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  • 特開-電極カテーテル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124206
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】電極カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20240905BHJP
   A61B 5/287 20210101ALI20240905BHJP
   A61B 5/367 20210101ALI20240905BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20240905BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61N1/39
A61B5/287
A61B5/367
A61B5/33 120
A61N1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032212
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 純也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 峰太
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕明
(72)【発明者】
【氏名】小塚 拓真
(72)【発明者】
【氏名】白川 泰裕
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053JJ23
4C127AA02
4C127LL08
(57)【要約】
【課題】絶縁性能と電気的接続の信頼性とを両立することができる電極カテーテルを提供すること。
【解決手段】電極カテーテル(100)は、リング状の電極(111)と、外周面に電極(111)が取り付けられたチューブ(101)と、チューブ(101)内に延在するとともに、一端がチューブ(101)に形成された挿通孔(101a)を介してチューブ(101)の内から外に導出され電極(111)に接続されたリード線(112)と、有し、電極(111)へのリード線(112)の接続位置(113)が挿通孔(101a)に対向する位置からずれている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状の電極と、
外周面に前記電極が取り付けられたチューブと、
前記チューブ内に延在するとともに、一端が前記チューブに形成された挿通孔を介して前記チューブの内から外に導出され前記電極に接続されたリード線と、
を備え、
前記電極への前記リード線の接続位置は、前記挿通孔に対向する位置からずれている、
電極カテーテル。
【請求項2】
前記電極への前記リード線の接続位置は、前記挿通孔に対向する位置から、前記チューブの円周方向にずれている、
請求項1に記載の電極カテーテル。
【請求項3】
前記電極への前記リード線の接続位置は、前記挿通孔に対向する位置から、前記チューブの円周方向に45°以上ずれている、
請求項2に記載の電極カテーテル。
【請求項4】
前記電極への前記リード線の接続位置は、前記挿通孔に対向する位置から、前記チューブの長手方向にずれている、
請求項1又は2に記載の電極カテーテル。
【請求項5】
前記リード線には、心腔内除細動のための電気エネルギーが供給される、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電極カテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心内心電図の計測や、心房細動等の不整脈を治療するための医療機器として、電極カテーテルが広く用いられている。
【0003】
電極カテーテルは、カテーテルの長手方向の異なる位置に配置された複数の電極を有する。電極カテーテルは、心内心電図を計測する場合には、当該複数の電極を用いて心臓内の電位を計測する。また、電極カテーテルは、心腔内除細動などの治療を行う場合には、当該複数の電極を用いて電気エネルギーを治療部位に供給する。
【0004】
この種の電極カテーテルは、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-63708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電極カテーテルのカテーテル本体は一般にチューブにより形成され、チューブの表面に複数のリング状の電極が取り付けられ、チューブの内部空間には複数のリード線が延在される。各リード線は、チューブの厚みを貫通する挿通孔を介してチューブの外周側に導出され、チューブ外周側において溶接によって各電極に電気的に接続される。
【0007】
ところで、各リード線は、絶縁層によって被覆されており、絶縁性が確保されている。しかし、リード線のうち電極と接続する部分は絶縁層が取り除かれるので、チューブ内において、隣り合うリード線同士や、リード線とガイドワイヤーなどの他の部材との短絡が生じるおそれがある。
【0008】
絶縁層を取り除く領域を大きくし過ぎると短絡の可能性が高くなり、逆に、絶縁層を取り除く領域を小さくし過ぎると電極との電気的接続の信頼性が低下するといったジレンマが生じる。特に、電極カテーテルでは、各リード線同士やリード線と他の部材との間の距離は非常に小さいので、上記ジレンマを解消するのは難しかった。
【0009】
本開示は、以上の点を考慮してなされたものであり、絶縁性能と電気的接続の信頼性とを両立することができる電極カテーテルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の電極カテーテルの一つの態様は、
リング状の電極と、
外周面に前記電極が取り付けられたチューブと、
前記チューブ内に延在するとともに、一端が前記チューブに形成された挿通孔を介して前記チューブの内から外に導出され前記電極に接続されたリード線と、
を備え、
前記電極への前記リード線の接続位置は、前記挿通孔に対向する位置からずれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電極へのリード線の接続位置を挿通孔に対向する位置からずらすようにしたので、絶縁性能と電気的接続の信頼性とを両立し得る電極カテーテルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態の電極カテーテルの全体構成を示す外観図
図2】電極カテーテルの使用例を示す図
図3】カテーテル本体の製造過程を説明するために、カテーテル本体を長手方向に切って示した断面図
図4図1のA-A断面を示す断面図
図5】比較例を示す断面図
図6】他の実施の形態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施の形態の電極カテーテル10の全体構成を示す外観図である。電極カテーテル10は、カテーテル本体100と、ハンドル部200と、コネクター301、302と、を有する。
【0015】
カテーテル本体100には、RA電極群110、CS電極群120及び検査用電極群130が設けられている。RA電極群110は所定距離を隔てて配置された複数(本実施の形態の場合には8個)のリング状の電極111からなり、CS電極群120は所定距離を隔てて配置された複数(本実施の形態の場合には8個)のリング状の電極121からなり、検査用電極群130は所定距離を隔てて配置された複数(本実施の形態の場合には4個)のリング状の電極131からなる。
