(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124150
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】被処理物の処理方法および処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 11/14 20190101AFI20240905BHJP
【FI】
C02F11/14 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032125
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】矢出 乃大
(72)【発明者】
【氏名】松林 未理
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA02
4D059AA03
4D059AA05
4D059AA07
4D059AA23
4D059BE09
4D059BE10
4D059BE12
4D059BE15
4D059BE26
4D059BE27
4D059BE31
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4D059BE46
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4D059BE55
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4D059BE57
4D059BE59
4D059BE62
4D059BF12
4D059BF20
4D059BJ00
4D059BK12
4D059BK30
4D059DA31
4D059DA32
4D059DA33
4D059DA39
4D059DA44
4D059DA45
4D059DA46
4D059DB06
4D059DB08
4D059DB24
4D059DB25
4D059DB28
(57)【要約】
【課題】汚泥を簡易に低コストで確実に濃縮または脱水できる処理方法を提供する。
【解決手段】本処理方法は、汚泥を含む被処理物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質工程と、前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集工程と、前記凝集汚泥を固液分離する固液分離工程と、前記固液分離工程からの分離物を生物処理工程に移送する工程と、前記分離物を生物処理する生物処理工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を含む被処理物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質工程と、
前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集工程と、
前記凝集汚泥を固液分離する固液分離工程と、
前記固液分離工程からの分離物を生物処理工程に移送する工程と、
前記分離物を生物処理する生物処理工程と、
を含むことを特徴とする被処理物の処理方法。
【請求項2】
前記固液分離工程から排出される前記分離物である濃縮分離液と、脱水ろ液と、濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを生物処理工程に移送する工程と、
前記固液分離工程から排出される濃縮分離液と、脱水ろ液と、濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを生物処理する生物処理工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項3】
前記汚泥改質工程は、汚泥を含む被処理物または、汚泥を含む被処理物と余剰汚泥の混合物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成し、
前記生物処理工程に移送する前記工程は、前記固液分離工程から排出される濃縮分離液と、脱水ろ液を好気性生物処理工程に移送し、
前記生物処理工程は、前記濃縮分離液と、前記脱水ろ液を好気性生物処理する好気性生物処理工程であることを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項4】
前記汚泥改質工程は、汚泥を含む被処理物または、汚泥を含む被処理物と消化汚泥の混合物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成し、
前記生物処理工程に移送する前記工程は、前記固液分離工程から排出される濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを嫌気性生物処理工程に移送し、
前記生物処理工程は、前記濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程であることを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項5】
前記生物処理工程は、好気性生物処理工程または嫌気性生物処理工程であり、
前記好気性生物処理工程の余剰汚泥を前記汚泥改質工程に返送する返送工程、または前記嫌気性生物処理工程の消化汚泥を前記汚泥改質工程に返送する返送工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の被処理物の処理方法。
【請求項6】
前記被処理物中の汚泥の性状を測定する汚泥性状測定工程と、
前記汚泥の性状の測定値に基づいて、前記汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定工程と、
前記添加率決定工程で決定された添加率から汚泥改質剤の添加量を決定する添加量決定工程と、
をさらに含み、
前記汚泥改質工程は、前記決定された添加量で汚泥改質剤を前記被処理物に添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて前記改質汚泥を生成することを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の被処理物の処理方法。
【請求項7】
前記被処理物中の汚泥の性状を測定する汚泥性状測定工程と、
前記汚泥の性状の変化量に基づいて、前記汚泥改質剤を添加する汚泥改質剤添加工程を含み、
前記汚泥改質工程は、汚泥改質剤を前記被処理物に添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて前記改質汚泥を生成することを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の被処理物の処理方法。
【請求項8】
汚泥を含む被処理物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質手段と、
前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を得る凝集手段と、
前記凝集汚泥を濃縮し、濃縮液及び濃縮分離液を得る濃縮手段と、
前記濃縮液を脱水し脱水ろ液を得る脱水手段と、
前記濃縮分離液及び前記脱水ろ液を生物処理し、汚泥成分を得る生物処理手段と、
を備えたことを特徴とする被処理物の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を予め濃縮および脱水して、その分離物を生物処理する方法において、濃縮および脱水の効率を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
し尿、下水、ごみ浸出水、各種製造工程や飲料食品加工工程やレストラン等の厨房などから排出される有機性排水(以下、被処理水という)は生物処理で有機物等が処理される。被処理水は、SS(懸濁物質)やBOD(生物化学的酸素要求量)や、アンモニア性窒素、有機性窒素、全窒素等を含む。
【0003】
生物処理方法には好気性生物処理法と嫌気性生物処理法があり、生物処理で被処理水の有機物等が除去されて、その後の固液分離で生物処理水と汚泥に分離される。生物処理水は次工程で再度処理されたり、放流したり、回収したりされる。生物処理から引き抜かれる余剰汚泥や消化汚泥などの汚泥は濃縮および脱水されて、焼却または産廃処分される。
【0004】
好気性生物処理法として、活性汚泥を用いる活性汚泥法が広く普及しているが、そのほかにも微生物を生物担体に付着させたり、包括固定担体で包括固定したりする生物処理法があり、被処理水の有機物濃度等や水質などに基づいて適切な方法が採用される。好気性処理で除去対象の有機物はSSやBOD、アンモニア性窒素、有機性窒素、全窒素等である。
【0005】
被処理物は、被処理水、被処理汚泥、または被処理汚泥を含む被処理水でもよい。
被処理物には、処理すべき汚泥(以下、被処理汚泥という)が含まれることがある。被処理汚泥には、有機汚泥と無機汚泥の二種類がある。
有機汚泥の例としては、下水処理場や食品工場、紙・パルプ工場等からの有機性排水を生物処理する設備で発生する余剰汚泥、消化汚泥、および産業廃棄物として収集される有機性廃棄物が挙げられる。有機汚泥の主成分は鉱物油や動植物油を含む有機物である。
余剰汚泥は、活性汚泥法(標準活性汚泥法とか浮遊式活性汚泥法)や、膜分離活性汚泥法、生物担体を用いる生物膜法などの好気性生物処理の固液分離で系外に排出される汚泥である。余剰汚泥は、好気性生物処理工程で有機性排水の生物処理過程で生成する活性汚泥や有機性排水の未分解の有機物や有機性排水にもともと含まれる生物分解できないSSで構成される。
消化汚泥は、メタン発酵装置や嫌気性消化槽(以下、消化槽)で嫌気性生物処理されて系外に引き抜かれた汚泥である。
【0006】
無機汚泥の例としては、土木工事現場や浄水場の凝集沈殿汚泥である上水汚泥、金属めっき工場等の砂や金属成分等を多く含む排水を処理する設備で発生する汚泥が挙げられる。
【0007】
被処理物であるバイオマスや下水汚泥などを嫌気性条件下で有機物を分解する消化槽やメタン発酵槽から排出される汚泥は、消化汚泥である。下水処理で発生する下水汚泥や、好気性処理で発生する余剰汚泥等や、食品残渣などの固形有機物は、主に消化槽で嫌気性生物処理され、有機物が除去される。
【0008】
