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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012420
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】多重特異性分子
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240123BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240123BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240123BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240123BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240123BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240123BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240123BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K16/46
C07K16/28
C07K16/24
C07K16/18
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/08
C12P21/02 C
C07K1/14
A61K38/16
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185376
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2020544152の分割
【原出願日】2018-11-13
(31)【優先権主張番号】17306580.6
(32)【優先日】2017-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】515292543
【氏名又は名称】アフィロジック
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】キッテン オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】シニエ マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ユエ シモン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、抗体の軽鎖または重鎖への(特にSac7dファミリーに由来する)OBフォールドバリアントの融合により多重特異性結合能を有するタンパク質を提供する。
【解決手段】改変抗体を含むポリペプチドであって、該抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも1つに、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが融合されており、該バリアントが、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含む、前記ポリペプチドを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改変抗体を含むポリペプチドであって、該抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも1つに、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが融合されており、該バリアントが、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含む、前記ポリペプチド。
【請求項2】
前記バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記バリアントが、Sac7dのK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、T40、R42、A44、およびS46に対応するアミノ酸の群より選択される7~14個の変異アミノ酸を含有する、請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが、前記抗体の2つの重鎖または2つの軽鎖に融合されている、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが前記抗体の1つの重鎖に融合されており、かつ該Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが該抗体の1つの軽鎖に融合されている、請求項1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記抗体の少なくとも1つの重鎖または少なくとも1つの軽鎖が、前記Sac7dファミリーのタンパク質の2つのバリアントと融合されている、請求項1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも2つの異なるバリアントが、前記抗体の重鎖および/または軽鎖に融合されている、請求項1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の8つのバリアントが、前記抗体の重鎖および軽鎖に融合されている、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記抗体が治療用抗体である、請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
EGFR、VEGFR2、TfR、Her2、メソテリン、EpCam、CD38、CD3、CD7、PD1、PD-L1、CTLA4、OX40、VEGF、TNFα、IL17、IL4、IL13、IL23、IL12、MAdCam、およびa4b7からなる群より選択されるタンパク質に結合する、請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントがIL17に結合する、請求項1~10のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントが、配列SEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:36を含む、請求項11記載のポリペプチド。
【請求項13】
SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:38を含む、請求項11または12記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記抗体が、TNFα、IL23、IL12、IL4、IL13、IL31またはその受容体、および腫瘍特異性抗原、特にHer2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、またはCTLA4からなる群より選択されるタンパク質に結合する、請求項11~13のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントが、TNFαのサブユニットに結合し、好ましくは、該サブユニットタンパク質がその天然状態で完全に形成された多量体タンパク質に含まれる場合は、該タンパク質のサブユニットに結合しない、請求項1~10のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項16】
配列SEQ ID NO:39またはSEQ ID NO:40を含む、請求項15記載のポリペプチド。
【請求項17】
配列SEQ ID NO:41を含む、請求項15または16記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記抗体が、IL17、CD20、IL24、IL12、IL4、IL13、IL31またはその受容体、および腫瘍特異性抗原、特にHer2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、またはCTLA4からなる群より選択されるタンパク質に結合する、請求項15~17のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項19】
a.その3’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列
b.その5’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列
c.その3’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列
d.その5’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列
からなる群より選択されるDNA配列を含む、遺伝子構築物。
【請求項20】
請求項19記載の遺伝子構築物を含む、ベクター。
【請求項21】
そのゲノム中に請求項19に記載の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
【請求項22】
請求項1~18のいずれか一項記載のポリペプチドを生成するための方法であって、
a.請求項19記載の遺伝子構築物と、その相補的(complementary)な抗体鎖をコードする遺伝子構築物とによって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.ポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、前記方法。
【請求項23】
改変抗体の生成収率を維持するまたは向上させるための方法であって、
a.請求項19記載の遺伝子構築物と、その相補的な抗体鎖をコードする遺伝子構築物とによって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.工程aの遺伝子構築物の発現後に生成された該改変抗体を回収する工程
からなる工程を含み、
工程bにおいて回収される該改変抗体が、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントを含み、該バリアントが、該タンパク質の結合部位に5~20個の変異残基を含み、かつ回収される該改変抗体の収率が、同じ条件で生成させた未改変抗体の収率と同等であるかまたはそれより高い、前記方法。
【請求項24】
Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントを含むポリペプチドであって、該バリアントが、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~22個の変異アミノ酸を含み、IL17に結合する、前記ポリペプチド。
【請求項25】
前記変異アミノ酸が、Sac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D35、D36、N37、G38、K39、T40、G41、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51からなる群より選択されるアミノ酸に対応する、請求項24記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記Sac7dバリアントが、Sac7dのK7、Y8、K9、E11、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、D35、T40、G41、R42、A44、およびS46に対応する群より選択される4~17個の変異アミノ酸を含有する、請求項24または25記載のポリペプチド。
【請求項27】
配列SEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:36を含む、請求項24~26のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項28】
配列SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:38を含む、請求項24~27のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項29】
V7、M8、F9、K11、Q26、L29、E35、D41、F44、およびP46からなる群より選択される1~8個のアミノ酸が別のアミノ酸に置き換えられている、配列SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:38を含む、請求項24~27のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項30】
IL17に結合する前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントが、他のタンパク質またはポリペプチドに連結または融合されている、請求項24~29のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記他のタンパク質またはポリペプチドが、前記Sac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントを含む、請求項30記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記他のタンパク質またはポリペプチが、抗体であり、好ましくはTNFαまたはHer2/neuに結合する、請求項30記載のポリペプチド。
【請求項33】
有機分子にコンジュゲートされている、請求項24~32のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項34】
請求項24~32のいずれか一項記載のポリペプチドをコードするDNA配列を含む、遺伝子構築物。
【請求項35】
請求項34記載の遺伝子構築物を含むベクター。
【請求項36】
そのゲノム中に請求項34記載の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
【請求項37】
請求項24~32のいずれか一項記載のポリペプチドを生成するための方法であって、
a.請求項34記載の遺伝子構築物によって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.ポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、前記方法。
【請求項38】
医薬としての請求項24~32のいずれか一項記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学の分野に属し、特に、複数の結合特異性を有する新規な分子およびコンジュゲートの開発に関する。
【背景技術】
【0002】
緒言
二重特異性モノクローナル抗体(Mab)は、異なる2種類の抗原に同時に結合できる人工タンパク質である。それらは、複数の構造形式で製造することができる。それらは概して、がん免疫療法および薬物送達のために用いられる。
【0003】
以下の異なる種類の二重特異性抗体の形式が存在する:
- 完全なIgG構造を維持する二重特異性抗体。これらは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食作用(ADCP)、補体結合、およびFcRn媒介性リサイクリングなどのFc媒介性エフェクター機能から利益を得て、(長い半減期を担う)。それらは、2つのFabアームと1つのFc領域とを含み、2つのFab部位は異なる抗原に結合する。概して、各重鎖および軽鎖対は独特のmAbに由来する。これらの二重特異性抗体は多くの場合、クアドローマ(quadroma)法またはハイブリッドハイブリドーマ法で製造される。
- Fc欠失抗体。これらには、Fab領域のみからなる化学的に連結させたFab、ならびに様々なタイプの二価および三価の単鎖可変断片(scFv)、または2つの抗体の可変ドメインを模倣する融合タンパク質が含まれる。
【0004】
完全IgG二重特異性抗体はさらに、対称性分子または非対称性分子のいずれかをもたらすその工学プロセスに応じて区別することができ、それらによって、異なる課題がもたらされる。
【0005】
非対称性二重特異性抗体は、酵素的に補助されるインビトロでの鎖交換(chain swapping)または異なるハイブリドーマの融合(クアドローマと称される)の結果である。しかしながら、これらの技術は、分離されなければならない望ましくない副産物を高含量で有する混合物中に期待される二重特異性分子を生じさせる。一例として、クアドローマ技術では、1つの細胞に発現させた2つの抗体の重鎖および軽鎖の無作為な対形成によって、理論的には16種類の異なる組み合わせ(10種類の異なる分子)がもたらされ、1つのみが二重特異性であり、残りの対形成は非機能性または単一特異性分子である。そのようなプロセスは、溶液中に12.5%の統計量(および回収率)の二重特異性分子をもたらす。
【0006】
次いで、主要な課題は、重鎖および軽鎖の正確な対形成を駆動する能力にある。これは、重鎖ではKnob-into-holeなどの技術、および軽鎖ではCrossmabなどの技術によって評価されている。これらの技術の実行によって、作製プロセスの過程での副産物の数の有意な低下を得ることが可能になるが、この達成は、正確な重鎖および軽鎖の会合を支持する多数の点変異の挿入によってのみ可能となり、分子がさらに開発される能力に関して因果関係がないわけではない。具体的には、そのような抗体は、Fc領域が有害な下流免疫反応を引き起こす、免疫原性を有する可能性がある。
【0007】
対称性二重特異性抗体はそうではなく、追加のScFvドメインの融合(タンデムFab-IgG、DVD-IG、CODV-Ig・・・)に依拠し、最初のIgGにさらなる特異性をもたらす。ここで検討すべき重大な課題は、ScFvをIgGに連結するリンカー、および連結されるScFvの固有の安定性に頼っており、これらは、製造可能性および生成に影響を及ぼす可能性がある。このことは二重特異性抗体で特に当てはまり、三重または四重特異性抗体を検討する際にさらに一層課題となる。
【0008】
二重特異性分子および特に抗体は、同じ経路、平行経路、または異なる経路上の複数の標的に対応する必要がある場合にいつでも用いることができる。具体的には、そのような二重特異性抗体は、がん免疫療法において開発されており、腫瘍細胞と細胞傷害性細胞の両方に結合する。二重特異性抗体はまた、高い細胞傷害能も有し、相対的に弱く発現している抗原に結合する。さらに、2つ以上の分子を標的とすることは、平行経路の調節を回避し、処置に対する耐性を避けるのに有用であり得る。
【0009】
WO 2012/009705は、1つまたは複数のモジュラー認識ドメインを含む複合体に関し、代替スキャフォールドとして(超高熱性古細菌由来のSac7dに基づく)アフィチンを挙げている。しかしながら、この文献それ自体は、いわゆるアフィチンの性質、具体的には、その具体的な構造についてのいずれかの情報、またはこれらの性質についてのいずれかの記載を提供しておらず、また、この文献は実際に、いずれかの複合体が適切に折りたたまれ、活性を維持することも明らかにしていない。要約すると、この文献の教示は不完全かつ不確かなものである。
【0010】
Yu et al(MAbs. 2014;6(6):1598-607(非特許文献1)) D2は、IL6に結合するアフィボディZIL6に融合させたアダリムマブ(TNFaに結合するヒト化抗体)を開示している。アフィボディ分子は、高親和性で標的タンパク質に結合するように操作された3ヘリックス束ドメインに基づく小タンパク質からなる抗体ミメティックであり、本明細書において開示されるOBフォールドドメインとは異なる。この文献は、収率に関係するいかなる情報も記述していない。
【0011】
Brack et al(Mol Cancer Ther. 2014 Aug;13(8):2030-9(非特許文献2))は、抗Her2抗体ペルツズマブ(pertuzumab)と、ヒトFynキナーゼのSH3ドメインに由来する7 kDaの球状タンパク質であるFynSH3由来結合タンパク質とを含む、二重特異性Her2ターゲティング融合タンパク質を開示している。
【0012】
Jarviluoma et al(PLoS One. 2012;7(7):e40331(非特許文献3))は、関心対象の複数のタンパク質に結合するように操作された57アミノ酸長のSH3ドメインに融合させたシングルドメイン抗体断片(ラマIg重鎖可変ドメイン、VHH)であるネフィン(neffin)を開示している(要約を参照されたい)。この文献に開示された単鎖ネフィンタンパク質は、2つの重鎖および軽鎖を含む改変抗体と混同されない。
【0013】
Spangler et al(J Mol Biol. 2012 Sep 28;422(4):532-44(非特許文献4))は、ヒトフィブロネクチンの第10タイプIIIドメインの操作されたEGFR結合バリアントに融合された、セツキシマブ(cetuximab)ベースの抗EGFR抗体を開示している。これらの複合体は、本明細書において開示される複合体とは異なる。
【0014】
WO 2008/100470(特許文献1)は、Ig融合タンパク質を開示しており、本明細書において開示されるOBフォールドタンパク質およびバリアントを記述しておらず、また改変抗体の生成でのそれらの使用についても記述していない。
【0015】
このように、優れた収率で簡単に生成され、かつ抗体と同じくらい安定であることも期待される、多重特異性分子は依然として開発中である。
【0016】
出願人は、抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも1つのN末端またはC末端にOBフォールドドメインが位置している当該抗体(通常の抗体または二重特異性抗体)を含む新規人工タンパク質を作出することによって、そのような分子を生成することを提案する。OBフォールドドメインは好ましくは、以下の遺伝子操作によって抗体の鎖に融合または連結されている:ドメインをコードする配列を抗体の重鎖および/または軽鎖配列の5’端および/または3’端に遺伝子的に融合させ、そして、この改変された配列を適切な細胞株または細菌系統に導入することによって、タンパク質人工タンパク質が生成される。抗体とOBフォールドドメインとの間に数個のアミノ酸(リンカー)が加えられてもよいことに留意されたい。
【0017】
実施例は、OBドメインを融合させていない抗体と比較して、より高いまたは少なくとも類似または同等の収率の、本開示のポリペプチドが得られることを示す。実施例は、そのような作用は種々の構築物で得られることを示す。抗体およびOBフォールドドメイン(特に、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアント)はそれらの機能性を保持することから、これは、それらがその構造を保持していることを示す。OBフォールドドメインは、特にSac7dファミリーのタンパク質であるとして選択される場合、生成プロセスの間にわたり抗体鎖を安定化し、このために、収率の向上を可能にし得ると考えられかつ仮定される。したがって、実施例における種々の複合体で観察される作用は、同じ構造を持つ全ての他の抗体およびOBフォールドバリアントに一般化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】WO 2008/100470
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】MAbs. 2014;6(6):1598-607
【非特許文献2】Mol Cancer Ther. 2014 Aug;13(8):2030-9
【非特許文献3】PLoS One. 2012;7(7):e40331
【非特許文献4】J Mol Biol. 2012 Sep 28;422(4):532-44
【発明の概要】
【0020】
本発明は、このように、改変抗体を含むポリペプチドに関する。当該抗体は、好ましくは重鎖または軽鎖のN末端またはC末端での、免疫グロブリン単量体の重鎖または軽鎖の少なくとも1つへのOBフォールドドメインの少なくとも1つのバリアントの融合によって改変されている。
【0021】
当該融合は、好ましくは遺伝子操作によってなされるが、OBフォールドバリアントおよび抗体の重鎖または軽鎖の化学的連結も予測される。
【0022】
好ましくは、バリアントは、その天然リガンドへのOBフォールドドメインの結合部位に5~20個の変異残基を含む。
【0023】
OBフォールドドメインおよび抗体は、異なる標的または同じ標的の異なるエピトープに結合できてもよく、それによって、本明細書に開示のタンパク質は、これらの複数の標的または所与の標的の複数のエピトープに結合することができることになる。
【0024】
図1(対称性分子のみを図示している)に示すように、OBフォールドドメイン抗体の2つ以上のバリアントが、抗体の軽鎖または重鎖に結合する可能性がある。本発明のタンパク質が対称性である場合(すなわち、同じヘテロ二量体で構成される場合)、すなわち、同じOBフォールドバリアントがタンパク質の2つの軽鎖または重鎖に融合されている場合が好ましい。しかしながら、1つのOBフォールドバリアントのみが重鎖または軽鎖の1つのみに結合している態様も含まれ、1つのOBフォールドバリアントがタンパク質の軽鎖または重鎖に結合し、かつ別の(異なる)OBフォールドバリアントが他の軽鎖または重鎖に結合している態様も含まれる。よって、複数の組み合わせが可能であり、図1は網羅的ではない。
【0025】
具体的には、示すように、OBフォールドバリアントは抗体の2つの重鎖または軽鎖に融合されている。OBフォールドバリアントは、重鎖または軽鎖のそれぞれで同じでもまたは異なっていてもよい。別の態様において、OBフォールドバリアントは、抗体の少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖に融合されている。OBフォールドバリアントは、重鎖および軽鎖で同じでも異なっていてもよい。
【0026】
別の態様において、2つのOBフォールド(同じまたは異なる)バリアントは、(鎖のN末端およびC末端で)同一の軽鎖または重鎖に融合されている。
【0027】
タンパク質は、1つのOBフォールドバリアントを含んでもよい。それは、2つのOBフォールドバリアントを含んでもよい(これらが同じでありかつタンパク質に対して対称に存在する場合が好ましい)。それは3つのOBフォールドバリアントを含んでもよい。それは4つのOBフォールドバリアントを含んでもよい(2対のOBフォールドバリアントが存在する場合かつタンパク質が対称性である場合が好ましい)。それは5つのOBフォールドバリアントを含んでもよい。それは6つのOBフォールドバリアントを含んでもよい(3対のOBフォールドバリアントが存在する場合かつタンパク質が対称性である場合が好ましい)。それは7つのOBフォールドバリアントを含んでもよい。それは8つのOBフォールドバリアントを含んでもよい(4対のOBフォールドバリアントが存在する場合が好ましい;この場合、タンパク質は対称性である)。対称性であるタンパク質は同じ重鎖および軽鎖から作られるタンパク質であることが想起される。
【0028】
本発明は、
a.その3’端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列
b.その5’端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列
c.その3’端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列
d.その5’端で、OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列
からなる群より選択されるDNA配列を含む遺伝子構築物にも関する。
【0029】