【0016】
図2は、電極カテーテル10の使用例を示す図である。カテーテル本体100が上大静脈を介して心腔内に挿入され、RA電極群110が右心房(RA)内に留置され、CS電極群120が冠状静脈洞(CS)内に留置される。コネクター301、302は除細動器20に接続される。
【0017】
除細動器20は、心腔内除細動などの治療を行う場合には、RA電極群110及びCS電極群120に電気エネルギーを供給する。一方、除細動器20は、心内心電図の計測時には、RA電極群110、CS電極群120及び検査用電極群130の電位を用いて心内心電図を得る。
【0018】
次に、本実施の形態のカテーテル本体100の構成について、図3及び図4を用いて詳しく説明する。図3は、カテーテル本体100を長手方向に切った断面図である。図3は、カテーテル本体100の製造過程を示している。図4は、図1におけるA-A断面図である。
【0019】
チューブ101は絶縁特性を有する樹脂により形成されている。具体的には、チューブ101は、例えばポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミドなどにより形成されている。チューブ101内には、各電極111、121、131に接続される複数のリード線が配される。この複数のリード線は、ハンドル部200を貫通してコネクター301、302を介して除細動器20(図2)に接続される。
【0020】
なお、図3及び図4では、1個の電極111に接続される1本のリード線112のみが示されているが、実際には、チューブ101内にはチューブ101の外周面に取り付けられた電極の数に対応する数のリード線が設けられており、各リード線が図3及び図4で示したのと同様の方法で各電極に接続される。
【0021】
図3に戻って説明を続ける。リード線112の一端側は挿通孔101aを介してチューブ101内からチューブ101外に導出されている。リード線112は、導体112a及び絶縁層112bを有する。
【0022】
リード線112の接続位置113は、絶縁層112bが除去されている。絶縁層112bは、例えば治具を用いて物理的に除去してもよいし、薬品を用いて除去してもよいし、レーザーを用いて除去してもよい。絶縁層112bが除去されたリード線112の接続位置113は溶接によりリング状の電極111の内周面に電気的及び機械的に接続される。
【0023】
次に、リング状の電極111をチューブ101の先端方向から挿し込み、図3の矢印Fで示したように、電極111をチューブ101の長手方向において挿通孔101aに対応する位置まで移動させる。
【0024】
この状態で、図4に示したように、リング状の電極111を、接続位置113が挿通孔101aに対向する位置から外れるように、チューブ101の円周方向にずらす。図4の例では、リング状の電極111をチューブ101に対して時計方向に回転させることで、接続位置113が挿通孔101aに対向する位置からずらされている。
【0025】
この状態で、リング状の電極111を加締めることで、リング状の電極111をチューブ101に固定する。
【0026】
このように、電極111へのリード線112の接続位置113を、挿通孔101aに対向する位置からチューブ101の円周方向にずらしたことにより、絶縁層112bを取り除く領域を長くしても、この絶縁層112bが取り除かれた領域が挿通孔101aからチューブ101内に入り込まなくなり、チューブ101内に設けられた他のリード線(図示せず)やガイドワイヤーなどの他の部材との短絡を防止できる。
【0027】
また、絶縁層112bを取り除く領域を長くしたことにより、溶接長を長くすることができ、電極111との電気的接続の信頼性が高くなる。
【0028】
ここで、電極111へのリード線112の接続位置113は、挿通孔101aに対向する位置からチューブ101の円周方向に45°以上ずらすことが好ましい。
【0029】
図5は、比較例としての従来構成を示す断面図である。従来はリード線112の接続位置113が挿通孔101aに対向する位置とされているので、絶縁層112bを取り除く領域を長くし過ぎると、この絶縁層112bが取り除かれた領域が挿通孔101aからチューブ101内に入り込みやすくなり、チューブ101内に設けられた他のリード線やガイドワイヤーなどの他の部材と短絡するおそれがある。このため、絶縁層112bを取り除く領域を短くせざるを得ず、その結果、電極111との電気的接続の信頼性が低下するおそれがある。
【0030】
以上説明したように、本実施の形態によれば、電極カテーテル100は、リング状の電極111と、外周面に電極111が取り付けられたチューブ101と、チューブ101内に延在するとともに、一端がチューブ101に形成された挿通孔101aを介してチューブ101の内から外に導出され電極111に接続されたリード線112と、有し、電極111へのリード線112の接続位置113が挿通孔101aに対向する位置からずれている。
【0031】
これにより、絶縁層112bを取り除く領域を長くしても絶縁性を維持できるので、絶縁性能と電気的接続の信頼性とを両立することができる電極カテーテル100を実現できる。
【0032】
従来の構成では、図5に示したように、溶接部(接続位置113)が挿通孔101aの直上に配置されるので、リード線112がチューブ101内に引っ張られた場合に、溶接部においてリード線112が断線するおそれがある。しかし、本実施の形態の構成では、挿通孔101aと溶接部(接続位置113)がずれているので、リード線112の断線を防止できる。
【0033】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0034】
上述の実施の形態では、電極111へのリード線112の接続位置113を、挿通孔101aに対向する位置からチューブ101の円周方向にずらした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電極111へのリード線112の接続位置113を、挿通孔101aに対向する位置からチューブ101の長手方向にずらしてもよい。
【0035】
図6は、その例を示す断面図である。図6において、リード線112は電極111におけるリング幅の左寄りで接続され、挿通孔101aの直上には電極111の右寄りの部分が配されている。このようにした場合でも、電極111へのリード線112の接続位置113を挿通孔101aに対向する位置からずらすことができるので、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。ただし、電極111のリング幅は非常に短いので、上述の実施の形態のように円周方向にずらした方が電極111へのリード線112の接続位置113を挿通孔101aに対向する位置からより大きくずらすことができるので、より大きな効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本開示の電極カテーテルは、例えば心腔内除細動などの治療に用いられる電極カテーテルとして有用である。
【符号の説明】
【0037】
10 電極カテーテル
20 除細動器
100 カテーテル本体
101 チューブ
110 RA電極群
111、121、131 電極
112 リード線
112a 導体
112b 絶縁層
120 CS電極群
130 検査用電極群
200 ハンドル部
301、302 コネクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6