(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012424
(43)【公開日】2024-01-30
(54)【発明の名称】T細胞療法用のT細胞を調製する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240123BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240123BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240123BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240123BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240123BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240123BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240123BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240123BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240123BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10
A61K35/17
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023185669
(22)【出願日】2023-10-30
(62)【分割の表示】P 2021155667の分割
【原出願日】2016-10-20
(31)【優先権主張番号】62/244,036
(32)【優先日】2015-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(71)【出願人】
【識別番号】512024037
【氏名又は名称】アメリカ合衆国
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレズ アリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】サバティーノ マリアンナ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ スティーヴン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】レスティフォ ニコラス ピー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】T細胞療法のためにインビトロでT細胞の成熟、分化を遅らせるまたは阻害するための方法を提供する。
【解決手段】T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)及び外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに、接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が、遅延した成熟又は分化を示す、方法である。いくつかの態様において、本方法は、T細胞療法の必要がある対象へ1つまたは複数のT細胞を投与する工程をさらに含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞療法のためにインビトロでT細胞の成熟または分化を遅らせるまたは阻害するための方法であって、T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに、接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が、遅延した成熟または分化を示し、かつ/または、ここで、結果として生じるT細胞が、AKTインヒビターの非存在下で培養されたT細胞のT細胞機能と比べて改善されたT細胞機能を
示す、前記方法。
【請求項2】
改善されたT細胞機能が、
(i)増加したT細胞増殖、
(ii)増加したサイトカイン産生、
(iii)増加した細胞溶解活性、および
(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ
からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
増加したサイトカイン産生が、
(i)増加したインターフェロンガンマ(IFNg)産生、
(ii)増加した組織壊死因子アルファ(TNFa)産生、ならびに
(iii)増加したIFNgおよびTNFa産生の両方
からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
結果として生じるT細胞を、その必要がある対象へ投与する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(i)AKTインヒビターならびに
(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15
と接触させた1つまたは複数のT細胞を対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要があ
る対象中の腫瘍を治療する方法。
【請求項6】
(i)AKTインヒビターならびに
(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15
と接触させた1つまたは複数のT細胞を対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要があ
る対象中の腫瘍のサイズを低減もしくは減少させるかまたは腫瘍の成長を阻害する方法。
【請求項7】
前記1つまたは複数のT細胞を外因性インターロイキン-2(IL-2)と接触させない、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
AKTインヒビターが、A6730、B2311、124018、GSK2110183 (アフレセルチブ)、ペリホシン (KRX-0401)、GDC-0068 (イパタセルチブ)、RX-0201、VQD-002、LY294002、A-443654、A-674563、Akti-1、Akti-2、Akti-1/2、AR-42、API-59CJ-OMe、ATI-13148、AZD-5363、エルシルホスホコリン、GSK-2141795 (GSK795)、KP372-1、L-418、NL-71-101、PBI-05204、PIA5、PX-316、SR13668、トリシリビン、GSK 690693 (CAS # 937174-76-0)、FPA 124 (CAS # 902779-59-3)、ミルテホシン、PHT-427 (CAS # 1 191951-57-1)、10-DEBC塩酸塩、AktインヒビターIII、AktインヒビターVIII、MK-2206二塩酸塩(CAS # 1032350-13-2)、SC79、AT7867 (CAS # 857531 -00-1)、CCT128930 (CAS # 885499-61-6)、A-674563 (CAS # 552325-73-2)、AGL 2263、AS-041 164 (5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルメチレン-チア
ゾリジン-2,4-ジオン)、BML-257 (CAS # 32387-96-5)、XL-418、CAS # 612847-09-3、CAS
# 98510-80-6、H-89 (CAS # 127243-85-0)、OXY-1 1 1 A、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イ
ミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイ
ミダゾール-2-オン、N,N-ジメチル-1-[4-(6-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-7-イル)フェニル]メタ-ナミン(metha-namine)、1-{1-[4-(3-フェニルベンゾ[g]キノキ
サリン-2-イル)ベンジル]ピペリジン-4-イル}-1,-3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
AKTインヒビターが、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オンである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)AKTインヒビターが約1 nM~約1 mMの量である、
(ii)外因性IL-7が約0.001~約500 ng/ml IL-7の量である、
(iii)外因性IL-15が約0.001~約500 ng/ml IL-15の量である、または
(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(i)AKTインヒビターが約8μMの量である、
(ii)外因性IL-7が少なくとも約5 ng/ml IL-7の量である、
(iii)外因性IL-15が少なくとも約5 ng/ml IL-15の量である、または
(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせである、
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数のT細胞が、腫瘍浸潤リンパ球、細胞傷害性T細胞、CAR T細胞、改変TCR T細胞、ナチュラルキラーT細胞、末梢血リンパ球、および腫瘍浸潤白血球からなる群より選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
T細胞をレトロウイルスで形質導入する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
レトロウイルスが、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種
遺伝子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
TCRまたはCARが、707-AP(707アラニンプロリン)、AFP(アルファ(a)-フェトプロテイン)、ART-4(T4細胞により認識される腺癌抗原)、BAGE(B抗原; b-カテニン/m、b-カテニン/変異型)、BCMA(B細胞成熟抗原)、Bcr-abl(ブレイクポイントクラスター領域-Abelson)、CAIX(カルボニックアンヒドラーゼIX)、CD19(分化クラスター19)、CD20(分化クラスター20)
、CD22(分化クラスター22)、CD30(分化クラスター30)、CD33(分化クラスター33)、CD44v7/8(分化クラスター44, エクソン7/8)、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CAP-1(癌胎
児抗原ペプチド-1)、CASP-8(カスパーゼ-8)、CDC27m(細胞分裂周期27変異型)、CDK4/m(サイクリン依存性キナーゼ4変異型)、CEA(癌胎児抗原)、CT(癌/精巣(抗原))、Cyp-B(サイクロフィリンB)、DAM(分化抗原メラノーマ)、EGFR(上皮成長因子受容体)、EGFRvIII(上皮成長因子受容体, バリアントIII)、EGP-2(上皮糖タンパク質2)、EGP-40(上皮糖タンパク質40)、Erbb2, 3, 4(赤芽球性白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ-2, -3, 4)、ELF2M(伸長因子2変異型)、ETV6-AML1(Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS)、FBP(葉酸結合タンパク質)、fAchR(胎児アセチルコリン受容体)、G250(糖タンパク質250)、GAGE(G
抗原)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、GD3(ジシアロガングリオシド3)、GnT-V(N-アセ
チルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、Gp100(糖タンパク質100kD)、HAGE(ヘリコー
ゼ(helicose)抗原)、HER-2/neu(ヒト表皮受容体-2/神経学的;EGFR2としても公知)、HLA-A(ヒト白血球抗原-A) HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)、HSP70-2M(熱ショックタンパク質70
- 2変異型)、HST-2(ヒト印環腫瘍-2)、hTERTまたはhTRT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、iCE(腸カルボキシルエステラーゼ)、IL-13R-a2(インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2)、KIAA0205、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)、κ-軽鎖、LAGE(L抗原)、LDLR/FUT(低密度脂質受容体/GDP-L-フコース:b-D-ガラクトシダーゼ2-a-Lフコシルトランスフェラーゼ)、LeY(ルイスY抗体)、L1CAM(L1細胞接着分子)、MAGE(メラノーマ抗原)、MAGE-A1(メラノーマ関連抗原1)、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、マウスCMV感染細胞、MART-1/Melan-A(T細胞により認識されるメラノーマ抗原-1/メラノーマ抗原A)、MC1R(メラノコ
ルチン1受容体)、Myosin/m(ミオシン変異型)、MUC1(ムチン1)、MUM-1, -2, -3(メラノー
マユビキタス変異型1, 2, 3)、NA88-A(患者M88のNA cDNAクローン)、NKG2D(ナチュラルキラーグループ2, メンバーD)リガンド、NY-BR-1(ニューヨーク乳房分化抗原1)、NY-ESO-1(ニューヨーク食道扁平上皮癌-1)、腫瘍胎児抗原(h5T4)、P15(タンパク質15)、p190 minor
bcr-abl(190KD bcr-ablのタンパク質)、Pml/RARa(前骨髄球性白血病/レチノイン酸受容
体a)、PRAME(メラノーマの優先的に発現される抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA(前立
腺幹細胞抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE(腎臓抗原)、RU1またはRU2(腎臓ユビキタス1または2)、SAGE(肉腫抗原)、SART-1またはSART-3(腫瘍拒絶扁平上皮抗原1または3)
、SSX1, -2, -3, 4(滑膜肉腫X1, -2, -3, -4)、TAA(腫瘍関連抗原)、TAG-72(腫瘍関連糖
タンパク質72)、TEL/AML1(転座Etsファミリー白血病/急性骨髄性白血病1)、TPI/m(トリオースホスフェートイソメラーゼ変異型)、TRP-1(チロシナーゼ関連タンパク質1、またはgp75)、TRP-2(チロシナーゼ関連タンパク質2)、TRP-2/INT2(TRP-2/イントロン2)、VEGF-R2(血管内皮成長因子受容体2)、WT1(ウィルムス腫瘍遺伝子)、およびそれらの任意の組み合
わせからなる群より選択される抗原に結合することができる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、T
細胞が、
(i)CCR7およびCD45ROを発現する、
(ii)CCR7およびCD45RAを発現する、
(iii)AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられ
なかったT細胞によるCCR7、CD45ROおよびCD45RAの発現と比較して、CCR7、CD45RO、CD45RAまたはそれらの任意の組み合わせの増加した発現を示す、
(iv)CD62L、CD28または両方を発現する、
(v)AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられな
かったT細胞によるCD62LおよびCD28の発現と比較して、CD62L、CD28または両方の増加し
た発現を示す、
(vi)AKTインヒビターならびに外因性IL-7、外因性IL-15または両方との接触に続いて、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられなかったT細胞によるCD95、IL-7受容体アルファ(IL-7Rα)、CXCR4、TCF7、FOXO1、ID3、BCL6、CD62LおよびCD45RAの発現と比較して、CD95、IL-7Rα、CXCR4、TCF7、FOXO1、ID3、BCL6、CD62L、CD45RAまたはそれらの任意の組み合わせの増加した発現を示す、または
(vii)(i)~(vi)の任意の組み合わせである、
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
腫瘍が、骨がん、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、ファローピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換した濾胞性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性または急性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)
、慢性リンパ性白血病(CLL)、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓ま
たは尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊
椎軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リ
ンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発がん、他のB細胞悪性腫瘍、
およびそれらの任意の組み合わせより選択されるがんである、請求項5~16のいずれか一
項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府利益の声明
本発明は、米国保健社会福祉省の機関である、米国立がん研究所(NCI)との共同研究開
発契約の履行においてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は、T細胞療法用の1つまたは複数のT細胞を調製する方法に関する。特に、本発
明は、1つまたは複数のT細胞をAKTインヒビター(「AKTi」)ならびに外因性インターロイ
キン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つと接触さ
せることによってT細胞療法の効能を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
ヒトのがんは、本質的に、遺伝的または後成的変換を受けて異常ながん細胞となった正常細胞から構成される。そうする際に、がん細胞は、正常細胞によって発現されるものとは異なるタンパク質および他の抗原を発現し始める。これらの異常な腫瘍抗原は、がん細胞を特異的にターゲティングおよび死滅させるために身体の自然免疫系によって使用され得る。しかしながら、がん細胞は、様々な機構を用いて、TおよびBリンパ球のような免疫細胞が首尾よくがん細胞をターゲティングすることを妨げる。
【0004】
ヒトT細胞療法は、対象、例えば患者中のがん細胞をターゲティングして死滅させるた
めに、エクスビボで富化または改変されたヒトT細胞に頼る。腫瘍抗原をターゲティング
することができる天然のT細胞の濃度を富化するか、または公知のがん抗原を特異的にタ
ーゲティングするようにT細胞を遺伝的に改変するために、様々な技術が開発されている
。これらの療法は、腫瘍のサイズおよび患者の生存に対して有望な効果を有することが分かった。しかしながら、所定のT細胞療法が各患者において有効であるかどうかを予測す
ることは困難であることが分かっている。
【0005】
T細胞の混合集団の移植は、T細胞療法がそれらの完全なポテンシャルに到達することを妨げる要因に含まれる。従来のT細胞療法においては、ドナーT細胞が、採取され、任意で、特異的抗原(例えば、腫瘍細胞)をターゲティングするように改変されるかまたは抗腫瘍特性について選択され(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)、インビトロで増殖され、そしてその必要がある対象へ投与される。典型的に、結果として生じるT細胞は、大きく成熟した細
胞の混合集団を含み、これらの多くは最終分化している。結果として、これらの細胞の予想されるインビボでの持続は限定され得、最初に観察されたプラスの効果は、移植T細胞
の非存在下で腫瘍がリバウンドするにつれて、経時的に元へ戻され得る。従って、T細胞
療法において使用するためのT細胞のインビボでの持続を増加させる必要性が残っている
。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、T細胞療法のためにインビトロでT細胞の成熟または分化を遅らせるまたは阻害するための方法であって、T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を
、AKTiと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに、接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が遅延した成熟または分化を示す、方法を提供す
る。
【0007】
本開示はさらに、インビトロでT細胞の成熟または分化を遅らせるまたは阻害するため