これらの遺伝子配列は、その相補的(complementary)な抗体遺伝子配列(aまたはbの場合は軽鎖をコードする配列、cまたはdの場合は重鎖をコードする配列)と共に適切な宿主細胞に導入される場合に、本明細書に開示されるタンパク質の生成を可能にする。本発明はまた、このような遺伝子構築物を含むベクター、ならびに(好ましくは相補的な配列と共に)そのゲノム中に本発明のそのような遺伝子構築物を含む宿主細胞(特に、真核細胞)に関する。
【0030】
本発明はまた、
a.細胞培養物を培養する工程であって、該細胞が、記載される遺伝子構築物およびその相補的な抗体配列によって形質転換されている、工程、ならびに
b.その結果生成されるポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、本発明のポリペプチドを生成するための方法にも関する。
【0031】
そのような培養は、遺伝子構築物を発現させ、かつ遺伝子構築物から発現したタンパク質が構築される条件で行われる。この方法は特に、ポリペプチドが培養培地中に分泌される場合に適している。
【0032】
本発明はまた、
(a)記載される遺伝子構築物およびその相補的な抗体配列によって形質導入されている細胞を培養する工程;
(b)細胞を収集する工程;ならびに
(c)細胞を破壊して、記載されるポリペプチドを含む粗抽出物を得る工程
からなる工程を含む、本発明のポリペプチドを生成するための方法にも関する。
【0033】
本発明には、OBフォールドドメインのバリアントをコードする配列を抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも5’端または3’端に遺伝子的に融合させる工程、およびその結果得られた遺伝子構築物を回収する工程を含む、記載されるポリペプチドを生成するための遺伝子構築物を生成するための方法も含まれる。
【0034】
本発明はまた、OBフォールドバリアントまたは抗体結合部位によって少なくとも1つの標的に結合される、本明細書に開示されるポリペプチドからなる複合体にも関する。したがって、そのような標的は、抗体の抗原またはOBフォールドバリアントが結合する標的である。
【0035】
本発明は、単一かつ非常に簡便な方法(抗体配列(軽鎖または重鎖コード配列)とOBフォールドコード配列との融合からなる簡便な遺伝子改変)により二重特異性または多重特異性分子を得ることを可能にすることから、特に興味深い。
【0036】
好ましい態様において、本方法は、適切な遺伝子ベクターで形質転換した細胞における生成後に回収されたタンパク質の100%が確実に同じ種類のものであることを可能にし、それによって、二重特異性分子の統計量(および回収率)は概して、溶液中およそ12.5%であるという、上記で想起した二重特異性抗体の精製の問題を解決する。さらに、本明細書において開示される方法は、抗体(キメラ、ヒト、マウス由来、ラット、または任意のイディオタイプ由来)と同程度の多様性を有する多重特異性分子を得ることを可能にする。抗体の全般的な構造は改変されないことから、分子は抗体の特徴および性質の全て(Fc断片によるものなど、非Fab断片による任意の作用を含む)を保持することにも留意されたい。また、本明細書において開示される分子は、抗体に改変が行われているにもかかわらず、抗体およびOBフォールドドメイン両方の結合部位で結合することができることも非常に驚くべきことである。したがって、そのような二重特異性結合能は、ポリペプチド断片分子(抗体部分およびOBフォールドドメイン部分)の適切なフォールディングが維持されていることを示唆する。最後に、分子の生成収率が維持される(抗体生成収率と比較して)、さらには向上すると認められたことも驚くべきことであった。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
OBフォールドドメイン
上記に示されるように、OBフォールドドメインは、その結合部位内に変異を導入することによって、特定の標的に結合するバリアントへと操作することができる。
【0038】
本願の文脈において、「OBフォールドドメイン」(または「OBフォールドタンパク質」)という用語は、天然OBフォールドタンパク質を意味するが、OBフォールドを有する、およびより複雑なタンパク質から単離されるドメインも意味する。これらのOBフォールドドメインは具体的には、WO 2007/139397およびWO 2008/068637により詳細に記載される。この用語はまた、遺伝子操作によって、N末端またはC末端の位置において、OBフォールドタンパク質またはOBフォールドを有するドメインを関心対象のタンパク質またはドメイン、例えば、よりよい精製を可能にするタグに融合させることによって得ることができるポリペプチドも含む。
【0039】
本発明の文脈において、しかしながら、そのようなポリペプチドがOBフォールドドメイン内に存在しない他の配列を含む場合には、OBフォールドのトポロジーを有しかつ全長タンパク質を有さないドメインのみを用いることが好ましい。実際、できる限り小さなタンパク質を用いることが好ましく、好ましくは、本発明の文脈において用いられるOBフォールドドメインのバリアントは、最大で300個のアミノ酸、好ましくは最大で200個のアミノ酸、好ましくは最大で175個のアミノ酸、より好ましくは最大で150個のアミノ酸、より好ましくは最大で100個のアミノ酸を含有する。1つの特定の態様において、それは最大で80個または最大で70個のアミノ酸を含有する。
【0040】
OBフォールドドメインの結合部位
OBフォールドタンパク質は当技術分野において公知である。それらは具体的には、上記で引用された文献に記載され、Arcus(Curr Opin Struct Biol. 2002 Dec; 12(6):794-801)にも記載される。OBフォールドは、5つのベータ(β)シートを有する円柱の形態をとる。大部分のOBフォールドタンパク質は、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、タンパク質、金属イオン、または触媒基質であり得る、その天然リガンドの同一の結合界面を用いる。この結合界面は、ベータシート内に位置する残基を主に含む。ループ内に位置するある特定の残基もまた、OBフォールドタンパク質とその天然リガンドとの結合に関与し得る。したがって、出願WO 2007/139397およびWO 2008/068637ならびにArcusの文献(2002、前記)は、その天然リガンドとの結合のためのOBフォールドタンパク質ドメインを記載している。
【0041】
具体的には、文献WO 2008/068637は、OBフォールドタンパク質の結合ドメインを特定する方法を正確に記載している。
【0042】
ウェブサイトWU-Blast2(http://www.ebi.ac.uk/blast2/index.html)(Lopez et al., 2003, Nucleic Acids Res 31, 3795-3798)、T-COFFEE(http://www.ch.embnet.org/software/TCoffee.html)(Notredame et al., 2000, J Mol Biol 302, 205-217)、およびDALI lite(http://www.ebi.ac.uk/DaliLite/)(Holm and Park, 2000, Bioinformatics 16, 566-567)を用いて、OBフォールドドメインを有するタンパク質の複数の配列および3D構造を重ね合わせることによって、結合ドメインの位置、具体的には改変することができるアミノ酸を特定することが可能である。Sac7d(SEQ ID NO:1)の配列を参照とすると、これらは、残基V2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51である。
【0043】
他のOBフォールドタンパク質の結合ドメインは、WO 2008/068637に記載されているように特定することができる。この出願は、DALIウェブサイト(http://www.ebi.ac.uk/dali/interactive.html)(Holm and Sander, 1998, Nucleic Acids Res 26, 316-319)を用いて、OBフォールドタンパク質またはドメイン(この出願では、Sac7dを含む10個のドメインが使用されている)の3D構造の重ね合わせを実施することが可能であることを示している。したがって、任意のOBフォールドタンパク質(または任意のOBフォールドドメイン)について、結合部位に含まれかつ上述のSac7dアミノ酸に対応するアミノ酸を特定することは容易である。したがって、これらのタンパク質の1つにおいて変異させることができるアミノ酸を提供することによって、任意の他のOBフォールドドメインにおける対応するアミノ酸を特定することが可能になる。
【0044】
OBフォールドスキャフォールドから一部のアミノ酸を欠失させることも可能である。同様にこのSac7d配列を参照すると、欠失させることができる残基は、A59、R60、A61、E62、R63、E64、および/またはK66である。
【0045】
WO 2008/068637の教示は、任意で、OBフォールドタンパク質、具体的にはSac7dファミリーのタンパク質のループにアミノ酸を挿入できること;具体的には、ループ3(WO 2008/068637の図1bおよび2において定義される )、例えば、Sac7dの残基25~30の領域、好ましくは残基27と28との間に1~15個のアミノ酸残基の挿入を行うことができ、ループ4(WO 2008/068637の図1bおよび2において定義される )、例えば、Sac7dの残基35~40の領域、好ましくは残基37と38との間に1~15個のアミノ酸残基の挿入を行うことができ、ループ1(WO 2008/068637の図1bおよび2において定義される )、例えば、Sac7dの残基 7~12の領域、好ましくは残基9と10との間に1~20個の残基の挿入を行うことができる。
【0046】
OBフォールドドメインの変異体の入手
WO 2007/139397は、OBフォールドタンパク質とその天然のリガンドとの結合のためのOBドメインに変異を導入することによってOBドメインが改変されているOBフォールドタンパク質のライブラリーの使用を記載している。具体的には本明細書において予測されるように、改変OBフォールドドメインは、a)天然に生じるOBフォールドドメインと比較してOBフォールドドメインの結合面のβストランド中に少なくとも1つの改変アミノ酸残基、またはb)OBフォールドドメイン結合面のβストランド中に少なくとも1つの改変アミノ酸残基およびOBフォールドドメインループ領域のストランド中に少なくとも1つの改変アミノ酸残基、またはc)OBフォールドドメインループ領域のストランド中に少なくとも1つの改変アミノ酸残基を含む。概して、改変OBフォールドドメインは、天然に生じるOBフォールドドメインと比較して結合特徴が変更されている。
【0047】
WO 2008/068637は、関心対象の標的に対する親和性を有するリガンドを得るためのSac7dタンパク質に基づくライブラリーの使用を記載している。WO 2008/068637に記載された方法は、この野生型OBフォールドタンパク質の結合部位のある特定のアミノ酸で変異を示す、野生型タンパク質のバリアントの生成をもたらすある特定のランダム変異の存在を除き、全てが同一配列を有する複数のDNA分子を含有するコンビナトリアルライブラリーの作製を含む。具体的には、WO 2008/068637の文脈において、野生型OBフォールドタンパク質は、具体的には、K7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、T40、R42、A44、S46より選択されるアミノ酸に、またはV26、G27、K28、M29、S31、R42、A44、S46、E47 およびK48などの他のアミノ酸に対して、可変性を生じるための変異が導入されている、Sac7dタンパク質である。これらのアミノ酸は、SEQ ID NO:1によって表されるSac7d配列に基づく。
【0048】
WO 2012/150314は、Sac7dファミリーの1つのタンパク質由来の変異が同一ファミリーの別のタンパク質に運ぶことができることを示す。このポータビリティは結果的に、Sac7dファミリーの1つタンパク質の変異体から出発して、Sac7dファミリーの別のタンパク質の変異体を作出することになる。最初の変異体は、具体的にはWO 2008/068637のプロセスを実行することによって、得られていてもよい。
【0049】
既に、(特に、標的がタンパク質またはペプチドである場合に)所与の標的に対するそのような変異体を得ることが可能であることが示されている。免疫グロブリン(Behar et al, Protein Engineering, Design & Selection vol. 26 no. 4 pp. 267-275, 2013)または他のタンパク質(WO 2008/068637)に結合するバリアントを挙げることができる。Gera et al(J Mol Biol. 2011 Jun 17;409(4):601-16)もまた、Sso7dから出発してそのようなタンパク質を得る可能性を示している。Gocha et al(Scientific Reports 7, Article number: 12021(2017))はまた、Sso7dから変異体を得られることを報告した。
【0050】
OBフォールドドメインの例
本発明にしたがって用いることができるOBフォールドタンパク質の非限定的な例は、Sac7d、Sso7d、SEBのN末端ドメイン(Papageorgiou et al., 1998)、Shiga様毒素IIeのA鎖(PDB 2bosa)、ヒトNeutrophil Activatin Peptide-2(NAP-2、PDB 1tvxA)、アゾトバクター・ビネランディイ(Azotobacter vinelandii)のモリブデン結合タンパク質(modg)(PDB 1h9j)、SPE-CのN末端ドメイン(Roussel et al., 1997)、大腸菌(E. coli)Shiga様毒素のB5サブユニット(Kitov et al., 2000)、Cdc13(Mitton-Fry et al., 2002)、ヒトY-boxタンパク質 YB-1の低温ショックDNA結合ドメイン(Kloks et al., 2002)、the大腸菌無機ピロホスファターゼEPPase(Samygina et al., 2001)、または(Arcus、2002)の文献の表3に挙げられたタンパク質のいずれか、例えば、1krs(Lysyl-tRNA合成酵素LysS、大腸菌)、1c0aA(Asp- tRNA合成酵素、大腸菌)、1b8aA(Asp- tRNA合成酵素、P. コダカレンシス(P. kodakaraensis))、1lylA(Lysyl-tRNA合成酵素LysU、大腸菌)、1quqA(複製タンパク質A、32kDaサブユニット、ヒト)、1quqB(複製タンパク質A、14kDaサブユニット、ヒト)、1jmcA(複製タンパク質A、70kDaサブユニット(RPA70断片、ヒト)、1otc(テロメア末端結合タンパク質、O. nova)、3ullA(ミトコンドリアssDNA結合タンパク質、ヒト)、1prtF(百日咳毒素S5サブユニット、百日咳菌(B. pertussis))、1bcpD(百日咳毒素S5サブユニット(ATP結合型)、百日咳菌)、3chbD(コレラ毒素、コレラ菌(V. cholerae))、1tiiD(熱不安定性毒素、大腸菌)、2bosA(ベロ毒素1/Shiga毒素、B-五量体、大腸菌)、1br9(TIMP-2、ヒト)、1an8(スーパー抗原SPE-C、化膿レンサ球菌(S. pyogenes))、3seb(スーパー抗原SPE、黄色ブドウ球菌(S. aureus))、1aw7A(毒素性ショック症候群毒素、黄色ブドウ球菌)、1jmc(主要低温ショックタンパク質、大腸菌)、1bkb(翻訳開始因子5a、P. アエロフィルム(P. aerophylum))、1sro(PNPaseの S1 RNA結合ドメイン、大腸菌)、1d7qA(翻訳開始因子1、elF1a、ヒト)、1ah9(翻訳開始因子1、IF1、大腸菌)、1b9mA(Mo依存性転写調節因子ModE、大腸菌)、1ckmA(RNAグアニリルトランスフェラーゼ、クロレラウイルス、PBCV-1)、1a0i(ATP依存性DNAリガーゼ、バクテリオファージ T7)、1snc(ブドウ球菌ヌクレアーゼ、黄色ブドウ球菌),1hjp(DNAヘリカーゼRuvAサブユニット、N末端ドメイン、大腸菌)、1pfsA(遺伝子Vタンパク質、シュードモナスバクテリオファージpf3)、1gvp(遺伝子Vタンパク質、糸状バクテリオファージ(f1、M13))、1gpc(遺伝子32タンパク質(gp32)コア、バクテリオファージ T4)、1wgjA(無機ピロホスファターゼ、出芽酵母(S. cerevisiae))、および2prd(無機ピロホスファターゼ、T. サーモフィラス(T. thermophilus))である。
【0051】
OBフォールドドメインの具体的かつ好ましい例
Sac7dファミリーは、Sac7dタンパク質に関連するものとして定義され、極限環境細菌から単離された7 kDaのDNA結合タンパク質のファミリーに相当する。
【0052】
これらのタンパク質およびこのファミリーは具体的には、WO 2008/068637に記載される。したがって、本発明の文脈内で、タンパク質は、配列SEQ ID NO:1~SEQ ID NO:14の1つを有する場合、またはコンセンサス配列である配列SEQ ID NO:15(SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:9およびSEQ ID NO:12からSEQ ID NO:14から得られる。このコンセンサス配列では、ダッシュ記号-はアミノ酸なしを示し、タンパク質は全てが同じサイズを有するわけではない)に対応する配列を有する場合に、Sac7dファミリーに属する。このSac7dファミリーは、具体的には、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来のSac7dまたはSac7eタンパク質、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のSso7dタンパク質、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)由来のSto7タンパク質とも呼ばれるDBP 7、スルホロブス・シバタエ(Sulfolobus shibatae)由来のSsh7bタンパク質、スルホロブス・シバタエ由来のSsh7aタンパク質、メタロスファエラ・セデュラ(Metallosphaera sedula)由来のMse7、メタロスファエラ・キュプリナ(Metallosphaera cuprina)由来のMcu7、アシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)由来のAho7aまたはAho7bまたはAho7c、スルホロブス・イスランディカス(Sulfolobus islandicus)由来のSis7aまたはSis7b、およびスルホロブス・ソルファタリカス由来のp7ssタンパク質を含む。Sac7dファミリーのタンパク質の配列の広範な類似性を鑑みると、Sac7dの所与のアミノ酸に対応するSac7dとは別のタンパク質のアミノ酸を特定することは直接的に可能でありかつ容易である。
【0053】
(野生型タンパク質と比べた)該バリアントにおける変異残基の数は好ましくは5~25個であることに留意されたい。本発明は、野生型OBフォールドタンパク質(またはドメイン)と比較して、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも7または 8個、一層より好ましくは少なくとも10個の置換アミノ酸を有するが、概して25個未満、より好ましくは24個未満、一層より好ましくは20個未満または15もしくは14個未満の置換アミノ酸を有するバリアントによって実行することができる。野生型OBフォールドドメインと比べて、OBフォールドドメインの結合部位において7、8、9、10、11、12、13、または14個のアミノ酸が変異している場合が好ましい。これらの変異は、Sac7d(SEQ ID NO:1)のV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸に導入される。
【0054】
特定の態様において、変異アミノ酸の数は7~14個の間である(上限値および下限値を含む)。
【0055】
1つの特定の態様において、これらのバリアントは上記に示されるアミノ酸挿入も含み得る。
【0056】
示したように、Sac7dファミリーのタンパク質は、スルホロブス・アシドカルダリウス由来のSac7dまたはSac7e、スルホロブス・ソルファタリカス由来のSso7d、スルホロブス・トコダイイ由来のSto7とも呼ばれるDBP 7、スルホロブス・シバタエ由来のSsh7b、スルホロブス・シバタエ由来のSsh7a、メタロスファエラ・セデュラ由来のMse7、メタロスファエラ・キュプリナ由来のMcu7、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7aまたはAho7bまたはAho7c、スルホロブス・イスランディカス由来のSis7aまたはSis7b、およびスルホロブス・ソルファタリカス由来のp7ssである。Sac7d、Sso7d、Sac7e、Ssh7b、Ssh7a、DBP7、Sis7a(3アレル)、Mse7、Mcu7、Aho7a、Aho7b、およびAho7cタンパク質の種々の配列はそれぞれ、SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:14によって表される。
【0057】
このSac7dファミリーのタンパク質のバリアントはナノフィチン(nanofitin)と呼ばれてもよい。本発明は、このように、SEQ ID NO:1からSEQ ID NO:14のいずれかによって表されるタンパク質のバリアント、または配列SEQ ID NO:15を有するタンパク質のバリアント、具体的にはSac7dのバリアントに対して優先的に実行される。
【0058】
好ましい態様において、変異アミノ酸は、V2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51(SEQ ID NO:1および図2のアライメントを参照して)からなる群において選択される。図2のアライメントから、任意の他のタンパク質において、Sac7dの上記で特定したアミノ酸に対応するアミノ酸を特定することが可能である。バリアントは、これらのアミノ酸の中から選択された変異アミノ酸(好ましくは上述のように7~12個)を含むものとし、(すなわち、Sa7dの他の残基の中から選択される)他の領域において他の変異アミノ酸(好ましくは0~5個)を含んでもよいことを留意されたい。上記で示されるように、A59、R60、A61、E62、R63、E64、および/またはK66は欠失させることができる。
【0059】
好ましい態様において、変異アミノ酸は、K7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、T40、R42、A44、およびS46からなる群より選択される。
【0060】
本明細書において開示されるバリアントは、WO 2008/068637に記載された方法(特にリボソームディスプレイを用いる、コンビナトリアルライブラリーの濃縮の種々の回数)によって得ることができる。
【0061】
したがって、OBフォールドドメインのバリアントは好ましくは、タンパク質の結合部位に5~20個(好ましくは7~14個)の変異アミノ酸を含む、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアント(Sac7dバリアント)である。好ましくは、Sac7dバリアントの変異アミノ酸は、V2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51(SEQ ID NO:1および図2のアライメントを参照)からなる群より選択される。好ましくは、Sac7dバリアントは、K7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、T40、R42、A44、およびS46からなる群において選択される7~14個の変異アミノ酸を含有する。
【0062】
WO 2008/068637に記載された方法の利点は、ある特定の数のアミノ酸が「ランダム化」されている、すなわち、ランダムなアミノ酸と置き換えられている、複数のバリアントを含有しているまたは発現しているコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって、OBフォールドタンパク質のバリアントを得ることが可能になるという点である。これらのライブラリーのスクリーニングは、コンビナトリアルライブラリーを作製した元となる野生型タンパク質の天然リガンド以外の関心対象の標的と、概して強力な親和性で(出願WO 2008/068637は実際、1ナノモルのオーダーでの親和性を記載している)特異的に結合するこれらのタンパク質のバリアントを特定することを可能にする。
【0063】
上記に示されるように、出願人は、所与の標的に結合するOBフォールドドメインを、同じ標的(それによって特異性および親和性が増大する)または別の標的(それによって多重特異性結合タンパク質を得る)のいずれかに結合する抗体の重鎖または軽鎖に融合させることによって、特異的結合タンパク質を作製することが可能になることを示すことができた。
【0064】
この融合は、抗体鎖(重鎖および/または軽鎖)のN末端および/またはC末端で行うことができる。特に、Sac7dファミリー由来のタンパク質などの小さなOBフォールドドメイン(約70アミノ酸)用いる場合、抗体領域と改変OBフォールドドメインからなるさらなる結合領域とを有する抗体の構造(2つの重鎖と対になった2つの軽鎖、および一緒に対になったそのような二量体)を有する分子を得ることが可能になることに留意されたい。
【0065】
抗体
抗体は、Fab可変領域を介して抗原を認識する大きなY字型のタンパク質である。それらは典型的には、4つのポリペプチド鎖で作られる:ジスルフィド結合で連結された2つの同じ重鎖(約400~500アミノ酸)および2つの同じ軽鎖(約211~217アミノ酸)。各鎖は、免疫グロブリンドメインと呼ばれる構造ドメインで構成される。
【0066】
抗原結合断片に付着してもよく、かつ抗体を5種類のアイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)にグループ分け可能にする、5種類の異なる断片(Fc)を定義する複数の異なるタイプの抗体重鎖が存在する。各重鎖は、定常領域および可変領域を有し、定常領域は同じアイソタイプの全ての抗体で同じだが、異なるアイソタイプの抗体では異なっている。
【0067】
特定の態様において、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分はIgG分子である。
【0068】
別の態様において、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分はIgA分子である。
【0069】
別の態様において、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分はIgM分子である。
【0070】
別の態様において、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分はIgD分子である。
【0071】
別の態様において、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分はIgE分子である。
【0072】
抗体は、ヒト抗体、げっ歯類抗体(マウス抗体またはラット抗体など)、ネコ抗体、イヌ抗体、ニワトリ抗体、ヤギ抗体、ラクダ類抗体(ラクダ抗体、ラマ抗体、アルパカ抗体またはナノボディ)、サメ抗体、または任意の他の種由来の抗体であってもよい。それはキメラ抗体またはヒト化抗体であってもよい。Wikipediaにおいて想起されるように、ヒト化抗体は、ヒトにおいて天然に生じる抗体バリアントとのその類似性が増大するようにそのタンパク質配列が改変されている、非ヒト種由来の抗体である。キメラ抗体は、異なる種由来の配列を含有する。
【0073】
本明細書において開示される分子の一部である抗体は、2つの同じ重鎖(約400~500アミノ酸、概しておよそ450アミノ酸)および2つの同じ軽鎖を含む抗体である場合が好ましい。したがって、抗体は同じFab可変領域を含む。そのため、この抗体は、抗体の両方の部分(軽鎖および重鎖の組み合わせ)が抗原の同じエピトープに結合する単一特異性抗体である。
