(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124154
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】振動抑制装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
B62D1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032132
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】川口 諒
【テーマコード(参考)】
3D030
【Fターム(参考)】
3D030DA55
3D030DA56
3D030DB08
3D030DB47
3D030DB75
3D030DB77
(57)【要約】
【課題】軸体をハウジングに取り付けやすい振動抑制装置を提供する。
【解決手段】振動抑制装置は、ハウジング41と、ハウジング41に保持され可動軸を設定する軸体30と、を備える。軸体30は、長手状の軸体本体部35と、軸体本体部35から長手方向と交差する方向に突出する平部である鍔部36と、を有する。ハウジング41は、軸体本体部35が挿入される穴部46を中央部に備える筒状のハウジング本体部45と、ハウジング本体部45の一端部から突出し、先端部がハウジング本体部45の中央部に向かう鉤爪状に形成されて軸体30の鍔部36を係止する複数の爪部57と、爪部57の両側に位置しハウジング本体部45の外面から穴部46に向かい形成された空間部68と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材に対して第二部材を弾性支持する振動抑制装置であって、
前記第一部材側と前記第二部材側とのいずれかに取り付けられるハウジングと、
このハウジングに保持され可動軸を設定する軸体と、を備え、
前記軸体は、
長手状の軸体本体部と、
この軸体本体部から長手方向と交差する方向に突出する平部と、を有し、
前記ハウジングは、
前記軸体本体部が挿入される穴部を中央部に備える筒状のハウジング本体部と、
このハウジング本体部の一端部から突出し、先端部が前記ハウジング本体部の中央部に向かう鉤爪状に形成されて前記軸体の前記平部を係止する複数の爪部と、
これら爪部の両側に位置し前記ハウジング本体部の外面から前記穴部に向かい形成された空間部と、を有する
ことを特徴とする振動抑制装置。
【請求項2】
爪部の両側に位置する空間部の前記爪部側を構成する壁部同士が略平行である
ことを特徴とする請求項1記載の振動抑制装置。
【請求項3】
爪部の基端部よりもこの爪部の基端部と連なるハウジング本体部の厚みが大きい
ことを特徴とする請求項1または2記載の振動抑制装置。
【請求項4】
第一部材がハンドル本体部で、第二部材がモジュールである
ことを特徴とする請求項1または2記載の振動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一部材に対して第二部材を弾性支持する振動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の操舵用のハンドルすなわちステアリングホイールとして、ステアリングホイール本体部の芯金に対しエアバッグ装置などのモジュールを弾性的に支持して、モジュールをダンパマスとして利用し、ステアリングホイールの走行時の振動を抑制させる振動抑制装置であるダンパユニットがある。ダンパユニットの可動軸の役割を持つ軸体であるピンは、円環状のハウジングに挿入された状態で保持され、このハウジングが芯金に固定される。ハウジングには、ピンの端部に設定された鍔部を係止保持するための爪部が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-154943号公報 (第7頁、
図11及び
