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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124161
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】止水材
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/23 20060101AFI20240905BHJP
   F16J 15/14 20060101ALI20240905BHJP
   E06B 5/00 20060101ALN20240905BHJP
【FI】
E06B7/23 Z
F16J15/14 Z
F16J15/14 B
F16J15/14 D
E06B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032142
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA03
2E036CA06
2E036DA02
2E036DA12
2E036EB02
2E036EC04
2E036GA02
2E036HB08
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水性に優れた止水材を提供する。
【解決手段】構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水材であって、水分を含むことによって膨潤する膨潤層と、前記装置の外縁に装着される支持部材と、を有し、前記膨潤層は下記式(1)を満たすことを特徴とする止水材。
B/A≧2.0 ・・・(1)
[式中、Aは前記膨潤層の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは前記膨潤層を水に10分間浸漬したときの前記膨潤層の厚み(mm)を示す。]
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水材であって、
水分を含むことによって膨潤する膨潤層と、
前記装置の外縁に装着される支持部材と、を有し、
前記膨潤層は下記式(1)を満たすことを特徴とする止水材。
B/A≧2.0 ・・・(1)
[式中、Aは前記膨潤層の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは前記膨潤層を水に10分間浸漬したときの前記膨潤層の厚み(mm)を示す。]
【請求項2】
前記膨潤層は下記式(2)を満たす請求項1に記載の止水材。
B-A≧2mm ・・・(2)
[式中、Aは前記膨潤層の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは前記膨潤層を水に10分間浸漬したときの前記膨潤層の厚み(mm)を示す。]
【請求項3】
前記膨潤層の乾燥状態での幅(mm)は、10mm以上である請求項1に記載の止水材。
【請求項4】
更に、前記支持部材と前記膨潤層の間に弾性層を有する請求項1に記載の止水材。
【請求項5】
水に10分間浸漬したときの前記膨潤層と前記弾性層の厚みの合計は、13mm以上である請求項4に記載の止水材。
【請求項6】
前記膨潤層は、ポリアクリル酸含有ポリマーを含む繊維を有する請求項1に記載の止水材。
【請求項7】
前記開閉装置は、扉を有している請求項1~6のいずれかに記載の止水材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水材に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、建物の内外を仕切るシャッター等を有する装置が広く用いられている。例えば、特許文献1には、建物開口の少なくとも下部で屋外側と屋内側とを隔てるように、上方を向きかつ前記建物開口の幅方向に延びた設置面上に設置される止水板と、前記止水板の下面に設けられ、前記止水板と前記設置面との間をシールするシール部材と、前記設置面に設けられ、前記止水板の少なくとも前記幅方向の中央部における屋内側の第一側面と面し、当該第一側面との当接によって前記止水板の屋内側への移動を制限するストッパ部と、を備えた、止水装置が開示されている。