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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124232
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】洗浄剤物品
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/04 20060101AFI20240905BHJP
   C11D 3/386 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20240905BHJP
   C11D 1/92 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C11D17/04
C11D3/386
C11D3/43
C11D1/68
C11D1/72
C11D1/28
C11D17/08
C11D1/14
C11D1/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032243
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 憲介
(72)【発明者】
【氏名】大村 亮介
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB15
4H003AB22
4H003AB27
4H003AC03
4H003AC08
4H003AD05
4H003BA20
4H003DA01
4H003DA05
4H003DB02
4H003DC02
4H003EB04
4H003EB06
4H003EC01
4H003EC02
4H003ED02
4H003ED29
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】吐出時の液体洗浄剤組成物の飛散を抑制し、油脂や糖質などの頑固な汚れに対する洗浄力に優れる洗浄剤物品を提供する。
【解決手段】下記(a)成分を0.01質量%以上15質量%以下、下記(b)成分を酵素タンパク質換算で1質量ppm以上2,000質量ppm以下、下記(c)成分及び水を含有し、(c)成分の含有量と、(a)成分と(b)成分の合計含有量との質量比(c)/[(a)+(b)]が0.3以上50以下である液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、洗浄剤物品。
(a)成分:界面活性剤
(b)成分:酵素
(c)成分:HLBが6.5以上20以下である水溶性溶剤〔ただし、(a)成分に該当するものを除く〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を0.01質量%以上15質量%以下、下記(b)成分を酵素タンパク質換算で1質量ppm以上2,000質量ppm以下、下記(c)成分及び水を含有し、(c)成分の含有量と、(a)成分と(b)成分の合計含有量との質量比(c)/[(a)+(b)]が0.3以上50以下である液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、洗浄剤物品。
(a)成分:界面活性剤
(b)成分:酵素
(c)成分:HLBが6.5以上20以下である水溶性溶剤〔ただし、(a)成分に該当するものを除く〕
【請求項2】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比(a)/(b)が、10以上15,000以下である、請求項1に記載の洗浄剤物品。
【請求項3】
(a)成分の含有量と(c)成分の含有量の質量比(a)/(c)が、0.01以上10以下である、請求項1又は2に記載の洗浄剤物品。
【請求項4】
(c)成分が、下記一般式(c1)で表される化合物〔ただし、HLBが6.5以上20以下のものに限る〕、及び下記一般式(c2)で表される化合物〔ただし、HLBが6.5以上20以下のものに限る〕から選ばれる1種以上を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の洗浄剤物品。
1c-O-(Gly)-H (c1)
〔式中、R1cは、炭素数4以上10以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Glyはグリセリン由来の構成単位を示し、rは1以上3以下の数を示す。〕
2c-O-(AO)-H (c2)
〔式中、R2cは、炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、Aは炭素数2以上3以下のアルキレン基であり、nは1以上5以下の整数である。〕
【請求項5】
(a)成分が、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルグリコシド、アルキルグルカミド及びアルキルスルホベタインから選ばれる1種以上を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の洗浄剤物品。
【請求項6】
前記スプレイヤーを具備する容器は、蓄圧式のスプレイヤーを具備する容器である、請求項1~5の何れか1項に記載の洗浄剤物品。
【請求項7】
硬質物品用、可撓性物品用及び/又は繊維用である、請求項1~6の何れか1項に記載の洗浄剤物品。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の洗浄剤物品から液体洗浄剤組成物を噴霧し、対象表面に液体洗浄剤組成物を接触させる、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、洗浄剤物品及び該洗浄剤物品を用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の身近にある食品汚れとしては、例えば、油脂汚れ、卵汚れ、ご飯粒等のデンプン汚れ等を挙げることができ、これら食品汚れが食器及び台所回りの硬質表面や衣類などの繊維表面に付着すると、時間の経過と共に頑固な落とし難い汚れとなる。
近年、食器用洗浄剤や衣料用洗浄剤を汚れが付いた対象表面に泡状に付着させて、擦らなくても一定時間放置後に濯ぐだけで高い洗浄力を有する簡便な洗浄技術が開発されている。
【0003】
特許文献1には、(a)陰イオン界面活性剤、(b)半極性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤、(c)酵素、並びに水を含有し、(a)/(b)の質量比が0.01以上1未満である、食器及び/又は台所周りの硬質物品用液体洗浄剤組成物であって、食器などに付着した油脂汚れやデンプン汚れに対する洗浄力に優れるなどの技術が開示されている。
特許文献2には、(a)界面活性剤、(b)酵素、並びに(c)無機塩及び(d)カルボン酸塩の少なくとも一方を含有し、(a)成分の含有量と(c)成分及び(d)成分の合計含有量との質量比である(a)/〔(c)+(d)〕が0.1以上10以下である液体洗浄剤組成物を、希釈せずに液体油を含有する汚れが付着した硬質物品に接触させ、外力をかけずに放置した後、水で濯ぐ、硬質物品の洗浄方法が開示されている。
特許文献3には、(A)アルキルベンゼンスルホン酸塩を含むアニオン界面活性剤と、(B)水に対する溶解度が0.1~20g/100mLである有機溶剤と、(C)芳香族スルホン酸又はその塩、及び芳香族カルボン酸又はその塩から選択される1種以上と、(D)両性界面活性剤及びアミンオキシド型界面活性剤から選択される1種以上と、水と、を含有し、(B)成分/((A)成分+(C)成分)で表される質量比が0.1~15である台所用液体洗浄剤であって、トリガー式スプレー容器からスプレーした際にムセにくく、機械力をかけなくても固体脂に対する洗浄力に優れる組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-99588号公報
【特許文献2】特開2008-266332号公報
【特許文献3】特開2022-26762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
強固な食品汚れを落とすためには、酵素を含む洗浄剤組成物を泡状に直接付着させることが有効であるが、スプレー型容器を使用する際には、酵素タンパクの配合に起因して洗浄剤系の界面物性の変化が起こり、起泡性の低下、ひいてはムセに繋がることが明らかとなった。
本発明は、液体洗浄剤組成物をスプレイヤーを具備する容器に充填してなる洗浄剤物品において、酵素を含む液体洗浄剤組成物をスプレーした際の該組成物の飛散を抑制し、油脂や糖質などの頑固な汚れに対する洗浄力に優れる洗浄剤物品及び該洗浄剤物品を用いた洗浄方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分を0.01質量%以上15質量%以下、下記(b)成分を酵素タンパク質換算で1質量ppm以上2,000質量ppm以下、下記(c)成分及び水を含有し、(c)成分の含有量と、(a)成分と(b)成分の合計含有量との質量比(c)/[(a)+(b)]が0.3以上50以下である液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる、洗浄剤物品に関する。
(a)成分:界面活性剤
(b)成分:酵素
(c)成分:HLBが6.5以上20以下である水溶性溶剤〔ただし、(a)成分に該当するものを除く〕
【0007】
また、本発明は、前記洗浄剤物品から液体洗浄剤組成物を噴霧し、対象表面に液体洗浄剤組成物を接触させる、洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体洗浄剤組成物をスプレイヤーを具備する容器に充填してなる洗浄剤物品において、酵素を含む液体洗浄剤組成物をスプレーした際の該組成物の飛散を抑制し、油脂や糖質などの頑固な汚れに対する洗浄力に優れる洗浄用物品及び該洗浄剤物品を用いた洗浄方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の洗浄剤物品の一実施形態におけるスプレー容器の要部を示す側断面図である。