【0074】
しかしながら、抗体は異なる重鎖および/または軽鎖が存在してもよい。具体的には、いくつかの態様において、抗体は二重特異性抗体である。したがって、「抗体」という用語は、同じ重鎖および軽鎖を有する上記に開示される「古典的な抗体」、さらに2つ以上の特異性を有する操作された抗体の両方を包含する。
【0075】
特定の態様において、抗体は、ある1つの抗体由来の1つの重鎖および軽鎖ならびに別の抗体由来の別の重鎖および軽鎖が存在する。
【0076】
具体的には、本明細書において開示される分子において使用可能な抗体は、Triomab(Trion Pharma)、KIH(knobs-into-holes)IgG(Xu et al、MAbs. 2015; 7(1): 231-242、Dillon et al、MABS 2017、9(2)、213-230)(おそらくKlein et al MAbs.2012 Nov 1; 4(6): 653-663に示される共通の軽鎖を有する)、cross-Mab(Roche Technology、Klein et al、MAbs. 2016 Aug-Sep; 8(6): 1010-1020、Cain、Chris.(2011). Crossing over to bispecificity. Science-Business eXchange.)、ortho-Fab IgG(Lewis et al、Nat Biotechnol. 2014;32(2):191-8)、DVD(二重可変ドメイン)IgG(AbbVieによって開発)、2 in1-IgG(Genetechによって開発)、IgG-scFv(Orcutt er al, Protein Eng Des Sel. 2010 Apr;23(4):221-8)、またはDNL-Fab3であり得る。これらの抗体は全て、Kontermann and Brinkmann (Drug Discovery Today, 20 (7), 2015, 838-847)の図2またはBrinkmann and Kontermann (MABS, 2017, 9 (2), 182-212)に開示されている。Fan et al(Journal of Hematology & Oncology(2015) 8:130)もまた、二重特異性抗体およびその応用を記載している。
【0077】
IgG様形状を維持する三機能性の二重特異性抗体のTriomab(登録商標)ファミリーは、親のマウスIgG2aおよびラットIgG2bアイソタイプに起源をもつ、各々が1つの軽鎖および1つの重鎖を有する2つの半抗体からなるキメラである。
【0078】
特定の態様において、抗体は治療用抗体である。そのような治療用抗体は、疾患を治癒する、疾患の進行を遅らせる、または疾患の症状を軽減するためにヒトにおいて用いることができる。
【0079】
治療用抗体は好ましくは以下からなる群より選択される:3F8、8H9、アバゴボマブ(Abagovomab)、アブシキシマブ(Abciximab)、アビツズマブ(Abituzumab)、アブリルマブ(Abrilumab)、アクトクスマブ(Actoxumab)、アダリムマブ(Adalimumab)、アデカツムマブ(Adecatumumab)、アデュカヌマブ(Aducanumab)、アファセビクマブ(Afasevikumab)、アフェリモマブ(Afelimomab)、アフツズマブ(Afutuzumab)、アラシズマブ ペゴル(Alacizumab pegol)、ALD518、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、アリロクマブ(Alirocumab)、アルツモマブ ペンテテート(Altumomab pentetate)、アマツキシマブ(Amatuximab)、アナツモマブ マフェナトックス(Anatumomab mafenatox)、アネツマブ ラブタンシン(Anetumab ravtansine)、アニフロルマブ(Anifrolumab)、アンルキンズマブ(Anrukinzumab)、アポリズマブ(Apolizumab)、アルシツモマブ(Arcitumomab)、アスクリンバクマブ(Ascrinvacumab)、アセリズマブ(Aselizumab)、アテゾリズマブ(Atezolizumab)、アチヌマブ(Atinumab)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、アベルマブ(Avelumab)、バピネオズマブ(Bapineuzumab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、バビツキシマブ(Bavituximab)、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベゲロマブ(Begelomab)、ベリムマブ(Belimumab)、ベンラリズマブ(Benralizumab)、ベルチリムマブ(Bertilimumab)、ベシレソマブ(Besilesomab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ベズロトクスマブ(Bezlotoxumab)、ビシロマブ(Biciromab)、ビマグルマブ(Bimagrumab)、ビメキズマブ(Bimekizumab)、ビバツズマブ メルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブレセルマブ(Bleselumab)、ブリナツモマブ(Blinatumomab)、ブロンツベトマブ(Blontuvetmab)、ブロソズマブ(Blosozumab)、ボコシズマブ(Bococizumab)、ブラジクマブ(Brazikumab)、ブレンツキシマブ ベドチン(Brentuximab vedotin)、ブリアキヌマブ(Briakinumab)、ブロダルマブ(Brodalumab)、ブロルシズマブ(Brolucizumab)、ブロンチクツズマブ(Brontictuzumab)、ブロスマブ(Burosumab)、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、カナキヌマブ(Canakinumab)、カンツズマブ メルタンシン(Cantuzumab mertansine)、カンツズマブ ラブタンシン(Cantuzumab ravtansine)、カプラシズマブ(Caplacizumab)、カプロマブ ペンデチド(Capromab pendetide)、カルルマブ(Carlumab)、カロツキシマブ(Carotuximab)、カツマキソマブ(Catumaxomab)、cBR96-ドキソルビシン免疫複合体、セデリズマブ(Cedelizumab)、セルグツズマブ アムナロイキン(Cergutuzumab amunaleukin)、セルトリズマブ ペゴル(Certolizumab pegol)、セツキシマブ、シタツズマブ ボダトックス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ(Cixutumumab)、クラザキズマブ(Clazakizumab)、クレノリキシマブ(Clenoliximab)、クリバツズマブ テトラキセタン(Clivatuzumab tetraxetan)、コドリツズマブ(Codrituzumab)、コルツキシマブ ラブタンシン(Coltuximab ravtansine)、コナツムマブ(Conatumumab)、コンシズマブ(Concizumab)、CR6261、クレネズマブ(Crenezumab)、クロテデュマブ(Crotedumab)、ダセツズマブ(Dacetuzumab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、ダピロリズマブ ペゴル(Dapirolizumab pegol)、ダラツムマブ(Daratumumab)、デクトレクマブ(Dectrekumab)、デミシズマブ(Demcizumab)、デニンツズマブ マホドチン(Denintuzumab mafodotin)、デノスマブ(Denosumab)、デパツキシズマブ マホドチン(Depatuxizumab mafodotin)、デルロツキシマブビオチン(Derlotuximab biotin)、デツモマブ(Detumomab)、ジヌツキシマブ(Dinutuximab)、ジリダブマブ(Diridavumab)、ドマグロズマブ(Domagrozumab)、ドルリモマブ アリトクス(Dorlimomab aritox)、ドロジツマブ(Drozitumab)、デュリゴツマブ(Duligotumab)、デュピルマブ(Dupilumab)、デュルバルマブ(Durvalumab)、ドゥシギツマブ(Dusigitumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ(Eculizumab)、エドバコマブ(Edobacomab)、エドレコロマブ(Edrecolomab)、エファリズマブ(Efalizumab)、エファングマブ(Efungumab)、エルデルマブ(Eldelumab)、エルゲムツマブ(Elgemtumab)、エロツズマブ(Elotuzumab)、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エマクツヅマブ(Emactuzumab)、エミベツズマブ(Emibetuzumab)、エミシズマブ(Emicizumab)、エナバツズマブ(Enavatuzumab)、エンホルツマブ ベドチン(Enfortumab vedotin)、エンリモマブ ペゴル(Enlimomab pegol)、エノブリツズマブ(Enoblituzumab)、エノキズマブ(Enokizumab)、エノチクマブ(Enoticumab)、エンシツキシマブ(Ensituximab)、エピツモマブ シツキセタン(Epitumomab cituxetan)、エプラツズマブ(Epratuzumab)、エレヌマブ(Erenumab)、エルリズマブ(Erlizumab)、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ(Etaracizumab)、エトロリズマブ(Etrolizumab)、エビナクマブ(Evinacumab)、エボロクマブ(Evolocumab)、エクスビビルマブ(Exbivirumab)、ファノレソマブ(Fanolesomab)、ファラリモマブ(Faralimomab)、ファルレツズマブ(Farletuzumab)、ファシヌマブ(Fasinumab)、FBTA05、フェルビズマブ(Felvizumab)、フェザキヌマブ(Fezakinumab)、フィバツズマブ(Fibatuzumab)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、フィギツムマブ(Figitumumab)、フィリブマブ(Firivumab)、フランボツマブ(Flanvotumab)、フレチクマブ(Fletikumab)、フォントリズマブ(Fontolizumab)、フォラルマブ(Foralumab)、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ(Fresolimumab)、フルラヌマブ(Fulranumab)、フツキシマブ(Futuximab)、ガルカネズマブ(Galcanezumab)、ガリキシマブ(Galiximab)、ガニツマブ(Ganitumab)、ガンテネルマブ(Gantenerumab)、ガビリモマブ(Gavilimomab)、ゲムツズマブ オゾガマイシン(Gemtuzumab ozogamicin)、ゲボキズマブ(Gevokizumab)、ギレンツキシマブ(Girentuximab)、グレンバツムマブ べドチン(Glembatumumab vedotin)、ゴリムマブ(Golimumab)、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、グセルクマブ(Guselkumab)、イバリズマブ(Ibalizumab)、イブリツモマブ チウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)、イクルクマブ(Icrucumab)、イダルシズマブ(Idarucizumab)、イゴボマブ(Igovomab)、IMAB362、イマルマブ(Imalumab)、イミシロマブ(Imciromab)、イムガツズマブ(Imgatuzumab)、インクラクマブ(Inclacumab)、インダツキシマブ ラブタンシン(Indatuximab ravtansine)、インデュサツマブ ベドチン(Indusatumab vedotin)、イネビリズマブ(Inebilizumab)、インフリキシマブ(Infliximab)、イノリモマブ(Inolimomab)、イノツズマブ オゾガマイシン(Inotuzumab ozogamicin)、インテツムマブ(Intetumumab)、イピリムマブ(Ipilimumab)、イラツムマブ(Iratumumab)、イサツキシマブ(Isatuximab)、イトリズマブ(Itolizumab)、イキセキズマブ(Ixekizumab)、ケリキシマブ(Keliximab)、ラベツズマブ(Labetuzumab)、ラムパリズマブ(Lampalizumab)、ラナデルマブ(Lanadelumab)、ランドグロズマブ(Landogrozumab)、ラプリツキシマブ エムタンシン(Laprituximab emtansine)、レブリキズマブ(Lebrikizumab)、レマレソマブ(Lemalesomab)、レンダリズマブ(Lendalizumab)、レンジルマブ(Lenzilumab)、レルデリムマブ(Lerdelimumab)、レクサツムマブ(Lexatumumab)、リビビルマブ(Libivirumab)、リファスツズマブ ベドチン(Lifastuzumab vedotin)、リジェリズマブ(Ligelizumab)、リロトマブ サテトラキセタン(Lilotomab satetraxetan)、リンツズマブ(Lintuzumab)、リリルマブ(Lirilumab)、ロデルシズマブ(Lodelcizumab)、ロキベトマブ(Lokivetmab)、ロルボツズマブ メルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ(Lucatumumab)、ルリズマブ ペゴル(Lulizumab pegol)、ルミリキシマブ(Lumiliximab)、ルムレツズマブ(Lumretuzumab)、MABp1、マパツムマブ(Mapatumumab)、マルジェツキシマブ(Margetuximab)、マスリモマブ(Maslimomab)、マツズマブ(Matuzumab)、マブリリムマブ(Mavrilimumab)、メポリズマブ(Mepolizumab)、メテリムマブ(Metelimumab)、ミラツズマブ(Milatuzumab)、ミンレツモマブ(Minretumomab)、ミルベツキシマブ ソラブタンシン(Mirvetuximab soravtansine)、ミツモマブ(Mitumomab)、モガムリズマブ(Mogamulizumab)、モナリズマブ(Monalizumab)、モロリムマブ(Morolimumab)、モタビズマブ(Motavizumab)、モキセツモマブ パスードトクス(Moxetumomab pasudotox)、ムロモナブ-CD(Muromonab-CD)、ナコロマブ タフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナミルマブ(Namilumab)、ナプツモマブ エスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)、ナラツキシマブ エムタンシン(Naratuximab emtansine)、ナルナツマブ(Narnatumab)、ナタリズマブ(Natalizumab)、ナビシキシズマブ(Navicixizumab)、ナビブマブ(Navivumab)、ネバクマブ(Nebacumab)、ネシツムマブ(Necitumumab)、ネモリズマブ(Nemolizumab)、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ネスバクマブ(Nesvacumab)、ニモツズマブ(Nimotuzumab)、ニボルマブ(Nivolumab)、ノフェツモマブ メルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オビルトキサキシマブ(Obiltoxaximab)、オビヌツズマブ(Obinutuzumab)、オカラツズマブ(Ocaratuzumab)、オクレリズマブ(Ocrelizumab)、オデュリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ(Ofatumumab)、オララツマブ(Olaratumab)、オロキズマブ(Olokizumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、オナルツズマブ(Onartuzumab)、オンツキシズマブ(Ontuxizumab)、オピシヌマブ(Opicinumab)、オポルツズマブ モナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ(Oregovomab)、オルチクマブ(Orticumab)、オテリキシズマブ(Otelixizumab)、オトレルツズマブ(Otlertuzumab)、オキセルマブ(Oxelumab)、オザネズマブ(Ozanezumab)、オゾラリズマブ(Ozoralizumab)、パジバキシマブ(Pagibaximab)、パリビズマブ(Palivizumab)、パムレブルマブ(Pamrevlumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、パンコマブ(Pankomab)、パノバクマブ(Panobacumab)、パルサツズマブ(Parsatuzumab)、パスコリズマブ(Pascolizumab)、パソツキシズマブ(Pasotuxizumab)、パテクリズマブ(Pateclizumab)、パトリツマブ,(Patritumab)、ペムブロリズマブ(Pembrolizumab)、ペムツモマブ(Pemtumomab)、ペラキズマブ(Perakizumab)、ペルツズマブ、ペキセリズマブ(Pexelizumab)、ピジリズマブ(Pidilizumab)、ピナツズマブ ベドチン(Pinatuzumab vedotin)、ピンツモマブ(Pintumomab)、プラクルマブ(Placulumab)、プロザリズマブ(Plozalizumab)、ポガリズマブ(Pogalizumab)、ポラツズマブ ベドチン(Polatuzumab vedotin)、ポネズマブ(Ponezumab)、プレザリズマブ(Prezalizumab)、プリリキシマブ(Priliximab)、プリトキサキシマブ(Pritoxaximab)、プリツムマブ(Pritumumab)、PRO 140、キリズマブ(Quilizumab)、ラコツモマブ(Racotumomab)、ラドレツマブ(Radretumab)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラルパンシズマブ(Ralpancizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、ラキシバクマブ(Raxibacumab)、レファネツマブ(Refanezumab)、レガビルマブ(Regavirumab)、レスリズマブ(Reslizumab)、リロツムマブ(Rilotumumab)、リヌクマブ(Rinucumab)、リサンキズマブ(Risankizumab)、リツキシマブ(Rituximab)、リババズマブ ペゴル(Rivabazumab pegol)、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロレデュマブ(Roledumab)、ロモソズマブ(Romosozumab)、ロンタリズマブ(Rontalizumab)、ロバルピツズマブ テシリン(Rovalpituzumab tesirine)、ロベリズマブ(Rovelizumab)、ルプリズマブ
(Ruplizumab)、サシツズマブ ゴビテカン(Sacituzumab govitecan)、サマリズマブ(Samalizumab)、サペリズマブ(Sapelizumab)、サリルマブ(Sarilumab)、サツモマブ ペンデチド(Satumomab pendetide)、セクキヌマブ(Secukinumab)、セリバンツマブ(Seribantumab)、セトキサキシマブ(Setoxaximab)、セヴィルマブ(Sevirumab)、SGN-CD19A、SGN-CD33A、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ(Sifalimumab)、シルツキシマブ(Siltuximab)、シムツズマブ(Simtuzumab)、シプリズマブ(Siplizumab)、シルクマブ(Sirukumab)、ソフィツズマブ ベドチン(Sofituzumab vedotin)、ソラネズマブ(Solanezumab)、ソリトマブ(Solitomab)、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スタムルマブ(Stamulumab)、スレソマブ(Sulesomab)、スビズマブ(Suvizumab)、タバルマブ(Tabalumab)、タカツズマブ テトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ(Tadocizumab)、タリズマブ(Talizumab)、タムツベトマブ(Tamtuvetmab)、タネズマブ(Tanezumab)、タプリツモマブ ペプトクス(Taplitumomab paptox)、タレクスツマブ(Tarextumab)、テフィバズマブ(Tefibazumab)、テリモマブ アリトクス(Telimomab aritox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ(Teneliximab)、テプリズマブ(Teplizumab)、テプロツムマブ(Teprotumumab)、テシドルマブ(Tesidolumab)、テツロマブ(Tetulomab)、テゼペルマブ(Tezepelumab)、TGN1412、チシリムマブ(Ticilimumab)(=トレメリムマブ(tremelimumab))、チガツズマブ(Tigatuzumab)、チルドラキズマブ(Tildrakizumab)、チモルマブ(Timolumab)、チソツマブ ベドチン(Tisotumab vedotin)、TNX-650、トシリズマブ(Tocilizumab)、トラリズマブ(Toralizumab)、トサトクスマブ(Tosatoxumab)、トシツモマブ(Tositumomab)、トベツマブ(Tovetumab)、トラロキヌマブ(Tralokinumab)、トラスツズマブ(Trastuzumab)、トラスツズマブ エムタンシン(Trastuzumab emtansine)、TRBS07、トレガリズマブ(Tregalizumab)、トレメリムマブ(Tremelimumab)、トレボグルマブ(Trevogrumab)、ツコツズマブ セルモロイキン(Tucotuzumab celmoleukin)、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウブリツキシマブ(Ublituximab)、ウロクプルマブ(Ulocuplumab)、ウレルマブ(Urelumab)、ウルトキサズマブ(Urtoxazumab)、ウステキヌマブ(Ustekinumab)、ウトミルマブ(Utomilumab)、バダスツキシマブ タリリン(Vadastuximab talirine)、バンドルツズマブ ベドチン(Vandortuzumab vedotin)、バンチクツマブ(Vantictumab)、バヌシズマブ(Vanucizumab)、バパリキシマブ(Vapaliximab)、バルリルマブ(Varlilumab)、バテリズマブ(Vatelizumab)、ベドリズマブ(Vedolizumab)、ベルツズマブ(Veltuzumab)、ベパリモマブ(Vepalimomab)、ベセンクマブ(Vesencumab)、ビシリズマブ(Visilizumab)、ボバリリズマブ(Vobarilizumab)、ヴォロシキシマブ(Volociximab)、ボルセツズマブマホドチン(Vorsetuzumab mafodotin)、ボツムマブ(Votumumab)、キセンツズマブ(Xentuzumab)、ザルツムマブ(Zalutumumab)、ザノリムマブ(Zanolimumab)、ザツキシマブ(Zatuximab)、ジラリムマブ(Ziralimumab)、およびゾリモマブアリトックス(Zolimomab aritox)。
【0080】
具体的には、そのような治療用抗体は、アダリムマブ(TNFaに対する、Humira(登録商標)の名前で販売);インフリキシマブ(TNFaに対する、Remicade(登録商標)の名前で販売);セツキシマブ(EGFRに対する、Erbitux(登録商標)として販売);セクキヌマブ(IL17に対する、Cosentyx(登録商標)として販売);ペムブロリズマブ(PD1に対する、Keytruda(登録商標)として販売);ベバシズマブ(VEGF-Aに対する、Avastin(登録商標)として販売);エトロリズマブ(a4b7に対する);ベドリズマブ(a4b7に対する);トレメリムマブ(CTLA4に対する);イピリムマブ(CTLA4に対する、Yervoy(登録商標)として販売);ネシツムマブ(EGFRに対する、Portrazza(登録商標)として販売);パニツムマブ(EGFRに対する、Vectibix(登録商標)として販売);レブリキズマブ(IL13に対する);トラロキヌマブ(IL13に対する);イキセキズマブ(IL17に対する、Taltz(登録商標)として販売);ブロダルマブ(IL17Rに対する、Lumicef(登録商標)として販売);デュピルマブ(IL4Rに対する、Dupixent(登録商標)として販売);グセルクマブ(IL23に対する);チルドラキズマブ(IL23に対する);リサンキズマブ(IL23に対する);ブリアキヌマブ(IL12およびIL23に対する);ウステキヌマブ(IL12およびIL23に対する);ニボルマブ(PD1に対する、Opdivo(登録商標)として販売);アテゾリズマブ(PD-L1に対する、Tecentriq(登録商標)として販売);アベルマブ(PD-L1に対する);ラニビズマブ(VEGF-Aに対する、Lucentis(登録商標)として販売);ブロルシズマブ(VEGF-Aに対する);トラスツズマブ(Her2に対する、Herceptin(登録商標));アマツキシマブ(メソテリンに対する);タボリキシズマブ(Tavolixizumab)(OX40に対する);ポガリズマブ(OX40に対する);ウレルマブ(4-1BBに対する);ウトミルマブ(4-1BBに対する);BMS 986016(LAG3に対する);リリルマブ(KIRに対する);MEDI 570(ICOSに対する);LY3321367(TIM3に対する);ルリズマブ(CD28に対する);TAB08(CD28に対する);およびオナルツズマブ(cMetに対する、MetMab)からなる群より選択される。
【0081】
標的
本発明の多重特異性分子の標的は、関心対象の任意の分子または抗原であり得る。具合的には、多重特異性分子は、がんまたは過剰増殖性疾患、例えば、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、腎細胞がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、結腸直腸がん、神経内分泌がん、子宮内膜がん、膵臓がん、白血病、肺がん、多形性神経膠芽腫、胃がん、肝臓がん、肉腫、膀胱がん、精巣がん、食道がん、頭頸部がん、および軟髄膜癌腫症を標的とする。
【0082】
好ましい態様において、OBフォールドドメインは、以下に開示される標的に結合する。
【0083】
それは以下からなる群より選択され得る:
細胞表面受容体:インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1、トランスフェリン受容体、上皮増殖因子受容体、上皮増殖因子受容体バリアントIII、血管内皮増殖因子受容体1、血管内皮増殖因子受容体2、Her2、Her3、Her4、PMSA、IGF-1R、GITR、RAGE、CD28。
