箱部51の内部は、Y軸方向においてセル2の個数と同数の九つの収容室517に仕切られる。仕切り壁516は、少なくとも外表面が電気的絶縁性を有する材料で形成されており、セパレータとしても機能する。
【0021】
箱部51の各収容室517に、セル2が一つずつ収容され、セル2の長側面206同士が互いにY軸方向において向かい合った状態になる。例えば、底板515の上面(収容室517の底面)には、接着剤が配設されており、セル2の底面204が、該接着剤によって底板515に接着固定される。また。各仕切り壁516によって複数のセル2は、Y軸方向における適切な位置決めがなされた状態になる。図示しない接着剤は、例えば、2液硬化型のエポキシ樹脂系接着剤等であるが、これに限定されず、極薄の両面テープ等であってもよい。
【0022】
セル列2Aでは、各セル2の短手方向が、ケース5の長手方向(Y軸方向)と平行又は略平行の状態になっており、各セル2の長手方向が、ケース5の短手方向(X軸方向)と平行又は略平行の状態になっている。そして、セル列2Aでは、セル2のそれぞれの高さ方向が、ケース5の高さ方向(Z軸方向)と平行又は略平行の状態になっている。
【0023】
図1に示すように、ケース5は、箱部51に対して天板となる樹脂カバー52を備えている。樹脂カバー52は、平面視矩形に形成された平板部520と、平板部520の下面の外周側の領域において垂下した図示しない下枠部と、平板部520の上面の外周側の領域において立設された壁部521と、平板部520を厚さ方向(Z軸方向)に貫通する複数の端子露出孔523と、を備えている。
【0024】
平板部520の下面と図示しない下枠部で囲まれた空間に、箱部51に収容されたセル列2Aの上側部分が嵌合する。また、各セル2の正極端子23及び負極端子24が、平板部520の端子露出孔523から平板部520の上面に露出する。
【0025】
図1に示すように、樹脂カバー52の上面側は、壁部521に4方周囲を囲繞されており、バスバー3及び監視装置4を収容する収容部528が形成されている。
【0026】
バスバー3は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を矩形平板状に形成したものであり、長手方向(Y軸方向)に並べてろう材配設孔32が一つずつ厚さ方向に貫通形成されている。ろう材配設孔32は、ろう材を用いたレーザ溶接用の座繰り穴であり、溶けたろう材が入れ込まれる。なお、バスバー3の形状等については、
図1に示す例に限定されない。
【0027】
図1に示す樹脂カバー52の端子露出孔523から露出するセル2の正極端子23及び負極端子24に、バスバー3がろう材を用いてレーザ溶接される。具体的には、
図2に示すように、一つのセル2の正極端子23に、バスバー3のY軸方向における一端部が溶接され、Y軸方向における隣のセル2の負極端子24に、該バスバー3のY軸方向における他端部が溶接される。また、該一つのセル2の負極端子24は、前記の隣とは反対側の隣のセル2の正極端子23とバスバー3によって溶接される。なお、
図2は、本実施形態のモジュール1における、セル2とバスバー3と検知装置6との配置関係を説明するための斜視図である。
図2においては、複数のセル2を収容したケース5を二点鎖線で簡略化して示している。
【0028】
例えば、
図2に示すケース5に収容された複数のセル2のうち、ケース5内において-Y方向における端位置に位置するセル2のバスバー3で接続されていない正極端子23は、バスバーを介して図示しない正極の電源入出力用端子と接続される。例えば、ケース5に収容された複数のセル2のうち、ケース5内において+Y方向における端位置に位置するセル2のバスバー3で接続されていない負極端子24は、バスバーを介して図示しない負極の電源入出力用端子と接続される。図示しない正極の電源入出力用端子及び図示しない負極の電源入出力用端子が、充電電源や負荷と接続されることで、モジュール1の充電や利用がなされる。
【0029】
このように複数のセル2は、複数のバスバー3により例えば直列に接続されてモジュール1となる。なお、電気的に並列に接続されている複数のセル2を含むモジュール1では、例えば、負極端子24同士がバスバー3により接続されるとともに正極端子23同士がバスバー3により接続されることで、複数のセル2が電気的に接続され得る。
【0030】