図2図1に示すスプレー容器のスピンエレメントをその先端側から視た状態を示す図である。スピンエレメントの先端は、スピンエレメントの軸方向の両端のうち、泡を突出するノズル部に近い側である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の洗浄剤物品が、酵素を含む液体洗浄剤組成物をスプレーした際に、該組成物の飛散を抑制する理由は必ずしも定かではないが以下のように推察される。
本発明の洗浄剤物品では、起泡性を有する(a)界面活性剤及び(b)酵素を含有する液体洗浄剤組成物に、(c)成分である所定のHLBを有する水溶性溶剤を含有させることで、該組成物における酵素タンパクの配合に起因する界面物性の変化による起泡性の低下が抑制され、これにより、液体洗浄剤組成物をスプレーした際の該組成物の起泡性を制御し、該組成物の飛散性が抑制されものと推察される。
更に、本発明の洗浄剤物品は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を所定の割合で含有することで、油脂や糖質などの頑固な汚れに対する洗浄力に優れ、擦らずとも、すなわち、外力をかけずとも、簡便に優れた洗浄力を得ることができたものと推察される。
なお、本発明の洗浄剤物品は、上記の作用機構に限定されるものではない。
【0011】
<洗浄剤物品>
本発明の実施形態に係る洗浄剤物品は、下記(a)成分、下記(b)成分、下記(c)成分及び水を含有する液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる。
(a)成分:界面活性剤
(b)成分:酵素
(c)成分:HLBが6.5以上20以下である水溶性溶剤〔ただし、(a)成分に該当するものを除く〕
【0012】
本発明の実施形態に係る洗浄剤物品に用いるスプレイヤーを具備する容器は、図1に示すスプレー容器1のように、液体洗浄剤組成物である液状物が充填された有底の容器本体2の口部に、前記液状物を噴出するトリガー式のスプレイヤー3が装着された構成を有するものであり、一般に、トリガー4を引いて、シリンダー9内の空気を外に排出し、トリガー4を戻した際に液状物内に浸したチューブ7を通じて前記液状物を吸い上げ、シリンダー9内に該液状物を満たし、再びトリガー4を引くことにより、シリンダー9内の液状物を押し出して垂直管路6に導き、更に水平管路8、スピンエレメント10を通じて液状物の流れにスピンを与え、その液状物が、ノズル部11から噴射される。
【0013】
スプレー容器1は、液状物が充填された有底の容器本体2の口部に、液状物を噴出するトリガー式のスプレイヤー3が、螺合等により脱着可能又は脱着不可能に装着された構成を有している。スプレイヤー3は、トリガー4を引いて容器本体2内に充填された液状物を噴出するスプレイヤー本体5を主体として構成されており、このスプレイヤー本体5内には、垂直管路6、及び該垂直管路6に連通する水平管路8が形成されている。水平管路8の下方位置には、シリンダー9を構成する筒状壁部91が形成されていると共に、このシリンダー9内を摺動するピストン部材92が配設されている。そして、ピストン部材92を押圧するトリガー4が、スプレイヤー本体5の側壁部に回動自在に嵌着されている。図1中に一点鎖線で示す小円41は、スプレイヤー本体5の側壁部に設けられたトリガー4の回動軸の位置を示す。またトリガー4は、板バネ、コイルばね等の付勢手段(図示せず)により、容器本体2の口部から離れる方向に常時付勢されている。
本明細書において、上方及び下方は、スプレー容器1を水平面上に載置したときの鉛直方向の上方又は下方である。
【0014】
シリンダー9は、第1の逆止弁93及び第2の逆止弁94を有している。第1の逆止弁93は、チューブ7側の流路からの液状物の流入を許容する一方、トリガー4を引いた際の該流路への液状物の逆戻りを阻止し、第2の逆止弁94は、水平管路8側の流路への液状物の流出を許容する一方、トリガー4を戻した際の該流路からの液状物の逆戻りを阻止する。
スピンエレメント10は、円柱状をなし、図2に示すように、周囲にその軸方向に延びる複数本の溝部10aを有している。ノズル部11側に配された先端部に、円柱状の凹部10b及び該凹部10bと各溝部10aとの間を繋ぐ溝部10cを有している。溝部10cが、凹部10bの中央からずれた場所に接続されていることによって、凹部10b内の液状物の流れにスピンが与えられ、スピンが与えられた液状物が、スピンエレメント10の先端部に近接配置された噴射口形成部材11aに設けられた噴射口11bから円錐状に噴射される。噴射口形成部材11aは、その先端部に取り付けられたフォーマー部材11cとともにノズル部11を形成している。フォーマー部材11cと噴射口形成部材11aとの間には、円錐状に噴射される液状物の裏側に内側開口部を有し、噴射口形成部材11aの先端に外側開口部を有する空気取り込み用の孔又は溝11dが形成されている。この空気取り込み用の孔又は溝11dを介して取り込まれる空気が円錐状に噴射される液状物と混合されることにより、液状物としての液体洗浄剤組成物が泡となって泡吐出口11eから噴射される。
【0015】
図1に示すスプレー容器1のスプレイヤー3は、蓄圧タイプのスプレイヤーである。蓄圧タイプのスプレイヤーとは、トリガー4を操作しても、シリンダー9内の液圧が所定の液圧に達するまではノズル部11からの液状物の噴射は生じず、シリンダー9内の液圧が所定の液圧以上に高めたときに、液状物が噴射されるように構成したものである。
図1に示すスプレイヤー3は、シリンダー9内の圧力が所定の液圧以上に高められたときに初めて噴射が生じるようにするために、蓄圧部材12を備えている。蓄圧部材12は、円筒状の内壁面を有するシリンダー13と、シリンダー13内に配され、シリンダー13の中心軸に沿って上下動する弁部材14とを有しておる。弁部材14は、コイルばね等の付勢手段15により常時上方に向けて付勢されており、トリガー4の非操作時には、図1に示すように、弁部材14の上端に形成された栓体14aが、下流側流路への流出口13aを閉鎖している。栓体14aの下方には、外周部がシリンダー13の内壁面に摺接するプランジャー部14bが連設されており、プランジャー部14bの下面には、小径筒状部14cが連設されている。栓体14aの下端部には、小径筒状部14cから栓体14aの周囲へと流れる液の流路14a’が形成されている。
【0016】
シリンダー9内に液状物が満たされている状態で、トリガー4を操作すると、第1の逆止弁93が閉状態、第2の逆止弁94が開状態となって、シリンダー9内の液状物が、液入口13bから蓄圧部材12内に送り込まれる。それにより、シリンダー13内に存在する液状物の液圧が上昇する。プランジャー部14bの上面の面積は、栓体14aの下面の面積より広くなっており、その面積差に起因し、液状物の液圧は、弁部材14を押し下げる力として作用する。引き続きトリガー4を引く操作を継続すると、シリンダー9及びシリンダー13内の液圧は更に高まり、弁部材14を押し下げる力が、付勢手段15の押し上げる力より大きくなる。それにより、弁部材14が下降し、栓体14aにより閉鎖されていた流出口13aが開放され、ノズル部11から、液状物が吐出される。
他方、トリガー4を最終位置まで引き終わると、シリンダー9及びシリンダー13内の液圧が低下し、弁部材14を押し下げる力が、付勢手段15の押し上げる力より小さくなることにより、弁部材14が上昇し、栓体14aにより流出口13aが再び閉鎖される。
【0017】
本発明の洗浄剤物品は、液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレー可能であり、スプレーされた泡の泡比容が15mL/g以上であることが好ましい。
液体洗浄剤組成物を泡にしてスプレーしたときに、スプレーされた泡の泡比容が、15mL/g以上であることによって、硬質表面等に付着した汚れ、とりわけ油汚れに対する洗浄力が向上する。斯かる観点から、スプレーされた泡の泡比容は、好ましくは20mL/g以上、より好ましくは25mL/g以上であり、また、スプレーの容易性の観点から、スプレーされた泡の泡比容は、好ましくは80mL/g以下、より好ましくは60mL/g以下である。油汚れに対する洗浄力の向上及びスプレーの容易性の観点から、スプレーされた泡の泡比容は、好ましくは15mL/g以上80mL/g以下、より好ましくは20mL/g以上60mL/g以下、更に好ましくは25mL/g以上60mL/g以下である。
スプレーされた泡の泡比容の測定方法は、以下の方法で測定する。
【0018】
<泡比容の測定>
スプレー容器により、内部の液体洗浄剤組成物を200mLメスシリンダー(ガラス製、内径40mm)内に間隔を空けずに5回連続でスプレーする。5回目をスプレーして1分後のメスシリンダー内の泡の容量(mL)を目視で読み取とる。また、スプレー後の200mLメスシリンダーの質量を、はかりを用いて測定し、スプレー前のメスシリンダーの質量との差を、泡の質量(g)とし、以下の式で泡比容を算出する。泡比容の測定は、温度20℃、湿度65%の条件下に行う。
泡比容(mL/g)=泡の容量(mL)/泡の質量(g)
【0019】
本発明の洗浄剤物品は、飛散性抑制の観点から、垂直面に対して15cm離れた所から水平方向に液体洗浄剤組成物を吹付けた際に、前記垂直面に吹付けられた液体洗浄剤組成物の質量に対する、該垂直面に付着した液体洗浄剤組成物の質量の割合が、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは94質量%以上、更により好ましくは97質量%、そして、好ましくは100質量%以下である。
洗浄剤物品から垂直面に吹付けられた液体洗浄剤組成物の質量に対する、該垂直面に付着した液体洗浄剤組成物の質量の割合が上記範囲となるように、後に詳細に説明する本発明の液体洗浄剤組成物を、スプレイヤーを具備する容器に充填してなる洗浄剤物品が好ましい。
