(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124144
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】パケット転送装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/02 20220101AFI20240905BHJP
【FI】
H04L43/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032112
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜庭 皆人
(57)【要約】
【課題】複数のパケット転送装置で構成される通信ネットワークの異常を早期に検知させるためのパケット転送装置を提供する。
【解決手段】パケット転送装置は、1つ以上の他のパケット転送装置と経路情報を交換するために使用する1つ以上のコネクションに関する第1情報と、ルーティングテーブルの更新に関する第2情報と、他の2つのパケット転送装置間で経路情報を交換するために当該他の2つのパケット転送装置間で送受信されるパケットの処理に関する第3情報と、の内の少なくとも1つの種別の情報を取得する取得手段と、前記取得手段が前記情報を取得すると、前記情報を監視装置に送信する、或いは、前記取得手段が取得した前記情報の統計情報を所定期間毎に前記監視装置に送信する処理を行う処理手段と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット転送装置であって、
1つ以上の他のパケット転送装置と経路情報を交換するために使用する1つ以上のコネクションに関する第1情報と、ルーティングテーブルの更新に関する第2情報と、他の2つのパケット転送装置間で経路情報を交換するために当該他の2つのパケット転送装置間で送受信されるパケットの処理に関する第3情報と、の内の少なくとも1つの種別の情報を取得する取得手段と、
前記取得手段が前記情報を取得すると、前記情報を監視装置に送信する、或いは、前記取得手段が取得した前記情報の統計情報を所定期間毎に前記監視装置に送信する処理を行う処理手段と、
を備えている、パケット転送装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記取得手段が取得した前記第1情報の統計情報を前記監視装置に送信する、請求項1に記載のパケット転送装置。
【請求項3】
前記第1情報は、前記1つ以上のコネクションの確立が生じたことを示す情報、前記1つ以上のコネクションでのパケットの再送が生じたことを示す情報、前記1つ以上のコネクションにおいてパケットの廃棄が生じたことを示す情報、前記1つ以上のコネクションのウインドウサイズを示す情報、及び、前記1つ以上のコネクションのラウンドトリップ遅延を示す情報の内の少なくとも1つを含む、請求項2に記載のパケット転送装置。
【請求項4】
前記第1情報の統計情報は、前記所定期間において前記1つ以上のコネクションが確立された回数を示す情報、前記1つ以上のコネクションでのパケットの再送回数を示す情報、前記1つ以上のコネクションにおいて廃棄したパケットの数を示す情報、前記1つ以上のコネクションのウインドウサイズの平均値を示す情報、及び、前記1つ以上のコネクションのラウンドトリップ遅延の平均値を示す情報の内の少なくとも1つを含む、請求項3に記載のパケット転送装置。
【請求項5】
前記処理手段は、前記取得手段がした前記第2情報を前記監視装置に送信する、請求項1に記載のパケット転送装置。
【請求項6】
前記第2情報は、前記ルーティングテーブルにエントリが追加されことを示す情報、又は、前記ルーティングテーブルのエントリが削除されたことを示す情報を含む、請求項5に記載のパケット転送装置。
【請求項7】
前記第2情報は、追加又は削除された前記エントリの内容を示す情報を含む、請求項6に記載のパケット転送装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記取得手段が取得した前記第3情報の統計情報を前記監視装置に送信する、請求項1に記載のパケット転送装置。
【請求項9】
前記第3情報は、前記他の2つのパケット転送装置間で送受信される前記パケットを廃棄したことを示す情報を含む、請求項2に記載のパケット転送装置。
【請求項10】
前記第3情報の統計情報は、前記所定期間において前記他の2つのパケット転送装置間で送受信された前記パケットを廃棄した回数を示す情報を含む、請求項9に記載のパケット転送装置。
【請求項11】
前記第3情報は、前記他の2つのパケット転送装置間で前記経路情報を交換するために使用されているルーティングプロトコルに関する情報を含み、
前記第3情報の統計情報は、前記ルーティングプロトコル毎に前記パケットを廃棄した回数を示す、請求項10に記載のパケット転送装置。
【請求項12】
1つ以上のプロセッサを有する装置の前記1つ以上のプロセッサで実行されると、前記装置を請求項1から11のいずれか1項に記載のパケット転送装置として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パケット転送装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ネットワークは、パケットを転送する複数のパケット転送装置を有する。パケット転送装置は、ボーダゲートウェイプロトコル(BGP)や、オープンショーテストパスファースト(OSPF)等のルーティングプロトコルに従い経路情報を交換し、受信したパケットの転送先を判定するためのルーティングテーブルを作成する。特許文献1は、BGPによって広告されている経路情報を収集する構成を開示している。特許文献2は、OSPFパケットを監視することでネットワークの異常を検知する構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-245662号公報
