(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124238
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】鉄骨と木製柱との接合構造及び接合方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240905BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
E04B1/58 503N
E04B1/30 C
E04B1/30 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032249
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 大樹
(72)【発明者】
【氏名】藁科 誠
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AB12
2E125AC15
2E125AC23
2E125AC30
2E125AG41
2E125BB30
2E125CA05
(57)【要約】
【課題】鉄骨と木製柱とをより容易に接合することが可能な鉄骨と木製柱との接合構造及び接合方法を提供することである。
【解決手段】鉄骨10と木製柱20との接合構造1であって、木製柱20に設けられた接合穴22に接着材40により固定されたネジ鉄筋30と、ネジ鉄筋30にねじ結合してネジ鉄筋30を鉄骨10に固定するナット31a、31bと、を有することを特徴とする鉄骨と木製柱との接合構造1。鉄骨と木製柱との接合方法であって、ネジ鉄筋30を、ネジ鉄筋30にねじ結合させたナット31a、31bにより鉄骨10に固定する鉄骨側固定工程と、ネジ鉄筋30を、接着材40により木製柱20に設けられた接合穴22に固定する木製柱側固定工程と、を有することを特徴とする鉄骨と木製柱との接合方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨と木製柱との接合構造であって、
前記木製柱に設けられた接合穴に接着材により固定されたネジ鉄筋と、
前記ネジ鉄筋にねじ結合して前記ネジ鉄筋を前記鉄骨に固定するナットと、を有することを特徴とする鉄骨と木製柱との接合構造。
【請求項2】
前記鉄骨と前記木製柱との間にグラウトが充填されている、請求項1に記載の鉄骨と木製柱との接合構造。
【請求項3】
鉄骨と木製柱との接合方法であって、
ネジ鉄筋を、前記ネジ鉄筋にねじ結合させたナットにより前記鉄骨に固定する鉄骨側固定工程と、
前記ネジ鉄筋を、接着材により前記木製柱に設けられた接合穴に固定する木製柱側固定工程と、を有することを特徴とする鉄骨と木製柱との接合方法。
【請求項4】
前記鉄骨側固定工程の後に、前記木製柱側固定工程を行う、請求項3に記載の鉄骨と木製柱との接合方法。
【請求項5】
前記鉄骨側固定工程の後であって前記木製柱側固定工程の前に、前記鉄骨と前記木製柱との間にグラウトを充填するグラウト充填工程を有する、請求項4に記載の鉄骨と木製柱との接合方法。
【請求項6】
前記木製柱側固定工程の後に、前記鉄骨側固定工程を行う、請求項3に記載の鉄骨と木製柱との接合方法。
【請求項7】
前記木製柱側固定工程の後であって前記鉄骨側固定工程の前に、前記鉄骨と前記木製柱との間にグラウトを充填するグラウト充填工程を有する、請求項6に記載の鉄骨と木製柱との接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨と木製柱との接合構造及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば研修施設、社員寮、集合住宅などの建築物として、環境対策のために、その躯体の一部を木製の柱を用いた木造としたものが知られている。
【0003】
従来、このような建築物の躯体において、鉄骨で構成された部分に対する木製柱の接合構造として、鉄骨に溶接によって固定した鉄筋を木製柱に設けた接合穴に挿入して接着材で固定することで、鉄筋を介して木製柱を鉄骨に接合するようにした接合構造ないし接合方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の接合構造ないし接合方法においては、接合筋として、接着材により接合穴に強固に固定することが可能な異形鉄筋を用いるのが一般的である。
【0006】
