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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124179
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/02 20090101AFI20240905BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240905BHJP
   H04W 72/542 20230101ALI20240905BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W72/0453
H04W72/542
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032172
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】松本 翔
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 陽一
(72)【発明者】
【氏名】本多 由宇人
(72)【発明者】
【氏名】中島 肇
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE61
5K067JJ11
5K067JJ21
(57)【要約】
【課題】通信品質が不良で、使用不可とした通信チャネルの通信品質が改善されたことを高精度に判定すること。
【解決手段】マスタ装置20は、スレーブ装置30から受信した信号の通信品質を示す特性データ(RSSIやPERなど)を検出する。マスタ装置20は、検出した特性データに基づき、通信品質の低下が判定された通信チャネルを、マスタ装置20とスレーブ装置30との無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除する。マスタ装置20は、削除済みの通信チャネルの近傍の通信チャネルの特性データに基づいて、削除済みの通信チャネルの、無線通信に使用する複数の通信チャネルへの復帰の可否を判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信チャネルから順次に選択される1つの前記通信チャネルを介して、マスタ装置(20)とスレーブ装置(30)との間で無線通信を実行する無線通信システムであって、
前記通信チャネル毎に、実行された前記無線通信の通信品質を示す特性データを検出する検出部(S60)と、
前記検出部によって検出された前記特性データに基づき通信品質の低下が判定された前記通信チャネルを、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルから削除する削除部(S70)と、
前記削除部によって削除済みの前記通信チャネルと周波数が近い近傍の前記通信チャネルの前記特性データに基づいて、削除済みの前記通信チャネルの、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰の可否を判定する判定部(S80)と、を備える無線通信システム。
【請求項2】
前記判定部は、前記マスタ装置と前記スレーブ装置との間で前記通信チャネルを介して前記無線通信が行われると、前記無線通信に使用された前記通信チャネルに隣接する前記通信チャネルが前記削除部によって削除済みである場合に、その削除済みの前記通信チャネルに関して、復帰の可否を判定する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記削除部により、前記特性データに基づき、前記無線通信に使用された前記通信チャネルの通信品質の低下が判定されて、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルから削除された場合、前記無線通信に使用された前記通信チャネルに隣接する前記通信チャネルの復帰の可否の判定を実施しない、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合と、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する一方の側の前記通信チャネルのみが前記無線通信に使用可能である場合とで異なる判定基準に従って、削除済みの前記通信チャネルに関して、復帰の可否を判定する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、両側の前記通信チャネルの前記特性データが第1の復帰閾値を満たすことをもって、削除済みの前記通信チャネルは、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰可と判定し、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する一方の側の前記通信チャネルのみが前記無線通信に使用可能である場合、一方の側の前記通信チャネルの特性データが、前記第1の復帰閾値よりも高い通信品質を示す第2の復帰閾値を満たすことをもって、削除済みの前記通信チャネルは、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰可と判定する、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能であることに加え、削除済みの前記通信チャネルとは逆側で、両側の前記通信チャネルにそれぞれ隣接する前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、前記第1の復帰閾値を、前記第1の復帰閾値よりも低い通信品質を示す第3の復帰閾値に変更する、請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する一方の側の前記通信チャネルのみが前記無線通信に使用可能であることに加え、削除済みの前記通信チャネルとは逆側で、削除済みの前記通信チャネルの両側の前記通信チャネルにそれぞれ隣接する前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、前記第2の復帰閾値を、前記第2の復帰閾値よりも低い通信品質を示す第4の復帰閾値に変更する、請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能であることをもって、削除済みの前記通信チャネルは、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰可と判定する、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記複数の通信チャネルは、前記マスタ装置と前記スレーブ装置との間で通信接続を確立する接続確立処理に用いる複数の通信チャネルを含む第1のチャネル群と、前記マスタ装置と前記スレーブ装置との間でデータ通信を行う通信処理に用いる複数の通信チャネルを含む第2のチャネル群とを有し、
前記削除部が前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルから削除する前記通信チャネルは、前記第2のチャネル群に含まれる前記通信チャネルである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記無線通信は、パケット通信であり、
前記特性データは、前記パケット通信における、受信信号強度、信号雑音比/信号干渉雑音比、パケットエラーレート、パケットアライバルレート、及びビットエラーレートの少なくとも1つである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記マスタ装置と前記スレーブ装置との少なくとも一方は移動体に搭載される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記移動体は、車両である、請求項11に記載の無線通信システム。
【請求項13】
複数の通信チャネルから順次に選択される1つの前記通信チャネルを介して、マスタ装置(20)とスレーブ装置(30)との間で無線通信を実行する無線通信方法であって、
前記通信チャネル毎に、実行された前記無線通信の通信品質を示す特性データを検出する検出ステップ(S60)と、
前記検出ステップにおいて検出された前記特性データに基づき通信品質の低下が判定された前記通信チャネルを、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルから削除する削除ステップ(S70)と、
前記削除ステップにおいて削除済みの前記通信チャネルと周波数が近い近傍の前記通信チャネルの前記特性データに基づいて、削除済みの前記通信チャネルの、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰の可否を判定する判定ステップ(S80)と、を備える無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の通信チャネルから順次に選択される1つの通信チャネルを介して、マスタ装置とスレーブ装置との間で無線通信を実行する無線通信システム及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の無線通信システムとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の無線通信システムは、パケットエラーが生じたとき、そのパケットの無線信号のRSSI値が、予め設定された閾値Th1より大きい場合、このパケットを受信した受信動作が他の電波との干渉による受信エラーであると判断する。そして、受信回数と受信エラー回数とを計数して、各周波数チャネルにおける干渉による受信エラーの頻度(受信エラー回数/受信回数)を記憶する。受信エラー頻度が閾値Th2を越えた場合、干渉による受信エラー頻度が閾値Th2を越えた周波数チャネルに干渉源が存在すると判断して、この周波数チャネルを使用不可チャネルとして記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-128812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の無線通信システムでは、使用不可チャネルとした周波数チャネルを、設定期間が経過すると、使用可能な周波数チャネルに戻す。
【0005】
しかしながら、無線通信システムにおいて使用される各通信チャネルの、他の電波との干渉を含む通信環境は、設定期間が経過したからといって、必ずしも変化するとは限らない。このため、特許文献1のように、設定期間が経過したとき、使用不可通信チャネルを使用可能通信チャネルに変更すると、通信品質が低下したままの通信チャネルを使用して、無線通信を行う可能性が高くなる。その結果、無線通信システムの通信成功率が低下してしまう虞がある。
【0006】