図15)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造において、ピンをハウジングに取り付ける際には、ピンをハウジングの一端部から挿入して鍔部を爪部間に押し込むことで、爪部を弾性的に開脚させ、それら爪部の復帰変形により係止させる。このとき、爪部の厚みが薄く、爪部の基端部とハウジング本体部とが連なる部分の面積が小さいと、爪部を開脚させる際の強度が不足することが懸念されるため、ハウジングに剛性が大きい素材を使用することが考えられる。しかしながら、その場合には、爪部の開脚性が低下するため、取り付けの作業性が低下するだけでなく、補強用の材料費が掛かることでコスト増となる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、軸体をハウジングに取り付けやすい振動抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の振動抑制装置は、第一部材に対して第二部材を弾性支持する振動抑制装置であって、前記第一部材側と前記第二部材側とのいずれかに取り付けられるハウジングと、このハウジングに保持され可動軸を設定する軸体と、を備え、前記軸体は、長手状の軸体本体部と、この軸体本体部から長手方向と交差する方向に突出する平部と、を有し、前記ハウジングは、前記軸体本体部が挿入される穴部を中央部に備える筒状のハウジング本体部と、このハウジング本体部の一端部から突出し、先端部が前記ハウジング本体部の中央部に向かう鉤爪状に形成されて前記軸体の前記平部を係止する複数の爪部と、これら爪部の両側に位置し前記ハウジング本体部の外面から前記穴部に向かい形成された空間部と、を有するものである。
【0007】
請求項2記載の振動抑制装置は、請求項1記載の振動抑制装置において、爪部の両側に位置する空間部の前記爪部側を構成する壁部同士が略平行であるものである。
【0008】
請求項3記載の振動抑制装置は、請求項1または2記載の振動抑制装置において、爪部の基端部よりもこの爪部の基端部と連なるハウジング本体部の厚みが大きいものである。
【0009】
請求項4記載の振動抑制装置は、請求項1または2記載の振動抑制装置において、第一部材がハンドル本体部で、第二部材がモジュールであるものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の振動抑制装置によれば、平部を係止する際に複数の爪部が開脚されるときに、その開脚の起点が爪部の基端部と連なるハウジング本体部の空間部間に設定されため、爪部の形状が爪部の開脚動作に影響しにくく、爪部の開脚性を向上できるので、軸体をハウジングに取り付けやすくなる。
【0011】
請求項2記載の振動抑制装置によれば、請求項1記載の振動抑制装置の効果に加えて、爪部に対して荷重を均等に掛けることができるので、爪部の開脚性をより向上できる。
【0012】
請求項3記載の振動抑制装置によれば、請求項1または2記載の振動抑制装置の効果に加えて、爪部の開脚性をより向上できる。
【0013】
請求項4記載の振動抑制装置によれば、請求項1または2記載の振動抑制装置の効果に加えて、例えば走行時などのハンドルの振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態の振動抑制装置のハウジングを示し、(a)はその背面図、(b)は(a)のI-I相当位置の断面図、(c)はその側面図である。
【
図4】同上振動抑制装置を備えるハンドルの一部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
図5において、1はハンドル(ステアリングハンドル)としてのステアリングホイールを示す。ステアリングホイール1は、自動車などの車両の運転席の乗員の前方に配置される。ステアリングホイール1は、ハンドル本体部としてのステアリングホイール本体部2と、このステアリングホイール本体部2の乗員側に装着されたモジュール3と、などを備える。
【0017】
なお、ステアリングホイール1は、通常傾斜した状態で備えられる図示しない操縦装置としてのステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、モジュール3側を乗員側、正面側あるいは後側、ステアリングシャフト側を車体側、背面側あるいは前側とし、このステアリングシャフトに沿った前後方向を軸方向とし、その他、このステアリングホイール1が備えられる車体の直進方向を基準として、上下方向及び左右方向などの方向を説明する。正面側については、矢印FRで示し、背面側については、矢印RRで示す。