図1に示す監視装置4は、例えば、矩形板状の監視基板であり、CMU(Cell Monitoring Unit)基板とも称される。監視装置4は、セル監視IC等を搭載しており、セル2の電圧及び温度を測定し、例えば図示しない上位制御装置とデータ授受可能に構成される。上位制御装置の一例としては、BMU(Battery Management Unit)である。監視装置4は、モジュール1の複数のセル2をそれぞれ制御する機能を備える。なお、監視装置4は、セル2の充放電量等の測定を行ってもよい。
例えば、樹脂カバー52には、図示しない外部通信用コネクタを備えており、この外部通信用コネクタを通して監視装置4は上位制御装置とデータの授受を行う。
【0031】
監視装置4は、樹脂カバー52の収容部528に収容される。また、例えば、
図3に示すように、複数のセル2に溶接された複数のバスバー3の上面に、下面である配設面40が接続される。なお、
図3においては、監視装置4とバスバー3及びセル2との接続関係を示すために、
図1に示すケース5を二点鎖線で簡略化して示している。
【0032】
図1に示すように、モジュール1は、バスバー3及びセル2に電気的に接続された監視装置4を保護するために、保護カバー19を備えている。保護カバー19は、電気的絶縁性を有する材料で上下の平坦面を有する矩形板状に形成されており、監視装置4を上方から覆うようにして、樹脂カバー52の収容部528内に配置される。
【0033】
図1に示すように、監視装置4のセル2側を向く配設面40に、セル2の外装容器20の端子面203を検知面とし、端子面203を介してセル2の変形を検知する検知装置6が配設されている。即ち、本実施形態において、検知装置6は監視装置4と一体化されている。
【0034】
本実施形態における検知装置6は、例えば、セル2の端子面203に接触する接触式の温度センサである。接触式の温度センサである検知装置6は、例えば、2種類の異なる材質の金属線の先端を端子面203に接続し、その先端と他端の温度差によって熱起電力が発生する原理を利用して測定する熱電対ある。なお、接触式温度センサである検知装置6は、金属の電気抵抗が温度に比例して増減する性質を利用して測定する測温抵抗体、又は金属の酸化物を焼結した素子で温度の変化で抵抗値が大きく変化する性質を利用して測定するサーミスタ等であってもよい。
【0035】
検知装置6は、例えば、監視装置4の配設面40からセル2の端子面203に向かって延在するように配設されている。そして、
図1に示すように、樹脂カバー52は、検知装置6を厚さ方向(Z軸方向)に通過させるための通過孔527が貫通形成されている。監視装置4と一体化されている検知装置6は、
図3に示すように、樹脂カバー52の収容部528に監視装置4が収容される。そして、検知装置6は、収容部528内において、
図4に示すように通過孔527を通り、セル2の端子面203に接触する。なお、
図4は、
図1に示すケース5、セル2、バスバー3、監視装置4、及び保護カバー19が組み合わされたモジュール1を高さ方向(Z軸方向)に沿って切断して、一部を拡大して示す断面図である。
図4では、外装容器20内の発電要素27等は省略して示している。また、
図4では、セル2が膨らむ前の状態を示している。検知装置6は、セル2の温度を、端子面203を介して測定しており、測定情報を監視装置4に逐次送信している。
【0036】
本実施形態において、検知装置6は、ケース5に収容された九つのセル2のうち、ケース5内のセル2の並ぶ方向(Y軸方向)における両端位置に位置する二つのセル2の端子面203に、それぞれ接触する。なお、検知装置6は、ケース5内のY軸方向における両端位置に位置する二つのセル2とは別のセル2の端子面203に接触し、該別のセル2の温度を測定するように監視装置4に配設されていてもよい。
【0037】
なお、モジュール1において、検知装置6は、ケース5に収容された九つのセル2全ての端子面203に、それぞれ少なくとも一つずつ接触するようにして、監視装置4の配設面40に複数配設されていてもよい。即ち、ケース5内の複数のセル2の例えば全てが、対応するそれぞれの検知装置6によって個別に温度測定されていてもよい。これに合わせて、
図1に示す樹脂カバー52に、通過孔527がY軸方向に間隔を空けて複数並べて形成されていてもよい。
【0038】
本実施形態のモジュール1は、例えば、一つのセル2に対して、対応する検知装置6を複数(二つ)備えている。