の方法であって、AKTiと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとを含む培地中において、1つまたは複数のT細胞を培養する工程を含む、方法を提供する。
【0008】
本開示はさらに、培地中において1つまたは複数のT細胞を培養する工程を含む、幹細胞様CD8+ T細胞を生じさせるための方法であって、1つまたは複数のT細胞を、AKTiと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに、接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0009】
本開示はまた、養子細胞療法における1つまたは複数のT細胞のインビボでの持続を延長するための方法であって、対象への投与の前に1つまたは複数のT細胞を、AKTiと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに、接触させる工程を含む、方法を提供する。
【0010】
ある態様において、本明細書に開示される方法は、1つまたは複数のT細胞をその必要がある対象へ投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、対象はT細胞療法の必
要がある。
【0011】
本開示はさらに、(i)AKTiならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させた1つまたは複数のT細胞を、対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要がある対象
中の腫瘍を治療する方法を提供する。
【0012】
本開示はまた、(i)AKTiならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させた1つまたは複数のT細胞を、対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要がある対象中
の腫瘍のサイズを低減もしくは減少させるかまたは腫瘍の成長を阻害する方法を提供する。
【0013】
ある態様において、T細胞療法は、改変CAR細胞療法または改変TCR細胞療法を含む。一
態様において、改変CAR細胞または改変TCR細胞療法は、対象中の腫瘍を治療する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1A~
図1Fは、7日および14日での、IL-2の存在下のまたはIL-7およびIL-15の存在下の培養に続いてのCD4
+ T細胞およびCD8+ T細胞の表現型を示す。
図1Aおよび
図1Cは、IL-2およびIL-7/IL-15処理細胞について7日目でナイーブT細胞またはセントラルメモリーT細胞(Tcm)として特徴付けられた、それぞれ培養CD4
+ T細胞およびCD8
+ T細胞の、総集団のパーセントを示す。
図1Bおよび
図1Dは、IL-2およびIL-7/IL-15処理細胞について7日目でエフェクターメモリーT細胞(Tem)またはエフェクターT細胞(Teff)として特徴付けられた、それぞれ培養CD4
+ T細胞およびCD8
+ T細胞の、総集団のパーセントを示す。
図1Eは、IL-2およびIL-7/IL-15処理細胞について14日目でナイーブT細胞またはセントラルメモリーT細胞(Tcm)と特徴付けられた培養CD8
+ T細胞の総集団のパーセントを示す。
図1Fは、IL-2およびIL-7/IL-15処理細胞について14日目でエフェクターメモリーT細胞(Tem)またはエフェクターT細胞(Teff)と特徴付けられた、培養CD8
+ T細胞の総集団のパーセントを示す。個々のデータポイントは個々のサンプルを反映する。水平な線は平均値を意味し、エラーバーは標準偏差を示す。統計的有意性はp値によって示される(「ns」は「有意でない」を表す)。
【
図2】
図2A~
図2Dは、7日および14日での、IL-7およびIL-15の存在下の、またはIL-7、IL-15およびAKTiの存在下の培養に続いてのCD4
+ T細胞およびCD8+ T細胞の表現型を示す。
図2Aおよび
図2Cは、IL-7/IL-15処理細胞およびIL-7/IL-15/AKTi処理細胞について7日目でナイーブT細胞またはTcm細胞として特徴付けられた、それぞれ培養CD4
+ T細胞およびCD8
+ T細胞の総集団のパーセントを示す。
図2Bおよび
図2Dは、IL-7/IL-15処理細胞およびIL-7/IL-15/AKTi処理細胞について7日目でTemまたはTeff細胞と特徴付けられた、それぞれ培養CD4
+ T細胞およびCD8
+ T細胞の総集団のパーセントを示す。個々のデータポイントは個々のサンプルを反映する。水平な線は平均値を意味し、エラーバーは標準偏差を示す。統計的有意性はp値によって示される(「ns」は「有意でない」を表す)。
【
図3】
図3Aは、IL-2単独;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;ならびにIL-7、IL-15、およびAKTiと接触させたドナーT細胞の形質導入効率を示す。形質導入効率は、CD3
+でありかつ陽性の可溶性MHC-四量体染色(Tet
+)を有する総T細胞のパーセントによって示される。暗灰色のバーは、IL-2と接触させたT細胞サンプル中のCD3
+ Tet
+細胞のパーセントを示す。下向きの縞模様のバーは、IL-2およびAKTiと接触させたT細胞サンプル中のCD3
+ Tet
+細胞のパーセントを示す。明灰色のバーは、IL-7およびIL-15と接触させたT細胞サンプル中のCD3
+ Tet
+細胞のパーセントを示す。上向きの縞模様のバーは、IL-7、IL-15およびAKTiと接触させたT細胞サンプル中のCD3
+ Tet
+細胞のパーセントを示す。エラーバーは標準偏差を示す。
図3Bは、IL-2単独;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;ならびにIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下での培養に続いての、ドナー1(円)、ドナー2(正方形)、およびドナー3(三角形)からの細胞についての四量体平均蛍光強度(MFI)を示す。統計解析は、四量体MFIのいずれの差も有意でなかった(p=ns)ことを示した。
【
図4】
図4A~4Dは、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養された4ドナーからの細胞についての7日間の過程にわたる細胞増殖を示す。
図4A~4Dの各々は、単一ドナーの細胞株についての細胞増殖を示す。増殖プロトコルのための供給源材料は末梢血単核細胞であった。
【
図5】
図5A~5Cは、クラスI TCR(HPV-E6)を形質導入され、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養された3ドナーからの細胞についての9日間の過程にわたる細胞増殖を示す。
図5A~5Cの各々は、単一ドナーの細胞株についての細胞増殖を示す。増殖プロトコルのための供給源材料は末梢血単核細胞であった。
【
図6】
図6A~6Cは、クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入され、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養された3ドナーからの単離CD4
+およびCD8
+細胞についての10日間の過程にわたる細胞増殖を示す。
図6A~6Cの各々は、単一ドナーの細胞株についての細胞増殖を示す。
【
図7】
図7A~7Cは、クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入され、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養された3ドナーからの単離CD4
+細胞についての10日間の過程にわたる細胞増殖を示す。
図7A~7Cの各々は、単一ドナーの細胞株についての細胞増殖を示す。
【
図8】
図8A~8Cは、クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入され、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養された3ドナーからの単離CD8
+細胞についての10日間の過程にわたる細胞増殖を示す。
図8A~8Cの各々は、単一ドナーの細胞株からの細胞を示す。
【
図9】
図9A~9Dは、クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入された3ドナーからのCD4
+およびCD8
+細胞についての8日間の過程にわたる細胞増殖を示す。細胞をIL-7およびIL-15(
図9A:円;
図9B~9C:正方形)またはIL-7、IL-15、およびAKTi(
図9A:正方形;
図9B~9C:円)の存在下で培養した。細胞をXURI(商標)Cell Expansion Systemにおいて大製造規模で増殖させた。
図9A~9Dの各々は、単一ドナー細胞株についての細胞増殖を示す。増殖プロトコルのための供給源材料は、単離されたCD4+およびCD8+細胞であった。
【
図10】クラスI TCR(HPV-E6)を形質導入されたT細胞についての形質導入効率を示す。細胞をIL-2単独;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;またはIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で培養した。細胞を2日目に形質導入し、形質導入効率を、形質導入されたTCRを特異的に認識する抗mTCRb抗体で細胞を染色することによって10日目に測定した。各培養条件(x軸)についての陽性抗mTCRb染色を示す細胞のパーセント(y軸)を示す。
【
図11】
図11A~11Fは、2ドナーからのCD4
+/CD8
+ T細胞のクラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入されたT細胞についての形質導入効率を示す。細胞をIL-2単独;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;またはIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で培養した。細胞を2日目に形質導入し、形質導入効率を、抗mTCRb抗体(mC TCR PE)で細胞を染色することによって10日目に測定した(
図11Aおよび11D)。各培養条件についての抗mTCRb染色のMFIを
図11Bおよび11Eに示す。
図11Cおよび11Fは、両方のドナーについてのCDRおよび形質導入されたTCRを発現する細胞の分布のFACS分析を示す。
【
図12】4つの製造規模実行(16、21、22、および23)からのT細胞についてのクラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入されたT細胞についての形質導入効率を示す。各実行について、示した通り、細胞を、IL-7およびIL-15の添加と、IL-7、IL-15およびAKTiの添加の、2つの培養条件へ分けた。形質導入効率を、抗mTCRb抗体(mC TCR PE)で細胞を染色することによって測定した。各実行(x軸)についての陽性抗mTCRb染色を示す細胞のパーセント(y軸)を示す。
【
図13】
図13A~13Fは、クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入され、AKTi有りまたは無しでの様々な条件下で培養された、CD4
+/CD8
+ T細胞の分化状態を示す。ドナー1(
図13Aおよび13D)、ドナー2(
図13Bおよび13E)、ならびにドナー3(
図13Cおよび13E)からのT細胞を、IL-2単独;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;またはIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で培養し、次いで、分化の初期段階にある細胞のマーカーであるCD62L発現について染色した。各ドナーについての各培養条件(x軸)についてのCD3
+およびCD62L
+細胞のパーセント(y軸)を、
図13A~13Cに提示する。各ドナー細胞株についての各培養条件(x軸)についてのCD62L染色のMFI(y軸)を、
図13D~13Eに示す。
【
図14】
図14A~14Bは、3つの製造規模実行(21、22、および23)からのT細胞によるサイトカイン産生によって証明される、T細胞機能に対する培養条件の効果を示す。クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入されたドナーT細胞を、IL-7およびIL-15、またはIL-7、IL-15およびAKTiの存在下で、XURI(商標)Bioreactor Cell Expansion System中において培養した。CD3およびIFNg(
図14A)ならびにCD3およびTNFa(
図14B)について陽性に染まる細胞のパーセントを、実行21、22、および23の各々についてAKTiの存在または非存在下で培養された細胞について示す。
【
図15】クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入され、陽性および陰性標的腫瘍細胞株と共培養されたドナーT細胞についてのIFNg産生によって証明される、T細胞活性を示す。2つの製造規模実行(21および22)からのT細胞に、クラスII TCRを形質導入し、IL-7およびIL-15、またはIL-7、IL-15およびAKTiの存在下で、XURI(商標)Bioreactor Cell Expansion System中において培養した。次いで細胞を、TCR標的抗原(H1299、HT1197、もしくはHT1367)を発現する腫瘍細胞株またはTCR標的抗原(DU145、SK MEL 28、もしくはSK MEL 5)を発現しない腫瘍細胞株と一晩、共培養した。T細胞活性は、培養条件の各々についての細胞株の各々(x軸)について、pg/mLとして表されるIFNg産生(y軸)によって示される。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図16】
図16A~16Dは、クラスI TCR(HPV-E6)を形質導入され、AKTi有りまたは無しで培養された3つのドナーT細胞株についてのIFNg産生によって証明される、T細胞活性を示す。
図16Aは、IL-2単独;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;またはIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下での、TCR抗原を発現する腫瘍細胞株(Caski;子宮頸癌細胞株)との共培養に続いての、3ドナー(x軸)からのT細胞によって産生されたIFNgの量(pg/mL;y軸)を示す。
図17B~17Dは、ドナー1(
図16B)、ドナー2(
図16C)、およびドナー3(
図16D)T細胞についての、IL-2単独(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下での、滴定された量のSCR特異的ペプチド(標的ペプチド;x軸)がロード(load)されたT2細胞との共培養に続いての、ドナーT細胞についてのIFNg産生(pg/mL;y軸)を示す。エラーバーは標準偏差を示す。
【
図17】
図17A~17Dは、AKTiの存在(
図17Bおよび17D)または非存在(
図17Aおよび17C)下での培養に続いてのT細胞増殖を示すFACSヒストグラムである。ドナー3からのT細胞を、IL-2(
図17A)、IL-2およびAKTi(
図17B)、IL-7およびIL-15(
図17C)、ならびにIL-7、IL-15およびAKTi(
図17D)において増殖させ、クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入し、TCR抗原を発現する腫瘍細胞株と4日間、共培養した。T細胞増殖をカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)染色によって測定した(
図17A~17D)。L=後期増殖;M=中期増殖;およびE=初期増殖。
【
図18】
図18Aおよび18Bは、2つの大規模製造培養実行:21(
図18A)および22(
図18B)からのT細胞の細胞増殖を示すFACSヒストグラムである。T細胞を、IL-2において、ならびにIL-7、IL-15およびAKTiにおいて増殖させ、クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入した。T細胞を、IL-7およびIL-15、またはIL-7、IL-15およびAKTiの存在下で、TCR標的抗原を発現する腫瘍細胞株(「陽性標的」)またはTCR標的抗原を発現しない細胞株(「陰性標的」)のいずれかと4日間、共培養した。実行21(
図18A)および22(
図18B)の各々について示されるように、T細胞増殖をCFSE染色によって測定し、モードに対して正規化し、comp-FITC-A染色と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本発明は、T細胞療法において使用するためのT細胞を調製するための方法に関する。特に、本発明は、1つまたは複数のT細胞を、AKTiと、外因性IL-7および外因性IL-15のうち
の少なくとも1つとに接触させることによって、インビトロでT細胞の成熟または分化を調節する、例えば、遅らせるまたは阻害する、方法に関する。T細胞の成熟または分化を遅
らせるまたは阻害することによって、ドナーT細胞の集団は、あまり分化していない未熟
なT細胞(例えば、ナイーブT細胞またはセントラルメモリーTcm細胞)について富化され得
、対象、例えば患者へ投与された後の1つまたは複数のT細胞の持続可能性が増加され得る。結果として、富化された未熟T細胞の集団は、分化段階が混合しているT細胞の集団よりも持続した抗腫瘍効果を生じさせる可能性が高い。
【0016】
定義
本開示がより容易に理解され得るように、一定の用語を先ず定義する。本出願において使用される場合、本明細書において特に明示的に提供される場合を除き、以下の用語の各々は下記に記載される意味を有するものとする。追加の定義は本出願の全体にわたって記載される。
【0017】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が関連する技術分野の当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press; およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、当業者に、本開示において使用される用語の多くの一般的な辞書を提供する。
【0018】
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)によって認められている形式で表される。数値範囲は、範囲を画定する数値を含む。本明細書において提供される見出しは、本明細書を全体として参照することによって得ることができる本開示の様々な局面を限定するものではない。従って、直下に定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0019】
本明細書において使用される場合、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は
、任意の記載されるまたは列挙されるコンポーネントの「1つまたは複数」を指すように
理解されるべきである。
【0020】
用語「約」または「を本質的に含む」は、値または組成が測定または決定される方法に部分的に依存するだろう(即ち、測定システムの制限)、当業者によって決定されるよう
な特定の値または組成についての許容できる誤差範囲内にある値または組成を指す。例えば、「約」または「を本質的に含む」は、当技術分野における実務によって1または1を超える標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」または「を本質的に含む」は、10%まで
の範囲(即ち、±10%)を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7 mg~3.3 mg(10%について)の
任意の数値を含み得る。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、これら用語は、値の一桁までまたは5倍までを意味し得る。本出願および特許請求の範囲におい
て特定の値または組成が提供される場合、特に指定されない限り、「約」または「を本質的に含む」の意味は、その特定の値または組成についての許容できる誤差範囲内にあると見なされるべきである。
【0021】
本明細書において記載される場合、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、特に指定されない限り、記載される範囲内の任意の整数、および、適切な場合は、その分数(例えば、整数の10分の1および100分の1)の値を含むと理解されるも
のとする。
【0022】
用語「および/または」は、本明細書において使用される場合、他方を伴うまたは伴わない2つの指定された特徴またはコンポーネントの各々の具体的な開示と見なされるもの
とする。従って、用語「および/または」は、本明細書において「Aおよび/またはB」のような句で使用される場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(
単独)を含むように意図される。同様に、用語「および/または」は、「A、B、および/
またはC」のような句で使用される場合、以下の局面の各々を包含するように意図される
:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0023】
局面が語「含む」と共に本明細書において記載される場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」によって記載される他の点では類似の局面も提供されることが理解される。用語「活性化」または「活性化された」は、検出可能な細胞増殖を誘発するために十分に刺激された、免疫細胞、例えばT細胞の状態を指す。活性化はまた、誘