更に特許文献1には、止水板とシャッターカーテンとが一体となったものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-172815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような従来の止水装置では、降雨や氾濫水等に起因する建物内への浸水をある程度、防止することができるが、近年では、更なる建物等の内部への浸水の防止が求められている。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水性に優れた止水材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施の形態に係る止水材は下記[1]の通りである。
[1]構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水材であって、
水分を含むことによって膨潤する膨潤層と、
前記装置の外縁に装着される支持部材と、を有し、
前記膨潤層は下記式(1)を満たすことを特徴とする止水材。
B/A≧2.0 ・・・(1)
[式中、Aは前記膨潤層の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは前記膨潤層を水に10分間浸漬したときの前記膨潤層の厚み(mm)を示す。]
【0006】
開閉装置の外縁に上記止水材を装着することにより、開閉装置の外縁と地面や床面等との隙間に水が浸入しても、膨潤層が厚み方向に膨潤して隙間を埋めることができるため、構造物内への浸水を防止することができる。実施の形態に係る止水材は、以下の[2]~[7]のいずれかであることが好ましい。
[2]前記膨潤層は下記式(2)を満たす[1]に記載の止水材。
B-A≧2mm ・・・(2)
[式中、Aは前記膨潤層の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは前記膨潤層を水に10分間浸漬したときの前記膨潤層の厚み(mm)を示す。]
[3]前記膨潤層の乾燥状態での幅(mm)は、10mm以上である[1]または[2]に記載の止水材。
[4]更に、前記支持部材と前記膨潤層の間に弾性層を有する[1]~[3]のいずれかに記載の止水材。
[5]水に10分間浸漬したときの前記膨潤層と前記弾性層の厚みの合計は、13mm以上である[4]に記載の止水材。
[6]前記膨潤層は、ポリアクリル酸含有ポリマーを含む繊維を有する[1]~[5]のいずれかに記載の止水材。
[7]前記開閉装置は、扉を有している[1]~[6]のいずれかに記載の止水材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上記構成により、構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水性に優れた止水材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施の形態に係る止水材の斜視図である。
図2図2は、図1の複数の止水材を開閉装置の外縁に装着したときの止水材と開閉装置の概略図である。
図3図3は、第2の実施の形態に係る止水材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態に係る止水材は、構造物の内外を仕切る開閉装置に装着される止水材であって、水分を含むことによって膨潤する膨潤層と、装置の外縁に装着される支持部材と、を有し、膨潤層は下記式(1)を満たす。
B/A≧2.0 ・・・(1)
[式中、Aは膨潤層の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは膨潤層を水に10分間浸漬したときの膨潤層の厚み(mm)を示す。]
【0010】
例えばシャッター等の開閉装置を用いて建物内への浸水を防止する場合、地面、床面等には凹凸が存在するため、閉鎖時にシャッターの外縁を地面、床面等に密接に接触させても隙間が生じることが多かった。実施の形態に係る止水材によれば、シャッター等の開閉装置の外縁に装着されることにより、上記隙間に水が浸入しても膨潤層が厚み方向に膨潤して隙間を埋めることができるため、建物内への浸水を防止することができる。建物以外の構造物においても同様に浸水を防止することができる。
【0011】
以下では図1図2を参照しながら、第1の実施の形態に係る止水材について詳述する。図1は、第1の実施の形態に係る止水材の斜視図である。図2は、図1の複数の止水材を開閉装置の外縁に装着したときの止水材と開閉装置の概略図である。図1のLは長さ方向、Wは幅方向、Tは厚み方向を示している。
