(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124237
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】発信機
(51)【国際特許分類】
G08B 17/00 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
G08B17/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032248
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀越 哲也
【テーマコード(参考)】
5G405
【Fターム(参考)】
5G405AA02
5G405CA53
5G405FA04
5G405FA09
(57)【要約】
【課題】防水性を担保しつつ、点検時の作業効率の向上可能なトンネル用発信機を提供する。
【解決手段】取付板に取付可能に設けられたトンネル用発信機1において、押動可能に設けられた発信操作部2と、発信操作部2が押動された際に、発信操作部2を押動状態に保持するための保持手段3と、保持手段3に接続され、保持手段3による該押動状態の保持を解除するための解除手段4と、を備えるものとし、解除手段4を、解除操作部12を有するものとし、解除操作部12を、発信機1を該取付板に取付けた際に、該取付板の裏面側に位置する様に設ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付板に取付可能に設けられたトンネル用発信機であって、
押動可能に設けられた発信操作部と、
該発信操作部が押動された際に、該発信操作部を押動状態に保持するための保持手段と、
該保持手段に接続され、該保持手段による該押動状態の保持を解除するための解除手段と、を備え、
該解除手段は、解除操作部を有し、
該解除操作部は、該発信機を該取付板に取付けた際に、該取付板の裏面側に位置する様に設けられていることを特徴とする発信機。
【請求項2】
前記解除操作部は、前記発信機を前記取付板に取付けた際に、前記発信操作部の側部に位置する様に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の発信機。
【請求項3】
前記解除手段は、前記保持手段と共に回動可能に設けられており、
該保持手段は、掛止部を有すると共に該掛止部を付勢する付勢手段と、を有し、
前記発信操作部は、該掛止部によって掛止される被掛止部を有しており、
該解除手段を、回動させることにより、該掛止部による掛止が解除されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発信機。
【請求項4】
前記保持手段は、前記発信操作部を掛止可能に設けられた掛止部と、該掛止部を付勢する付勢手段と、を有し、
前記発信操作部は、該掛止部よって掛止される被掛止部を有しており、
前記解除手段を、摺動させることにより、該掛止部による掛止が解除されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発信機。
【請求項5】
前記解除手段は、前記解除操作部を除き、防塵板で覆われていることを特徴とする請求項4に記載の発信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発信機に関し、より詳細には、トンネル用発信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル内には火災が起きたことを防災受信機等に発信するためのトンネル用発信機がある。トンネル用発信機は、押釦スイッチの前面側に保護板が設けられており、操作時には、保護板を押し破ることで押釦スイッチが押されて、火災等が起きたことを防災受信機へと発信できる様になっている(特許文献1を参照)。この際、保護板は、破壊されるため再利用はできないものとなっている。
【0003】
一方、トンネル用発信機は、定期点検をする必要があり、この際、実際に押釦スイッチを押して、正常に動作するかを点検する必要がある。そのため、トンネル用発信機においては、点検時に、一旦、保護板を発信機より取り外し、点検終了後、再度、保護板を元の状態に戻すことが行われている。
【0004】
他方、建物内に設置される自動火災報知設備(以下、自火報と略する)に用いられる自火報用発信機においては、押釦を押し込むことで、内部にある押釦スイッチ部が押されると共に押釦は、復旧レバーに掛合し、押釦が押動した状態が保持される様になっている。そして、この復旧レバーを操作することにより、押釦を元の状態に戻せる様になっている(特許文献2を参照)。即ち、自火報用発信機においては、点検時に保護板を取り外す必要がないものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-18219号公報
【特許文献2】特開2021-152944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トンネル用発信機を点検する際に、保護板の取り外しが必要という手間だけではなく、取り外した保護板をトンネル内に万が一落下させてしまうと、回収が困難であり、事故に繋がり兼ねないというトンネル特有の事情から、保護板の取扱いには、細心の注意を払う必要があり、この保護板の取り外しが、トンネル用発信機の点検作業効率を低下させる要因となっていた。
