(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124213
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】杭と基礎の接合工法及び杭頭接合構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20240905BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E04G21/12 104A
E04G21/12 104B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032220
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三富 遼太
(72)【発明者】
【氏名】岸 浩行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 典子
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046CA03
2D046CA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】杭頭部と建物の基礎とを接合する杭頭接合部において、効率よく引抜き耐力と曲げ耐力の向上を図る簡略な方法を提供する。
【解決手段】杭頭部と建物の基礎とを接合する、杭と基礎の接合工法であって、あらかじめ張力が導入されたプレストレス導入部材の下半を、杭側に打設されるコンクリートに埋設し固定する工程と、前記プレストレス導入部材の上半を、前記杭から上方に突出する杭頭補強部材とともに前記基礎をなすコンクリートに埋設する工程と、該基礎をなすコンクリートが硬化したのち、前記プレストレス導入部材の張力を解放する工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部と建物の基礎とを接合する、杭と基礎の接合工法であって、
あらかじめ張力が導入されたプレストレス導入部材の下半を、杭側に打設されるコンクリートに埋設し固定する工程と、
前記プレストレス導入部材の上半を、前記杭から上方に突出する杭頭補強部材とともに前記基礎をなすコンクリートに埋設する工程と、
該基礎をなすコンクリートが硬化したのち、前記プレストレス導入部材の張力を解放する工程と、
を含むことを特徴とする杭と基礎の接合工法。
【請求項2】
請求項1に記載の杭と基礎の接合工法において、
前記杭が、場所打ちコンクリート造であり、
前記プレストレス導入部材の下半を、前記杭を構成するコンクリートに埋設し固定することを特徴とする杭と基礎の接合工法。
【請求項3】
請求項1に記載の杭と基礎の接合工法において、
前記杭が、中空部を有する既製杭であり、
前記プレストレス導入部材の下半を、前記中空部に打設される中詰めコンクリートに埋設し固定することを特徴とする杭と基礎の接合工法。
【請求項4】
請求項1に記載の杭と基礎の接合工法において、
前記プレストレス導入部材を、
下端に閉塞部材を有する筒状の緊張材と、
該緊張材内に挿入される棒材と、
前記緊張材に反力を取って、前記棒材を前記閉塞部材に向けて押込むことにより前記緊張材に張力を導入しつつ、前記緊張材に装着可能な張力保持治具と、
により構成することを特徴とする杭と基礎の接合工法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の杭と基礎の接合工法により構築されたことを特徴とする杭頭接合構造。
【請求項6】
請求項5に記載の杭頭接合構造において、
前記プレストレス導入部材が、平面視で前記基礎の配筋との干渉を避けた位置に、矩形状をなすように複数配置されていることを特徴とする杭頭接合構造。
【請求項7】
杭と、
前記杭の上部に構築される建物の基礎と、
前記杭から上方に突出し、前記基礎に埋設される杭頭補強部材と、
前記杭の杭頭部と前記基礎とに跨って埋設されるプレストレス導入部材と、
を備える杭頭接合構造であって、