発されたサイトカイン産生および検出可能なエフェクター機能と関連し得る。用語「活性化されたT細胞」は、特に、細胞分裂をしているT細胞を指す。T細胞活性化は、CD57、PD1、CD107a、CD25、CD137、CD69、および/またはCD71を含むがこれらに限定されない、1つまたは複数のバイオマーカーの増加したT細胞発現によって特徴付けられ得る。
【0024】
「投与する」は、当業者に公知の様々な方法および送達システムのいずれかを使用する、対象への薬剤の物理的な導入を指す。本明細書に開示される方法によって調製されたT
細胞についての例示的な投与経路としては、例えば注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経口投与経路が挙げられる。句「非経口投与」は、本明細書において使用される場合、通常は注射による、腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、非限定的に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入、ならびにインビボエレクトロポレーションを含む。いくつかの態様において、本方法によって調製されたT細胞を、非経口でな
い経路を介して、例えば経口的に、投与する。他の非経口でない経路としては、局所、表皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経膣、直腸、舌下または局所が挙げられる。投与はまた、例えば、1回、複数回、かつ/または、1つもしくは複数の長期間にわたって、行うことができる。
【0025】
用語「AKTインヒビター」、「AKTI」、または「AKTi」は、交換可能に使用することが
でき、AKTの活性をブロッキングする、低減させる、または阻害することができる、小分
子、ポリヌクレオチド(例えば、DNAもしくはRNA)、またはポリペプチド(例えば、抗体も
しくはその抗原結合性部分)を含むがこれらに限定されない、任意の分子(例えば、AKTア
ンタゴニスト)を指す。AKTは、プロテインキナーゼBまたはPKBとしても公知の、セリン/
トレオニンキナーゼである。AKTインヒビターは、例えば、AKTに結合することによって、AKTに直接的に作用し得、またはそれは、例えば、AKTと結合パートナーとの相互作用に干渉することによってもしくはPI3K-AKT-mTOR経路の別のメンバーの活性を阻害することに
よって、間接的に作用し得る。AKTiの非限定的な例は本出願の他のセクションに示される。
【0026】
用語「抗体」(Ab)は、非限定的に、抗原へ特異的に結合する免疫グロブリンを含む。一般に、抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含み得る。各H鎖は、重鎖可変領域(VHと本明細書において略される)およ
び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3または4つの定常ドメイン、CH1、CH2 CH3、
および/またはCH4を含み得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VLと本明細書において略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメイン、CLを含み得る。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存性のより高い領域に挟まれた、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域へさらに細分され得る。各VHおよびVLは、
アミノ末端からカルボキシ末端へ以下の順序で配置された、3つのCDRおよび4つのFRを含
む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原、例えばAKTと相互作用する結合性ドメインを含有する。
【0027】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むがこれらに限定されない、一般的に知られているアイソタイプのいずれかに由来し得る。IgGサブクラスも当業者に周
知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むがこれらに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされるAbクラスまたはサブクラス(例えば
、IgMまたはIgG1)を指す。用語「抗体」は、例として、天然および非天然Abの両方;モノクローナルおよびポリクローナルAb;キメラおよびヒト化Ab;ヒトまたは非ヒトAb;完全合成Ab;ならびに単鎖Abを含む。非ヒトAbは、人におけるその免疫原性を低減させるために組換え法によってヒト化することができる。明示的に記載されない場合、かつ、文脈において特に指定されない限り、用語「抗体」はまた、前述の免疫グロブリンのいずれかの抗原結合性断片または抗原結合性部分を含み、一価および二価断片または部分、ならびに単鎖Abを含む。
【0028】
「抗原結合性分子」または「抗体断片」は、全部に満たない抗体の任意の部分を指す。抗原結合性分子は、抗原性相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体断片の例としては、抗
原結合性分子から形成される、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、dAb、線形抗体、scFv抗体ならびに多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「自己」は、それが後で再導入される予定である同個体に由来する、任意の材料を指す。例えば、本明細書に記載される改変自己細胞療法(eACT(商標))は、ドナー、例えば患者からのリンパ球の採取を伴い、次いで、これらは、例えばCAR構築物を発現するよ
うに改変されてから、同じドナー、例えば患者へ投与して戻される。
【0030】
用語「同種異系」は、次いで同じ種の別の個体へ導入される、ある個体に由来する任意の材料を指す;例えば、同種異系T細胞移植。
【0031】
「がん」は、体内での異常細胞の制御されない増殖によって特徴付けられる様々な疾患の広い群を指す。無秩序な細胞分裂および増殖は、隣接する組織に侵入し、さらにリンパ系または血流を通して身体の遠隔部位へ転移し得る、悪性腫瘍を形成させる。「がん」または「がん組織」は様々なステージの腫瘍を含み得る。ある態様において、がんまたは腫瘍はステージ0であり、従って、例えば、がんまたは腫瘍は、発達のかなり初期にあり、
転移していない。いくつかの態様において、がんまたは腫瘍はステージIであり、従って
、例えば、がんまたは腫瘍は、サイズが比較的小さく、近くの組織へ広がっておらず、転移していない。他の態様において、がんまたは腫瘍はステージIIまたはステージIIIであ
り、従って、例えば、がんまたは腫瘍は、ステージ0やステージIにおけるよりは大きく、隣接する組織中へ成長しているが、リンパ節へ転移している可能性を除いて、転移していない。他の態様において、がんまたは腫瘍はステージIVであり、従って、例えば、がんまたは腫瘍は転移している。ステージIVはまた、進行がんまたは転移がんと呼ばれ得る。
【0032】
「抗腫瘍効果」は、本明細書において使用される場合、腫瘍体積の減少、腫瘍成長の阻害、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移数の減少、全生存期間もしくは無進行生存期間の増加、平均余命の増加、または腫瘍に関連する様々な生理的症状の改善として現れ得る、生物学的効果を指す。抗腫瘍効果はまた、腫瘍の発生の予防、例えばワクチンについても使われ得る。
【0033】
用語「無進行生存期間」(PFSと略され得る)は、本明細書において使用される場合、
治療日から、改訂版「悪性リンパ腫に関するIWG応答基準(IWG Response Criteria for Malignant Lymphoma)」による疾患進行または何らかの原因による死亡の日までの時間を
指す。
【0034】
「疾患進行」は、放射線写真上の悪性病変の測定によって評価され、即ち、他の方法は有害事象として報告されるべきではない。徴候および症状の非存在下での疾患進行に起因する死は、原発腫瘍タイプ(例えば、DLBCL)として報告されるべきである。
【0035】
「奏効期間」(DORと略され得る)は、本明細書において使用される場合、対象の最初
の客観的な奏効から、改訂版「悪性リンパ腫に関するIWG応答基準」による確認された疾
患進行、または死亡の日までの期間を指す。
【0036】
用語「全生存期間」(OSと略され得る)は、治療日から死亡日までの時間と定義される。
【0037】
「サイトカイン」は、本明細書において使用される場合、免疫反応を伝えるために、マクロファージ、B細胞、T細胞、および肥満細胞を含む免疫細胞によって放出され得る、非抗体タンパク質を指す。いくつかの態様において、1つまたは複数のサイトカインがT細胞療法に応答して放出される。ある態様において、T細胞療法に応答して分泌されるそれら
のサイトカインは、有効なT細胞療法の徴候であり得る。
【0038】
「治療有効量」または「治療有効投薬量」は、本明細書において使用される場合、本方法によって生産され、かつ、単独でまたは別の治療剤と組み合わせて使用されると、疾患の発症から対象を保護するかまたは疾患後退(疾患症状の重症度の減少、無疾患症状期間の頻度および継続の増加、または疾患罹患に起因する機能障害もしくは身体障害の予防によって証明される)を促進する、T細胞またはDC細胞の量を指す。疾患後退を促進するT細胞またはDC細胞の能力は、当業者に公知の様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける効能を予測する動物モデル系において、またはインビトロアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって、評価することができる。
【0039】
用語「有効量」または「有効用量」は、本明細書において使用される場合、一緒に所望の応答を誘発する1つまたは複数のT細胞成熟インヒビター(例えば、AKTi、IL-7、およびIL-15)の量を指す。従って、T細胞の分化または成熟を遅らせるまたは阻害するためのAKTiの有効量、IL-7の有効量、およびIL-15の有効量は、AKTi単独の有効量、IL-7単独の有効
量、またはIL-15単独の有効量よりも低い可能性がある。他の態様において、AKTiの有効
用量は、AKT活性を所望の量、例えば、少なくとも約10%、少なくとも20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%低減させるAKTiの量、例えば濃度を指し得る。
【0040】
用語「リンパ球」は、本明細書において使用される場合、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、またはB細胞を含み得る。NK細胞は、先天性免疫系の主要コンポーネントを示す細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は腫瘍およびウイルス感染細胞を拒絶する。それはアポトーシスまたはプログラム細胞死のプロセスを通して働く。それらは、細胞を死滅させるために活性化を必要としないため、「ナチュラルキラー」と命名された。T細胞は、細胞性免疫(抗体関与無し)において主要な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、それら自体と他のリンパ球タイプとを識別する。免疫系の専門の器官である胸腺
はT細胞の成熟を主に担う。
【0041】
いくつかのタイプのT細胞、即ち、ヘルパーT細胞(例えば、CD4+細胞、エフェクターTEFF細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+ T細胞もしくはキラーT細胞としても公知)、メモリーT細胞((i)幹メモリーTSCM
細胞は、ナイーブ細胞と同様に、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+ (L-セレクチン)、CD27+、CD28+およびIL-7Rα+であるが、それらはまた大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3、およびLFA-1を発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的特質を示す);(ii)セントラルメモリーTCM細胞はL-セレクチンを発現し、CCR7+およびCD45RO+であり、それらはIL-2を分泌す
るが、IFNγもIL-4も分泌しない;ならびに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞はしかし
、L-セレクチンもCCR7も発現しないが、CD45ROを発現し、IFNγおよびIL-4のようなエフ
ェクターサイトカインを産生する)、制御性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞、もしくはCD4+CD25+制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、ならびにγδT細胞が存在する。腫瘍内に見られるT細胞は「腫瘍浸潤リンパ球」または「TIL」と呼ばれる。一方、B細胞は
、液性免疫(抗体関与有り)において主要な役割を果たす。それは、抗体および抗原を作り、抗原提示細胞(APC)の役割を行い、抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞となる。哺乳動物において、未熟B細胞は骨髄中で形成され、ここに由来して名づけられている
。
【0042】
「ナイーブ」T細胞は、免疫学的に未分化のままである成熟T細胞を指す。胸腺中での陽性および陰性選択に続いて、T細胞は、CD4+またはCD8+ナイーブT細胞のいずれかとして出現する。それらのナイーブ状態において、T細胞は、L-セレクチン(CD62L+)、IL-7受容体-α(IL-7R-α)、およびCD132を発現するが、それらはCD25、CD44、CD69、またはCD45ROを
発現しない。本明細書において使用される場合、「未熟」も、ナイーブT細胞または未熟T細胞のいずれかに特有の表現型を示すT細胞、例えば、TSCM細胞またはTCM細胞について使われ得る。例えば、未熟T細胞は、L-セレクチン(CD62L+)、IL-7Rα、CD132、CCR7、CD45RA、CD45RO、CD27、CD28、CD95、IL-2Rβ、CXCR3、およびLFA-1のうちの1つまたは複数を
発現し得る。ナイーブまたは未熟T細胞は、最終分化したエフェクターT細胞、例えば、TEM細胞およびTEFF細胞と対比され得る。
【0043】
「T細胞機能」は、本明細書において言及される場合、健康なT細胞の正常な特性を指す。いくつかの態様において、T細胞機能はT細胞増殖を含む。いくつかの態様において、T
細胞機能はT細胞活性を含む。いくつかの態様において、T細胞機能は細胞溶解活性を含む。いくつかの態様において、本発明の方法、例えば、AKTインヒビター(ならびに任意でIL-7および/またはIL-15)の存在下でT細胞を培養することは、1つまたは複数のT細胞機能
を増加させ、それによって、T細胞をT細胞療法についてより適切かつ/またはより強力にする。いくつかの態様において、本方法に従って培養されたT細胞は、AKTインヒビター(
またはAKTi、IL-7、およびIL-15)を欠く条件下で培養されたT細胞と比較して、増加したT細胞機能を有する。ある態様において、本方法に従って培養されたT細胞は、AKTインヒビ
ター(またはAKTi、IL-7、およびIL-15)を欠く条件下で培養されたT細胞と比較して、増加したT細胞増殖を有する。ある態様において、本方法に従って培養されたT細胞は、AKTイ
ンヒビター(またはAKTi、IL-7、およびIL-15)を欠く条件下で培養されたT細胞と比較して、増加したT細胞活性を有する。ある態様において、本方法に従って培養されたT細胞は、AKTインヒビター(またはAKTi、IL-7、およびIL-15)を欠く条件下で培養されたT細胞と比
較して、増加した細胞溶解活性を有する。
【0044】
細胞「増殖」は、本明細書において使用される場合、細胞分裂を通して数が増加するT
細胞の能力を指す。カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)で細胞を染色することによって、増殖を測定することができる。細胞増殖は、インビトロで、例えばT細胞培養中に、またはインビボで、例えばT細胞療法の投与に続いて、生じ得る。
【0045】
「T細胞活性」は、本明細書において使用される場合、健康なT細胞に共通する任意の活性を指す。いくつかの態様において、T細胞活性はサイトカイン産生を含む。ある態様に
おいて、T細胞活性は、インターフェロンガンマ(IFNg)、組織壊死因子アルファ(TNFa)、
および両方より選択される1つまたは複数のサイトカインの産生を含む。
【0046】
「細胞溶解活性」または「細胞傷害性」は、本明細書において使用される場合、標的細胞を破壊するT細胞の能力を指す。いくつかの態様において、標的細胞は、がん細胞、例
えば、腫瘍細胞である。いくつかの態様において、T細胞はキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を発現し、標的細胞は標的抗原を発現する。
【0047】
用語「遺伝子操作された」、「遺伝子編集」、または「改変された」は、コードもしくは非コード領域またはその一部分を欠失させることや、コード領域またはその一部分を挿入することを含むがこれらに限定されない、細胞のゲノムを改変する方法を指す。いくつかの態様において、改変される細胞は、患者またはドナーのいずれかから得ることができるリンパ球、例えばT細胞である。これら細胞は、細胞のゲノム中へ組み込まれる外因性
構築物、例えばキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)などを発現するように、
改変され得る。
【0048】
「免疫反応」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、がん細胞もしくは他の異常細胞、あるいは、自己免疫もしくは病的炎症の症例においては、正常なヒト細胞もしくは組織の選択的ターゲティング、これらへの結合、これらへの損傷、これらの破壊、および/または脊椎動物の身体からのこれらの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えば
、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞および好中球)、ならびにこれらの細胞または肝臓のいずれかによって産生
される可溶性高分子(Ab、サイトカイン、および補体を含む)の作用を指す。
【0049】
用語「免疫療法」は、免疫反応を誘発する、増強する、抑制するまたは他の方法で改変することを含む方法による、疾患に罹患しているか、または疾患を患うかもしくは疾患の再発に苦しむ危険性がある対象の治療を指す。免疫療法の例としては、T細胞療法が挙げ
られるが、これに限定されない。T細胞療法は、養子T細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)
免疫療法、自己細胞療法、改変自己細胞療法(eACT(商標))、および同種異系T細胞移植
を含み得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示されるT細胞を調製する方法は、
いかなる移植T細胞療法の有効性をも増強するであろうことを認識するだろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号および同第2002/0006409号、米国特許第5,728,388号、ならびに国際公開公報第WO 2008/081035号に記載されている。
【0050】
免疫療法のT細胞は、当技術分野において公知の任意の供給源に由来し得る。例えば、T細胞は造血幹細胞集団からインビトロで分化させることができ、またはT細胞はドナーか
ら得ることができる。ドナーは、対象、例えば、抗がん治療の必要がある対象であり得る。T細胞は、例えば、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部
位からの組織、腹水、胸水、脾臓組織、および腫瘍から得ることができる。加えて、T細
胞は、当技術分野において入手可能な1つまたは複数のT細胞株に由来し得る。T細胞はま
た、FICOLL(商標)分離および/またはアフェレーシスのような、当業者に公知の任意の数ある技術を使用して対象から採取された血液のユニットから得ることができる。T細胞
はまた、人工胸腺オルガノイド(ATO)細胞培養システムから得ることができ、これは、ヒ
ト胸腺環境を再現し、初代および再プログラム化多能性幹細胞からのT細胞の効率的なエ
クスビボ分化を支持する。T細胞療法用のT細胞を単離する追加の方法は米国特許出願公開第2013/0287748号に開示されており、これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0051】
養子細胞移入としても公知の、「改変自己細胞療法」(「eACT(商標)」と略され得る)という用語は、患者自身のT細胞が採取され、その後、1つまたは複数の特定の腫瘍細胞または悪性腫瘍の細胞表面上に発現された1つまたは複数の抗原を認識およびターゲティ
ングするように遺伝的に変更される、プロセスである。T細胞は、例えば、キメラ抗原受
容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)を発現するように操作され得る。CAR陽性(+)T細胞は、共刺激ドメインおよび活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部分へ連結された特定の腫瘍抗原について特異性を有する細胞外単鎖可変断片(scFv)を発現するように操作される。共刺激ドメインは、例えば、CD28、CTLA4、CD16、OX-40、4-1BB/CD137、CD2、CD7、CD27、CD30、CD40、プログラム死-1(PD-1)、プログラム死リガンド-1(PD-L1)、誘導性T細胞