【0020】
本発明の洗浄剤物品のスプレイヤーを具備する容器、例えばトリガー式のスプレー容器として、蓄圧タイプのスプレイヤーを備えたスプレー容器を用いることが好ましい。蓄圧タイプのスプレイヤーを備えたスプレー容器としては、前述したスプレー容器1を用いることができるが、それに限られるものではなく、各種公知のものを用いることができる。例えば、特開平9-122547号公報、特開平9-308843号公報、特開平10-174911号公報に記載のもの等を用いることができる。公知の蓄圧タイプのスプレイヤーのうち、液状物を霧状にスプレーするものについては、ノズル部を、泡を吐出可能なノズル部に交換して用いる。泡を吐出可能なノズル部としては、前述したスプレー容器1のノズル部11、特開2004-290943号公報の図1に記載のもの、特開2007-167719号公報の図2に記載のもの等を用いることもできる。
【0021】
本発明の洗浄剤物品における前記スプレイヤーを具備する容器は、図1に記載された態様に限定されるものではなく、トリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器等の噴射剤を使用しない手動式スプレー装置、噴射剤を用いるエアゾール等であってよい。前記スプレイヤーを具備する容器は、内容物を液滴状又は泡状にして噴霧又は塗布することができるトリガー式スプレーが好ましく、内容物を液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレー又は泡を形成する機構(泡形成機構)を備えたトリガー式スプレーがより好ましい。
【0022】
本発明の洗浄剤物品において、液滴状に本発明の液体洗浄剤組成物を噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記組成物を入れるスプレー容器の噴射ノズルの噴口径は、スプレーのし易さや、噴射された液滴が荒くなく、直線状にスプレーされず、スプレーできる面積が極端に狭くならないために、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下の範囲である。
液滴状に噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明の洗浄剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.1mL以上、より好ましくは0.3mL以上、そして、好ましくは5mL以下、より好ましくは2mL以下の組成物を噴霧する。
【0023】
本発明の洗浄剤物品において、泡状に本発明の液体洗浄剤組成物を噴霧する機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、前記組成物を入れるスプレー容器の噴射ノズルの噴口径は、スプレーのし易さや、噴射された泡が荒くなく、直線状にスプレーされず、スプレーできる面積が極端に狭くならないために、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、そして、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下の範囲である。
泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合、本発明の洗浄剤物品は、1回の操作で、好ましくは0.5mL以上、より好ましくは1mL以上、そして、好ましくは30mL以下、より好ましくは15mL以下、更に好ましくは5mL以下の組成物を噴霧する。
【0024】
本発明の洗浄剤物品における液体洗浄剤組成物の吐出圧力は、飛散性抑制の観点から、簡便性と飛散性抑制の両立の観点から、レバー1回の引き速度0.2秒において、好ましくは50kPa以上、より好ましくは100kPa以上、更に好ましくは120kPa以上、そして、好ましくは500kPa以下、より好ましくは350kPa以下、更に好ましくは250kPa以下である。
【0025】
本発明の洗浄剤物品において、液滴状に噴霧する機構又は泡形成機構を備えたトリガー式スプレーを用いる場合のトリガーの引き速度は、起泡性の観点から、好ましくは50mm/sec以上、より好ましくは60mm/sec以上、更に好ましくは70mm/sec以上、そして、飛散性の観点から、好ましくは120mm/sec以下、より好ましくは100mm/sec以下、更に好ましくは90mm/sec以下である。
【0026】
<液体洗浄剤組成物>
本発明の液体洗浄剤組成物は、上記の(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有する。
【0027】
<(a)成分>
(a)成分は、界面活性剤である。(a)成分は、(a1)アニオン界面活性剤〔以下、(a1)成分という〕、(a2)ノニオン界面活性剤〔以下、(a2)成分という〕、(a3)カチオン界面活性剤〔以下、(a3)成分という〕及び(a4)両性界面活性剤〔以下、(a4)成分という〕から選ばれる1種以上が挙げられる。
(a)成分は、洗浄性と飛散性抑制の観点から、(a1)成分、(a2)成分及び(a4)成分から選ばれる1種以上が好ましい。
【0028】
(a1)成分は、洗浄性と飛散性抑制の観点から、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤からなる群より選択される1種以上のアニオン界面活性剤が好ましく、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤及びスルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤がより好ましく、硫酸エステル型界面活性剤及びスルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤が更に好ましく、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤から選ばれる1種以上のアニオン界面活性剤がより更に好ましい。
なお、(a1)成分のアニオン界面活性剤が塩の場合、(a1)成分の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩等の無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モルホリン塩等の有機塩が挙げられる。(a1)成分の塩は、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩及びマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩から選ばれる無機塩であり、より好ましくはアルカリ金属塩、更に好ましくはナトリウム塩である。下記(a1)成分の具体例の塩についても同様である。
【0029】
(a1)成分のアルキルアリールスルホン酸型界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。具体的には、炭素数6以上、好ましくは8以上、そして、18以下、好ましくは15以下のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸は、ベンゼン環の炭素原子と結合するアルキル基の炭素原子は、第2級炭素原子であってよい。
【0030】
(a1)成分の硫酸エステル型界面活性剤としては、炭素数8以上20以下の炭化水素基と、硫酸エステル基とを有するアニオン界面活性剤が挙げられる。炭化水素基は、炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。炭化水素基は、アルキル基が好ましい。
(a1)成分の硫酸エステル型界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
【0031】
アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩が好適である。
【0032】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有し、炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基から選ばれる1種以上のオキシアルキレン基の平均付加モル数が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは6以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1.5以下であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好ましい。オキシアルキレン基は、炭素数2が好ましい。また、オキシアルキレン基がエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を含む場合は、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基はブロック結合であってもランダム結合であってもよい。
【0033】
(a1)成分のアルカンスルホン酸型界面活性剤としては、アルカン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下のアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
【0034】
(a1)成分のオレフィンスルホン酸型界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩は、具体的には、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下のα-オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。