前記プレストレス導入部材は、前記杭頭部と前記基礎とに跨る範囲に圧縮域を形成することを特徴とする杭頭接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭頭部と建物の基礎とを接合する際に用いる杭と基礎の接合工法、及び杭頭接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の引抜力に抵抗するべく、建物を支持する基礎杭の軸部に節部を設けた場所打ちコンクリート造の節付き杭が知られている。節部を設けると、杭本体の許容引張耐力を大幅に向上できる。しかし、建物の基礎との接合部となる杭頭部の引抜耐力は、接合部に配筋されている定着筋によってのみ発揮されることから、杭頭断面に配筋可能な定着筋の数量により、その上限がほぼ決まる。
【0003】
他方、必要な引張耐力を確保するため、配筋量に見合う杭頭断面を設計すると、杭頭断面が過大となり、経済性及び施工性など不利となりかねない。このような中、杭頭部にプレストレスを付与して補強する場所打ちプレストレスコンクリート杭が採用される場合がある。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されている場所打ちプレストレスコンクリート杭の構築方法は、次のとおりである。まず、鉄筋かごに保護筋を取り付けるとともに、保護筋の中にPC鋼線を挿入しておく。この保護筋付き鉄筋かごを掘削孔に挿入してコンクリートを打設し、場所打ちコンクリート杭を構築する。
【0005】
次に、構築予定の建物の基礎より上方まで、保護筋の中からPC鋼線を引き出した状態で、基礎コンクリートを打設する。基礎コンクリートが硬化して建物の基礎が構築されたのち、この基礎の上面でPC鋼線の緊張作業を行って定着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の構成によれば、鉄筋かごの主筋が埋設された杭頭接合部にプレストレスを付与することで、引抜き耐力と曲げ耐力の向上が期待できる。しかし、施工現場でPC鋼線に張力を導入する作業は煩雑であるとともに、多大な作業時間を要する。また、鉄筋かごに対応させてPC鋼線を配置するため、PC鋼線の配置位置に自由度が小さく、建物の基礎の配筋に干渉しない位置に設置する作業も煩雑となりやすい。さらに、PC鋼線のシース管が鉄筋かごの主筋におけるかぶりコンクリートの欠損を引き起こす可能性がある。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、杭頭部と建物の基礎とを接合する杭頭接合部において、簡略な方法で効率よく引抜き耐力と曲げ耐力の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明の杭と基礎の接合工法は、杭頭部と建物の基礎とを接合する、杭と基礎の接合工法であって、あらかじめ張力が導入されたプレストレス導入部材の下半を、杭側に打設されるコンクリートに埋設し固定する工程と、前記プレストレス導入部材の上半を、前記杭から上方に突出する杭頭補強部材とともに前記基礎をなすコンクリートに埋設する工程と、該基礎をなすコンクリートが硬化したのち、前記プレストレス導入部材の張力を解放する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の杭と基礎の接合工法は、前記杭が、場所打ちコンクリート造であり、前記プレストレス導入部材の下半を、前記杭を構成するコンクリートに埋設し固定することを特徴とする。
【0011】
本発明の杭と基礎の接合工法は、前記杭が、中空部を有する既製杭であり、前記引張定着部の下半を、前記中空部に打設される中詰めコンクリートに埋設し固定することを特徴とする。
【0012】
本発明の杭と基礎の接合工法は、前記プレストレス導入部材を、下端に閉塞部材を有する筒状の緊張材と、該緊張材内に挿入される棒材と、前記緊張材に反力を取って前記棒材を前記閉塞部材に向けて押込むことにより、前記緊張材に張力を導入しつつ、前記緊張材に装着可能な張力保持治具と、により構成することを特徴とする。
【0013】
本発明の杭頭接合構造は、本発明の杭と基礎の接合工法により構築されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の杭頭接合構造は、前記プレストレス導入部材が、平面視で前記基礎の配筋との干渉を避けた位置に、矩形状をなすように複数配置されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の杭頭接合構造は、杭と、前記杭の上部に構築される建物の基礎と、前記杭から上方に突出し、前記基礎に埋設される杭頭補強部材と、前記杭の杭頭部と前記基礎とに跨って埋設されるプレストレス導入部材と、を備える杭頭接合構造であって、前記プレストレス導入部材は、前記杭頭部と前記基礎とに跨る範囲に圧縮域を形成することを特徴とする。