【0018】
ステアリングホイール本体部2は、リム部(リング部)5と、このリム部5の内側に位置するボス部(マウント部)6と、これらリム部5とボス部6とを連結する複数のスポーク部7と、を有する。
【0019】
リム部5は、運転者(乗員)により把持操作される部分である。リム部5は、少なくとも一部が円弧状に形成されている。好ましくは、リム部5は、環状に形成されている。本実施の形態において、リム部5は、円環状に形成されている。
【0020】
ボス部6は、ステアリングシャフトと連結される部分である。また、ボス部6の乗員側には、モジュール3が取り付けられる。
【0021】
スポーク部7は、本実施の形態において、左右に2本、下部に1本形成されている。これに限らず、スポーク部7は、2本や4本でもよいし、あるいはそれ以上の本数が形成されていてもよい。
【0022】
そして、ステアリングホイール本体部2は、金属製の芯金10と、この芯金10の一部を一体的に覆う軟質の被覆部11と、この芯金10の背面側を覆う被覆部材としてのカバー体と、などを備えている。
【0023】
図4及び
図5に示す芯金10は、リム部5、ボス部6及びスポーク部7に対応し、リム芯金部15、支持部としてのボス芯金部16、及び連結部としてのスポーク芯金部17を備え、全体として略左右対称に形成されている。ボス芯金部16に対し、スポーク芯金部17を介してリム芯金部15が一体的に連結され、リム芯金部15と、スポーク芯金部17のリム芯金部15側の端部と、が被覆部11により覆われている。被覆部11の表面は、例えばリム部5の位置が表皮体により覆われていてもよい。なお、スポーク芯金部17は、スポーク部7と必ずしも同数でなくてもよく、装飾部材(フィニッシャ)などにより一部のスポーク部7が形成されていてもよい。
【0024】
ボス芯金部16は、ステアリングシャフトに嵌着される円筒状のボス20を中央部に一体的に有し、本実施の形態では、両側部にスポーク芯金部17が連結されている。ボス芯金部16には、ボス20の外方の位置に、取付部24が形成されている。取付部24は、例えば円孔状の取付開口である。そして、取付部24には、第一部材であるステアリングホイール本体部2のボス芯金部16に対して第二部材であるモジュール3を前後方向に弾性的に支持する振動抑制装置25が取り付けられている。なお、取付部24は、モジュール3を振動抑制装置25によりバランスよく支持できれば任意の位置に配置されてよいが、本実施の形態では、ボス20の左右両側と下側、つまりスポーク部7に対応する位置に配置されている。すなわち、ステアリングホイール1は、ボス20の周囲の三点でモジュール3を振動抑制装置25によって支持するように構成されている。
【0025】
振動抑制装置25は、ワンタッチユニットとも呼ばれるもので、モジュール3をステアリングホイール本体部2のボス芯金部16に対してワンタッチ取り付け可能とするとともに、モジュール3をダンパマスとして利用し、エンジンの振動あるいは路面からの振動などが伝わることによる走行時のステアリングホイール1の振動を低減するダイナミックダンパを構成するものである。また、振動抑制装置25は、例えばステアリングホイール1に設定されるホーン装置のホーンスイッチを開状態に保持するホーンスプリングとしての機能を有する。
【0026】
図2及び
図3に示すように、振動抑制装置25は、概略として、その可動軸が軸体30により設定され、軸体30が弾性体31に挿通されて、この弾性体31が第一保持部32と第二保持部33との間に挟まれて構成されている。そして、第一保持部32と第二保持部33との一方がステアリングホイール本体部2(
図5)の取付部(第一取付部)24に取り付けられ、他方がモジュール3(
図5)の取付部(第二取付部)に取り付けられる。モジュール3(
図5)の取付部は、例えば円孔状の取付孔である。本実施の形態では、第一保持部32がステアリングホイール本体部2(
図5)の取付部(第一取付部)24に取り付けられ、第二保持部33がモジュール3(