細胞表面タンパク質:メソテリン、EpCam、CD19、CD20、CD38、CD3、TIM-3、CEA、cMet、ICAM1、ICAM3、MadCam、a4b7、CD7、CD4、CD138。
血管新生または増殖因子:VEGF、アンジオポエチン2、HGF、PDGF、EGF、GM-CSF、HB-EGF、TGF
免疫チェックポイント阻害因子または活性化因子:PD-1、PD-L1、CTLA4、CD28、B7-1、B7-2、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、LAG3、KIR、4-1BB、OX40、CD27、CD40L、TIM3、A2aR
循環タンパク質:TNFa、IL23、IL12、IL33、IL4、IL13、IL5、IL6、IL4、IFNg、IL17、RANKL、Bace1、αシヌクレイン、タウ、アミロイド。
【0084】
好ましい態様において、分子の抗体部分は、以下からなる群において選択される標的に結合する:
細胞表面受容体:インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1、トランスフェリン受容体、上皮増殖因子受容体、上皮増殖因子受容体バリアントIII、血管内皮増殖因子受容体1、血管内皮増殖因子受容体2、Her2、Her3、Her4、PMSA、IGF-1R、GITR、RAGE、CD28。
細胞表面タンパク質:メソテリン、EpCam、CD19、CD20、CD38、CD3、TIM-3、CEA、cMet、ICAM1、ICAM3、MadCam、a4b7、CD7、CD4、CD138。
血管新生因子または増殖因子:VEGF、アンジオポエチン2、HGF、PDGF、EGF、GM-CSF、HB-EGF、TGF
免疫チェックポイント阻害因子または活性化因子:PD-1、PD-L1、CTLA4、CD28、B7-1、B7-2、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、LAG3、KIR、4-1BB、OX40、CD27、CD40L、TIM3、A2aR
循環タンパク質:TNFa、IL23、IL12、IL33、IL4、IL13、IL5、IL6、IL4、IFNg、IL17、RANKL、Bace1、αシヌクレイン、タウ、アミロイド。
【0085】
好ましい態様において、分子は以下の標的の対(これらの記載した標的の一方がOBフォールドドメインの標的であってもよく、もう一方は抗体部分の標的であってもよい)。
- EGFR/EGFRvIII
- EGFR/Her2
- VEGFR2/PD1
- EGFR/PD1
- VEGF/PD-L1
- PD1/OX40
- PD1/CTLA4
- EGFR/CD3
- TNFa/IL17
- IL13/IL4
【0086】
抗体がTNFアルファに結合しかつOBフォールドドメインがIL17に結合する複合体、およびその逆に結合する複合体が、特に関心対象でありかつ好ましい。
【0087】
標的の対のさらなる例を以下に開示する。分子の抗体部分は記載した標的のいずれか1つに結合してもよく、OBフォールドバリアントはその他の標的に結合することに留意されたい。したがって、上記に記載した標的いずれも、分子の抗体部分またはOBフォールドバリアント部分にとって有効である。
【0088】
人工分子の生成
本明細書において開示される分子の生成を可能にするベクターは、通常の分子遺伝学的な方法によって製造される。
【0089】
要約すると、Sca7dバリアントをコードする遺伝子配列は、当技術分野において公知の任意の方法によって、抗体の重鎖または軽鎖をコードする遺伝子配列の5’端または3’端に連結される。融合タンパク質を得るために、フレームシフトまたは停止コドンが導入されない限りは、2つの遺伝子配列の間にリンカーを導入することが可能である。
【0090】
したがって、発現した融合タンパク質は(N末端からC末端にかけて)以下のいずれかであるはずである:
(a)抗体の重鎖-(存在する場合にはリンカー)-OBフォールドドメインバリアント、
(b)OBフォールドドメインバリアント-(存在する場合にはリンカー)-抗体の重鎖、
(c)抗体の軽鎖-(存在する場合にはリンカー)-OBフォールドドメインバリアント
(d)OBフォールドドメインバリアント-(存在する場合にはリンカー)-抗体の軽鎖
【0091】
精製を向上させる、またはOBフォールドを強制的に方向付ける、またはOBフォールドのプロテアーゼ媒介性放出を可能にする、または化合物の薬物動態を改変する、または特定のタイプの組織を標的とする、またはランタニドもしくは放射性核種をキレート化する、またはマイタンシンもしくはアウリスタチン誘導体であり得るペイロードへの結合を可能にするような、さらなる遺伝的改変、例えばC末端またはN末端での「タグ」分子のさらなる導入などが予測できることは明らかである。
【0092】
遺伝子配列のコドンは、さらなる産生で用いられる細胞に応じて、さらなる産生のために最適化できる(例えば、GenSript(Piscataway, NJ USA)のOptimumGene(商標)コドン最適化技術を参照)ことに留意されたい。
【0093】
以下に示されるように、以下をコードする核酸分子などの他の核酸分子を得ることができる:
(a)OBフォールドドメインバリアント-(存在する場合にはリンカー)-抗体の重鎖-(存在する場合にはリンカー)-OBフォールドドメインバリアント、
(b)OBフォールドドメインバリアント-(存在する場合にはリンカー)-抗体の軽鎖-(存在する場合にはリンカー)-OBフォールドドメインバリアント
【0094】
上記に記載されたヌクレオチド配列の1つまたは複数を含むこれらの組換えDNA構築物は、プラスミド、ファージミド、ファージ、またはウイルスベクターなどのベクターとの関連で用いられる。
【0095】
これらの組換え酸分子は、Sambrook et al., 1989(Sambrook J, Fritschi EF and Maniatis T(1989) Molecular cloning: a laboratorymanual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載された技術によって生成することができる。あるいは、DNA配列は、例えば合成機を用いて、化学的に合成してもよい。
【0096】
本発明の組換え構築物は、RNAを発現することができ、よって、上記の遺伝子配列からのタンパク質の生成をもたらす、発現ベクターを含む。よって、ベクターは、本明細書において開示される遺伝子配列のオープンリーディングフレーム(ORF)に機能的に連結される適切なプロモーターを含む、制御配列をさらに含んでもよい。ベクターは、抗生物質耐性遺伝子などの選択可能マーカー配列をさらに含んでもよい。特定の開始および細菌分泌シグナルもまた、細菌が発現宿主として用いられる場合にコード配列の効率的な翻訳に必要とされ得る。
【0097】
分子の生成
細胞は、抗体の重鎖および軽鎖をコードする配列を含有するベクターでトランスフェクトまたは形質転換される。配列の少なくとも1つは、上記で論じたOBフォールドタンパク質のバリアントを含む。
【0098】
細胞は、タンパク質が発現されかつ好ましくは分泌される条件で培養される。細胞の培養の条件は、組換え抗体生成に一般に用いられる条件であり、当技術分野において公知である。当技術分野において公知であるそのような条件は、必要に応じて当業者によって最適化することもできる。Kunert and Reinhart(Appl Microbiol Biotechnol. 2016; 100: 3451-3461)はそのような方法を概説し、それに十分な記載を提供する。
【0099】
細菌、ファージ(Shukra et al, Eur J Microbiol Immunol(Bp). 2014; 4(2): 91-98)、または真核生物の生成システムを用いることができる。
【0100】
グリコシル化などの適切な翻訳後修飾を得るためには、真核細胞を用いることが好ましい。
【0101】
具体的には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、PER.C6細胞(ヒト細胞株、Pau et al, Vaccine. 2001 21;19(17-19):2716-21)、HEK 293b細胞(ヒト胎児腎細胞293)、NS0細胞(非分泌マウス骨髄腫に由来する細胞株)、またはEB66細胞(アヒル細胞株、Valneva, Lyons, France)を用いることができる。
【0102】
本開示によって、上述に記載されるDNA構築物の少なくとも1つを含有する宿主細胞も提供される。宿主細胞は、発現ベクターが利用可能である任意の細胞であり得る。上記に示されるように、それは、哺乳類細胞などの高等真核生物宿主細胞、酵母細胞などの下等真核生物宿主細胞、または細菌細胞などの原核生物細胞であってもよい。
【0103】
組換え構築物の宿主細胞への導入は、当技術分野において公知の任意の方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、DEAE、デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはファージ感染)によって実施される。ベクターは、宿主細胞のゲノム内に挿入することができるか、またはゲノム外(extragenomic)ベクター(例えば、細菌人工染色体または酵母人工染色体など)として維持することができる。細胞ゲノム内に導入される場合、そのような導入はランダムであってもよく、または当技術分野において公知の方法(相同組換えなど)を用いてターゲティングされてもよい。
【0104】
細菌宿主および発現
細菌使用で有用な発現ベクターは、機能的なプロモーターを有する機能可能なリーディングファージ中に適切な翻訳開始および終結シグナルと一緒に組換えDNA配列を挿入することによって構築される。ベクターは、ベクターの維持を確実にし、かつ所望の場合には、宿主内での増幅をもたらす、1つまたは複数の表現型選択可能マーカーおよび複製起点を含む。
【0105】
形質転換に適した原核生物宿主には、大腸菌、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、およびスタフィロコッカス属(Staphylococcus)内のさまざまな種が含まれる。
【0106】
真核生物宿主および発現
真核生物宿主細胞の例としては、脊椎動物細胞、昆虫細胞、および酵母細胞が挙げられる。具体的には、上記に記述される細胞を用いることができる。
【0107】
形質転換またはトランスフェクトした細胞は、当技術分野において公知の方法によって培養され、ポリペプチドは(それが分泌されているか否に応じて)細胞内画分または細胞外画分から回収される。
【0108】
分子の単離
生成された組換え多重特異性タンパク質は、タンパク質の物理的または化学的特性を利用する種々の公知の分離方法のいずれかによって、細胞内画分または細胞外画分から分離および精製することができる。
【0109】
具体的には、沈殿、限外ろ過、種々のタイプの液体クロマトグラフィー、例えば分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティクロマトグラフィーなど、透析、ならびにこれらの組み合わせなどの方法を用いることができる。
【0110】
概して、組換え抗体を精製することが公知でありかつそのために用いられる任意の方法は、本明細書において開示される分子の精製に適応する。
【0111】
タグが組換え配列内に導入されている場合(例えば、ポリヒスチジンタグ)、このタグを用いて分子を精製することができる。しかしながら、親和性を用いて分子を精製することが好ましい。
【0112】
分子の抗体部分がIgGタイプのものである場合、プロテインAによるアフィニティクロマトグラフィーを用いることができる(特に、Fahrner et al Biotechnol Appl Biochem. 1999 Oct;30( Pt 2):121-8を参照)。
【0113】
あるいは、糖鎖改変したピキア・パストリス(Pichia pastoris)において発現させた組換えモノクローナル抗体の精製プロセスを開示しているJiang et al(Protein Expression and Purification, Volume 76, Issue 1, March 2011, Pages 7-14)において開示された方法を用いることができる。
【0114】
ミックスモードクロマトグラフィーによる組換えモノクローナル抗体の精製プロセスに関連するMaria et al(J Chromatogr A. 2015 May 8;1393:57-64)の方法、またはモノクローナル抗体生成用の回収および精製プロセスに関するLiu et al(MAbs. 2010 Sep-Oct; 2(5): 480-499)の方法も用いることができる。
【0115】
特に、本明細書において生成される分子は、特定の標的(抗体の抗原およびOBフォールドバリアントの標的)に結合するという事実を用いて、任意の親和性による方法(アフィニティカラム、FACS、ビーズ)を使用してそのような分子を単離することができる。
【0116】
本発明の方法の1つの特定の利点は、細胞によって生成される結果として生じる分子の全てが多重特異性分子であることである。
【0117】
二重特異性分子の生成
具体的には、細胞内に以下を導入するものとする:
- 抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 重鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0118】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原および重鎖のN末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、二重特異性分子となる。
【0119】
図1.Aに図示されるように、結果として生じる分子は対称性であり、かつ4個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、および重鎖のN末端にある2個のOBフォールドドメインのバリアントの結合部位)を有することに留意されたい。
【0120】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 重鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0121】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原および重鎖のC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、二重特異性分子となる。
【0122】
図1.Bに図示されるように、結果として生じる分子は対称性であり、かつ4個の結合ドメイン(2個の抗体Fab結合部位、および重鎖のC末端にある2個のOBフォールドドメインのバリアントの結合部位)を有することに留意されたい。
【0123】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0124】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原および軽鎖のN末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、二重特異性分子となる。
【0125】
図1.Cに図示されるように、結果として生じる分子は対称性であり、4個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、および軽鎖のN末端にある2個のOBフォールドドメインのバリアントの結合部位)を有するに留意されたい。
【0126】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0127】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原および軽鎖のC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、二重特異性分子となる。
【0128】
図1.Dに図示されるように、結果として生じる分子は対称性であり、4個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、および軽鎖のC末端にある2個のOBフォールドドメインのバリアントの結合部位)を有することに留意されたい。
【0129】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
【0130】
結果として生じる産物は、重鎖および軽鎖の会合後に、以下である:
- 抗体の抗原および軽鎖のC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、対称性二重特異性分子(予想パーセンテージ25%)。
- 抗体の抗原および軽鎖の一方のみのC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、非対称性二重特異性分子(予想パーセンテージ50%)。
- 対称性抗体(予想パーセンテージ25%)。
【0131】
結果として生じる分子は対称性であり、4個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、および軽鎖のC末端にある2個のOBフォールドドメインのバリアントの結合部位)を有することに留意されたい。
【0132】
他の組み合わせは、以下で細胞を形質転換する場合に実施することができる:
- 軽鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
- 抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列、
または
- 軽鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
- 抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列、
または
- 軽鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
- 抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
【0133】
多重特異性分子の生成
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
- 重鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0134】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原ならびに軽鎖のN末端および重鎖のN末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、多重特異性分子となる。
【0135】
図1.Gに図示されるように、結果として生じる分子は6個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、ならびに軽鎖のN末端および軽鎖のN末端にある4個のOBフォールドドメインのバリアントのそれぞれの結合部位)を有することに留意されたい。
【0136】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
- 重鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0137】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原ならびに軽鎖のC末端および重鎖のN末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、多重特異性分子となる。
【0138】
図1.Eに図示されるように、結果として生じる分子は6個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、ならびに軽鎖のC末端および軽鎖のN末端にある4個のOBフォールドドメインのバリアントのそれぞれの結合部位)を有することに留意されたい。
【0139】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
- 重鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0140】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原ならびに軽鎖のN末端および重鎖のC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、多重特異性分子となる。
【0141】
図1.Iに図示されるように、結果として生じる分子は6個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、ならびに軽鎖のN末端および軽鎖のC末端にある4個のOBフォールドドメインのバリアントのそれぞれの結合部位)を有することに留意されたい。
【0142】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
- 重鎖の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0143】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原ならびに軽鎖のC末端および重鎖のC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、多重特異性分子となる。
【0144】
図1.Kに図示されるように、結果として生じる分子は6個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、ならびに軽鎖のC末端および軽鎖のC末端にある4個のOBフォールドドメインのバリアントのそれぞれの結合部位)を有することに留意されたい。
【0145】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 軽鎖をコードする配列の5’端 にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ軽鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0146】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原ならびに軽鎖のN末端およびC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、多重特異性分子となる。
【0147】
図1.Jに図示されるように、結果として生じる分子は6個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、ならびに軽鎖のN末端およびC末端にある4個のOBフォールドドメインのバリアントのそれぞれの結合部位)を有することに留意されたい。
【0148】
別の態様において、細胞内に以下を導入するものとする:
- 重鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ重鎖をコードする配列の3’端のOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
【0149】
結果として生じる分子は、重鎖および軽鎖の会合後に、抗体の抗原ならびに重鎖のN末端およびC末端にあるOBフォールドドメインのバリアントの標的に結合する、多重特異性分子となる。
【0150】
図1.Fに図示されるように、結果として生じる分子は6個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、ならびに重鎖のN末端およびC末端にある4個のOBフォールドドメインのバリアントのそれぞれの結合部位)を有することに留意されたい。
【0151】
上記態様において、重鎖および軽鎖の末端に導入されたOBフォールドドメインのバリアントは、同じであるかまたは異なっている。
【0152】
バリアントが異なっている場合、それらは以下であり得る:
- 異なるOBフォールドドメインに基づき、かつ同じ標的に結合する
- 異なるOBフォールドドメインに基づき、かつ異なる標的に結合する
- 同じOBフォールドドメインに基づき、かつ異なる標的に結合する
- 同じOBフォールドドメインに基づき、かつ同じ標的に結合する(異なる変異を有する)。
【0153】
細胞は、非対称性分子を得るために、他のコード配列で形質転換またはトランスフェクトされてもよい。
【0154】
多重特異性分子を生成するための他の態様
3つの遺伝子配列
さらなる態様において、細胞は以下の3つの遺伝子配列で形質転換またはトランスフェクトされる:
(i)抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
(ii)(3’端または5’端で)OBフォールドドメインのバリアント(A)をコードする遺伝子配列に融合させた、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
(iii)(3’端または5’端で)OBフォールドドメインの別のバリアント(B)をコードする遺伝子配列に融合させた、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列。
【0155】
別の態様において、3つの遺伝子配列は以下である:
(i)抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
(ii)(3’端または5’端で)OBフォールドドメインのバリアント(A)をコードする遺伝子配列に融合させた、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
(iii)(3’端または5’端で)OBフォールドドメインの別のバリアント(B)をコードする遺伝子配列に融合させた、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列。
【0156】
したがって、細胞は、論理的に以下の割合で、3種類の異なるタイプの多重特異性タンパク質を生成する:
- (抗体の抗原およびバリアント(A)の標的に結合する)二重特異性タンパク質: 25%
- (抗体の抗原およびバリアント(B)の標的に結合する)二重特異性タンパク質: 25%
- (抗体の抗原ならびにバリアント(A)および(B)の標的に結合する)三重特異性タンパク質: 25%。
【0157】
上記に関して、OBフォールドドメインのバリアント(A)および(B)は、同じでもまたは異なっていてもよい。
【0158】
バリアントが異なっている場合、それらは以下であり得る:
- 異なるOBフォールドドメインに基づき、かつ異なる標的に結合する
- 異なるOBフォールドドメインに基づき、かつ異なる標的に結合する
- 同じOBフォールドドメインに基づき、かつ異なる標的に結合する
- 同じOBフォールドドメインに基づき、かつ同じ標的に結合する(異なる変異を有する)。
【0159】
多重に融合された遺伝子配列
抗体の軽鎖または重鎖をコードする遺伝子配列の5’端および3’端の両方にOBフォールドドメインのバリアントをコードする遺伝子配列を融合することも可能である。
【0160】
ここで融合されている遺伝子配列は、上記に示されるように、同じまたは異なるバリアントをコードできる。
【0161】
具体的な態様は以下である:
6個の結合部位(対称的である場合、これらのタンパク質は、OBフォールドバリアントが異なっていると、四重特異性となる)を有するタンパク質を生成するためには、
- 重鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ重鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 軽鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体軽鎖をコードする遺伝子配列、
それによって図1.Nに図示されるタンパク質をもたらす。