【0012】
図1に示す通り、第1の実施の形態に係る止水材11は、膨潤層1と支持部材2を有している。更に止水材11は、構造物の内外を仕切る開閉装置20の外縁20eに装着されるものである。
【0013】
膨潤層1は、水分を含むことによって膨潤する層である。膨潤層1が水分により膨潤することにより、地面、床面、壁等の凹凸を埋めることができる。更に、膨潤層1は下記式(1)を満たすものである。
B/A≧2.0 ・・・(1)
[式中、Aは膨潤層1の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは膨潤層1を水に10分間浸漬したときの膨潤層1の厚み(mm)を示す。]
【0014】
式(1)のように、水分の付与により膨潤層1の厚みが2.0倍以上大きくなることにより、地面、床面、壁等の凹凸に起因する小さな隙間を埋め易くすることができる。B/Aの値は、好ましくは2.1以上、より好ましくは2.2以上、更に好ましくは2.3以上である。一方、B/Aの値は、10.0以下であってもよく、7.0以下であってもよく、5.0以下であってもよく、4.0以下であってもよい。
【0015】
式(1)の左辺は、膨潤層1の5点以上の点の各点におけるB/Aの値の平均値であることが好ましい。一方、膨潤層1の乾燥状態における形状が、直方体形状等の厚みが均一である場合には、後述する実施例のように、乾燥状態での膨潤層1の5点以上の点の平均厚みを式(1)のAとし、且つ水に10分間浸漬したときの膨潤層1の上記5点以上の点の平均厚みを式(1)のBとして、B/Aの値を求めて、その値を式(1)の左辺の値としてもよい。
【0016】
Aの膨潤層1の乾燥状態の厚みは、例えば、温度20℃~25℃、相対湿度50%~65%の環境下で厚みを測定すればよい。一方、Bの膨潤層1の厚みは、例えば、乾燥状態の膨潤層1を水に10分間浸漬し、膨潤層1を水中から取り出して、温度20℃~25℃、相対湿度50%~65%の環境下で1分静置後に厚みを測定すればよい。この際、膨潤層1が支持部材2より上側に位置するように膨潤層1を上側に向けて静置するものとする。なお膨潤層1の幅についても同様に測定すればよい。
【0017】
膨潤層1の乾燥状態での厚み(mm)は、2mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましく、6mm以上であることが更に好ましい。これにより、一層、地面、床面、壁等の凹凸に起因する小さな隙間を埋め易くすることができる。一方、当該厚みは、30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよく、15mm以下であってもよい。
【0018】
膨潤層1は下記式(2)を満たすことが好ましい。
B-A≧2mm ・・・(2)
[式中、Aは膨潤層1の乾燥状態での厚み(mm)を示し、Bは膨潤層1を水に10分間浸漬したときの膨潤層1の厚み(mm)を示す。]
【0019】
式(2)のように、水分の付与により膨潤層1の厚みが大きくなることにより、一層、地面、床面、壁等の凹凸に起因する小さな隙間を埋め易くすることができる。B-Aの値は、より好ましくは4mm以上、更に好ましくは6mm以上である。一方、B-Aの値は、30mm以下であってもよく、20mm以下であってもよく、10mm以下であってもよい。
【0020】
膨潤層1の乾燥状態での幅(mm)は、10mm以上であることが好ましい。これにより、一層、小さな隙間を埋め易くすることができる。当該幅は、より好ましくは16mm以上、更に好ましくは18mm以上である。一方、当該幅は、50mm以下であってもよく、40mm以下であってもよく、30mm以下であってもよい。
【0021】
膨潤層1は、不織布を有していることが好ましい。不織布は、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、またはこれらの積層体であることが好ましく、ニードルパンチ不織布、スパンボンド不織布、またはこれらの積層体であることがより好ましい。スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布によれば、水分により膨潤し易くなる。またスパンボンド不織布によれば、強度が向上する。ニードルパンチ不織布は、ウェブを突起のついた針を突き刺して繊維同士を機械的に絡ませることにより形成することができる。スパンレース不織布は、ウェブ内の繊維を高圧水流により交絡させることにより形成することができる。スパンボンド不織布は、長繊維により形成したウェブを、シート状に結合させることにより形成することができる。また、不織布の積層体を形成する場合には、例えばニードルを用いて各不織布を接合することが好ましい。膨潤層1は、不織布の他に、編布、織布等を有していてもよい。