図5)の取付部(第二取付部)に取り付けられる例を示す。
【0027】
軸体30は、ピンなどとも呼ばれる。軸体30は、長手状の軸体本体部35と、軸体本体部35の軸方向の端部にフランジ状に突出する平部である鍔部36と、を一体的に備える。軸体30は、例えば金属により形成されている。軸体30は、基端部である鍔部36側を第一保持部32側とし、先端部側を第二保持部33側として、第一保持部32、弾性体31、第二保持部33に亘り挿通されている。
【0028】
軸体本体部35は、細長い円柱状に形成されている。軸体本体部35は、先端部が先細り形状となっている。つまり、軸体本体部35の先端部には、先端に向かい徐々に縮径される縮径部37が形成されている。また、本実施の形態では、軸体本体部35の先端部寄りの位置、図示される例では縮径部37の基端部に隣接する位置に、凹部38が全周に亘り形成されている。凹部38には、例えばモジュール3(
図5)の取付部に配置された係合部材が係合される。係合部材は、例えばワンタッチワイヤなどと呼ばれる、弾性変形可能な金属などの線材にて形成された部材である。本実施の形態では、凹部38に係合部材が係合されることにより、振動抑制装置25がモジュール3の取付部に対し係合される。図示される例では、凹部38には、緩衝部材39が取り付けられている。緩衝部材39は、クリップなどとも呼ばれ、軸体30を係合部材に対して保護する。緩衝部材39は、例えば円筒状に形成されて、凹部38に嵌着されている。
【0029】
鍔部36は、第一保持部32に保持される部分である。鍔部36は、軸体本体部35より大径の平板状に形成されている。本実施の形態では、鍔部36は、軸体本体部35の全周に亘り連なる円形状である。
【0030】
弾性体31は、例えばコイルスプリングが用いられる。
【0031】
第一保持部32は、ハウジング41を備える。本実施の形態では、第一保持部32は、さらにブッシュ42とインシュレータ43とを備え、ハウジング41にブッシュ42を介してインシュレータ43が取り付けられる。
【0032】
図1(a)、
図1(b)、
図1(c)及び
図2に示すハウジング41は、例えば合成樹脂により形成されている。ハウジング41は、軸体30と略同軸に配置される円環状である。ハウジング41は、軸体30、弾性体31、第二保持部33、ブッシュ42及びインシュレータ43よりも外径が大きい。つまり、ハウジング41は、振動抑制装置25において最大径を有する部材である。
【0033】
ハウジング41は、取付部24に嵌着されるハウジング本体部45を有する。ハウジング本体部45は、筒状、本実施の形態では円筒状に形成されている。すなわち、ハウジング本体部45は、軸体30が挿通される穴部46を中央部に備える。そして、ハウジング本体部45は、取付部24に内挿される円筒状の筒部50と、この筒部50の軸方向の両端部からフランジ状に突出してボス芯金部16の正面及び背面にそれぞれ係止される係止部51,52と、を一体的に備える。
【0034】
本実施の形態では、係止部51は、ボス芯金部16の正面に重ねられる部分である。係止部51は、例えばハウジング本体部45の中心軸を基準として一側とその反対側である他側とに一対形成されている。図示される例では、各係止部51の位置に、取付部24の内縁部に圧接される圧接部54が形成されている。圧接部54は、係止部52から係止部51に向かって突出し先端部が鉤爪状に突出する爪状に形成されている。圧接部54は、筒部50の外周面よりも外方に位置し、筒部50の外周面に開口された圧接部54の成形用の開口部55に臨んで、径方向に弾性的に移動可能となっている。
【0035】
また、本実施の形態では、係止部52は、ボス芯金部16の背面に重ねられる部分である。係止部52は、例えば筒部50の全周に亘り連なる円形状に形成されている。図示される例では、係止部52は、係止部51よりも径方向の突出量が大きい。
【0036】