また内部オレフィンスルホン酸塩は、具体的には、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、そして、24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下の内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。
【0035】
(a1)成分のスルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤としては、炭素数5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは10以下の脂肪族アルコールとスルホコハク酸とのモノエステル及び/又はジエステル、好ましくはジエステルである。スルホコハク酸のアルキルエステルは、酸又は塩であってよい。また、脂肪族アルコールは分岐アルコールが好適である。スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤は、上記の炭素数の分岐アルキル基を有するスルホコハク酸分岐アルキルモノエステル及び/又はジエステル、並びにその塩から選ばれる化合物であってよい。
具体的には、ジ-エチルヘキシルスルホコハク酸、ジ-プロピルヘプチルスルホコハク酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上の界面活性剤が好ましく、より好ましくは、ジ-プロピルへプチルスルホコハク酸又はその塩である。ジ-プロピルヘプチルスルホコハク酸又はその塩は、ジ-(2-プロピルヘプチル)スルホコハク酸又はその塩が好ましく、ジ-エチルヘキシルスルホコハク酸又はその塩は、ジ-(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸又はその塩が好ましい。
【0036】
(a1)成分のスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤としては、飛散性抑制の観点から、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下のα-スルホ脂肪酸塩、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下であり、エステル部分の炭素数が1以上5以下であるα-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩が挙げられる。
【0037】
(a2)成分は、ノニオン界面活性剤である。(a2)成分としては、炭素数10以上24以下の第1級又は第2級アルコールにエチレンオキサイド(以下、「EO」という)及び/又はプロピレンオキサイド(以下、「PO」という)を合計で平均2モル以上150モル以下付加したポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル;平均炭素数6以上12以下のアルキル基を有し、EOを平均6モル以上20モル以下付加したポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;炭素数10以上24以下のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸に、EO及び/又はPOを合計で平均2モル以上150モル以下付加したポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;アルキル基の炭素数が10以上24以下であり平均縮合度が1以上3以下のアルキルグリコシド、アルキル基の炭素数が10以上24以下のアルキルグルカミド;炭素数10以上24以下のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸が1モル以上3モル以下エステル結合したソルビタン脂肪酸エステル又はグリセリン脂肪酸エステルに、EO及び/又はPOを合計で平均6モル以上30モル以下付加したポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル;炭素数10以上24以下のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸が1モル以上3モル以下エステル結合したソルビット脂肪酸エステルに、EO及び/又はPOを合計で平均6モル以上80モル以下付加したポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル;EO及び/又はPOを合計で平均6モル以上80モル以下付加したポリオキシアルキレンヒマシ油又は硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0038】
(a3)成分は、カチオン界面活性剤である。(a3)成分としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの中では、第4級アンモニウム塩が好ましい。
【0039】
第4級アンモニウム塩としては、窒素原子に結合する4つの置換基の少なくとも1つが総炭素数10以上28以下のアルキル又はアルケニル基であり、残余がベンジル基、炭素数1以上5以下のアルキル基及び炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基から選ばれる基である化合物が挙げられる。総炭素数10以上28以下のアルキル又はアルケニル基は、この炭素数の範囲で、アルコキシル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルアミノ基、アルケノイルアミノ基、アルカノイルオキシ基又はアルケノイルオキシ基で置換されていてもよい。
【0040】
(a3)成分は、飛散性抑制の観点から、N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-ベンジルアンモニウムクロリド、N-ラウリル-N-ベンジル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシル-N-ベンジル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシル-N,N-ジメチル-N-エチル4級アンモニウムエチルサルフェート等が挙げられる。
【0041】
(a4)成分は、両性界面活性剤である。(a4)成分としては、アミンオキシド型界面活性剤及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
アミンオキシド型界面活性剤としては、具体的には、N-アルキル(炭素数8~20)-N,N-ジメチルアミンオキシド、N-アルカノイル(炭素数7~19)アミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシドが挙げられる。
【0043】
ベタイン型界面活性剤としては、具体的には、アルキルカルボキシベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン、及びアルキルアミノ脂肪酸塩から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはアルキルスルホベタイン、アルキルアミドプロピル-N,N-ジメチルカルボキシベタイン、アルキル-N,N-ジメチル酢酸ベタイン、アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、及びアルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタインから選ばれる1種以上である。これらのアルキル基は炭素数7以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下である。
【0044】
(a)成分は、洗浄性と飛散性抑制の観点から、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルグリコシド、アルキルグルカミド、及びアルキルスルホベタインから選択される1種以上を含む界面活性剤が好ましく、スルホコハク酸ジアルキルエステル、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルグルコシド、アルキルスルホベタインから選ばれる1種以上の界面活性剤を含むことがより好ましい。
【0045】
<(b)成分>
(b)成分は、酵素である。(b)成分としては、リパーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、セロビオースデヒドロゲナーゼ、ペルオキシダーゼ、キシラナーゼ、エステラーゼ、クチナーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、ケラチナーゼ、レダクターゼ、オキシダーゼ、リポキシゲナーゼ、リグニナーゼ、プルラナーゼ、タンナーゼ、ペントサナーゼ、マラナーゼ、β-グルカナーゼ、アラビノシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ及びラッカーゼから選ばれる1種以上の酵素が挙げられる。
【0046】
リパーゼとしては、E.C.3.1.1.3のトリアシルグリセロールリパーゼ、E.C.3.1.1.13のコレステロールエステラーゼ、E.C.3.1.23のモノアシルグリセロールリパーゼ、E.C.3.1.1.34のリポプロテインリパーゼが好ましい。リパーゼの由来は限定されないが、動物由来、植物由来、又は微生物由来のリパーゼが挙げられる。微生物由来リパーゼとしては、リゾプス(Rizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ジオトリケム(Geotrichum)属、ペニシリウム(Penicillium)属、キャンディダ(Candida)属等の起源のものが挙げられる。