嫌気性生物処理で除去対象の有機物はCODCr(化学的酸素要求量)である。嫌気性生物処理で発生するメタンガスを含むバイオガスは燃料等に利用される。嫌気性生物処理で発生する汚泥(以下、消化汚泥)は嫌気性生物処理から引き抜かれて濃縮脱水される。その濃縮分離液や脱水ろ液は好気性生物処理で残留する有機物や窒素を除去し、濃縮汚泥は外部搬出や、脱水機で脱水される。脱水ケーキは産業廃棄物として外部搬出したり、焼却や堆肥化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-211200号公報
【特許文献2】特開2010-149033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、金属塩添加槽で有機性汚泥に金属塩を添加する金属塩添加工程、凝集処理槽で有機性汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理する汚泥凝集工程と、汚泥槽で有機性汚泥に酸化剤の過硫酸塩を添加して有機性汚泥を改質する汚泥改質工程と、脱水機で改質された有機性汚泥を脱水する汚泥脱水工程とを行う汚泥処理方法を開示する。
【0011】
しかしながら、凝集フロック生成後に、酸化剤で汚泥の改質を行っても、濃縮性や脱水性は向上しない。すなわち、脱水機導入直前の凝集された有機性汚泥は、凝集剤で粗大凝集フロックを形成しているので、その凝集フロックに酸化剤を添加しても、凝集フロック内部に十分に酸化剤が浸透せず、汚泥の有機性汚泥成分の細胞を酸化剤で破壊できず、結果的に汚泥や凝集フロックからの水分除去が不十分である。そのために濃縮や脱水性は改善されない。
【0012】
特許文献2は、製紙汚泥に対し、下記酸化剤群より選択される一種以上の無機系酸化剤により消臭処理および改質処理を施した後、アクリルアミドを主体とした非イオン性水溶性高分子、ビニル重合系カチオン性水溶性および/またはビニル重合系両性水溶性高分子をこの順に逐次添加し凝集処理し、その後脱水機により脱水することを特徴とする製紙スラッジの脱水方法を開示する。酸化剤群は、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、臭素酸塩、亜臭素酸塩、次亜臭素酸塩、過酸化水素である。
【0013】
製紙汚泥に無機系酸化剤を添加することで、製紙汚泥の消臭処理と、改質処理を行うものであるが、還元性が強い硫化水素など有する製紙汚泥に無機系酸化剤を添加しても、無機系酸化剤は硫化水素などの臭気成分とすぐに反応して、無機系酸化剤が製紙汚泥の改質処理に利用されない。製紙汚泥の消臭処理と、改質処理を行うには過剰の無機系酸化剤が必要となる。
【0014】
そこで、本発明は、汚泥を簡易に低コストで確実に濃縮または脱水できる処理方法および処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一態様では、汚泥を含む被処理物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質工程と、前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集工程と、前記凝集汚泥を固液分離する固液分離工程と、前記固液分離工程からの分離物を生物処理工程に移送する工程と、前記分離物を生物処理する生物処理工程と、を含むことを特徴とする被処理物の処理方法が提供される。
固液分離工程からの分離物には、濃縮工程から分離される濃縮汚泥と濃縮分離液があり、脱水工程から分離される脱水ケーキと脱水ろ液がある。
【0016】
一態様では、前記固液分離工程から排出される前記分離物である濃縮分離液と、脱水ろ液と、濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを生物処理工程に移送する工程と、前記固液分離工程から排出される濃縮分離液と、脱水ろ液と、濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを生物処理する生物処理工程と、を含むことを特徴とする。
一態様では、前記汚泥改質工程は、汚泥を含む被処理物または、汚泥を含む被処理物と余剰汚泥の混合物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成し、前記生物処理工程に移送する前記工程は、前記固液分離工程から排出される濃縮分離液と、脱水ろ液を好気性生物処理工程に移送し、前記生物処理工程は、前記濃縮分離液と、前記脱水ろ液を好気性生物処理する好気性生物処理工程であることを特徴とする。
一態様では、前記汚泥改質工程は、汚泥を含む被処理物または、汚泥を含む被処理物と消化汚泥の混合物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成し、前記生物処理工程に移送する前記工程は、前記固液分離工程から排出される濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを嫌気性生物処理工程に移送し、前記生物処理工程は、前記濃縮汚泥と、脱水ケーキの少なくとも1つを嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程であることを特徴とする。
一態様では、前記生物処理工程は、好気性生物処理工程または嫌気性生物処理工程であり、前記好気性生物処理工程の余剰汚泥を前記汚泥改質工程に返送する返送工程、または前記嫌気性生物処理工程の消化汚泥を前記汚泥改質工程に返送する返送工程を含むことを特徴とする。
一態様では、前記被処理物中の汚泥の性状を測定する汚泥性状測定工程と、前記汚泥の性状の測定値に基づいて、前記汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定工程と、前記添加率決定工程で決定された添加率から汚泥改質剤の添加量を決定する添加量決定工程と、をさらに含み、前記汚泥改質工程は、前記決定された添加量で汚泥改質剤を前記被処理物に添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて前記改質汚泥を生成することを特徴とする。
一態様では、前記被処理物中の汚泥の性状を測定する汚泥性状測定工程と、前記汚泥の性状の変化量に基づいて、前記汚泥改質剤を添加する汚泥改質剤添加工程を含み、前記汚泥改質工程は、汚泥改質剤を前記被処理物に添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて前記改質汚泥を生成する。
【0017】
一態様では、汚泥を含む被処理物に汚泥改質剤を添加し、前記被処理物と前記汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質手段と、前記改質汚泥に凝集剤を添加し、前記改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を得る凝集手段と、前記凝集汚泥を濃縮し、濃縮液及び濃縮分離液を得る濃縮手段と、前記濃縮液を脱水し脱水ろ液を得る脱水手段と、前記濃縮分離液及び前記脱水ろ液を生物処理し、汚泥成分を得る生物処理手段と、を備えたことを特徴とする被処理物の処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
汚泥改質することで、凝集前に汚泥の細胞から水が抜けるので、濃縮性と脱水性が向上し、その後段の生物処理が容易になり、生物処理性能が安定する。更に汚泥性状変動に合わせて汚泥に適した高分子凝集剤の銘柄を選定する作業が低減できて、高分子凝集剤の管理や運転管理が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】被処理物の処理装置の一実施形態を示す模式図である。
【
図3】汚泥改質装置の一実施形態を示す概略図である。
【
図4】被処理物の処理装置の他の実施形態を示す模式図である。
【
図5】被処理物の処理装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図6】被処理物の処理装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
【
図10】未改質の余剰汚泥と、し尿と浄化槽汚泥の混合物、余剰汚泥の改質汚泥とし尿と浄化槽汚泥の混合物についての濃縮・脱水試験結果を示す表である。
【
図12】異なる性状の混合汚泥を対象とした脱水試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、被処理物を処理するための処理装置の一実施形態を示す模式図である。
図1に示すように、処理装置は、少なくとも1種類の汚泥改質剤を被処理物に添加し、被処理物と汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質装置3と、改質汚泥に凝集剤を添加し、改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集装置5と、凝集汚泥を固液分離する固液分離装置7と、固液分離した分離物を生物処理する生物処理装置1を備えている。
【0021】
図1に示す実施形態では、固液分離装置7は、凝集汚泥を濃縮させて濃縮汚泥と濃縮分離液を生成する濃縮工程を実行する濃縮装置と、濃縮汚泥を脱水して脱水ケーキと脱水ろ液を生成する脱水工程を実行する脱水装置を含む。一実施形態では、固液分離装置7は、濃縮装置または脱水装置を含まないこともある。すなわち、固液分離工程では、濃縮工程は行われるが、脱水工程は行われないこともある。また、濃縮工程を行われずに、凝集汚泥を直接脱水する脱水工程だけが行われることもある。
【0022】
汚泥改質工程、凝集工程、濃縮工程、および脱水工程は、生物処理工程の前に行われる。被処理物の例としては、し尿、浄化槽汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、下水汚泥、生ごみ等の有機物が挙げられる。被処理物を、生物処理の前に、濃縮および脱水しやすいように汚泥改質剤で改質し、改質された汚泥に凝集剤を添加して、凝集させる。さらに、凝集汚泥を濃縮して、濃縮汚泥と濃縮分離液を得る。更に必要に応じて、濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と脱水ケーキを得る。濃縮分離液および脱水ろ液はすべて、生物処理装置1に移送して、濃縮分離液や脱水ろ液に残留するBODや窒素やSSなどを生物処理装置1で除去する。生物処理装置1は好気性生物処理装置または、嫌気性生物処理装置である。
【0023】
生物処理装置1で発生した余剰汚泥や消化汚泥は、余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物と混合した後に、返送ライン10を通じて汚泥改質装置3に移送される。