図1において、二つの検知装置6は、ケース5内のセル2の並ぶ方向(Y軸方向)における-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2に対応し、別の二つの検知装置6は、ケース5内のセル2の並ぶ方向(Y軸方向)における+Y方向側の端位置に位置する一つのセル2に対応する。一つのセル2に対応する二つの検知装置6は、監視装置4の配設面40にX軸方向に所定間隔を空けて配設されている。
【0039】
X軸方向に並ぶ二つの検知装置6は、樹脂カバー52の通過孔527を通過して、ケース5内の-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2の端子面203に、それぞれ接触する。例えば、X軸方向に並ぶ二つの検知装置6のうちの一方は、一つのセル2の端子面203のラブチャー25と正極端子23と間の領域に接触する。X軸方向に並ぶ二つの検知装置6のもう片方は、端子面203のラブチャー25と負極端子24と間の領域に接触する。即ち、本実施形態においては、ケース5に収容された複数のセル2に一つにつき検知装置6が二つ対応して、二つの検知装置6が端子面203を介してセル2の変形を同時進行で検知する。同様に、ケース5内の+Y方向側の端位置に位置する一つのセル2の端子面203にも、上記二つの検知装置6とは別の二つの検知装置6が接触する。
なお、一つのセル2に対して、検知装置6が一つのみ対応(接触)していてもよいし、一つのセル2につき三つ以上の検知装置6が対応(接触)していてもよい。
【0040】
図示しない電源から
図1~
図3に示すモジュール1に電力が供給されることにより、モジュール1が充電される。また、モジュール1から負荷へ電力が供給されることにより、モジュール1が放電する。以下に、本実施形態のモジュール1の各セル2が充放電を繰り返すことで各セル2が膨れる場合に、セル2の膨れが検知装置6によって検知される過程について説明する。
【0041】
図1~
図4に示すように、充放電の繰り返しによる膨れがセル2にまだ生じていない状態では、セル2の端子面203、底面204、一対の短側面205、及び一対の長側面206は、平坦面となっている。また、本実施形態では、該状態において、
図4に示すように、セル2の端子面203に接触式温度センサで構成される検知装置6が接触している。
【0042】
図1~
図3に示すモジュール1の各セル2の充放電が繰り返されることで、セル2が発熱する。即ち、セル2は、充放電によってその内部抵抗と充放電電流の2乗との積で近似される熱が発生する。また、セル2内部にある発電要素27は、コイルが巻回されて電解液とともに収納されているので、巻回方向、積層方向、及び面内方向によって熱伝導率が異なり、放熱のしやすさが角柱のセル2のそれぞれの面によって異なる。該発熱では、セル2の中心部が最も発熱量が大きく、セル2の中心部からセル2の外面に向かうほど、発熱量が小さくなっていく。即ち、
図1に示すセル2は、面積の最も広い一対の長側面206が最も発熱し、一方で、セル2の一対の短側面205、底面204、及び端子面203に向かうほど発熱量が小さくなる。
【0043】
角柱型のセル2は、発熱により内圧が上昇すると、
図4に示す状態から
図5に示す状態のようなセル膨れを起こす。即ち、
図5に示すように、外装容器20の面積の広い一対の長側面206がY軸方向における外側に向かって膨れていく。なお、
図5では、外装容器20内の発電要素27は省略して示している。
一方で、一対の短側面205(
図1参照)はX軸方向における内側(セル2の中心部側)に、底面204はZ軸方向におけるセル2の中心部側に、また、端子面203はZ軸方向におけるセル2の中心部側に、それぞれへこむ変形を起こす。これは、最も広い面積を有する一対の長側面206が外側に膨れることで、一対の長側面206と一対の短側面205との境界となる辺部分、一対の長側面206と底面204との境界となる辺部分、及び一対の長側面206と端子面203との境界となる辺部分を支点として、一対の長側面206の膨れにより発生した力のモーメントが一対の短側面205、底面204、及び端子面203側にかかることを要因とする。
【0044】
モジュール1の充放電によって、第1段階で
図5に示すようにセル2の微小な膨れが起き、第2段階で複数のセル2を収容する
