(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124165
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】不焼成塩基性れんがの製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/047 20060101AFI20240905BHJP
C04B 35/42 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C04B35/047
C04B35/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032149
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 公一
(57)【要約】
【課題】混練後の経時変化が小さく、使用中の低融物や6価クロムの生成を抑制することができる不焼成塩基性れんがの製造方法を提供する。
【解決手段】粒径1mm未満のマグクロ及び粒径1mm未満のマグネシアのうち少なくとも一種を合計で10質量%以上60質量%以下、硫酸マグネシウム類及び塩化マグネシウム類のうち少なくとも一種を合計で0.5質量%以上10質量%以下含有する耐火原料配合物に、有機溶媒を添加して混練し、混練物を加圧成形する工程を含む、不焼成塩基性れんがの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径1mm未満のマグクロ及び粒径1mm未満のマグネシアのうち少なくとも一種を合計で10質量%以上60質量%以下、硫酸マグネシウム類及び塩化マグネシウム類のうち少なくとも一種を合計で0.5質量%以上10質量%以下含有する耐火原料配合物に、有機溶媒を添加して混練し、混練物を加圧成形する工程を含む、不焼成塩基性れんがの製造方法。
【請求項2】
耐火原料配合物の残部に、粒径1mm以上のマグクロ及び粒径1mm以上のマグネシアのうち少なくとも一種を含む、請求項1に記載の不焼成塩基性れんがの製造方法。
【請求項3】
耐火原料配合物の残部に、クロム鉱及び酸化クロムのうち少なくとも一種を更に含む、請求項2に記載の不焼成塩基性れんがの製造方法。
【請求項4】
有機溶媒として、フェノール樹脂が溶解した有機溶媒を使用する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の不焼成塩基性れんがの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼分野において溶融金属容器や二次精錬炉に使用される、不焼成マグクロれんがや不焼成マグネシアれんがなどの不焼成塩基性れんがに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばRH、DH、CASなど円筒状の精錬容器を溶鋼中に浸漬し、溶鋼の脱ガス、脱炭、脱硫などを行う、いわゆる二次精錬処理において、これらの精錬容器は高温下で容器内を環流する溶鋼により侵食されるため、内張り耐火物の損傷が大きくなる。そのため、高温での耐摩耗性に優れたマグクロれんがが内張り耐火物として広く使用されている。また、これらの容器のパーマれんがとしてはマグネシアれんがが一般的に使用されている。しかし、マグクロれんがやマグネシアれんがは製造時に高温での焼成が必要で多量の燃料を必要とするなど環境負荷が大きいため、地球環境保護の観点からこれらのれんがの不焼成化が求められている。
【0003】
従来、不焼成マグクロれんがとして、塩化マグネシウムあるいは硫酸マグネシウムを主成分とする水溶液を結合剤としたマグネシアセメント結合れんがが知られている。しかし、マグネシアセメントを構成するマグネシウムオキシクロライド結合あるいはマグネシウムオキシサルフェート結合は、れんがの坏土の混練中から生成し始めるため、坏土の可塑性を付与する自由水が減少してゆき、数時間後には成形が不能となる。また、成形が可能であったとしても坏土の可塑性が低下するため、混練直後に得た成形体と混練数時間後に得た成形体とでは密度に大きなばらつきが生じ、製品の品質、実機での使用成績とも安定したものが得られないという問題があった。
【0004】
一方、特許文献1には、不焼成マグネシア-カーボン質耐火物において、苦汁あるいは硫酸マグネシウム水溶液の少なくともいずれかを、水溶性フェノール樹脂と併用した耐火物が開示されている。しかし、特許文献1の製造方法においても、溶媒に水を使用するため上述のマグネシアセメントの例と同様に、坏土の経時変化が問題となり製品の品質、実機での使用成績とも安定したものが得られないという問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、マグネシア質原料とクロミア質原料を含む耐火組成物100重量部にアルミン酸ソーダを0.5~3.5重量部配合し、混練後、加圧成形し、100~500℃で乾燥する不焼成マグクロれんがの製造法が開示されている。しかし、アルミン酸ソーダ中のNaは使用中に他の成分と反応して低融物を生成するため耐食性低下の原因になる問題、及びマグクロれんがにおいてはれんが中のクロム成分と反応して6価クロムを生成する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-163059号公報