共刺激分子(ICOS)、ICOS-L、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1 (CDl la/CD18)、CD3ガンマ
、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、CD276 (B7-H3)、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、NKG2C、Igアルファ(CD79a)、DAP-10、Fcガンマ受容体、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容
体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、ICAM-1、B7-H3、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、LIGHT、HVEM (LIGHTR)、KIRDS2、SLAMF7、NKp80 (KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、CD8、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDl ld、ITGAE、CD103、ITGAL
、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDl lb、ITGAX、CDl lc、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1 (CD226)、SLAMF4 (CD244、2B4)、CD84、CD96 (Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9 (CD229)、CD160 (BY55)、PSGL1、CD100 (SEMA4D)、CD69、SLAMF6 (NTB-A、Lyl08)、SLAM (SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME (SLAMF8)、SELPLG
(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19a、CD83と特異的に結合するリガン
ド、またはそれらの任意の組み合わせに由来し得る。活性化ドメインは、例えば、CD3に
由来し得る:例えば、CD3ゼータ、イプシロン、デルタ、ガンマなど。ある態様において
、CARは、2、3、4、またはそれ以上の共刺激ドメインを有するように設計される。CAR scFvは、例えば、全ての正常なB細胞ならびにB細胞悪性腫瘍(NHL、CLL、および非T細胞ALLを含むがこれらに限定されない)を含むB細胞系列の細胞によって発現される膜貫通タン
パク質であるCD19を標的とするように、設計されうる。例示的なCAR+ T細胞療法および構築物は、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、および同第2014/0050708号に記載されており、これらの参考文献は参照によりそれらの全体が組み入れられる。
【0052】
「患者」は、本明細書において使用される場合、がん(例えば、リンパ腫または白血病)に罹患しているいかなるヒトも含む。用語「対象」または「患者」は、本明細書において交換可能に使用される。用語「ドナー対象」は、さらなるインビトロ操作のために細胞が得られる対象を本明細書において指す。ドナー対象は、本明細書に記載される方法によって作製される細胞の集団で治療される予定であるがん患者であり得(即ち、自己ドナー)、
または、本明細書に記載される方法によって作製される細胞の集団が作製された後、異なる個体またはがん患者を治療するために使用されるリンパ球サンプルを供与する個体であり得る(即ち、同種異系ドナー)。本方法によって調製された細胞を受容する対象は、「レシピエント対象」と呼ばれ得る。
【0053】
「刺激」は、本明細書において使用される場合、刺激分子とそのコグネイトリガンドとの結合によって誘発される一次応答を指し、ここで、結合がシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、抗原提示細胞(antigen present cell)上に存在するコグネイト刺激リガンドと特異的に結合する、T細胞上の分子、例えば、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体で
ある。「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、人工抗原提示細胞(aAPC)、樹状細胞
、B細胞など)上に存在する場合、T細胞上の刺激分子と特異的に結合し、それによって、
活性化、免疫反応の開始、増殖などを含むがこれらに限定されない、T細胞による一次応
答を媒介し得る、リガンドである。刺激リガンドとしては、ペプチドがロードされたMHC
クラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体が挙げられるが、これらに限定されない。「活性化された」または「活性な」は
、本明細書において使用される場合、刺激された後のT細胞を指す。活性T細胞は、CD137
、CD25、CD71、CD26、CD27、CD28、CD30、CD154、CD40L、およびCD134より選択される1つまたは複数のマーカーの発現によって特徴付けられ得る。
【0054】
用語「外因性」は、外部供給源に由来する任意の物質を指す。例えば、外因性IL-7または外因性IL-15は、商業的に得るかまたは組換え産生することができる。1つまたは複数のT細胞に添加するかまたは1つまたは複数のT細胞と接触させる場合、「外因性IL-7」また
は「外因性IL-15」は、このIL-7および/またはIL-15が該T細胞によって産生されたもの
ではないことを示す。いくつかの態様において、外因性IL-7またはIL-15と混合される前
のT細胞は、T細胞によって産生されたかまたはT細胞と共に対象から単離された微量のIL-7および/またはIL-15(即ち、内因性IL-7またはIL-15)を含有し得る。本明細書に記載さ
れる1つまたは複数のT細胞は、培養物への単離されたIL-7および/またはIL-15の添加;
培養培地中にIL-7および/またはIL-15を含めること;または、1つまたは複数のT細胞以
外の培養物中の1つまたは複数の細胞による、例えばフィーダー層による、IL-7および/
またはIL-15の発現を含む、当技術分野において公知の任意の手段を通して、外因性IL-7
および/または外因性IL-15と接触させることができる。
【0055】
用語「持続」は、本明細書において使用される場合、ある期間のあいだ対象中において検出可能なレベルでありつづけることができる、例えば、対象へ投与された1つまたは複
数の移植されたT細胞またはそれらの子孫(例えば、分化したまたは成熟したT細胞)の能力を指す。本明細書において使用される場合、1つまたは複数の移植されたT細胞またはそれらの子孫(例えば、分化したまたは成熟したT細胞)の持続を増加させることは、移植され
たT細胞が投与後に対象中において検出可能である時間の量を増加させることを指す。例
えば、1つまたは複数の移植されたT細胞のインビボでの持続は、少なくとも約少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5
日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約1ヵ月間
、少なくとも約2ヵ月間、少なくとも約3ヵ月間、少なくとも約4ヵ月間、少なくとも約5ヵ月間、または少なくとも約6ヵ月間、増加され得る。加えて、1つまたは複数の移植されたT細胞のインビボでの持続は、本明細書に開示される本方法によって調製されなかった1つまたは複数の移植されたT細胞と比較して、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少な
くとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約4.5倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少な
くとも約9倍、または少なくとも約10倍、増加され得る。
【0056】
用語「低減させる」および「減少させる」は、本明細書において交換可能に使用され、オリジナルより少ない任意の変化を示す。「低減させる」および「減少させる」は、測定前と測定後との比較を必要とする、相対的な用語である。「低減させる」および「減少させる」は完全な枯渇を含む。いくつかの態様において、用語「低減させる」および「減少させる」は、本明細書に開示の方法(例えば、AKTiと、IL-7およびIL-15のうちの少なくとも1つとに接触させること)によって調製されたT細胞と、本調製無しのT細胞との間でのT
細胞効果の比較を含む。
【0057】
T細胞成熟を「調節する」という用語は、本明細書において使用される場合、1つまたは複数のT細胞の成熟、例えば分化を制御するための本明細書に記載される任意の介入の使
用を指す。いくつかの態様において、「調節する」は、T細胞成熟を遅らせるまたは阻害
することを指す。他の態様において、「調節する」は、T細胞成熟を加速または促進する
ことを指す。特に、「T細胞成熟を遅らせるまたは阻害する」は、本明細書において使用
される場合、1つまたは複数のT細胞を未熟または未分化状態に維持することを指す。例えば、「T細胞成熟を遅らせるまたは阻害する」は、TEMまたはTEFF状態へ進むこととは対照的に、T細胞をナイーブまたはTCM状態に維持することを指し得る。「T細胞成熟を遅らせ
るまたは阻害する」はまた、T細胞の混合集団中の未熟または未分化T細胞(例えば、ナイ
ーブT細胞および/またはTCM細胞)の全体的なパーセンテージを増加または富化させるこ
とを指し得る。T細胞の状態(例えば、成熟または未熟として)は、例えば、様々な遺伝子
の発現およびT細胞の表面上に発現された様々なタンパク質の存在をスクリーニングする
ことによって、決定することができる。例えば、L-セレクチン(CD62L+)、IL-7R-α、CD132、CR7、CD45RA、CD45RO、CD27、CD28、CD95、IL-2Rβ、CXCR3、LFA-1、およびそれらの
任意の組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のマーカーの存在は、あまり
成熟していない未分化T細胞を示し得る。
【0058】
対象の「治療」または対象を「治療する」は、症状、合併症もしくは状態、または疾患に関連する生化学的指標の発生、進行、発達、重症度もしくは再発を逆転、緩和、改善、抑制、遅延または予防する目的で、対象に対して行われる任意のタイプの介入もしくは処置、または、対象への本発明によって調製された1つまたは複数のT細胞の投与を指す。一態様において、「治療」または「治療する」は部分寛解を含む。別の態様において、「治療」または「治療する」は完全寛解を含む。
【0059】
本発明の様々な局面を以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載する。
【0060】
免疫細胞を調製する方法
本開示は、細胞療法において使用するための免疫細胞(例えば、リンパ球または樹状細
胞)を調製するための方法に関する。あるインビトロ操作された細胞(例えば、CAR T細胞
、TCR細胞、または樹状細胞)は、インビトロ操作後に患者へ投与される際に同じほどには有効でないことが分かる。いかなる理論によっても拘束されないが、一つの理由は、リンパ球が、患者へ投与される前にインビトロで時期尚早に分化され得ることであり得ることが、注意される。本開示は、ある態様において、AKTiと、外因性IL-7および外因性IL-15
のうちの少なくとも1つとを添加することによって、インビトロで細胞の時期尚早な分化
を遅らせる、妨げるまたは阻害するための方法を記載する。
【0061】
一態様において、本開示は、ドナー対象から得られた1つまたは複数の細胞を、AKTインヒビターと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つ(または両方)とに接触させることによって、インビトロでT細胞またはDC細胞の成熟または分化を調節する、例
えば、遅らせるまたは阻害する方法に関する。T細胞またはDC細胞の成熟または分化を遅
らせるまたは阻害することは、採取されたT細胞またはDC細胞の集団中における未熟な、
あまり分化していない細胞(例えば、ナイーブT細胞またはセントラルメモリーTcm細胞)のパーセンテージを増加させることができる。従って、本明細書に記載される方法は、細胞療法(例えば、T細胞療法またはDC細胞療法)における移植されたT細胞もしくはDC細胞またはそれらの子孫のインビボでの持続を増加させるために使用され得る。加えて、本開示は、結果として生じるT細胞またはDC細胞は、インビトロおよびインビボでの増加した増殖
ならびに優れた抗腫瘍活性を示すことを提供する。
【0062】
別の態様において、本発明は、細胞療法(例えば、T細胞療法)のためにインビトロで細
胞(例えば、T細胞)成熟または分化を調節する、例えば、遅らせるまたは阻害するための
方法であって、細胞療法(例えば、T細胞療法)の必要がある対象由来の1つまたは複数の細胞(例えば、T細胞またはDC細胞)を、(i)AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が遅延した成熟または分化を示す、方法を含
む。接触工程は、1つまたは複数のT細胞へ直接、またはT細胞を含有する緩衝液もしくは
培地へ、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15を添加
する工程、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と他
のコンポーネントとを混合する工程、ならびに/または、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15を含む培地中に1つまたは複数の細胞を添加する工程を含み得る。ある態様において、1つまたは複数のT細胞を外因性インターロイキン-2(IL-2)と接触させない。T細胞のさらなる調製は本明細書の他の箇所に記載される。
【0063】
本開示は、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞をインビトロでAKTインヒビターならび
にIL-7およびIL-15のうちの少なくとも1つと接触させることが、より最終分化したT細胞
の濃度と比べて、サンプル中のナイーブT細胞およびTCM細胞の濃度を増加させ得ることを示す。従って、別の態様において、本発明は、幹細胞様CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞を生じさせるための方法であって、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7、外因性IL-15または両方を含む培地中において1つまたは複数のT細胞を培養する工程を含む、方法を
含む。他の態様において、本発明は、サンプル中のCD8+/CD45RA+/CCR7+ T細胞の集団を富化する方法であって、(a)対象から1つまたは複数のT細胞を得る工程;(b)1つまたは複数
のT細胞を(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7、外因性IL-15または両方と接触させる工程;ならびに(c)AKTインヒビターならびに外因性IL-7、外因性IL-15または両方の
存在下で1つまたは複数のT細胞を増殖させる工程を含む、方法を含む。増加した濃度の未熟および未分化T細胞またはDC細胞を生じさせることは、細胞療法(例えば、T細胞療法ま
たはDC細胞療法)の必要がある対象への移植時に細胞のインビボでの持続を増加させるこ
とができる。従って、別の態様において、本発明は、養子細胞療法における1つまたは複
数のT細胞またはDC細胞のインビボでの持続を延長するための方法であって、対象への投
与の前に1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7、外因性IL-15または両方と接触させる工程を含み;ここで、インビボでの持続が、AKTインヒビターならびに外因性IL-7、外因性IL-15または両方と接触させられなかった1つまたは複数の移植されたT細胞と比べて延長されている、方法を含む。
【0064】
本明細書に開示される方法は、インビトロで1つまたは複数のT細胞またはDC細胞の成熟または分化を調節する、例えば、遅らせるまたは阻害することを含む。1つまたは複数のT細胞またはDC細胞の成熟または分化の遅延または阻害は、当技術分野において公知の任意の方法によって測定することができる。例えば、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞の成熟または分化の遅延または阻害は、1つまたは複数のバイオマーカーの存在を検出するこ
とによって測定することができる。1つまたは複数のバイオマーカーの存在は、免疫組織
化学および/または蛍光活性化細胞選別(FACS)を含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法によって検出することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のバイオマーカーは、L-セレクチン(CD62L+)、IL-7Rα、CD132、CCR7、CD4
5RA、CD45RO、CD27、CD28、CD95、IL-2Rβ、CXCR3、LFA-1、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。ある態様において、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞の成熟または分化の遅延または阻害は、L-セレクチン(CD62L+)、IL-7RαおよびCD132のうちの1つまたは複数の存在を検出することによって測定することができる。当業者は、本
方法は、採取された細胞の集団中の未熟および未分化T細胞またはDC細胞の相対的な割合
を増加させることができるが、いくらかの成熟および分化細胞が依然として存在し得ることを認識するだろう。結果として、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞の成熟または分化の遅延または阻害は、1つまたは複数の細胞を、AKTインヒビターと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに接触させる前および後で、細胞集団中の未熟および未分化細胞を総パーセントを計算することによって、測定することができる。いくつかの態様において、本明細書に開示される方法は、T細胞集団中における未熟および未分化T細胞のパーセンテージを増加させる。ある態様において、AKTインヒビターと、外因性IL-7
および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに接触させた1つまたは複数のT細胞は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%
、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少な
くとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%、未熟または未分化T細胞を含む。他の態様において、AKTインヒビターと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに接触させた1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、少なくとも約10%~少なくとも約90%、少なくとも約20%~少なくとも約80%、少なくとも約30%~少なくとも約70%、少なくとも約40%~少なくとも約60%、少なくとも約10%~少な
くとも約50%、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約35%~少なくとも約45%
、少なくとも約20%~少なくとも約60%、または少なくとも約50%~少なくとも約90%、未熟または未分化T細胞またはDC細胞を含む。ある態様において、未熟または未分化T細胞は、ナイーブT細胞および/またはセントラルメモリーTcm細胞である。
【0065】
本明細書に開示される方法は、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を、AKTインヒビタ
ーと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの1つまたは複数とに接触させる工程を含む。いくつかの態様において、方法は、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を、AKTインヒビ
ター、外因性IL-7、および外因性IL-15と接触させる工程を含む。別の態様において、方
法は、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を、AKTインヒビターおよび外因性IL-7と接触
させる工程を含む。別の態様において、方法は、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を、AKTインヒビターおよび外因性IL-15と接触させる工程を含む。一つの特定の態様において、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を外因性IL-2とも接触させる。別の態様において、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を外因性IL-2と接触させない。
【0066】
1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、当技術分野において公知の任意の手段を通してAKTインヒビターならびに外因性IL-7および/またはIL-15と接触させることができる。例えば、AKTインヒビターおよびIL-7/IL-15は、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を培養