本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、通信品質が不良で、使用不可とした通信チャネルの通信品質が改善されたことを高精度に判定することが可能な無線通信システム及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示による無線通信システムは、複数の通信チャネルから順次に選択される1つの通信チャネルを介して、マスタ装置(20)とスレーブ装置(30)との間で無線通信を実行する無線通信システムであって、
通信チャネル毎に、実行された無線通信の通信品質を示す特性データを検出する検出部(S60)と、
検出部によって検出された特性データに基づき通信品質の低下が判定された通信チャネルを、無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除する削除部(S70)と、
削除部によって削除済みの通信チャネルと周波数が近い近傍の通信チャネルの特性データに基づいて、削除済みの通信チャネルの、無線通信に使用する複数の通信チャネルへの復帰の可否を判定する判定部(S80)と、を備えるように構成される。
【0008】
また、本開示による無線通信方法は、複数の通信チャネルから順次に選択される1つの通信チャネルを介して、マスタ装置(20)とスレーブ装置(30)との間で無線通信を実行する無線通信方法であって、
通信チャネル毎に、実行された無線通信の通信品質を示す特性データを検出する検出ステップ(S60)と、
検出ステップにおいて検出された特性データに基づき通信品質の低下が判定された通信チャネルを、無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除する削除ステップ(S70)と、
削除ステップにおいて削除済みの通信チャネルと周波数が近い近傍の通信チャネルの特性データに基づいて、削除済みの通信チャネルの、無線通信に使用する複数の通信チャネルへの復帰の可否を判定する判定ステップ(S80)と、を備えるように構成される。
【0009】
上述したように、本開示による無線通信システム及び無線通信方法では、無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除済みの通信チャネルの復帰の可否が、その削除済みの通信チャネルと周波数が近い近傍の通信チャネルの特性データに基づいて判定される。概して、近傍の通信チャネルの通信品質は、周波数が近いが故に、削除済みの通信チャネルの通信品質と相関性を有する。従って、周波数が近い近傍の通信チャネルの特性データに基づくことにより、削除済みの通信チャネルの復帰の可否を高精度に判定することが可能になる。
【0010】
上記括弧内の参照番号は、本開示の理解を容易にすべく、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、なんら本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【0011】
また、上記した本開示の特徴以外の、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術的特徴に関しては、後述する実施形態の説明及び添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】マスタ装置とスレーブ装置との通信環境の電界強度分布の一例を示す図である。
図3】各通信チャネルの受信信号強度の一例を示す図である。
図4】第1実施形態における、マスタ装置とスレーブ装置との通信シーケンスを示すフローチャートである。
図5】第1実施形態における、通信チャネルの復帰判定処理の詳細な一例を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態の復帰判定処理において、復帰検討対象となる通信チャネルと近傍の通信チャネルとの関係を示す図である。
図7】(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、(b)は、チャネル3を使用した無線通信の通信品質が低いため、チャネル3が、削除判定処理により無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除されたことを示す図である。
図8】(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、(b)は、無線通信に使用したチャネル3、及びチャネル3の両側のチャネル2、チャネル4がすべて無線通信に使用可能である状態を示す図である。
図9】(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、(b)は、無線通信に使用したチャネル3は無線通信に使用可能に維持されるが、復帰検討対象であるチャネル2及びチャネル2の他方の隣接チャネルであるチャネル1が、削除判定処理により削除されたケースを示す図である。
図10】(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、(b)は、無線通信に使用したチャネル3は無線通信に使用可能に維持され、復帰検討対象であるチャネル2は削除済みであり、チャネル2の他方の隣接チャネルであるチャネル1は、無線通信に使用可能であるケースを示す図である。
図11】復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の、各通信チャネルのRSSI値と片側RSSI閾値及び両側RSSI閾値との関係の一例を示す図である。
図12】復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の、各通信チャネルのRSSI値と両側RSSI閾値との関係の一例を示す図である。
図13】第2実施形態における、通信チャネルの復帰判定処理の詳細な一例の一部を示すフローチャートである。
図14】第2実施形態における、通信チャネルの復帰判定処理の詳細な一例の残部を示すフローチャートである。
図15】第2実施形態の復帰判定処理において、復帰検討対象となる通信チャネルと近傍の通信チャネルとの関係を示す図である。
図16】(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、(b)は、復帰検討対象である削除済みのチャネル2の一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンを示す図である。
図17図16(b)の閾値緩和パターンに該当する場合の、各通信チャネルのRSSI値と片側RSSI閾値及び緩和片側RSSI閾値との関係の一例を示す図である。
図18】(a)~(c)は、復帰検討対象である削除済みのチャネル2の一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターン以外のパターンを示す図である。
図19図18(a)のパターンに該当する場合の、各通信チャネルのRSSI値と片側RSSI閾値との関係の一例を示す図である。
図20】(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、(b)は、復帰検討対象である削除済みのチャネル2の両側の通信チャネルが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンを示す図である。
図21図20(b)の閾値緩和パターンに該当する場合の、各通信チャネルのRSSI値と両側RSSI閾値及び緩和両側RSSI閾値との関係の一例を示す図である。
図22】(a)~(c)は、復帰検討対象である削除済みのチャネル2の両側の通信チャネルが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターン以外のパターンを示す図である。
図23図22(a)のパターンに該当する場合の、各通信チャネルのRSSI値と両側RSSI閾値との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本開示の好ましい実施形態について説明する。なお、同一又は類似の構成については、複数の図面に渡って同じ参照番号を付与することにより、説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せても良い。
【0014】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る無線通信システム及び無線通信方法に関して説明する。本実施形態の無線通信システムは、マスタ装置とスレーブ装置とを含む。マスタ装置とスレーブ装置との少なくとも一方は、移動体に搭載されて使用され得る。移動体は、たとえば、自動車や鉄道車両などの車両、電動垂直離着陸機やドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械などを含む。
【0015】
車両における具体的な用途として、本実施形態に係る無線通信システムは、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車などの電動車両に電池パックとして搭載される電池を管理する電池管理システムに適用することができる。電池管理システムに適用される場合、例えば、マスタ装置は、電池制御装置に接続され、複数のスレーブ装置は、電池パックを構成する複数の電池スタックごとに設けられる監視装置にそれぞれ接続される。この場合、マスタ装置とスレーブ装置とはともに車両に搭載される。
【0016】
複数の電池スタックごとに設けられる各監視装置は、対応する電池スタックに含まれる各電池セルの電圧及び電流、電池スタックの温度などの電池情報を各種のセンサ等によって取得する。そして、各監視装置は、無線通信システムを介して、電池制御装置から電池情報を要求するデータを受信すると、取得した電池情報を電池制御装置へ向けて、無線通信システムを介して送信する。電池制御装置は、取得した電池情報に基づいて、電池スタック全体の充電量(SOC)を算出したり、電池パックの温度を適正範囲に調整するため、昇温・冷却機構を駆動したり、各電池セルの電圧を揃えるいわゆる均等化処理の実行要否を判断したりする。電池制御装置は、少なくとも1つの電池スタックにおいて均等化処理の実行が必要と判断した場合、無線通信システムを介して、該当する監視装置に均等化処理の実行を指示する。また、各監視装置は、各種のセンサの異常や、自身の動作の異常を判定する処理を行い、異常が判定された場合には、無線通信システムを介して、異常情報を電池制御装置に送信する。
【0017】
あるいは、本実施形態に係る無線通信システムは、車両において、いわゆるスマートキーシステムやタイヤ空気圧監視システムに適用されても良い。スマートキーシステムに適用される場合、例えば、マスタ装置は車両に搭載され、車両ドアのロック、アンロックや車両のエンジン等の駆動源のオン、オフを制御する制御装置に接続される。複数のスレーブ装置は、複数のユーザによって保有される携帯キーや携帯端末に搭載される。タイヤ空気圧監視システムに適用される場合、マスタ装置は車両に搭載され、タイヤ空気圧の表示や空気圧が異常である場合の警告等を行なう制御装置に接続される。複数のスレーブ装置は、各タイヤ内に設けられ、同じく各タイヤ内に設けられた空気圧検出装置に接続される。さらに、本実施形態に係る、無線通信システムは、車両の診断システムに適用されても良い。この場合、例えば自己診断機能を備えた複数の車載装備に複数のスレーブ装置が接続され、マスタ装置は、サービス工場に設置された診断制御装置に接続される。これらの例では、マスタ装置と複数のスレーブ装置の少なくとも一方が固定した位置に配置され、及び/又は、少なくとも一方が車両に搭載される。