- 軽鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ軽鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 重鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列、
それによって図1.Oに図示されるタンパク質をもたらす。

- 重鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ重鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 軽鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列、
それによって図1.Mに図示されるタンパク質をもたらす。

- 軽鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ軽鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列
- 重鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列、
それによって図1.Lに図示されるタンパク質をもたらす。
【0162】
これらの遺伝子配列で形質転換またはトランスフェクトする細胞は、8個の結合部位(2個の抗体Fab結合部位、およびOBフォールドドメインのバリアントの6個の結合部位)を提示する多重特異性タンパク質をもたらす。
【0163】
以下で細胞を形質転換またはトランスフェクトすることによって、10個の結合部位を有するタンパク質も得ることができる
- 重鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ重鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の重鎖をコードする遺伝子配列
- 軽鎖をコードする配列の5’端にOBフォールドドメインのバリアントが導入されており、かつ軽鎖をコードする配列の3’端にOBフォールドドメインの(同じまたは異なる)バリアントが導入されている、抗体の軽鎖をコードする遺伝子配列、
それによって図1.Hに図示されるタンパク質をもたらす。
【0164】
上記に記載されるように、全ての態様において、OBフォールドドメインのバリアントは同じでもまたは異なっていてもよい。
【0165】
バリアントが異なっている場合、それらは以下であり得る:
- 異なるOBフォールドドメインに基づき、かつ同じ標的に結合する
- 異なるOBフォールドドメインに基づき、かつ異なる標的に結合する
- 同じOBフォールドドメインに基づき、かつ異なる標的に結合する
- 同じOBフォールドドメインに基づき、かつ同じ標的に結合する(異なる変異を有する)。
【0166】
細胞は、上記に記載される複数の遺伝子配列で形質転換またはトランスフェクトされ、それによってさまざまな多重特異性タンパク質(それらの一部は非対称性である)の混合物をもたらされることがさらに予測される。
【0167】
分子の用途
標的および用途は、参照により本明細書に組み入れられるFan et al. Journal of Hematology & Oncology(2015) 8:130の表1に認められる。二重特異性抗体についてこの表に列記された標的の任意の組み合わせを、本明細書において開示される多重特異性分子において用いることができる。また、同じく参照により組み入れられるYang et al(Int J Mol Sci. 2017 Jan; 18(1):48)にも標的および用途が記載されている。具体的には、標的および潜在的用途の組み合わせは以下に記載される。
【0168】
細胞傷害性Tリンパ球はがんに対する免疫反応において重要な役割を果たし、腫瘍細胞は免疫反応を回避する可能性があることから、1つの戦略は、二重特異性分子を用いて、腫瘍細胞の近くにT細胞をリクルートすることである。T細胞の活性化および増殖は腫瘍細胞溶解をもたらす。
【0169】
多重特異性分子の1つの標的は、腫瘍関連抗原であり、第2の標的はT細胞上のCD3である。マクロファージ、樹状細胞、およびNK細胞などのアクセサリー細胞上のI型(CD64)、IIα型(CD32a)、III型(CD16)Fcγ受容体(FcγR)にも結合して、免疫反応を改善する可能性もある。
【0170】
がん免疫療法
【0171】
薬物耐性/代謝経路に対する宿主応答の改変
二重特異性抗体は、2つの相関するシグナル伝達分子、および具体的には、免疫療法を妨げる主な阻害因子である阻害性チェックポイント分子を同時に阻害することができるという点で最良の選択である。
【0172】
HER2は多数のがんに対して有効な標的である。HER3シグナル伝達は、HER2阻害剤に対する薬物耐性の重要なメカニズムである。HER2/HER3の二重ターゲティングは、より効果的な反応をもたらす可能性がある。
【0173】
調節解除されたEGFR依存性およびHER3依存性シグナル伝達は、頭頸部がんおよび結腸直腸がんなどのヒトのがんの病変形成に関与する。
【0174】
HER2およびHER3のターゲティングは、GDC-0941の感受性を回復させ、GDC-0941による前立腺がんの増殖の再停止を可能にした(Poovassery et al, Int. J. Cancer. 2015;137:267-277)。
【0175】
抗血管新生
【0176】
内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、VEGFR3、内皮増殖因子A (VEGFA)、アンジオポエチン、および血小板由来増殖因子(PDGF)を含む複数の血管新生因子が腫瘍血管新生に関与する。多くのがん療法は、これらのタンパク質を枯渇させることによって血管新生を破壊する。血管新生因子の二重ターゲティングは、優れた結果をもたらす(Biel and Siemann Cancer Lett. 2016 Oct 1; 380(2):525-33)。
【0177】
がん免疫療法のための養子T細胞移入
標的は、PD-1、腫瘍抗原、Tリンパ球の表面に発現した分子である。
【0178】
インビトロでのがん細胞に対する二重特異性分子およびTリンパ球の存在は、患者にその後注入されるTリンパ球の効果的なプライミングを可能にする。
【0179】
PD-1/CD3、腫瘍抗原/CD3、HER2/CD3の二重特異性を用いることができる。Urbanska et al(J. Transl. Med. 2014;12:347、二重特異性抗体(CD20/CD3またはHER2/CD3)および操作されたT細胞を用いる)の教示を採り入れることもできる。
【0180】
サイトカインへの結合
【0181】
複数のサイトカインが、炎症性疾患および自己免疫疾患の重要なメディエーターとして特定されている。したがって、これらのサイトカインの遮断は治療の可能性を有する。例えば、TNF-αの阻害は、乾癬、乾癬性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、若年性関節炎、および多数の他の疾患に対して著しい治療作用を発揮する。他の有効なサイトカインとしては、IL-6、IL-17、IL-1、IL-12、TGF-β、IL-4、およびIL-13が挙げられる。
【0182】
ペイロードの送達
【0183】
興味深い用途は、薬物、放射標識、およびナノ粒子などのペイロードの送達である。ペイロードは、未結合の二重特異性分子が血流から血流から除去されると直ちに投与される。二重特異性分子は、腫瘍部位においてペイロードを濃縮するために用いることができる。この戦略は血清保持時間を有意に延長させ、腫瘍/血液比率を改善する。CEAおよび99mT標識ハプテンヒスタミンスクシニルグリシン(HSG)に特異的に結合する、腫瘍イメージングおよび放射免疫療法で用いられる二重特異性TF2構築を挙げることができる。前臨床試験では、最初にTF2が注入され、次いで、99mT標識HSGが、血液からのbsAbの除去後に投与された。高い腫瘍/血液比率が、99mTの高い腫瘍取り込みによって観察された。TF2は、結腸直腸がんを有する患者において第I相試験中である。TF2の他の用途には、結腸直腸新生物を有する患者における放射免疫療法での177LuHSG/111InHSGおよびCEAに対するターゲティング、および免疫陽電子放射断層撮影での68GaHSGおよびCEAに対するターゲティングが含まれる(Fan et al. Journal of Hematology & Oncology(2015) 8:130より)。
【0184】
ハプテンとしてのジゴキシゲニン(Dig)は、フルオロフォア、キレート剤、化学療法剤、核酸、脂質、ナノ粒子、またはペプチドおよびタンパク質などのいくつかの細胞傷害性成分に乗せて、最終的にDig-Cy5、Dig-ドキソルビシン、およびDig-GFPのような化合物を形成するためのペイロードスキャフォールドとして用いることができる。ハプテンベースの二重特異性抗体はまた、効果的なsiRNA送達システムでもあることも示されており、具体的には、その3’端でジゴキシゲニン化されかつナノ粒子に製剤化されているsiRNAは、HER2、IGF1-R、CD22、およびLeYなどの腫瘍抗原に結合する二重特異性抗体に結合され、対応する抗原を発現する細胞にsiRNAを特異的に送達し、エンドソーム内への内部移行および二重特異性抗体からのDig-siRNAの分離をもたらした(Schneider et al, Mol. Ther. Nucleic Acids. 2012;1:e45)。
【0185】
細菌のミニ細胞は、正常な細菌細胞分裂を制御する遺伝子の不活性化によって生成された無核ナノ粒子である。化学療法薬は、細胞(がん細胞など)の膜上の抗原にも結合する二重特異性分子にその後連結されるミニ細胞内にパッケージすることができ、エンドサイトーシス、細胞内分解、および薬物放出がもたらされる(Solomon et al, PLoS ONE. 2015;10:e0144559)。
【0186】
血液脳関門の横断
【0187】
Couch et alおよびYu et al.は、トランスフェリン受容体(TfR)およびβ位APP切断酵素1(BACE1)に結合しかつ血液脳関門を横断するbsAbを設計した。
【0188】
診断アッセイ
【0189】
感染性疾患の治療
【0190】
他の用途
【0191】
治療方法
本発明はまた、医薬としての、および/または標的の阻害が必要とされる疾患を治療または予防するためのその使用のための、上記に記載される多重特異性分子にも関する。上記に例示されるように、標的の選択は治療または予防することが望まれる疾患によって決まることは明らかである。
【0192】
治療方法もまた、本発明の一部である。本発明はまた、本明細書において開示される分子の治療的有効量を投与する工程を含む、その必要がある患者を治療するための方法も包含する。本明細書による「治療的有効」量は、臨床効果(有害状態の軽減)を得るのに十分な量として定義される。それは第II相臨床試験によって判定することができる。それは、単独でまたは別の作用物質との組み合わせで、単回用量としてまたは複数用量レジメンにしたがって投与され得る。それは、好ましくは非毒性であるか、または患者の健康に対する利益を鑑みて許容可能である毒性を有する。対象は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、サル、または他の下等霊長類)であってもよい。
【0193】
本明細書において開示される分子は、当技術分野において公知の1つまたは複数の生理学的に許容される担体または賦形剤を用いて製剤化され、かつ任意の適切な手段によっておよび任意の適切な経路を通じて投与されることになる。したがって、非経口(例えば、筋肉内、静脈内、動脈内、複腔内、または皮下)、肺内、および鼻腔内投与、ならびに局所免疫抑制治療で望ましければ、病巣内投与が予測される。注入(特に静脈内注入)が好ましい。投与の経路は、治療される疾患に応じて異なっていてもよい。
【0194】
TNF-αに対する分子は概して、炎症性疾患(関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、鼻炎、乾癬、クローン病)ならびに一部のがん(結腸直腸がん、乳がん、膀胱がん、神経膠芽腫、他の固形がん)または他の免疫学的疾患を治療するために用いられる。
【0195】
IL17に対する分子もまた、概して、同じ種類の炎症性疾患(関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、鼻炎、乾癬、クローン病、強直性脊椎炎)ならびに一部のがん(結腸直腸がん、乳がん、膀胱がん、神経膠芽腫、他の固形がん)または他の免疫学的疾患(多発性硬化症を含む)を治療するために用いられる。
【0196】
したがって、TNFαに結合する抗体およびIL17に結合するOBフォールドバリアント(もしくはDac7dファミリー由来のタンパク質)(またはその逆も同様)を含む複合体は、そのような疾患の治療に用いることができる。
【0197】
具体的な組成物
具体的には、本発明は、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントがTNFαのサブユニットに結合する、上記に開示されているポリペプチドに関する。好ましくは、当該サブユニットタンパク質がその天然状態で完全に形成された多量体タンパク質に含まれる場合、それは該タンパク質のサブユニットに結合しない。
【0198】
実際、本発明者らは、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントであって、TNFαの可溶性サブユニットに結合し、そして、生物学的に活性な多量体タンパク質の形成を回避させるかまたは単量体(または多量体不活性)サブユニットの方へと平衡を移動させる、バリアントを特定することが可能であることを特定している。
【0199】
具体的には、そのようなバリアントは、配列
を含む。
【0200】
具体的には、V7、M8、F9、K11、V21、H22、M24、Q26、L29、E35、D41、F44、およびP46からなる群、より好ましくはV7、M8、F9、K11、V21、Q26、L29、E35、D41、F44、および P46からなる群より選択される1~13個、好ましくは1~11個、より好ましくは1~10個、より好ましくは1~8個、より好ましくは1~6個、より好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、より好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が、SEQ ID NO:41における別のアミノ酸によって置き換えられている。
【0201】
この態様において、抗体が、IL17、CD20、IL24、IL12、IL4、IL13、IL6、IL31、またはその受容体、および腫瘍特異性抗原、特にHer2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、またはCTLA4からなる群より選択されるタンパク質に結合する場合が好ましい。
【0202】
具体的には、抗体はIL17に結合する(および具体的には、インフリキシマブ,アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル、オルゴリムマブ(orgolimumab)、セクキヌマブ,アファセビクマブ、ビメキズマブ、またはブナキズマブ(Vunakizumab)である)。
【0203】
具体的には、抗体はCD20に結合する(および具体的には、ブロンツベトマブ、FBTA05、イブリツモマブ チウキセタン、モスネツズマブ(Mosunetuzumab)、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、リツキシマブ、トシツモマブ、またはベルツズマブである)。
【0204】
具体的には、抗体はIL24に結合する。
【0205】
具体的には、抗体はIL12に結合する。
【0206】
具体的には、抗体はIL4に結合する(および具体的にはデュピルマブである)。
【0207】
具体的には、抗体はIL13に結合する。
【0208】
具体的には、抗体はIL6に結合する(および具体的には、シルツキシマブ、オロキズマブ、またはボバリリズマブである)。
【0209】
具体的には、抗体はIL31またはその受容体に結合する。
【0210】
具体的には、抗体は、上記に開示されている腫瘍特異性抗原に結合する。
【0211】
具体的には、抗体はHer2に結合する(具体的には、DS-8201、エルツマキソマブ、ガンコタマブ(Gancotamab)、マルジェツキシマブ、ペルツズマブ、チミグツズマブ(Timigutuzumab)、トラスツズマブ、またはトラスツズマブ エムタンシンである)。
【0212】
具体的には、抗体はPDL1(プログラム死リガンド1、CD274)に結合する。
【0213】
具体的には、抗体はCTLA4に結合する(および具体的にはトレメリムマブである)。
【0214】
別の態様において、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントはIL17に結合する。
【0215】
この態様において、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントは、以下の配列
の1つを含む場合が好ましい。
【0216】
この態様において、抗体が、TNFα(具体的にはインフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル、オルゴリムマブ)、IL23(具体的にはブラジクマブ、グセルクマブ、ミリキズマブ(Mirikizumab)、リサンキズマブ、またはチルドラキズマブ)、IL12(具体的にはブリアキヌマブ、ウステキヌマブ)、IL4(具体的にはデュピルマブ)、IL13(具体的にはアンルキンズマブ)、IL31、またはその受容体、および腫瘍特異性抗原、具体的にはHer2(具体的にはDS-8201、エルツマキソマブ、ガンコタマブ、マルジェツキシマブ、ペルツズマブ、チミグツズマブ、トラスツズマブ、またはトラスツズマブ エムタンシン)、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、またはCTLA4(具体的にはトレメリムマブ)からなる群より選択されるタンパク質に結合する場合が好ましい。
【0217】
具体的には、抗体はTNFαに結合する(および具体的にはインフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル、オルゴリムマブである)。
【0218】
具体的には、抗体はIL23に結合する(および具体的にはブラジクマブ、グセルクマブ、ミリキズマブ、リサンキズマブ、またはチルドラキズマブである)。
【0219】
具体的には、抗体はIL12に結合する(および具体的にはブリアキヌマブまたはウステキヌマブである)。
【0220】
具体的には、抗体はIL4に結合する(および具体的にはデュピルマブである)。
【0221】
具体的には、抗体はIL13に結合する(および具体的にはアンルキンズマブである)。
【0222】
具体的には、抗体はIL31またはその受容体に結合する。
【0223】
具体的には、抗体は、上記に開示されている腫瘍特異性抗原に結合する。
【0224】
具体的には、抗体はHer2に結合する(具体的にはDS-8201、エルツマキソマブ、ガンコタマブ、マルジェツキシマブ、ペルツズマブ、チミグツズマブ、トラスツズマブ、またはトラスツズマブ エムタンシンである)。
【0225】
具体的には、抗体はPDL1(プログラム死リガンド1、CD274)に結合する。
【0226】
具体的には、抗体はCTLA4に結合する(具体的にはトレメリムマブである)。
【0227】
IL17に結合するSac7dの具体的なバリアント
本発明はまた、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントを含むポリペプチドであって、当該バリアントが、具体的には本明細書において開示される、IL17に結合するSac7dファミリーのタンパク質の結合部位における4~22個の変異アミノ酸を含み、したがって、抗体の生成が改善または安定化されている、ポリペプチドにも関する。Sac7dの配列は
であることに注意されたい。
【0228】
Sac7dバリアントの変異アミノ酸がSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D35、D36、N37、G38、K39、T40、G41、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51からなる群より選択される、上記ポリペプチドを得ることが可能である。
【0229】
Sac7dバリアントがSac7dのK7、Y8、K9、E11、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、D35、T40、G41、R42、A44、およびS46に対応する群より選択される4~17個の変異アミノ酸を含有する、上記ポリペプチドを得ることが可能である。
【0230】
この態様において、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントが以下の配列:
のうちの1つを含む場合が好ましい。
【0231】
具体的には、そのようなポリペプチドは、V7、M8、F9、K11、Q26、L29、E35、D41、F44、およびP46からなる群より選択される1~10個、より好ましくは1~8個、より好ましくは1~6個、より好ましくは1~5個、より好ましくは1~4個、より好ましくは1~3個、より好ましくは2個、より好ましくは1個のアミノ酸が別のアミノ酸に置き換えられている、配列SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:38を含む。実際、出願人は、そのような残基は観察される結合を変化させることなく改変され得ることを示している。これは、これらの残基をアラニンと置き換えて、結合を確認することによって実施された。結合の喪失がなかったことから、これは、これらの残基はIL17に結合するのに重要ではないことを示唆する。
【0232】
特定の態様において、該特定のSac7dバリアントは、別のタンパク質またはポリペプチドに連結または融合されている。具体的には、該他のタンパク質またはポリペプチドは、Sac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントを含む。上記に示されるように、他のタンパク質またはポリペプチドが(好ましくはTNFαまたはHer2/neuに結合する)抗体である場合もまた予想される。
【0233】
別の態様において、Sac7dファミリーのこのようなバリアントは有機分子にコンジュゲートされる。これは当技術分野において公知の任意の方法によって行われ得る。具体的には、分子をタンパク質に化学的に連結することができる。分子として、細胞傷害性化合物(例えば、広域スペクトル)、血管新生阻害剤、細胞周期進行阻害剤、PBK/m-TOR/AKT経路阻害剤、MAPKシグナル伝達経路阻害剤、キナーゼ阻害剤、タンパク質シャペロン阻害剤、HDAC阻害剤、PARP阻害剤、Wnt/Hedgehogシグナル伝達経路阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害剤、およびプロテアソーム阻害剤を含む、抗増殖性剤(細胞傷害剤および細胞分裂阻害剤)を挙げることができる。抗炎症性分子もまた用いることができる。
【0234】
具体的には、DNA結合薬またはアルキル化薬、例えば、アントラサイクリン(ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン)およびその類似体、アルキル化剤、例えば、カリケアマイシン、ダクチノマイシン、ミトロマイシン(mitromycine)、ピロロベンゾジアゼピンなどを挙げることができる。細胞周期進行阻害剤、例えば、CDK阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤、チェックポイントキナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PLK阻害剤、およびKSP阻害剤なども挙げることができる。サリドマイドおよびその誘導体、レナリドミドおよびポマリドミドもまた挙げることができる。炎症疾患を治療するために、バリアントを含むポリペプチドにコンジュゲートさせた分子として、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、ケルセチン、および/またはレスベラトロールも用いることができる。
【0235】
本発明は、本明細書において開示されるポリペプチド(IL17に結合するSac7dファミリーのタンパク質のバリアント)をコードするDNA配列を含む遺伝子構築物にも関する。
【0236】
本発明はまた、上記に開示される遺伝子構築物を含むベクター、そのような遺伝子構築物をそのゲノム中に含む宿主細胞、および以下の工程:
a.開示されている遺伝子構築物によって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.ポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、IL17に結合するSac7dファミリーのタンパク質のそのようなバリアントを生成するための方法にも関する
【0237】
特定されたバリアントの配列は、当技術分野において公知の任意の分子遺伝学的な方法によって任意の適切なベクター中にクローン化することができる。
【0238】
上記に記載されるバリアントを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、これらの組換えDNA構築物は、プラスミド、ファージミド、ファージ、またはウイルスベクターなどのベクターとの関連で用いられる。
【0239】
これらの組換え酸分子は、Sambrook et al., 1989(Sambrook J, Fritschi EF and Maniatis T(1989) Molecular cloning: a laboratorymanual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載された技術によって生成することができる。あるいは、DNA配列は、例えば合成機を用いて、化学的に合成してもよい。
【0240】
本発明の組換え構築物は、RNAを発現することができ、よって、上記の遺伝子配列からのタンパク質の生成をもたらす、ベクターを含む。発現ベクターは、よって、本明細書において開示される遺伝子配列のオープンリーディングフレーム(ORF)に機能的に連結された適切なプロモーターを含む、制御配列をさらに含んでもよい。ベクターは、抗生物質耐性遺伝子などの選択可能マーカー配列をさらに含んでもよい。特定の開始および細菌分泌シグナルもまた、細菌が発現宿主として用いられる場合にコード配列の効率的な翻訳に必要とされ得る。
【0241】
分子の生成
細胞は、上記に開示されるバリアントを含むポリペプチドをコードする配列を含有するベクターでトランスフェクトまたは形質転換される。
【0242】
細胞は、タンパク質が発現されかつ好ましくは分泌される条件で培養される。細胞の培養の条件は、組換え抗体生成に一般に用いられる条件であり、当技術分野において公知である。当技術分野において公知であるそのような条件は、必要に応じて当業者によって最適化することもできる。KunertおよびReinhart(Appl Microbiol Biotechnol. 2016; 100: 3451-3461)はそのような方法を概説し、それに十分な記載を提供する。
【0243】
細菌、ファージ(Shukra et al, Eur J Microbiol Immunol(Bp). 2014; 4(2): 91-98)、または真核生物の生成システムを用いることができる。
【0244】
グリコシル化などの適切な翻訳後修飾を得るためには、真核細胞を用いることが好ましい。
【0245】
具体的には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、PER.C6細胞(ヒト細胞株、Pau et al, Vaccine. 2001 21;19(17-19):2716-21)、HEK 293b細胞(ヒト胎児腎細胞293)、NS0細胞(非分泌マウス骨髄腫に由来する細胞株)、またはEB66細胞(アヒル細胞株、Valneva, Lyons, France)を用いることができる。
【0246】
本開示によって、本明細書において開示されるバリアントを含むポリペプチドをコードするDNA構築物の少なくとも1つを含有する宿主細胞も提供される。宿主細胞は、発現ベクターが利用可能である任意の細胞であり得る。上記に示されるように、それは、哺乳類細胞などの高等真核生物宿主細胞、酵母細胞などの下等真核生物宿主細胞、または細菌細胞などの原核生物細胞であってもよい。
【0247】
組換え構築物の宿主細胞への導入は、当技術分野において公知の任意の方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、DEAE、デキストラン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはファージ感染)によって実施される。ベクターは、宿主細胞のゲノム内に挿入することができる、またはゲノム外ベクター(例えば、細菌人工染色体または酵母人工染色体など)として維持することができる。細胞ゲノム内に導入される場合、そのような導入はランダムであってもよいし、当技術分野において公知の方法(相同組換えなど)を用いてターゲティングされてもよい。
【0248】
細菌宿主および発現
細菌で使用するのに有用な発現ベクターは、機能的なプロモーターを有する機能可能なリーディングファージ中に適切な翻訳開始および終結シグナルと一緒に組換えDNA配列を挿入することによって構築される。ベクターは、ベクターの維持を確実にし、所望の場合、宿主内での増幅をもたらす、1つまたは複数の表現型選択可能マーカーおよび複製起点を含む。
【0249】
形質転換に適した原核生物宿主には、大腸菌、バチルス・サブティリス、サルモネラ・ティフィムリウム、ならびにシュードモナス属、ストレプトマイセス属、およびスタフィロコッカス属内のさまざまな種が含まれる。
【0250】
真核生物宿主および発現
真核生物宿主細胞の例としては、脊椎動物細胞、昆虫細胞、および酵母細胞が挙げられる。具体的には、上記に記述される細胞を用いることができる。
