(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124223
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】樹脂寿命推定方法および樹脂の選定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/20 20060101AFI20240905BHJP
G01N 25/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
G01N25/20 B
G01N25/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032231
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 望
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AA04
2G040AB12
2G040BA01
2G040BA25
2G040CA02
2G040CB07
2G040DA02
2G040DA16
2G040EA01
2G040EC09
2G040GA03
2G040HA16
(57)【要約】
【課題】任意の温度及び湿度における樹脂の寿命を推定できる樹脂寿命推定方法と樹脂の選定方法を提供する。
【解決手段】一定の相対湿度RH
1における樹脂の示差走査熱量計を用いて測定される発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の温度Tで測定し、各温度Tにおける樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、温度Tと時間Lとの関係から活性化エネルギーE
aを算出する工程と、一定の温度T
1における樹脂の発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の相対湿度RHで測定し、各相対湿度RHにおける樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、相対湿度RHと時間Lとの関係から湿度加速係数nを算出する工程と、温度T
Aと相対湿度RH
Aの加速条件において樹脂が寿命に達するまでの時間L
Aを算出する工程と、温度T
Nと相対湿度RH
Nの標準条件において樹脂が寿命に達するまでの時間L
Nを数式2から算出する工程と、を有する樹脂寿命推定方法である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解が生じる樹脂が任意の温度Tおよび相対湿度RHにおいて寿命に達するまでの時間を推定する樹脂寿命推定方法であって、
一定の相対湿度RH
1における前記樹脂の示差走査熱量計を用いて測定される発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の温度Tで測定し、各温度Tにおける前記樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、前記温度Tと前記時間Lとの関係から活性化エネルギーE
aを算出する工程と、
一定の温度T
1における前記樹脂の発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の相対湿度RHで測定し、各相対湿度RHにおける前記樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、前記相対湿度RHと前記時間Lとの関係から湿度加速係数nを算出する工程と、
温度T
Aと相対湿度RH
Aの加速条件において前記樹脂が寿命に達するまでの時間L
Aを算出する工程と、
ボルツマン定数をkとし、温度T
Nと相対湿度RH
Nの標準条件において前記樹脂が寿命に達するまでの時間L
Nを下記式から算出する工程と、を有する樹脂寿命推定方法。
【請求項2】
前記樹脂は、医療デバイスに用いられる樹脂材料である請求項1に記載の樹脂寿命推定方法。
【請求項3】
複数種類の樹脂を用意し、
請求項1または2に記載の樹脂寿命推定方法によりそれぞれの樹脂が寿命に達するまでの時間を推定し、
前記樹脂が寿命に達するまでの時間に基づき樹脂を選定する樹脂の選定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加水分解する樹脂の任意の環境条件における寿命を推定する樹脂寿命推定方法と樹脂の選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂のうち、例えば主鎖にエステル、ウレタン、アミド基を有するエラストマーは、時間経過とともに加水分解により劣化することが知られている。加水分解に寄与するパラメータは、主に温度と湿度(相対湿度)である。
【0003】