【0018】
ただし、本実施形態に係る無線通信システムの適用例は車両に限られず、上述したように、車両以外の移動体、例えばドローンなどの飛行体、船舶、建設機械、農業機械などの各種装備の制御や管理を行なうシステムへの適用も可能である。さらに、本実施形態に係る無線通信システムは、ビルなどの建物の各種装備や工場などの生産設備などの制御や管理を行なうシステムへの適用も可能である。
【0019】
図1は、無線通信システム10の概略構成を示すブロック図である。無線通信システム10のマスタ装置20とスレーブ装置30は、ともに、例えば車両(自動車)に搭載される。この際、マスタ装置20及びスレーブ装置30は、共通の筐体内に配置される構成としても良いし、共通の筐体に配置されない構成としてもよい。マスタ装置20は、1つであっても良いし、複数であっても良い。同様に、スレーブ装置30は、1つであっても良いし、複数であっても良い。マスタ装置20とスレーブ装置30とは、例えばブルートゥースローエナジー(ブルートゥースは登録商標、以下、ブルートゥースLEと表記する)通信のように、複数の通信チャネルから順次に選択される1つの通信チャネルを介して、無線通信を行う。
【0020】
一例として本実施形態の無線通信システム10は、1つのマスタ装置20と、複数のスレーブ装置30を備える。なお、図1には、図示の簡略化のため、1つのスレーブ装置30しか示されていないが、複数のスレーブ装置30は、いずれも同様に構成され得る。
【0021】
マスタ装置20とスレーブ装置30との無線通信では、近距離通信で使用される周波数帯、たとえば2.4GHz帯や5GHz帯などを用いることができる。このような高周波帯の電波は、LF帯の電波に比べて直進性が強く、車両のボディなどの金属体で反射されやすい性質をもつ。LFは、Low Frequencyの略称である。近距離通信の規格としては、例えば、ブルートゥースやブルートゥースLEなどを採用することができる。一例として本実施形態のマスタ装置20及びスレーブ装置30は、ブルートゥースLE規格に準拠した無線通信を実施可能に構成されている。通信接続及び暗号通信などに係る通信方法の細部は、ブルートゥースLE規格で規定されるシーケンスに従って実施される。
【0022】
マスタ装置20は、図1に示すように、制御回路(CNT)21と、無線通信回路(WC)22と、アンテナ23を備える。マスタ装置20は、上記した要素以外にも、スレーブ装置30以外の機器と有線又は無線で通信するための入出力インターフェースや、バスラインを備える。
【0023】
制御回路21は、例えばプロセッサ211と、メモリ212を備える。メモリ212は、例えばRAM、ROMを含む。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。
【0024】
制御回路21においてプロセッサ211は、RAMを一時的な記憶領域として用いつつROMに記憶されたプログラムを実行することで、所定の処理(制御)を実行する。プロセッサ211は、プログラムに含まれる複数の命令を実行することで、複数の機能部を構築する。プログラムの保存媒体は、ROMに限定されない。たとえばHDDやSSDなど、多様な記憶媒体を採用可能である。HDDは、Hard-disk Driveの略称である。SSDは、Solid State Driveの略称である。
【0025】
プロセッサ211は、例えばCPU、MPU、GPU、DFPなどである。CPUは、Central Processing Unitの略称である。MPUは、Micro-Processing Unitの略称である。GPUは、Graphics Processing Unitの略称である。DFPは、Data Flow Processorの略称である。制御回路21は、CPU、MPU、GPUなど、複数種類の演算処理装置を組み合わせて実現されてもよい。
【0026】
制御回路21は、SoCとして実現されてもよい。SoCは、System on Chipの略称である。制御回路21は、ASICやFPGAを用いて実現されてもよい。ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略称である。FPGAは、Field-Programmable Gate Arrayの略称である。
【0027】
制御回路21は、スレーブ装置30に対して処理を要求するコマンド(例えば、データを要求するコマンド、所定の処理の実行を要求するコマンドなど)を生成し、該コマンドを含む送信データを、送信パケットにより無線通信回路22に送信する。また、制御回路21は、スレーブ装置30から送信されるパケットを受信し、受信したパケットに含まれるデータに基づき、所定の処理を実行する。すなわち、マスタ装置20とスレーブ装置30とが行う無線通信はパケット通信である。
【0028】
無線通信回路22は、パケットを無線で送受信するために、図示しないRF回路を含む。無線通信回路22は、送信信号を変調し、RF信号の周波数で発振する送信機能を有する。また、無線通信回路22は、受信信号を復調する受信機能を有する。RFは、radio frequencyの略称である。
【0029】
無線通信回路22は、制御回路21から送信されたデータを含むパケットを変調し、アンテナ23を介してスレーブ装置30に送信する。制御回路21は、例えば、後述する接続確立処理において交換される暗号化情報を用いて電池情報要求データなどの送信データを暗号化したデータを、無線通信回路22に出力する。無線通信回路22は、送信パケットに、通信制御情報などの無線通信に必要なデータを付与して送信する。無線通信に必要なデータは、例えば識別子(ID)、シーケンス番号、次のシーケンス番号、誤り検出符号などを含む。無線通信回路22は、マスタ装置20とスレーブ装置30との間の通信のデータサイズ、通信形式、スケジュール、エラー検知などを制御してもよい。これら通信に関する制御は、制御回路21が行ってもよい。
【0030】
無線通信回路22は、スレーブ装置30から送信されたパケットを、アンテナ23を介して受信し、復調する。そして、復調したパケットを制御回路21に送信する。アンテナ23は、電気信号を電波に変換して空間に放射する。アンテナ23は、空間を伝搬する電波を受信して、電気信号に変換する。
【0031】
スレーブ装置30は、図1に示すように、制御回路(CNT)31と、無線通信回路(WC)32と、アンテナ33を備える。スレーブ装置30は、上記した要素以外にも、マスタ装置20以外の機器と有線又は無線で通信するための入出力インターフェースや、バスラインを備える。制御回路31は、マスタ装置20の制御回路21と同様の構成を有する。制御回路31は、例えばプロセッサ311と、メモリ312を備える。メモリ312は、たとえばRAM、ROMを含む。
【0032】
制御回路31は、無線通信回路32を介して取得する要求コマンドに基づいて、要求された処理(要求されたデータを取得して返送するなどの応答処理、要求された処理の実行処理など)を実行する。例えば、受信したデータに含まれる要求コマンドが、電池情報の送信要求であった場合、スレーブ装置30の制御回路31は、その送信要求を対応する電池スタックの監視装置に送信し、監視装置から電池情報を取得する。そして、制御回路31は、要求に対する応答として、処理結果(例えば、取得した電池情報)を含む、暗号化情報を用いて暗号化されたデータを無線通信回路32に送信する。制御回路31は、要求された処理に従い、例えば車両に搭載された機器の制御を実行することも可能である。
【0033】
無線通信回路32は、パケットを無線で送受信するために、図示しないRF回路を含む。無線通信回路32は、無線通信回路22と同様に、送信機能及び受信機能を有する。無線通信回路32は、マスタ装置20から送信されたパケットを、アンテナ33を介して受信し、復調する。そして、復調したパケットに含まれるデータを制御回路31に送信する。無線通信回路32は、制御回路31から送信されたデータを含むパケットを変調し、アンテナ33を介してマスタ装置20に送信する。無線通信回路32は、送信パケットに、通信制御情報などの無線通信に必要なデータを付与して送信する。
【0034】
無線通信回路32は、マスタ装置20とスレーブ装置30との間の通信のデータサイズ、通信形式、スケジュール、エラー検知などを制御してもよい。これら通信に関する制御は、制御回路31が行ってもよい。アンテナ33は、電気信号を電波に変換して空間に放射する。アンテナ33は、空間を伝搬する電波を受信して、電気信号に変換する。
【0035】
図2は、マスタ装置20とスレーブ装置30との通信環境の電界強度分布の一例を示す図である。図2は、所定周波数における所定タイミングの電磁界シミュレーション結果を示している。以下では、電界強度分布を電界分布と示すことがある。
【0036】
マスタ装置20及びスレーブ装置30は、例えば、車両における所定の位置に配置される。それぞれ所定位置に配置されたマスタ装置20及びスレーブ装置30から所定周波数の無線電波信号を送信すると、送信波と反射波との干渉や外部ノイズとの干渉により、使用環境において電界強度の高い部分と低い部分が生じる。反射波は、マスタ装置20及びスレーブ装置30の周辺に存在する車両の金属要素による反射、例えば車両ボディによる反射、金属筐体による反射、ハーネスによる反射などによって生じる。このような理由から、マスタ装置20とスレーブ装置30の通信環境には、図2に示すような、電界強度の強い部分と、電界強度の低い部分である所謂NULL点が複数生じる。
【0037】
スレーブ装置30が、マスタ装置20との電界分布において、電界強度の低い部分もしくはその近傍に位置すると、スレーブ装置30は、マスタ装置20からの無線信号を正しく受信できない可能性が高くなり、通信エラーが生じ得る。このような通信エラーが生じる可能性が高い通信チャネルは、通信品質が低下した通信チャネルである。
【0038】
ここで、マスタ装置20とスレーブ装置30とが、複数の通信チャネルから順次に選択される1つの通信チャネルを介して、無線通信を実行する場合、各通信チャネルの周波数が異なるため、各通信チャネルの電界分布も変化し得る。この結果、各通信チャネルで通信品質が異なり得る。
【0039】
例えば、図3に示すように、通信チャネルAを介した無線通信においては、通信品質を示すパラメータの1つである受信電力(受信信号強度)は良好である。また、通信チャネルCを介した無線通信においては、受信電力は非常に高い値を示す。従って、マスタ装置20とスレーブ装置30は、通信品質が良好又は非常に高い通信チャネルA、Cを利用する場合、通信エラーが十分に抑制された高品質の無線通信を行い得る。一方、通信チャネルB、Nを介した無線通信においては、受信電力が低くなっている。このため、マスタ装置20とスレーブ装置30が通信品質が低下している通信チャネルB、Nを利用する場合、無線通信において通信エラーが発生する可能性が高くなる。なお、図3では、理解を容易にするため、周波数に対する受信電力(受信信号強度)の一例を実線にて示している。