リパーゼは、リパーゼA「アマノ」6、リパーゼAY「アマノ」30SD、リパーゼGS「アマノ」250G、リパーゼR「アマノ」、リパーゼDF「アマノ」15、リパーゼMER「アマノ」(以上、天野エンザイム(株)製)、オリパーゼ(長瀬産業(株))、リパーゼMY、リパーゼOF、リパーゼPL、リパーゼPLC、リパーゼQLM、リパーゼQLC、ホスホリパーゼD(以上、明糖産業(株)製)、リポプロテインリパーゼ(オリエンタル酵母(株)製)、リパーゼ(東洋醸造(株)製)、Lipex、Lipolase、リパーゼSP-225(ノボザイムズ社製)、リパーゼ(ギスト社製)、リパーゼA、リパーゼB(以上、サッポロビール(株)製)などの市販品を用いることができる。
本発明では、Lipex、Lipolase(何れもノボザイムズ社製)が好適である。
【0047】
プロテアーゼとしては、中性又はアルカリ性の水溶液中で作用できるプロテアーゼが挙げられる。好ましいプロテアーゼの具体例としては、国際公開第99/018218号に記載されているアルカリプロテアーゼであって、好ましくは配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列の70%以上が保存されているもの、特開平5-25492号公報に記載されているアルカリプロテアーゼであって、好ましくはアルカリプロテアーゼK-16又はアルカリプロテアーゼK-14等が挙げられる。その他に、ノボザイムズ社製のサビナーゼ(登録商標)、カンナーゼ(登録商標)、エバラーゼ(登録商標)、アルカラーゼ(登録商標)、ポラーザイム(登録商標)、エスペラーゼ(登録商標)の商品名で販売されているバチルス属ズブチリシン類が生産するプロテアーゼ、デュポン社製のFN2(登録商標)、FN3(登録商標)及びFN4(登録商標)、プラフェクト(登録商標)、プラフェクトプライム(登録商標)の商品名で供給されるプロテアーゼ類又はその変異型等が挙げられる。これらの中でも、国際公開第99/018218号に記載されている配列番号1又は2で示されるアミノ酸配列の80%以上が保存されている酵素、ノボザイムズ社製のサビナーゼ、エバラーゼ、アルカラーゼ、プログレス、デュポン社製のプラフェクト、プラフェクトプライムがより好ましい。
【0048】
アミラーゼとしては、バチルス ズブチリスマーバーグ(Bacillussubtilis Marburg)、バチルスズブチリス ナットウ(Bacillus subtilisnatto)、バチルス アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルスリケニフォルミス(Bacilluslicheniformis)、バチルスセレウス(Bacillus cereus)、バチルス マセランス(Bacillusmacerans)、シュードモナス シュツッツェリ(Pseudomonasstutzeri)、クレブシェラアエリゲネス(Klebusiella aerogenes)等の細菌、ストレプトマイセスグリセウス(Streptomyces griseus)等の放線菌、アスペルギウス オリザエ(Aspergillusoryzae)、アスペルギルス ニガー(Aspergillusniger)等のカビ類、イネ科及びマメ科植物の種子、ヒト及びブタ等の動物の消化腺等多くの生物から得られているものを使用することができる。本発明に用いるアミラーゼは、前記微生物又はそれらの変異株、又はこれらの酵素若しくはその変異体をコードするDNA配列を有する組換えベクターで形質転換された宿主細胞等を、同化性の炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従い培養し、一般の酵素の採取及び精製方法に準じて得ることができる。このようにして得られる酵素液はそのまま用いることもできるが、更に公知の方法により精製、結晶化、粉末製剤化又は液体製剤化したものを用いることができる。本発明に用いるアミラーゼは、α-アミラーゼが好ましい。使用できる市販のアミラーゼとしては、商標名ラピダーゼ(ギストブロカーズ社製)、商標名ターマミル、デュラミル及びステインザイム(ノボザイムズジャパン(株)製)、Amplify(ノボザイムズ社製)、商標名プラスターST及びプラスターOxAm(ジェネンコア・インターナショナル社製)を挙げることができる。
【0049】
セルラーゼとしては、エンドグルカナーゼやセロビオハイドロラーゼが挙げられる。また、これらのセルラーゼはβ-グルコシダーゼも含めた複数種のセルラーゼの混合物であっても良い。好適なセルラーゼは細菌又は真菌起源のものであり、例えばバチルス(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、フミコラ(Humicola)、フサリウム(Fusarium)、チエラビア(Thielavia)、アクレモニウム(Acremonium)、トリコデルマ(Trichoderma)属などからのセルラーゼが挙げられる。また、好適なセルラーゼは更にこれらの酵素の化学的又は遺伝的に改変された突然変異体であっても良い。
好適な市販のセルラーゼとしては、Novozymes A/Sよりの:Celluzyme、及びCarezyme、Carezyme Premium、Celluclean、Celluclean Classic、Celluclean Evity、Cellusoft、Whitezymeとして販売されている酵素、並びにDanisco/DuPontよりの:Revitelenz、Clazinase、Puradax HAなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、特許第3512981号公報記載のアルカリセルラーゼ及びその変異体も好適である。
【0050】
(b)成分は、洗浄性能向上の観点から、リパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。また、リバーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼの中から2種類以上を併用することもできるが、酵素安定性に留意が必要である。
本発明の液体洗浄剤組成物は、(b)成分としてリパーゼ、アミラーゼ及びプロテアーゼから選ばれる1種以上を含有することが好ましく、リパーゼ及びプロテアーゼから選ばれる1種以上を含有することがより好ましい。
【0051】
<(c)成分>
(c)成分は、HLBが6.5以上20以下である水溶性溶剤である。本発明の水溶性溶剤とは、20℃の脱イオン水100gに対して1g以上溶解するものをいう。
(c)成分は、飛散性抑制の観点から、(c1)アルキルグリセリルエーテル〔以下、(c1)成分という〕、(c2)アルキレングリコールエーテル、及び(c3)アルキレングリコールから選ばれる1種以上〔ただし、HLBが6.5以上20以下のものに限る〕が好ましい。
【0052】
(c)成分のHLBは、グリフィン法で求められたHLBであり、この方法のHLB値は、非イオン性の水溶性溶剤の場合には下式により求める。
HLB値=20×(MH/M)[MH:親水基部分の分子量、M:分子量]
親水基部分であるポリオキオキシアルキレン基の付加モル数に分布を有する場合には、付加モル数の平均値を用いて親水基部分の分子量を求めることとする。
なお、(c2)に分類されるポリプロピレン基を有するアルキレングリコールエーテルの場合は、ポリプロピレン基は疎水的に振る舞う化合物のため、デイビス法によるHLBを採用する。このHLBの計算にあたっては、「新・界面活性剤入門」(1996年、第4刷発行)132-133頁、藤本武彦、三洋化成工業株式会社に記載の方法を参考にすることができる。
なお、グリフィン氏の方法ではHLBを求めることができない水溶性溶剤については、HLBは実験によって求めた値を採用するものとする。実験方法は「界面活性剤便覧」産業図書株式会社版、西一郎ら編集、昭和41年1月10日第5刷、319頁記載の方法を採用する。
すなわち、(c)成分は、グリフィン法、デイビス法及び前記実験方法で求められたHLBの少なくとも一方が6.5以上20以下の水溶性溶剤である。
【0053】
(c)成分のHLBは、飛散性抑制の観点から、6.5以上、好ましくは7.0以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下である。
また、(c1)成分のHLBは、飛散性抑制の観点から、好ましくは7以上、より好ましくは7.5以上、更に好ましくは8以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9以下である。
(c2)成分がエチレングリコールエーテル型の場合、(c2)成分のグリフィン法によるHLBは、飛散性抑制の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは11以上、更に好ましくは12以上、より更に好ましくは12.5以上、そして、好ましくは15以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは13.5である。
(c2)成分がプロピレングリコールエーテル型の場合、デイビス法によるHLBは、飛散性抑制の観点から、好ましくは6.5以上、より好ましくは6.7以上、そして、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、更に好ましくは7.0以下である。
また、(c3)成分のグリフィン法によるHLBは、20である。
【0054】
(c1)成分は、アルキルグリセリルエーテルである。(c1)成分としては、飛散性抑制の観点から、具体的には下記一般式(c1)で表される化合物〔ただし、HLBが6.5以上20以下のものに限る〕から選ばれる1種以上が好ましい。
1c-O-(Gly)-H (c1)
〔式中、R1cは炭素数4以上10以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、Glyはグリセリン由来の構成単位を示し、好ましくはグリセリンから1つの水酸基と1つの水素原子を除いた残基を示し、rは1以上3以下の数を示す。〕