図1~
図3に示すケース5が膨れ、第3段階でケース5を突き破り複数のセル2が飛び出し、第4段階でセル2のラブチャー25が作動して、ラブチャー25から外装容器20内の非水電解液等が噴出する。
【0045】
図1、
図2に示すように、セル2を一列に並べたセル列2Aにおいては、バスバー3で接続された各セル2の端子面203側の結合強度が、セル2のその他の箇所の結合強度よりもバスバー3によって大きくなる。したがって、
図6に示すように、各セル2においては、端子面203側が回転中心となり、長側面206が膨れる各セル2によって各セル2同士が押しあうことで、各セル2の間に底面204側により大きな隙間が形成されていく。なお、
図6においては、各セル2の膨れる度合いの違いを説明するために、ケース5等については省略している。
【0046】
図1、
図2に示すケース5に収容された九つのセル2のうち、セル2の並ぶ方向(Y軸方向)における中央に配置されたセル2の膨れる度合いよりも、中央からより外側に配置されたセル2の膨れる度合いが大きくなる。即ち、
図6に示すY軸方向における中央側に配置された複数のセル2は、隣り合うセル2同士が長側面206が膨れることで押し合うが、より外側に配置されたセル2は、隣り合うセル2によって押される力が小さくなるためである。
【0047】
図6に示すように、ケース5(
図1参照)に収容された複数のセル2のうち、Y軸方向における両端に位置する二つのセル2の長側面206が最も外側に向かって膨れ、両端に位置する該二つのセル2の一対の短側面205、底面204、及び端子面203が、最も内側(セル2の中心側)にへこむ。
【0048】
セル2の膨れが発生する第1段階においては、モジュール1を形成している複数のセル2は、
図1、
図5に示すケース5に収容されて覆われているため、目視ではセル2の微小な膨れを確認できない。また、監視装置4が、各セル2の充放電状態から得られる電圧情報等には変化がほとんどみられない。
【0049】
本実施形態のモジュール1においては、
図1~
図3に示すケース5に収容された九つのセル2のうち、セル2の並ぶ方向(Y軸方向)における両端位置に位置し膨れ変化が最も大きい二つのセル2の端子面203がへこむことで、
図5に示すように、接触式温度センサである検知装置6と端子面203との接触が外れる。即ち、セル2の
図4に示す状態から
図5に示す状態への変形により、セル2の温度を測定していた検知装置6の測定値に変化が生じる。該変化は、例えば、検知装置6のセル2の温度についての測定値が、端子面203がへこみ検知装置6から物理的に離れることで下がる変化である。即ち、従来は検知できていなかったセル2の微小な膨れが発生した段階で、該膨れを検知装置6によって検知できる。
【0050】
検知装置6は、本実施形態のような接触式温度センサではなく、例えば、圧力センサ等で形成されていてもよい。検知装置6が圧力センサである場合には、
図4に示すように、膨れる前のセル2の端子面203に検知装置6が接触しており、端子面203から所定の接触圧力を受けている。そして、
図5に示すように、セル2の端子面203がへこみ検知装置6と端子面203との接触が外れることで、検知装置6の測定値が下がる変化が生じる。端子面203がへこみ検知装置6から物理的に離れることで、従来は検知できていなかったセル2の微小な膨れが発生した段階で、該膨れを検知装置6によって検知できる。
【0051】
例えば、温度センサである検知装置6が、
図4に示すセル2の膨れが生じていない状態で、セル2の端子面203に接触しておらず、Z軸方向において端子面203と所定の距離だけ離れており、かつ、検知装置6が端子面203を介してセル2の温度を逐次測定していてもよい。ケース5内のセル2の並ぶ方向(Y軸方向)における両端位置に位置し膨れ変化が最も大きい二つのセル2の端子面203が
図5に示すようにへこむことで、検知装置6と端子面203とのZ軸方向における距離が広がる。そして、検知装置6のセル2の温度についての測定値が、端子面203がへこみ検知装置6から物理的にさらに離れることで下がる。即ち、従来は検知できていなかったセル2の微小な膨れが発生した段階で、該膨れを検知装置6によって検知できる。なお、検知装置6が非接触式の温度センサで構成されている場合には、例えば、端子面203から放射される熱エネルギー放射をとらえて温度を測定する。