【0040】
従って、マスタ装置20とスレーブ装置30との無線通信は、通信品質が低下した通信チャネルを避けて、高品質の無線通信を行い得る通信チャネルを使用して行うことが好ましい。
【0041】
ただし、マスタ装置20とスレーブ装置30との間の電界分布は、外部環境(外部からのノイズなど)や、マスタ装置20及び/又はスレーブ装置30の振動(ハーネスの振動を含む)などによって変化する。このため、マスタ装置20及び/又はスレーブ装置30が車両に搭載されたときには、マスタ装置20とスレーブ装置30との通信環境の電界分布は、例えば、車両の振動や車両の周囲環境の状態などに応じて変化する。この結果、通信品質が良好な通信チャネル及び通信品質が低下した通信チャネルも、固定的なものではなく、刻々と変化する可能性がある。従って、各通信チャネルの通信品質を監視し、通信品質の低下が判定された通信チャネルを、使用を避けるべき通信チャネルとして設定することが求められる。さらに、使用を避けるべき通信チャネルとして、無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除された通信チャネルの通信品質が改善したことに応じて、削除済みの通信チャネルを無線通信に使用する複数の通信チャネルへ復帰させることが求められる。
【0042】
本実施形態の無線通信システム10において、通信品質の低下が判定された通信チャネルの削除、及び削除済みの通信チャネルの復帰などを含む、通信品質が低下した通信チャネル以外の通信チャネルを利用したマスタ装置20とスレーブ装置30との無線通信を実現するための制御処理が、図4に示すマスタ装置20とスレーブ装置30との通信シーケンスを示す図を参照して説明される。図4では、マスタ装置20をMASTER、スレーブ装置30をSLAVEと示している。
【0043】
まずマスタ装置20及びスレーブ装置30は、図4に示す通信シーケンスを実行する前に、接続確立処理を実行する。無線通信システム10が車両に搭載される場合、例えばユーザの操作によってIG信号がオフからオンに切り替わると、接続確立処理が実行される。この接続確立処理は、マスタ装置20と、マスタ装置20との無線通信の接続対象であるすべてのスレーブ装置30との間で実行される。なお、マスタ装置20とスレーブ装置30とが常時接続される場合は、接続確立処理は、所定のタイミングで1回だけ実施される。ただし、通信中にエラーが発生して、マスタ装置20とスレーブ装置30との無線通信接続が切断された場合は、再接続のために接続確立処理が実施される場合がある。
【0044】
接続確立処理では、例えば、スレーブ装置30が、アドバタイズ用の通信チャネルを介してアドバタイズ信号を送信するアドバタイズ動作を実行し、マスタ装置20がアドバタイズ信号をスキャンするスキャン動作を実行する。アドバタイズ用の通信チャネルは、複数(例えば、ブルートゥースLEの場合3つ)の通信チャネルを含む。マスタ装置20は、スキャン動作によりアドバタイズ信号を受信すると、当該アドバタイズ信号を送信したスレーブ装置30へ接続要求を送信する。これにより、マスタ装置20とスレーブ装置30との間に、通信接続が確立される。さらに、マスタ装置20とスレーブ装置30とは、通信接続が確立された後、暗号化情報の交換を行ったり、周波数チャネルホッピングに関する初期情報の共有処理を行ったりする。初期情報は、例えばホッピングパターン又はホッピングのための関数などを含む。
【0045】
接続確立処理が終了すると、マスタ装置20及びスレーブ装置30は、周期的に生じる通信イベント毎に、複数の通信チャネルから順次に選択されるデータ用の通信チャネルを介して、データ通信を実行する。なお、ブルートゥースLEの場合、データ用の通信チャネルとして37の通信チャネルが用意されている。例えば、図4に示すように、ステップS10において、マスタ装置20は、スレーブ装置30に対して、データの要求コマンドの送信、つまりデータ要求を送信する。スレーブ装置30は、ステップS210にてデータ要求を受信すると、ステップS220にて、応答するために必要な所定処理、つまり要求されたデータを取得して送信する処理を実行する。
【0046】
なお、マスタ装置20及びスレーブ装置30は、通信イベント毎に、周波数チャネルホッピングを行って使用するデータ用の通信チャネルを切り替えて、データ要求の送受信や要求したデータの送受信を行う。この際、マスタ装置20及びスレーブ装置30は、後述するチャネルマップに従って、周波数チャネルホッピングによって切り替えられる通信チャネルを決定する。
【0047】
マスタ装置20は、ステップS20において、要求したデータを受信する。そして、ステップS30において、マスタ装置20は、データが正しく受信できたか否かを確認するため、受信したデータに含まれる誤り検出符号に基づいて、例えばチェックサム判定を行う。続くステップS40では、マスタ装置20は、ステップS30の処理においてデータが正しく受信できていないと判定された場合に、同一の通信イベント内での再送のための処理を実行するか否かを判定する。例えば、マスタ装置20は、今回の通信イベントの終了時間まで再送を行う程度の余裕があれば、再送を行うと決定し、余裕がなければ再送は行わないと決定することができる。ステップS40において、マスタ装置20は、再送を行うと決定した場合、ステップS10からの処理を再度実行する。ステップS30の処理においてデータが正しく受信できたと判定された場合、又は、ステップS40で再送を行わないと決定した場合、マスタ装置20は、ステップS50の処理に進む。
【0048】
ステップS50では、マスタ装置20は、受信したデータに含まれる情報に基づく処理を実行する。なお、ステップS30の処理で、データが正しく受信できていないと判定され、かつステップS40の処理で、再送は行わないと決定した場合、ステップS50の処理は省略されても良いし、以前に受信したデータに基づいてステップS50の処理が実行されても良い。
【0049】
ステップS60では、マスタ装置20は、スレーブ装置30から受信した信号の通信品質を示す特性データとして、受信信号強度(RSSI)と、パケットエラーレート(PER)を検出する。PERは、マスタ装置20の受信パケット数に対するエラーパケット数の割合をパーセンテージで示したものである。マスタ装置20は、RSSIに代えて、信号雑音比(SNR)/信号干渉雑音比(SINR)を検出しても良い。SNR/SINRは、例えば、マスタ装置20が、スレーブ装置30からの無線信号を受信したときのRSSI値と、無線信号を受信していないときのRSSI値との比によって検出することができる。また、マスタ装置20は、PERに代えて、ビットエラーレート(BER)を検出しても良い。マスタ装置20は、通信チャネル毎に、検出したRSSI又はSNR/SINRと、PER又はBERを保存して蓄積する。なお、通信品質を示す特性データは、上述したようにマスタ装置20が検出することに加えて、もしくは代えて、スレーブ装置30が、マスタ装置20からの信号を受信したときのRSSIやPERなどを検出して、マスタ装置20へ送信することによって取得することも可能である。
【0050】
ステップS70では、マスタ装置20は、ステップS60で検出した通信品質を示す特性データに基づいて、通信チャネルの通信品質の低下を判定する。例えば、マスタ装置20は、RSSI又はSNR/SINRとPER又はBERを、それぞれ、通信品質の低下を判定するための削除閾値と比較する。そして、少なくとも1種類の特性データが削除閾値を満たした場合、該当する通信チャネルを、マスタ装置20とスレーブ装置30との無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除する。なお、削除される通信チャネルは、データ用の通信チャネルである。このようにして、通信品質が低下した通信チャネルが、無線通信に使用する通信チャネルから削除される。
【0051】
ステップS80では、マスタ装置20は、これまでの通信イベント時において削除判定に該当した、削除済みの通信チャネルの復帰判定を実行する。具体的には、マスタ装置20は、削除済みの通信チャネルの近傍の通信チャネルの特性データに基づいて、削除済みの通信チャネルの、無線通信に使用する複数の通信チャネルへの復帰の可否を判定する。概して、近傍の通信チャネルの通信品質は、周波数が近いが故に、削除済みの通信チャネルの通信品質と相関性を有する。従って、周波数が近い近傍の通信チャネルの特性データに基づくことにより、削除済みの通信チャネルの復帰の可否を高精度に判定することが可能になる。なお、削除済み通信チャネルの復帰判定処理は、後に詳細に説明される。そして、無線通信に使用する通信チャネルとして復帰判定された通信チャネルは、実際に、マスタ装置20とスレーブ装置30との無線通信に使用される。ただし、実際に無線通信に使用されたときの通信品質が低下したままであれば、再び、削除判定の対象となり得る。
【0052】
ステップS90では、マスタ装置20は、ステップS70の削除判定、及びステップS80の復帰判定の結果に基づいて、チャネルマップを作成する。このチャネルマップは、無線通信に使用可能な通信チャネルを示すものであっても良いし、使用不可の通信チャネルを示すものであっても良い。さらに、使用可能な通信チャネルと使用不可の通信チャネルの両方を示すものであっても良い。なお、チャネルマップの作成により、使用可能/使用不可の通信チャネルに変更があった場合、周波数チャネルホッピングパターンが更新されても良い。周波数チャネルホッピングパターンが更新されない場合、ホッピング予定の通信チャネルが使用不可の場合、例えば、次にホッピング予定の通信チャネルを使用すれば良い。
【0053】
ステップS100では、マスタ装置20は、作成したチャネルマップをスレーブ装置30へ送信する。ステップS230において、スレーブ装置30は、マスタ装置20から送信されたチャネルマップを受信する。ステップS240で、スレーブ装置30は、受信確認信号(Ack信号)をマスタ装置20に返送する。ステップS110で、マスタ装置20は、スレーブ装置30からのAck信号を受信する。そして、ステップS120において、マスタ装置20は、Ack信号が正しく受信できたか否かを確認するため、受信したAck信号に含まれる誤り検出符号に基づいて、例えばチェックサム判定を行う。続くステップS130では、マスタ装置20は、ステップS120の処理においてデータが正しく受信できていないと判定された場合に、同一の通信イベント内での再送のための処理を実行するか否かを判定する。ステップS130において、マスタ装置20は、再送を行うと決定した場合、ステップS100からの処理を再度実行する。ステップS120の処理においてデータが正しく受信できたと判定された場合、又は、ステップS130で再送を行わないと決定した場合、マスタ装置20は、図4のフローチャートに示す処理を終了する。
【0054】
