(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124160
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】静電塗装ガン
(51)【国際特許分類】
B05B 5/025 20060101AFI20240905BHJP
B05B 5/16 20060101ALI20240905BHJP
B05B 7/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
B05B5/025 B
B05B5/16
B05B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032141
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】小田 真也
【テーマコード(参考)】
4F033
4F034
【Fターム(参考)】
4F033NA01
4F033QA01
4F033QB02Y
4F033QB05
4F033QB12Y
4F033QB18
4F033QC08
4F033QD02
4F033QD08
4F033QD11
4F033QE05
4F033QE14
4F033QH02
4F033QH20
4F034AA01
4F034BA07
4F034BA12
4F034BA14
4F034BB13
4F034BB15
4F034BB28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガン先から粉体塗料を周方向に粗密なく均一に分散させながら噴射することができる静電塗装ガンを提供する。
【解決手段】ガン本体に、搬送エアと共に粉体塗料が通過する塗料通路を備え、この塗料通路の先端に粉体塗料の吐出口9aを有する静電塗装ガンにおいて、吐出口9aに、粉体塗料が旋回しながら通過するねじり孔9fを有するノズル部材7を装着したことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガン本体に、搬送エアと共に粉体塗料が通過する塗料通路を備え、この塗料通路の先端に粉体塗料の吐出口を有する静電塗装ガンにおいて、前記吐出口に、粉体塗料が旋回しながら通過するねじり孔を有するノズル部材を装着したことを特徴とする静電塗装ガン。
【請求項2】
前記ノズル部材は、絶縁性樹脂によって形成され、内周面に塗料通路と同径のノズル内通路を有する後方ノズルと、この後方ノズル筒の前方端に装着される前方ノズル筒とからなり、前記前方ノズル筒は、内周面の中央部に、塗料通路と同径の吐出口を有し、この吐出口の前方に、吐出口の内径よりも大径の空間部を形成し、この空間部の前方を先端壁によって閉塞し、この先端壁の周囲に、前記空間部と前方ノズル筒の外部とを繋ぐねじり孔を均等に複数設け、前記ねじり孔は、前方ノズル筒の中心軸に対して螺旋を描くように先端壁の後面から前面に向かってねじられ、前方ノズル筒の吐出口から空間部に流入した粉体塗料が、ねじり孔を通過することにより、分散されながら旋回流になってねじり孔から噴射されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の静電塗装ガン。
【請求項3】
前記先端壁の後面に、前記ねじり孔を有する周辺部から中心部に向かって次第に突出する山形の突出部を形成し、この山形の突出部によって前方ノズル筒の吐出口から空間部に流入した粉体塗料を、周辺のねじり孔に導入するようにしたことを特徴とする請求項2記載の静電塗装ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体塗料を被塗物に噴射する静電塗装ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装装置は、
図9に示すように、塗料タンク20内の粉体塗料Aを、圧縮エアが投入されるインジェクタ21によって吸い込み、塗料ホース22を経由して、インジェクタ21に投入された圧縮エアを搬送エアにして静電塗装ガン23まで搬送し、静電塗装ガン23から粉体塗料Aを被塗物Bに噴射して静電気力によって粉体塗料Aを被塗物Bに付着させる装置である。
【0003】
従来、この種の静電塗装装置に使用する静電塗装ガン23として、
図10に示すように、ガン本体24のガン先にラッパ形状の反射板25を取付け、ガン本体24に設けた塗料通路26を搬送エアと共に通過する粉体塗料を、反射板25によって円形に広げて噴射するようにしたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガン先にラッパ形状の反射板25を取付ける従来の静電塗装ガン23では、ガン先の吐出口の中心にコロナ放電電極27があり、このコロナ放電電極27を、塗料通路26の内周面に電極ホルダー28を介して保持している。
【0006】
したがって、塗料通路26内に配置された電極ホルダー28の向きによって、ガン先の反射板25に粉体塗料が均一に衝突しない。
【0007】
特に、直径の大きな反射板25をガン先に取付けた場合、円形に広がる吐出パターンに粗密ができて、吐出パターンが円形に広がらずに歪な楕円形になり、完全な円形分布の吐出パターンを得ることができなかった。
【0008】
吐出パターンが完全な円形分布でないと、被塗物に粉体塗料が均等に当たらないため、静電塗装ガンを切り返し、あるいは重ね塗りをして塗装を行う場合、均一な膜厚分布で塗装することが難しい。
【0009】
そこで、この発明は、ガン先から粉体塗料を粗密なく均一に分散させながら噴射することができる静電塗装ガンを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、この発明は、ガン本体に、搬搬送エアと共に粉体塗料が通過する塗料通路を備え、この塗料通路の先端に粉体塗料の吐出口を有する静電塗装ガンにおいて、前記吐出口に、粉体塗料が旋回しながら通過するねじり孔を有するノズル部材を装着したことを特徴とする。