係止部52には、軸体30を係止保持するための爪部57が複数形成されている。爪部57は、ハウジング本体部45の軸方向から見て、中心軸を通る所定の仮想線を基準として少なくとも一側とその反対側とに1つずつ位置するように配置されている。好ましくは、爪部57は、ハウジング本体部45の周方向に等配または略等配されている。爪部57は、複数であれば2つ以上の任意の個数が設定されていてよいが、本実施の形態では、ハウジング本体部45の中心軸を基準として互いに反対側に位置する2つが設定されている。したがって、本実施の形態の爪部57は、ハウジング本体部45の径方向に互いに対向している。図示される例では、爪部57の位置は、係止部51及び圧接部54の位置に対応していて、係止部51及び圧接部54の背面側にある。爪部57は、ハウジング本体部45の軸方向の一端部である背面側の端部からそれぞれ突出している。
【0037】
爪部57の先端部は、ハウジング本体部45の中央部に向かう鉤爪状に形成され、軸体30の鍔部36を係止する。すなわち、爪部57は、係止部52と連なる脚部60と、脚部60の先端部からハウジング本体部45の中央部に向かって突出する係合爪61と、を一体的に有する。
【0038】
脚部60は、係止部52の外縁部近傍に基端部が連なっている。また、脚部60は、基端部から先端部に向かい、係止部52の外縁部に対して、ハウジング本体部45の径方向外方に傾斜している。脚部60は、ハウジング本体部45または係止部52の周方向に幅を有し、厚み方向であるハウジング本体部45の径方向の長さが小さい、板状に形成されている。図示される例では、脚部60つまり爪部57の幅寸法は、係止部51の幅寸法と略等しい。また、脚部60の基端部近傍には、係合爪61の成形用の開口部63が脚部60を厚み方向に貫通して形成されている。脚部60は、振動抑制装置25を取付部24に取り付けた状態で、ボス芯金部16の背面側に突設された対向部62に対向し、外方への開脚が規制される。
【0039】
係合爪61は、脚部60よりも幅寸法が小さく形成され、脚部60の幅の中央部に位置している。係合爪61は、ハウジング本体部45の軸方向から見て、穴部46よりも外方にあり、穴部46の外縁に近接して位置する。係合爪61は、穴部46側、つまりハウジング本体部45の中央部側の面が、脚部60の基端部寄りの端部からその反対側の端部へと、徐々に拡開するように傾斜した傾斜面61aとなっている。本実施の形態では、係合爪61は、ハウジング本体部45の穴部46に対し背後側から挿通される軸体30の鍔部36に対して背面側に係合される。
【0040】
本実施の形態では、係止部52と鍔部36との間に、擦れ防止部材65が介在される。図示される例では、擦れ防止部材65は、例えば不織布により円環状に形成され、テープなどの貼着部材66により鍔部36に貼着されている。
【0041】
各爪部57は、係止部52に形成された空間部68,68の間に設定される。つまり、爪部57の両側に、空間部68が形成されている。空間部68,68間において、係止部52の一部が、爪部57の基端部と連なる切片状の土台部69として機能する。土台部69は、係止部52と同一または略同一の厚みであり、本実施の形態において、脚部60の基端部つまり爪部57の基端部の厚みt1よりも、この爪部57の基端部つまり脚部60と連なるハウジング本体部45の土台部69の厚みt2が大きく設定されている。
【0042】
空間部68は、係止部52の外面から穴部46に向かい、つまりハウジング本体部45の内方に向かい、延びている。空間部68は、先端部が筒部50の外周面近傍まで延びている。空間部68は、係止部52の外縁部に形成された切欠部の内部に構成される凹空間である。空間部68は、爪部57側である土台部69の側部を形成する壁部である第一側壁部71と、爪部57とは反対側の側部を形成する壁部である第二側壁部72と、これら第一側壁部71と第二側壁部72とを連ねる先端壁部73と、により囲まれ、係止部52の外縁部側が開口されている。
【0043】
第一側壁部71と第二側壁部72とは、互いに平行または略平行でもよいし、互いに傾斜していてもよい。本実施の形態において、第一側壁部71は、ハウジング本体部45の径方向に対して傾斜する方向に沿っており、第二側壁部72は、ハウジング本体部45の径方向に略沿っている。すなわち、第一側壁部71と第二側壁部72とは、互いに傾斜して配置されている。図示される例では、第一側壁部71は、爪部57において脚部60からの係合爪61の突出方向に対し平行又は略平行となっている。また、爪部57の両側に位置して土台部69の両側を構成する第一側壁部71,71は、互いに平行または略平行となっている。そのため、土台部69は、ハウジング本体部45の軸方向から見て、略四角形状に区画されている。