このようにして、マスタ装置20とスレーブ装置30とで、チャネルマップの共有処理が行われる。なお、マスタ装置20は、上述したステップS70~S130までの処理を、通信イベント毎に行っても良いし、複数の通信イベントが経過する毎に行っても良い。
【0055】
次に、ステップS80の削除済み通信チャネルの復帰判定処理について、図5のフローチャートを参照して詳しく説明する。図5のフローチャートは、削除済み通信チャネルの復帰判定処理の一例を詳細に示すものである。
【0056】
本実施形態では、削除済みの通信チャネルと周波数が近い近傍の通信チャネルの特性データに基づいて、削除済みの通信チャネルの復帰の可否を判定する。そのため、マスタ装置20は、図6に示すように、マスタ装置20とスレーブ装置30が実際に通信に使用した通信チャネルを該当チャネル(図6の例では、チャネル3)とし、該当チャネルの周波数と近い、両側の隣接チャネル(図6の例では、チャネル2、4)を復帰検討対象の通信チャネルとして定める。さらに、復帰検討対象の通信チャネルの、該当チャネルとは反対側の他方の隣接チャネル(図6の例では、チャネル1、5)を、状態及び特性データの取得対象として定める。なお、他方の隣接チャネルの状態は、無線通信に使用可能であるか、無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除済みであるかを示すものである。さらに、他方の隣接チャネルが無線通信に使用可能な状態である場合には、他方の隣接チャネルの特性データも取得される。
【0057】
図5のフローチャートのステップS310では、マスタ装置20は、まず、該当チャネルが、ステップS70の削除判定処理において無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除されたか否かを判定する。図7(a)、(b)に示すように、削除判定処理において該当チャネルが削除された場合、該当チャネルの特性データに基づいて、隣接チャネルの通信品質の改善を判定することは困難である。そのため、マスタ装置20は、該当チャネルが無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除されたと判定した場合、それ以上、復帰判定処理を行うことなく、図5のフローチャートに示す処理を終了する。なお、図7(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、図7(b)は、チャネル3を使用した無線通信の通信品質が低いため、チャネル3が、削除判定処理により無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除されたことを示している。
【0058】
一方、マスタ装置20は、ステップS310において該当チャネルが削除されていないと判定した場合、ステップS320の処理に進む。ステップS320では、マスタ装置20は、復帰検討対象である、該当チャネルの両側の隣接チャネルの状態、すなわち、両側の隣接チャネルが削除済みであるか、使用可能となっているかを示す状態を取得する。そして、ステップS330において、マスタ装置20は、取得した復帰検討対象の隣接チャネルの状態に基づいて、隣接チャネルは削除済みであるか否かを判定する。
【0059】
例えば、図8(a)、(b)に示すように、該当チャネルの両側の隣接チャネルがともに削除済みではなく、使用可能な状態であれば、復帰判定処理自体を行う必要がない。そのため、マスタ装置20は、ステップS330において該当チャネルの両側の隣接チャネルがともに削除済みではないと判定した場合、それ以上、復帰判定処理を行うことなく、図5のフローチャートに示す処理を終了する。なお、図8(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、図8(b)は、無線通信に使用したチャネル3(該当チャネル)、及び該当チャネルの両側の隣接チャネル(チャネル2、チャネル4)がすべて無線通信に使用可能である状態を示している。
【0060】
一方、マスタ装置20は、ステップS330において隣接チャネルの少なくとも一方が削除済みであると判定した場合、ステップS340以降の処理に進む。つまり、本実施形態では、マスタ装置20は、マスタ装置20とスレーブ装置30との間でいずれかの通信チャネルを介して無線通信が行われると、その無線通信に使用された通信チャネル(該当チャネル)に隣接する通信チャネルが削除済みである場合に、その削除済みの通信チャネルを復帰検討対象として、ステップS340以降の復帰判定処理を実行する。
【0061】
ステップS340では、マスタ装置20は、削除済みである隣接チャネル(復帰検討対象)の、該当チャネルとは反対側の他方の隣接チャネルの状態と、他方の隣接チャネルが無線通信に使用可能な状態である場合、他方の隣接チャネルの通信品質を示す特性データを取得する。例えば、図6に示す例において、マスタ装置20は、復帰検討対象である隣接チャネル2が削除済みであれば、その隣接チャネル2の他方の隣接チャネルであるチャネル1の状態、及びチャネル1が削除済みでなければ、チャネル1の特性データを取得する。また、マスタ装置20は、復帰検討対象である隣接チャネル4が削除済みであれば、その隣接チャネル4の他方の隣接チャネルであるチャネル5の状態、及びチャネル5が削除済みでなければ、チャネル5の特性データを取得する。
【0062】
ステップS350では、ステップS340で取得した他方の隣接チャネルの状態に基づいて、他方の隣接チャネルが削除済みであるか否かを判定する。なお、このステップS350では、復帰検討対象である隣接チャネルが削除済みである場合に、その復帰検討対象のチャネルの、該当チャネルとは反対側の他方の隣接チャネルについて判定される。従って、該当チャネルの両側の隣接チャネルがともに削除済みである場合には、2つの他方の隣接チャネルに関して、別々にステップS350の判定が行われる。ステップS350において、他方の隣接チャネルは削除済みであると判定すると、マスタ装置20は、ステップS360の処理に進む。一方、ステップS350において、他方の隣接チャネルは削除済みではなく、無線通信に使用可能な状態であると判定すると、マスタ装置20は、ステップS380の処理に進む。
【0063】
図9(a)、(b)は、他方の隣接チャネルが削除済みであるケースを示している。すなわち、図9(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、図9(b)は、無線通信に使用したチャネル3(該当チャネル)は無線通信において通信品質の低下が判定されなかったため、使用可能に維持されるが、復帰検討対象である隣接チャネル(チャネル2)及び復帰検討対象である隣接チャネルの、他方の隣接チャネル(チャネル1)が、削除判定処理により削除されたケースを示している。この場合、復帰検討対象である隣接チャネル(チャネル2)の復帰の可否は、無線通信に使用可能な該当チャネル(チャネル3)の特性データだけに基づいて判定される。
【0064】
また、図10(a)、(b)は、他方の隣接チャネルは削除済みではなく、無線通信に使用可能であるケースを示している。すなわち、図10(a)は、チャネル3が通信チャネルとして使用されたことを示し、図10(b)は、無線通信に使用したチャネル3(該当チャネル)は無線通信において通信品質の低下が判定されなかったため、使用可能に維持され、復帰検討対象である該当チャネルの隣接チャネル(チャネル2)は削除済みであるが、他方の隣接チャネル(チャネル1)は、無線通信に使用可能であるケースを示している。この場合、復帰検討対象である隣接チャネル(チャネル2)の復帰の可否は、無線通信に使用可能な該当チャネル(チャネル3)と他方の隣接チャネル(チャネル1)の特性データに基づいて判定される。
【0065】
本実施形態では、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合と、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する両側の通信チャネルが無線通信に使用可能である場合とで、異なる判定基準に従って、削除済みの通信チャネルに関して、復帰の可否を判定する。以下に、片側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合と、両側の通信チャネルが無線通信に使用可能である場合の、それぞれの判定基準の例を説明する。
【0066】
ステップS350において、他方の隣接チャネルは削除済みと判定した場合に実行される、ステップS360及びS370は、片側の通信チャネル(すなわち、該当チャネル)のみが無線通信に使用可能である場合の判定基準の例を示している。ステップS360では、使用可能な片側の通信チャネル(すなわち、該当チャネル)の特性データの一つであるRSSI値が、片側RSSI閾値よりも大きいか否かを判定する。また、ステップS370では、使用可能な片側の通信チャネル(すなわち、該当チャネル)の特性データの別の一つであるPER値が、片側PER閾値よりも小さいか否かを判定する。なお、RSSI値は大きいほど通信品質が良好であることを示し、PER値は小さいほど通信品質が良好であることを示す。また、RSSI値及びPER値は、該当チャネルが、直前の無線通信に使用されたときに、ステップS60にて検出されたRSSI値及びPER値であっても良いし、過去の複数回の無線通信において検出された所定数のRSSI値及びPER値をそれぞれ平均化した値や、それらの中央値であっても良い。
【0067】
図11に、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の、RSSI値と片側RSSI閾値及び両側RSSI閾値との関係の一例を示す。片側RSSI閾値は、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する両側の通信チャネルの内、一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合に、復帰可否を判定するための閾値である。両側RSSI閾値は、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合に、復帰可否を判定するための閾値である。
【0068】
復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合、上述したように、無線通信に使用可能な片側の通信チャネル(該当チャネル)の特性データのみに基づいて、復帰検討対象である隣接チャネルの復帰の可否が判定される。このため、例えば図11に示すように、復帰検討対象である隣接チャネル(チャネル2)のRSSI値が、少なくとも削除閾値以上に改善されたとみなしえる程度に、片側RSSI閾値は、両側RSSI閾値に比較して相対的に大きく定められている。ステップS360では、マスタ装置20は、このように相対的に大きく定められた片側RSSI閾値を、無線通信に使用可能な片側の通信チャネル(該当チャネル)のRSSI値が満たしている(上回っている)か否かを判定する。ステップS370の片側PER閾値も、ステップS360の片側RSSI閾値と同様の考え方で、両側PER閾値に比較して相対的に小さく定められている。ステップS370において、マスタ装置20は、その片側PER閾値を、無線通信に使用可能な片側の通信チャネル(該当チャネル)のPER値が満たしている(下回っている)か否かを判定する。