【0251】
形質転換またはトランスフェクトした細胞は、当技術分野において公知の方法によって培養され、ポリペプチドは(それが分泌されているか否に応じて)細胞内画分または細胞外画分から回収される。
【0252】
分子の単離
生成された組換え多重特異性タンパク質は、タンパク質の物理的または化学的特性を利用する種々の公知の分離方法のいずれかによって、細胞内画分または細胞外画分から、分離および精製することができる。
【0253】
具体的には、沈殿、限外ろ過、種々のタイプの液体クロマトグラフィー、例えば分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティクロマトグラフィーなど、透析、ならびにこれらの組み合わせなどの方法を用いることができる。
【0254】
概して、組換えポリペプチドを精製することが公知でありかつそのために用いられる任意の方法は、本明細書において開示される分子の精製に適応される。
【0255】
タグが組換え配列内に導入されている場合(例えば、ポリヒスチジンタグ)、このタグを用いて分子を精製することができる。しかしながら、親和性を用いて分子を精製することが好ましい。
【0256】
具体的には、本明細書において生成される分子は特定の標的に結合するという事実を用いて、任意の親和性による方法(アフィニティカラム、FACS、ビーズ)を使用してそのような分子を単離することができる。
【0257】
本明細書において開示される分子の1つの特別な利点は、それらは活性となるのにグリコシル化される必要がなく、よって、任意のタイプの細胞において生成することができ、真核細胞において生成する必要がないという点である。それらは、細菌細胞において特によく作製される。
【0258】
本発明はまた、医薬としてのIL17に結合するSac7dファミリーのタンパク質のそのようなバリアントにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0259】
図1-1】本発明による15種類のタンパク質の略図。これらのタンパク質は対称性である。A.重鎖のN末端にOBフォールドバリアント。A.重鎖 のC末端にOBフォールドバリアント。C.軽鎖のN末端にOBフォールドバリアント。D.軽鎖のC末端にOBフォールドバリアント。E.重鎖のN末端および軽鎖のC末端にOBフォールドバリアント。F.重鎖のN末端およびC末端にOBフォールドバリアント。G.重鎖のN末端および軽鎖のN末端にOBフォールドバリアント。H.重鎖および軽鎖のN末端およびC末端にOBフォールドバリアント。I.重鎖のN末端および軽鎖のN末端にOBフォールドバリアント。J.軽鎖のN末端およびC末端にOBフォールドバリアント。K.重鎖のC末端および軽鎖のC末端にOBフォールドバリアント。L.重鎖のC末端ならびに軽鎖のN末端およびC末端にOBフォールドバリアント。M.重鎖のN末端およびC末端ならびに軽鎖のC末端にOBフォールドバリアント。N.重鎖のN末端およびC末端ならびに軽鎖のN末端にOBフォールドバリアント。O.重鎖のN末端ならびに軽鎖のN末端およびC末端にOBフォールドバリアント。
図1-2】図1-1の続きを示す。
図2】Sac7dファミリーのタンパク質のアライメント。
図3】octet RD96でのプロテインAバイオセンサーへの抗体-Sac7dバリアント構築物のローディング。A5-HC:重鎖のN末端にSac7Dバリアント。HC-A5:重鎖のC末端にSac7Dバリアント。A5-LC:軽鎖のN末端にSac7Dバリアント。LC-A5:軽鎖のC末端にSac7Dバリアント。ネイキッド抗体:対照抗体。
図4】重鎖(HC)または軽鎖(LC)のいずれかのN末端またはC末端のいずれかでSac7dバリアント(H4)に融合させた場合の抗体の機能性の図。HC-H4:重鎖のC末端にSac7Dバリアント。H4-LC:軽鎖のN末端にSac7Dバリアント。LC-H4:軽鎖のC末端にSac7Dバリアント。
図5】重鎖(HC)または軽鎖(LC)いずれかのN末端またはC末端のいずれかでSac7dバリアント(H4)に融合させた場合のSac7d(H4)バリアントの機能性の図。HC-H4:重鎖のC末端にSac7Dバリアント。H4-LC:軽鎖のN末端にSac7Dバリアント。LC-H4:軽鎖のC末端にSac7Dバリアント。
図6】octet RED96でのバイオレイヤー干渉法によるさまざまな二重特異性構築物の二重結合能の図。HC-H4:重鎖のC末端にSac7Dバリアント。H4-LC:軽鎖のN末端にSac7Dバリアント。LC-H4:軽鎖のC末端にSac7Dバリアント。
図7】種々の構築物の最終生産性(総収率)の図。H4-HC:重鎖のN末端にSac7Dバリアント。HC-H4:重鎖のC末端にSac7Dバリアント。H4-LC:軽鎖のN末端にSac7Dバリアント。LC-H4:軽鎖のC末端にSac7Dバリアント。HC-LC対照:対照抗体。
図8】ネイキッド抗体と比較した、さまざまな抗体キメラ(IL17に対するSac7dバリアントを伴う)の相対的タンパク質生成。(A)アダリムマブおよび(B)インフリキシマブ。
【実施例0260】
OBフォールドの遺伝子融合によって作られた二重特異性抗体は、重鎖または軽鎖のいずれかのN末端またはC末端のいずれかにOBフォールドが挿入される場合、4種類の異なる二重特異性構築物をもたらすことができる。以下の実験は、IgG1κ抗体へのSac7dバリアントのバリアントの融合を例示する。これらの実験は、概念実証を行い、かつ抗体断片およびOBフォールドバリアントの両方の結合特異性、ならびに融合タンパク質の生成のレベルを維持する(そのような生成は、OBフォールドバリアントを融合させていない抗体の収率と比較して同等であるかまたはさらに改善されている)ことが可能であることを実証するためのものである。
【0261】
重鎖および軽鎖の両方の定常断片を、それぞれ市販のエンコーディングベクターpFUSE-CHIg-hIG1(InvivoGen)およびpFUSE2ss-CLIg-hk(InvivoGen)によって入手した。
【0262】
それぞれの可変ドメインを遺伝子合成(Eurofins)によって入手した。
【0263】
Sac7dバリアントのDNAコード配列を、pQE30(Qiagen)由来の発現ベクターにおけるサブクローニングの産物からPCRによって直接増幅した。
【0264】
次いで、定常断片、可変ドメイン、およびSac7dバリアントの配列を、利用する際に、Gibson Assemblyによって組み立て、それらのうち3つはpFUSE-CHIg-hIG1ベクターに由来し、かつ他の3つはpFUSE2ss-CLIg-hkベクターを形成する、6種類の異なるベクターを作製した。全ての場合において、ベクターは、抗体鎖の配列の上流(N末端で融合)もしくは下流(C末端で融合)いずれかにあるSac7dバリアントの配列の局在、またはその非存在(融合なし)で異なっていた。
【0265】
要約すると、6種類のベクターは以下をコードする:
- 抗体の軽鎖のみ
- N末端でSac7dバリアントに融合させた抗体の軽鎖
- C末端でSac7dバリアントに融合させた抗体の軽鎖
- 抗体の重鎖のみ
- N末端でSac7dバリアントに融合させた抗体の重鎖
- C末端でSac7dバリアントに融合させた抗体の重鎖
【0266】
以下の実施例は、本明細書において企図されるポリペプチドの構築を例示する。
【0267】
他のそのようなポリペプチドは他のSac7dバリアントおよび抗体によって入手されており、それらの分析は以下に報告するものと同様の結果(作製の容易さ、Sac7dバリアントの標的および抗体の標的の両方への結合)をもたらした。
【0268】
最大で14個の変異アミノ酸を有するライブラリーから所与の標的に対するバリアントを単離するリボソームディスプレイを用いて、WO 2008/068637に開示された方法によりSac7dバリアントを作製した。
【0269】
要約すると、8つ以上のSac7dバリアントを種々の実験で用いた。各バリアントは異なる標的または同じ標的の異なるエピトープに結合した。これらのバリアントは、Sac7dと比較して、14個(残基7、8、9、21、22、24、26、29、31、33、40、42、44、46番目の残基)、11個(7、22、24、26、29、31、33、38、42、44、46番目の残基)、10個(21、22、24、26、29、31、33、42、44、46番目の残基)、10個(21、22、24、26、29、31、33、40、44、46番目の残基)、9個(21、22、24、26、31、33、42、44、46番目の残基)の変異アミノ酸を有した。
【0270】
3つの抗体は、それぞれ異なる標的または同じ標的(循環タンパク質)の異なるエピトープに結合する。
【0271】
28種類の組み合わせの融合ポリペプチドを、以下に記載されるものと類似の方法を用いて作製し、その結果は全て同様であった。
【0272】
具体的には、用いたSac7dバリアントは、IL17(特にSEQ ID NO:37およびSEQ ID NO:38)に対するものであり、抗TNFαに融合された。他のSac7dバリアント(具体的には、TNFαに結合するSEQ ID NO:41またはリゾチームに結合するSEQ ID NO:42、H4と呼ばれる)を用いた。他の標的に対する他のSac7dバリアントも用いた。上記に示されるように、Sac7dの回収されたポリペプチド抗体-バリアントの収率は、一貫して、Sac7dバリアントを有さない抗体の収率と一致するかそれを上回り、調べたときは常に二重親和性が確認された。
【0273】
上記に示されるように、Sac7dバリアントの添加によって複合体の構造全体が安定化されている(よって、生成の向上をもたらす)可能性があると仮定される。抗体およびSac7dバリアントの両方ともそれらの構造を維持する(それらがその機能を保持していることを示す二重結合アッセイによって実証されるように)ことから、実施例においてさまざまな種について提供される結果は、属全体に一般化することができると考えられる。
【0274】
実施例1.重鎖(N末端またはC末端)への融合
全長重鎖の構築についての説明を提供する。
【0275】
全長重鎖のN末端でのSac7dバリアント配列の融合は、Gibson AssemblyによるpFUSE-CHIg-hIG1ベクターのDNA再操作にあり、2つの断片および直線化ベクターのPCR増幅による調製を伴う。
【0276】
pFUSE-CHIg-hIG1を、PCRプロブラム1により、フォワードオリゴヌクレオチド
およびリバースオリゴヌクレオチド
によるPCR増幅によって直線化した。
【0277】
可変ドメインをコードするDNA配列を、PCRプログラム2により、フォワードオリゴヌクレオチド
およびリバースオリゴヌクレオチド
によるPCRによって増幅した。
【0278】
Sac7dバリアントのDNA配列を、PCRプログラム2により、フォワードオリゴヌクレオチド
およびリバースオリゴヌクレオチド
によるPCRによって増幅した。
【0279】
全長重鎖のC末端でのSac7dバリアント配列の融合は、3つの断片および直線化ベクターのPCR増幅による調製を伴う。pFUSE-CHIg-hIG1を、PCRプログラム1により、フォワードオリゴヌクレオチド
およびリバースオリゴヌクレオチド
によるPCR増幅によって直線化される。
【0280】
定常ドメインのDNA配列を、PCRプログラム2により、フォワードオリゴヌクレオチドoligoCH-1(SEQ ID NO:16)およびリバースオリゴヌクレオチド
によるPCRによって増幅した。
【0281】
可変ドメインをコードするDNA配列を、PCRプログラム2により、フォワードオリゴヌクレオチド
およびリバースオリゴヌクレオチドOligoCH-3(SEQ ID NO:19)によるPCRによって増幅した。
【0282】
Sac7dバリアントのDNA配列を、PCRプログラム2により、フォワードオリゴヌクレオチド
およびリバースオリゴヌクレオチド
によるPCRによって増幅した。
【0283】
Sac7dバリアントコード配列との融合を欠く全長重鎖の構築は、1つの断片および直線化ベクターのPCR増幅を伴う。pFUSE-CHIg-hIG1を、PCRプログラム3により、フォワードオリゴヌクレオチドoligoCH-1(SEQ ID NO:16)およびリバースオリゴヌクレオチドIL2ss_Rev(SEQ ID NO:23)によるPCR増幅によって直線化した。可変ドメインをコードするDNA配列を、PCRプログラム2により、フォワードオリゴヌクレオチドOligoCH-6(SEQ ID NO:25)およびリバースオリゴヌクレオチドOligoCH-3(SEQ ID NO:19)によるPCRによって増幅した。
【0284】
次いで、PCR産物を、Gel Green核酸染色(1×)を含有する1.5%アガロースゲル(可変断片増幅配列およびSac7dバリアント増幅配列)および0.8%アガロースゲル(直線化プラスミド)で検証し、関心対象のバンドをUV光下で切り取り、Wizard SVゲルおよびPCRクリーンアップシステムキット(Promega)を用いて精製した。生成された挿入物の量を増加させるために、同じPCRミックスおよびプログラムを用いて、5 ngの精製可変断片PCR産物(4つの複製物)に対して2回目のPCRを実施した。1.5%アガロースゲルでのバンドのサイズ検証後、同じ反応物をプールし、Wizard SVゲルおよびPCRクリーンアップシステムキット(Promega)を用いて精製した。
【0285】
PCRプログラム1:98℃で30秒間;変性(98℃で10秒間)、アニーリング(60℃で30秒間)、および伸長(72℃で2分間)を25サイクル;次いで72℃で5分間;そして 14℃に冷却させる
PCRプログラム2:98℃で30秒間;変性(98℃で10秒間)、アニーリング(60℃で30秒間)、および伸長(72℃で30秒間)を25サイクル;次いで72℃で5分間;そして14℃に冷却させる
PCRプログラム3:98℃で30秒間;変性(98℃で10秒間)、アニーリング(69℃で30秒間)、および伸長(72℃で2分間)を25サイクル;次いで72℃で5分間;そして14℃に冷却させる
【0286】
これらのPCRにより、Gibson Assemblyによる定方向性アニーリング(directional annealing)を可能にするオーバーラップする末端を有する二重鎖DNAが形成された。ISO 1×緩衝液中に挿入断片/直線化プラスミドのモル比が5のDNA断片125 ng、T5エキソヌクレアーゼ(0.08U、New England Biolabs)、DNA Phusionポリメラーゼ(0.5U, New England Biolabs)、およびTaq DNAリガーゼ(80U、New England Biolabs)を含有する20 μLのGibson Assemblyミックスを調製した。Gibson Assemblyを行うために50℃で1時間のインキュベーションを用いた(Gibson et al., 2009)。
【0287】
得られた連結されたベクターを、大腸菌株BL21(DE3)pLysSに形質転換した。BL21(DE3)pLysSコンピテント細胞(Coger)の指数増殖期の細胞培養物(OD600nm 0.5)をヒートショックによって10μLの上記Gibson assembly反応液および対照で形質転換した。細胞を、クロラムフェニコール(10 μg/mL、Sigma-Aldrich)およびゼオシン(25 μg/mL、InvivoGen)を含有するpH 7.5の2YT寒天培地上にプレーティングした。Pure Yield Plasmid Miniprep System(Promega)を用いてミニプレップを行い、各クローンの試料を20%グリセロール中で-80℃にて保存した。次いで、配列をSanger配列決定によって確認した。
【0288】
実施例2.軽鎖(N末端またはC末端)への融合
全長軽鎖の構築についての説明を提供する。
【0289】
全長軽鎖の調製のための戦略は、oligoCH-1~7と名付けられたオリゴヌクレオチドが、oligoCL-1~7と名付けられた各オリゴヌクレオチド:
と交換されたことおよびpFUSE-CHIg-hIG1の代わりにpFUSE2ss-CLIg-hkを使用したことを除いて、重鎖の調製の説明に従った。
【0290】
加えて、形質転換を、以下の改変により大腸菌 DH5α F'Iq株中で行った:DH5α F'Iqコンピテント細胞(Life technologies)の指数増殖期の細胞培養物(OD600nm 0.5)をヒートショックにより10 μLのGibson assembly反応液で形質転換した。細胞を、カナマイシン(25μg/mL、VWR)およびブラストサイジン(100 μg/mL、InvivoGen)を含有するpH 8の2YT寒天培地上にプレーティングした。
【0291】
実施例3.1つのNFの抗体への融合(+二重特異性)
HEK293-E6細胞を、4 mMのGlutamaxおよび0.1%のPluronic F-68を加えた1125 ml FreeStyle F17培地中で、37℃および110 rpmにて5% CO2の加湿雰囲気中で培養した。トランスフェクションを以下のように実施した:細胞密度が1.5~2×106細胞/mlに到達したときに、1:2のDNA:PEI比および2:3のHC:LC比でポリエチレンイミン(PEI, polysciences ref 23966)との複合体を形成させた合計1 mg DNA/Lの異なるプラスミド対で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの6時間後、各培養物にウルトラlow IgGウシ胎児血清およびバルプロ酸を加えた。トランスフェクションの5日後に、4℃、20分間、2,000gでの遠心分離によって培養上清を収集した。培養上清を0.2 μmを通してろ過し、事前にPBS+500 mM NaCl pH 7.2結合緩衝液で平衡化したHitrapプロテインA HP 5 mlカラム(GE healthcare)にロードした。溶出を0.1 Mのクエン酸緩衝液 pH 3.0で実施し、画分をTRIS緩衝液pH 9.0で中和し、産物を含有する画分を一緒にプールし、Superdex 200 2660ゲルろ過カラムにインジェクトした。150~160 mlの保持容量で産物を含有する画分を一緒にプールし、vivapsin遠心デバイスを用いて50 kDaメンブレンカットオフで1~2 mg/mlまで濃縮した。
【0292】
全長IgG抗体の下流精製は十分に確立されたプロセスであり、通常プロテインAカラムでのアフィニティクロマトグラフィー工程を伴う。
【0293】
重鎖または軽鎖のいずれかのN末端またはC末端いずれかでのSac7dバリアントの融合によって作られた異なる二重特異性抗体を捕捉する可能性を、octet RED96でのバイオレイヤー干渉法によって実証した。
【0294】
4種類の二重特異性構築物のいずれかを25 nMで300秒間、プロテインAバイオセンサーにロードした。全ての工程を、1000 rpmで振とうしながら、0.01%のBSAおよび0.002%のtween 20を加えたTBS(Tris 20 mM、NaCl 150 mM、pH 7.4)中で30℃にて実施した。全ての場合において、極わずかな解離もなく迅速な捕捉が確認され、結合の安定性を反映していた(図3)。
【0295】
実施例4.1つのNFの抗体への融合:抗体またはSac7dバリアントのいずれかの標的への結合
抗体の重鎖または軽鎖のいずれかのN末端またはC末端のいずれかでのSac7dバリアントの遺伝子融合による二重特異性構築物に関与する場合の抗体およびSac7dバリアントがそれらの各標的に結合する能力を、octet RED96(Fortebio)でのバイオレイヤー干渉法によって実証した。
【0296】
二重特異性構築物をプロテインAセンサー(Fortebio)にロードした。ベースラインの180秒後に、それぞれ300秒間および900秒間、会合および解離を生じさせた。全ての工程を、1000 rpmで振とうしながら、0.01%のBSAおよび0.002%のtween 20を加えたTBS(Tris 20 mM、NaCl 150 mM、pH 7.4)中で30℃にて実施した。150 nM、125 nM、100 nM、75 nM、および50 nMの濃度範囲をSac7dバリアント標的について用いた。600 nM、200 nM、66.66 nM、22.22 nM、7.40 nM、2.46 nM、および0.82 nMの濃度範囲を抗体標的について用いた。各実行後、センサーを、3サイクルのグリシン10 mM pH2(10秒間)およびTBS(10秒間)によって再生した。
【0297】
抗体およびSac7dバリアントのどちらも、融合の位置にかかわらず、一緒に連結させた場合に十分に機能を有したままであった(図4および5)。
【0298】
実施例5.1つのNFの抗体への融合:二重特異性
二重特異性分子の利点の1つは、一度に2つの異なる標的に同時に結合するその能力に依拠する。
【0299】
Sac7dバリアントおよび抗体がそれらの各標的に同時に結合する能力を、octet RED96でのバイオレイヤー干渉法によって実証した。二重特異性構築物をプロテインAセンサー(Fortebio)にロードした。ベースラインの180秒後に、300秒間の抗体標的(200 nM)との会合時間を実施し、続いて300秒間のSac7dバリアント標的(300 nM)との会合時間を実施した。全ての工程を、1000 rpmで振とうしながら、0.01%のBSAおよび0.002%のtween 20を加えたTBS(Tris 20 mM、NaCl 150 mM、pH 7.4)中で30℃にて実施した。
【0300】
図6は、Sac7dバリアントおよび抗体がそれらの各標的に同時に結合することを示す。
【0301】
実施例6.NFなしの抗体よりも増加した生成またはそれと同様の生成
全精製工程後に得られた産物の量に相当する、最終生産性を測定した。
【0302】
図7は、回収した産物の量が、抗体のみで得られたものと同等であるかまたはさらに優れていることを示す。
【0303】
実施例7.2つ以上のNFの抗体への融合(3以上の特異性を得る)
多重特異性分子の構築を、二重特異性分子について上記に記載した戦略によって実施する。
【0304】
1つの追加の特異性当たり1つのSac7dバリアントのPCR増幅DNAコード断片をさらに用いて、それをGibson Assemblyミックス中の最終分子に加える。
【0305】
Gibson Assemblyに必要とされるリンカーおよびオーバーラップする適合末端はフォワードオリゴヌクレオチドおよびリバースオリゴヌクレオチドで運ばれ、PCR増幅工程時にSac7dバリアントコード配列に付加される。多重特異性分子は実施例3のように精製される。
【0306】
実施例8.CHO-K1(AFG)細胞における複合体の生成
チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO-K1、ATCC CCL-61)を、1% L-グルタミンを有しかつ10%(v/v)不活性化ウルトラlow IgGウシ胎児血清および1%(v/v)ペニシリン-ストレプトマイシンを加えたF-12K培地で培養した。細胞を組織培養皿で拡大増殖させ、95%空気および5% CO2の加湿した一定雰囲気中で37℃にて維持した。
【0307】
トランスフェクションの前日に、細胞をトリプシン処理し、エリスロシンB 0.2% 1:1(v/v)を用いて計数した。トランスフェクション時に70~90%コンフルエントになるように、細胞を10層の細胞培養ファクトリー当たり126.4×106個の細胞で播種した。
【0308】
各セルファクトリーについて、2 mgのDNA(1.2 mgのLCおよび0.8 mgのHC)を200 mLのOpti-MEM(登録商標)I低血清培地で希釈した。次いで、2 mLの2 mg/mLポリエチレンイミン(PEI、直鎖状、MW 25,000)を添加し、混合物を室温で25分間インキュベートした。新鮮な完全増殖培地にDNA/PEI複合体を添加することによって、細胞をトランスフェクトした。
【0309】
トランスフェクションの24時間後、培地を、抗生物質(ブラストサイジン(10 μg/mL)およびゼオシン(300 μg/mL))およびバルプロ酸(0.5 mM最終濃度)を加えたF-12K完全増殖培地に交換した。トランスフェクションの7日後、上清を収集し、ネイキッド抗体を用いて確立された標準法に従って、プロテインAバイオセンサーでのバイオレイヤー干渉技術によって、タンパク質濃度を定量化した。
【0310】
生成収率を、2種類の市販の治療用抗体(アダリムマブおよびインフリキシマブ)と比較した。タンパク質の結合ドメインに12個の変異を持つ、Sac7dタンパク質のバリアントに融合させたこれらの抗体の重鎖を生成するために、遺伝子構築物を作製した。バリアントは、アダリムマブの重鎖のN末端またはC末端およびインフリキシマブの重鎖のN末端に存在した。
【0311】
図8は、回収したポリペプチドの収率が、(A)アダリムマブおよび(B)インフリキシマブのどちらでも重鎖のN末端またはC末端にいずれかに融合させたバリアントを含有するキメラで維持されているかまたは向上していることを示す。
【0312】
実施例9.SHuffle(AFG)技術の使用
酸化ストレスに対して感受性を有する、およびそのエフェクター機能について翻訳後修飾を必要とする、抗体などの複合体タンパク質は、長期にわたって、哺乳類細胞株、HEK293、CHO、および酵母などの真核生物発現宿主においてのみ製造されている。最近では、SHuffleなどの操作された細菌株もまた、サイクロン(cyclonal)とも名付けられる機能性抗体の細胞内製造に適用できることが実証されている。
【0313】
抗体(アダリムマブ)およびSac7dタンパク質のバリアント(ナノフィチン)によって形成されたキメラの製造を、Robinson et al.(Nature Comm., 2015; 6:8072)によって記載されるようにバイシストロン性のベクターを用いるSHuffle発現宿主において調査した。
【0314】
ネイキッド抗体、および軽鎖のN末端、軽鎖のC末端、または重鎖のC末端のいずれかにナノフィチン融合を伴う3種類の異なる抗体-ナノフィチンキメラを構築した。
【0315】
全ての抗体-ナノフィチンキメラでは、ナノフィチンDNA配列と抗体DNA配列との間に15 merのリンカーをコードする配列が挿入された。
【0316】
コンピテントT7 SHuffle express pLysYを、クロラムフェニコール(10 μg/mL)を加えた2YT培地中で37℃にて増殖させた。培養物を0.4~0.5のOD 600 nmで1 mL画分に分割し、4500 gで5分間遠心分離した。ペレットを200 μLの冷却TSS緩衝液で再懸濁し、次いで、形質転換させる発現ベクターを0.5 μL加え、氷上で30分間インキュベートした。懸濁液を42℃で30秒間、続いて氷上で5分間、ヒートショックさせた。懸濁液に800 μLの2YT培地を補充し、200 rpmで連続的に振とうしながら37℃でインキュベートした。1時間後、懸濁液を4500 gで5分間遠心分離した。ペレットを20 μLの2YT培地で再懸濁し、クロラムフェニコール(10 μg/mL)およびアンピシリン(100 μg/mL)を加えた2YT寒天を充填したプレート上に細菌を広げた。プレートを37℃で一晩インキュベートした。
【0317】
クロラムフェニコール(10 μg/mL)、アンピシリン(100 μg/mL)、およびグルコース1%を加えた10 mLの2YT培地に単一コロニーを播種した。前培養物を、200 rpmで連続的に振とうしながら、37℃で一晩インキュベートした。次いで、クロラムフェニコール(10 μg/mL)、アンピシリン(100 μg/mL)、およびグルコース0.1%を加えた200 mLの2YT培地に10 mLの前培養物を播種した。OD 600 nmが0.7~0.8に到達するまで、200 rpmで連続的に振とうしながら、培養物を30℃でインキュベートした。次いで、IPTG(1 mM最終濃度)の添加によってタンパク質生成を惹起し、培養物を200 rpmで振とうしながら30℃でさらに16時間維持した。4℃、3214 g、30分間の遠心分離によって、培養を停止させた。ペレットを溶解緩衝液(PBS 1×、5 mM EDTA、Bugbuster(登録商標)1×、5 μg/mL de DNase I)で再懸濁し、200 rpmで振とうしながら1時間インキュベートした。次いで、4℃、3220 g、45分間の遠心分離によって細胞デブリをペレット化した。溶解上清を収集した。
【0318】
発現した抗体キメラを、プロテインA樹脂(PierceプロテインAアガロース、ThermoFisher Scientific)によるアフィニティクロマトグラフィーによって単離した。200 μLの50%樹脂スラリーを使い捨ての10 mLポリプロピレンカラムにアプライした。樹脂を10カラム量の水で洗浄し、10カラム量のPBS(リン酸緩衝生理食塩水、sigma-aldrich、P4417)で平衡化した。溶解上清をカラムにアプライし、次いで、10カラム量の5 mM EDTAを加えたPBSで洗浄した。0.1 MグリシンpH 2~3を溶出に用いた。溶出液を100 μL画分で収集し、10μLのTris 1M(pH 8.8)の添加によって直ちに中和した。次いで、回収した物質の量を280 nmでの分光光度測定によって評価した。試料の純度を還元条件下での10% SDS-PAGEゲルで評価した。
【0319】
この生成システムにおいて、キメラの生成収率はネイキッド抗体の生成収率と感覚的に同等である(得られた収率間に有意差はない)。
【0320】
さらに、バイオレイヤー干渉法によるナノフィチン-抗体キメラの二重結合性の評価は、抗体およびSac7dバリアントがそれらの親和性結合性を維持していることを示した。これを行うために、様々なナノフィチン-抗体キメラを1.5 nMでプロテインAバイオセンサーにロードし、TNFα(20 nM)およびIL17(125 nM)と一緒に420秒間、続いて解離相(900秒間)で連続的にインキュベートした。
【0321】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> AFFILOGIC
<120> MULTI SPECIFIC MOLECULES
<150> EP17306580.6
<151> 2017-11-14
<160> 42
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 66
<212> PRT
<213> Sulfolobus acidocaldarius
<400> 1
Met Val Lys Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Val Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys Lys
65