加水分解による樹脂の劣化を推定する方法として、例えば特許文献1に示すように、反応の温度依存性に着目し、アレニウスモデルを用いて樹脂の劣化度合いの推定を行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の推定方法は、現在の樹脂の劣化度合いを推定するものであって、将来の劣化度合い、すなわち樹脂の寿命を推定することは困難である。また、特許文献1の推定方法では、温度のみ考慮されており、湿度は考慮されていない。このため、医療機器に用いられる加水分解しうるポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂またはこれらのエラストマーや他樹脂とのブレンド樹脂について、任意の温度及び湿度における樹脂の寿命を推定する方法が望まれる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、任意の温度及び湿度における樹脂の寿命を推定できる樹脂寿命推定方法と樹脂の選定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る(1)樹脂寿命推定方法は、加水分解が生じる樹脂が任意の温度Tおよび相対湿度RHにおいて寿命に達するまでの時間を推定する樹脂寿命推定方法であって、一定の相対湿度RH
1における前記樹脂の示差走査熱量計を用いて測定される発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の温度Tで測定し、各温度Tにおける前記樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、前記温度Tと前記時間Lとの関係から活性化エネルギーE
aを算出する工程と、一定の温度T
1における前記樹脂の発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の相対湿度RHで測定し、各相対湿度RHにおける前記樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、前記相対湿度RHと前記時間Lとの関係から湿度加速係数nを算出する工程と、温度T
Aと相対湿度RH
Aの加速条件において前記樹脂が寿命に達するまでの時間L
Aを算出する工程と、ボルツマン定数をkとし、温度T
Nと相対湿度RH
Nの標準条件において前記樹脂が寿命に達するまでの時間L
Nを下記式から算出する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した樹脂寿命推定方法は、示差走査熱量計を用いた発熱ピーク温度の測定によって活性化エネルギーや湿度加速係数を精度よく算出できることから、任意の温度、相対湿度の条件における樹脂の寿命を高精度に推定できる。
【0009】
(2)上記(1)の樹脂寿命推定方法において、前記樹脂は、医療デバイスに用いられる樹脂材料であってもよい。これにより、医療デバイスの使用期限を適切に設定できる。
【0010】
(3)本発明に係る(3)樹脂の選定方法は、複数種類の樹脂を用意し、上記いずれかの樹脂寿命推定方法によりそれぞれの樹脂が寿命に達するまでの時間を推定し、前記樹脂が寿命に達するまでの時間に基づき樹脂を選定する。このように構成した樹脂の選定方法は、樹脂を想定される寿命に基づき適切に選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】サンプル樹脂における負荷日数に対する発熱ピーク温度の関係を示すグラフである。
【
図2】サンプル樹脂における負荷時間に対する劣化率の関係を示すグラフである。
【
図3】相対湿度を固定して温度の条件を変化させた場合のサンプル樹脂における負荷時間に対する劣化率の関係を示すグラフである。
【
図4】相対湿度を固定した場合のサンプル樹脂の寿命と温度の逆数との関係を示すグラフである。
【
図5】温度を固定して相対湿度の条件を変化させた場合のサンプル樹脂における負荷時間に対する劣化率の関係を示すグラフである。
【
図6】温度を固定した場合のサンプル樹脂の寿命と相対湿度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。本実施形態に係る樹脂寿命推定方法は、カテーテル等の医療デバイスに用いられる樹脂材料を対象にしている。ただし、対象とする樹脂は、医療デバイス以外に用いられるものであってもよく、用途は特に限定されない。樹脂寿命推定方法対象となる樹脂は、主鎖にエステル、ウレタン、アミド基を有するポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂またはエラストマーであり、加水分解により劣化する樹脂である。具体的には、ポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー、ナイロンエラストマーが挙げられる。ただし、樹脂寿命推定方法対象とする樹脂はこれらに限定されず、加水分解により劣化する樹脂であれば、樹脂寿命推定方法の対象とすることかできる。
【0013】
寿命推定を行うにあたっては、劣化機序である加水分解を考慮可能なモデルが必要となる。加水分解の進行に寄与するパラメータは、主に「湿度」と「温度」である。これら2つのパラメータを考慮可能な寿命推定モデルとして、アイリングモデルを用いる。アイリングモデルの一般式を数式1に示す。
【0014】
【0015】
Lは一定の(累積)故障確率に至るまでの時間(以降、故障時間)である。寿命推定では、加速条件における故障時間LAから、標準環境での故障時間LNを算出することになり、その為には加速係数Aを求める必要がある。数式1から加速係数Aを求めると数式2となる。
【0016】
【0017】
本実施形態では、数式2を用いて標準環境での故障時間、すなわち寿命を推定する。なお、活性化エネルギー(Ea)、湿度加速係数(n)は実験的に算出する必要があるため、まずはこの2つの値の導出を行う。