【0069】
ステップS360において、RSSI値が片側RSSI閾値を満たしていないと判定されるか、ステップS370において、PER値が片側PER閾値を満たしていないと判定されると、マスタ装置20は、復帰検討対象の隣接チャネルの復帰は不可とみなして、図5のフローチャートに示す処理を終了する。一方、ステップS360において、RSSI値が片側RSSI閾値を満たしていると判定され、かつ、ステップS370において、PER値が片側PER閾値を満たしていると判定されると、マスタ装置20は、ステップS420において、削除済みである復帰検討対象の隣接チャネルの復帰が可であると決定する。その後、マスタ装置20は、図5のフローチャートに示す処理を終了し、図4のフローチャートの処理に戻る。なお、ステップS360及びS370では、2種類の特性データ(RSSI値とPER値)をそれぞれの片側閾値と比較しているが、片側閾値と比較する特性データは1種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。
【0070】
一方、ステップS350において、他方の隣接チャネルは削除済みではないと判定した場合に実行される、ステップS380、S390、S400及びS410は、両側の通信チャネル(すなわち、該当チャネル及び他方の隣接チャネル)がともに無線通信に使用可能である場合の判定基準の例を示している。
【0071】
復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合、例えば、図12に示すように、復帰検討対象である隣接チャネル(チャネル2)のRSSI値も、削除閾値よりも大きなRSSI値を示す可能性が高い。そのため、図12に示す両側RSSI閾値は、上述した片側RSSI閾値よりも相対的に小さい値に定められている。
【0072】
ステップS380では、マスタ装置20は、該当チャネルと他方の隣接チャネルのそれぞれのRSSI値の平均値を演算する。なお、他方の隣接チャネルのRSSI値は、他方の隣接チャネルを使用して無線通信が行われたときに検出され、記憶されているRSSI値に基づくものである。ステップS390では、マスタ装置20は、ステップS380にて演算されたRSSI平均値が、片側RSSI閾値よりも相対的に低く設定された両側RSSI閾値を満たしている(上回っている)か否かを判定する。
【0073】
ステップS400では、マスタ装置20は、無線通信に使用可能な両側の通信チャネルの1つである該当チャネルのPER値が、片側PER閾値よりも相対的に大きく定められた両側PER閾値を満たしている(下回っている)か否かを判定する。ステップS410では、無線通信に使用可能な両側の通信チャネルの別の1つである、他方の隣接チャネルのPER値が、片側PER閾値よりも相対的に大きく定められた両側PER閾値を満たしている(下回っている)か否かを判定する。
【0074】
ステップS390において、RSSI平均値が両側RSSI閾値を満たしていないと判定されるか、ステップS400において、該当チャネルのPER値が両側PER閾値を満たしていないと判定されるか、ステップS410において、他方の隣接チャネルのPER値が両側PER閾値を満たしていないと判定されると、マスタ装置20は、復帰検討対象の隣接チャネルの復帰は不可とみなして、図5のフローチャートに示す処理を終了する。一方、ステップS390において、RSSI平均値が両側RSSI閾値を満たしている判定され、ステップS400において、該当チャネルのPER値が両側PER閾値を満たしていると判定され、かつ、ステップS410において、他方の隣接チャネルのPER値が両側PER閾値を満たしていると判定されると、マスタ装置20は、ステップS420に進み、削除済みである復帰検討対象の隣接チャネルの復帰が可であると決定する。その後、マスタ装置20は、図5のフローチャートに示す処理を終了し、図4のフローチャートの処理に戻る。
【0075】
なお、ステップS380~S410では、2種類の特性データ(RSSI値とPER値)に関して、それぞれ、閾値と比較しているが、閾値と比較する特性データは1種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。また、上述した例では、RSSI値に関して、該当チャネルのRSSI値と他方の隣接チャネルのRSSI値との平均値を演算して、演算したRSSI平均値を両側RSSI閾値と比較しているが、該当チャネルのRSSI値と他方の隣接チャネルのRSSI値とを、それぞれ、両側RSSI閾値と比較しても良い。さらに、上述した例では、PER値に関して、該当チャネルのPER値と他方の隣接チャネルのPER値とを、それぞれ、両側PER閾値と比較しているが、該当チャネルのPER値と他方の隣接チャネルのPER値との平均値を演算して、演算したPER平均値を両側PER閾値と比較しても良い。また、上述した例では、2種類の特性データ(RSSI値とPER値)に関して、それぞれ、閾値と比較しているが、復帰検討対象の両側の通信チャネルが無線通信に使用可能であることをもって、削除済みの通信チャネルを、無線通信に使用する複数の通信チャネルへの復帰可と判定しても良い。
【0076】
このように、本実施形態によれば、無線通信に使用する複数の通信チャネルから削除済みの通信チャネルの復帰の可否が、その削除済みの通信チャネルと周波数が近い隣接する片側又は両側の通信チャネルの特性データに基づいて判定される。概して、隣接する通信チャネルの通信品質は、周波数が近いが故に、削除済みの通信チャネルの通信品質と相関性を有する。従って、周波数が近い隣接する通信チャネルの特性データに基づくことにより、削除済みの通信チャネルの復帰の可否を高精度に判定することが可能になる。
【0077】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る無線通信システム及び無線通信方法について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る無線通信システムは、第1実施形態の無線通信システムと同様に構成されるため、構成に関する説明は省略する。
【0078】
本実施形態に係る無線通信システムと、第1実施形態に係る無線通信システムとは、通信チャネルの復帰判定処理のみが異なる。そのため、以下、本実施形態に係る無線通信システムにおいて実施される復帰判定処理を、図13及び14のフローチャートを参照して説明する。なお、図13及び図14のフローチャートに示す復帰判定処理では、図5のフローチャートに示す復帰判定処理に対して、ステップS352、S354、S356、S358、S381、S382、S383、S384、及びS385の処理が追加されている。従って、以下の説明においては、図13及び図14のフローチャートに追加された処理を中心に説明する。
【0079】
ステップS352では、復帰検討対象である削除済みチャネルの±2CHの通信チャネルの状態を取得する。例えば、図15に示すように、復帰検討対象である削除済みチャネルがチャネル2である場合、±2CHの通信チャネルは、チャネル0とチャネル4が該当し、復帰検討対象である削除済みチャネルがチャネル4である場合、±2CHの通信チャネルは、チャネル2とチャネル6が該当する。チャネル2及びチャネル4の状態は、ステップS320で取得済みであるため、結局のところ、ステップS352では、復帰検討対象がチャネル2の場合、チャネル0の状態が取得され、及び/又は、復帰検討対象がチャネル4の場合、チャネル6の状態が取得される。なお、±2CHの通信チャネルは、復帰検討対象である削除済みチャネル(チャネル2、4)とは逆側で、削除済みチャネル(チャネル2、4)の両側の通信チャネル(チャネル2に関してチャネル1、3、チャネル4に関してチャネル3、5)にそれぞれ隣接する通信チャネル(チャネル2に関してチャネル0、4、チャネル4に関してチャネル2、6)と定義することができる。
【0080】
ステップS354では、マスタ装置20は、復帰検討対象である削除済みチャネルと周波数が近い近傍の通信チャネル状態、具体的には、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態が、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当するか否かを判定する。以下に、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに関して説明する。
【0081】
復帰検討対象である削除済みの通信チャネルに隣接する一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合、第1実施形態で説明したように、RSSI値と比較される片側RSSI閾値は、両側RSSI閾値よりも相対的に大きく設定され、PER値と比較される片側PER閾値は、両側PER閾値よりも相対的に小さく設定される。
【0082】
しかしながら、復帰検討対象の±2CHの通信チャネルの状態を考慮することにより、例えば、一方の側の通信チャネルのRSSI値がそれほど高くなくとも、復帰検討対象である削除済みチャネルの通信品質(RSSI値)が削除閾値以上に改善されたことを判定することが可能となる。例えば、図16(a)に示すように、チャネル3が無線通信に使用された通信チャネルであり、チャネル3に隣接するチャネル2が削除済みチャネルであるとする。この場合、チャネル3が無線通信に使用できる状態を維持すると、削除済みのチャネル2が復帰検討対象となる。
【0083】
そして、図16(b)に示すように、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネルであるチャネル0、4がともに無線通信に使用可能な状態である場合、図17に示すように、一方の側の通信チャネルのRSSI値が片側RSSI閾値を上回らなくても、削除済みチャネル(チャネル2)の通信品質(RSSI値)は削除閾値以上に改善された可能性が高いと言える。つまり、図16(b)に示すように、復帰検討対象のチャネル2の±1CHの通信チャネル(チャネル1、チャネル3)に関しては、一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能な状態であるが、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネル(チャネル0、チャネル4)がともに無線通信に使用可能な状態である場合、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当すると判定する。一方、マスタ装置20は、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態が、図16(b)に示す閾値緩和パターン以外のパターンである場合、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンには該当しないと判定する。
【0084】