<210> 2
<211> 64
<212> PRT
<213> Sulfolobus solfataricus
<400> 2
Met Ala Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Ile Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Glu Gly Gly Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Gln Met Leu Glu Lys Gln Lys Lys
50 55 60

<210> 3
<211> 65
<212> PRT
<213> Sulfolobus acidocaldarius
<400> 3
Met Ala Lys Val Arg Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Val Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Met Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Lys Lys
50 55 60
Lys
65

<210> 4
<211> 64
<212> PRT
<213> Sulfolobus shibatae
<400> 4
Met Val Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Glu Gly Gly Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Gln Met Leu Glu Lys Gln Lys Lys
50 55 60

<210> 5
<211> 64
<212> PRT
<213> Sulfolobus shibatae
<400> 5
Met Ala Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Gln Val Asp
1 5 10 15
Ile Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Glu Gly Gly Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Gln Met Leu Glu Lys Gln Lys Lys
50 55 60

<210> 6
<211> 64
<212> PRT
<213> Sulfolobus tokodaii
<400> 6
Met Val Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Ile Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Gln Met Leu Glu Lys Ser Gly Lys Lys
50 55 60

<210> 7
<211> 64
<212> PRT
<213> Sulfolobus islandicus
<400> 7
Met Val Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Gln Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Glu Gly Gly Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Gln Met Leu Glu Lys Gln Lys Lys
50 55 60

<210> 8
<211> 64
<212> PRT
<213> Sulfolobus islandicus
<400> 8
Met Thr Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Gln Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Glu Gly Gly Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Gln Met Leu Glu Lys Gln Lys Lys
50 55 60

<210> 9
<211> 64
<212> PRT
<213> Sulfolobus islandicus
<400> 9
Met Thr Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Gln Val Asp
1 5 10 15
Ile Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Glu Gly Gly Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Gln Met Leu Glu Lys Gln Lys Lys
50 55 60

<210> 10
<211> 62
<212> PRT
<213> Metallosphaera sedula.
<400> 10
Met Ala Thr Lys Ile Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Gln Asp Leu Glu Val
1 5 10 15
Asp Ile Ser Lys Val Lys Lys Val Trp Lys Val Gly Lys Met Val Ser
20 25 30
Phe Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asn Met Ile Gly Lys Lys
50 55 60

<210> 11
<211> 62
<212> PRT
<213> Metallosphaera cuprina
<400> 11
Met Ala Thr Lys Ile Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Gln Asp Leu Glu Val
1 5 10 15
Asp Ile Ser Lys Val Lys Lys Val Trp Lys Val Gly Lys Met Val Ser
20 25 30
Phe Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Ser Met Ile Gly Lys Lys
50 55 60

<210> 12
<211> 61
<212> PRT
<213> Acidianus hospitalis
<400> 12
Met Thr Thr Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Ile Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser Phe
20 25 30
Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Glu Lys Leu Glu Lys Lys
50 55 60

<210> 13
<211> 62
<212> PRT
<213> Acidianus hospitalis
<400> 13
Met Ala Thr Lys Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val
1 5 10 15
Asp Ile Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser
20 25 30
Phe Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Lys Leu Glu Lys Lys
50 55 60

<210> 14
<211> 60
<212> PRT
<213> Acidianus hospitalis
<400> 14
Met Ala Thr Lys Val Lys Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val
1 5 10 15
Asp Ile Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Ile Ser
20 25 30
Phe Thr Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser Glu
35 40 45
Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Glu Lys Leu Lys
50 55 60