【0018】
寿命を推定するためには、寿命とその尺度を定義する必要がある。本実施形態では、故障率に基づく信頼性解析手法を応用して計算を行う。故障率は、主に「試料の使用開始から時間tを経過するまでに正常に動作している全試料に対して、次の単位時間当たりに発生する故障の割合」と定義される。この故障率は、時間の経過と共に、減少・増加する(または一定)ものである。半導体デバイスなどの部品を例に挙げると、初期不良が発生する期間で減少し、安定期(偶発故障発生時期)で一定となり、摩耗故障発生時期では増加傾向を示す。
【0019】
しかし、今回対象とする樹脂の加水分解は、非可逆的な現象である為、劣化の度合いが減少することはない。つまり、劣化の度合いは時間経過と共に増加することになり、摩耗故障発生時期(故障率増加型)と類似した傾向になることが予想される。
【0020】
以上の結果を踏まえて、本実施形態では、加水分解の進行度合いを0(加水分解していない状態)~100(加水分解がストップした状態)の値で表現し、信頼性解析手法を応用した形で寿命推定を行う。
【0021】
次に、上記で仮定した樹脂の加水分解の進行度合いを示す値を決定する。この値には、DSC(示差走査熱量計)で測定される発熱ピーク温度を用いる。発熱ピーク温度は、加水分解で生じる劣化副生成物の量に比例して高温側にシフトしていくことが判明している。つまり、未劣化時の発熱ピーク温度をゼロ点、限界まで劣化させた状態(加水分解がストップした状態)の発熱ピーク温度を上限(=100%)とすることで、加水分解の進行度合いを0~100(%)の値で表現することが可能となる。
【0022】
図1に示すように、DSCで測定した樹脂の発熱ピーク温度は、負荷日数に応じて値が上昇していくことが確認できる。このため、発熱ピーク温度を用いて加水分解の進行度合いを正確に測定することができ、高い精度の寿命推定が可能となる。
【0023】
加水分解は、エステル、ウレタン、アミド基など分解可能な結合部が概ね分解された時点でストップする。分解が終了した時点で、発熱ピーク温度のシフトも停止あるいはこれ以上変動しないことを確認するため、80℃、95%RH環境下における長時間負荷試験を行った。その結果を表1に示す。
【0024】
【0025】
表1の結果から、発熱ピーク温度がこれ以上変化しなくなったので、発熱ピーク温度のシフトが停止することが確認された。
【0026】
推定に用いるためには、発熱ピーク温度が劣化の進行度合いと相関していることが求められる。そこで、負荷時間と発熱ピーク温度の関係を確認した。表2には、80℃、95%RH環境下における負荷時間と発熱ピーク温度との関係を示す。
【0027】
【0028】
表2の劣化率は、表1の結果から発熱ピーク温度の最小を121.3℃、最大を136.1℃として計算した劣化の度合いである。この劣化率の応答性を確認するため、負荷時間と劣化率のワイブルプロットを行った。結果を
図2に示している。
【0029】
図2の結果から、負荷時間と劣化率は、ワイブルプロットにおいて高い相関性を示すことが確認された。つまり、負荷時間と劣化率はワイブル分布に従うと判断できる。また、形状パラメータm(回帰式の傾き)がm>1となっていることから、想定した故障モード(摩耗故障などの故障率増加型)であることが明らかとなった。以上の結果から、発熱ピーク温度を用いた劣化進行の推定は十分な説明力を有していると判断される。
【0030】
アイリングモデルを用いた計算を行うためには、固有の活性化エネルギーと湿度加速係数を求める必要がある。この二つの係数は、それぞれ実験的に求めることが可能である。
【0031】
まず、活性化エネルギーの導出を行う。活性化エネルギー(Ea:Activation Energy)は、正常状態から劣化状態へ進む過程で存在するエネルギー障壁のことであり、温度加速試験においては温度に対する加速度合いを表すパラメータとなる。Eaは、故障メカニズムによって異なる値をとり、Eaが大きければ温度加速性が大きく、小さければ温度加速性が小さいことになる。Eaは、アレニウスの式を用いて算出する。数3に、故障時間L2に対するアレニウスの式を示す。
【0032】
【0033】
数式3の両辺の対数を取ると数式4となる。
【0034】
【0035】
数式4は、寿命の対数と温度の逆数が直線になることを示しており、この直線の傾きにボルツマン定数を乗じた値が活性化エネルギーとなる。つまり、異なる温度条件における寿命(故障時間)の実験的データから回帰式を求めることで、Eaを算出することが可能となる。
【0036】
本実施形態では、湿度もパラメータの一つとなるが、E
a導出に関する実験では、任意の値で固定する必要がある。そこで湿度は95%RHとして、50℃、65℃、80℃の3条件における負荷実験を実施した。結果を
図3にワイブルプロットで示す。
【0037】
ワイブルプロットから算出した回帰式では、全条件で決定係数R2が0.99以上となり、推定した回帰式の当てはまりが非常に高いことが確認された。また、形状パラメータは全てm>1であり、3条件とも形状パラメータの値が比較的近い値となっている。つまり、今回取得した実験結果が想定した故障モード(摩耗故障)を生じさせていると判断できる。
【0038】
次に、当該結果を用いて活性化エネルギーの算出を行う。
図3で示した各条件の回帰式を用いて、条件における寿命までの時間(故障時間)を算出した。結果を表3に示す。