一実施形態では、生物処理装置1で発生した余剰汚泥や消化汚泥は、汚泥改質装置3に導入される前に、余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物と混合して、余剰汚泥や消化汚泥と余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物との混合物を汚泥改質装置3にて改質してもよい。他の実施形態では、生物処理装置1で発生した余剰汚泥や消化汚泥だけを汚泥改質装置3に導入し、余剰汚泥や消化汚泥だけを改質し、汚泥改質された余剰汚泥や消化汚泥と余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物を凝集装置や汚泥改質装置3と凝集装置との間の配管で混合してもよい。さらに他の実施形態では、余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物を汚泥改質装置3に導入し、余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物だけを汚泥改質した後に、余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物と汚泥改質されていない余剰汚泥や消化汚泥を凝集装置や汚泥改質装置3と凝集装置との間の配管で混合してもよい。
また、余剰汚泥や消化汚泥は
図1の汚泥改質装置3に移送するのでなく、別の設備で濃縮や脱水を行ってもよい。その場合には、
図1では余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物が汚泥改質される。
【0024】
汚泥改質後、改質汚泥に残留酸化剤や残留する酸を含む場合には凝集装置での凝集性への影響があったり、また、固液分離後の分離物を直接、生物処理装置1に移送すると、残留酸化剤や残留する酸の影響で生物処理が不安定になる。
余剰汚泥や消化汚泥を汚泥改質した後に、汚泥改質した余剰汚泥や消化汚泥と余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物と混合した混合物を、または、余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物を汚泥改質した後に、汚泥改質した余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物と余剰汚泥や消化汚泥と混合した混合物を、凝集装置で凝集した後に、凝集後に固液分離するものである。
【0025】
改質汚泥に汚泥改質剤の酸化剤や酸が残留していると、固液分離後の分離物にも酸化剤や酸が残留するので、改質汚泥と余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物とを混合したり、改質汚泥した余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物と余剰汚泥や消化汚泥とを混合したりすることで、改質汚泥に残留する酸化剤や残留する酸が余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物によって消費される。残留酸化剤や残留する酸の凝集や生物処理への影響をなくすことで、濃縮脱水前の凝集や生物処理の性能が向上する。また、汚泥改質剤が酸である場合、改質汚泥が酸性になり、最適凝集条件に調整するために酸性の改質汚泥をアルカリ剤でpH調整する必要があるが、酸性の改質汚泥とアルカリ分を含む被処理物との混合で、改質汚泥の酸が中和されるので、アルカリ剤の削減や作業性が低減されるので好都合である。
【0026】
汚泥性状の変動が激しいし尿、浄化槽汚泥などの外部から搬入される被処理物、濃縮脱水性が悪い余剰汚泥や消化汚泥の凝集では、凝集剤の最適銘柄の選定や、その最適注入率の決定に外部のアドバイスなどが必要になる場合が多いので手間と時間がかかる。そのために濃縮脱水作業が安定して行えない場合がある。この点、本実施形態によれば、汚泥改質をすることで、凝集前に被処理物中の汚泥の細胞から水が抜けるので、濃縮性や脱水性が向上するとともに、凝集剤が節約できる。更に、凝集剤の銘柄選定や凝集剤の添加率等の運転管理が容易になるので、濃縮脱水作業が軽減できて、その作業性が向上する。
【0027】
濃縮脱水前の凝集では、凝集剤の最適銘柄の選定とその最適注入率が重要であり、最適注入率は被処理物への凝集剤の注入量の増減で運転管理される。一方、凝集剤の最適銘柄の決定は、濃縮脱水現場での決定は難しく、薬品メーカーやエンジニアリング会社など外部のサポートが必須である。そのために季節変動等による汚泥性状の変動が激しい被処理物に対しては凝集剤の最適銘柄の選定には時間と手間がかかる。
【0028】
汚泥性状の変動が激しい被処理物を改質することで、凝集前に汚泥の細胞等から水が抜けやすくなって、濃縮性や脱水性が向上するので、後段の生物処理へのBOD負荷やSS負荷が低減できたり、生物処理の滞留時間が確保できることで生物処理性能が安定して維持できる。また、汚泥性状の変動が激しい被処理物を改質することで、凝集剤の銘柄を変更することなしに濃縮脱水ができ、更にはより安価で入手しやすい凝集剤が使用できる。更に、その銘柄の凝集剤の使用量が節約できる。
【0029】
被処理物は、被処理水、被処理汚泥、または被処理汚泥を含む被処理水でもよい。被処理水は、し尿、下水、ごみ浸出水、各種製造工程や飲料食品加工工程やレストラン等の厨房などから排出される有機性排水などである。被処理水は、SS(懸濁物質)やBOD(生物化学的酸素要求量)や、アンモニア性窒素、有機性窒素、全窒素等を含む。
【0030】
被処理汚泥は、汚泥濃度やVSS(volatile suspended solid)/SS(suspended solid)に制限はなく、被処理汚泥は、生物処理から排出される余剰汚泥、消化汚泥のほか、生ごみや食品残渣等の固形有機物や凝集沈殿処理汚泥などの無機汚泥である。被処理汚泥は、し尿、浄化槽汚泥、余剰汚泥、消化汚泥、下水汚泥、または、余剰汚泥または消化汚泥または下水汚泥に生ごみ等の固形有機物が混合されていてもよい。また、他の処理施設や同一処理施設内の別系統から搬送される好気性生物処理で発生する余剰汚泥や消化汚泥も本願発明の汚泥改質対象の被処理汚泥である。
一般には、VSS/SSが低い被処理物は有機物含有量が少ないので、濃縮性や脱水性が良い。
【0031】
有機物の多い下水汚泥や生物処理で排出される余剰汚泥や消化汚泥、生ごみ等の固形有機物などのVSS/SSは80%~99%の範囲であるので、これらの被処理物に本発明を適用すると、濃縮工程で濃縮汚泥濃度が向上し、脱水工程で脱水ケーキの含水率が低下して脱水性能が向上する。また、濃縮分離液や脱水ろ液のSS濃度が低くできるので、濃縮分離液や脱水ろ液が返送される生物処理の固形物負荷が低くなり、生物処理の安定化になる。
特に、難脱水性の被処理物では含水率(日本下水道協会 下水試験方法 上巻(2012年版)下水試験方法 第5編第1章第6節による)の低下が顕著で、脱水改善効果が大きくなる。
【0032】
VSS/SSは被処理物の有機物含有量を示す指標であり、以下のように計算して求める。
VSS/SS=(SS-強熱残留物)÷SS×100(%)
ここで、VSS(volatile suspended solid)は強熱減量であり、SS(suspended solid)は、浮遊物質(mg/L)である。SSに代えてTS(強熱残留物(mg/L))が使用されることもある。
【0033】
汚泥改質装置3は、被処理物に含まれる汚泥を汚泥改質剤で改質し、濃縮および脱水しやすい改質汚泥を生成する。汚泥の改質により、濃縮汚泥や脱水ケーキの臭気対策もできる。汚泥改質剤は、酸化剤および酸の一方または両方であり、市販品が使用でき、液状でも粉末状でも、錠剤でもよい。また、市販品の汚泥改質剤そのままを使用してもよく、あるいは市販品の汚泥改質剤を水道水や生物処理水などの水で任意に希釈して使用してもよい。
【0034】
酸化剤としては、過酸化物とハロゲン系酸化物がある。
ハロゲン系酸化物としては、次亜塩素酸塩の次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)、二酸化塩素、トリクロロイソシアヌル酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩のジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、3-ブロモ-1-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5-エチル-5-メチルヒダントイン等が挙げられる。過酸化物は、過酢酸、過炭酸塩、過酸化水素や過硫酸塩である。安価で取り扱いが容易な次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
【0035】
汚泥改質剤としての酸は、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸などの無機酸であり、いずれも市販品が使用できる。また、市販でなくても処理施設で入手できる廃酸などが使用できる。
【0036】
汚泥の乾燥固形物は、SS(浮遊物質)でも、TS(蒸発残留物)でもよい。汚泥改質工程に流入する被処理物の時間当たりの乾燥重量は、被処理物の処理量(m3/時)と被処理物のSSまたはTSとの積である。被処理物の乾燥単位重量当たりの被処理物改質剤の添加率は、汚泥改質剤の添加重量を被処理物の乾燥重量で割った値である。
【0037】
汚泥改質剤としての酸化剤の添加率(モル/kg)は、汚泥の乾燥単位重量1kgあたり酸化剤0.2~20モル、好ましくは0.5~20モル、さらに好ましくは0.5~10モルである。汚泥改質剤としての酸の添加率(モル/kg)は、汚泥の乾燥単位重量1kgあたり酸0.1~15モル、好ましくは0.3~10モル、さらに好ましくは0.5~5.0モルである。酸は、汚泥のpHに基づいて制御してもよく、酸性の方が汚泥改質効果が高いが、被処理物に添加した酸の残留を抑えるために、被処理物のpHは2~5がよい。
【0038】
2種類以上の汚泥改質剤を使用することもできる。2種類以上の汚泥改質剤を同時に添加してもよいし、時間をおいて添加してもよい。例えば、汚泥改質剤としての酸を添加した後に、ある時間(例えば5~30分)の間隔をあけて同じ種類の酸または異なる種類の酸を添加してもよい。他の例では、汚泥改質剤としての酸を添加した後に、ある時間(例えば5~30分)の間隔をあけて酸化剤を添加してもよい。酸化剤を最初に添加した場合も、そのあとで酸を添加してもよい。
【0039】
酸による汚泥改質の場合、改質汚泥の凝集時にアルカリ剤でpH3.5~5.5に調整する。使用されるアルカリ剤は、pH調整が容易で作業性が良い水酸化ナトリウム水溶液濃度(20~50重量%)が好ましい。