<210> 15
<211> 68
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Consensus sequence
<220>
<221> VARIANT
<222> (2)..(2)
<223> Xaa is V, A or T
<220>
<221> VARIANT
<222> (3)..(3)
<223> Xaa is T or K
<220>
<221> VARIANT
<222> (4)..(4)
<223> Xaa is - or K
<220>
<221> VARIANT
<222> (6)..(6)
<223> Xaa is R or K
<220>
<221> VARIANT
<222> (15)..(15)
<223> Xaa is E or Q
<220>
<221> VARIANT
<222> (18)..(18)
<223> Xaa is T or I
<220>
<221> VARIANT
<222> (31)..(31)
<223> Xaa is V or I
<220>
<221> VARIANT
<222> (37)..(39)
<223> Xaa Xaa Xaa is EGG or DN-
<220>
<221> VARIANT
<222> (57)..(57)
<223> Xaa is M or L
<220>
<221> VARIANT
<222> (58)..(58)
<223> Xaa is Q, D or E
<220>
<221> VARIANT
<222> (59)..(59)
<223> Xaa is M or K
<220>
<221> VARIANT
<222> (61)..(67)
<223> Xaa is -------, EKS--GK, EK---QK, ARAEREK, ARA-EKK, E-----K,
EKS--G, ACAEREK oR ACA-EKK
<400> 15
Met Xaa Xaa Xaa Val Xaa Phe Lys Tyr Lys Gly Glu Glu Lys Xaa Val
1 5 10 15
Asp Xaa Ser Lys Ile Lys Lys Val Trp Arg Val Gly Lys Met Xaa Ser
20 25 30
Phe Thr Tyr Asp Xaa Xaa Xaa Gly Lys Thr Gly Arg Gly Ala Val Ser
35 40 45
Glu Lys Asp Ala Pro Lys Glu Leu Xaa Xaa Xaa Leu Xaa Xaa Xaa Xaa
50 55 60
Xaa Xaa Xaa Lys
65

<210> 16
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide oligoCH-1
<400> 16
gctagcacca agggccca 18

<210> 17
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide VHfuse_Rev
<400> 17
tgaattcgtg acaagtgcaa gact 24

<210> 18
<211> 49
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide OligoCH-2
<400> 18
ggtagtgcag gctccggcag tggcggtagc gaggtgcagt tggtagagt 49

<210> 19
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> OligoCH-3
<400> 19
gcccttggtg ctagcact 18

<210> 20
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide VH_NF_For
<400> 20
cttgtcacga attcagtcaa ggtgaaattc 30

<210> 21
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide Glink15.1_Rev
<400> 21
ggagcctgca ctaccggaac cgcctgaacc tttctcgcgt tccgc 45

<210> 22
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide OligoCH-4
<400> 22
tgagtcctag ctggccaga 19

<210> 23
<211> 31
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide IL2ss_Rev
<400> 23
tgaattcgtg acaagtgcaa gacttagtgc a 31

<210> 24
<211> 50
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Oligonucleotide OligoCH-5
<400> 24
ggagcctgca ctaccggaac cgcctgaacc tttacccgga gacagggaga 50

<210> 25
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide OligoCH-6
<400> 25
cttgtcacga attcagaggt g 21

<210> 26
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide Glink15.1_For
<400> 26
ggtagtgcag gctccggcag tggcggtagc gtcaaggtga aattc 45

<210> 27
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligonucleotide OligoCH-7
<400> 27
gccagctagg actcatttct cgcgttccgc 30

<210> 28
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligoCL-1
<400> 28
aaacgtacgg tggctgcacc a 21

<210> 29
<211> 50
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligoCL-2
<400> 29
ggtagtgcag gctccggcag tggcggtagc gacatccaga tgacacagtc 50

<210> 30
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligoCL-3
<400> 30
agccaccgta cgttttatct 20

<210> 31
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligoCL-4
<400> 31
tagagggagc tagctcgaca tg 22

<210> 32
<211> 49
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligoCL-5
<400> 32
ggagcctgca ctaccggaac cgcctgaacc acactctccc ctgttgaag 49

<210> 33
<211> 25
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligoCL-6
<400> 33
cttgtcacga attcagacat ccaga 25

<210> 34
<211> 30
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> oligoCL-7
<400> 34
agctagctcc ctctatttct cgcgttccgc 30

<210> 35
<211> 66
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to IL17
<220>
<221> misc_feature
<222> (7)..(9)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (26)..(26)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (29)..(29)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (44)..(44)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (46)..(46)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 35
Met Val Lys Val Lys Phe Xaa Xaa Xaa Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Phe Asn Val Trp Arg Xaa Gly Lys Xaa Val Asn Phe
20 25 30
Met Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Ile Gly Ile Gly Xaa Val Xaa Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys Lys
65

<210> 36
<211> 66
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to IL17
<220>
<221> misc_feature
<222> (7)..(9)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (26)..(26)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (44)..(44)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (46)..(46)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 36
Met Val Lys Val Lys Phe Xaa Xaa Xaa Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Phe Asn Val Trp Arg Xaa Gly Lys Ser Val Asn Phe
20 25 30
Met Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Ile Gly Ile Gly Xaa Val Xaa Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys Lys
65

<210> 37
<211> 66
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to IL17
<400> 37
Met Val Lys Val Lys Phe His Ala Lys Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Phe Asn Val Trp Arg Ser Gly Lys Ser Val Asn Phe
20 25 30
Met Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Ile Gly Ile Gly His Val Asp Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys Lys
65

<210> 38
<211> 66
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to IL17
<400> 38
Met Val Lys Val Lys Phe Ser Arg Phe Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Phe Asn Val Trp Arg Ile Gly Lys Thr Val Asn Phe
20 25 30
Met Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Ile Gly Ile Gly Ala Val Asp Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys Lys
65

<210> 39
<211> 65
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to TNF-alpha
<220>
<221> misc_feature
<222> (7)..(9)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (11)..(11)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (21)..(22)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (24)..(24)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (26)..(26)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (29)..(29)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (44)..(44)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (46)..(46)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 39
Met Val Lys Val Lys Phe Xaa Xaa Xaa Gly Xaa Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Xaa Xaa Val Xaa Arg Xaa Gly Lys Xaa Val His Phe
20 25 30
Trp Tyr Glu Asp Asn Gly Lys Ile Asp Lys Gly Xaa Val Xaa Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys
65

<210> 40
<211> 65
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to TNF-alpha
<220>
<221> misc_feature
<222> (7)..(9)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (11)..(11)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (21)..(21)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (26)..(26)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (29)..(29)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (44)..(44)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<220>
<221> misc_feature
<222> (46)..(46)
<223> Xaa can be any naturally occurring amino acid
<400> 40
Met Val Lys Val Lys Phe Xaa Xaa Xaa Gly Xaa Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Xaa His Val Met Arg Xaa Gly Lys Xaa Val His Phe
20 25 30
Trp Tyr Glu Asp Asn Gly Lys Ile Asp Lys Gly Xaa Val Xaa Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys
65

<210> 41
<211> 65
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to TNF-alpha
<400> 41
Met Val Lys Val Lys Phe Val Met Phe Gly Lys Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Val His Val Met Arg Gln Gly Lys Leu Val His Phe
20 25 30
Trp Tyr Glu Asp Asn Gly Lys Ile Asp Lys Gly Phe Val Pro Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys
65

<210> 42
<211> 66
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Sequence binding to lysozyme
<400> 42
Met Val Lys Val Lys Phe Phe Trp Asn Gly Glu Glu Lys Glu Val Asp
1 5 10 15
Thr Ser Lys Ile Val Trp Val Lys Arg Ala Gly Lys Ser Val Leu Phe
20 25 30
Ile Tyr Asp Asp Asn Gly Lys Asn Gly Tyr Gly Asp Val Thr Glu Lys
35 40 45
Asp Ala Pro Lys Glu Leu Leu Asp Met Leu Ala Arg Ala Glu Arg Glu
50 55 60
Lys Lys
65
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024012420000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を含むポリペプチドであって、該抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも1つに、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが融合されており、該バリアントが、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含み、該バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択される、前記ポリペプチド。
【請求項2】
前記バリアントが、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、T40、R42、A44、およびS46に対応するアミノ酸の群より選択される7~14個の変異アミノ酸を含有する、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが、前記抗体の2つの重鎖または2つの軽鎖に融合されている、請求項1~2のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが前記抗体の1つの重鎖に融合されており、かつ該Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つの他のバリアントが該抗体の1つの軽鎖に融合されている、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記抗体の少なくとも1つの重鎖または少なくとも1つの軽鎖が、前記Sac7dファミリーのタンパク質の2つのバリアントと融合されている、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも2つの異なるバリアントが、前記抗体の重鎖および/または軽鎖に融合されている、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の8つのバリアントが、前記抗体の重鎖および軽鎖に融合されている、請求項1~6のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記抗体が治療用抗体である、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記抗体またはSac7dファミリーのタンパク質のバリアントがEGFR、VEGFR2、TfR、Her2、メソテリン、EpCam、CD38、CD3、CD7、PD1、PD-L1、CTLA4、OX40、VEGF、TNFα、IL17、IL4、IL13、IL23、IL12、MAdCam、およびa4b7からなる群より選択されるタンパク質に結合する、請求項1~8のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントがIL17に結合する、請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記抗体が、TNFα、IL23、IL12、IL4、IL13、IL31、IL31受容体、および腫瘍特異性抗原からなる群より選択されるタンパク質に結合する、請求項1~10のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記腫瘍特異性抗原が、Her2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、およびCTLA4からなる群において選択される、請求項11記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが、TNFαのサブユニットに結合する、請求項1~12のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記TNFαのサブユニットに結合するSac7dのタンパク質のバリアントが、該サブユニットタンパク質がその天然状態で完全に形成された多量体タンパク質である場合は、該タンパク質のサブユニットに結合しない、請求項13記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列SEQ ID NO:39またはSEQ ID NO:40を含む、請求項13または14記載のポリペプチド。
【請求項16】
配列SEQ ID NO:41を含む、請求項13~15のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記抗体が、IL17、CD20、IL24、IL12、IL4、IL13、IL31またはその受容体、および腫瘍特異性抗原、特にHer2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、またはCTLA4からなる群から選択されるタンパク質に結合する、請求項13~16のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記腫瘍特異性抗原が、Her2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、およびCTLA4からなる群において選択される、請求項17記載のポリペプチド。
【請求項19】
a.その3’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列であって、該バリアントは、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含み、該バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択される、前記抗体の重鎖をコードする配列
b.その5’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列であって、該バリアントは、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含み、該バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択される、前記抗体の重鎖をコードする配列
c.その3’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列であって、該バリアントは、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含み、該バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択される、前記抗体の軽鎖をコードする配列
d.その5’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列であって、該バリアントは、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含み、該バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択される、前記抗体の軽鎖をコードする配列
からなる群より選択されるDNA配列を含む、遺伝子構築物。
【請求項20】
請求項19記載の遺伝子構築物を含む、ベクター。
【請求項21】
そのゲノム中に請求項19に記載の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
【請求項22】
請求項1~16のいずれか一項記載のポリペプチドを生成するための方法であって、
a.請求項19記載の遺伝子構築物と、その相補的な抗体鎖をコードする遺伝子構築物とによって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.ポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、前記方法。
【請求項23】
改変抗体の生成収率を維持するまたは向上させるための方法であって、
a.請求項19記載の遺伝子構築物と、その相補的な抗体鎖をコードする遺伝子構築物とによって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.工程aの遺伝子構築物の発現後に生成された該改変抗体を回収する工程
からなる工程を含み、
工程bにおいて回収される該改変抗体が、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントを含み、該バリアントが、該タンパク質の結合部位に5~20個の変異残基を含み、該バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択され、かつ回収される該改変抗体の収率が、同じ条件で生成させた未改変抗体の収率と同等であるかまたはそれより高い、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0036】
好ましい態様において、本方法は、適切な遺伝子ベクターで形質転換した細胞における生成後に回収されたタンパク質の100%が確実に同じ種類のものであることを可能にし、それによって、二重特異性分子の統計量(および回収率)は概して、溶液中およそ12.5%であるという、上記で想起した二重特異性抗体の精製の問題を解決する。さらに、本明細書において開示される方法は、抗体(キメラ、ヒト、マウス由来、ラット、または任意のイディオタイプ由来)と同程度の多様性を有する多重特異性分子を得ることを可能にする。抗体の全般的な構造は改変されないことから、分子は抗体の特徴および性質の全て(Fc断片によるものなど、非Fab断片による任意の作用を含む)を保持することにも留意されたい。また、本明細書において開示される分子は、抗体に改変が行われているにもかかわらず、抗体およびOBフォールドドメイン両方の結合部位で結合することができることも非常に驚くべきことである。したがって、そのような二重特異性結合能は、ポリペプチド断片分子(抗体部分およびOBフォールドドメイン部分)の適切なフォールディングが維持されていることを示唆する。最後に、分子の生成収率が維持される(抗体生成収率と比較して)、さらには向上すると認められたことも驚くべきことであった。
[本発明1001]
改変抗体を含むポリペプチドであって、該抗体の重鎖または軽鎖の少なくとも1つに、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが融合されており、該バリアントが、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~20個または5~20個の変異残基を含む、前記ポリペプチド。
[本発明1002]
前記バリアントの変異アミノ酸が、SEQ ID NO:1を参照してSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51に対応するアミノ酸からなる群より選択される、本発明1001のポリペプチド。
[本発明1003]
前記バリアントが、Sac7dのK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、T40、R42、A44、およびS46に対応するアミノ酸の群より選択される7~14個の変異アミノ酸を含有する、本発明1001または1002のポリペプチド。
[本発明1004]
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが、前記抗体の2つの重鎖または2つの軽鎖に融合されている、本発明1001~1003のいずれかのポリペプチド。
[本発明1005]
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが前記抗体の1つの重鎖に融合されており、かつ該Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントが該抗体の1つの軽鎖に融合されている、本発明1001~1004のいずれかのポリペプチド。
[本発明1006]
前記抗体の少なくとも1つの重鎖または少なくとも1つの軽鎖が、前記Sac7dファミリーのタンパク質の2つのバリアントと融合されている、本発明1001~1004のいずれかのポリペプチド。
[本発明1007]
前記Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも2つの異なるバリアントが、前記抗体の重鎖および/または軽鎖に融合されている、本発明1001~1004のいずれかのポリペプチド。
[本発明1008]
前記Sac7dファミリーのタンパク質の8つのバリアントが、前記抗体の重鎖および軽鎖に融合されている、本発明1001~1007のいずれかのポリペプチド。
[本発明1009]
前記抗体が治療用抗体である、本発明1001~1008のいずれかのポリペプチド。
[本発明1010]
EGFR、VEGFR2、TfR、Her2、メソテリン、EpCam、CD38、CD3、CD7、PD1、PD-L1、CTLA4、OX40、VEGF、TNFα、IL17、IL4、IL13、IL23、IL12、MAdCam、およびa4b7からなる群より選択されるタンパク質に結合する、本発明1001~1009のいずれかのポリペプチド。
[本発明1011]
前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントがIL17に結合する、本発明1001~1010のいずれかのポリペプチド。
[本発明1012]
前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントが、配列SEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:36を含む、本発明1011のポリペプチド。
[本発明1013]
SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:38を含む、本発明1011または1012のポリペプチド。
[本発明1014]
前記抗体が、TNFα、IL23、IL12、IL4、IL13、IL31またはその受容体、および腫瘍特異性抗原、特にHer2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、またはCTLA4からなる群より選択されるタンパク質に結合する、本発明1011~1013のいずれかのポリペプチド。
[本発明1015]
前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントが、TNFαのサブユニットに結合し、好ましくは、該サブユニットタンパク質がその天然状態で完全に形成された多量体タンパク質に含まれる場合は、該タンパク質のサブユニットに結合しない、本発明1001~1010のいずれかのポリペプチド。
[本発明1016]
配列SEQ ID NO:39またはSEQ ID NO:40を含む、本発明1015のポリペプチド。
[本発明1017]
配列SEQ ID NO:41を含む、本発明1015または1016のポリペプチド。
[本発明1018]
前記抗体が、IL17、CD20、IL24、IL12、IL4、IL13、IL31またはその受容体、および腫瘍特異性抗原、特にHer2、PDL1(プログラム死リガンド1、CD274)、またはCTLA4からなる群より選択されるタンパク質に結合する、本発明1015~1017のいずれかのポリペプチド。
[本発明1019]
a.その3’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列
b.その5’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の重鎖をコードする配列
c.その3’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列
d.その5’端で、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントをコードする配列と融合している、抗体の軽鎖をコードする配列
からなる群より選択されるDNA配列を含む、遺伝子構築物。
[本発明1020]
本発明1019の遺伝子構築物を含む、ベクター。
[本発明1021]
そのゲノム中に本発明1019の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
[本発明1022]
本発明1001~1018のいずれかのポリペプチドを生成するための方法であって、
a.本発明1019の遺伝子構築物と、その相補的(complementary)な抗体鎖をコードする遺伝子構築物とによって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.ポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、前記方法。
[本発明1023]
改変抗体の生成収率を維持するまたは向上させるための方法であって、
a.本発明1019の遺伝子構築物と、その相補的な抗体鎖をコードする遺伝子構築物とによって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.工程aの遺伝子構築物の発現後に生成された該改変抗体を回収する工程
からなる工程を含み、
工程bにおいて回収される該改変抗体が、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも1つのバリアントを含み、該バリアントが、該タンパク質の結合部位に5~20個の変異残基を含み、かつ回収される該改変抗体の収率が、同じ条件で生成させた未改変抗体の収率と同等であるかまたはそれより高い、前記方法。
[本発明1024]
Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントを含むポリペプチドであって、該バリアントが、該Sac7dファミリーのタンパク質の結合部位に4~22個の変異アミノ酸を含み、IL17に結合する、前記ポリペプチド。
[本発明1025]
前記変異アミノ酸が、Sac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D35、D36、N37、G38、K39、T40、G41、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51からなる群より選択されるアミノ酸に対応する、本発明1024のポリペプチド。
[本発明1026]
前記Sac7dバリアントが、Sac7dのK7、Y8、K9、E11、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、D35、T40、G41、R42、A44、およびS46に対応する群より選択される4~17個の変異アミノ酸を含有する、本発明1024または1025のポリペプチド。
[本発明1027]
配列SEQ ID NO:35またはSEQ ID NO:36を含む、本発明1024~1026のいずれかのポリペプチド。
[本発明1028]
配列SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:38を含む、本発明1024~1027のいずれかのポリペプチド。
[本発明1029]
V7、M8、F9、K11、Q26、L29、E35、D41、F44、およびP46からなる群より選択される1~8個のアミノ酸が別のアミノ酸に置き換えられている、配列SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:38を含む、本発明1024~1027のいずれかのポリペプチド。
[本発明1030]
IL17に結合する前記Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントが、他のタンパク質またはポリペプチドに連結または融合されている、本発明1024~1029のいずれかのポリペプチド。
[本発明1031]
前記他のタンパク質またはポリペプチドが、前記Sac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントを含む、本発明1030のポリペプチド。
[本発明1032]
前記他のタンパク質またはポリペプチが、抗体であり、好ましくはTNFαまたはHer2/neuに結合する、本発明1030のポリペプチド。
[本発明1033]
有機分子にコンジュゲートされている、本発明1024~1032のいずれかのポリペプチド。
[本発明1034]
本発明1024~1032のいずれかのポリペプチドをコードするDNA配列を含む、遺伝子構築物。
[本発明1035]
本発明1034の遺伝子構築物を含むベクター。
[本発明1036]
そのゲノム中に本発明1034の遺伝子構築物を含む、宿主細胞。
[本発明1037]
本発明1024~1032のいずれかのポリペプチドを生成するための方法であって、
a.本発明1034の遺伝子構築物によって細胞が形質転換されている、細胞培養物を培養する工程、および
b.ポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、前記方法。
[本発明1038]
医薬としての本発明1024~1032のいずれかのポリペプチド。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024012420000001.xml