復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当しないパターンを図18(a)~(c)に示す。図18(a)、(b)は、復帰検討対象のチャネル2の±1CHの通信チャネル(チャネル1、チャネル3)に関して、一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能な状態であり、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネル(チャネル0、チャネル4)に関しても、一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能な状態であるパターンを示す。図18(c)は、復帰検討対象のチャネル2の±1CHの通信チャネル(チャネル1、チャネル3)に関して、一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能な状態であるが、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネル(チャネル0、チャネル4)に関しては、両方の通信チャネルとも削除されて、無線通信に使用できない状態であるパターンを示す。
【0085】
例えば、図18(a)に示すパターンの場合の、各チャネルのRSSI値の代表的な例を図19に示す。図19に示すように、復帰検討対象であるチャネル2の左側の2つのチャネル0及びチャネル1が削除済みであり、それら2つのチャネルのRSSI値は削除閾値を下回っていると考えられる。そのため、図18(a)に示すパターンにおいて、片側RSSI閾値を緩和してしまうと、チャネル2のRSSI値が削除閾値を上回る程度まで改善していなくとも、チャネル3のRSSI値が緩和した片側RSSI閾値を上回ってしまうことが起こり得る。そのため、図18(a)に示すパターンでは、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当しないと判定する。図18(b)、(c)に示すパターンについても同様である。
【0086】
ただし、図18(a)、(b)に示すパターンに対して、図16(b)に示すパターンよりも緩和の程度は小さいが、片側RSSI閾値よりも緩和した緩和片側閾値を設定しても良い。図18(a)、(b)に示すパターンは、図18(c)に示すパターンに比べれば、通信品質が改善傾向にあるとみなし得るためである。このように、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態のパターンに応じて、段階的に緩和片側閾値を設定しても良い。
【0087】
図13のフローチャートのステップS354において、マスタ装置20は、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態が、閾値緩和パターンに該当すると判定すると、ステップS356の処理に進む。一方、マスタ装置20は、閾値緩和パターンに該当しないと判定すると、ステップS360の処理に進む。
【0088】
ステップS356では、マスタ装置20は、片側RSSI閾値よりも緩和された緩和片側RSSI閾値を用いて、無線通信に使用可能な片側の通信チャネル(該当チャネル)のRSSI値が満たしている(上回っている)か否かを判定する。ステップS358では、マスタ装置20は、片側PER閾値よりも緩和された緩和片側PER閾値を用いて、無線通信に使用可能な片側の通信チャネル(該当チャネル)のPER値が満たしている(下回っている)か否かを判定する。
【0089】
このように、本実施形態では、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態が、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当する場合、マスタ装置20は、削除済みチャネルの復帰判定のための片側RSSI閾値及び片側PER閾値を、それらの閾値よりも低い通信品質を示す緩和片側RSSI閾値及び緩和片側PER閾値に変更する。これにより、削除済みチャネルの復帰可否の判定精度をより高めることができる。なお、片側RSSI閾値及び片側PER閾値が第2の復帰閾値に該当し、緩和片側RSSI閾値及び緩和片側PER閾値が第4の復帰閾値に該当する。
【0090】
±2CHの通信チャネルの状態は、±2CHの通信チャネルを使用して無線通信が行われたときの特性データ(RSSIやPERなど)に応じて決まる。従って、上述したように、±1CHの通信チャネルの状態に加えて、±2CHの通信チャネルの状態を考慮して、片側RSSI閾値及び片側PER閾値を変更することは、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネルの特性データのみではなく、復帰検討対象である削除済みチャネルの±2CHの通信チャネルの特性データにも基づいて、削除済みチャネルの復帰の可否を判定するものである。すなわち、本開示において、「近傍の通信チャネル」とは、復帰検討対象である削除済みチャネルに隣接する通信チャネル(±1CH)ばかりでなく、少なくとも、その隣接する通信チャネル(±1CH)に隣接する通信チャネル(±2CH)を含む概念である。さらに、近傍の通信チャネルとして、±3CHの通信状態を考慮しても良い。
【0091】
ステップS356において、RSSI値が緩和片側RSSI閾値を満たしていないと判定されるか、ステップS358において、PER値が緩和片側PER閾値を満たしていないと判定されると、マスタ装置20は、復帰検討対象の削除済みチャネルの復帰は不可とみなして、図13のフローチャートに示す処理を終了する。一方、ステップS356において、RSSI値が緩和片側RSSI閾値を満たしていると判定され、かつ、ステップS358において、PER値が緩和片側PER閾値を満たしていると判定されると、マスタ装置20は、ステップS420において、復帰検討対象の削除済みチャネルの復帰が可であると決定する。その後、マスタ装置20は、図13のフローチャートに示す処理を終了し、図4のフローチャートの処理に戻る。
【0092】
図13のステップS350において、他方の隣接チャネルは削除済みではないと判定した場合には、マスタ装置20は、図14のフローチャートのステップS380に進む。ステップS380において、マスタ装置20は、該当チャネルと他方の隣接チャネルのそれぞれのRSSI値の平均値を演算する。この点は、第1実施形態の復帰判定処理と同様である。
【0093】
続くステップS382では、マスタ装置20は、復帰検討対象である削除済みチャネルの±2CHの通信チャネルの状態を取得する。そして、ステップS382において、マスタ装置20は、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態が、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当するか否かを判定する。以下に、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに関して説明する。
【0094】
例えば、図20(a)に示すように、チャネル3が無線通信に使用された通信チャネルであり、チャネル3に隣接するチャネル2が削除済みチャネルであるとする。この場合、チャネル3が無線通信に使用できる状態を維持すると、削除済みのチャネル2が復帰検討対象となる。
【0095】
そして、図20(b)に示すように、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネルであるチャネル0、4がともに無線通信に使用可能な状態である場合、図21に示すように、±1CHの通信チャネルの一方の通信チャネルのRSSI値が両側RSSI閾値を上回らなかったり、両方の通信チャネルのRSSI値の平均値が両側RSSI閾値を上回らなかったりしても、削除済みチャネル(チャネル2)の通信品質(RSSI値)は削除閾値以上に改善された可能性が高いと言える。従って、図20(b)に示すように、復帰検討対象のチャネル2の±1CHの通信チャネル(チャネル1、チャネル3)がともに無線通信に使用可能な状態であり、さらに、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネル(チャネル0、チャネル4)がともに無線通信に使用可能な状態である場合、閾値緩和パターンに該当すると判定する。一方、マスタ装置20は、図20(b)に示す閾値緩和パターン以外のパターンである場合、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンには該当しないと判定する。
【0096】
復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当しないパターンを図22(a)~(c)に示す。図22(a)、(b)は、復帰検討対象のチャネル2の±1CHの通信チャネル(チャネル1、チャネル3)がともに無線通信に使用可能な状態であるが、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネル(チャネル0、チャネル4)に関しては、一方の側の通信チャネルのみが無線通信に使用可能な状態であるパターンを示す。図22(c)は、復帰検討対象のチャネル2の±1CHの通信チャネル(チャネル1、チャネル3)がともに無線通信に使用可能な状態であるが、復帰検討対象であるチャネル2の±2CHの通信チャネル(チャネル0、チャネル4)に関しては、両方の通信チャネルとも削除されて、無線通信に使用できない状態であるパターンを示す。
【0097】
例えば、図22(a)に示すパターンの場合の、各チャネルのRSSI値の代表的な例を図23に示す。図23に示すように、復帰検討対象であるチャネル2の左側の-2CHに対応するチャネル0が削除済みであり、そのチャネル0のRSSI値は削除閾値を下回っていると考えられる。そのため、図22(a)に示すパターンにおいて、両側RSSI閾値を緩和してしまうと、チャネル2のRSSI値が削除閾値を上回る程度まで改善していなくとも、チャネル1及びチャネル3のRSSI値が緩和した両側RSSI閾値を上回ってしまうことが起こり得る。そのため、図22(a)に示すパターンでは、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当しないと判定する。図22(b)、(c)に示すパターンについても同様である。
【0098】
ただし、図22(a)、(b)に示すパターンに対して、図20(b)に示すパターンよりも緩和の程度は小さいが、両側RSSI閾値よりも緩和した緩和両側閾値を設定しても良い。図22(a)、(b)に示すパターンは、図22(c)に示すパターンに比べれば、全体的に通信品質が改善傾向にあるとみなし得るためである。このように、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態のパターンに応じて、段階的に緩和両側閾値を設定しても良い。
【0099】