【0007】
そこで、トンネル用発信機においては、点検時に、保護板を取り外す必要がない構造を採用することが求められている。一見して、自火報用発信機と同様の構造をトンネル用発信機にも採用すれば、この問題は解決する様にも思料されるが、下記の理由により、自火報用発信機の構造をそのまま採用することは困難である。
【0008】
トンネル用発信機は、トンネル内の機械清掃をする際等に高圧の水が当たる可能性があるため、高い防水性、例えば、IPX5相当の防水性、が求められる。一方、自火報用発信機は、復旧レバーを操作するために、前面側に開口を設けざるを得ないものであり、この開口は、常時は窓扉で覆われているものの、窓扉は、高圧の放水に対して、防水性があるとはいえず、開口からの水の侵入を許してしまうため、自火報用発信機と同様の構造をトンネル用発信機に採用した場合、防水性が低下してしまうことが懸念される。
【0009】
そこで、本発明においては、防水性を担保しつつ、点検時の作業効率の向上可能なトンネル用発信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、取付板に取付可能に設けられたトンネル用発信機であって、押動可能に設けられた発信操作部と、該発信操作部が押動された際に、該発信操作部を押動状態に保持するための保持手段と、該保持手段に接続され、該保持手段による該押動状態の保持を解除するための解除手段と、を備え、該解除手段は、解除操作部を有し、該解除操作部は、該発信機を該取付板に取付けた際に、該取付板の裏面側に位置する様に設けられていることを特徴とする発信機である。
【0011】
尚、本発明は、前記解除操作部を、前記発信機を前記取付板に取付けた際に、前記発信操作部の側部に位置する様に設けることが可能である。又、本発明は、前記解除手段を、前記保持手段と共に回動可能に設け、該保持手段を、掛止部を有すると共に該掛止部を付勢する付勢手段と、を有するものとし、前記発信操作部を、該掛止部によって掛止される被掛止部を有するものとし、該解除手段を、回動させることにより、該掛止部による掛止が解除されるものとすることが可能である。
【0012】
更に、本発明は、前記保持手段を、前記発信操作部を掛止可能に設けられた掛止部と、該掛止部を付勢する付勢手段と、を有するものとし、前記発信操作部を、該掛止部によって掛止される被掛止部を有するものとし、前記解除手段を、摺動させることにより、該掛止部による掛止が解除されるものとすることが可能である。又、本発明は、前記解除手段を、前記解除操作部を除き、防塵板で覆う様にすることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、発信操作部の押動状態に保持するための保持手段と、保持手段による押動状態の保持するための解除手段と、を設け、解除手段の解除操作部を、発信機を取付板に取付けた際に、取付板の裏面側に位置する様に設けたため、防水性を担保しつつ、点検時の作業効率の向上可能なトンネル用発信機を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】
図1のIII-III断面図であり、(a)が、発信操作部の押動前の様子を示す図であり、(b)が、発信操作部の押動後の様子を示す図である。
【
図7】
図4のVII-VII断面図であり、(a)が、発信操作部の押動前の様子を示す図であり、(b)が、発信操作部の押動後の様子を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態及び第2実施形態における発信機を取付板に取付けた様子を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態を、
図1乃至
図3及び
図9に基づき説明する。発信機1は、トンネル用発信機であり、取付板Pに取り付け可能に設けられており、発信操作部2と、保持手段3と、解除手段4と、を備えている。本実施形態においては、発信機1と取付板Pに螺着するための取付具5が設けられている。取付板Pは、例えば、消火栓装置や消火器箱等の防災機器の前面パネルに設けられた扉板であり、開扉可能に設けられている。
【0016】
発信操作部2は、火災発生時に、火災が起きたことを防災受信機(図示せず)等に発信するために設けられ、押動可能に設けられている。本実施形態においては、発信操作部2は、後述する保持手段3の掛止部10によって掛止される被掛止部6を有しており、押釦部7と、押釦スイッチ部8と、付勢部材9と、を有している。
【0017】
押釦部7は、火災発生時に、火災が起きたことを防災受信機(図示せず)等に発信するために押圧される部分であり、押釦部7が内方に押動することで押釦スイッチ部8が押され、火災信号が該防災受信機等に発信される様になっている。又、押釦部7には、被掛止部6が設けられており、被掛止部6が保持手段3の掛止部10に掛止されることで、押動状態を保持可能に設けられ、被掛止部6と掛止部10との掛止が解除された際に、付勢部材9によって、元の状態へと戻る様になっている。
【0018】