しかし、接合筋として異形鉄筋を用いると、接合筋を溶接によって鉄骨に固定する必要があり、その接合作業が煩雑である、という問題点があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、鉄骨と木製柱とをより容易に接合することが可能な鉄骨と木製柱との接合構造及び接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄骨と木製柱との接合構造<1>は、鉄骨と木製柱との接合構造であって、前記木製柱に設けられた接合穴に接着材により固定されたネジ鉄筋と、前記ネジ鉄筋にねじ結合して前記ネジ鉄筋を前記鉄骨に固定するナットと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の鉄骨と木製柱との接合構造<2>は、上記<1>の構成において、前記鉄骨と前記木製柱との間にグラウトが充填されているのが好ましい。
【0010】
本発明の鉄骨と木製柱との接合方法<3>は、鉄骨と木製柱との接合方法であって、ネジ鉄筋を、前記ネジ鉄筋にねじ結合させたナットにより前記鉄骨に固定する鉄骨側固定工程と、前記ネジ鉄筋を、接着材により前記木製柱に設けられた接合穴に固定する木製柱側固定工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の鉄骨と木製柱との接合方法<4>は、上記<3>の構成において、前記鉄骨側固定工程の後に、前記木製柱側固定工程を行うのが好ましい。
【0012】
本発明の鉄骨と木製柱との接合方法<5>は、上記<4>の構成において、前記鉄骨側固定工程の後であって前記木製柱側固定工程の前に、前記鉄骨と前記木製柱との間にグラウトを充填するグラウト充填工程を有するのが好ましい。
【0013】
本発明の鉄骨と木製柱との接合方法<6>は、上記<3>の構成において、前記木製柱側固定工程の後に、前記鉄骨側固定工程を行うのが好ましい。
【0014】
本発明の鉄骨と木製柱との接合方法<7>は、上記構成<6>において、前記木製柱側固定工程の後であって前記鉄骨側固定工程の前に、前記鉄骨と前記木製柱との間にグラウトを充填するグラウト充填工程を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鉄骨と木製柱とをより容易に接合することが可能な鉄骨と木製柱との接合構造及び接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合構造の断面図である。
【
図4】
図1に示す鉄骨と木製柱との接合構造の要部の拡大断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法における鉄骨側固定工程を完了した状態を示す説明図である。
【
図6】鉄骨側固定工程の後、木製柱を鉄骨の上方に配置した状態を示す説明図である。
【
図7】
図6に示す状態から、木製柱を鉄骨に向けて落とし込んだ状態を示す説明図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法における、鉄骨側固定工程の後、木製柱側固定工程を完了した状態を示す説明図である。
【
図9】木製柱側固定工程の後、鉄骨の周囲に鉄筋コンクリートを打設した状態を示す説明図である。
【
図10】変形例に係る鉄骨と木製柱との接合方法における、鉄骨側固定工程の前、木製柱側固定工程を完了した状態を示す説明図である。
【
図11】変形例に係る鉄骨と木製柱との接合方法における、木製柱側固定工程の後、鉄骨側固定工程を完了した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合構造及び接合方法について詳細に例示説明する。
【0018】
まず、本発明の一実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合構造1(以下、単に「接合構造1」とする。)について説明する。
【0019】
図1~
図4に示すように、接合構造1は、例えば研修施設、社員寮、集合住宅などの建築物2において、その躯体3の一部を木造とする場合に、鉄骨10と木造部分を構成する木製柱20とを接合するために用いることができる。
【0020】
鉄骨10は、建築物2の躯体3の一部を構成するものである。本実施形態では、鉄骨10は鉄骨柱であり、角形鋼管により構成されて鉛直方向に沿って真っ直ぐに延びる柱本体11と、柱本体11の上端に固定されたベースプレート12とを有している。
【0021】
ベースプレート12は鋼板により柱本体11よりも大径の正方形の板状に形成されている。ベースプレート12は、その中心を柱本体11の軸心に一致させるとともに水平姿勢となって柱本体11の上端に溶接により固定されている。ベースプレート12は、上下方向に貫通する貫通孔13を備えている。