【0044】
第二側壁部72は、ハウジング本体部45の外縁部である係止部52の外縁部からハウジング本体部45の穴部46側つまり内方に向かって、第一側壁部71に対し徐々に接近するように傾斜している。そのため、空間部68が、穴部46に向かい徐々に幅狭となるように、略V字状に形成されている。
【0045】
先端壁部73は、円弧状に形成され、第一側壁部71と第二側壁部72とを滑らかに連結している。
【0046】
本実施の形態において、係止部52には、爪部57の他に、規制部75が形成されている。規制部75は、爪部57間に保持される軸体30の鍔部36の位置を規制する部分である。規制部75は、係止部52に対し、爪部57と同様に、ハウジング本体部45の軸方向の一端部である背面側の端部からそれぞれ突出している。図示される例では、規制部75は、係止部52の外縁部において、ハウジング本体部45の周方向に沿うリブ状に形成されている。規制部75は、ハウジング本体部45の周方向において、爪部57間に設定されている。すなわち、規制部75は、土台部69の外部に位置する。本実施の形態では、ハウジング本体部45の軸方向から見て、爪部57,57が対向する方向と直交または略直交する方向に対向して、2つの規制部75が形成されている。例えば、規制部75の係止部52からの突出高さは、係止部52から爪部57の係合爪61までの高さ以上となっている。
【0047】
図2及び
図3に示すブッシュ42は、ハウジング41へのインシュレータ43の取付座である。ブッシュ42は、例えば合成樹脂により形成されている。ブッシュ42は、筒状、例えば円筒状のブッシュ本体部77と、ブッシュ本体部77の端部に突出するフランジ部78と、を有する。ブッシュ本体部77は、ハウジング本体部45の穴部46に対しハウジング本体部45の軸方向の他端部である前端部側から挿入される。フランジ部78は、ブッシュ本体部77の全周に亘り連なっている。フランジ部78は、ブッシュ本体部77が穴部46に挿入された状態でハウジング本体部45の筒部50または係止部51に重ねられる。
【0048】
インシュレータ43は、弾性体31の端部を直接受ける部材であるとともに、軸体30の軸可動を補助する部材である。インシュレータ43は、例えば合成樹脂により形成されている。インシュレータ43は、筒状、例えば円筒状のインシュレータ本体部80と、インシュレータ本体部80の端部に突出する弾性体受け部81と、を有する。インシュレータ本体部80は、ブッシュ42のブッシュ本体部77に対し前端部側すなわちハウジング41とは反対側から挿入される。弾性体受け部81は、インシュレータ本体部80からフランジ状に突出する。弾性体受け部81は、インシュレータ本体部80の全周に亘り連なっている。弾性体受け部81には、弾性体31の端部が嵌着される溝部81aが形成されている。溝部81aの内部には、弾性体31の端部を保持する保持部81bが形成されている。弾性体受け部81は、インシュレータ本体部80がブッシュ42のブッシュ本体部77に挿入された状態でフランジ部78に重ねられる。
【0049】
第二保持部33は、カラーなどとも呼ばれる。第二保持部33は、モジュール3(
図5)の取付部に一体的に固定されることで、ステアリングホイール本体部2(
図5)とモジュール3(
図5)との相対的な位置を設定する。第二保持部33は、例えば合成樹脂により形成されている。第二保持部33は、筒状、例えば円筒状に形成されている。第二保持部33の一端部である後端部には、弾性体31の他端部に内挿される内挿部83が形成されている。また、第二保持部33の他端部である前端部には、第二保持部33をモジュール3(
図5)の取付部に対して嵌着するための嵌着部84が形成されている。本実施の形態において、嵌着部84は、第二保持部33の周方向に複数形成されたリブである。嵌着部84は、基端部から先端部へと、第二保持部33の中心軸に接近するように傾斜している。そのため、第二保持部33は、外周が基端部から先端部へと徐々に縮径されている。また、嵌着部84間には、第二保持部33に挿通された軸体30の凹部38または緩衝部材39に当接して径方向位置を規制する規制リブ85がそれぞれ形成されている。規制リブ85は、先端部が鉤爪状に突出する爪状に形成されており、基端部を起点として径方向に弾性変形可能となっている。