【特許文献2】特開平11-157917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、混練後の経時変化が小さく、使用中の低融物や6価クロムの生成を抑制することができる、不焼成塩基性れんがの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によれば、次の不焼成塩基性れんがの製造方法が提供される。
粒径1mm未満のマグクロ及び粒径1mm未満のマグネシアのうち少なくとも一種を合計で10質量%以上60質量%以下、硫酸マグネシウム類及び塩化マグネシウム類のうち少なくとも一種を合計で0.5質量%以上10質量%以下含有する耐火原料配合物に、有機溶媒を添加して混練し、混練物を加圧成形する工程を含む、不焼成塩基性れんがの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、混練後の経時変化が小さくなるため坏土を数日間保管することができ、その結果、製造能率が向上する、また、安定した密度の成形体が得られるため製品の品質のバラツキが小さくなる。更に、本発明の製造方法で得られた不焼成塩基性れんが中には、Na等の低融物の生成の原因となる成分が含まれていないため耐食性の低下がなく、しかも使用中に6価クロムを生成する可能性も小さくなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
従来、マグネシアセメント結合れんがは、水を加えることで坏土の可塑性を得ていたが、上述の通り坏土の経時変化が大きいという問題があった。そこで本発明者らは、有機溶媒を用いることで、マグネシアセメント結合の生成に伴う坏土の経時変化を抑制することができることを知見した。
すなわち、本発明において硫酸マグネシウム類及び塩化マグネシウム類は、自身が含有する水分あるいは有機溶媒やフェノール樹脂が熱分解する際に生成する水分と、耐火原料配合物中のマグクロ粒子やマグネシア粒子の表面から溶出するマグネシウムイオンとによって生成する水酸化マグネシウムからマグネシアセメントが形成され、常温から中間温度域における結合組織が得られる。また、硫酸マグネシウム類及び塩化マグネシウム類は、シリカ(SiO2)や酸化ホウ素(B2O3)などの成分を含まないために低融物を生成せず耐食性に優れ、しかも強酸と弱塩基の塩でありCaOやアルカリなどの強塩基を含まないため6価クロムの生成が抑制される。
【0011】
そして本発明では、上述の結合組織を得るために必要なマグネシウムイオンの溶出を十分なものとするために、マグクロ及びマグネシアの比表面積を十分に大きくすることし、具体的には粒径1mm未満の粒度として、耐火原料配合物中に合計で10質量%以上含有させるようにしている。粒径1mm未満のマグクロ及びマグネシアの合計含有率が10質量%未満ではマグネシアセメントの生成が不十分で低強度となり、60質量%を超えると微粉が多くなりすぎて成形時の充填性が低下するため気孔率が上昇し、耐食性が低下する。
【0012】
また本発明では、硫酸マグネシウム類及び塩化マグネシウム類の耐火原料配合物中の合計含有率を0.5質量%以上10質量%以下としている。この合計含有率が0.5質量%未満ではマグネシアセメントの生成が不十分で低強度となり、10質量%を超えると熱間での硫酸マグネシウム類、塩化マグネシウム類の分解(それぞれ三酸化硫黄(SO3)、塩化水素(HCl)ガスを放出しながらマグネシアを生成)に伴う組織劣化が顕著となり、耐食性が低下する。
【0013】
本発明で使用する硫酸マグネシウム類は、一般的には硫酸マグネシウム7水和物として市販されているものを使用することができるが、これ以外に1水和物、6水和物、12水和物等の水和物、あるいは無水物を使用することもできる。すなわち、本発明において硫酸マグネシウム類とは、硫酸マグネシウムの無水物と水和物の総称である。また、本発明において硫酸マグネシウム類の含有率は、各種硫酸マグネシウム類を、Mgを基準として硫酸マグネシウム7水和物に換算したものとする。硫酸マグネシウム7水和物が最も広く市販されているからである。
【0014】
また、本発明で使用する塩化マグネシウム類は、一般的には塩化マグネシウム6水和物として市販されているものを使用することができるが、これ以外に塩基性塩化マグネシウム(Mg(OH)Cl)等を使用することもできる。すなわち、本発明において塩化マグネシウム類とは、マグネシウムイオンと塩化物イオンを含む塩の総称である。また、本発明において塩化マグネシウム類の含有率は、各種塩化マグネシウム類を、Mgを基準として塩化マグネシウム6水和物に換算したものとする。塩化マグネシウム6水和物が最も広く市販されているからである。
【0015】