【0022】
膨潤層1は、繊維を有していることが好ましい。膨潤層1が繊維を含むことにより、柔軟性が向上すると共に全体的に膨潤し易くなる。
【0023】
膨潤層1は、ポリアクリル酸含有ポリマーを含む繊維を有することが好ましい。ポリアクリル酸含有ポリマーとしては、-[CH-CH(COH)]-で示されるアクリル酸単位、および/または-[CH-CH(COX)]-で示されるアクリル酸塩単位を有するポリマーが好ましく、少なくとも-[CH-CH(COX)]-で示されるアクリル酸塩単位を有するポリマーがより好ましい。これにより吸水性が向上する。上記Xは、Cu、Zn、Al、Ag、Fe、Mn、Co、Ni等の金属元素、Li、Na、K等のアルカリ金属元素、Be、Mg、Ca、Ba等のアルカリ土類金属元素、NH4 、陽性のアミン等の有機系陽イオン等が好ましく挙げられる。このうち金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素がより好ましく、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素が更に好ましい。これらは1種または2種以上含まれていてもよい。
【0024】
ポリアクリル酸含有ポリマーは、好ましくは、アクリル繊維のニトリル基を加水分解してカルボキシル基を導入することにより得ることができる。更に、導入されたカルボキシル基の少なくとも一部を塩型とすることがより好ましい。更に、ポリアクリル酸含有ポリマーは、加水分解によるイミン結合の形成による架橋、ヒドラジン処理による架橋等の架橋処理により、架橋構造が導入されていることが更に好ましい。これにより繊維は膨潤し易くなる。ポリアクリル酸含有ポリマーを含む繊維としては、例えば日本エクスラン社製のランシール(登録商標)が好ましい。ランシールは膨潤性に優れ、多少の圧力を加えても離水せず形状を保つことができる。更にランシールは、カード工程やニードルパンチやウォーターパンチ加工により層状に加工し易いため好ましい。その他に、ポリアクリル酸含有ポリマーを含む繊維は、帝人フロンティア製のベルオアシス(登録商標)等であってもよい。
【0025】
膨潤層1に含まれる繊維は、芯部分と鞘部分を有していることが好ましい。鞘部分は、架橋構造を有するポリアクリル酸含有ポリマーを含んでいることが好ましい。これにより繊維は表面で吸水して膨潤し易くなる。芯部分と鞘部分の質量の合計を100質量%としたとき、鞘部分の質量は、25質量%以上、45質量%以下であることが好ましい。芯部分はアクリル樹脂を含んでいることが好ましい。これにより強度が向上する。このような繊維として日本エクスラン社製のランシールが挙げられる。
【0026】
膨潤層1は、膨潤層1を100質量%としたとき、ポリアクリル酸含有ポリマーを30質量%以上の割合で含むことが好ましく、50質量%以上の割合で含むことがより好ましく、70質量%以上の割合で含むことが更に好ましい。一方、当該割合は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。これにより、後述する補強繊維等を膨潤層1に含有させることができる。
【0027】
膨潤層1は、ポリアクリル酸含有ポリマー含有繊維を含む膨潤性不織布を有していることが好ましい。膨潤層1は、更に、補強用不織布を有していることが好ましい。補強用不織布に含まれる補強繊維として、ナイロン6等を含むポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸等を含むポリエステル繊維等が挙げられる。これらの繊維は1種類のみ用いてもよく、2種以上併用して用いてもよい。補強用不織布は、ポリアクリル酸含有ポリマー含有繊維を含んでいないことが好ましい。補強用不織布は、膨潤性不織布の上下に積層されていることが好ましい。これにより、膨潤性不織布を補強することができる。
【0028】