【0040】
図2に汚泥改質剤の作用を示す図を示す。微生物の代謝物の多糖類やタンパクなどの陰イオンに帯電する親水性の粘着性高分子量物質の内部には水が存在する。酸化剤、または酸、またはこれらの両方からなる汚泥改質剤は、汚泥を構成する微生物の細胞を部分的に損傷させて、細胞内部の内容物を細胞外に排出させることで、濃縮脱水性を向上させることができる。難濃縮性や難脱水性は、微生物の細胞内部の水の排出が十分にできないことに起因するので、凝集工程前で、汚泥の微生物の細胞内の水を排出することで、難濃縮性や難脱水性が改善される。
【0041】
汚泥改質剤を添加しなかった場合、凝集剤で汚泥を凝集させたときに水が十分に排出されず、更に濃縮や脱水で外部から加圧しても水が抜けきらないために濃縮性や脱水性が向上しない。このために凝集剤で汚泥を凝集しても、汚泥内部まで十分に荷電中和できないために濃縮性や脱水性が向上しない。
【0042】
一方、従来の酸化剤による汚泥改質は汚泥粒子の細胞をバラバラにして、汚泥の微生物の細胞内の水を排出することで濃縮脱水性を向上させるものである。汚泥粒子の細胞や細胞の内容物が微細化あるいは可溶化し、細胞内部の水が抜けているので、濃縮脱水性が向上するものの凝集剤使用量の増加や濃縮脱水の運転管理の難しさがある。
【0043】
図3は、汚泥改質装置3の一実施形態を示す概略図である。本実施形態の汚泥改質装置3は、汚泥槽15と、汚泥槽15内の汚泥(被処理物中の汚泥および/または余剰汚泥や消化汚泥を含む)の性状を測定する汚泥測定センサ17と、汚泥の性状の測定値に基づいて汚泥改質剤の添加率を決定する添加率決定装置18と、決定された添加率で汚泥改質剤を被処理物に注入する注入装置20と、汚泥槽15内の被処理物と汚泥改質剤を攪拌する攪拌機22を備えている。攪拌機22は、汚泥槽15内に配置された攪拌羽根23と、攪拌羽根23を回転させる攪拌モータ24を有する。注入装置20は、注入ライン28を介して汚泥槽15に接続されている。一実施形態では、注入装置20は、注入ライン28を介して汚泥槽15の上流位置に接続され、汚泥改質剤は汚泥槽15の上流位置で被処理物に注入されてもよい。
【0044】
汚泥測定センサ17の使用方法には2通りある。
第1の使用方法は、汚泥槽15内に流入した汚泥の性状を測定し、その測定値に基づいて汚泥改質剤の添加率を決定する方法である。例えば、上述の「汚泥改質剤としての酸化剤の添加率(モル/kg)は、汚泥の乾燥単位重量1kgあたり酸化剤0.2~20モル」のように汚泥のSS濃度を測定して、汚泥改質剤の添加率を決定するような使い方である。この場合の汚泥測定センサ17の設置場所は汚泥槽15内でも汚泥槽15への汚泥流入管でも良い。
【0045】
第2の使用方法は、汚泥槽15内で汚泥改質剤添加後の汚泥の性状を測定し、その測定値で汚泥改質剤添加率を決定する方法である。汚泥の性状は、汚泥改質剤添加開始時と添加終了時とで変化するので、汚泥測定センサ17で汚泥性状の測定値をモニターして、その測定値と設定値との比較や、測定値の変化量で汚泥改質剤添加率を決定する。例えば、汚泥性状の測定値がある設定値に達するまで、汚泥改質剤を添加し、設定値に到達した時点で汚泥改質剤の添加を終了し、汚泥性状の設定値によって汚泥改質剤の注入制御を行うものである。他の例では、汚泥性状の測定値がある変化量を示した時点で汚泥改質剤の添加を終了し、汚泥性状の測定値の変化量によって汚泥改質剤の注入制御を行うものである。この使用方法の場合の汚泥測定センサ17の設置場所は汚泥槽15内である。
汚泥槽15内の汚泥測定センサ17で生物処理した汚泥または被処理部の汚泥の性状を測定する汚泥性状測定したり、汚泥測定センサ17で汚泥改質剤の添加率を決定したりする。また、複数の汚泥測定センサ17を用いて汚泥の性状を測定する汚泥性状測定と、汚泥改質剤の添加率の決定を同時行うことができる。
【0046】
汚泥測定センサ17として、pH計、ORP(酸化還元電位)計、温度計、MLSS計(汚泥濃度計)、呼吸速度計(酸素利用速度、酸素消費速度)、DO(溶存酸素)計、残留塩素計などが使用される。汚泥測定センサ17は複数設けられてもよい。汚泥の性状の測定値は、添加率決定装置18に送られる。
汚泥測定センサ17で得られた汚泥の性状の測定値の中で、MLSS計で得られる汚泥のSSと呼吸速度が関係するので、汚泥のSSが変化すると、呼吸速度も変わる。
添加率決定装置18は、汚泥測定センサ17で得られた汚泥の性状の測定値に基づいて汚泥改質剤の添加率を決定することができる。pH計、温度計は汚泥改質剤の注入制御以外に、汚泥槽15内の改質された汚泥を至適条件に制御するためにも使用する。
【0047】
添加率決定装置18は注入装置20に指令を与えて、決定された添加率で汚泥改質剤を被処理物に注入させる。注入装置20の一例は、ポンプである。汚泥改質剤が酸の場合には、汚泥測定センサ17は、pH計、温度計、MLSS計(汚泥濃度計)である。汚泥改質剤が酸化剤の場合は、汚泥測定センサ17は、pH計、ORP計、温度計、呼吸速度計(酸素利用速度、酸素消費速度)、MLSS計(汚泥濃度計)、残留塩素計である。これら複数のセンサを組み合わせて使用してもよい。
【0048】
pH計は、汚泥改質剤としての酸化剤の添加時に、汚泥改質に至適なpH条件に制御するためにも使用する。
汚泥改質剤としての酸化剤使用にあたっては、酸化剤の反応性や自己分解による無駄な消費を考慮して至適pH域を設定する。例えば、過酸化水素ではpH7以下の酸性域で、次亜塩素酸塩ではpH7以上のアルカリ域での使用が良い。酸化剤の反応性や無駄な消費以外に、過酸化水素のpH7以下の酸性域では酸による汚泥の汚泥改質効果がより一層得られ、また次亜塩素酸塩のpH7以上のアルカリ域でも汚泥のタンパク質のアルカリによる可溶化等は作用して汚泥の汚泥改質効果がより一層得られる。
また、pH計は、汚泥改質剤としての酸の添加時の改質汚泥のpH変化をモニターして、酸の適正な添加率を制御するためにも使用できる。汚泥槽15内の改質汚泥のpHが2~5になるように酸を添加する。
【0049】
ORP計は、汚泥改質剤としての酸化剤の添加時の汚泥槽15内の改質汚泥のORP(酸化還元電位)の変化量をモニターするのに使用され、ORPの変化量に基づいて酸化剤の添加率が制御される。例えば、一定時間でのORPの変化量が50~100mVの範囲内となるように酸化剤の添加率が制御される。50mV以上で汚泥改質が良好にでき、100mV未満では酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならない。
ORP計は酸化剤の添加時の汚泥槽15内の改質汚泥のORPの設定値になるまで酸化剤を添加することができる。改質汚泥のORPの設定値は-100~+300mVで、経験値や汚泥性状や酸化剤の種類などで任意に設定値が決定できる。
ORPは温度やpHに影響されるので、ORP計の使用時には温度計やpH計を併用する。
【0050】
温度計は、汚泥改質の至適温度条件である汚泥温度20~50℃に制御するための温度のモニターと、汚泥改質剤の注入制御のための温度の検出に用いる。汚泥改質剤としての酸または酸化剤の添加時には反応熱または中和熱が発生するので、汚泥改質剤が添加された改質汚泥の温度上昇の変化をモニターして、酸または酸化剤の適正な添加率を制御する。一実施形態では、汚泥改質剤が添加された改質汚泥の温度上昇が10~30℃の範囲内となるように、酸または酸化剤の添加率が制御される。汚泥の温度が10℃以上では汚泥改質が良好にでき、30℃未満では酸や酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならない。
【0051】
MLSS計(汚泥濃度計)は、汚泥槽15に流入する汚泥(被処理物中の汚泥および/または余剰汚泥や消化汚泥を含む)のSS濃度と、汚泥の流入量(処理量、m3/時)をモニターするのに使用される。MLSS計(汚泥濃度計)を用いた汚泥改質剤の注入制御は、汚泥のSS濃度だけに依存し、汚泥のSS濃度以外の物性が考慮されないので、MLSS計(汚泥濃度計)とその他のタイプのセンサを併用してもよい。
【0052】
呼吸速度計は、汚泥改質剤としての酸または酸化剤の添加時の活性汚泥の呼吸速度の変化をモニターするのに使用される。活性汚泥の呼吸速度に基づいて適正な汚泥改質剤の添加率が制御される。したがって、呼吸速度計は、余剰汚泥の場合にのみ使用される。活性汚泥の呼吸速度が0.1~2.0mg/L・hの範囲内になるように、酸または酸化剤の添加率が制御される。呼吸速度が0.1mg/L・h以上で汚泥改質が良好にでき、2.0mg/L・h未満では酸または酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならない。
【0053】
余剰汚泥を含む汚泥に汚泥改質剤を添加することで、余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度が低下するので、余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度の変化をモニターして汚泥改質剤の注入制御を行う。汚泥改質剤を添加する前の余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度aと、汚泥改質剤を添加した後の余剰汚泥を含む汚泥の呼吸速度bの比、すなわちb/aが0.5~0.9の範囲内になるように、酸または酸化剤の添加率が制御される。b/aが0.5以上で酸または酸化剤の過剰添加が防止でき無駄にならず、b/aが0.9未満では汚泥改質が良好にできる。
呼吸速度は温度やpHに影響されるので、呼吸速度計の使用時には温度計やpH計を併用する。
【0054】
DO計は、過酸化水素のような酸化剤を汚泥改質剤に使用する場合に使用される。酸化剤から発生する酸素をDO計でモニターして酸化剤の添加率を制御する。改質汚泥のDO濃度0.05~0.2mg/Lが好適である。0.05mg/L以上で汚泥改質が良好にでき、0.2mg/L未満で無駄な酸化剤量が低減できる。DO計は、ORP計と併用することもできる。
【0055】
残留塩素計は、次亜塩素酸塩のような酸化剤を汚泥改質剤に使用する場合に使用される。酸化剤から発生する塩素を残留塩素計でモニターして酸化剤の添加率を制御する。改質汚泥の塩素濃度0.05~0.2mg/Lが好適である。0.05mg/L以上で汚泥改質が良好にでき、0.2mg/L未満で無駄な酸化剤量が低減できる。残留塩素計は、ORP計と併用することもできる。
【0056】