図2に示すように、本実施形態では、ベースプレート12は、柱本体11を取り囲むように配置された8個の貫通孔13を備えている。なお、ベースプレート12に設けられる貫通孔13の個数及び配置は種々変更可能である。
【0022】
図1に示すように、鉄骨10は、その周囲に鉄筋コンクリート14すなわち鉄筋14aを配筋した状態でコンクリート14bが打設されることで、鉄筋コンクリート14によりベースプレート12を除く部分の周囲が覆われた構成とすることができる。本実施形態では、建築物2の躯体3は、その基礎ないしスラブに鉄筋コンクリート14により形成された立上がり部分15を有しており、立上がり部分15の内部に柱本体11が配置された構成となっている。
【0023】
なお、鉄骨10は、周囲が鉄筋コンクリート14に覆われない構成であってもよい。
【0024】
鉄骨10は、ベースプレート12の上面に、木製柱20を位置決めするためのコッター16が固定された構成とすることもできる。本実施形態では、ベースプレート12の上面の中心に、鋼板により断面十字形状に形成されたコッター16が溶接により固定されている。
【0025】
木製柱20は、木材により形成されて鉛直方向に沿って真っ直ぐに延びる柱である。本実施形態では、木製柱20は断面が正方形であり、鉄骨10の上に同軸に配置されている。
【0026】
木製柱20は、その外周面が、石膏ボードなどの耐火板、断熱材、化粧板などの1枚ないし複数枚の被覆材21で覆われた構成とすることもできる。この場合、木製柱20を覆う被覆材21により、鉄骨10のベースプレート12の外周面をも覆うようにしてもよい。
【0027】
木製柱20は、その軸方向を向く端面に開口する接合穴22を備えている。接合穴22は、木製柱20の端面から上下方向の沿って真っ直ぐに所定の深さまで延びている。
図3に示すように、本実施形態では、木製柱20は、中心部を取り囲むように下端に開口する8個の接合穴22を備えている。なお、木製柱20に設けられる接合穴22の個数及び配置は、ベースプレート12に設けられる貫通孔13の個数及び配置に対応しており、それぞれの接合穴22は対応する貫通孔13に対して同軸に配置されている。
【0028】
本実施形態では、木製柱20の下端には、ベースプレート12に固定されたコッター16が配置される配置穴24が設けられている。木製柱20は、配置穴24にコッター16が挿入されることで、鉄骨10に対して同軸となるように位置決めされる。なお、コッター16及び配置穴24を設けない構成としてもよい。
【0029】
接合構造1は、鉄骨10と木製柱20との間にグラウト23が充填された構成とすることもできる。本実施形態では、ベースプレート12の上面と木製柱20の下端との間にグラウト23が充填されている。鉄骨10と木製柱20との間にグラウト23を充填した構成とすることで、後述するように、鉄骨10に対して上下方向の規定位置に木製柱20を精度よく接合することができる。グラウト23は、鉄骨10と木製柱20との間に加えて配置穴24にも充填して配置穴24とコッター16の外面との間を埋めるようにしてもよい。
【0030】
グラウト23は、例えば、木製柱20に設けたグラウト充填孔25a及び確認孔25bを用いて充填すればよい。グラウト23としては、例えばモルタルを用いることができるが、他の種類のものを用いてもよい。
【0031】
なお、鉄骨10と木製柱20との間にグラウト23を充填することなく、鉄骨10の上端に直接木製柱20を配置するようにしてもよい。
【0032】
接合構造1は、ネジ鉄筋30を有している。本実施形態では、接合構造1は、鉄骨10に設けられた貫通孔13及び木製柱20に設けられた接合穴22と同数の8本のネジ鉄筋30を有している。
【0033】
それぞれのネジ鉄筋30は、真っ直ぐに延びる棒状の鉄筋であって、その外周面に雄ネジ30aが一体に設けられたものである。雄ネジ30aは、ネジ鉄筋30の長手方向の一端から他端にまで連続して延びて設けられている。ネジ鉄筋30の外径は、貫通孔13の内径及び接合穴22の内径よりも小さくなっている。また、ネジ鉄筋30の長さ寸法は、接合穴22の深さ寸法よりも長くなっている。
【0034】
それぞれのネジ鉄筋30は、木製柱20の対応する接合穴22に挿入されて、その上端から所定範囲の部分が接合穴22の内部に配置されている。
図4に示すように、接合穴22の内部には接着材40が充填されており、ネジ鉄筋30は接着材40により接合穴22に固定されている。すなわち、ネジ鉄筋30は、上端から所定範囲の部分が接合穴22に挿入された状態で接着材40により木製柱20に固定されている。