【0016】
上記の杭と基礎の接合工法、及び杭頭接合構造によれば、あらかじめ張力を導入したプレストレス導入部材を採用する。このため、施工現場では、プレストレス導入部材に導入した張力を解放するのみの簡略な作業で、杭頭接合部における所望の高さ範囲にプレストレスを付与できる。これにより、緊張管理などの煩雑な作業が不要となり、施工性を大幅に向上できる。
【0017】
また、杭頭接合部にプレストレスを付与することで、杭頭補強部材を増やすことなく、引抜き耐力と曲げ耐力の向上を図ることができる。したがって、杭の断面径を拡大するなどの過剰な設計を省略し、杭頭接合部を合理的な構造とすることが可能となる。その一方で、杭頭補強部材を減らして過密配筋を抑制し、杭頭接合部における配筋の簡素化を図ることも可能となる。
【0018】
さらに、プレストレス導入部材は、その配置位置に制約がないため、平面視で前記基礎の配筋との干渉を避けて矩形状に配置することもでき、杭頭接合部に自由度の高い設計が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、あらかじめ張力を導入したプレストレス導入部材を採用することで、杭頭部と建物の基礎とを接合する杭頭接合部に簡略な方法で効率よくプレストレスを付与し、杭頭接合部の引抜き耐力及び曲げ耐力を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本実施の形態における杭頭接合部を示す図である。
【
図2】本実施の形態におけるプレストレス導入部材の概略を示す図である。
【
図3】本実施の形態におけるプレストレス導入部材に張力を導入する手順を示す図である。
【
図4】本実施の形態におけるプレストレス導入部材を利用してコンクリートにプレストレスを付与する手順を示す図である。
【
図5】本実施の形態における杭頭部と基礎とを接合する手順(第1の実施の形態)を示す図である。
【
図6】本実施の形態におけるプレストレス導入部材の平面視配置位置を示す図である。
【
図7】本実施の形態における杭頭部と基礎とを接合する手順(第2の実施の形態)を示す図である。。
【
図8】本実施の形態におけるプレストレス導入部材の配置事例を示す図である。
【
図9】本実施の形態における杭頭接合部の他の事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、杭頭部と基礎とを接合する際に用いる工法及び構造である。いずれの杭形式にも採用可能であるが、本実施の形態では、場所打ち鋼管コンクリート杭を事例に挙げ、その詳細を
図1~
図9を参照しつつ説明する。
【0022】
≪杭頭接合構造≫
図1(a)で示すように、建物の基礎10と基礎杭20の杭頭部は剛接合され、異形棒鋼などにより構成された杭頭補強筋30が埋設されている。
【0023】
基礎杭20は、場所打ち鋼管コンクリート造よりなり、鉄筋かご21とコンクリート22よりなる杭本体の頭部が鋼管23で補強されている。この鋼管23には、杭頭補強筋30が周方向に等間隔状に複数配置されている。これらは、下半が鋼管23に溶接などにより固着され、上半は杭頭部より上方に突出し、基礎10に埋設されている。
【0024】
基礎10は、基礎鉄筋11とコンクリート12よりなる場所打ちコンクリート造の構造物であり、例えば、フーチングや基礎梁などである。この基礎10と基礎杭20とに跨るようにして、プレストレス導入部材40が埋設されている。
【0025】
プレストレス導入部材40は、PC鋼棒などの緊張力を備えた部材であり、基礎杭20の杭頭部と基礎10との接合部分100に、プレストレスを付与するために設けられている。
図1(a)では、おおよそ高さL1の範囲に、プレストレスが付与されている状態を例示している。
【0026】
このように、接合部分100にプレストレスを付与すると、付与しない場合と比較して軸方向圧縮力が増大するため、
図1(b)の杭体M-N相関曲線図で示すように、作用応力が軸力Nのプラス方向に移動し、曲げ耐力が増加する。したがって、例えば地震などの発生により、建物に水平力及び鉛直力が作用する場合にあっても、杭頭部に発生する曲げモーメントによって、基礎杭20が損傷する現象を抑制することができる。
【0027】