【0055】
一般式(c1)において、R1cは、飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、好ましくは炭素数4以上、より好ましくは炭素数6以上、更に好ましくは炭素数8以上、そして、飛散性抑制と保存安定性の観点から、好ましくは炭素数10以下のアルキル基である。アルキル基は、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基を用いることができるが、本発明では飛散性抑制の観点から、分岐鎖を有するアルキル基が好ましく、R1cの分岐鎖を有する具体的なアルキル基として、2-エチルヘキシル基、2-プロピルへプチル基、sec-オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2-エチルヘキシル基及び2-プロピルへプチル基から選ばれる基が更に好ましく、2-エチルヘキシル基がより更に好ましい。
【0056】
一般式(c1)において、飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、rは好ましくは1以上、そして、好ましくは2以下である。飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、rが1の化合物がより好ましい。飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、R1cが2-エチルヘキシル基で、かつ、rが1の化合物が更に好ましい。
Glyで示される構造はグリセリンの1位と3位の水酸基が結合している-CHCH(OH)CH-O-で示される構造か、又はグリセリンの1位と2位の水酸基が結合している-CH(CHOH)CH-O-で示される構造であり、触媒や反応条件によって異なる。
【0057】
一般式(c1)の化合物を得るには、例えば炭素数4以上10以下のアルコールとしてR1c-OHで示されるアルキルアルコールを用い、エピハロヒドリンやグリシドール等のエポキシ化合物とを、BF等の酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。例えば、2-エチルヘキサノールを用いた場合、得られる2-エチルヘキシルグリセリルエーテルは、特開2001-49291号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物である。
【0058】
(c1)成分は、飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル(8.9)、2-プロピルへプチルグリセリルエーテル(7.8)、オクチルグリセリルエーテル(8.3)、デシルグリセリルエーテル(7.8)及びイソデシルグリセリルエーテル(7.8)から選ばれる1種以上が好ましく、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル及び2-プロピルヘプチルグリセリルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましく、2-エチルヘキシルグリセリルエーテルが更に好ましい。
なお、(c1)成分の具体例中の括弧内の数値は、グリフィン法によるHLBである。
【0059】
(c2)成分は、アルキレングリコールエーテルである。(c2)成分は、炭素数1以上8以下の炭化水素基を有するアルキレングリコールエーテルから選ばれれる1種以上が好ましい。炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基が挙げられ、アルキル基が好ましい。前記アルキル基は、炭素数1以上8以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であってよく、炭素数1以上8以下の直鎖のアルキル基が好ましい。また、前記炭化水素基は、芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ベンジル基が好ましい。
【0060】
(c2)成分は、飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、下記一般式(c2)で表される化合物〔ただし、HLBが6.5以上20以下のものに限る〕から選ばれる1種以上が挙げられる。
2c-O-(AO)-H (c2)
〔式中、R2cは、炭素数1以上8以下の炭化水素基であり、Aは炭素数2以上3以下のアルキレン基から選ばれる1種以上であり、nは1以上5以下の整数である。〕
【0061】
一般式(c2)中、R2cは、飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、炭素数1以上、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、そして、飛散性抑制と保存安定性の観点から、8以下、好ましくは7以下、より好ましくは6以下の炭化水素基である。R2cは、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる基であってよい。R2cが脂肪族炭化水素基の場合、R2cは、同様の観点から、炭素数が上記範囲のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。また、飛散性抑制の観点から、アルキル基は、直鎖のアルキル基が好ましい。R2cが芳香族炭化水素基の場合、R2cは、同様の観点から、フェニル基、ベンジル基が好ましい。
【0062】
一般式(c2)中、Aは、炭素数2以上3以下のアルキレン基から選ばれる1種以上、好ましくはエチレン基である。Aが異なる複数のアルキレン基を含む場合、異なるAO基は、ブロック結合でもランダム結合であってもよい。
【0063】
一般式(c2)中、nは、飛散性抑制の観点から、1以上、好ましくは2以上、そして、飛散性抑制の観点から、5以下、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
【0064】
一般式(c2)で表される化合物としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(16.1)、エチレングリコールモノエチルエーテル(13.6)、エチレングリコールモノブチルエーテル(10.3)、エチレングリコールモノイソブチルエーテル(10.3)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(8.4)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(17.5)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(13.0)、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル(14.2)、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル(13.0)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(11.0)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(14.5)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェノキシエタノールともいう)(8.8)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(11.5)、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル(13.2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(8.3)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(7.8)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(7.3)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(6.9)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(8.1)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(7.7)、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(7.2)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(6.7)、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(8.0)から選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、(c2)成分の具体例中の括弧内の数値は、エチレングリコールエーテルはグリフィン法によるHLBを、プロピレングリコールエーテルはデイビス法によるHLBである。
【0065】
一般式(c2)で表される化合物は、飛散性抑制の観点から、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル及びトリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル及びトリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及びエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる1種以上が更に好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルがより更に好ましい。