膨潤層1に含まれる繊維の水への浸漬後の膨潤倍率は5倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましい。これにより膨潤層1は膨潤し易くなる。膨潤倍率は50倍以下であってもよく、40倍以下であってもよく、30倍以下であってもよい。当該膨潤倍率は、例えば以下の方法により測定することができる。まず繊維を絶乾し、プレパラート上に固定して、キーエンス社製のマイクロスコープ顕微鏡(DIGITAL MICROSCOPE VHXー5000)にて繊維直径を測定し、その幅をF1(μm)とする。更に繊維を水中に2時間浸漬した後、表面水をふき取って、同様に実体顕微鏡を用い繊維直径を測定し、その幅をF2(μm)とする。次いで、F2/F1の値を算出して、これを膨潤倍率とする。
【0029】
膨潤層1の形状は、シート状であることが好ましい。また膨潤層1の形状は、直方体であることが好ましい。これにより、膨潤層1と地面等との接触面積を向上させることができる。また膨潤層1と他の層とを積層し易くすることもできる。図1に示す通り、膨潤層1は、長さ方向Lに延在していることが好ましい。膨潤層1の乾燥状態での長さ方向Lの長さは、5cm以上であることが好ましく、10cm以上であることがより好ましく、20cm以上であることが更に好ましい。これにより止水し易くなる。一方、当該長さは、100cm以下であることが好ましく、50cm以下であることがより好ましい。これにより、止水材11を開閉装置20の外縁20eに装着し易くなる。
【0030】
膨潤層1の乾燥状態における目付は、好ましくは400g/m以上、10000g/m以下、より好ましくは500g/m以上、5000g/m以下、更に好ましくは1000g/m以上、3000g/m以下である。
【0031】
図1に示す通り、膨潤層1の厚み方向Tの一方側の面と他方側の面のうち一方側の面は、直接または間接に支持部材2に固定されていることが好ましい。膨潤層1の厚み方向Tの一方側の面と他方側の面のうち他方側の面は、他の層が積層されておらず、露出していることが好ましい。当該他方側の面は、平面であることが好ましいが、凸部、凹部、または凸部と凹部を有していてもよい。
【0032】
図示していないが、膨潤層1は、接合層を介して支持部材2に固定されていることが好ましい。これにより、容易に膨潤層1が支持部材2に固定される。接合層としては、両面テープ、着脱式テープ、接着剤層、またはこれらの積層体が好ましい。一方、膨潤層1の厚み方向Tの一方側の面に凸部または凹部を形成して、支持部材2の膨潤層1と対向する面に凹部または凸部を形成して、これらを嵌合させることにより、膨潤層1を支持部材2に固定してもよい。また熱圧着により膨潤層1を支持部材2に固定してもよい。
【0033】
支持部材2は、開閉装置20の外縁20eに装着されて、当該外縁20eを支持するものである。支持部材2を介して、膨潤層1を開閉装置20に装着させることができる。
【0034】
支持部材2は、成形体を有していることが好ましい。成形体として例えばクリップ、板等が挙げられる。成形体は、樹脂、金属、またはこれらの混合物を含んでいることが好ましく、樹脂を含んでいることがより好ましく、樹脂からなることが更に好ましい。成形体は例えば、射出成形、押出成形により形成することができる。樹脂として、アクリルニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、またはこれらの混合物が好ましい。樹脂として、特に入手のしやすさや、耐衝撃性、耐候性に優れるためポリプロピレンがより好ましい。
【0035】
支持部材2は、クリップ、板、マグネット、またはこれらの組み合わせを含んでいることが好ましく、クリップを含んでいることがより好ましい。支持部材2がクリップである場合、図1に示す通り、支持部材2は、第1の板状部2aと、第1の板状部2aに対向する第2の板状部2bと、第1の板状部2aと第2の板状部2bとを連結する連結部2cとを有していることが好ましい。このような構成により、第1の板状部2aと第2の板状部2bとの間に、開閉装置20の外縁20eを嵌合させることができる。図1に示す通り、第1の板状部2aは第2の板状部2bとは反対側に屈曲している屈曲部2abを有していてもよい。これにより第1の板状部2aを鉛直方向Vに動かし易くなる。支持部材2に含まれる板としては樹脂板が好ましい。支持部材2に含まれるマグネットとしては、シート状のマグネットシートが好ましい。開閉装置20が金属製のシャッターを有する場合には、マグネットの磁力により支持部材2をシャッターの外縁20eに装着することができる。