また、接合部分100にプレストレストを付与すると、コンクリート12、22を介して鋼管23及び杭頭補強筋30にも圧縮力が作用される。これにより、基礎杭20に引抜力が作用しても、杭頭補強筋30及び鋼管23に伝達された圧縮力の分だけ、これを軽減できることから、杭頭部と基礎10との接合部分100の引抜き耐力を向上させることが可能となる。
【0028】
したがって、杭頭補強筋30を増やすことなく、引抜き耐力と曲げ耐力の向上を図ることができ、基礎杭20の断面径を拡大するなどの過剰な設計を省略し、接合部分100を合理的な構造とすることが可能となる。その一方で、杭頭補強筋30を減らして過密配筋を抑制し、接合部分100における配筋の簡素化を図ることも可能となる。
【0029】
≪プレストレス導入部材≫
上記のプレストレス導入部材40は、あらかじめ張力を導入できるとともに、その状態でコンクリート12、22に埋設することができる部材である。また、コンクリート12、22の硬化後に、張力を解放できる。その構成はいずれでもよいが、例えばプレストレス導入部材40として、次のような構造のものを採用することができる。
【0030】
図2(a)で示すように、プレストレス導入部材40は、PC鋼材41と、棒材42と、張力保持治具43とを備えている。
【0031】
PC鋼材41は筒状に形成され、下端が閉塞部材411により閉塞されている。また、上端は開口されているとともに、外周面上端近傍に反力受け部材412が設けられている。反力受け部材412と閉塞部材411はともに、平面視で外径が同径の円形に形成されている。
【0032】
棒材42は、PC鋼材41の内空に挿入される部材であり、下端が前記閉塞部材411に当接し、上端は張力保持治具43に当接可能な長さに形成されている。張力保持治具43は、PC鋼材41の上端側外周面に着脱自在に装着される部材であり、押込み部材431と、保持部材432とにより構成されている。
【0033】
押込み部材431は、棒材42を閉塞部材411に向けて押し込むために用いる部材であり、保持部材432は、押込み部材431を棒材42を押し込んだ状態で保持するための部材である。これらの機能を有していれば、その形状はいずれでもよい。
【0034】
例えば、保持部材432に、PC鋼材41と押込み部材431を内包可能な内空部4321を設ける。また、押込み部材431に当接部材4311と、PC鋼材41と同径の外周面を有する係止部4312とを設ける。当接部材4311は、PC鋼材41の中空部に挿入すると棒材42に当接する。
【0035】
そして、保持部材432の内空面にメスねじを設け、このメスねじに対応するオスねじを、PC鋼材41の上端側外周面と押込み部材431の係止部4312における外周面の両者に設ける。このような構成を有するプレストレス導入部材40に張力を導入する手順は、例えば、次のとおりである。
【0036】
まず、
図3(a)で示すように、PC鋼材41の、内空部に棒材42を挿入するとともに、上端側に張力保持治具43を装着する。次に、
図3(b)で示すように、ジャッキ50をセットし、反力受け部材412に反力を取りつつ、押込み部材431を保持部材432に対して回転させて、押し下げる。
【0037】
これにより、
図3(c)で示すように、押込み部材431の当接部材4311で棒材42が閉塞部材411に向けて押しつけられ、PC鋼材41に張力が作用する。所定の張力が作用したところで、押込み部材431を押し下げる動作を停止する。
【0038】
このとき、押込み部材431の係止部4312は、保持部材432の内空面に螺合され、保持部材432は、PC鋼材41の外周面上端側に螺合されている。したがって、ジャッキ50を撤去しても
図2(b)で示すように、棒材42が閉塞部材411に向けて押しつけられた状態を保持できる。つまり、PC鋼材41に張力が導入された状態を維持できる。
【0039】
そして、
図4(a)で示すように、PC鋼材41に張力が導入された状態のプレストレス導入部材40を、コンクリート打設領域に配置し、これを埋設するようにしてコンクリート12、22を順に打設する。コンクリート12、22が硬化したのちに張力保持治具43を取り外すと、
図4(b)で示すように、張力が解放され、閉塞部材411と反力受け部材412の間で、硬化したコンクリート12、22のおおよそ高さL1の範囲に、プレストレス力を付与することができる。
【0040】
なお、