【0066】
(c3)成分は、アルキレングリコールである。(c3)成分は、好ましくはエチレングリコール(20)、プロピレングリコール(20)から選ばれる1種以上が挙げられる。
なお、(c3)成分の具体例中の括弧内の数値は、グリフィン法によるHLBである。
【0067】
(c)成分は、飛散性抑制の観点から、(c1)成分及び(c2)成分から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、一般式(c1)で表される化合物及び一般式(c2)で表される化合物から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
具体的には、(c)成分は、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールから選ばれる1種以上が好ましく、2-エチルヘキシルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0068】
本発明の液体洗浄剤組成物は、水を含有する。水は、通常、液体洗浄剤組成物の残部となるような量で用いられる。水としては、イオン交換水、蒸留水、精製水、水道水などを用いることができる。水は、組成物の残部として、組成物全体の組成が100質量%となるような量で用いることができる。本発明の液体洗浄剤組成物は、飛散性抑制の観点から、水を、組成物中に、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下含有する。
【0069】
<組成及びその他成分>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分を、洗浄性と飛散性抑制の観点から、0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、飛散性抑制の観点から、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下含有する。
【0070】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(b)成分を、洗浄性と飛散性の観点から、酵素タンパク質換算で、1ppm以上、好ましくは5質量ppm以上、より好ましくは10質量ppm以上、更に好ましくは20質量ppm以上、そして、飛散性と保存安定性の観点から、2,000質量ppm以下、好ましくは1,000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは300質量ppm以下含有する。
【0071】
本発明において、(b)成分の酵素タンパク質としての質量(酵素タンパク質換算量)は、Lowry法に基づいて測定されたものである。Lowry法には、市販の測定キット、例えば、DCプロテインアッセイキットII(BIO-RAD)を用いることができる。DCプロテインアッセイキットII(BIO-RAD社)を用いる場合の具体的な測定法は、例えば、次の通りである。DCプロテインアッセイキットIIのA試薬10μLに対し、適宜希釈した酵素溶液20μLを加え、DCプロテインアッセイキットIIのB試薬80μLを加えて室温で15分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(例えば、Infinite(登録商標)200PRO(Tecan社製)など)にて750nmの吸光度を測定する。たんぱく質濃度が既知の試料(例えば、BSA Standard Solution(富士フィルム和光試薬)をなど)から検量線を作成し、前記で得た吸光度から、当該酵素中の酵素たんぱく質量を定量する。
【0072】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(c)成分を、飛散性抑制の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、より更に好ましくは2質量%以上、そして、飛散性抑制と保存安定性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下含有する。
【0073】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の質量比(a)/(b)は、配合安定性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは1,000以上、そして、洗浄性の観点から、好ましくは15,000以下、より好ましくは10,000以下、更に好ましくは5,000以下、更により好ましくは3,000以下である。
【0074】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(a)成分の含有量と(c)成分の含有量の質量比(a)/(c)は、洗浄性の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.025以上、更に好ましくは0.05以上、そして、飛散性の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは1.0以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0075】
本発明の液体洗浄剤組成物において、(c)成分の含有量と、(a)成分と(b)成分の合計含有量の質量比(c)/[(a)+(b)]は、飛散性の観点から、0.3以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは5.0以上、更により好ましくは6.5以上、そして、洗浄性の観点から、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下である。
【0076】
本発明の液体洗浄剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意に、pH調整剤、アルカリ剤、再汚染防止剤、分散剤、有機溶剤〔但し、(c)成分に該当するものを除く〕、安定化剤、ハイドロトロープ剤、キレート剤、漂白剤、漂白活性化剤、抗菌防腐剤、消泡剤、無機塩類、蛍光染料、酸化防止剤、色素及び香料を含有することができる。
【0077】
本発明の液体洗浄剤組成物は、硬質表面、可撓性物品の表面、及び繊維を洗浄対象とすることができる。すなわち、本発明の洗浄剤物品は、硬質表面用、可撓性物品の表面用、及び/又は繊維用の洗浄剤物品であってよい。
硬質表面は、例えば、食器、台所周りの硬質物品、及び/又は、浴室、トイレ周り、フロアなどの住環境の硬質物品の表面が挙げられる。
硬質表面は、好ましくは食器及び/又は台所周りの硬質物品の表面、並びに浴室及び/又はトイレ周りの硬質物品の表面、より好ましくは食器、まな板、バスタブ及びトイレの便器の表面である。
また、可撓性物品は、例えば、スポンジ、クッション、マットが挙げられる。スポンジは、繊維状の骨格を有するものであってもよい。
【0078】
台所周りの硬質物品は、台所の周辺で使用される物品であり、具体的には、
(1)冷蔵庫、食器棚などの食品、食器、調理器具の保存場所、
(2)排水溝、調理台、レンジフード、シンク、ガスレンジ、電子レンジなどの食品の調理場所、及び
(3)前記保存場所や前記調理場所の周辺の床や壁等
である。本発明では、これらを便宜上「台所周りの硬質物品」とする。
また、食器としては、具体的には、
(i)皿、椀等のいわゆる食器、
(ii)タッパー、瓶等の保存容器、
(iii)包丁やまな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル等の調理器具、
(iv)フードプロセッサー、ミキサー等の調理家電等
の食材が接触する部材や器具が挙げられる。本発明では、これらを便宜上「食器」とする。
【0079】
繊維は、例えば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維が挙げられる。本発明の液体洗浄剤組成物は、これらの繊維を含む繊維製品を対象とすることができる。繊維製品は、例えば、衣料であってよい。すなわち、本発明の洗浄剤物品は、繊維製品用、更には衣料用の洗浄剤物品であってよい。
【0080】
繊維は、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。本発明において、親水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5質量%以上の繊維をさしている。また、疎水性繊維とは、標準状態の水分率(20℃、65%RH)が5質量%未満の繊維をさしている。この標準状態の水分率は、JIS L 1013記載の方法により算出される。
疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックス等)、ポリアミド系繊維(ナイロン等)、ポリエステル系繊維(ポリエステル等)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリル等)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロン等)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニル等)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデン等)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタン等)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラール等)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエート等)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレン等)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(木綿、カポック等)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻等)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻等)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラ等)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテート等)等が例示される。