本発明の塩基性れんがの製造方法では、従来の焼成マグクロれんが及び焼成マグネシアれんがの耐火原料配合物において、粒径1mm未満のマグクロ及び粒径1mm未満のマグネシアのうち少なくとも一種の合計含有率を10質量%以上60質量%以下、硫酸マグネシウム類及び塩化マグネシウム類のうち少なくとも一種の合計含有率を0.5質量%以上10質量%以下とすることが特徴である。すなわち、これらの耐火原料以外の残部の耐火原料は、従来の耐火原料配合物と同様のものを使用することができる。例えば、不焼成マグネシアれんがとする場合、耐火原料配合物の残部は粒径1mm以上のマグネシアとすることができる。また不焼成マグクロれんがとする場合、耐火原料配合物の残部は粒径1mm以上のマグクロ及び粒径1mm以上のマグネシアのうち少なくとも一種を含むものとすることができ、また、クロム源としてクロム鉱及び酸化クロムのうち少なくとも一種を更に含むものとすることができる。なお、不焼成マグクロれんがの場合の耐火原料配合物において、粒径1mm以上のマグクロ及び粒径1mm以上のマグネシアの合計含有率は10質量%以上60質量%以下とすることができる。
【0016】
ここで、本発明でいう粒径とは、耐火原料粒子を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒径1mm未満のマグネシアとは、篩い目が1mmの篩いを通過するマグネシアのことで、粒径1mm以上のマグネシアとは、篩い目が1mmの篩い目を通過しないマグネシアのことである。
【0017】
本発明で使用するマグクロは、マグネシアとクロム鉱等とをアーク炉で溶融して得られる合成原料であり、電融マグクロクリンカー、電融マグネシア・クロム、溶融マグクロなどとも称されており、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用できる。
また、本発明で使用するマグネシアも、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用することができ、例えば電融マグネシア、焼結マグネシア等である。
また上述の通り、マグクロれんがのクロム源としてクロム鉱及び酸化クロムのうち少なくとも一種を使用することができ、この場合、クロム鉱の含有率は40質量%以下、酸化クロムの含有率は10質量%以下とすることができる。クロム鉱としては、天然に産出するクロム鉱を使用することができる。
【0018】
本発明の塩基性れんがの製造方法では、上述の耐火原料配合物に対して有機溶媒を適量添加して混練する。また、常温での強度をより向上したい場合には他のバインダーと併用することができ、例えばフェノール樹脂と併用することができる。すなわち、有機溶媒としては、フェノール樹脂が溶解した有機溶媒を使用することができる。有機溶媒の添加率は混練後に加圧成形に適した坏土になるよう適宜決定すればよく、例えば耐火原料配合物100質量%に対して0.5質量%以上5質量%以下とすることができる。
有機溶媒としては、特に制限はないが、沸点が低すぎると坏土の保管中に揮発し坏土が固くなるため、坏土の保管期間が長い場合には沸点が120℃以上の有機溶媒を使用することができる。具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレンリコール、テトラエチレングリコール、フルフラール、グリセリン、ポリグリセリン、ジグリセリン、n-デカノール、第二ウンデシルアルコール、第二テトラデシルアルコール、第二ヘプタデシルアルコール、ブチレングリコール、2-メチル-2、4-ペンタジオール、ヘキサンジオール-2、5、ヘプタンジオール-2、4、ジプロピレングリコール、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジエチルフタレート、ジヘプチルフタレート、プロピレンカーボネートなどである。
ここで、エチレングリコールなど水が溶解しやすい有機溶媒においては、不純物として水が混入する場合がある。水が混入すると坏土の可使時間が短くなるので水は基本的には少ないほどよいが、有機溶媒中の水の含有率が20質量%以下であれば製造現場の作業能率や製品品質への影響は許容範囲である。
【0019】
混練後、混練物である坏土をオイルプレスやフリクションプレスなどで加圧成形する。加圧成形後、余剰の有機溶媒を除去し製品の強度を向上させるために、適用した有機溶媒の沸点、蒸気圧に応じて30℃以上500℃以下で熱処理を行うこともできる。
【実施例0020】
表1及び表2に、本発明の実施例及び比較例における耐火原料配合物の組成、及び得られたれんがの評価結果を示す。
【0021】
【0022】
【0023】
マグネシアとしてはMgO純度が98質量%の電融マグネシアを、マグクロとしてはMgOが70質量%、Cr2O3が18質量%の電融マグネシア・クロムを、クロム鉱としてはCr2O3が52質量%、Fe2O3が16質量%、MgOが15質量%、Al2O3が11質量%のものを使用した。硫酸マグネシウム類としては硫酸マグネシウム7水和物、塩化マグネシウム類としては塩化マグネシウム6水和物を使用した。有機溶媒としては、フェノール樹脂が溶解したエチレングリコール(有機溶媒A)、エチレングリコール(有機溶媒B)、又はジエチレングリコール(有機溶媒C)を使用した。有機溶媒の添加率は表1及び表2に示した通りである。