図4(b)では、張力保持治具43を取り外したのちのPC鋼材41に、内空部を塞ぐキャップ44を装着している。また、上記のプレストレス導入部材40は、市場で一般に取引されている既製品などを採用することができる。例えば、NAPPユニット(登録商標)などを、事例として挙げることができる。
【0041】
≪≪杭と基礎の接合工法≫≫
上記のプレストレス導入部材40を利用して、基礎杭20の杭頭部と基礎10とを接合しつつ、プレストレスを付与する手順は、次に示すとおりである。
【0042】
≪第1の実施の形態≫
第1の実施の形態では
図5(a)で示すように、引抜力を低減させたい範囲L2を、基礎杭20から基礎10の上部に至る広い範囲に設定する場合を事例に挙げる。
【0043】
まずは、施工に先立ち、プレストレス導入部材40の準備作業を行う。プレストレス導入部材40は、
図5(a)で示すように、反力受け部材412及び閉塞部材411を引抜力を低減させたい範囲L2を挟む上下に配置でき、かつ張力保持治具43を基礎10を構成するコンクリート12の打ち上がり面より上方に配置できる長さに設定する。
【0044】
また、プレストレス導入部材40のPC鋼材41には、例えば
図3(a)~(c)を参照して説明した手順で、高さ範囲L2に所望のプレストレスを付与可能な張力を導入しておく。
【0045】
そして、
図5(b)で示すように、地中孔Hを安定液Mで満たすとともに、鉄筋かご21と鋼管23を建て込む。また、上記の準備作業を行ったプレストレス導入部材40を、例えば、鉄筋かご21に支持させる態様で、所定位置に配置する。
【0046】
プレストレス導入部材40の平面視配置位置は、基礎10の基礎鉄筋11と干渉しない位置に配設する。例えば、
図6(a)で示すように、鋼管23に沿って平面視で円形状に配置してもよいし、
図6(b)で示すように、平面視矩形形状に配置することも可能である。これにより、基礎10の基礎鉄筋11との干渉を容易に避けることができる。
【0047】
こうして、プレストレス導入部材40を所定の平面視位置及び高さに配置したのち、
図5(b)で示すように地中孔Hにコンクリート22を打設し、鉄筋かご21を埋設するとともに、鋼管23内を充填してプレストレス導入部材40の下半を埋設する。これにより、コンクリート22が硬化すると、杭頭部から杭頭補強筋30とプレストレス導入部材40が上方に突出した基礎杭20が構築される。
【0048】
コンクリート22が硬化したのち、鋼管23に杭頭補強筋30を固定する。また、これらの作業と前後して、基礎10の構築予定領域で基礎鉄筋11の配筋作業を行う。こののち、コンクリート12を打設し、
図5(a)で示すように、基礎10の基礎鉄筋11、杭頭補強筋30及びプレストレス導入部材40の上半を埋設する。
【0049】
コンクリート12が硬化したのち、
図4(a)及び(b)を参照して説明したように、張力保持治具43を取り外し、これに替えてPC鋼材41の内空部を塞ぐキャップ44をPC鋼材41の上端に装着する。
【0050】
≪第2の実施の形態≫
第2の実施の形態では、
図7(a)で示すように、引抜力を低減させたい範囲L2が、基礎杭20と基礎10の接合面を挟んだ狭い範囲でよい場合を事例に挙げる。このように、引抜力を低減させたい範囲L2が狭い場合、基礎10のコンクリート12を打ち継ぐタイミングで、プレストレス導入部材40の張力を解放してもよい。
【0051】
つまり、プレストレス導入部材40は、引抜力を低減させたい範囲L2を挟んだ上下に反力受け部材412及び閉塞部材411を配置でき、かつ、
図7(b)で示すように、張力保持治具43をコンクリート12の打ち継ぎ面h1の上部に配置できる長さに製作する。
【0052】
また、第1の実施の形態と同様に、PC鋼材41には、例えば、
図3(a)~(c)を参照して説明した手順で、高さ範囲L2に所望のプレストレスを付与可能な張力を導入しておく。そして、地中孔Hに、鉄筋かご21と鋼管23を建て込む。
【0053】
次に、
図7(b)で示すように、プレストレス導入部材40を、例えば鉄筋かご21に支持させる態様で所定位置に配置し、コンクリート22を打設する。これにより、少なくともプレストレス導入部材40の上半が埋設される。
【0054】
コンクリート22が硬化したのち、鋼管23に杭頭補強筋30を固定する。また、これらの作業と前後して、基礎10の構築予定領域で基礎鉄筋11の配筋作業を行う。こののち、コンクリート12を打ち継ぎ予定高さh1まで打設する。すると、プレストレス導入部材40の上半がコンクリート12に埋設される。