【0036】
支持部材2は、開閉装置20の外縁20eから取外し可能なものであることが好ましい。これにより止水材11は交換し易いものとなる。支持部材2は、接合層を介して開閉装置20の外縁20eに装着されてもよい。接合層として、両面テープ、着脱式テープ、接着剤層、またはこれらの積層体が好ましい。また支持部材2は、開閉装置20の下縁に装着されるものであることが好ましい。これにより膨潤層1の膨潤性が発揮され易くなる。
【0037】
止水材11は、1つのみ開閉装置20に装着されもよいが、図2に示すように、2つ以上、開閉装置20に装着されることが好ましい。これにより止水性を一層、向上することができる。図2に示すように、止水材11は、開閉装置20の外縁20eの構造物内側と構造物外側の両方に装着されることが好ましい。
【0038】
開閉装置20は、構造物の内外を仕切ることができ、少なくとも一部を開閉することができるものである。開閉装置20は、扉21を有していることが好ましい。扉21として、例えばシャッター、建物の点検口の扉、家屋で用いられる扉、車両で用いられる扉、家具に用いられる扉等が好ましく、シャッターがより好ましい。図2に示す通り、扉21はT字部を有していることが好ましい。これにより止水材11を開閉装置20に装着し易くなる。シャッターとして、例えば巻き上げ式のシャッター、オーバースライダー式のシャッター、横引き式のシャッターが挙げられる。開閉装置20は、扉21を移動させるための移動機構を有していてもよい。移動機構は、電動式の移動機構であってもよく、手動式の移動機構であってもよい。
【0039】
開閉装置20が内外を仕切る構造物としては、例えば建物、車両、筐体等が挙げられる。車両として、例えば自動車、屋台、電車等が挙げられる。筐体として、例えば家具、保管箱等が挙げられる。
【0040】
以下では図3を参照しながら、第2の実施の形態に係る止水材について詳述する。第2の実施の形態に係る止水材の斜視図である。第2の実施の形態に係る止水材のうち、第1の実施の形態に係る止水材と重複する部分の詳細な説明は省略する。
【0041】
図3に示す通り、第2の実施の形態に係る止水材12は、膨潤層1と支持部材2を有している。止水材12は、更に、支持部材2と膨潤層1の間に弾性層3を有することが好ましい。弾性層3は、弾性を有する層である。弾性層3によれば、開閉装置20の外縁20eの湾曲や、地盤の歪み等に起因する大きな隙間を埋め易くすることができるため、弾性層3により止水性が更に向上する。
【0042】
弾性層3は弾性樹脂を含んでいることが好ましい。弾性樹脂として、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレンー酢酸ビニル共重合体(PVA)、またはこれらの混合物が好ましく、エチレンプロピレンジエンゴムがより好ましい。エチレンプロピレンジエンゴムは高い耐候性と耐薬品性を持ち、また加工性に優れるため、より好ましい。また弾性層3は弾性樹脂からなることがより好ましい。
【0043】
弾性層3の厚みは、5mm以上であることが好ましく、7mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることが更に好ましい。これにより、施工時や使用時に発生する地面、床面等と、止水材12との位置ずれを防止し易くなると共に、隙間を埋め易くすることができる。一方、当該厚みは、30mm以下であってもよく、25mm以下であってもよく、20mm以下であってもよい。
【0044】
弾性層3は、長さ方向Lに延在していることが好ましい。弾性層3の長さ方向Lの長さは、5cm以上であることが好ましく、10cm以上であることがより好ましく、20cm以上であることが更に好ましい。これにより止水し易くなる。一方、当該長さは、100cm以下であることが好ましく、50cm以下であることがより好ましい。これにより、止水材11を開閉装置20の外縁20eに装着し易くなる。
【0045】
弾性層3の形状は、シート状であることが好ましい。また弾性層3の形状は、直方体であることが好ましい。これにより、弾性層3を膨潤層1に積層し易くすることができる。
【0046】