【0050】
そして、振動抑制装置25を組み立てる際には、まず、予め形成されたハウジング41のハウジング本体部45の穴部46にブッシュ42のブッシュ本体部77を挿入するとともに、ブッシュ本体部77にインシュレータ43のインシュレータ本体部80を挿入し、ハウジング41、ブッシュ42、及び、インシュレータ43を軸方向に重ねて、第一保持部32を構成する。
【0051】
次いで、擦れ防止部材65を貼着部材66により予め鍔部36に貼着した軸体30の軸体本体部35を、第一保持部32に対して、ハウジング41の背面側から、縮径部37側をハウジング本体部45の穴部46に挿入しつつ、軸体30を押し込んでいく。
【0052】
このとき、
図1(c)に示すように、軸体30の鍔部36がハウジング41の爪部57の係合爪61の傾斜面61aに当接する。この状態から、軸体30をさらに押し込むと、鍔部36が係合爪61を押し広げていくにしたがい、爪部57が、土台部69の両側の空間部68,68の先端部間の位置、例えば筒部50近傍の位置を起点Aとして回動するように外方に開脚する。そこで、鍔部36が係合爪61の傾斜面61aに沿ってガイドされ、係合爪61を超えた位置で、爪部57が、起点Aから復帰回動して閉脚することで、係合爪61が鍔部36の背面側に係合され、軸体30を押さえつける。この結果、軸体30が第一保持部32に保持される。
【0053】
次いで、
図2及び
図3に示すインシュレータ43から突出する軸体30の軸体本体部35を挿入するように弾性体31に取り付け、その弾性体31の一端部を第一保持部32のインシュレータ43の弾性体支持部81の溝部81aに挿入して保持部81bを内周側に圧接することで弾性体31の一端部を第一保持部32に保持する。さらに、軸体30の軸体本体部35に対し、第二保持部33を圧入する。
【0054】
このとき、軸体30の縮径部37が第二保持部33の規制リブ85の先端部に当接する。この状態から第二保持部33をさらに押し込むことで、軸体30の縮径部37が規制リブ85を徐々に押し広げていくにしたがい、規制リブ85が基端部を起点として外方に開脚する。そして、縮径部37が規制リブ85の先端部を超えた位置で、規制リブ85が起点から復帰回動して閉脚することで、規制リブ85が凹部38の位置に嵌合する。そして、第二保持部33は、弾性体31の他端部に対し、内挿部83を挿入することで、弾性体31に嵌着する。
【0055】
このように組み立てた振動抑制装置25は、ステアリングホイール本体部2の芯金10の取付部24に背面側から挿入して取り付ける。このとき、第二保持部33、弾性体31、軸体30の軸体本体部35、第一保持部32のブッシュ42及びインシュレータ43は、取付部24から芯金10の前面側に突出し、ハウジング41が取付部24に嵌着される。ハウジング41は、取付部24に圧入することで、ハウジング本体部45の係止部51が芯金10の前面に強干渉し、係止部52が芯金10の背面に強干渉し、かつ、圧接部54が取付部24の内面に圧接されることで、取付部24に強固に嵌着保持される。
【0056】
そして、モジュール3を、ステアリングホイール本体部2に取り付ける際には、振動抑制装置25の第二保持部33に対して、モジュール3の取付部を位置合わせし、正面側から押し込むと、第二保持部33の嵌着部84が取付部に挿入される。この状態から、モジュール3をさらに押し込むと、第二保持部33から相対的に突出した軸体30の縮径部37の背面が、モジュール3の取付部に配置された係合部材に係合されることで、モジュール3がステアリングホイール本体部2の芯金10に対し、ワンタッチで取り付けられる。この状態で、軸体30が、係合部材によって正面方向へと確実に抜け止めされ、モジュール3がステアリングホイール本体部2から不意に外れることが防止される。また、弾性体31は、モジュール3を弾性的に支持する。
【0057】