図3に示すように、汚泥改質装置3は、汚泥槽15内の汚泥(被処理物中の汚泥および/または余剰汚泥や消化汚泥を含む)の偏流防止のための邪魔板31と、断熱材で構成された保温部を温水等などの加温媒体で加温できる加温ジャケット32をさらに備えている。邪魔板31は汚泥槽15内に配置されており、加温ジャケット32は汚泥槽15の外面を覆っている。一実施形態では、加温ジャケット32は、汚泥槽15を20~50℃に加温するように構成される。20℃以上では汚泥改質が短時間で完了し、50℃以下なら酸化剤の自己分解が防止でき酸化剤の節約になる。加温媒体には、廃温水や生物処理液(曝気槽混合液や消化汚泥)が使用できる。
【0057】
汚泥を含む被処理物は、汚泥槽15に供給され、汚泥改質剤を被処理物に添加し、被処理物および汚泥改質剤を必要なら加温しながら攪拌機22で攪拌することで、濃縮および脱水しやすいように汚泥粒子を改質する。図示していないが、汚泥改質時に炭酸ガス等が発生する場合にはガス抜き管を汚泥槽15の上部に設置してもよい。注入装置20は、注入ライン28に接続されており、注入ライン28を通じて汚泥改質剤を被処理物に注入する。図示していないが、注入ライン28は複数でもよいし、汚泥改質剤の注入場所は汚泥槽15内でも、汚泥槽15に接続された被処理物流入管でもよい。
【0058】
図3に示すように、本実施形態の汚泥改質装置3は、短繊維助剤を汚泥槽15内の被処理物に添加する短繊維助剤添加装置35をさらに備えている。汚泥槽15内の被処理物には、汚泥改質剤、または汚泥改質剤と短繊維助剤が添加される。短繊維助剤は、攪拌機22により、汚泥改質剤とともに、汚泥を含む被処理物と混合される。短繊維助剤は、予め水道水や処理水等で分散させてから汚泥槽15に添加してもよいし、汚泥槽15に流入する汚泥の一部に添加して短繊維助剤を分散させてから添加してもよい。
【0059】
MLSS計(汚泥濃度計)で汚泥槽15に流入する汚泥(被処理物中の汚泥および/または余剰汚泥や消化汚泥を含む)のSS濃度と、汚泥の流入水量(処理量、m3/時)を測定し、ラボ試験結果および/または過去の運転実績から求めた短繊維助剤添加率(%対SS)から、短繊維助剤の注入制御を行ってもよい。あるいは、汚泥のSS濃度や汚泥の流入水量が大きく変動しない場合には、短繊維助剤添加率(%対SS)の初期設定値、または初期の添加量で短繊維助剤を添加してもよい。短繊維助剤の添加は、濃縮工程で濃縮性や、脱水工程での脱水性を向上させることができる。一実施形態では、短繊維助剤の添加率は汚泥のSS重量あたり、0.05~5wt%である。
【0060】
短繊維助剤の具体例としては、木綿などの天然の短繊維物、化学合成された短繊維物、再生短繊維物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。プラスチック廃棄物から再生製糸した短繊維物やビスコースレーヨンからなる短繊維物が好適に使用される。ビスコースレーヨンからなる短繊維物である短繊維助剤(例えばエバグロースU-700シリーズ、水ing(株)製)はその繊維長さが5~10mmで含水率が30~80wt/wt%である。
【0061】
本実施形態では、汚泥改質工程において、汚泥改質剤と短繊維助剤を添加することができる。
図3に示す汚泥槽15に短繊維助剤を添加すると、凝集前に汚泥に短繊維助剤を十分に分散させることができ、次の凝集工程で凝集フロックの内部に短繊維助剤が均一に取り込まれて、濃縮脱水に水切れがより一層促進される。加えて、汚泥改質剤は、汚泥粒子内の水を外部に排出させやすい状態にすることができ、短繊維助剤が加わることで濃縮脱水時に水切れが一層促進されて、濃縮脱水性能が向上する。
【0062】
短繊維助剤を、凝集工程で凝集剤とともに改質汚泥と混合してもよい。短繊維助剤を含む凝集フロックは濃縮時の重力による水切れや脱水時の加圧時の水切れが促進されて、汚泥の濃縮性や脱水性が向上する。また、濃縮分離液や脱水ろ液に残留するBODやSSなどによる生物処理への負荷が低下して、生物処理性能の安定した維持ができる。
【0063】
汚泥改質装置3は、直列または並列に配置された複数の汚泥槽15を有してもよく、各汚泥槽15は開放槽または密閉槽でもよい。1つの汚泥槽15の内部を複数の隔壁で仕切ってもよい。汚泥槽15の内部に散気装置があってもよい。あるいは汚泥と汚泥改質剤が混合されやすいように邪魔板31を設けてもよい。
【0064】
図1を用いて、処理装置についてさらに詳細に説明する。
図1に示す凝集装置5は、汚泥改質装置3で得られた改質汚泥に凝集剤を添加し、改質汚泥を凝集させて凝集フロックを含む凝集汚泥を生成する凝集工程を実行する。凝集剤の例として、無機凝集剤、有機凝結剤、高分子凝集剤が挙げられる。
【0065】
無機凝集剤は、硫酸第二鉄、ポリ鉄、塩化第二鉄、硫酸バンドなどが使用できる。無機凝集剤は特に限定されず、浄水処理に通常使用される無機凝集剤を使用することができる。具体的には、鉄系凝集剤とアルミニウム系凝集剤のいずれか一方又は両方を使用可能であり、より具体的には、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)、塩化第二鉄およびこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか1種以上を用いることができる。これらの無機凝集剤を使用すると、凝集時の汚泥のpHが低下して、適正な凝集pHに調整するために、アルカリ剤として市販の苛性ソーダ等を使用する場合がある。
【0066】
有機凝結剤としては、ポリアルキルポリアミン、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ジシアンジアミド・塩化アンモニウム・ホルムアルデヒド重縮合物、ポリエチレン・ポリアミン・ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジアルキルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物などから1種またはそれ以上を用いることができる。有機凝結剤は、無希釈で使用してもよく、または水などで希釈して使用してもよい。
【0067】
高分子凝集剤は、アニオン性高分子凝集剤、あるいはカチオン性高分子凝集剤、あるいは両性高分子凝集剤、あるいはこれらの組み合せである。また、高分子凝集剤は、粉末状、液状(ディスパージョン状、エマルジョン状)などが使用できる。
【0068】
アニオン性高分子凝集剤として、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸アンモニウムからなる群より選択されるいずれか1種以上を用いることが可能である。また、ポリアクリルアミド系高分子凝集剤も使用することができ、これは、アクリルアミドモノマーと(メタ)アクリル酸塩の共重合物である。
【0069】
カチオン性高分子凝集剤はカチオン性モノマーを必須成分として、カチオン性モノマーの単独重合体又は共重合体、カチオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体との共重合体などから1種以上を選択して使用することができる。カチオン性モノマーとしては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートもしくはこれらのアルカリ金属塩、4級アンモニウム塩などである。
【0070】
両性高分子凝集剤は、カチオン性モノマー、アニオン性モノマーおよびノニオン性モノマーを共重合し、分子内にカチオン単位、アニオン単位およびノニオン単位を有するものである。
アニオン性高分子凝集剤やカチオン性高分子凝集剤や両性高分子凝集剤は、水道水、工業用水、地下水、各種排水処理の処理水など溶解されて、それぞれの高分子凝集剤溶解液を調製して、凝集工程に使用する。
【0071】
短繊維助剤を、凝集剤とともに凝集工程で改質汚泥に添加してもよい。短繊維助剤を含む凝集フロックは濃縮時の重力による水切れや脱水時の加圧時の水切れがより一層促進されて、汚泥の濃縮性や脱水性が向上する。
【0072】
濃縮装置は、凝集装置5で生成された凝集汚泥を濃縮して、濃縮汚泥と濃縮分離液を生成する。濃縮装置の例としては、汚泥粒子を重力で沈降させて、濃縮させる重力濃縮装置、加圧水の微細な気泡を汚泥の粒子に付着させて、浮上分離する加圧浮上装置、1,000~2,000Gの遠心力で汚泥を濃縮する遠心濃縮装置、汚泥に凝集剤を添加した後、装置内部の特殊羽根による攪拌およびころがり効果によって固液分離を行う造粒濃縮装置、金属製(SUS製)ウェッジワイヤーのドラム型スクリーンで、凝集剤により凝集した汚泥を濃縮分離する回転ドラム型濃縮装置、逆三角形の断面形状をしたウェッジワイヤーを等間隔に並べて、ウェッジワイヤーで固液分離と濃縮を行うウェッジワイヤースクリーン、傾斜型スクリーン、汚泥に高分子凝集剤を添加した後、スクリーン上部から凝集汚泥を流してウェッジワイヤー等を用いたスクリーンで汚泥と分離液に分離するスクリーン濃縮機、高分子凝集剤により凝集した汚泥を、走行するベルト上に投入し、投入された汚泥は排出部へ移送される間にベルトでろ過され、排出部では高濃度の濃縮汚泥となるベルト濃縮機、バースクリーン、振動スクリーンなどがある。
【0073】
脱水装置は、濃縮装置で生成された濃縮汚泥に機械的な圧力をかけて、濃縮汚泥から水分を絞り出して、含水率の低い脱水ケーキと、脱水ろ液を生成する。脱水装置には、例えば、ベルトプレス脱水機、遠心脱水機、加圧脱水機、真空脱水機、多重円盤型脱水機、スクリュープレス型脱水機などが使用される。脱水装置は省略されることもある。この場合は、濃縮装置で生成された濃縮汚泥は外部に搬出される。
【0074】
図1の凝集装置5は、攪拌力が強い(攪拌装置の回転速度が速い)混合槽と、攪拌力が弱い(攪拌装置の回転速度が遅い)凝集槽の2つを直列に設けても良い。無機凝集剤と高分子凝集剤は別々の槽に添加される。具体的には、無機凝集剤は攪拌力が強い混合槽に、高分子凝集剤は凝集フロックの形成と凝集フロックが壊れない程度の攪拌力が弱い凝集槽に、別々に添加される。
【0075】
以下は、汚泥改質剤、短繊維助剤、凝集剤の添加の具体例である。
・汚泥改質剤は汚泥槽15に、高分子凝集剤は凝集槽に添加する。
・汚泥改質剤と短繊維助剤は汚泥槽15に、高分子凝集剤は凝集槽に添加する。
・汚泥改質剤は汚泥槽15に、無機凝集剤は混合槽に、高分子凝集剤は凝集槽に添加する。
【0076】
汚泥改質剤、または汚泥改質剤と短繊維助剤を、攪拌力が強い(攪拌装置の回転速度が速い)凝集装置5の混合槽に無機凝集剤と一緒に添加すると、無機凝集剤で汚泥のSSが凝集するので、汚泥改質剤による汚泥改質が阻害され、短繊維助剤が凝集フロックに取り込めない可能性があるので、濃縮脱水性が低下する。したがって、汚泥改質剤は、凝集装置5の上流にある汚泥改質装置3で汚泥に添加される。