弾性層3は、膨潤層1と支持部材2の間に配置されていることが好ましい。具体的には、弾性層3の厚み方向Tの一方側の面と他方側の面のうち一方側の面は、接合層を介して膨潤層1に固定されていることが好ましい。更に、弾性層3の厚み方向Tの一方側の面と他方側の面のうち他方側の面は、接合層を介して支持部材2に固定されていることが好ましい。これにより、容易に弾性層3が膨潤層1と支持部材2に固定される。接合層としては、両面テープ、着脱式テープ、接着剤層、またはこれらの積層体が好ましい。一方、弾性層3の厚み方向Tの一方側の面と他方側の面のうちの両面に凸部または凹部を形成して、膨潤層1と支持部材2に凹部または凸部を形成して、これらを嵌合させることにより、弾性層3を膨潤層1と支持部材2に固定してもよく、熱圧着により弾性層3を膨潤層1と支持部材2に固定してもよい。
【0047】
水に10分間浸漬したときの膨潤層1と弾性層3の厚みの合計は、13mm以上であることが好ましい。これにより、一層、小さな隙間と大きな隙間とを埋め易くすることができる。当該厚みの合計は、より好ましくは19mm以上、更に好ましくは22mm以上である。当該厚みの合計は、50mm以下であってもよく、40mm以下であってもよく、30mm以下であってもよい。
【0048】
弾性層3は水分により膨潤しない方が好ましいが、膨潤してもよい。この場合、例えば、弾性層3の乾燥状態での厚み(mm)をC1とし、弾性層3を水に10分間浸漬したときの弾性層3の厚み(mm)をC2としたとき、C2/C1の値は、2.0未満であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。一方、C2/C1の値は、1.0であることが好ましいが、1.1以上であってもよい。
【実施例0049】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0050】
〈層の厚み、幅の測定〉
各層の厚みと幅は、JIS1級 シンワ測定株式会社製のピックアップスケール(品番13134)を用いて、1mm単位で測定した。各層の厚みと幅は、各層の長さ方向の両端の2か所と、長さ方向に4分割したときの1/4位置、2/4位置、3/4位置の計5か所を測定し平均の数値を求めた。膨潤後の膨潤層の厚み、幅については、止水材全体を室温の水に沈め、10分経過したのち引き上げて、膨潤層を上にして1分経過放置後に測定した。
【0051】
〈止水性の測定〉
幅15cm、長さ15cm、厚み1cmの樹脂板の中心部に電動リューターを用いて、幅6mm、長さ15cm、深さ1.5mmの溝を、樹脂板の幅方向の中心部に2.5cm間隔で、樹脂板の長さ方向に延在するように3本刻んで、評価用の床とした。次いで、内寸が幅15cm、長さ30cm、高さ15cmの水槽を用意し、評価用の床の長さ方向と水槽の長さ方向とが一致する向きに評価用の床を向けて、水槽の底面の中心部に、溝が上側に露出するようにして評価用の床を配置した。次に、模擬シャッターの下端部に図2に示すように止水材を2つ嵌合させて、評価用の床の表面に止水材の最下層が接触するようにして、模擬シャッターを降ろした。このとき、評価用の床の溝の長さ方向と、止水材の長さ方向とが垂直になるようにし、更に、各溝の長さ方向における中心部を止水材が横断するように配置した。これにより、水槽内に模擬シャッターと止水材により区画された2つの領域を形成した。次に、止水材の長さ方向の端部と水槽の内側面との間から試験水が漏れないようにシリコンシーランドを使用して隙間を埋めた。シリコンシーラントの乾燥後、水槽内の2つの領域のうち一方の領域に室温の水2250mlを入れた。試験水を供給してから5分後の一方の領域における水深を測定することにより、一方の領域から他方の領域に漏れた水の量(cc)を計算した。計算式は以下の通りである。
E(cc)=150×150×(a1―a2)÷1000
a1:初期の貯水槽側の液面高さ=100mm
a2:5分後の貯水槽側の液面高さ(mm)
【0052】
更に、下記の基準に基づいてそれぞれの止水材の止水性について判定した。
E≧801 :×
800≧E≧201 :△
200≧E :〇
【0053】
実施例1
弾性層として、トラスコ社製のEPDMゴム(高性能スキマテープシャッター用 TSKM-3531、厚み10mm、素材:エチレンプロピレンジエンゴム)を長さ30cm、幅2cmとしたものを準備した。膨潤層として、日本エクスラン社製のエクスランテープ FKL2B(目付:440g/m、ランシール混率100%、厚み2mm)を3分枚重ね、ニードルを用いて不織布同士を接合して、厚み6mmとしたものを準備した。上記エクスランテープ FKL2Bは、日本エクスラン株式会社製のランシール原綿(品番:FK-5.6T51D)を用いてニードルパンチ加工にて目付400g/mの不織布を作製し、当該不織布の上面と下面のそれぞれに、東洋紡株式会社製の目付20g/mのポリエチレンテレフタレート製のスパンボンド不織布(品番3201A)を重ね合わせて、ニードルパンチにてこれら3層を一体化することにより作製したものである。更に、支持部材として、ハッポー化学工業製のポリプロピレン成型品(長さ30cm、幅25mm)を準備した。