【特許文献2】特開2010-109729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のパケット転送装置で構成される通信ネットワークの異常を早期に検知するためには、複数のパケット転送装置それぞれから様々な情報を取得する必要がある。また、ネットワークの監視装置が各パケット転送装置にアクセスして情報を取得する構成では通信ネットワークの異常を早期に検知することはできない。
【0005】
本開示は、複数のパケット転送装置で構成される通信ネットワークの異常を早期に検知させるためのパケット転送装置及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によると、パケット転送装置は、1つ以上の他のパケット転送装置と経路情報を交換するために使用する1つ以上のコネクションに関する第1情報と、ルーティングテーブルの更新に関する第2情報と、他の2つのパケット転送装置間で経路情報を交換するために当該他の2つのパケット転送装置間で送受信されるパケットの処理に関する第3情報と、の内の少なくとも1つの種別の情報を取得する取得手段と、前記取得手段が前記情報を取得すると、前記情報を監視装置に送信する、或いは、前記取得手段が取得した前記情報の統計情報を所定期間毎に前記監視装置に送信する処理を行う処理手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によると、複数のパケット転送装置で構成される通信ネットワークの異常を早期に検知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による、パケット転送装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、本実施形態によるパケット転送装置1の構成図である。ルーティングプロトコル制御部10は、ルーティングプロトコルに従い他のパケット転送装置1と経路情報を交換する。ルーティングプロトコル制御部10が使用するルーティングプロトコルの種別は1つに限定されず、BGP、OSPF、IS-IS(Intermediate System to Intermediate System)、VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)等の複数の種別を使用し得る。経路情報管理部11は、ルーティングプロトコル制御部10が取得した経路情報を管理すると共に、経路情報に基づきルーティングテーブルを作成する。転送部12は、ルーティングテーブルに従いパケットの転送を行う。
【0011】
取得部13は、ルーティング制御部10、経路情報管理部11及び転送部12から監視対象の監視情報を取得して処理部100に出力する。監視情報は、第1タイプの監視情報と、第2タイプの監視情報に分類され得る。処理部100の送信部15は、取得部13から入力される第1タイプの監視情報を、そのまま、図示しない監視装置に送信する。なお、監視装置とは、複数のパケット転送装置1から様々な種別の監視情報を収集して、複数のパケット転送装置1で構成される通信ネットワークに異常があるか否かを判定する処理を行う装置である。
【0012】
一方、取得部13から入力される第2タイプの監視情報は、処理部100において集約部14に入力される。集約部14は、所定期間を単位として第2タイプの監視情報の統計情報を求める。送信部15は、所定期間毎の統計情報を所定タイミングで繰り返し監視装置に送信する。例えば、所定期間を1秒間とすると、集約部14は、1秒間の統計情報を求め、送信部15は、1秒毎に統計情報を監視装置に送信する。
【0013】
図2は、取得部13がルーティングプロトコル制御部10から取得する監視情報(第1情報)の例を示している。
図2に示す様に、取得部13がルーティングプロトコル制御部10から取得する監視情報は総て第2タイプである。"TCPコネクション"は、経路情報を交換するためのTCPコネクションの確立が生じたことを示す情報である。"TCP再送"は、確立したTCPコネクションにおけるTCPパケットの再送が生じたことを示す情報である。"TCPドロップ"は、確立したTCPコネクションにおけるTCPパケットの廃棄が生じたことを示す情報である。"TCPラウンドトリップ遅延"は、確立したTCPコネクションのラウンドトリップ遅延を示す情報である。"TCPウインドウサイズ"は、確立したTCPコネクションのウインドウサイズを示す情報である。
【0014】
集約部14は、"TCPコネクション"、"TCP再送"及び"TCPドロップ"については1秒間における積算値、つまり、イベントの発生回数を統計情報として求める。つまり、集約部14は、パケット転送装置1において1秒間に確立されたTCPコネクションの数を示す情報、パケット転送装置1において1秒間に生じたTCPパケットの再送回数を示す情報及びパケット転送装置1において1秒間に廃棄されたTCPパケットの数を示す情報を統計情報として求める。送信装置15は、これら情報を監視装置に送信する。なお、例えば、1秒間に生じたTCPパケットの再送回数を示す情報や、1秒間に廃棄されたTCPパケットの数を示す情報は、特定のTCPコネクションではなく、パケット転送装置1に確立されている1つ以上のTCPコネクションの全体に渡る積算値とし得る。
【0015】