本発明において繊維製品とは、前記の疎水性繊維や親水性繊維を用いた織物、編物、不織布等の布帛及びそれを用いて得られたアンダーシャツ、Tシャツ、ワイシャツ、ブラウス、スラックス、帽子、ハンカチ、タオル、ニット、靴下、下着、タイツ、マスク等の製品を意味する。好ましい繊維製品は織物、編み物等の織布及び織った繊維製品である。
【0081】
<洗浄方法>
本発明は、本発明の液体洗浄剤組成物を、対象表面に接触させる、洗浄方法を提供する。
また、本発明は、本発明の洗浄剤物品から、本発明の液体洗浄剤組成物を噴霧し、対象表面に該液体洗浄剤組成物を接触させる、洗浄方法を提供する。
対象表面としては、上記の硬質表面、可撓性物品の表面及び繊維が挙げられる。本発明の洗浄方法は、硬質表面、可撓性物品の表面及び繊維から選ばれる1以上の洗浄方法であってよい。
本発明の洗浄方法は、本発明の液体洗浄剤組成物を、希釈せずに、対象表面に接触させる、洗浄方法であってよい。
本発明の洗浄方法は、本発明の液体洗浄剤組成物を、希釈せずに、硬質表面、可撓性物品の表面、及び繊維に接触させる、洗浄方法であってよい。
本発明の洗浄方法では、飛散性抑制と洗浄性能向上の観点から、前記液体洗浄剤組成物を、希釈せずに泡の状態で対象表面に接触させることが好ましい。
なお、本発明において、希釈せずとは、液体洗浄剤組成物を対象表面に接触させるときに、該液体洗浄剤組成物が原液のままで接触されていればよく、その後水で希釈されたり、放置後の乾燥により濃縮されたりしてもよい。
【0082】
本発明の洗浄方法では、洗浄効果を高める観点から、前記液体洗浄剤組成物を対象表面に接触後、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上、より更に好ましくは40秒以上、より更に好ましくは50秒以上、より更に好ましくは1分以上、そして、同様の観点から、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、更に好ましくは20分以下、より更に好ましくは10分以下、より更に好ましくは5分以下、放置する。この場合、前記組成物が最初に対象表面に接触した時点を放置の開始としてよい。
なお、放置する際の温度は、室温、例えば、10℃以上30℃以下が挙げられる。
【0083】
本発明の洗浄方法では、スプレー手段を用いて、前記液体洗浄剤組成物を、泡比容が15mL/g以上、好ましくは25mL/g以上、そして、80mL/g以下の泡の状態として、対象表面に接触させるのが好ましい。スプレー手段から吐出した泡の泡比容が前記範囲であることが好ましい。本発明に用いる液体洗浄剤組成物を、泡形成機構を有するスプレイヤーを具備する容器に充填してなる洗浄剤物品を用いて、前記液体洗浄剤組成物を、泡の状態として対象表面に接触させることがより好ましい。
【0084】
本発明の洗浄方法では、前記液体洗浄剤組成物を希釈せずに泡状にして、対象表面と接触させ、機械力などの外力をかけずに洗浄した後、水で濯ぐことが好ましい。すなわち、本発明の液体洗浄剤組成物は、機械力などの外力をかけずに対象表面を洗浄する用途に用いられる液体洗浄剤組成物であってよい。
機械力などの外力をかけずに放置して対象表面を洗浄するとは、例えば、組成物の接触以外に、洗浄のための外力を意図的に対象物に加える操作を行わないことである。例えば、接触させた組成物が対象表面を自然に流下することや、洗浄を意図しない振動が対象表面に伝わることなどは、機械力などの外力をかけずに放置して対象表面を洗浄すると理解できる。
放置した後は、対象表面を水で濯ぐ。濯ぐ際は、手などで外力(物理的力)を掛けてもよく、単に水流で濯いでもよい。
【0085】
本発明では、前記液体洗浄剤組成物の原液をそのまま、つまり組成を変動させることなく、泡状にして対象表面に付着させることが好ましい。対象表面に接触した後は、前記液体洗浄剤組成物の組成が変動してもよい。すなわち、対象表面に接触した後は、前記液体洗浄剤組成物の組成が希釈又は濃縮されてもよい。
【実施例0086】
1.配合成分
表1の実施例及び比較例では、以下の(a)成分~(c)成分を用いた。
<(a)成分>
・ジ-(2-プロピルヘプチル)スルホコハク酸ナトリウム:花王株式会社製
・ジ-(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム:製品名「エアロールCT-1L」、東邦化学工業株式会社製
・アルキル硫酸エステル塩(アルキル基の炭素数12):富士フイルム和光純薬(株)製
・アルキルスルホベタイン(アルキル基の炭素数12):花王株式会社製「アンヒトール20HD」
・アルキル(炭素数8~16)グルコシド:プランタケア2000UP、BASF製
<(b)成分>
・リパーゼ:Lipex Evity 100L、Novozymes社製
・プロテアーゼ:Progress Uno、Novozymes社製
<(c)成分>
・2-エチルヘキシルグリセリルエーテル:HLB8.9、製品名「ペネトールGE-EH」、花王株式会社製
・プロピレングリコール:HLB20、株式会社ADEKA製
・エチレングリコールモノフェニルエーテル(フェノキシエタノールともいう):HLB8.8、日本乳化剤株式会社製
・ジプロピレングリコールモノブチルエーテル:HLB6.7、日本乳化剤株式会社製
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコールともいう):HLB13.0、日本乳化剤株式会社製
<水>
・蒸留水:富士フイルム和光純薬(株)製
【0087】
2.液体洗浄剤組成物の調製
(1)液体洗浄剤組成物の調製方法
表1の組成となるように、水に、(a)成分、(b)成分、(c)成分を添加し、室温(25℃)で溶解させた。
(b)成分の酵素タンパク質換算量は、DCプロテインアッセイキットII(BIO-RAD社製)で定量した。具体的には、以下の方法で、(b)成分の酵素タンパク質換算量を定量した。
【0088】
(2)(b)成分の酵素タンパク質量換算量の定量方法
DCプロテインアッセイキットIIのA試薬10μLに対し、適宜希釈した酵素溶液20μLを加え、DCプロテインアッセイキットIIのB試薬80μLを加えて室温で15分間インキュベートした後、マイクロプレートリーダー(Infinite(登録商標)200PRO(Tecan社製))にて750nmの吸光度を測定した。タンパク質濃度が既知の試料(BSA Standard Solution(富士フイルム和光試薬))から検量線を作成し、前記で得た吸光度から、当該酵素中の酵素タンパク質量を定量した。
【0089】
3.飛散量の評価
上記2.の(1)で調製した液体洗浄剤組成物を、蓄圧タイプのスプレイヤーを備えたスプレー容器(型番:TA-F、(株)吉野工業所製)に充填した。
プラスチック製の板を、はかり(型番MS4002TS/00、METTLER TOLED製)の上に垂直に立てて置き、板の質量を測定した。垂直に立てた板から15cm離れた場所から、前記スプレー容器を用いて板に対して垂直に液体洗浄剤組成物を吹付け、液体洗浄剤組成物が付着した板の質量を測定した。液体洗浄剤組成物はスプレー容器から5回吹付け、その合計量は5gであった。
液体洗浄剤組成物を吹付ける前後の質量比に基づいて、板に付着した液体洗浄剤組成物の質量を求め、下記式(1)から、飛散量(g)を算出した。飛散量が少ない洗浄剤物品は、吐出時の液体洗浄剤組成物の飛散が抑制された洗浄剤物品であり、ひいては液体洗浄剤組成物を吸引することによる「むせ」が抑制された洗浄剤物品である。
飛散量(g)=5-(板に付着した液体洗浄剤組成物) (1)
【0090】
4.洗浄力の評価
75mm(横)×100mm(縦)×1mm(厚み)のポリプロピレン試験片の質量を4桁天秤で測定した(x)。前記ポリプロピレン試験片の片面に、菜種油と牛脂の質量比が9/1である汚れの塗付量が0.08~0.12gとなるように均一に塗布したものを作成し、汚れピースとした。同汚れピースの質量を4桁天秤で測定した(y)。
液体洗浄剤組成物を前記トリガー式スプレー容器(型番:TA-F、(株)吉野工業所製)に充填し、15cm離した距離から汚れピースに2回スプレーした。組成物は泡状で吐出した。
吐出した泡と汚れピースを1分間接触させた後、15秒間水道水で流水すすぎを行った。流水すすぎの条件は、水道水の温度は25℃、流速は約4L/min、蛇口の開口部の直径は約15mmであった。開口部から5cm垂直下に位置する汚れピースに落下してくる水道水に対して汚れピースを45°になるように持ち、その角度を固定したまま汚れピースの汚れを付着させていない上端部分で流水を受け、汚れピース上を流れる水道水で洗浄部分片面全体をすすいだ。すすぎ終了後、汚れピースを乾燥させた後、4桁天秤で質量を測定した(z)。以下の式(2)で洗浄率を求めた。洗浄率の数値は大きい方が好ましい。
洗浄率(%)={(y)-(z)}/{(y)-(x)}×100 (2)
【0091】
【表1】
【0092】
表1の結果より、本発明の液体洗浄剤組成物とトリガー式スプレー容器を組み合わせた洗浄剤物品は、噴霧時の飛散抑制効果と、それに起因する油脂汚れに有効に作用する効果により、優れた洗浄力を発揮していることが分かる。
【符号の説明】
【0093】
1 スプレー容器
2 容器本体
3 スプレイヤー
4 トリガー
9 シリンダー
11e 泡吐出口
図1
図2