図14のフローチャートのステップS382において、マスタ装置20は、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態が、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当すると判定すると、ステップS383の処理に進む。一方、マスタ装置20は、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当しないと判定すると、ステップS390の処理に進む。
【0100】
ステップS383では、マスタ装置20は、ステップS380にて演算されたRSSI平均値が、両側RSSI閾値よりも緩和された(小さくされた)緩和両側RSSI閾値を満たしている(上回っている)か否かを判定する。ステップS384では、マスタ装置20は、無線通信に使用可能な両側の通信チャネルの1つである該当チャネルのPER値が、両側PER閾値よりも緩和された(大きくされた)緩和両側PER閾値を満たしている(下回っている)か否かを判定する。ステップS385では、無線通信に使用可能な両側の通信チャネルの別の1つである、他方の隣接チャネルのPER値が、同様に緩和両側PER閾値を満たしている(下回っている)か否かを判定する。
【0101】
このように、本実施形態では、復帰検討対象である削除済みチャネルの±1CHの通信チャネル及び±2CHの通信チャネルの状態が、復帰検討対象である削除済みの通信チャネルの両側の通信チャネルがともに無線通信に使用可能である場合の閾値緩和パターンに該当する場合、マスタ装置20は、削除済みチャネルの復帰判定のための両側RSSI閾値及び両側PER閾値を、それらの閾値よりも低い通信品質を示す緩和両側RSSI閾値及び緩和両側PER閾値に変更する。これにより、削除済みチャネルの復帰可否の判定精度をより高めることができる。なお、両側RSSI閾値及び両側PER閾値が第1の復帰閾値に該当し、緩和両側RSSI閾値及び緩和両側PER閾値が第3の復帰閾値に該当する。
【0102】
ステップS383において、RSSI平均値が緩和両側RSSI閾値を満たしていないと判定されるか、ステップS384において、該当チャネルのPER値が緩和両側PER閾値を満たしていないと判定されるか、ステップS385において、他方の隣接チャネルのPER値が緩和両側PER閾値を満たしていないと判定されると、マスタ装置20は、復帰検討対象の削除済みチャネルの復帰は不可とみなして、図13及び図14のフローチャートに示す処理を終了する。一方、ステップS383において、RSSI平均値が緩和両側RSSI閾値を満たしている判定され、ステップS384において、該当チャネルのPER値が緩和両側PER閾値を満たしていると判定され、かつ、ステップS385において、他方の隣接チャネルのPER値が緩和両側PER閾値を満たしていると判定されると、マスタ装置20は、図13のフローチャートのステップS420に進み、復帰検討対象の削除済みチャネルの復帰が可であると決定する。その後、マスタ装置20は、図13のフローチャートに示す処理を終了し、図4のフローチャートの処理に戻る。
【0103】
このような第2実施形態の復帰判定処理によっても、第1実施形態の場合と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第2実施形態の復帰判定処理によれば、復帰検討対象の±2CHの通信チャネルの状態を考慮することにより、復帰検討対象である削除済みチャネルの復帰の可否をより高精度に判定することができる。
【0104】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することが可能である。
【0105】
例えば、上述した第1実施形態及び第2実施形態では、第2の特性データとしてPERを使用していた。しかしながら、パケット通信のエラーレートではなく、パケット通信の成功レートであるパケットアライバルレート(PAR)を使用することもできる。なお、PARを使用する場合、閾値との大小関係は、上述した第1実施形態及び第2実施形態とは逆になる。
【0106】
最後に、この明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。以下の複数の技術的思想の組み合わせは、無線通信システムのみでなく、無線通信方法にも当てはまる。
【0107】
(技術的思想1)
複数の通信チャネルから順次に選択される1つの前記通信チャネルを介して、マスタ装置(20)とスレーブ装置(30)との間で無線通信を実行する無線通信システムであって、
前記通信チャネル毎に、実行された前記無線通信の通信品質を示す特性データを検出する検出部(S60)と、
前記検出部によって検出された前記特性データに基づき通信品質の低下が判定された前記通信チャネルを、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルから削除する削除部(S70)と、
前記削除部によって削除済みの前記通信チャネルと周波数が近い近傍の前記通信チャネルの前記特性データに基づいて、削除済みの前記通信チャネルの、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰の可否を判定する判定部(S80)と、を備える無線通信システム。
【0108】
(技術的思想2)
前記判定部は、前記マスタ装置と前記スレーブ装置との間で前記通信チャネルを介して前記無線通信が行われると、前記無線通信に使用された前記通信チャネルに隣接する前記通信チャネルが前記削除部によって削除済みである場合に、その削除済みの前記通信チャネルに関して、復帰の可否を判定する、技術的思想1に記載の無線通信システム。
【0109】
(技術的思想3)
前記判定部は、前記削除部により、前記特性データに基づき、前記無線通信に使用された前記通信チャネルの通信品質の低下が判定されて、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルから削除された場合、前記無線通信に使用された前記通信チャネルに隣接する前記通信チャネルの復帰の可否の判定を実施しない、技術的思想2に記載の無線通信システム。
【0110】
(技術的思想4)
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合と、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する一方の側の前記通信チャネルのみが前記無線通信に使用可能である場合とで異なる判定基準に従って、削除済みの前記通信チャネルに関して、復帰の可否を判定する、技術的思想1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【0111】
(技術的思想5)
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、両側の前記通信チャネルの前記特性データが第1の復帰閾値を満たすことをもって、削除済みの前記通信チャネルは、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰可と判定し、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する一方の側の前記通信チャネルのみが前記無線通信に使用可能である場合、一方の側の前記通信チャネルの特性データが、前記第1の復帰閾値よりも高い通信品質を示す第2の復帰閾値を満たすことをもって、削除済みの前記通信チャネルは、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰可と判定する、技術的思想4に記載の無線通信システム。
【0112】
(技術的思想6)
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能であることに加え、削除済みの前記通信チャネルとは逆側で、両側の前記通信チャネルにそれぞれ隣接する前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、前記第1の復帰閾値を、前記第1の復帰閾値よりも低い通信品質を示す第3の復帰閾値に変更する、技術的思想5に記載の無線通信システム。
【0113】
(技術的思想7)
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する一方の側の前記通信チャネルのみが前記無線通信に使用可能であることに加え、削除済みの前記通信チャネルとは逆側で、削除済みの前記通信チャネルの両側の前記通信チャネルにそれぞれ隣接する前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、前記第2の復帰閾値を、前記第2の復帰閾値よりも低い通信品質を示す第4の復帰閾値に変更する、技術的思想5に記載の無線通信システム。
【0114】
(技術的思想8)
前記判定部は、復帰可否の判定対象である削除済みの前記通信チャネルに隣接する両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能である場合、両側の前記通信チャネルが前記無線通信に使用可能であることをもって、削除済みの前記通信チャネルは、前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルへの復帰可と判定する、技術的思想4に記載の無線通信システム。
【0115】
(技術的思想9)
前記複数の通信チャネルは、前記マスタ装置と前記スレーブ装置との間で通信接続を確立する接続確立処理に用いる複数の通信チャネルを含む第1のチャネル群と、前記マスタ装置と前記スレーブ装置との間でデータ通信を行う通信処理に用いる複数の通信チャネルを含む第2のチャネル群とを有し、
前記削除部が前記無線通信に使用する複数の前記通信チャネルから削除する前記通信チャネルは、前記第2のチャネル群に含まれる前記通信チャネルである、技術的思想1乃至8のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【0116】
(技術的思想10)
前記無線通信は、パケット通信であり、
前記特性データは、前記パケット通信における、受信信号強度、信号雑音比/信号干渉雑音比、パケットエラーレート、パケットアライバルレート、及びビットエラーレートの少なくとも1つである、技術的思想1乃至9のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【0117】
(技術的思想11)
前記マスタ装置と前記スレーブ装置との少なくとも一方は移動体に搭載される、技術的思想1乃至10のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【0118】
(技術的思想12)
前記移動体は、車両である、技術的思想11に記載の無線通信システム。
【符号の説明】
【0119】
10:無線通信システム、20:マスタ装置、21:制御回路、22:無線通信回路、23:アンテナ、30:スレーブ装置、31:制御回路、32:無線通信回路、33:アンテナ、211:プロセッサ、212:メモリ、311:プロセッサ、312:メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23