また、集約部14は、"TCPラウンドトリップ遅延"及び"TCPウインドウサイズ"については1秒間における平均値を統計情報として求める。つまり、集約部14は、取得部13が1秒間の間にルーティングプロトコル制御部10から取得したTCPコネクションのラウンドトリップ遅延の平均値や、ウインドウサイズの平均値を統計情報として監視装置に送信する。なお、取得部13は、1秒間の間に複数回、ルーティングプロトコル制御部10から"TCPラウンドトリップ遅延"や"TCPウインドウサイズ"を取得する。また、"TCPラウンドトリップ遅延"や"TCPウインドウサイズ"の平均値は、特定のTCPコネクションでの平均値ではなく、パケット転送装置1に確立されている1つ以上のTCPコネクションの全体に渡る平均値とし得る。
【0016】
ネットワークに輻輳や異常が生じると、経路情報を交換するためのTCPコネクションの品質も劣化する。この劣化により、TCPパケットの再送イベントや廃棄イベントが増加し、TCPラウンドトリップ遅延の平均値が増加し、TCPウインドウサイズの平均値が低下する。また、経路情報を交換するためのTCPコネクションが劣化すると、正しく経路情報を交換することができず、通信ネットワークのさらなる異常に繋がる。したがって、
図2に示す情報を監視装置に送信することで、監視装置は、通信ネットワークの異常を早期に検知することができる。
【0017】
なお、
図2に示すTCPコネクションに関する情報は、例えば、オペレーティングシステム(OS)のカーネル空間で管理されている場合がある。この様な場合、例えば、Linux(登録商標)におけるeBPF(Extended Berkeley Packet Filter)技術等、OSのカーネル空間で管理されている情報を取得する任意の技術を使用する。
【0018】
図3は、取得部13が経路情報管理部11から取得する監視情報(第2情報)の例を示している。
図3に示す様に、取得部13が経路情報管理部11から取得する監視情報は総て第1タイプである。"エントリ追加"は、ルーティングテーブルへの新しいエントリの追加が生じたことを示す情報であり、"エントリ削除"は、ルーティングテーブルからのエントリの削除が生じたことを示す情報である。これら情報は、追加又は削除されたエントリの内容を示す情報をさらに含む。例えば、エントリの内容を示す情報は、プレフィクス(Prefix)や、ネクストホップ(Next-Hop)を示す情報である。
【0019】
通信ネットワークに障害が発生すると、それに伴い、ルーティングテーブルも頻繁に変更される。したがって、
図3に示す情報を発生の都度、監視装置に送信することで、監視装置は、通信ネットワークの異常を早期に検知することができる。
【0020】
図4は、取得部13が転送部12から取得する監視情報(第3情報)の例を示している。
図2に示す様に、取得部13が転送部12から取得する監視情報は、総て第2タイプである。本実施形態において、転送部12での監視対象は、他の2つのパケット転送装置1間での経路情報の交換のために送受信されるIPパケットの転送部12による廃棄イベントである。つまり、監視対象は、ヘッダのプロトコルフィールドに各ルーティングプロトコルに対応する値が設定されているIPパケットの廃棄イベントである。"BGP廃棄"、"OSPF廃棄"、"IS-IS廃棄"及び"VRRP廃棄"は、それぞれ、BGP、OSPF、IS-IS及びVRRPのパケットを廃棄したことを示す情報である。集約部14は、例えば、ルーティングプロトコル毎に、1秒間に廃棄したパケットの数を統計情報として求める。
【0021】
図2に示す情報と同様に、ルーティングプロトコルに関するパケットの廃棄状態を監視装置に通知することで、監視装置は、通信ネットワークの異常を早期に検知することができる。なお、本実施形態では、所定期間において廃棄したパケットの数を、ルーティングプロトコル毎に集計したが、ルーティングプロトコルに拘わらず全体の廃棄パケット数を統計情報とする構成であっても良い。
【0022】
また、パケット転送装置1は、
図2から
図4に示す情報を、自律的に、つまり、監視装置による読出しアクセスを待つことなく監視装置に送信するため、監視装置は、通信ネットワークの異常を早期に検知することができる。
【0023】
なお、監視装置に送信する監視情報は、
図2から
図4に示すものに限定されない。また、監視装置に送信する監視情報をユーザが指定できるようにパケット転送装置1を構成することができる。また、
図2及び
図4に示す情報については、ユーザ設定により第1タイプに変更する様に構成することもできる。例えば、
図2の"TCP再送"が第1タイプに変更されると、処理部100は、TCPパケットの再送イベントが生じると、直ちに、監視装置にイベントを通知する構成とし得る。或いは、"TCP再送"が第1タイプに変更されると、処理部100は、TCPパケットの再送イベントが生じると、直ちに、監視装置にイベントを通知すると共に、TCPパケットの再送に関する統計情報も求めて監視装置に通知する構成とし得る。
【0024】
なお、本開示によると、1つ以上のプロセッサを有する装置の当該1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を上記のパケット転送装置1として機能させるプログラム命令を含むコンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0025】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0026】
以上の構成により、複数のパケット転送装置で構成される通信ネットワークの異常を早期に検知させることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
13:取得部、100:処理部