【0039】
【0040】
表3の結果を、寿命の対数と温度(絶対温度)の逆数の形で
図4に示す。この結果から、サンプル樹脂の活性化エネルギーE
aは数式5で求めることができる。
【0041】
【0042】
以上の通り、今回対象とするサンプル樹脂の活性化エネルギーEaは0.665(eV)である。
【0043】
次に、湿度加速係数の導出を行う。湿度加速係数は、前述したアイリングモデルの一般式である数式1を用いて導出する。
【0044】
まず、数式6につき、両辺の対数をとり、数式7とする。
【0045】
【0046】
【0047】
数式7の右辺において、Tを固定し、パラメータを相対湿度(RH)のみに限定すると、n ln(RH)以外は定数となる。つまり、数式7は、寿命の対数と相対湿度の対数が直線になることを示しており、この直線の傾きが湿度加速係数nとなる。
【0048】
寿命までの時間と相対湿度との関係を明らかにするため、温度を80℃として、65%RH、80%RH、95%RHの3条件における負荷実験を実施した。結果を
図5にワイブルプロットで示す。
【0049】
ワイブルプロットから算出した回帰式では、全条件で決定係数R2が0.98以上となり、推定した回帰式の当てはまりが非常に高いことが確認された。また、形状パラメータは全てm>1であり、3条件とも形状パラメータの値が比較的近い値となっている。つまり、湿度変動条件においても、今回取得した実験結果が想定した故障モード(摩耗故障)を生じさせていると判断できる。
【0050】
次に、当該結果を用いて湿度加速係数の算出を行う。
図5で示した各条件の回帰式を用いて、条件における寿命までの時間(故障時間)を算出した。結果を表4に示す。
【0051】
【0052】
表4の結果を、寿命の対数と相対湿度の対数の形で
図6に示す。サンプル樹脂の湿度加速係数nは、回帰式の傾きから-5.261と算出された。
【0053】
以上の結果から、数式2のアイリングモデルを用いて加速係数Aを求める為に必要な活性化エネルギーEa、及び湿度加速係数nが定まった。
【0054】
標準条件における樹脂の寿命を推定するには、加速条件における樹脂の寿命を測定する必要がある。一例として、加速条件を温度80℃(TA)、相対湿度95%(RHA)に設定する。この加速条件で、樹脂が寿命に達するまでの時間LAを算出した。その結果、加速条件における時間LAは22.72時間であった。
【0055】
前述の通り、Eaは0.665、nは-5.251である。この条件で、複数の想定標準条件(温度TN、相対湿度RHN)における樹脂の寿命までの時間LNを算出した結果を表5に示す。
【0056】
【0057】
上記想定標準条件は一例であり、任意の温度、相対湿度の条件において、数式2によって樹脂の寿命を推定することができる。
【0058】
本実施形態の樹脂寿命推定方法は、樹脂の選定に用いることもできる。予め、複数種類の樹脂を用意し、それぞれの樹脂につき活性化エネルギーEaと湿度加速係数nとを算出する。ここで、複数種類の樹脂とは、検討のために同じ樹脂のロット違い、ソフトセグメントの量が異なるポリアミドエラストマー、共重合体組成比が異なる、あるいは同一樹脂で造影剤などが異なるものをいう。次に、それぞれの樹脂につき加速条件における寿命を測定し、数式2により標準条件において樹脂が寿命に達するまでの時間を推定する。その結果に基づき、樹脂を選定することができる。
【0059】
以上のように、本実施形態に係る(1)樹脂寿命推定方法は、加水分解が生じる樹脂が任意の温度Tおよび相対湿度RHにおいて寿命に達するまでの時間を推定する樹脂寿命推定方法であって、一定の相対湿度RH1における樹脂の示差走査熱量計を用いて測定される発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の温度Tで測定し、各温度Tにおける樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、温度Tと時間Lとの関係から活性化エネルギーEaを算出する工程と、一定の温度T1における樹脂の発熱ピーク温度と負荷時間との関係を複数の相対湿度RHで測定し、各相対湿度RHにおける樹脂が寿命に達するまでの時間Lを算出し、相対湿度RHと時間Lとの関係から湿度加速係数nを算出する工程と、温度TAと相対湿度RHAの加速条件において樹脂が寿命に達するまでの時間LAを算出する工程と、ボルツマン定数をkとし、温度TNと相対湿度RHNの標準条件において樹脂が寿命に達するまでの時間LNを数式2から算出する工程と、を有する。このように構成した樹脂寿命推定方法は、発熱ピーク温度の測定によって活性化エネルギーや湿度加速係数を精度よく算出できることから、任意の温度、相対湿度の条件における樹脂の寿命を高精度に推定できる。
【0060】
(2)上記(1)の樹脂寿命推定方法において、樹脂は、医療デバイスに用いられる樹脂材料であってもよい。これにより、医療デバイスの使用期限を適切に設定できる。
【0061】
(3)本発明に係る(3)樹脂の選定方法は、複数種類の樹脂を用意し、上記いずれかの樹脂寿命推定方法によりそれぞれの樹脂が寿命に達するまでの時間を推定し、樹脂が寿命に達するまでの時間に基づき樹脂を選定する。このように構成した樹脂の選定方法は、樹脂を想定される寿命に基づき適切に選定できる。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。