短繊維助剤は攪拌力が強い(攪拌装置の回転速度が速い)凝集装置5の混合槽に無機凝集剤と一緒に添加しても、無機凝集剤で汚泥のSSが凝集する凝集汚泥に取り込まれるので、濃縮脱水性の向上に好都合である。または短繊維助剤は凝集装置5の混合槽の前の汚泥槽15に添加してもよい。
【0077】
汚泥改質剤として酸を用いる場合、濃縮前の凝集時に水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液により、改質汚泥のpHを3.5~5.5に調整する。または、汚泥改質対象以外の汚泥のアルカリ(M―アルカリ度)で、改質汚泥のpHを調整してもよい。汚泥改質対象以外の汚泥のアルカリで不足する場合には、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整してもよい。
【0078】
好気性生物処理で得られる余剰汚泥のM-アルカリ度は100mg/L以下、嫌気性生物処理で得られる消化汚泥のM-アルカリ度は1000~5000mg/Lである。したがって、酸による余剰汚泥の汚泥改質の場合には凝集前にアルカリでpH調整する必要がある。
【0079】
アルカリの添加場所は凝集工程でも、図示していないが凝集工程前の混合工程でもよい。生物処理で発生する余剰汚泥や消化汚泥である汚泥は、汚泥改質剤で直接改質してもよいし、一旦、被処理水や被処理物と混合した後に全量改質処理してもよい。
【0080】
本発明の汚泥改質とは、前述の
図2に示すように、汚泥粒子の細胞全体を汚泥改質剤で破壊するのでなく、汚泥粒子の細胞の一部分を壊して、細胞内部の液を排出させるものである。そのために汚泥粒子の細胞全体を破壊して汚泥を可溶化するような従来の方法に比べて、薬剤使用量やその反応時間が短かくて済む。
更には従来のように、汚泥粒子の細胞全体を汚泥改質剤で破壊すると、細胞から生物処理が難しい難分解性CODや色度成分、難分解性窒素が溶出し、濃縮分離液や脱水ろ液の好気性生物処理でもこれらの細胞からの溶出成分が除去できず、生物処理水や放流水に含まれるために放流基準値を超えることがある。
しかしながら本願発明は汚泥粒子の細胞の一部分を壊して、細胞内部の液を排出させるものであるので、難分解性CODや色度成分、難分解性窒素の溶出量が少なく、生物処理水や放流水の水質への影響がない。
また、従来のように、汚泥粒子の細胞全体を汚泥改質剤で破壊すると、汚泥粒子の細胞や細胞の内容物が微細化あるいは可溶化し、細胞内部の水が抜けているので、濃縮脱水性が向上するものの凝集のための凝集剤使用量が増加したり濃縮脱水の運転管理が難しい。
【0081】
更には、汚泥に添加する高分子凝集剤添加率の低減による高分子凝集剤使用量を削減できる。更には、従来、消化汚泥等の難脱水性汚泥の濃縮脱水に高価な高分子凝集剤を使用している場合でも、本願発明の汚泥改質剤による汚泥改質によって、より安価で一般的で汎用性があり流通量の多い高分子凝集剤が使用できる。本発明はBCP(事業継続計画)に資するものである。
また、本願発明の汚泥改質剤による汚泥改質によって、人手作業と時間を要する最適な高分子凝集剤の銘柄選定作業が不要になる。
【0082】
凝集装置5の凝集槽に添加する高分子凝集剤の注入に関して、高分子凝集剤の添加率と、高分子凝集剤の銘柄が濃縮脱水において重要である。
高分子凝集剤の添加率は濃縮脱水の現場の運転経験や過去の知見や経験で決定することができ、その高分子凝集剤の添加率と汚泥のSS重量(汚泥流量とSS濃度の積)から求まる高分子凝集剤溶解液の注入量の増減は高分子凝集剤溶解液の注入ポンプの吐出量の増減によって容易に行える。
しかしながら、高分子凝集剤の銘柄の変更または、使用中の銘柄が最適かどうかの判断は、幾種類もの高分子凝集剤の在庫がないことや、幾種類もの高分子凝集剤溶解液を調製して濃縮脱水の汚泥処理設備の現場で試験したりすることは設備的にも時間的にも難しい。実際の汚泥処理設備は試験設備(長期的試験に使えないし、脱水不良の脱水ケーキの処分が困難)ではないし、幾種類もの高分子凝集剤が在庫できないなどの理由で現場での試験や検討は難しい。
【0083】
最適な高分子凝集剤の銘柄選定作業は汚泥処理設備の現場で行えず、薬品メーカーや濃縮設備や脱水設備等を納入したプラントメーカーによって現場で採取した汚泥に合う最適銘柄が選定されるので、最適銘柄が得られるまでに長期間の日数を要する。最適銘柄が選定されるまでは汚泥処理に支障が出る。つまり、最適銘柄が決定されるまでと、最適銘柄が納入されるまでに長期間の日数を要するために緊急の濃縮脱水性能の低下には対応できない。
【0084】
一般には季節変動や、水処理設備の運転条件、濃縮脱水設備の運転休止等による濃縮脱水用汚泥の性状が変動、変化して、高分子凝集剤注入量の調整だけでは安定した濃縮脱水性能が確保できない場合が多い。
高分子凝集剤の最適銘柄が得られた後に、高分子凝集剤の銘柄を変更することになるが、高分子凝集剤の銘柄の変更にあたって、在庫の高分子凝集剤の処分費用や、高分子凝集剤貯槽に新たな銘柄を入れ替える作業や今まで使用していた高分子凝集剤溶解液貯槽から高分子凝集剤溶解液の排出作業などが発生する。更には取り出した高分子凝集剤が無駄になるばかりか、取り出した在庫の高分子凝集剤と高分子凝集剤溶解液貯槽から取り出した高分子凝集剤溶解液が産業廃棄物として処分する必要があり、処分費用とその手間がかかる。
【0085】
上述した実施形態によれば、汚泥改質剤、または汚泥改質剤と短繊維助剤を使用することで、後段の生物処理への負荷が低減できて生物処理性能が安定して維持できる。また、泥性状の変動が激しい被処理物を改質することで、高分子凝集剤注入量の調整だけの簡単な現場作業で高い濃縮脱水性能が得られ、高分子凝集剤注入量の削減もできる。
【0086】
図1に示すように、固液分離装置7(濃縮装置および脱水装置)で分離された濃縮分離液と脱水ろ液は、生物処理装置1に送られ、濃縮分離液と脱水ろ液に残留するBODやSSなどが生物処理装置1で除去される。
好気性生物処理装置である生物処理装置1で得られた生物処理水は下水道や公共水域に放流されたり、凝集沈殿処理などで高度処理されて再利用される。固液分離装置7から分離された濃縮分離液と脱水ろ液の全量または一部を生物処理装置1で生物処理してもよい。
【0087】
生物処理装置1で得られた余剰汚泥は、固液分離装置7、または固液分離装置7とは別の固液分離装置で固液分離してもよい。固液分離装置7、または固液分離装置から排出される濃縮分離液と脱水ろ液は生物処理装置1また別の生物処理装置で処理してもよい。固液分離装置7、または別の固液分離装置から排出される濃縮汚泥は脱水して外部搬出したり、脱水ケーキは焼却処分や外部搬出する。
また、固液分離装置7(濃縮装置および脱水装置)で分離された濃縮汚泥、脱水ケーキが生物処理装置1に送られて、濃縮汚泥、脱水ケーキのCODCrが生物処理装置1で除去される。
固液分離装置7から分離された濃縮汚泥と脱水ケーキの全量または一部を生物処理装置1で生物処理してもよい。
【0088】
嫌気性生物処理装置である生物処理装置1で得られた消化汚泥は、固液分離装置7、または別の固液分離装置で固液分離されて、濃縮分離液と脱水ろ液や濃縮汚泥、脱水ケーキが固液分離装置から排出される。濃縮分離液と脱水ろ液は好気性生物処理されて、公共水域等に放流される。濃縮汚泥、脱水ケーキは外部搬出等が行われる。
生物処理装置1で得られた余剰汚泥や消化汚泥は汚泥改質装置3で汚泥改質をしてもしなくてもよい。
生物処理装置1で実行される生物処理工程は、好気性生物処理であってもよく、あるいは嫌気性生物処理であってもよい。
【0089】
図1に示す生物処理装置1は、好気性処理法、活性汚泥法、生物膜法、嫌気性処理法、生物学的硝化脱窒法、多段式活性汚泥法、流動担体法、膜分離活性汚泥法等を行うための反応槽であり、必要に応じて攪拌装置、曝気装置等が設けられてもよい。生物処理装置1内では、微生物を用いた生物処理が行われる。一実施形態では、生物処理装置1には、活性汚泥を内部に収容した活性汚泥槽が用いられる。
【0090】
生物処理装置1は、有機物を含む被処理水または下水汚泥のような被処理物を生物処理し、固液分離して汚泥と生物処理水を生成する。
生物処理装置1は、嫌気性生物処理装置でも好気性生物処理装置でもよいが、固液分離装置7から分離された濃縮分離液と脱水ろ液は公共水域への放流が一般的であるので、良好な水質が得られる好気性生物処理がよい。一方、濃縮汚泥と脱水ケーキは有機物濃度が高いので、滞留時間が長くとれる嫌気性生物処理がよい。一般には好気性生物処理水より嫌気性生物処理水の方が水質が良くないので、公共水域等への放流に際しては嫌気性生物処理水を好気性生物処理される。
生物処理装置1で生物処理水は次工程で再度処理されたり、放流したり、回収したりされる。好気性処理での主な除去対象はSSやBODである。嫌気性処理での主な除去対象はCODCr(化学的酸素要求量)である。
【0091】
図4は、被処理物の処理装置の他の実施形態を示す模式図である。本実施形態の構成は、
図1および
図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0092】
図4に示す処理装置は、余剰汚泥に汚泥改質剤を添加し、余剰汚泥と汚泥改質剤とを混合させて改質汚泥を生成する汚泥改質工程と、被処理物、および改質汚泥に凝集剤を添加し、被処理物および改質汚泥を凝集させて凝集汚泥を生成する凝集工程と、凝集汚泥から分離物を固液分離する固液分離工程と、分離した分離物を生物処理して、余剰汚泥を生成する好気性生物処理工程を含む処理方法を実行するように構成されている。上記汚泥改質工程は汚泥改質装置3により実行され、上記凝集工程は凝集装置5により実行され、上記固液分離工程は、固液分離装置7(
図4では濃縮装置8と脱水装置9)により実行され、上記好気性生物処理工程は生物処理装置1により実行される。生物処理装置1は、好気性生物処理工程を実行する好気性生物処理装置である。生物処理装置1で生成された余剰汚泥の全量または、その一部は返送ライン10を通じて汚泥改質装置3に送られる。
【0093】
この実施形態では、好気性生物処理で発生する余剰汚泥を汚泥改質剤で濃縮や脱水しやすいように改質し、改質された汚泥と、被処理物に凝集剤を添加して、凝集汚泥を生成し、その後、凝集汚泥を濃縮して、濃縮汚泥と濃縮分離液を得る。更に必要に応じて、濃縮汚泥を脱水して、脱水ろ液と脱水ケーキを得る。
【0094】
凝縮装置8で得られた濃縮分離液は生物処理装置1で好気性生物処理する。一実施形態では、濃縮汚泥を脱水しないで濃縮汚泥を外部搬出し、他の場所の施設や別系統の施設で濃縮汚泥を脱水してもよい。
【0095】
生物処理装置1で生成された余剰汚泥の全量が汚泥改質装置3で改質されてもよいし、その一部が改質されてもよい。改質後の余剰汚泥である改質汚泥、および改質されない余剰汚泥は、し尿や浄化槽汚泥と混合して、一緒に、凝集装置5に送られる。濃縮分離液および脱水ろ液はすべて生物処理装置1に送られ、好気性生物処理により、濃縮分離液および脱水ろ液に残留するBODや窒素やSSなどを除去する。