【0011】
前記ノズル部材は、絶縁性樹脂によって形成され、内周面に塗料通路と同径のノズル内通路を有する後方ノズルと、この後方ノズル筒の前方端に装着される前方ノズル筒とからなり、前記前方ノズル筒は、内周面の中央部に、塗料通路と同径の吐出口を有し、この吐出口の前方に、吐出口の内径よりも大径の空間部を形成し、この空間部9dの前方を先端壁によって閉塞し、この先端壁の周囲に、前記空間部と前方ノズル筒の外部とを繋ぐねじり孔を均等に複数設け、前記ねじり孔は、前方ノズル筒の中心軸に対して螺旋を描くように先端壁の後面から前面に向かってねじられ、前方ノズル筒の吐出口から空間部に流入した粉体塗料が、ねじり孔を通過することにより、分散されながら旋回流になってねじり孔から噴射されるようにしている。
【0012】
また、前記先端壁の後面に、前記ねじり孔を有する周辺部から中心部に向かって次第に突出する山形の突出部を形成し、この山形の突出部によって前方ノズル筒の吐出口から空間部に流入した粉体塗料を、周辺のねじり孔に導入するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る静電塗装ガンによれば、吐出口からノズル部材に流入した粉体塗料を、ねじり孔を通過させることにより、分散されながら粗密なく旋回流として噴射されるため、静電塗装ガンを切り返し、あるいは重ね塗りをして塗装を行う場合に、均一な膜厚分布で塗装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に係る静電塗装ガンの実施形態の縦断側面図である。
【
図2】
図1の静電塗装ガンのガン先に組込まれたノズル部材を回転させた縦断側面図である。
【
図4】
図1の静電塗装ガンのガン先に組込まれたノズル部材の斜視図である。
【
図7】
図3のA―A線で切断した縦断側面図である。
【
図8】
図3のB―B線で切断した縦断側面図である。
【
図10】従来の静電塗装ガンのガン先部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明に係る静電塗装ガン1の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び
図2は、この発明に係る静電塗装ガン1の全体を示す断面図であり、
図2は、ガン先のノズル部材7を軸心を中心にして回転させた断面図である。
【0017】
静電塗装ガン1は、ガン本体2の軸心に沿って塗料通路3を有し、高電圧発生器4を内蔵している。
【0018】
塗料通路3は、後端に塗料導入口5を有し、この塗料導入口5に塗料ホースが接続され、塗料タンクから搬送エアによって粉体塗料が塗料通路3に供給される。
【0019】
ガン本体2の前端には、ノズルキャップ6が着脱可能に取付けられ、このノズルキャップ6の内周に、ノズル部材7を収容している。
【0020】
ノズル部材7は、
図4~
図8に示すように、絶縁性樹脂によって形成され、内周面に塗料通路3と同径のノズル内通路8aを有する後方ノズル筒8と、この後方ノズル筒8の前方端に装着される前方ノズル筒9とからなる。
【0021】
後方ノズル筒8は、後方端に塗料通路3に接続される接続筒部8bを有し、外周面の後端側にノズルキャップ6の内周面に保持されるフランジ部8cを形成している。また、後方ノズル筒8の前端外周には、前方ノズル筒9の後端部に差し込む小径の差し込み部8dを形成している。
【0022】
前方ノズル筒9は、内周面の中央部に、塗料通路3と同径の吐出口9aを形成し、この吐出口9aの後方に、後方ノズル筒8の差し込み部8dを差し込む凹部9bを形成している。また、前方ノズル筒9の外周面の後端には、ノズルキャップ6の内周面に保持されるフランジ部9cを形成している。
【0023】
前方ノズル筒9の吐出口9aの前方には、吐出口9aの内径よりも大径の空間部9dが形成され、この空間部9dの前方は先端壁9eによって閉塞されている。この先端壁9eの周囲には、空間部9dと前方ノズル筒9の外部とを繋ぐねじり孔9fが均等に複数設けられている。ねじり孔9fは、前方ノズル筒9の中心軸に対して螺旋を描くように先端壁9eの後面から前面に向かってねじられ、前方ノズル筒9の吐出口9aから空間部9dに流入した粉体塗料が、ねじり孔9fを通過することにより、分散されながら旋回流になってねじり孔9fから噴射される。
【0024】
前記先端壁9eの後面は、前記ねじり孔9fを有する周辺部から中心部に向かって次第に突出する山形の突出部9gに形成され、この山形の突出部9gによって前方ノズル筒9の吐出口9aから空間部9dに流入した粉体塗料が、先端壁9eの後面の周辺部に導かれて、周辺のねじり孔9fに導入される。
【0025】
ガン本体2に内蔵された高電圧発生器4からの高電圧が負荷される放電電極10は、後方ノズル筒8と前方ノズル筒9を貫通して、前方ノズル筒9の先端壁9eの中心から前方に突出している。
【0026】
以上のように、この発明に係る静電塗装ガン1によれば、前方ノズル筒9の吐出口9aから空間部9dに流入した粉体塗料を、ねじり孔9fを通過させることにより、分散されながら粗密なく旋回流として噴射されるため、被塗物を均一な膜厚分布で塗装することができる。
【0027】
この発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0028】
1 静電塗装ガン
2 ガン本体
3 塗料通路
4 高電圧発生器
5 塗料導入口
6 ノズルキャップ
7 ノズル部材
8 後方ノズル筒
8a ノズル内通路
8b 接続筒部
8c フランジ部
8d 差し込み部
9 前方ノズル筒
9a 吐出口
9b 凹部
9c フランジ部
9d 空間部
9e 先端壁
9f ねじり孔
9g 突出部
10 放電電極