【0055】
コンクリート12が硬化したのち、張力保持治具43を取り外す。この状態で、基礎10の予定高さh2までコンクリート12を打ち継ぐ。必要に応じて、張力保持治具43を取り外した際、
図4(b)で示すように、PC鋼材41の内空部を塞ぐキャップ44を装着してもよい。
【0056】
上記の基礎杭20と基礎10の接合工法によれば、あらかじめ張力を導入したプレストレス導入部材40を採用する。このため、施工現場では、プレストレス導入部材40に導入した張力を解放するのみの簡略な作業で、基礎杭20と基礎10との接合部分100における、所望の引抜力を低減させたい範囲L2にプレストレスを付与できる。これにより、緊張管理などの煩雑な作業が不要となり、施工性を大幅に向上できる。
【0057】
また、プレストレス導入部材40は、その配置位置に制約がないため、
図6(b)を参照して説明したように、基礎10の基礎鉄筋11との干渉を避けた位置に矩形状を配置することもできる。したがって、基礎杭20と基礎10との接合部分100に自由度の高い設計が可能となる。
【0058】
さらには、杭頭接合部だけでなく杭頭部を含む、高さL1のプレストレスを導入できる範囲の耐力向上が期待できる。
【0059】
本発明の杭と基礎の接合方法、及び杭頭接合構造は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【0060】
例えば、プレストレス導入部材40は、長さや断面径などを適宜調整可能である。このため、例えば、
図8(a)で示すように、長尺かつ大径なプレストレス導入部材40を鋼管23の中央に1本配置するなどしてもよいし、
図8(b)で示すように、短尺かつ小径のプレストレス導入部材40を複数準備し、これらを鋼管23内に間隔を設けて配置するなどしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、基礎杭20として場所打ち鋼管コンクリート杭を事例に挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、場所打ちコンクリート杭や鋼管杭、既製コンクリート杭(PHC杭(高強度プレストレストコンクリート杭)、PRC杭(高靱性プレストレスト鉄筋コンクリート杭)、SC杭(外殻鋼管付遠心力コンクリート杭)など)、といったいずれにも採用することが可能である。
【0062】
なお、
図9で示すように、基礎杭20として既製コンクリート杭60を採用する場合、杭頭補強筋30は既製コンクリート杭60の端板61に固着されている場合が多い。そして、プレストレス導入部材40は、既製コンクリート杭60の中空部に中詰めコンクリート62を充填し、この中詰めコンクリート62に下半を固着する態様となる。
【0063】
この場合には、プレストレス導入部材40を利用して中詰めコンクリート62にプレストレスを付与し、これを杭頭補強筋30が接続されている既製コンクリート杭60に伝達させる態様となる。しかし、既製コンクリート杭60の内周面は一般に平滑面に製造されている場合が多い。
【0064】
このため、例えば、既製コンクリート杭60の中詰めコンクリート62との接触面に目荒らし63を施すとよい。こうすると、中詰めコンクリート62との付着性が高まり、中詰めコンクリート62に付与したプレストレスを、杭頭補強筋30が接続されている既製コンクリート杭60に、スムーズに伝達させることができる。
【0065】
また、本実施の形態では、杭頭補強筋30として異形鋼棒を採用したが、これに限定されるものではない。一般に、杭頭補強部材として利用されている部材であれば、アンカー筋や鋼管などいずれをも採用することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 基礎
11 基礎鉄筋
12 コンクリート
20 基礎杭
21 鉄筋かご
22 コンクリート
23 鋼管
30 杭頭補強筋(杭頭補強部材)
40 プレストレス導入部材
41 PC鋼材
411 閉塞部材
412 反力受け部材
42 棒材
43 張力保持治具
431 押込み部材
432 保持部材
44 キャップ
50 ジャッキ
60 既製コンクリート杭
61 端板
62 中詰めコンクリート
63 目荒らし
70 孔壁保護管
100 杭頭と基礎の接合部分(杭頭接合部)
P 圧縮力が作用する部分
L1 プレストレスを導入できる高さ範囲
L2 引抜力を低減させたい範囲
M 安定液