するために使用される培養培地へ添加され得る。あるいは、AKTインヒビターおよびIL-7/IL-15は、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞と共培養される1つまたは複数の細胞によって、例えば、フィーダー細胞層によって、産生され得る。AKTインヒビター、IL-7、およ
びIL-15を、一緒に添加することができ、または個々に添加することができる。例えば、AKTインヒビターは培養培地へ添加することができ、IL-7および/またはIL-15は、1つまたは複数のT細胞と共培養される細胞によって産生され得る。
【0067】
加えて、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、同じ時に、異なる時に、重複する時に、または連続的に、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させることができる。例えば、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、AKTインヒビタ
ーと接触させる前に、外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させることができる
。あるいは、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させる前に、AKTインヒビターと接触させることができる。一つの特定の態様において、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を、先ず、外因性IL-7および/または外因性IL-15単独と接触させ、次いで、同時にAKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させる。別の態様において、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を
、先ず、AKTインヒビター単独と接触させ、次いで、同時にAKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させる。いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞を洗浄し、AKTインヒビター、外因性IL-7、および/または外因性IL-15を除去する。
【0068】
本開示の1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、T細胞またはDC細胞療法において使用
するために対象へ投与され得る。従って、1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、T細胞
療法の必要がある対象からまたはドナーから採取され得る。採取された後、1つまたは複
数のT細胞は、対象へ投与される前に任意の好適な期間、処理され得る。このあいだに、1つまたは複数のT細胞は、ドナーからのT細胞の採取と対象への投与との間の任意の期間、AKTインヒビター、外因性IL-7、および/または外因性IL-15と接触させられ得る。例えば、1つまたは複数のT細胞を、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日
間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、または少なくとも約14日間、AKTインヒビター
、外因性IL-7、および/または外因性IL-15と接触させる、例えば、これらの存在下で培
養することができる。いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞を、約1日間~約14日間、約1日間~約10日間、約1日間~約7日間、約1日間~約6日間、約1日間~約5日間、約1日間~約4日間、約1日間~約3日間、約1日間~約2日間、約2日間~約3日間、約2日間
~約4日間、約2日間~約5日間、または約2日間~約6日間、AKTインヒビター、外因性IL-7、および/または外因性IL-15と接触させる、例えば、これらの存在下で培養する。一つ
の特定の態様において、T細胞を採取した日(例えば、0日目)からT細胞を対象へ投与する
日まで、1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビター、外因性IL-7、および/または外因
性IL-15と接触させる、例えば、これらの存在下で培養する。別の態様において、T細胞を、0日目から投与まで、1日目から投与まで、2日目から投与まで、3日目から投与まで、4
日目から投与まで、5日目から投与まで、または6日目から投与まで、AKTインヒビター、
外因性IL-7、および/または外因性IL-15と接触させる、例えば、これらの存在下で培養
する。いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞を投与前に洗浄し、AKTインヒビ
ター、外因性IL-7、および/または外因性IL-15を除去する。
【0069】
ある態様において、本開示は、ドナー対象から得られた1つまたは複数のT細胞またはDC細胞をAKTインヒビターならびに外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つ(または両方)と接触させることによって、インビトロでT細胞またはDC細胞の成熟または分化を調節する、例えば、遅らせるまたは阻害する方法であって、ここで、1つまたは複数の
細胞を外因性IL-2と接触させない、方法に関する。一態様において、AKTiならびにIL-7およびIL-15のうちの少なくとも1つ(または両方)で処理されたが、IL-2で処理されなかった1つまたは複数の細胞は、IL-2単独またはIL-2およびAKTiで処理された1つまたは複数の細胞よりも高度に遅延したまたは阻害された成熟または分化を示す。1つまたは複数のT細胞またはDC細胞は、IL-2単独またはIL-2およびAKTiで処理されている1つまたは複数のT細胞またはDC細胞と比較して、増加したパーセンテージの未熟な、あまり分化していない細胞(例えば、ナイーブT細胞またはセントラルメモリーTcm細胞)を示し得る。従って、本明細書に記載される方法は、細胞療法(例えば、T細胞療法またはDC細胞療法)における移植さ
れたT細胞もしくはDC細胞またはそれらの子孫のインビボでの持続を増加させるために使
用され得る。加えて、本開示は、結果として生じるT細胞またはDC細胞がインビトロおよ
びインビボでの増加した増殖ならびに優れた抗腫瘍活性を示すことを提供する。いくつか
の態様において、1つまたは複数のT細胞はCD4細胞である。他の態様において、1つまたは複数のT細胞はCD8細胞である。特定の態様において、AKTiと、IL-7およびIL-15のうちの
少なくとも1つとの接触を、少なくとも1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、または約13日間、行う。他の態様において、AKTiと、IL-7およびIL-15のうちの少なくとも1つとの接触を、1日間を超えて14日
間未満、13日間未満、12日間未満、11日間未満、10日間未満、9日間未満、または8日間未満まで、行う。
【0070】
本明細書に記載される方法は、ドナーから得られたリンパ球の集団を富化する工程をさらに含み得る。リンパ球の集団、例えば、1つまたは複数のT細胞の富化は、分離媒体の使用(例えば、FICOLL-PAQUE(商標)、ROSETTESEP(商標)HLA Total Lymphocyte enrichment cocktail、Lymphocyte Separation Medium (LSA) (MP Biomedical Cat. No. 0850494X)など)、濾過もしくは溶出による細胞サイズ、形状もしくは密度分離、免疫磁気分離(例
えば、磁気活性化細胞選別システム、MACS)、蛍光分離(例えば、蛍光活性化細胞選別システム、FACS)、またはビーズに基づいたカラム分離を含むがこれらに限定されない、任意
の好適な分離方法によって達成することができる。
【0071】
本明細書に記載される方法は、好適な条件下で、活性化されたT細胞の集団を生成する
ためにリンパ球の集団を1つまたは複数のT細胞刺激剤で刺激する工程をさらに含み得る。以下を含むがこれらに限定されない、1つまたは複数の好適なT細胞刺激剤の任意の組み合わせが、活性化されたT細胞の集団を生成するために使用され得る:T細胞刺激分子もしくは共刺激分子を標的とする抗体もしくはその機能的断片(例えば、抗CD2抗体、抗CD3抗体
、抗CD28抗体、もしくはその機能的断片)、または任意の他の好適なマイトジェン(例えば、テトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)、フィトヘマグルチニン(PHA)、コンカナバリンA(conA)、リポ多糖類(LPS)、ポークウィードマイトジェン(PWM))、またはT細胞刺
激分子もしくは共刺激分子に対する天然リガンド。
【0072】
本明細書に記載されるようなリンパ球の集団を刺激するための好適な条件は、ある温度、ある長さの時間、および/またはあるCO2レベルの存在を含み得る。ある態様において
、刺激のための温度は、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、または約38℃である。ある態様において、刺激のための温度は約34~38℃である。ある態様において、刺激のための温度は約35~37℃である。ある態様において、刺激のための温度は約36~38℃である。ある態様において、刺激のための温度は約36~37℃または約37℃である。
【0073】
本明細書に記載されるようなリンパ球の集団を刺激するための別の条件は、刺激のための時間を含み得る。いくつかの態様において、刺激のための時間は約24~72時間である。いくつかの態様において、刺激のための時間は、約24~36時間、約30~42時間、約36~48時間、約40~52時間、約42~54時間、約44~56時間、約46~58時間、約48~60時間、約54~66時間、または約60~72時間である。一つの特定の態様において、刺激のための時間は約48時間または少なくとも約48時間である。他の態様において、刺激のための時間は約44~52時間である。ある態様において、刺激のための時間は、約40~44時間、約40~48時間、約40~52時間、または約40~56時間である。
【0074】
本明細書に記載されるようなリンパ球の集団を刺激するための他の条件は、CO2レベル
を含み得る。いくつかの態様において、刺激のためのCO2のレベルは約1.0~10% CO2であ
る。いくつかの態様において、刺激のためのCO2のレベルは、約1.0%、約2.0%、約3.0%、
約4.0%、約5.0%、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、または約10.0% CO2である。一態様
において、刺激のためのCO2のレベルは約3~7% CO2である。他の態様において、刺激のためのCO2のレベルは約4~6% CO2である。さらに他の態様において、刺激のためのCO2のレ
ベルは約4.5~5.5% CO2である。一つの特定の態様において、刺激のためのCO2のレベルは約5% CO2である。
【0075】
リンパ球の集団を刺激するための条件は、ある温度、刺激のためのある長さの時間、および/またはあるCO2レベルの存在を、任意の組み合わせで含み得る。例えば、リンパ球
の集団を刺激する段階は、約36~38℃の温度で、約44~52時間の長さの時間、約4.5~5.5% CO2のCO2レベルの存在下で、リンパ球の集団を1つまたは複数のT細胞刺激剤で刺激することを含み得る。
【0076】
本明細書における方法に有用なリンパ球の濃度は約1.0~10.0 x 106細胞/mLである。ある態様において、リンパ球の濃度は、約1.0~2.0 x 106細胞/mL、約1.0~3.0 x 106細胞/mL、約1.0~4.0 x 106細胞/mL、約1.0~5.0 x 106細胞/mL、約1.0~6.0 x 106細胞/mL、
約1.0~7.0 x 106細胞/mL、約1.0~8.0 x 106細胞/mL、1.0~9.0 x 106細胞/mL、または
約1.0~10.0 x 106細胞/mLである。ある態様において、リンパ球の濃度は約1.0~2.0 x 106細胞/mLである。ある態様において、リンパ球の濃度は、約1.0~1.2 x 106細胞/mL、約1.0~1.4 x 106細胞/mL、約1.0~1.6 x 106細胞/mL、約1.0~1.8 x 106細胞/mL、または
約1.0~2.0 x 106細胞/mLである。ある態様において、リンパ球の濃度は、少なくとも約1.0 x 106細胞/mL、少なくとも約1.1 x 106細胞/mL、少なくとも約1.2 x 106細胞/mL、少
なくとも約1.3 x 106細胞/mL、少なくとも約1.4 x 106細胞/mL、少なくとも約1.5 x 106
細胞/mL、少なくとも約1.6 x 106細胞/mL、少なくとも約1.7 x 106細胞/mL、少なくとも
約1.8 x 106細胞/mL、少なくとも約1.9 x 106細胞/mL、少なくとも約2.0 x 106細胞/mL、少なくとも約4.0 x 106細胞/mL、少なくとも約6.0 x 106細胞/mL、少なくとも約8.0 x 106細胞/mL、または少なくとも約10.0 x 106細胞/mLである。
【0077】
抗CD3抗体(もしくはその機能的断片)、抗CD28抗体(もしくはその機能的断片)、または
抗CD3抗体および抗CD28抗体の組み合わせを、リンパ球の集団を刺激する段階に従って使
用することができる。任意の可溶性または固定化抗CD2、抗CD3および/もしくは抗CD28抗体またはその機能的断片を使用することができる(例えば、クローンOKT3(抗CD3)、クローン145-2C11(抗CD3)、クローンUCHT1(抗CD3)、クローンL293(抗CD28)、クローン15E8(抗CD28))。いくつかの局面において、抗体は、Miltenyi Biotec、BD Biosciences (例えば、MACS GMP CD3 pure 1mg/mL, Part No. 170-076-116)、およびeBioscience, Incを含むがこれらに限定されない当技術分野において公知の供給業者から商業的に購入することができる。さらに、当業者は、標準的な方法によって抗CD3抗体および/または抗CD28抗体を生
成する方法を理解するだろう。いくつかの態様において、リンパ球の集団を刺激する段階に従って使用することができる1つまたは複数のT細胞刺激剤としては、T細胞サイトカイ
ンの存在下でT細胞刺激分子または共刺激分子を標的とする抗体またはその機能的断片が
挙げられる。一局面において、1つまたは複数のT細胞刺激剤は、抗CD3抗体およびIL-2を
含む。ある態様において、T細胞刺激剤は、約20 ng/mL~100 ng/mLの濃度の抗CD3抗体を
含む。ある態様において、抗CD3抗体の濃度は、約20 ng/mL、約30 ng/mL、約40 ng/mL、
約50 ng/mL、約60 ng/mL、約70 ng/mL、約80 ng/mL、約90 ng/mL、または約100 ng/mLで
ある。一つの特定の態様において、抗CD3抗体の濃度は約50 ng/mLである。代替の態様に
おいて、T細胞活性化は必要ではない。そのような態様において、活性化されたT細胞の集団を生成するためにリンパ球の集団を刺激する段階は、方法から省略され、リンパ球の集団(これはTリンパ球について富化され得る)は、下記の段階に従って形質導入される。
【0078】
本明細書に記載される方法は、形質導入されたT細胞を生成するための単一サイクル形
質導入を使用して、活性化されたT細胞の集団を、細胞表面受容体をコードする核酸分子
を含むウイルスベクターで形質導入する工程を含み得る。いくつかの組換えウイルスが、遺伝物質を細胞へ送達するためのウイルスベクターとして使用されてきた。形質導入段階に従って使用され得るウイルスベクターは、組換えレトロウイルスベクター、組換えレン
チウイルスベクター、組換えアデノウイルスベクター、および組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含むがこれらに限定されない、任意のエコトロピックまたはアンホトロ
ピックウイルスベクターであり得る。いくつかの態様において、方法は、1つまたは複数
のT細胞をレトロウイルスで形質導入する工程をさらに含む。一態様において、活性化さ
れたT細胞の集団を形質導入するために使用されるウイルスベクターは、MSGV1ガンマレトロウイルスベクターである。ある態様において、活性化されたT細胞の集団を形質導入す
るために使用されるウイルスベクターは、Kochenderfer, J. Immunother. 32(7): 689-702 (2009)によって記載されるPG13-CD19-H3ベクターである。この態様の一局面によれば、本明細書において「ウイルスベクター接種材料」と呼ばれるウイルスベクター製造用の培地中での浮遊培養において、ウイルスベクターを増殖させる。ウイルスベクターを増殖させるための任意の好適な増殖培地および/または補助剤が、本明細書に記載される方法に従ってウイルスベクター接種材料中において使用され得る。いくつかの局面によれば、次いで、ウイルスベクター接種材料を、形質導入段階中、下記に記載される無血清培養培地へ添加する。
【0079】
いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞を、レトロウイルスで形質導入することができる。一態様において、レトロウイルスは、細胞表面受容体をコードする異種遺伝子を含む。一つの特定の態様において、細胞表面受容体は、標的細胞の表面上の、例えば、腫瘍細胞の表面上の、抗原に結合することができる。
【0080】
本明細書に記載されるような活性化されたT細胞の集団を形質導入するための条件は、
特定の時間、特定の温度でおよび/または特定のCO2レベルの存在下であることを含み得
る。ある態様において、形質導入のための温度は、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、または約38℃である。一態様において、形質導入のための温度は約34~38℃である。別の態様において、形質導入のための温度は約35~37℃である。別の態様において、形質導入のための温度は約36~38℃である。さらに別の態様において、形質導入のための温度は約36~37℃である。一つの特定の態様において、形質導入のための温度は約37℃である。
【0081】
ある態様において、形質導入のための時間は約12~36時間である。いくつかの態様において、形質導入のための時間は、約12~16時間、約12~20時間、約12~24時間、約12~28時間、または約12~32時間である。他の態様において、形質導入のための時間は、約20時間または少なくとも約20時間である。一態様において、形質導入のための時間は約16~24時間である。他の態様において、形質導入のための時間は、少なくとも約14時間、少なくとも約16時間、少なくとも約18時間、少なくとも約20時間、少なくとも約22時間、少なくとも約24時間、または少なくとも約26時間である。
【0082】
ある態様において、形質導入のためのCO2のレベルは約1.0~10% CO2である。他の態様
において、形質導入のためのCO2のレベルは、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%、約5.0%
、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、または約10.0% CO2である。一態様において、形質
導入のためのCO2のレベルは約3~7% CO2である。別の態様において、形質導入のためのCO2のレベルは約4~6% CO2であり得る。別の態様において、形質導入のためのCO2のレベル
は約4.5~5.5% CO2である。一つの特定の態様において、形質導入のためのCO2のレベルは約5% CO2である。
【0083】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるような活性化されたT細胞の集団の形
質導入は、特定の長さの時間、特定の温度、および/または特定のCO2レベルの存在の、
任意の組み合わせで行うことができる:約36~38℃の温度で、約16~24時間、および約4.5~5.5% CO2のCO2レベルの存在下。
【0084】
本明細書に記載される方法は、改変T細胞の集団を生成するために特定の期間、形質導
入された1つまたは複数のT細胞の集団を増殖させる工程を含み得る。増殖のための所定の時間は、以下の生成を可能にする任意の好適な時間であり得る:(i)患者へ投与する少な
くとも1用量のための、改変T細胞集団中の十分な数の細胞、(ii)典型的なより長いプロセスと比較して好ましい割合の幼若細胞を含む改変T細胞の集団、または(iii)(i)および(ii)の両方。この時間は、T細胞によって発現される細胞表面受容体、使用されるベクター、治療効果を有するために必要とされる用量、および他の変数に依存するだろう。従って、いくつかの態様において、増殖のための所定の時間は、1日間、2日間、3日間、4日間、5
日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、20日間、21日間、または21日間超であり得る。いくつかの局面において、増殖のための時間は、当技術分野において公知の増殖方法よりも短い。例えば、増殖のための所定の時間は、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少
なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なく
とも70%、少なくとも75%より短くあり得、または75%を超えてより短くあり得る。一局面
において、増殖のための時間は約3日間であり、リンパ球の集団の富化から改変T細胞の生成までの時間は約6日間である。
【0085】