【0035】
接着材40は、例えば、木製柱20に設けた接着材充填孔26a及び確認孔26bを用いて充填すればよい。接着材40としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができるが、他の種類のものを用いてもよい。
【0036】
それぞれのネジ鉄筋30の下端から所定範囲の部分は、接合穴22から下方に向けて突出している。それぞれのネジ鉄筋30の接合穴22から下方に突出した下端側部分は、ベースプレート12に設けられた対応する貫通孔13を貫通し、ナット31a、31bによりベースプレート12すなわち鉄骨10に固定されている。より具体的には、それぞれのネジ鉄筋30のベースプレート12の貫通孔13を貫通した下端側部分には雄ネジ30aにねじ結合させてナット31aが取り付けられている。また、ネジ鉄筋30のベースプレート12の上側部分にも雄ネジ30aにねじ結合させてナット31bが取り付けられている。そして、これらのナット31a、31bの間にベースプレート12が挟み込まれることで、ネジ鉄筋30はナット31a、31bによりベースプレート12すなわち鉄骨10に固定されている。
【0037】
木製柱20の下端面の接合穴22の開口の周囲に、ナット31bとの干渉を防止するための凹部27を設けるようにしてもよい。また、ナット31a、31bによるベースプレート12の締結に緩みが生じることを防止するために、ナット31aのより先端側に重ねてネジ鉄筋30の雄ネジ30aにロックナット31cをねじ結合させるようにしてもよい。
【0038】
上記の通り、本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合構造1では、鉄骨10と木製柱20とを接合する部材となる鉄筋としてネジ鉄筋30を用い、木製柱20に設けられた接合穴22に接着材40によりネジ鉄筋30を固定するとともに、ネジ鉄筋30にねじ結合させたナット31a、31bによりネジ鉄筋30を鉄骨10に固定するようにしている。これのような本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合構造1によれば、ネジ鉄筋30を鉄骨10に溶接する作業を行うことなく、ナット31a、31bをネジ鉄筋30に締結する簡単な作業でネジ鉄筋30を鉄骨10に固定することができるので、鉄骨10と木製柱20とをより容易に接合することができる。
【0039】
また、ネジ鉄筋30は外周面に雄ネジ30aを備えているので、接合穴22に充填された接着材40が雄ネジ30aのねじ溝の部分に入り込むことで、接着材40により接合穴22に対する抜け方向への移動が強固に係止される。すなわち、鉄骨10と木製柱20とを接合する部材としてネジ鉄筋30を用いても、当該ネジ鉄筋30を、異形鉄筋を用いた場合と同様に、木製柱20の接合穴22に接着材40により強固に固定することができる。したがって、本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合構造1によれば、鉄骨10と木製柱20とを接合する部材として異形鉄筋を用いた場合と同様の強度で、鉄骨10と木製柱20とを接合することができる。
【0040】
次に、本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法について説明する。
【0041】
本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法は、ネジ鉄筋を、ネジ鉄筋にねじ結合させたナットにより鉄骨に固定する鉄骨側固定工程と、ネジ鉄筋を、接着材により木製柱に設けられた接合穴に固定する木製柱側固定工程と、を有することを特徴とする鉄骨と木製柱との接合方法である。以下では、本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法の一例として、上記構成を有する接合構造1を構築する場合の手順について説明する。
【0042】
実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法では、まず、鉄骨側固定工程を行う。
図5に示すように、鉄骨側固定工程においては、ネジ鉄筋30を、ネジ鉄筋30にねじ結合させたナット31a、31bにより鉄骨10に固定する。より具体的には、鉛直姿勢としたネジ鉄筋30の下端側の部分をベースプレート12の貫通孔13に挿通し、ネジ鉄筋30にねじ結合させたナット31a、31bを、ベースプレート12を挟み込むように締結することで、ネジ鉄筋30を鉄骨10のベースプレート12に固定する。ナット31aに加えてロックナット31cをネジ鉄筋30にねじ結合させることで、ナット31aの緩みを防止するようにしてもよい。