【0024】
焼成れんがである比較例11及び比較例12以外について、耐火原料配合物に溶媒を添加して混練し、オイルプレスによって230mm×114mm×100mmの形状に成形後、250℃で5時間保持の熱処理を施すことで不焼成塩基性れんがを製造した。これらのれんがから物性測定用試料を切り出して600℃での熱間曲げ強さを測定すると共に耐食性試験を行った。また混練後の混練物である坏土について可使時間を測定した。可使時間は、坏土を2.5時間おきに手で直接握り、経時変化によって塊状の形状を保持できなくなった時間とした。
600℃での熱間曲げ強さの測定はJIS R2656に準拠し、大気雰囲気下で行った。
耐食性は回転侵食試験にて評価した。回転侵食試験では、水平の回転軸を有するドラム内面を供試れんがでライニングし、スラグを投入、加熱して、れんが表面を侵食させた。加熱源は酸素-プロパンバーナー、試験温度は1700℃、スラグ組成はCaO:30質量%、SiO2:30質量%、Al2O3:20質量%、FeO+Fe2O3:20質量%とし、スラグの排出、投入を30分毎に10回繰り返した。試験終了後、各れんがの最大溶損部において試験前後の厚さの差異(mm)から侵食量(mm)を求めた。そして表1に記載の「比較例1」のれんがの侵食量(mm)を100とする溶損指数を求めた。この溶損指数は数値が小さいものほど耐食性が優れていることを示す。
【0025】
実施例1から実施例3は、硫酸マグネシウム類の含有率が異なる場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。これに対して比較例1は、硫酸マグネシウム類の含有率が本発明の下限値を下回っており、低強度となり耐食性も不十分であった。また比較例2は、硫酸マグネシウムの含有率が本発明の上限値を上回っており、耐食性が低下した。
実施例4及び実施例5は、塩化マグネシウム類の含有率が異なる場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。これに対して比較例3は、塩化マグネシウム類の含有率が本発明の下限値を下回っており、低強度となり耐食性も不十分であった。また比較例4は、塩化マグネシウム類の含有率が本発明の上限値を上回っており、耐食性が低下した。
実施例6及び実施例7は、硫酸マグネシウム類と塩化マグネシウム類を併用した場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。
【0026】
実施例8から実施例11は、粒径1mm未満のマグネシアの含有率が異なる場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。これに対して比較例5は、粒径1mm未満のマグネシアの含有率が本発明の下限値を下回る場合であり、低強度となり耐食性も不十分であった。また比較例6は、粒径1mm未満のマグネシアの含有率が本発明の上限値を上回る場合であり、耐食性が不十分となった。
【0027】
実施例12から実施例14は、粒径1mm未満のマグクロの含有率が異なる場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。これに対して比較例8は、粒径1mm未満のマグクロの含有率が本発明の下限値を下回る場合であり、低強度となり耐食性も不十分であった。また比較例9は、粒径1mm未満のマグクロの含有率が本発明の上限値を上回る場合であり、耐食性が不十分となった。
実施例15は、粒径1mm未満のマグネシアと粒径1mm未満のマグクロを併用した場合であり、本発明の範囲内であり良好な結果となった。
【0028】
実施例16から実施例18は、有機溶媒の種類が異なる場合であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。また実施例19は、有機溶媒に水分が混入した場合を想定したものであるが、水分0.5質量%(有機溶媒中の水分は20質量%)であれば特性値に与える影響は軽微であり、問題とはならない。これに対して比較例10は、溶媒として水を使用した場合であり混練後の坏土の可使時間が5時間(0.2日)と短くなった。表2に示した比較例10のれんがの評価結果は可使時間以内で成形した試料で得られた結果であり、実際の工業的生産では安定した品質の製品が得られないことが予想される結果であった。
【0029】
実施例20は不焼成マグネシアれんがの場合であり、直接溶鋼やスラグと直接接することがほとんどないパーマれんが用に想定されたものである。他の不焼成マグクロれんがと耐食性について比較することができないため、耐食性試験は行っていないが、曲げ強さの結果から実炉で十分使用可能な範囲であると判断された。
【0030】
最後に、焼成マグクロれんが(1800℃焼成品)との比較を比較例11及び比較例12に示す。焼成マグクロれんがではセラミックス結合が形成されているため、600℃の曲げ強さは本発明の実施例より高いが、耐食性は類似した配合内容である実施例2、実施例14とほぼ同等である。この結果から本発明の実施例の不焼成塩基性れんがは、実機での使用成績も従来の焼成れんがと同等程度の結果が得られることが期待される。