保持手段3は、発信操作部2が押動された際に、発信操作部2を押動状態に保持するために設けられている。保持手段3は、掛止部10と、付勢手段11と、を有している。掛止部10は、発信操作部2の被掛止部6と掛合可能に設けられており、掛止部10が被掛止部6を掛止することで、発信操作部2が押動状態に保持される様になっている。
【0019】
解除手段4は、保持手段3に接続され、保持手段3による発信操作部2の押動状態の保持を解除するために設けられており、解除手段4は、解除操作部12を有している。解除操作部12は、発信機1を取付板Pに取付けた際に、取付板Pの裏面側に位置する様に設けられている。
【0020】
本実施形態において、解除手段4は、回動式となっており、保持手段3と共に回動可能に設けられている。又、解除操作部12は、発信機1を取付板Pに取付けた際に、発信操作部2の側部に位置する様に設けられており、この様にすることで、解除操作部12へのアクセスがし易くなり、解除操作をより容易に行える様になっている。
【0021】
付勢手段11は、掛止部10を付勢するために設けられており、付勢手段11が、掛止部10を付勢していることで、掛止部10と被掛止部6との掛合が不意に解除されない様になっている。本実施形態において、付勢手段11は、ねじりバネとして設けられており、解除手段4の回動軸13に取り付けられており、解除手段4及び保持手段3の回動を規制することで、掛止部10を内側(発信操作部2側)に付勢している。付勢手段11は、発信操作部2の付勢部材9と合わせて、20N乃至80N程度の力で、押釦部7を押動可能となる様にその付勢力が調整されている。
【0022】
本実施形態においては、発信操作部2の押動状態を解除する際は、取付板Pを開扉し、解除操作部12に指等を引掛け、解除手段4を外側方向に回動させることで、掛止部10と被掛止部6との掛合を解除可能となっており、その後、付勢手段11によって、元の位置へと戻る様になっている。
【0023】
従って、本実施形態の発信機1においては、解除操作部12が、発信機1を取付板Pに取付けた際に、取付板Pの裏面側に位置する様に設けられているため、発信機1の表面側に、解除操作部12を操作するための開口を設ける必要がなく、解除操作部12を取付板Pの裏面側に位置させることが可能なため、防水性を担保しつつ、点検時の作業効率の向上可能なトンネル用発信機を提供することが可能である。
【0024】
尚、本実施形態においては、更なる浸水対策として、発信機1の側面、例えば、下面、に、水抜穴16を設けており、万が一、発信機1内に浸水したとしても該浸水が、水抜穴16を介して、発信機1外に抜ける様になっている。
【0025】
又、本実施形態の様に、解除手段4を回動式にする副次的な効果として、トンネル内は、粉塵、例えば、砂等、が舞っている様な環境であることが多く、粉塵が、回動軸13と解除手段4との間に噛んでしまうと、摩擦で押下力が変動し、解除手段が動作しなくなる可能性があるが、解除手段4を回動式とすることにより、粉塵が入り込む可能性のある隙間を極力減らせ、解除手段4の動きも極力減らせるため、解除手段4に粉塵が噛んでしまって動かなくなることを防止できる可能性がある。
【0026】
本発明の第2実施形態を、
図4乃至
図9に基づき説明する。本実施形態と第1実施形態との相違は、解除手段4を回動式ではなく、摺動式とした点である。第1実施形態と同符号を付した構成は、同実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0027】
本実施形態において、付勢手段11は、コイルバネとして設けられており、後述する解除手段4の摺動部14に嵌着されており、掛止部10を、摺動部14を介して、水平方向に付勢している。
【0028】
解除手段4は、保持手段3に接続され、摺動可能に設けられており、解除手段4を、摺動させることにより、掛止部10による被掛止部6の掛止が解除可能となっている。解除手段4は、解除操作部12と、摺動部14と、を有している。
【0029】
本実施形態においては、解除手段4は、解除操作部12を摘み、摺動部14を摺動させて、付勢手段11の付勢力に抗して押し縮めることで、掛止部10と被掛止部6との掛合が解除される様になっている。
【0030】
又、解除手段4は、外方に露出させる必要のある解除操作部12を除き、防塵板15で覆われている。防塵板15は、前記粉塵が解除手段4内に入り込むことを防止し、摺動部14に粉塵が噛んでしまい、その摺動が妨げられ、解除手段4が動かなくなることを防止するために設けられている。防塵板15は、好ましくは、金属製である。防塵板15を金属製とすることにより、摺動部14を、グリース等の潤滑剤を使用することなく、摺動させることができ、潤滑剤に粉塵等が付着して固着してしまうことが防止可能となる。
【0031】
従って、本実施形態においても、第1実施形態と同様の理由により同様の効果を奏することが可能となっている。
【0032】
以上、本発明を上記実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 発信機 2 発信操作部 3 保持手段
4 解除手段 5 取付具 6 被掛止部
7 押釦部 8 押釦スイッチ部 9 付勢部材
10 掛止部 11 付勢手段 12 解除操作部
13 回動軸 14 摺動部 15 防塵板
16 水抜穴 P 取付板