【0096】
汚泥改質対象の余剰汚泥以外の被処理物のアルカリで、改質汚泥のpHを調整してもよい。汚泥改質対象の被処理物のアルカリで不足する場合には、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整する。
【0097】
汚泥改質装置3によって余剰汚泥等を含む被処理物が改質された改質汚泥には被処理物の有機物の可溶化に伴って生成するBODと、過剰な汚泥改質剤添加に起因する残留酸化剤や残留酸を含む。
汚泥改質時の被処理物の可溶化に伴って生成するBODは、改質汚泥の分離物に含まれて、その分離物を生物処理装置1の硝化脱窒素処理装置で脱窒素処理する際に分離物のBODが水素供与体に使用できる。
【0098】
図5は、
図4に示す生物処理装置1での好気性生物処理工程が硝化脱窒素処理工程である他の実施形態を示す図である。図示していないが、分離物槽と硝化脱窒素処理設備52を含む生物処理装置1は、固液分離工程から排出される分離物である濃縮分離液および/または脱水ろ液を一旦貯留する分離物槽と、第1脱窒素槽、硝化槽、第2脱窒素槽、再曝気槽と、または、硝化槽、脱窒素槽、再曝気槽と、または、脱窒素槽、再曝気槽と、沈殿槽等の固液分離装置を含む。
【0099】
生物処理装置1の硝化脱窒素処理工程で発生した余剰汚泥は、汚泥改質装置3に導入される前に、余剰汚泥以外の被処理物と混合して、余剰汚泥と余剰汚泥や消化汚泥以外の被処理物との混合物を汚泥改質装置3にて改質してもよい。
被処理物は、硝化脱窒素処理で処理されるSS(懸濁物質)やBOD(生物化学的酸素要求量)や、アンモニア性窒素、有機性窒素、全窒素等を含み、具体的な被処理物はし尿や浄化槽汚泥である。
【0100】
図示していないが、生物処理装置1の硝化脱窒素処理工程で発生した余剰汚泥だけを汚泥改質装置3に導入し、余剰汚泥だけを改質し、汚泥改質された余剰汚泥と余剰汚泥以外の被処理物を凝集装置や汚泥改質装置3と凝集装置との間の配管で混合してもよい。
図示していないが、さらに、余剰汚泥以外の被処理物を汚泥改質装置3に導入し、余剰汚泥以外の被処理物だけを汚泥改質した後に、余剰汚泥以外の被処理物と汚泥改質されていない余剰汚泥を凝集装置や汚泥改質装置3と凝集装置との間の配管で混合してもよい。
また、余剰汚泥は
図5の汚泥改質装置3に移送するのでなく、別の設備で濃縮や脱水を行ってもよい。その場合には、
図5では余剰汚泥以外の被処理物が汚泥改質される。
【0101】
硝化脱窒素処理工程から発生する余剰汚泥だけを改質した改質汚泥を好気性生物処理工程の前段のし尿や浄化槽汚泥の貯槽に移送して、その貯槽でし尿や浄化槽汚泥と改質汚泥を混合することで、改質汚泥に残留する酸化剤や残留する酸がし尿や浄化槽汚泥の還元成分で消費されて、凝集や濃縮脱水工程から排出される濃縮分離液や脱水ろ液に残留する酸化剤や残留する酸による硝化脱窒素処理工程への阻害がなくなる。また、余剰汚泥以外の被処理物を汚泥改質し、汚泥改質された余剰汚泥以外の被処理物と余剰汚泥を混合した混合物を凝集後に固液分離することができて、汚泥改質された余剰汚泥以外の被処理物残留する酸化剤や残留する酸が余剰汚泥で消費されて、凝集や硝化脱窒素処理工程への影響がなくなる。
【0102】
改質汚泥の移送場所はし尿や浄化槽汚泥の貯槽でも、し尿や浄化槽汚泥貯槽の前後の配管、凝集工程への流入配管でも良い。また、凝集工程の混合槽でも凝集槽でもよい。
嫌気性生物処理から発生する消化汚泥についても、消化汚泥だけを改質した改質汚泥を嫌気性生物処理工程の前段の被処理物の貯留設備に移送し、改質汚泥と被処理物と混合することで嫌気性生物処理工程への阻害がなくなる。
更には、被処理物を濃縮脱水する濃縮脱水処理設備の運転実績や運転経験等から、汚泥改質剤を過剰添加する必要がある被処理物や凝集剤使用量が多いなどの難濃縮性、難脱水性の被処理物が特定して、その被処理物だけを汚泥改質剤で個別に汚泥改質する。その改質汚泥を汚泥改質対象の被処理物以外の被処理物と混合することで、汚泥改質剤の使用量削減や汚泥改質作業の低減や、前記の残留汚泥改質剤の凝集や生物処理への影響が抑えられる。
【0103】
し尿および浄化槽汚泥の少なくとも一方を含む被処理物は、凝集装置5で凝集され、得られた凝集汚泥は濃縮装置8で濃縮され、得られた濃縮汚泥は脱水装置9で脱水される。脱水ケーキは外部搬出されたり、焼却処分されたりする。濃縮装置8と脱水装置9から排出される濃縮分離液および脱水ろ液は図示していない分離物槽に溜めて、均質化させる。分離物槽内の分離液は図示しない分離物ポンプで硝化脱窒素処理設備52に移送される。分離物は、第1脱窒素槽、硝化槽、第2脱窒素槽、再曝気槽の順に送られる。
【0104】
第1脱窒素槽では、し尿と浄化槽汚泥由来の濃縮分離液や脱水ろ液のBODにより、硝化液の硝酸性窒素と亜硝酸性窒素が脱窒素菌の作用で窒素ガスとなり、生物学的に脱窒素する。脱窒素菌が硝酸性、亜硝酸性窒素(NOx-N)をN2ガスに還元するためには、水素供与体としての有機炭素源が不可欠である。第1脱窒素槽で濃縮分離液や脱水ろ液のBODが不足する場合や第2脱窒素槽には、水素供与体として安価で調達が便利なメタノールが一般的に使用される。
【0105】
本実施形態では、余剰汚泥や被処理物を改質した際に余剰汚泥や被処理物の分解で生成するBODは、第1脱窒素槽や第2脱窒素槽に添加される水素供与体であるメタノールの代わり、またはメタノールの一部または全部に代替させて使用することができる。
【0106】
図6は、被処理物の処理装置のさらに他の実施形態を示す図である。本実施形態の構成は、
図1および
図3の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
嫌気性生物処理装置1で発生した消化汚泥は、汚泥改質装置3に導入される前に、消化汚泥以外の被処理物と混合して、消化汚泥と消化汚泥や消化汚泥以外の被処理物との混合物を汚泥改質装置3にて改質してもよい。
【0107】
図示していないが、嫌気性生物処理装置1で発生した消化汚泥だけを汚泥改質装置3に導入し、消化汚泥だけを改質し、汚泥改質された消化汚泥と消化汚泥以外の被処理物を凝集装置や汚泥改質装置3と凝集装置との間の配管で混合してもよい。
図示していないが、さらに、消化汚泥以外の被処理物を汚泥改質装置3に導入し、消化汚泥以外の被処理物だけを汚泥改質した後に、消化汚泥以外の被処理物と汚泥改質されていない消化汚泥を凝集装置や汚泥改質装置3と凝集装置との間の配管で混合してもよい。
また、消化汚泥は
図6の汚泥改質装置3に移送するのでなく、別の設備で濃縮や脱水を行ってもよい。その場合には、
図6では消化汚泥以外の被処理物が汚泥改質される。
【0108】
図6に示す実施形態では、生物処理装置1は、濃縮装置8での濃縮工程で生成された濃縮汚泥を嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程を実行するように構成される。また、生物処理装置1は、脱水装置9での脱水工程で生成された脱水ケーキを嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程を実行するように構成される。更には生物処理装置1は、濃縮汚泥と脱水ケーキの両方を嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程を実行するように構成される。
より具体的には、嫌気性生物処理装置1は、消化槽およびメタン発酵槽の少なくとも一方を有する。嫌気性生物処理装置1に投入される被処理物のSS濃度を高めることで、嫌気性生物処理工程での濃縮汚泥の滞留時間を長くして、濃縮汚泥の分解促進のために、嫌気性生物処理の前段に濃縮工程が設けられる。
更には嫌気性生物処理装置1に投入される被処理物の汚泥改質することで、汚泥の低分子化が起こり、嫌気性生物処理工程で被処理物の嫌気性生物処理性能が促進されて、消化ガス発生量が増加したり、消化汚泥のSS濃度が低減されるので、汚泥の減容化効果が高い。
【0109】
本願発明は嫌気性生物処理装置1に投入される被処理物の汚泥改質効果と、嫌気性生物処理装置1に投入される被処理物のSS濃度を高めることにより一層の嫌気性生物処理性能が向上する。
濃縮装置8での濃縮工程で生成される濃縮分離液と、脱水装置9での脱水工程で生成された脱水ろ液は好気性生物処理設備55で好気性処理生物処理される。
好気性生物処理の生物処理水は下水道等への放流や、高度処理されて再利用される。
好気性生物処理で生成する余剰汚泥は本願発明の汚泥改質工程に返送されたり、余剰汚泥と余剰汚泥以外の被処理物を混合して、汚泥改質工程に返送されたり、図示していないが、汚泥改質工程の後の凝集工程に返送される。または別の汚泥処理設備で汚泥処理されたり、外部に搬出されたりする。
【0110】
図1に示す実施形態と同様に、凝集工程の前段で被処理物(例えば、下水汚泥)の汚泥改質を行い、濃縮の改善を図る。前記嫌気性生物処理装置1は、濃縮工程で生成された濃縮汚泥に対して嫌気性生物処理を行い、消化汚泥と消化ガスを生成する。消化汚泥は、返送ライン10を通じて被処理物または汚泥改質工程へ返送し、汚泥改質装置3に供給される。消化汚泥の嫌気性微生物やその他の有機物は汚泥改質装置3で改質される。その結果、嫌気性生物処理で発生する消化汚泥が減少し、消化ガス発生量が増加する。
【0111】
前記嫌気性生物処理装置1では、濃縮汚泥や脱水ケーキの有機物がメタンガスと炭酸ガスに分解されて消化ガスが生成する。メタンガスを含む消化ガスは脱硫後にボイラ燃料等に利用される。濃縮工程で発生した濃縮分離液は下水処理等の好気性生物処理工程に送られて、水処理される。
【0112】
本実施形態では、嫌気性生物処理装置1で発生した消化汚泥は、濃縮装置8とは別の濃縮装置で濃縮され、その後に脱水装置により脱水してもよい。
【0113】
嫌気性生物処理で発生した消化汚泥を汚泥改質する場合、硫化水素などの還元物質を含むので、汚泥改質剤として添加した酸化剤が硫化水素等の還元物質で消費され、汚泥改質に使われる酸化剤が減少し、汚泥改質が不十分になり、結果的に濃縮脱水性が向上しない。そこで、本実施形態では、汚泥改質剤として酸を消化汚泥に添加し、汚泥改質することで濃縮脱水性が向上する。また、被処理物が硫化水素や硫化物イオンなどの還元物質を含む場合にも、汚泥改質剤として酸が使用される。
【0114】
酸による汚泥改質の場合、濃縮前の凝集時に水酸化ナトリウム水溶液でpH3.5~5.5に調整する。または、汚泥改質対象の消化汚泥や消化汚泥以外の被処理物では被処理物のアルカリで、改質汚泥のpHを調整してもよい。消化汚泥以外の被処理物のアルカリで不足する場合には、水酸化ナトリウム水溶液でpH調整する。