【0043】
次に、
図6に示すように、鉄骨10の上方に、接合穴22を下方に向けた姿勢で木製柱20を同軸に配置し、その状態から木製柱20を鉄骨10の側に向けて落とし込み、鉄骨10に固定されたそれぞれのネジ鉄筋30を対応する接合穴22に挿入する。このとき、鉄骨10に位置決め用の下治具50を取り付けるとともに、木製柱20に位置決め用の上治具51を取り付けておく。
【0044】
本実施形態では、鉄骨側固定工程の後、グラウト充填工程を行う。グラウト充填工程では、まず、
図7に示すように、下治具50と上治具51とを治具連結部材52に固定して連結させることで鉄骨10に対して木製柱20を規定の上下方向位置に位置決めする。このとき、鉄骨10の上端すなわちベースプレート12の上面と木製柱20の下端との間に若干の隙間を設けておく。そして、木製柱20に設けたグラウト充填孔25aから当該隙間に例えばモルタル等のグラウト23を充填する。また、本実施形態では、配置穴24とコッター16との間の隙間にもグラウト23を充填する。グラウト23が確認孔25bから排出されると、グラウト23が隙間全体に充填されたと判断し、グラウト23の充填を終了する。そして、所定の時間をかけてグラウト23を硬化させる。
【0045】
なお、グラウト23は、例えば木製柱20の下端とベースプレート12の上面との間から当該隙間に直接充填するなど、その充填箇所は種々変更可能である。また、グラウト充填工程を行うことなく、鉄骨10の上端に直接木製柱20を配置するようにしてもよい。
【0046】
次に、木製柱側固定工程を行う。
図8に示すように、木製柱側固定工程においては、ナット31a、31bにより鉄骨10に固定されたネジ鉄筋30を接着材40により木製柱20に設けられた接合穴22に固定する。より具体的には、ナット31a、31bにより鉄骨10のベースプレート12に固定されたそれぞれのネジ鉄筋30の上端から所定範囲の部分を木製柱20に設けられた対応する接合穴22に挿入し、且つ、下治具50と上治具51とを治具連結部材52に固定して鉄骨10に対して木製柱20を規定の上下方向位置に位置決めした状態で、木製柱20に設けた接着材充填孔26aから接合穴22の内部に接着材40を充填する。接着材40が確認孔26bから排出されると、接着材40が接合穴22の全体に充填されたと判断し、接着材40の充填を終了する。そして、下治具50と上治具51とを治具連結部材52で固定して鉄骨10に対して木製柱20を規定の上下方向位置に位置決めした状態のまま、所定の時間をかけて接着材40を硬化させる。接着材40が硬化するとネジ鉄筋30は対応する接合穴22において木製柱20に固定される。
【0047】
鉄骨10の上端と木製柱20の下端との間にグラウト23を充填する場合には、グラウト23が強度を発現した後に、接合穴22に接着材40を充填するのが好ましい。また、グラウト23が強度を発現した後、治具連結部材52による下治具50と上治具51との固定を緩めてから接合穴22に接着材40を充填するようにしてもよい。
【0048】
接合穴22に充填した接着材40が硬化すると、ネジ鉄筋30が、その一端側においてナット31a、31bによって鉄骨10に固定されるとともに他端側において接着材40により接合穴22すなわち木製柱20に固定されることになる。これにより、鉄骨10と木製柱20とがネジ鉄筋30を介して接合され、接合構造1が完成する。
【0049】
木製柱側固定工程が完了した後は、必要に応じて、
図9に示すように、木製柱20に接合された鉄骨10の周囲に鉄筋コンクリート14を打設して、鉄筋コンクリート14によりベースプレート12を除く鉄骨10の周囲を覆うようにしてもよい。また、木製柱20の外周面を被覆材21で覆うようにしてもよい。
【0050】
このように、本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法では、鉄骨10と木製柱20とを接合する部材となる鉄筋としてネジ鉄筋30を用い、鉄骨側固定工程において、ネジ鉄筋30にねじ結合させたナット31a、31bによりネジ鉄筋30を鉄骨10に固定するとともに、木製柱側固定工程において、木製柱20に設けられた接合穴22に接着材40によりネジ鉄筋30を固定することで鉄骨10と木製柱20とを接合するようにしているので、ネジ鉄筋30を鉄骨10に溶接する作業を行うことなく、ナット31a、31bをネジ鉄筋30に締結する簡単な作業でネジ鉄筋30を鉄骨10に固定することができるようにして、鉄骨10と木製柱20とをより容易に接合することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る鉄骨と木製柱との接合方法では、鉄骨側固定工程の後であって木製柱側固定工程の前に、鉄骨10と木製柱20との間にグラウト23を充填するグラウト充填工程を行うようにしたので、鉄骨10に対して上下方向の規定位置に木製柱20を容易にレベル合わせできるようにして、木製柱20を規定位置に精度よく接合することができる。