形質導入されたT細胞の集団を増殖させるための条件は、ある温度および/またはあるCO2レベルの存在下を含み得る。ある態様において、温度は、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、または約38℃である。一態様において、温度は約34~38℃である。別の態様において、温度は約35~37℃である。別の態様において、温度は約36~38℃である。さらに別の態様において、温度は約36~37℃である。一つの特定の態様において、温度は約37℃である。ある態様において、CO2のレベルは1.0~10% CO2である。他の態様において、CO2のレベルは、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、約6.0%、約7.0%、約8.0%、約9.0%、または約10.0% CO2である。一態様において、CO2のレベルは約4.5~5.5% CO2である。別
の態様において、CO2のレベルは約5% CO2である。他の態様において、CO2のレベルは、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、約5.5%、または約6.5% CO2である。いくつかの態様において、形質導入されたT細胞の集団を増殖させるための条件は、ある温度および/または
あるCO2レベルの存在下を任意の組み合わせで含む。例えば、形質導入されたT細胞の集団を増殖させるための条件は、約36~38℃の温度および約4.5~5.5% CO2のCO2レベルの存在下を含む。
【0086】
本明細書に記載される方法の各段階は、閉鎖系中において行うことができる。ある態様において、閉鎖系は、任意の好適な細胞培養バッグ(例えば、Miltenyi Biotec MACS(登
録商標)GMP Cell Differentiation Bag、Origen Biomedical PermaLife Cell Culture bag)を使用する、閉鎖バッグ培養系である。いくつかの態様において、閉鎖バッグ培養系
中において使用される細胞培養バッグは、形質導入段階中、組換えヒトフィブロネクチン断片でコーティングされている。組換えヒトフィブロネクチン断片は、3つの機能性ドメ
インを含み得る:中心細胞結合性ドメイン、ヘパリン結合性ドメインII、およびCS1配列
。組換えヒトフィブロネクチン断片は、標的細胞およびウイルスベクターの共局在化を助けることによって、免疫細胞のレトロウイルス形質導入の遺伝子効率を高めるために使用され得る。ある態様において、組換えヒトフィブロネクチン断片はRETRONECTIN(登録商
標)(Takara Bio, Japan)である。ある態様において、細胞培養バッグは、約1~60μg/mLまたは約1~40μg/mLの濃度にて組換えヒトフィブロネクチン断片でコーティングされる
。他の態様において、細胞培養バッグは、約1~20μg/mL、20~40μg/mL、または40~60
μg/mLの濃度にて組換えヒトフィブロネクチン断片でコーティングされる。いくつかの態様において、細胞培養バッグは、約1μg/mL、約2μg/mL、約3μg/mL、約4μg/mL、約5μg/mL、約6μg/mL、約7μg/mL、約8μg/mL、約9μg/mL、約10μg/mL、約11μg/mL、約12μg/mL、約13μg/mL、約14μg/mL、約15μg/mL、約16μg/mL、約17μg/mL、約18μg/mL、約19μg/mL、または約20μg/mL組換えヒトフィブロネクチン断片でコーティングされる。他
の態様において、細胞培養バッグは、約2~5μg/mL、約2~10μg/mL、約2~20μg/mL、約2~25μg/mL、約2~30μg/mL、約2~35μg/mL、約2~40μg/mL、約2~50μg/mL、または
約2~60μg/mL組換えヒトフィブロネクチン断片でコーティングされる。ある態様におい
て、細胞培養バッグは、少なくとも約2μg/mL、少なくとも約5μg/mL、少なくとも約10μg/mL、少なくとも約15μg/mL、少なくとも約20μg/mL、少なくとも約25μg/mL、少なくとも約30μg/mL、少なくとも約40μg/mL、少なくとも約50μg/mL、または少なくとも約60μg/mL組換えヒトフィブロネクチン断片でコーティングされる。一つの特定の態様において、細胞培養バッグは少なくとも約10μg/mL組換えヒトフィブロネクチン断片でコーティングされる。閉鎖バッグ培養系中において使用される細胞培養バッグは、形質導入段階中、ヒトアルブミン血清(HSA)で任意でブロッキングされ得る。代替の態様において、細胞培
養バッグは、形質導入段階中、HASでブロッキングされない。
【0087】
他の局面において、(a)リンパ球の集団をAKTインヒビターと外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに接触させること、(b)リンパ球の集団を刺激すること、(c)活性化されたT細胞の集団を形質導入すること、ならびに(d)形質導入されたT細胞の集団
を増殖させることのうちの少なくとも1つを、血清が添加されていない無血清培養培地を
使用して行う。いくつかの局面において、(a)~(d)の各々を、血清が添加されていない無血清培養培地を使用して行う。別の局面において、(a)リンパ球の集団をAKTインヒビターと外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに接触させること、(b)リンパ
球の集団を刺激すること、(c)活性化されたT細胞の集団を形質導入すること、ならびに(d)形質導入されたT細胞の集団を増殖させることのうちの少なくとも1つを、無血清培養培
地を使用して行う。いくつかの局面において、(a)~(d)の各々を、血清が添加されていない無血清培養培地を使用して行う。本明細書において言及される場合、用語「無血清培地」または「無血清培養培地」は、使用される増殖培地に血清(例えば、ヒト血清またはウ
シ血清)が補われていないことを意味する。言い換えれば、いくつかの態様において、培
養細胞の生存能力、活性化および成長を支持する目的で、個々に分離した別個の成分として血清を培養培地へ添加しない。任意の好適な培養培地、T細胞増殖培地を、本明細書に
記載される方法に従って浮遊状態で細胞を培養するために使用することができる。例えば、T細胞増殖培地としては、適切な量の緩衝液、マグネシウム、カルシウム、ピルビン酸
ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムを含む、無菌の低グルコース溶液が挙げられ得るが、これに限定されない。一態様において、T細胞増殖培地はOPTMIZER(商標)(Life Technologies)である。改変T細胞を生成するための典型的な方法とは対照的に、本明細書に
記載される方法は、血清(例えば、ヒトまたはウシ)が補われていない培養培地を使用することができる。
【0088】
AKTインヒビター
AKTキナーゼファミリーは、各々が独特な機能および重複する機能を有する、3つの高度に相同なアイソフォーム:AKT1(PKBα)、AKT2(PKBβ)、およびAKT3(PKBγ)を有する。AKTは、PI3K-AKT-mTORシグナリング経路の一部として、mTORを活性化するためにPI3Kの下流
で作用し、生存、成長、増殖、移動、および代謝を含む細胞中における様々な応答を誘発する。
【0089】
AKT1、AKT2、AKT3、またはそれらの任意の組み合わせの任意のインヒビターを含む、当技術分野において公知の任意のAKTインヒビターが、本発明において使用され得る。AKTインヒビターは、A6730、B2311、124018、GSK2110183 (アフレセルチブ)、ペリホシン (KRX-0401)、GDC-0068 (イパタセルチブ)、RX-0201、VQD-002、LY294002、A-443654、A-674563、Akti-1、Akti-2、Akti-1/2、AR-42、API-59CJ-OMe、ATI-13148、AZD-5363、エルシル
ホスホコリン、GSK-2141795 (GSK795)、KP372-1、L-418、NL-71-101、PBI-05204、PIA5、PX-316、SR13668、トリシリビン、GSK 690693 (CAS # 937174-76-0)、FPA 124 (CAS # 902779-59-3)、ミルテホシン、PHT-427 (CAS # 1 191951-57-1)、10-DEBC塩酸塩、Aktイン
ヒビターIII、AktインヒビターVIII、MK-2206二塩酸塩(CAS # 1032350-13-2)、SC79、AT7867 (CAS # 857531 -00-1)、CCT128930 (CAS # 885499-61-6)、A-674563 (CAS # 552325-73-2)、AGL 2263、AS-041 164 (5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルメチレン-チアゾリジン-2,4-ジオン)、BML-257 (CAS # 32387-96-5)、XL-418、CAS # 612847-09-3、CAS # 98510-80-6、H-89 (CAS # 127243-85-0)、OXY-1 1 1 A、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾ
ール-2-オン、およびそれらの任意の組み合わせより選択され得る。AKTインヒビターはまた、1-{1-[4-(7-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)ベンジル]ピペリジ
ン-4-イル}--1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン;N,N-ジメチル-1-[4-(6-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-7-イル)フェニル]メタ-ナミン(metha-namine)
;1-{1-[4-(3-フェニルベンゾ[g]キノキサリン-2-イル)ベンジル]ピペリジン-4-イル}-1,-3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン;1-{1-[4-(7-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)ベンジル]ピペリジン-4-イル}--1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾ
ール-2-オン;N,N-ジメチル-1-[4-(6-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-7-イル)フェニル]メタ-ナミン;1-{1-[4-(3-フェニルベンゾ[g]キノキサリン-2-イル)ベンジル]ピペリジン-4-イル}-1,-3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン(3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-
ベンゾイミダゾール-2-オンとも呼ばれる);2007年9月25日に公開された米国特許第7,273,869号(これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に開示される式I、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、および式VIIIを含む構造を有する化合物;その立体異性体;2007年9月25日に公開された米国特許第7,273,869号(これは参照によりその全体が本明細書に組み入れられる)に開示される任意のAKTi;ならびにそれらの任意の組み合わせより選択され得る。一例において、AKTiは式Iを含む。
【0090】
一つの特定の態様において、AKTインヒビターは、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オンである。別の態様において、AKTインヒビターはAktインヒビターVIIIである。
【0091】
いくつかの態様において、AKTは、式Iによって示される式、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を含む:
式中:aは0または1であり;bは0または1であり;mは0、1または2であり;nは0、1または2であり;pは0、1、2または3であり;rは0または1であり;sは0または1であり;tは2、3、4、5または6であり;u、vおよびxはCHおよびNより独立して選択され;wは結合、CHおよびNより選択され;yおよびzはCHおよびNより独立して選択され、但し、yおよびzのうちの少なくとも1つはNであり;R
1は:1) (C=O)
aO
bC
1-C
10アルキル、2) (C=O)
aO
bアリール、3) C
2-C
10アルケニル、4) C
2-C
10アルキニル、5) (C=O)
aO
bヘテロシクリル、6) (C=O)
aO
bC
3-C
8シクロアルキル、7) CO
2H、8)ハロ、9) CN、10) OH、11) O
bC
1-C
6ペルフルオロアルキル、12) O
a(C=O)
bNR
7R
8、13) NR
c(C=O)NR
7R
8、14) S(O)
mR
a、15) S(O)
2NR
7R
8、16) NR
cS(O)
mR
a、17)オキソ、18) CHO、19) NO
2、20) NR
c(C=O)O
bR
a、21) O(C=O)O
bC
1-C
10アルキル、22) O(C=O)O
bC
3-C
8シクロアルキル、23) O(C=O)O
bアリール、および24) O(C=O)O
b-複素環
より独立して選択され;前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、R
zより選択される1つまたは複数の置換基で置換されて
もよく;R
2は:1) (C=O)
aO
bC
1-C
10アルキル、2) (C=O)
aO
bアリール、3) C
2-C
10アルケニ
ル、4) C
2-C
10アルキニル、5) (C=O)
aO
bヘテロシクリル、6) (C=O)
aO
bC
3-C
8シクロアルキル、7) CO
2H、8)ハロ、9) CN、10) OH、11) O
bC
1-C
6ペルフルオロアルキル、12) O
a(C=O)
bNR
7R
8、13) NR
c(C=O)NR7R
8、14) S(O)
mR
a、15) S(O)
2NR
7R
8、16) NR
cS(O)
mR
a、17) CHO
、18) NO
2、19) NR
c(C=O)O
bR
a、20) O(C=O)O
bC
1-C
10アルキル、21) O(C=O)O
bC
3-C
8シクロアルキル、22) O(C=O)O
bアリール、および23) O(C=O)O
b-複素環より独立して選択され;
前記アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、およびシクロアルキルは、R
zより選択される1、2または3個の置換基で置換されてもよく;R
3およびR
4は、H、C
1-C
6-アルキルおよびC
1-C
6-ペルフルオロアルキルより独立して選択されるか、またはR
3およびR
4は、組み合わされて-(CH
2)
t-を形成し、ここで、炭素原子のうちの1つは、O、S(O)
m、-N(R
b)C(O)-、および-N(COR
a)-より選択される部分によって置き換えられてもよ
く;R
5およびR
6は、1) H、2) (C=O)O
bR
a、3) C
1-C
10アルキル、4) アリール、5) C
2-C
10
アルケニル、6) C
2-C
10アルキニル、7)ヘテロシクリル、8) C
3-C
8シクロアルキル、9) SO
2R
a、および10) (C=O)NR
b
2より独立して選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、R
zより選択される1つまたは
複数の置換基で置換されてもよく、またはR
5およびR
6は、それらが結合されている窒素と一緒になって、各環中に5~7員を有し、さらに任意で、窒素に加えて、N、OおよびSより
選択される1つまたは2つの追加のヘテロ原子を含有してもよい、単環式または二環式複素環を形成し得、この単環式または二環式複素環は、Qで置換されてもよく、さらにR
zより
選択される1つまたは複数の置換基で置換されてもよく;Qは、-NR
7R
8、アリールおよびヘテロシクリルより選択され、前記アリールおよびヘテロシクリルは、R
zより選択される1
~3個の置換基で置換されてもよく;R
7およびR
8は、1) H、2) (C=O)O
bC
1-C
10アルキル、3) (C=O)O
bC
3-C
8シクロアルキル、4) (C=O)O
bアリール、5) (C=O)O
bヘテロシクリル、6) C
1-C
10アルキル、7)アリール、8) C
2-C
10アルケニル、9) C
2-C
10アルキニル、10)ヘテロシクリル、11) C
3-C
8シクロアルキル、12) SO
2R
a、および13) (C=O)NR
b
2より独立して選択
され;前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、R
zより選択される1つまたは複数の置換基で置換されてもよく、またはR
7
およびR
8は、それらが結合されている窒素と一緒になって、各環中に5~7員を有し、さらに任意で、窒素に加えて、N、OおよびSより選択される1つまたは2つの追加のヘテロ原子
を含有してもよい、単環式または二環式複素環を形成し得、この単環式または二環式複素環は、R
zより選択される1つまたは複数の置換基で置換されてもよく;R
zは、1) (C=O)
rO
s(C
1-C
10)アルキル、2) O
r(C
1-C
3)ペルフルオロアルキル、3) (C
0-C
6)アルキレン-S(O)
mR
a、4)オキソ、5) OH、6)ハロ、7) CN、8) (C=O)
rO
s(C
2-C
10)アルケニル、9) (C=O)
rO
s(C
2-C
10)アルキニル、10) (C=O)
rO
s(C
3-C
6)シクロアルキル、11) (C=O)
rO
s(C
0-C
6)アルキレン-アリール、12) (C=O)
rO
s(C
0-C
6)アルキレン-ヘテロシクリル、13) (C=O)
rO
s(C
0-C
6)アルキレン-N(R
b)
2、14) C(O)R
a、15) (C
0-C
6)アルキレン-CO
2R
a、16) C(O)H、17) (C
0-C
6)アルキレン-CO
2H、18) C(O)N(R
b)
2、19) S(O)
mR
a、20) S(O)
2N(R
b)
2、21) NR
c(C=O)O
bR
a、22) O(C=O)O
bC
1-C
10アルキル、23) O(C=O)O
bC
3-C
8シクロアルキル、24) O(C=O)O
bアリール、および25) O(C=O)O
b-複素環より選択され;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、
シクロアルキル、アリール、およびヘテロシクリルは、R
b、OH、(C
1-C
6)アルコキシ、ハ
ロゲン、CO
2H、CN、O(C=O)C
1-C
6アルキル、オキソ、およびN(R
b)
2より選択される3個までの置換基で置換されてもよく;R
aは、置換または非置換(C
1-C
6)アルキル、置換または非
置換(C
2-C
6)アルケニル、置換または非置換(C
2-C
6)アルキニル、置換または非置換(C
3-C
6)シクロアルキル、置換または非置換アリール、(C
1-C
6)ペルフルオロアルキル、2,2,2-トリフルオロエチル、または置換または非置換ヘテロシクリルであり;かつ、R
bは、H、(C
1-C
6)アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換ベンジル、置換または非置換ヘテロシクリル、(C
3-C
6)シクロアルキル、(C=O)OC
1-C
6アルキル、(C=O)C
1-C
6アルキルまたはS(O)
2R
aであり;R
cは、1) H、2) C
1-C
10アルキル、3)アリール、4) C
2-C
10アルケ
ニル、5) C
2-C
10アルキニル、6)ヘテロシクリル、7) C
3-C
8シクロアルキル、8) C
1-C
6ペ
ルフルオロアルキルより選択され、前記アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、およびアルキニルは、R
zより選択される1つまたは複数の置換基で
置換されてもよい。
【0092】
ある態様において、AKTシグナリングは、例えばAKTに結合する分子によって直接的に、または例えばPI3K-AKT-mTORシグナリング経路の別のメンバーに干渉することによって間
接的に、阻害され得る。従って、AKTインヒビターは、PI3K-AKT-mTORシグナリング経路の1つまたは複数のメンバーの活性を阻害する分子であり得る。例えば、1つまたは複数のT
細胞は、AKTインヒビター、PI3Kインヒビター、mTORインヒビター、またはそれらの任意
の組み合わせと接触させることができる。
【0093】
本明細書に記載される方法に有用なAKTインヒビターの量は、1つまたは複数のT細胞中
のAKTの活性を低減または阻害することができる量(即ち、有効量)であり得る。別の態様
において、本発明に有用なAKTインヒビターの量は、外因性IL-7および/または外因性IL-15と組み合わせてインビトロでT細胞またはDC細胞の成熟または分化を遅らせるまたは阻
害することができる量であり得る。従って、一態様において、1つまたは複数のT細胞は、AKTインヒビター、例えば、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-
イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オンと、少なくとも約1 nM、少なくとも約10 nM、少なくとも約50 nM、少なくとも約100 nM、少なくとも約200 nM、少なくとも約300 nM、少なくとも約400 nM、少なくとも約500 nM、少なくとも約1μM、少なくとも約2μM、少なくとも約3μM、少なくとも約4μM、少なくとも約5μM、少なくとも約6μM、少なくとも約7μM、少なくとも約8μM、少なくとも約9μM、少なくとも約10μM、少なくとも約11μM、少なくとも約12μM、少なくとも約13μM、少なくとも約14μM、少なくとも約15μM、少なくとも約16μM、少なくとも約17μM、少なくとも約18μM