【0054】
次いで、3M社製のScotch超強力両面テープ(PREMIER GOLD)を用いて、弾性層の一方側の主面に膨潤層を接着した。更に、同じ両面テープを用いて、弾性層の他方側の主面に支持部材を接着し、止水材を得た。
【0055】
実施例2
膨潤層として、エクスランテープ FKL2Bを2枚重ねとしたこと以外は実施例1と同様にして止水材を得た。
【0056】
実施例3
弾性層をカットして厚み5mmにしたこと以外は実施例2と同様にして止水材を得た。
【0057】
実施例4
膨潤層として、エクスランテープ FKL2Bを1枚のみ用いたこと、支持部材として、PET板とマグネットテープとを積層した複合体を用いたこと以外は実施例1と同様にして止水材を得た。複合体は、厚み3mmのタキロンシーアイ製のPET板(ぺテック)を、長さ30cm、幅20mmにカットし、これを同じ長さ、同じ幅にカットしたE-Value製の接着面を有するマグネットテープ EMT-150TMに接着することにより得た。
【0058】
実施例5
膨潤層として、エクスランテープ FKL2Bを1枚のみ用いたこと、弾性層として、厚み10mmのイノアック社製のCRゴムスポ C430510を用いたこと以外は実施例3と同様にして止水材を得た。
【0059】
実施例6
支持部材として、PET板と超強力両面テープとを積層した複合体を用いたこと、弾性層として、イノアック社製の厚み10mmのNRゴムスポ N148-10を用いたこと以外は実施例1と同様にして止水材を得た。上記複合体は、厚み3mmのタキロンシーアイ製のPET板(ぺテック)を、長さ30cm、幅20mmにカットし、これを同じ長さ、同じ幅にカットした3M社製のScotch超強力両面テープ(PREMIER GOLD)に接着することにより得た。
【0060】
実施例7
膨潤層として、日本エクスラン社製のエクスランテープ FKL2Bを4分枚重ね、ニードルを用いて不織布同士を接合し、厚み8mmとしたこと、弾性層は用いなかったこと以外は実施例1と同様にして止水材を得た。
【0061】
実施例8
膨潤層および弾性層の幅を15mmとしたこと以外は実施例5と同様にして止水材を得た。
【0062】
実施例9
膨潤層および弾性層の幅を10mmとしたこと以外は実施例5と同様にして止水材を得た。
【0063】
比較例1
膨潤層を用いなかったこと、弾性層の厚みを15mmとしたこと以外は実施例1と同様にして止水材を得た。
【0064】
比較例2
膨潤層として、日本エクスラン社製のエクスランテープ NPG-15020(目付:150g/m、ランシール混率20%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして止水材を得た。上記エクスランテープ NPG-15020は、日本エクスラン株式会社製のランシール原綿(品番FS2.6T50)20質量%、アクリル原綿(品番K909-2.4T51)80質量%を用いて150g/mの不織布を作製し、当該不織布の上面と下面のそれぞれに目付20g/mのポリエチレンテレフタレート製のスパンボンド不織布を重ね合わせて、ニードルパンチにて一体化することにより作製したものである。
【0065】
比較例3
膨潤層の代わりに、東洋紡製のスパンボンド3851N(目付:85g/m:素材 ポリエチレンテレフタレート)を重ねて6mm厚みにしたものを用いたこと以外は実施例1と同様にして止水材を得た。これらの止水材を用いて上記測定、評価を行った。表1にこれらの結果を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示す通り、実施例1~9の止水材の膨潤層は式(1)を満たすものであり、いずれも良好な止水性を示した。一方、比較例1~3の止水材は、膨潤層が式(1)を満たさないか、または膨潤層を有していないものであり、止水性に劣っていた。
【符号の説明】
【0068】
1 膨潤層
2 支持部材
3 弾性層
11、12 止水材
20 開閉装置
20e 外縁
図1
図2
図3