【0052】
図10は、変形例に係る鉄骨と木製柱との接合方法における、鉄骨側固定工程の前、木製柱側固定工程を完了した状態を示す説明図であり、
図11は、変形例に係る鉄骨と木製柱との接合方法における、木製柱側固定工程の後、鉄骨側固定工程を完了した状態を示す説明図である。なお、
図10、
図11においては、前述した部材に対応する部材に同一の符号を付している。
【0053】
上記の実施形態では、鉄骨側固定工程の後に木製柱側固定工程を行うようにしているが、これに限らず、木製柱側固定工程を先に行い、木製柱側固定工程の後に鉄骨側固定工程を行うようにしてもよい。
【0054】
この場合、木製柱側固定工程においては、
図10に示すように、木製柱20のそれぞれの接合穴22にネジ鉄筋30を挿入し、接着材充填孔26aから接合穴22の内部に接着材40を充填してネジ鉄筋30を接合穴22に固定する。そして、ネジ鉄筋30が固定された状態の木製柱20を、鉄骨10に向けて落とし込む。
【0055】
図11に示すように、ネジ鉄筋30が固定された木製柱20が鉄骨10に向けて落とし込まれると、それぞれのネジ鉄筋30がベースプレート12の対応する貫通孔13に挿通される。次に、下治具50と上治具51とを治具連結部材52に固定して鉄骨10に対して木製柱20を規定の上下方向位置に位置決めした状態とし、この状態でグラウト充填工程を行ってベースプレート12と木製柱20の下端との間にグラウト23を充填する。そして、グラウト23が強度を発現した後、鉄骨側固定工程を行ってネジ鉄筋30にナット31a及びロックナット31cをねじ結合させてネジ鉄筋30を鉄骨10に固定する。これにより、接合構造1が完成する。
【0056】
この変形例においても、上記実施形態の場合と同様に、ネジ鉄筋30を鉄骨10に溶接する作業を行うことなく、ナット31a、31bをネジ鉄筋30に締結する簡単な作業でネジ鉄筋30を鉄骨10に固定することができるので、鉄骨10と木製柱20とをより容易に接合することができる。
【0057】
なお、上記変形例においても、木製柱側固定工程の後、鉄骨側固定工程の前にグラウト充填工程を行うことなく、鉄骨10の上端に直接木製柱20を配置した状態で鉄骨側固定工程を行うようにしてもよい。
【0058】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
例えば、前記実施形態では、木製柱20が接合される鉄骨10は、鉄筋コンクリート14の立上がり部分15の内部に配置された鉄骨柱とされているが、これに限らず、例えば梁に接合された仕口部材など、鉄骨10で形成されたものであれば建築物2の他の部分ないし部材であってもよい。
【0060】
また、前記実施形態では、鉄骨10を柱本体11とベースプレート12とを有する構成とし、ベースプレート12に設けた貫通孔13にネジ鉄筋30を挿通してナット31a、31bによりネジ鉄筋30をベースプレート12に固定するようにしているが、ナット31a、31bによりネジ鉄筋30が鉄骨10に固定される構成であれば、例えば、ベースプレート12に貫通孔13に替えて切り欠きを設け、当該切り欠きにネジ鉄筋30を挿通してナット31a、31bによりネジ鉄筋30をベースプレート12に固定する構成、ベースプレート12を有していない構成など、種々の構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 鉄骨と木製柱との接合構造
2 建築物
3 躯体
10 鉄骨
11 柱本体部
12 ベースプレート
13 貫通孔
14 鉄筋コンクリート
14a 鉄筋
14b コンクリート
15 立上がり部分
16 コッター
20 木製柱
21 被覆材
22 接合穴
23 グラウト
24 配置穴
25a グラウト充填孔
25b 確認孔
26a 接着材充填孔
26b 確認孔
27 凹部
30 ネジ鉄筋
30a 雄ネジ
31a ナット
31b ナット
31c ロックナット
40 接着材
50 下治具
51 上治具
52 治具連結部材