、少なくとも約19μM、少なくとも約20μM、少なくとも約25μM、少なくとも約30μM、少なくとも約35μM、少なくとも約40μM、少なくとも約45μM、少なくとも約50μM、少なくとも約60μM、少なくとも約70μM、少なくとも約80μM、少なくとも約90μM、少なくとも約100μM、少なくとも約200μM、少なくとも約300μM、少なくとも約400μM、少なくとも約500μM、または少なくとも約1 mMの濃度で、接触させることができる。別の態様において、1つまたは複数のT細胞は、AKTインヒビター、例えば、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イ
ミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイ
ミダゾール-2-オンと、約1 nM~約1 mM、約10 nM~約1 mM、約100 nM~約1 mM、約1μM~約1 mM、約10μM~約1 mM、約100μM~約1 mM、約1 nM~約100μM、約1 nM~約10μM、約1 nM~約1μM、約1 nM~約100 nM、約1 nM~約50 nM、約100 nM~約100μM、約500 nM~
約50μM、約1μM~約50μM、約1μM~約10μM、または約5μM~約10μMの濃度で、接触させることができる。
【0094】
AKT活性のいかなる低減も本方法に従って達成することができる。例えば、AKT活性は、AKTインヒビターによって、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少な
くとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%
、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少な
くとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または約100%、低減または阻害され
得る。
【0095】
外因性IL-7および外因性IL-15
インターロイキン-7(IL-7)は、リンパ球恒常性を促進し、T細胞発達に必要な、サイト
カインである。内因性IL-7は、胸腺および骨髄中の上皮細胞によって産生され、その受容体であるIL-7受容体-α(IL-7R-α)は、ナイーブT細胞およびTCM細胞を含むT細胞のサブセ
ットによって発現される。IL-7シグナリングは、Janusキナーゼ/シグナル伝達性転写因子(Jak/STAT)経路、PI3K、およびSrcファミリーチロシンキナーゼを含む様々なチロシンキ
ナーゼを生じさせる。
【0096】
任意の外因性IL-7を本明細書に記載される方法において使用することができる。いくつかの態様において、外因性IL-7はヒトIL-7である。いくつかの態様において、外因性IL-7は野生型IL-7である。他の態様において、外因性IL-7は組換えIL-7である。IL-7は、1つ
または複数のIL-7産生細胞からIL-7を単離すること、または市販のIL-7を取得することを含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法によって、産生および取得することができる。
【0097】
IL-7の任意の濃度を本明細書に記載される方法において使用することができる。例えば、本方法は、1つまたは複数のT細胞を、少なくとも約0.001 ng/ml IL-7、少なくとも約0.005 ng/ml IL-7、少なくとも約0.01 ng/ml IL-7、少なくとも約0.05 ng/ml IL-7、少なくとも約0.1 ng/ml IL-7、少なくとも約0.5 ng/ml IL-7、少なくとも約1.0 ng/ml IL-7、少なくとも約1 ng/ml IL-7、少なくとも約2 ng/ml IL-7、少なくとも約3 ng/ml IL-7、少なくとも約4 ng/ml IL-7、少なくとも約5 ng/ml IL-7、少なくとも約6 ng/ml IL-7、少なくとも約7 ng/ml IL-7、少なくとも約8 ng/ml IL-7、少なくとも約9 ng/ml IL-7、少なくとも約10 ng/ml IL-7、少なくとも約11 ng/ml IL-7、少なくとも約12 ng/ml IL-7、少なく
とも約13 ng/ml IL-7、少なくとも約14 ng/ml IL-7、少なくとも約15 ng/ml IL-7、少な
くとも約20 ng/ml IL-7、少なくとも約25 ng/ml IL-7、少なくとも約30 ng/ml IL-7、少
なくとも約35 ng/ml IL-7、少なくとも約40 ng/ml IL-7、少なくとも約45 ng/ml IL-7、
少なくとも約50 ng/ml IL-7、少なくとも約100 ng/ml IL-7、少なくとも約200 ng/ml IL-7、少なくとも約300 ng/ml IL-7、少なくとも約400 ng/ml IL-7、少なくとも約500 ng/ml
IL-7、または少なくとも約1000 ng/ml IL-7と接触させる工程を含み得る。一態様において、1つまたは複数のT細胞を、約0.001~約500 ng/ml IL-7、約0.01~約100 ng/ml IL-7
、約0.1~約50 ng/ml IL-7、約1~約10 ng/ml IL-7、約1~約5 ng/ml IL-7、約5~約10 ng/ml IL-7、約3~約7 ng/ml IL-7、または約4~約6 ng/ml IL-7と接触させる。一つの特
定の態様において、1つまたは複数のT細胞を約5 ng/ml IL-7と接触させる。
【0098】
インターロイキン-15(IL-15)は、T細胞増殖を促進するサイトカインである。それは、
単球/マクロファージ系列のメンバー、血液由来樹状細胞、骨髄間質細胞、および胸腺の
上皮細胞によって発現される。IL-15は、その受容体であるIL-15受容体を通して、例えば、Jak/STAT経路を活性化する、Ras/Raf/MAPK経路を刺激する、かつNF-κBを活性化するように、シグナルを送る。
【0099】
任意の外因性IL-15を本明細書に記載される方法において使用することができる。いく
つかの態様において、外因性IL-15はヒトIL-15である。いくつかの態様において、外因性IL-15は野生型IL-15である。他の態様において、外因性IL-15は組換えIL-15である。IL-15は、1つまたは複数のIL-15産生細胞からIL-15を単離すること、または市販のIL-15を取
得することを含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法によって、産生および取得することができる。
【0100】
IL-15の任意の濃度を本明細書に記載される方法において使用することができる。例え
ば、本方法は、1つまたは複数のT細胞を、少なくとも約0.001 ng/ml IL-15、少なくとも
約0.005 ng/ml IL-15、少なくとも約0.01 ng/ml IL-15、少なくとも約0.05 ng/ml IL-15
、少なくとも約0.1 ng/ml IL-15、少なくとも約0.5 ng/ml IL-15、少なくとも約1.0 ng/ml IL-15、少なくとも約1 ng/ml IL-15、少なくとも約2 ng/ml IL-15、少なくとも約3 ng/ml IL-15、少なくとも約4 ng/ml IL-15、少なくとも約5 ng/ml IL-15、少なくとも約6 ng/ml IL-15、少なくとも約7 ng/ml IL-15、少なくとも約8 ng/ml IL-15、少なくとも約9 n
g/ml IL-15、少なくとも約10 ng/ml IL-15、少なくとも約11 ng/ml IL-15、少なくとも約12 ng/ml IL-15、少なくとも約13 ng/ml IL-15、少なくとも約14 ng/ml IL-15、少なくとも約15 ng/ml IL-15、少なくとも約20 ng/ml IL-15、少なくとも約25 ng/ml IL-15、少なくとも約30 ng/ml IL-15、少なくとも約35 ng/ml IL-15、少なくとも約40 ng/ml IL-15、少なくとも約45 ng/ml IL-15、少なくとも約50 ng/ml IL-15、少なくとも約100 ng/ml IL-15、少なくとも約200 ng/ml IL-15、少なくとも約300 ng/ml IL-15、少なくとも約400 ng/ml IL-15、少なくとも約500 ng/ml IL-15、または少なくとも約1000 ng/ml IL-15と接
触させる工程を含み得る。一態様において、1つまたは複数のT細胞を、約0.001~約500 ng/ml IL-15、約0.01~約100 ng/ml IL-15、約0.1~約50 ng/ml IL-15、約1~約10 ng/ml IL-15、約1~約5 ng/ml IL-15、約5~約10 ng/ml IL-15、約3~約7 ng/ml IL-15、または約4~約6 ng/ml IL-15と接触させる。一つの特定の態様において、1つまたは複数のT細胞を約5 ng/ml IL-15と接触させる。
【0101】
いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞を、外因性IL-7と接触させ、外因性IL-15とは接触させない。他の態様において、1つまたは複数のT細胞を、外因性IL-15と接触させ、外因性IL-7とは接触させない。さらに他の態様において、1つまたは複数のT細胞を外因性IL-7および外因性IL-15の両方と接触させる。1つまたは複数のT細胞を外因性IL-7
および外因性IL-15の両方と接触させる場合、1つまたは複数のT細胞は、等しいまたは異
なる濃度の外因性IL-7および外因性IL-15と接触させることができる。ある態様において
、1つまたは複数のT細胞を、等しい濃度の外因性IL-7および外因性IL-15と接触させる。
他の態様において、1つまたは複数のT細胞を、異なる濃度の外因性IL-7および外因性IL-15と接触させる。一態様において、1つまたは複数のT細胞を、外因性IL-15よりも高い濃度の外因性IL-7と接触させる。別の態様において、1つまたは複数のT細胞を、外因性IL-15
よりも低い濃度の外因性IL-7と接触させる。一つの特定の態様において、1つまたは複数
のT細胞を、約5 ng/mlの外因性IL-7および約5 ng/mlの外因性IL-15と接触させる。
【0102】
さらに、1つまたは複数のT細胞は、同じ時に、例えば同時に、または異なる時に、例えば連続的に、外因性IL-7および外因性IL-15と接触させることができる。いくつかの態様
において、1つまたは複数のT細胞を、外因性IL-15より前に外因性IL-7と接触させる。他
の態様において、1つまたは複数のT細胞を、外因性IL-7より前に外因性IL-15と接触させ
る。いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞を、同じ時に、外因性IL-7および外因性IL-15と接触させる。
【0103】
T細胞
本明細書に記載される1つまたは複数のT細胞は、例えばヒトドナーを含む、任意の供給源から得ることができる。ドナーは、抗がん治療(例えば、本明細書に記載される方法によって作製される1つまたは複数のT細胞での治療)の必要がある対象であり得(即ち、自
己ドナー)、または、本明細書に記載される方法によって作製される細胞の集団が作製さ
れた後に、異なる個体またはがん患者を治療するために使用されるリンパ球サンプルを供与する個体であり得る(即ち、同種異系ドナー)。リンパ球の集団は、当技術分野において使用される任意の好適な方法によってドナーから得ることができる。例えば、リンパ球の集団は、任意の好適な体外的方法、静脈穿刺、または血液および/もしくはリンパ球のサンプルが得られる他の血液採取方法によって、得ることができる。一態様において、リンパ球の集団をアフェレーシスによって得る。1つまたは複数のT細胞は、腫瘍を含むがこれに限定されない、1つまたは複数のT細胞を含む任意の組織から採取することができる。いくつかの態様において、腫瘍またはその一部分を対象から採取し、腫瘍組織から1つまた
は複数のT細胞を単離する。T細胞療法に適した任意のT細胞を含んで、任意のT細胞が本明細書に開示される方法において使用され得る。例えば、本発明に有用な1つまたは複数の
細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、細胞傷害性T細胞、CAR T細胞、改変TCR T細胞、ナチュラルキラーT細胞、樹状細胞、および末梢血リンパ球からなる群より選択され得る。一つ
の特定の態様において、T細胞は腫瘍浸潤白血球である。ある態様において、1つまたは複数のT細胞は、CD8を発現し、例えば、CD8+ T細胞である。他の態様において、1つまたは
複数のT細胞は、CD4を発現し、例えば、CD4+ T細胞である。
【0104】
本明細書に記載される方法は、ドナー由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビタ
ーと外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとに接触させることによって、インビトロでT細胞の成熟または分化を遅らせるまたは阻害するために使用され得る。本
発明者らは、AKTインヒビターならびにIL-7および/またはIL-15での1つまたは複数のT細胞の処理は、インビトロでナイーブおよび未熟T細胞の濃度を増加させることを見出した
。特に、処理に続いて、1つまたは複数のT細胞は、未分化または未熟T細胞の指標となる1つまたは複数の遺伝子を発現し得る。未分化または未熟T細胞の指標となる1つまたは複数の遺伝子は、CD8、CD45RA、CCR7、CD45RO、CD62L、CD28、CD95、IL-7Rα、CXCR4、TCF7、FOXO1、ID3、BCL6、およびそれらの任意の組み合わせの群より選択され得る。例えば、1
つまたは複数のT細胞をAKTインヒビターならびにIL-7および/またはIL-15と接触させる
ことは、CD8、CD45RA、CCR7、およびそれらの任意の組み合わせより選択される未分化ま
たは未熟T細胞の指標となる1つまたは複数の遺伝子を発現する細胞のパーセントを増加させ得る。
【0105】
他の態様において、1つまたは複数のT細胞は、AKTインヒビターならびに外因性IL-7お
よび/または外因性IL-15との接触に続いて、CCR7およびCD45ROを発現する。一つの特定
の態様において、AKTインヒビターと外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1
つとの接触前と比較して、接触後に、より大きなパーセンテージの1つまたは複数のT細胞がCCR7およびCD45ROを発現する。別の態様において、1つまたは複数のT細胞は、AKTイン
ヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、CCR7およびCD45RAを発現する。一つの特定の態様において、AKTインヒビターと外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとの接触前と比較して、接触後に、より大きなパーセンテージの1つまたは複数のT細胞が、CCR7およびCD45RAを発現する。別の態様において、T細
胞は、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられなかったT細胞によるCCR7、CD45ROおよびCD45RAの発現と比較して、CCR7、CD45RO、CD45RAまた
はそれらの任意の組み合わせの増加した発現を示す。
【0106】
他の態様において、1つまたは複数のT細胞は、AKTインヒビターならびに外因性IL-7お
よび/または外因性IL-15との接触に続いて、CD62L、CD28または両方を発現する。一つの特定の態様において、AKTインヒビターと外因性IL-7および外因性IL-15のうちの少なくとも1つとの接触前と比較して、接触後に、より大きなパーセンテージの1つまたは複数のT
細胞が、CD62L、CD28または両方を発現する。別の態様において、1つまたは複数のT細胞
は、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられなかったT細胞によるCD62LおよびCD28の発現と比較して、CD62L、CD28または両方の増加した発現
を示す。
【0107】
一つの特定の態様において、T細胞は、AKTインヒビターと、外因性IL-7、外因性IL-15
または両方との接触に続いて、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因
性IL-15と接触させられなかったT細胞によるCD95、IL-7受容体アルファ(IL-7Rα)、CXCR4、TCF7、FOXO1、ID3、BCL6、CD62LおよびCD45RAの発現と比較して、CD95、IL-7受容体ア
ルファ(IL-7Rα)、CXCR4、TCF7、FOXO1、ID3、BCL6、CD62L、CD45RAまたはそれらの任意
の組み合わせの増加した発現を示す。
【0108】
T細胞療法
本発明は、T細胞療法のためにインビトロでT細胞の成熟または分化を調節する、例えば、遅らせるまたは阻害する方法であって、T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、(i)AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)および外因性イ
ンターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに接触させる工程を含み、ここで、
結果として生じるT細胞が遅延した成熟または分化を示す、方法を提供する。いくつかの
態様において、方法は、1つまたは複数のT細胞をその必要がある対象へ投与する工程をさらに含む。当業者は、本明細書に記載される方法によって生成される1つまたは複数のT細胞が、1つまたは複数のT細胞を患者へ投与する工程を含む、患者を治療する任意の方法において使用され得ることを理解するだろう。
【0109】
例えば、非限定的に、本明細書に記載される方法は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)免疫療法
、自己細胞療法、改変自己細胞療法(eACT(商標))、同種異系T細胞移植、非T細胞移植、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される養子T細胞療法であり得るT細胞療法の有効性を増強することができる。養子T細胞療法は、腫瘍細胞を認識して腫瘍細
胞に結合することができる自己または同種異系T細胞を選択し、インビトロで富化し、そ
して患者へ投与する任意の方法を広義に含む。TIL免疫療法は養子T細胞療法の一種であり、ここで、腫瘍組織に浸潤することができるリンパ球が単離され、インビトロで富化され、そして患者へ投与される。TIL細胞は自己または同種異系のいずれかであり得る。自己
細胞療法は、腫瘍細胞を標的とすることができるT細胞を患者から単離し、T細胞をインビトロで富化し、そして同じ患者へT細胞を投与して戻すことを伴う、養子T細胞療法である。同種異系T細胞移植は、エクスビボで増殖された天然のT細胞または遺伝子操作されたT
細胞の移植を含み得る。上記でより詳細に記載されたような、改変自己細胞療法は、患者自身のリンパ球が単離され、腫瘍を標的とする分子を発現するように遺伝的に改変され、インビトロで増殖され、そして患者へ投与して戻される、養子T細胞療法である。非T細胞移植は、非T細胞、例えば、これに限定されないが、ナチュラルキラー(NK)細胞での自己
または同種異系療法を含み得る。
【0110】
一つの特定の態様において、本発明のT細胞療法は改変自己細胞療法(eACT(商標))で
ある。この態様によれば、方法は、ドナーから血液細胞を採取する工程を含み得る。単離された血液細胞(例えば、T細胞)は、次いで、AKTインヒビターと、外因性IL-7および外因性IL-15のうちの1つまたは複数とに接触させることができる。T細胞は次いで、キメラ抗
原受容体(「改変CAR T細胞」)またはT細胞受容体(「改変TCR T細胞」)を発現するように
操作され得る。一つの特定の態様において、AKTインヒビターと外因性IL-7および外因性IL-15のうちの1つまたは複数とに接触させた改変CAR T細胞または改変TCR T細胞を、対象
へ投与する。いくつかの態様において、改変T細胞は対象中の腫瘍を治療する。
【0111】
いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞を、細胞表面受容体をコードする異種遺伝子を含むレトロウイルスで形質導入する。一つの特定の態様において、細胞表面受容体は、標的細胞の表面上の、例えば、腫瘍細胞の表面上の、抗原に結合することができる。いくつかの態様において、細胞表面受容体は、キメラ抗原受容体またはT細胞受容体で
ある。
【0112】
一態様において、1つまたは複数のT細胞は、キメラ抗原受容体を発現するように操作され得る。キメラ抗原受容体は、腫瘍抗原に対する結合性分子を含み得る。結合性分子は抗体またはその抗原結合性分子であり得る。例えば、抗原結合性分子は、scFv、Fab、Fab'
、Fv、F(ab')2、およびdAb、ならびに任意の断片またはそれらの組み合わせより選択され得る。
【0113】
キメラ抗原受容体はヒンジ領域をさらに含み得る。ヒンジ領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgM、CD28、またはCD8アルファのヒンジ領域に由来し得る。一つ
の特定の態様において、ヒンジ領域はIgG4のヒンジ領域に由来する。
【0114】
キメラ抗原受容体は膜貫通ドメインも含むことができる。膜貫通ドメインは、免疫細胞上の補助受容体である任意の膜貫通分子の膜貫通ドメイン、または免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーの膜貫通ドメインであり得る。ある態様において、膜貫通ドメインは、CD28、CD28T、CD8アルファ、CD4、またはCD19の膜貫通ドメインに由来する。一つ
の特定の態様において、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインに由来するドメインを含む。別の態様において、膜貫通ドメインは、CD28T膜貫通ドメインに由来するドメインを
含む。
【0115】
キメラ抗原受容体は、1つまたは複数の共刺激シグナリング領域をさらに含み得る。例
えば、共刺激シグナリング領域は、CD28、CD28T、OX-40、41BB、CD27、誘導性T細胞共刺
激分子(ICOS)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD247、Igアルファ(CD79a)、ま