【0115】
被処理物は汚泥改質剤で改質されることで、被処理物の高濃度化が達成され、生物処理装置1内での濃縮汚泥の滞留時間が長くなる。結果として、濃縮汚泥に対する嫌気性処理性能が向上し、消化ガス発生量が増加し、消化汚泥発生量が減少するので、汚泥減容化とともに濃縮脱水性が向上する。
【0116】
本実施形態では、濃縮分離液を好気性処理工程に移送してもよい。
【0117】
次に、実施例について説明する。
実施例1
汚泥再生処理センターで採取した余剰汚泥(SS12,000mg/L、VSS/SS 88.3%)を汚泥改質剤で改質して改質汚泥を得て、この改質汚泥について濃縮、脱水試験を行った。
【0118】
図7に汚泥改質剤の試験条件を示す。ジャーテスターにセットした容量0.5Lのビーカーに余剰汚泥0.5Lをとり、汚泥改質剤を添加してジャーテスターで回転速度150rpmで30分間攪拌し、20~25℃で汚泥改質試験を行い、改質汚泥を得た。余剰汚泥から得られた改質汚泥は、SS12,000mg/L、VSS/SS 88.0%であった。
【0119】
凝集工程では、無機凝集剤としてポリ鉄と、高分子凝集剤としてエバグロースB-184(両性高分子凝集剤、水ing(株)製)を使用した。ポリ鉄の添加率は余剰汚泥のSSあたり、鉄として5重量%、高分子凝集剤添加率は余剰汚泥のSSあたり2.0重量%とした。ポリ鉄添加後のpHが4.5になるように25wt%の水酸化ナトリウム水溶液でpH調整した。
【0120】
濃縮試験方法は以下の通りである。改質汚泥0.5Lを容量0.5Lのビーカーにとり、改質汚泥に無機凝集剤はポリ鉄を添加し、ジャーテスターで回転速度150rpmで5分間急速攪拌し、その後、高分子凝集剤を添加してジャーテスターで回転速度50rpmで5分間緩速攪拌し、その後、目開き1mmの金網で5分間ろ過して、濃縮汚泥と濃縮分離液を得た。濃縮汚泥の一部を採取して、濃縮汚泥濃度、SSを測定した。
【0121】
濃縮汚泥を脱水試験した。脱水試験方法は以下の通りである。
上記の濃縮汚泥(SS 33,000mg/L、VSS/SS 86.3%)0.2Lを、一軸型脱水試験装置で、加圧面の圧力100kPa(1kg/m2)で3分間、加圧脱水試験を行った。脱水試験後に脱水ケーキを採取して、その含水率を測定した。
比較のために汚泥改質剤を添加しないで濃縮試験と脱水試験も行った。
【0122】
図8に濃縮試験結果を示す。汚泥改質剤を添加しなかった場合の濃縮汚泥濃度SSは22,000mg/Lであった(試験番号No.1)。
酸化剤Aを余剰汚泥のSS1kgあたり1.0モル添加して、余剰汚泥を改質後に濃縮すると、濃縮汚泥濃度SSは33,000mg/Lであった(試験番号No.5)。
酸化剤Bを余剰汚泥のSS1kgあたり2.0モル添加して、余剰汚泥を改質後に濃縮すると、濃縮汚泥濃度SSは35,000mg/Lであった(試験番号No.12)。
酸化剤添加率を増加させると、濃縮分離液のSS濃度が低下傾向を示し、濃縮分離液の水質が向上した。
【0123】
図9に濃縮汚泥の脱水試験結果を示す。
図9に示す汚泥改質剤添加率は
図8の濃縮汚泥に対応する。脱水試験にあたって、濃縮汚泥への汚泥改質剤や凝集剤の添加を行わなかったので、
図8で得られた濃縮汚泥を脱水した。
濃縮前に汚泥改質剤を添加しなかった場合の濃縮汚泥の脱水ケーキの含水率は83.5%であった(試験番号No.14)。
酸化剤Aを余剰汚泥のSS1kgあたり1.0モル添加して、改質後の余剰汚泥を濃縮して得られた濃縮汚泥の脱水ケーキの含水率は81.8%であった(試験番号No.18)。
酸化剤Bを余剰汚泥のSS1kgあたり2.0モル添加時の脱水ケーキ含水率は81.2%であった(試験番号No.25)。
酸化剤A、Bともに、その添加率を増加させると、脱水ろ液のSS濃度が低下傾向を示した。
【0124】
実施例2
実施例1と同様に、酸化剤Aで、汚泥改質剤添加率1.0モル/kg-SSで、余剰汚泥改質して得られた改質汚泥と、し尿と浄化槽汚泥の混合物(SS15,000mg/L、VSS/SS 85.5%)とを混合したものを凝集、濃縮・脱水試験を行った。比較のため、実施例1と同様に余剰汚泥とし尿と浄化槽汚泥との混合物とを混合したものも濃縮・脱水試験を行った。
【0125】
図10に、未改質の余剰汚泥と、し尿と浄化槽汚泥の混合物、余剰汚泥の改質汚泥とし尿と浄化槽汚泥の混合物についての濃縮・脱水試験結果を示す。
未改質の余剰汚泥とし尿と浄化槽汚泥の混合比が1:4の濃縮汚泥濃度SSが27,000mg/Lで、脱水ケーキ含水率が80.5%であった(試験番号No.28)。
未改質の余剰汚泥とし尿と浄化槽汚泥の混合比を1:2にして、し尿と浄化槽汚泥の混合物の比率を下げると、し尿と浄化槽汚泥に含まれる夾雑物や繊維分が減るので、脱水ケーキ含水率が81.2%と高くなった(試験番号No.27)。
余剰汚泥の改質汚泥と、し尿と浄化槽汚泥の混合物の混合比が1:2の濃縮汚泥濃度SSが33,000mg/Lで、脱水ケーキ含水率が76.8%であった(試験番号No.30)。
【0126】
改質汚泥と、し尿と浄化槽汚泥の混合比を1:0.5にすると、し尿と浄化槽汚泥に含まれる夾雑物や繊維分が減るので、脱水ケーキ含水率が77.0%と高くなったが、試験番号No.30の含水率より0.2ポイント増えただけである。
余剰汚泥を改質することで、未改質時に比べて、脱水ケーキ含水率が混合比1:2で4.4ポイント、混合比1:4で4.2ポイント低下した。
余剰汚泥を汚泥改質剤で改質することで、脱水ケーキ含水率が大幅に改善された。
【0127】
実施例3(濃縮汚泥を嫌気性生物処理に供給)
分流式下水処理場で採取した初沈汚泥(SS 16,400mg/L、VSS/SS 67.3%)と、余剰汚泥(SS 11,400mg/L、VSS/SS 82.5%)の等量混合物(以下、下水汚泥、SS 14,000mg/L、VSS/SS 74.9%)を対象に、実施例1の汚泥改質剤、酸化剤Aで改質後に、高分子凝集剤(エバグロースC-104G、カチオン系、水ing(株)製)を下水汚泥のSS当たり1.0重量%で凝集後に、実施例1と同様に濃縮試験を行った。比較のために汚泥改質しない下水汚泥についても同様に凝集後に濃縮試験を行った。
【0128】
図11に下水汚泥の濃縮試験結果を示す。
汚泥改質しない下水汚泥の濃縮汚泥濃度SSは29,000mg/Lであった(試験番号No.32)。
酸化剤Aを下水汚泥のSS1kgあたり0.5モル添加して、下水汚泥を改質後に濃縮すると、濃縮汚泥濃度SSは40,000mg/Lであった(試験番号No.34)。
高濃度の濃縮汚泥を嫌気性生物処理に供給することで、嫌気性生物処理で濃縮汚泥の滞留時間が長くなり、嫌気性生物処理性能が向上する。
酸化剤Aの添加率を増加させると、濃縮分離液のSS濃度が低下傾向を示した。汚泥改質することで、濃縮分離液のSS濃度が低下して、濃縮分離液の返送先における好気性生物処理で不活性SSの比率が低下し、好気性生物処理の活性汚泥濃度の管理などの作業が低減でき、好気性生物処理性能も向上する。
【0129】
実施例4
汚泥再生処理センターで採取したし尿と浄化槽汚泥と、難脱水性の余剰汚泥を異なる容量比で混合した混合汚泥A~Cを対象に、実施例1と同様に濃縮、脱水試験を行った。
混合汚泥A~Cに酸化剤A添加率1.0モル/kg-SSで汚泥改質後、高分子凝集剤としてエバグロースLEC204,LEC208,LEC600(ともにカチオン系高分子凝集剤、水ing(株)製)で凝集後に濃縮し、その濃縮汚泥(SS32,000~34,000mg/L)を脱水試験に供した。汚泥改質しない場合について、脱水ケーキの含水率を比較した。
【0130】
混合汚泥A;混合比(容量比)し尿:浄化槽汚泥:余剰汚泥=1:1:1
SS18,000mg/L、VSS/SS 88.5%
混合汚泥B;混合比(容量比)し尿:浄化槽汚泥:余剰汚泥=1:3:1
SS15,000mg/L、VSS/SS 83.5%
混合汚泥C;混合比(容量比)し尿:浄化槽汚泥:余剰汚泥=1:1:3
SS12,000mg/L、VSS/SS 78.5%
【0131】
図12に異なる性状の混合汚泥を対象とした脱水試験結果を示す。
酸化剤Aは無添加、高分子凝集剤添加率2.0%、混合汚泥Aの最適高分子凝集剤銘柄はエバグロースLEC208とした条件下では、含水率は81.5%であった。
混合汚泥Bの最適高分子凝集剤銘柄はエバグロースLEC204、混合汚泥Cの最適高分子凝集剤銘柄はエバグロースLEC600とした条件下での各々の含水率は81.7%、81.6%であった。
酸化剤A添加率1.0モル/kg-SSで汚泥改質すると、混合汚泥A~Cで高分子凝集剤添加率2.0%で、エバグロースLEC204,LEC208,LEC600による含水率は81.0~81.7%であった。
【0132】
汚泥改質することで、最適高分子凝集剤銘柄として同一銘柄を継続使用することができ、更には汚泥改質しない場合に比べて高分子凝集剤添加率を含水率が0.5ポイント低くできた。汚泥改質することで、難脱水性の余剰汚泥の混合比率が変化しても最適高分子凝集剤銘柄として同一銘柄を継続使用することができるので、最適高分子凝集剤銘柄の選定作業のような人手と時間をする作業が削減でき、濃縮脱水の作業性が向上する。
【0133】
実施例5(短繊維助剤併用効果)
実施例4の混合汚泥Cを対象に、実施例1の酸化剤A添加率1.0モル/kg-SSで汚泥改質後、短繊維助剤(エバグロースU-710、水ing(株)製、繊維長さ10mm、含水率50wt/wt%)を添加し、実施例4と同様に、高分子凝集剤エバグロースLEC204(カチオン系高分子凝集剤、水ing(株)製)の添加率1.5%対SSで凝集後に濃縮し、その濃縮汚泥を脱水試験に供した。
【0134】
図13に濃縮脱水試験結果を示す。短繊維助剤添加率1.5%対SSで濃縮汚泥濃度が35,000mg/L、脱水ケーキ含水率が78.0%であり、短繊維助剤無添加時より脱水ケーキ含水率が2ポイント改善し、濃縮分離液や脱水ろ液のSS濃度も低下した(試験番号No.58)。
汚泥改質剤と短繊維助剤を併用することでより一層濃縮汚泥濃度が高まり、脱水ケーキ含水率が低減できた。更に濃縮分離液や脱水ろ液のSS濃度の改善ができて、返送される好気性生物処理でのSS負荷量が低減でき、生物処理の安定化につながる。
【0135】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0136】
1 生物処理装置
3 汚泥改質装置
5 凝集装置
7 固液分離装置
8 濃縮装置
9 脱水装置
10 返送ライン
15 汚泥槽
17 汚泥測定センサ
18 添加率決定装置
20 注入装置
22 攪拌機
23 攪拌羽根
24 攪拌モータ
28 注入ライン
31 邪魔板
32 加温ジャケット
35 短繊維助剤添加装置
52 硝化脱窒素処理設備