なお、検知装置6は非接触式の温度センサに限定されるものではない。例えば、検知装置6は、セル2の端子面203との間にコンデンサを形成し、コンデンサの静電容量の変化からセル2の端子面203がへこむこと、即ち、セル2の端子面203の変位を測定してセル2の膨れ変形を検知する静電容量式センサであってもよい。
【0052】
本実施形態においては、
図1に示すように、ケース5に収容されY軸方向における両端位置における二つのセル2それぞれに対して、X軸方向に所定距離を空けて配設された検知装置6が二つずつ対応している。X軸方向に並ぶ該二つの検知装置6のそれぞれが、-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2の端子面203を介して、温度測定値の上記変化が生じたことをもって該セル2の変形を検知する。
【0053】
監視装置4の配設面40に配設された二つの上記検知装置6から、-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2が変形したことを示す検知情報が、監視装置4にそれぞれ送られる。そして、監視装置4が、例えば、X軸方向に並んで配設された二つの検知装置6のそれぞれの検知情報を総合して、-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2の変形(膨れ)があったと判断する。具体的には、二つの検知装置6の両方ともがセル2の膨れについての検知情報を送ってきた場合に、監視装置4がセル2の膨れ変形が発生していると判断する。なお、監視装置4は、X軸方向に並んで配設された二つの検知装置6のそれぞれの検知情報を総合せずに、該二つの検知装置6のいずれか一方から、-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2の変形があった旨の検知情報を受信した時点で、ケース5内の各セル2の変形(膨れ)があったと判断してもよい。
【0054】
なお、監視装置4は、配設面40における-Y方向側の領域においてX軸方向に並んで配設された二つの検知装置6それぞれから、ケース5内の-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2の変形があったとの検知情報を受信し、且、配設面40における+Y方向側の領域においてX軸方向に並んで配設された二つの検知装置6それぞれから、Y方向側の端位置に位置する一つのセル2の変形があったとの検知情報を受信し、これらの検知情報を総合して、ケース5内の各セル2に膨れが発生していると判断してもよい。
【0055】
本実施形態のモジュール1は、発電要素27が内部に収容された外装容器20、及び外装容器20に形成された正極端子23と負極端子24とを有する複数のセル2と、絶縁性能を有し、複数のセル2をセル2の長側面206が互いに向かい合うように並べて収容するケース5と、ケース5に収容された複数のセル2のうち隣り合う例えば正極端子23と負極端子24とを電気的に接続するバスバー3と、バスバー3を介してセル2と電気的に接続されセル2の温度及び電圧を測定する監視装置4と、外装容器20の正極端子23及び負極端子24が形成された端子面203を検知面とし、端子面203を介してセル2の変形を検知する検知装置6と、を備えている。密閉構造のモジュール1において、ケース5に収容された複数のセル2において、正極端子23及び負極端子24が配設された端子面203は、外装容器20の中でもケース5外部に直接的に、又は間接的に露出させることが可能な面である。そして、ケース5内において露出させることが難しい角柱型のセル2の一対の長側面206、一対の短側面205、底面204に比べて、端子面203はセル2の膨れ及びへこみ等の変形を検知しやすい面である。また、モジュール1の構造上、セル2の温度及び電圧を測定するCMU等の監視装置4は、端子面203の上方に配設する必要があるが、監視装置4近傍に検知装置6を配設しやすい。例えば、本実施形態においては、監視装置4の端子面203と対向する下面を配設面40として、配設面40に端子面203を介してセル2の変形を検知する検知装置6を配設することで、セル2の膨れを検知装置6に微小な膨れの段階で検知することが可能となる。即ち、複数のセル2を収容するケース5が、セル2の膨れによって膨れてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0056】