そこで、振動抑制装置25が、軸体30を可動軸とするダンパとして作用することで、モジュール3がダンパマスとして作用し、ステアリングホイール1の走行時の振動を抑制する。すなわち、ステアリングホイール1に対して、軸体30の軸方向と交差(直交)する方向の振動が入力されると、弾性体31が径方向に弾性変形することにより、モジュール3が低い共振周波数で軸方向と交差(直交)する方向に振動する。また、ステアリングホイール1に対して軸体30の軸方向の振動が入力されると、弾性体31が軸方向に弾性変形することにより、モジュール3が低い共振周波数で軸方向に振動する。したがって、これら互いに直交する方向への振動に対して、モジュール3がそれぞれ共振してダイナミックダンパのダンパマスとして機能し、ステアリングホイール1の振動、すなわち、このステアリングホイール1を把持する運転者の手の振動を抑制して、この振動に起因する不快感を抑制する。
【0058】
上述したように、一実施の形態によれば、ハウジング41のハウジング本体部45に軸体30の鍔部36を係止する複数の爪部57を設定し、それら爪部57の両側に、ハウジング本体部45の外面から穴部46に向かう空間部68を設定しているため、鍔部36を係止する際に複数の爪部57が開脚されるときに、その開脚の起点Aが爪部57の基端部と連なるハウジング本体部45の空間部68,68間に設定される。そのため、従来例の爪部のように、脚部60の基端部つまり係止部52と連なる位置を起点A1として開脚する構成と比較して、爪部57自体の断面積や表面積などの形状が爪部57の開脚動作に影響しにくく、かつ、起点Aから爪部57の先端部の係合爪61までの距離を大きくし、爪部57を大きく動作させることができて、爪部57の開脚性を向上でき、軸体30をハウジング41に取り付けやすくなる。
【0059】
また、仮にハウジング41の材料剛性を向上させたとしても、あるいは、爪部57の係合爪61の脚部60からの突出量、つまり鍔部36に対する掛かり量を大きくしても、爪部57の開脚性が良好であるため、取り付け作業性を低下させることがないとともに、ハウジング41の強度を確保し、かつ、軸体30をハウジング41に強固に保持できる。
【0060】
また、脚部60の基端部に連なり脚部60よりも厚肉の土台部69に起点Aを有して開脚するため、爪部57の開脚性をより向上できる。
【0061】
さらに、爪部57の両側に位置する空間部68の爪部57側を構成する第一側壁部71同士が略平行であるため、軸体30の鍔部36を押し込んだ際に爪部57に対して荷重を均等に掛けることができるので、爪部57の開脚性をより向上できる。
【0062】
このように、ハウジング41に強度の高い材料を使用する必要がなくなり、開脚性が向上したので、振動抑制装置25の組み付け作業性の向上を図ることができる。
【0063】
さらに、従来の起点A1の場合、爪部に加わる荷重の逃げ場が表面積の狭い爪部の基端部に集中しており、爪部の開脚性が良好でないのに対し、本実施の形態では、面積が広いハウジング本体部45の穴部46(筒部50)近傍に起点Aが設定されるため、荷重が分散されやすくなり、爪部57の開脚性の向上が見込める。
【0064】
そして、振動抑制装置25は、ステアリングホイール本体部2に対してモジュール3を弾性的に支持するので、例えば走行時などのステアリングホイール1の振動を抑制できる。
【0065】
なお、一実施の形態において、空間部68は、凹状であればよく、例えば略U字状、略凹字状などに形成されていてもよい。
【0066】
また、空間部68は、爪部57の両側から穴部46に向かって形成されていれば、必ずしもハウジング本体部45の筒部50近傍まで設ける必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば自動車などの車両のステアリングホイールの走行時の振動を抑制するために好適に用いられる。
【符号の説明】
【0068】
2 第一部材であるハンドル本体部としてのステアリングホイール本体部
3 第二部材であるモジュール
25 振動抑制装置
30 軸体
35 軸体本体部
36 平部である鍔部
41 ハウジング
45 ハウジング本体部
46 穴部
57 爪部
68 空間部
71 壁部である第一側壁部