例えば、検知装置6は、膨れが生じていないセル2の端子面203に予め接触しており、端子面203を介してセル2の温度を測定しつつ、端子面203がへこみ端子面203との接触が外れることでセル2の変形を検知する。そのため、端子面203の微小なへこみ、換言すれば、セル2の微小な膨れを、より早い段階で検知することが可能となる。
【0057】
例えば、検知装置6は、ケース5に収容された複数のセル2のうち、ケース5内のセル2の並ぶ方向(Y軸方向)における端位置に位置するセル2の変形を検知する。ケース5内で、Y軸方向における中央側に配置された複数のセル2は、隣り合うセル2同士が長側面206が膨れることで押し合い、長側面206の膨れが該押し合いにより抑制され、その結果、端子面203のへこみも抑制される。対して、ケース5内で、Y軸方向における端位置に配置されたセル2は、隣り合うセル2によって押される力が小さくなるため、長側面206の膨れが大きくなり、また、端子面203のへこみも大きくなる。したがって、例えば接触式の検知装置6が端子面203から外れる段階が、ケース5に収容された複数のセル2の中で最も早くなる。即ち、モジュール1内において、略同時に発生する複数のセル2の膨れを検知するにあたって、セル2の微小な膨れをより早い段階で検知することが可能となり、また、誤検知が発生することを抑制できる。
【0058】
例えば、検知装置6は、監視装置4と一体化されているため、検知装置6によるケース5内のセル2の膨れ検知についての情報を、容易に監視装置4に送信できる。また、モジュール1の構造上、端子面203の上方に監視装置4を配設する必要があるため、端子面203を検知面とするために、監視装置4に検知装置6を一体化させることがモジュール1の構造的にも適する。
【0059】
本実施形態のモジュール1においては、例えば、検知装置6を複数備え、ケース5に収容された複数のセル2のうち、セル2の並び方向(Y軸方向)における両端位置に位置するそれぞれのセル2について、検知装置6が二つずつ接触し端子面203を介して変形を検知する。即ち、検知対象のセル2に一つに対し、二つの検知装置6で同時に膨れ検知を行っている。そして、二つの上記検知装置6から、例えば-Y方向側の端位置に位置する一つのセル2が変形したことを示す検知情報が、監視装置4にそれぞれ送られる。監視装置4が、例えば、X軸方向に並んで配設された二つの検知装置6の両方ともが、一つのセル2の膨れについての検知情報を送ってきた場合に、監視装置4がセル2の膨れが発生していると判断する。仮に、X軸方向に並んで配設された二つの検知装置6の片方のみがセル2の膨れ変形についての検知情報を送ってきた場合には、監視装置4がセル2の膨れ変形がまだ発生していないと判断する。このように、監視装置4が、複数の検知装置6のそれぞれの検知情報を総合して、セル2の変形の有無を判断することで、一つのセル2に対して単一の検知装置6のみで膨れ検知を行う場合に比べて、誤検知を発生させる頻度を減らして、検知精度を向上させることができる。なお、例えば、一つのセル2に対して、検知装置6が三つ以上配設されている場合には、監視装置4は、例えば、過半数以上の検知装置6からセル2が変形したことを示す検知情報が送られてきた場合に、監視装置4がセル2の膨れ変形が発生していると判断するものとしてもよい。
【0060】
なお、
図1に示すモジュール1において、ケース5に収容されたセル2全ての端子面203に、検知装置6がそれぞれ少なくとも一つずつ接触するようにして、監視装置4の配設面40に複数配設されていてもよい。そして、ケース5内の複数のセル2の例えば全てが、対応するそれぞれの検知装置6によって個別に温度測定がなされることで、逐次膨れが発生しているか否かが検知されていてもよい。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1:モジュール、 19:保護カバー
2:セル、 2A:セル列
20:外装容器、 203:端子面、 204:底面、 205:短側面
206:長側面
23:正極端子、 24:負極端子、 25:ラブチャー、 27:発電要素
3:バスバー
4:監視装置、 40:接続面
5:ケース
51:箱部、 516:仕切り壁、 517:収容室
52:樹脂カバー、 523:端子露出孔、 527:通過孔
6:検知装置