たはFcガンマ受容体のシグナリング領域であり得る。一つの特定の態様において、共刺激シグナリング領域はCD28シグナリング領域である。別の態様において、共刺激シグナリング領域はCD28Tシグナリング領域である。
【0116】
一態様において、キメラ抗原受容体はCD3ゼータシグナリングドメインをさらに含む。
【0117】
キメラ抗原受容体は、特定の腫瘍抗原を標的とするように操作され得る。いくつかの態様において、腫瘍抗原は、707-AP(707アラニンプロリン)、AFP(アルファ(a)-フェトプロ
テイン)、ART-4(T4細胞により認識される腺癌抗原)、BAGE(B抗原; b-カテニン/m, b-カテニン/変異型)、BCMA(B細胞成熟抗原)、Bcr-abl(ブレイクポイントクラスター領域-Abelson)、CAIX(カルボニックアンヒドラーゼIX)、CD19(分化クラスター19)、CD20(分化クラス
ター20)、CD22(分化クラスター22)、CD30(分化クラスター30)、CD33(分化クラスター33)
、CD44v7/8(分化クラスター44, エクソン7/8)、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CAP-1(癌胎児抗原ペプチド-1)、CASP-8(カスパーゼ-8)、CDC27m(細胞分裂周期27変異型)、CDK4/m(サイクリン依存性キナーゼ4変異型)、CEA(癌胎児抗原)、CT(癌/精巣(抗原))、Cyp-B(サイクロフィリンB)、DAM(分化抗原メラノーマ)、EGFR(上皮成長因子受容体)、EGFRvIII(上皮成長因子受容体, バリアントIII)、EGP-2(上皮糖タンパク質2)、EGP-40(上皮糖タンパク質40)、Erbb2, 3, 4(赤芽球性白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ-2, -3, 4)、ELF2M(伸長因子2変異型)、ETV6-AML1(Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS)、FBP(葉酸結合タンパク質)、fAchR(胎児アセチルコリン受容体)、G250(糖タンパク質250)、GAGE(G抗原)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、GD3(ジシアロガングリオシド3)、GnT-V(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、Gp100(糖タンパク質100kD)、HAGE(ヘリコーゼ(helicose)抗原)、HER-2/neu(ヒト表皮受容体-2/神経学的;EGFR2としても公知)、HLA-A(ヒト白血球抗原-A) HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)、HSP70-2M(熱ショックタンパク
質70 - 2変異型)、HST-2(ヒト印環腫瘍-2)、hTERTまたはhTRT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、iCE(腸カルボキシルエステラーゼ)、IL-13R-a2(インターロイキン-13受容体サブユ
ニットアルファ-2)、KIAA0205、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)、κ-軽鎖、LAGE(L抗
原)、LDLR/FUT(低密度脂質受容体/GDP-L-フコース:b-D-ガラクトシダーゼ2-a-Lフコシル
トランスフェラーゼ)、LeY(ルイスY抗体)、L1CAM(L1細胞接着分子)、MAGE(メラノーマ抗
原)、MAGE-A1(メラノーマ関連抗原1)、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、マウスCMV感染細胞、MART-1/Melan-A(T細胞により認識されるメラノーマ抗原-1/メラノーマ抗原A)、MC1R(メラノコルチン1受容体)、Myosin/m(ミオシン変異型)、MUC1(ムチン1)、MUM-1, -2, -3(
メラノーマユビキタス変異型1, 2, 3)、NA88-A(患者M88のNA cDNAクローン)、NKG2D(ナチュラルキラーグループ2, メンバーD)リガンド、NY-BR-1(ニューヨーク乳房分化抗原1)、NY-ESO-1(ニューヨーク食道扁平上皮癌-1)、腫瘍胎児抗原(h5T4)、P15(タンパク質15)、p190 minor bcr-abl(190KD bcr-ablのタンパク質)、Pml/RARa(前骨髄球性白血病/レチノイ
ン酸受容体a)、PRAME(メラノーマの優先的に発現される抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、PS
CA(前立腺幹細胞抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE(腎臓抗原)、RU1またはRU2(腎
臓ユビキタス1または2)、SAGE(肉腫抗原)、SART-1またはSART-3(腫瘍拒絶扁平上皮抗原1
または3)、SSX1, -2, -3, 4(滑膜肉腫X1, -2, -3, -4)、TAA(腫瘍関連抗原)、TAG-72(腫
瘍関連糖タンパク質72)、TEL/AML1(転座Ets-ファミリー白血病/急性骨髄性白血病1)、TPI/m(トリオースホスフェートイソメラーゼ変異型)、TRP-1(チロシナーゼ関連タンパク質1
、またはgp75)、TRP-2(チロシナーゼ関連タンパク質2)、TRP-2/INT2(TRP-2/イントロン2)、VEGF-R2(血管内皮成長因子受容体2)、WT1(ウィルムス腫瘍遺伝子)、およびそれらの任
意の組み合わせより選択される。一つの特定の態様において、腫瘍抗原はCD19である。
【0118】
別の態様において、T細胞療法は、T細胞受容体を発現する改変T細胞(「改変TCR T細胞
」)を患者へ投与する工程を含む。T細胞受容体(TCR)は、腫瘍抗原に対する結合性分子を
含み得る。いくつかの態様において、腫瘍抗原は、707-AP、AFP、ART-4、BAGE、BCMA、Bcr-abl、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD44v7/8、CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27m、CDK4/m、CEA、CT、Cyp-B、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-2、EGP-40、Erbb2, 3, 4、ELF2M、ETV6-AML1、FBP、fAchR、G250、GAGE、GD2、GD3、GnT-V、Gp100、HAGE、HER-2/neu、HLA-A、HPV、HSP70-2M、HST-2、hTERTまたはhTRT、iCE、IL-13R-a2、KIAA0205、KDR、κ-
軽鎖、LAGE、LDLR/FUT、LeY、L1CAM、MAGE、MAGE-A1、メソテリン、マウスCMV感染細胞、MART-1/Melan-A、MC1R、Myosin/m、MUC1、MUM-1, -2, -3、NA88-A、NKG2Dリガンド、NY-BR-1、NY-ESO-1、腫瘍胎児抗原、P15、p190 minor bcr-abl、Pml/RARa、PRAME、PSA、PSCA、PSMA、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART-1またはSART-3、SSX1, -2, -3, 4、TAA、TAG-72、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、VEGF-R2、WT1、およびそれらの任意
の組み合わせからなる群より選択される。
【0119】
一態様において、TCRは、ウイルスがん遺伝子に対する結合性分子を含む。一つの特定
の態様において、ウイルスがん遺伝子は、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、およびヒトTリンパ球向性ウイルス(HTLV)より選択される。
【0120】
さらに別の態様において、TCRは、精巣、胎盤または胎児腫瘍抗原に対する結合性分子
を含む。一つの特定の態様において、精巣、胎盤または胎児腫瘍抗原は、NY-ESO-1、滑膜肉腫Xブレイクポイント2(SSX2)、メラノーマ抗原(MAGE)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0121】
別の態様において、TCRは、系列特異的抗原に対する結合性分子を含む。一つの特定の
態様において、系列特異的抗原は、T細胞により認識されるメラノーマ抗原-1(MART-1)、gp100、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、お
よびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0122】
一態様において、T細胞療法は、CD19へ結合しかつCD28共刺激ドメインおよびCD3ゼータシグナリング領域をさらに含むキメラ抗原受容体を発現する改変CAR T細胞を患者へ投与
することを含む。特定の態様において、T細胞療法は、KTE-C19を患者へ投与することを含む。
【0123】
一態様において、抗原性部分としてはまた、エプスタイン-バーウイルス(EBV)抗原(例
えば、EBNA-1、EBNA-2、EBNA-3、LMP-1、LMP-2)、A型肝炎ウイルス抗原(例えば、VP1、VP2、VP3)、B型肝炎ウイルス抗原(例えば、HBsAg、HBcAg、HBeAg)、C型肝炎ウイルス抗原(
例えば、エンベロープ糖タンパク質E1およびE2)、単純ヘルペスウイルス1型、2型、もし
くは8型(HSV1、HSV2、もしくはHSV8)ウイルス抗原(例えば、糖タンパク質gB、gC、gC、gE、gG、gH、gI、gJ、gK、gL、gM、UL20、UL32、US43、UL45、UL49A)、サイトメガロウイルス(CMV)ウイルス抗原(例えば、糖タンパク質gB、gC、gC、gE、gG、gH、gI、gJ、gK、gL、gM、もしくは他のエンベロープタンパク質)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ウイルス抗原(
糖タンパク質gp120、gp41、もしくはp24)、インフルエンザウイルス抗原(例えば、ヘマグルチニン(HA)もしくはノイラミニダーゼ(NA))、麻疹もしくはムンプスウイルス抗原、ヒ
ト乳頭腫ウイルス(HPV)ウイルス抗原(例えば、L1、L2)、パラインフルエンザウイルスウ
イルス抗原、風疹ウイルスウイルス抗原、呼吸器合抱体ウイルス(RSV)ウイルス抗原、ま
たは水痘-帯状疱疹ウイルスウイルス抗原が挙げられるが、これらに限定されない。その
ような態様において、細胞表面受容体は、ウイルス感染した標的細胞上の前述のウイルス抗原のいずれかを認識する任意のTCRまたは任意のCARであり得る。
【0124】
他の態様において、抗原性部分は、免疫性または炎症性機能不全を有する細胞と関連する。そのような抗原性部分としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンプロテ
オリピドタンパク質(PLP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、癌胎児抗原(CEA)、プロインスリン、グルタミンデカルボキシラーゼ(GAD65、GAD67)、熱ショック
タンパク質(HSP)、または病原性自己免疫プロセスに関与するもしくは関連する任意の他
の組織特異的抗原が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書に開示される方法は、患者への1つまたは複数のT細胞の移入を含むT細胞療法
を伴い得る。T細胞は治療有効量で投与され得る。例えば、T細胞、例えば、改変CAR+ T細胞または改変TCR+ T細胞の治療有効量は、少なくとも約104細胞、少なくとも約105細胞、少なくとも約106細胞、少なくとも約107細胞、少なくとも約108細胞、少なくとも約109、または少なくとも約1010であり得る。別の態様において、T細胞、例えば、改変CAR+ T細
胞または改変TCR+ T細胞の治療有効量は、約104細胞、約105細胞、約106細胞、約107細胞、または約108細胞である。一つの特定の態様において、T細胞、例えば、改変CAR+ T細胞または改変TCR+ T細胞の治療有効量は、約2 X 106細胞/kg、約3 X 106細胞/kg、約4 X 106細胞/kg、約5 X 106細胞/kg、約6 X 106細胞/kg、約7 X 106細胞/kg、約8 X 106細胞/kg、約9 X 106細胞/kg、約1 X 107細胞/kg、約2 X 107細胞/kg、約3 X 107細胞/kg、約4 X 107細胞/kg、約5 X 107細胞/kg、約6 X 107細胞/kg、約7 X 107細胞/kg、約8 X 107細胞/kg、または約9 X 107細胞/kgである。
【0126】
いくつかの態様において、患者は、T細胞療法の投与前にプレコンディショニングされ
る。患者は、1つまたは複数の化学療法薬および/または放射線療法での治療を含むがこ
れらに限定されない、当技術分野において公知の任意の方法に従って、プレコンディショニングされ得る。いくつかの態様において、プレコンディショニングは、T細胞療法前に
、内因性リンパ球の数を低減させ、サイトカインシンク(cytokine sink)を除去し、1つまたは複数の恒常性サイトカインもしくは炎症性因子の血清レベルを増加させ、コンディショニング後に投与されるT細胞のエフェクター機能を増強し、抗原提示細胞活性化およ
び/もしくはアベイラビリティを増強し、またはそれらの任意の組み合わせを行う、任意の治療を含み得る。一態様において、プレコンディショニングは、対象中の1つまたは複
数のサイトカインの血清レベルを増加させることを含む。
【0127】
がん治療
本発明の方法は、対象中のがんを治療し、腫瘍のサイズを低減させ、腫瘍細胞を死滅させ、腫瘍細胞増殖を予防し、腫瘍の成長を予防し、患者から腫瘍を排除し、腫瘍の再発を予防し、腫瘍転移を予防し、患者において寛解を誘発し、またはそれらの任意の組み合わせを行うために使用することができる。ある態様において、方法は完全奏効を誘発する。他の態様において、方法は部分奏効を誘発する。
【0128】
一態様において、本発明は、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させた1つまたは複数のT細胞を、対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要がある対象中の腫瘍を治療する方法に関する。別の態様において、本発明は、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させた1つ
または複数のT細胞を、対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要がある対象中の腫瘍のサイズを低減もしくは減少させるかまたは腫瘍の成長を阻害する方法に関する。ある態様において、1つまたは複数のT細胞は、外因性IL-2と接触させられていない。
【0129】
治療され得るがんは、血管を形成していない、まだ実質的には血管を形成していない、または血管を形成している、腫瘍を含む。がんはまた、固形または非固形腫瘍を含み得る。ある態様において、がんは、以下に由来する腫瘍より選択され得る:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、腺様嚢胞癌、副腎皮質癌、AIDS関連がん、肛門癌、虫垂癌、星状細胞腫、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系、B細胞白血病、リンパ腫または他のB細胞悪性腫瘍、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨がん、骨肉腫および
悪性線維性組織球腫、脳幹グリオーマ、脳腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、中枢神経系がん、子宮頸癌、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、
慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、胚芽腫、中枢神経系、子宮内膜癌、上衣芽腫、上衣腫、食道癌、感覚神経芽細胞腫、ユーイング肉腫ファミリー腫瘍 頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍 肝外胆管癌、眼癌 骨の線維性組織球腫、悪性、および骨肉腫、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、軟部組織肉腫、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、グリオーマ、ヘアリー細胞白血病、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、組織球症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞腫瘍(膵内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、白血病、口唇および口腔癌、肝癌(原発性)、上皮内小葉癌(LCIS)、肺癌、リンパ腫、マクログロブリン血症、男性乳癌、骨の悪性線維性組織球腫および骨肉腫、髄芽腫、髄上皮腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌(metastatic squamous neck cancer with occult primary) NUT遺伝子が関連する正中線管癌(midline tract carcinoma involving NUT gene)、口の癌(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、
骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄腫、多発性、骨髄増殖性疾患、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽
細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口癌(oral cancer)、口腔癌、口腔咽頭
癌、骨肉腫および骨の悪性線維性組織球腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔および鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、中間分化型松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/
多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、妊娠期乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺癌、
直腸癌、腎細胞(腎)癌、腎盂尿管移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、セザリー症候群、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、胃癌、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T細胞リンパ腫、皮膚、精巣癌、咽喉癌、胸腺
腫および胸腺癌、甲状腺癌、腎盂と尿管の移行上皮癌、絨毛性腫瘍、尿管および腎盂癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍。
【0130】
一態様において、方法は腫瘍を治療するために使用することができ、ここで、腫瘍はリンパ腫または白血病である。リンパ腫および白血病は、特異的にリンパ球を冒す血液のがんである。血液中の全ての白血球は、骨髄中に見られる単一タイプの多能性造血幹細胞に由来する。この幹細胞は骨髄系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞の両方を産生し、次いで、これらは、体内に見られる様々なタイプの白血球を生じさせる。骨髄系前駆細胞から生じる白血球としては、Tリンパ球(T細胞)、Bリンパ球(B細胞)、ナチュラルキラー細胞、および形質細胞が挙げられる。リンパ球系前駆細胞から生じる白血球としては、巨核球、肥満細胞、好塩基球、好中球、好酸球、単球、およびマクロファージが挙げられる。リンパ腫および白血病は、患者中のこれらの細胞タイプのうちの1つまたは複数を冒し得る。
【0131】
一般に、リンパ腫は少なくとも2つのサブグループへ分けられ得る:ホジキンリンパ腫
および非ホジキンリンパ腫。非ホジキンリンパ腫(NHL)は、Bリンパ球、Tリンパ球または
ナチュラルキラー細胞に由来するがんの異種混合群である。米国において、B細胞リンパ
腫は報告された症例の80~85%を占める。2013年、およそ69,740のNHLの新しい症例およびこの疾患に関連する19,000を超える死が生じたと推定された。非ホジキンリンパ腫は、最も一般的な血液悪性腫瘍であり、男女間で第7位の新たながんの部位であり、全ての新し
いがん症例の4%およびがん関連死の3%を占める。
【0132】
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、NHL症例のおよそ30%を占める、NHLの最も
一般的なサブタイプである。毎年、米国においておよそ22,000のDLBCLの新たな診断があ
る。それはアグレッシブリンパ腫と分類され、患者の大多数は従来の化学療法で治療される(NCCNガイドライン NHL 2014)。
【0133】
DLBCLについての第一選択療法は、典型的に、リツキシマブを含むアントラサイクリン
含有レジメン、例えば、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、
ビンクリスチン、およびプレドニゾン)を含み、これは、約80%の客観的奏効率および約50%の完全奏効率を有し(Coiffier 2002)、患者の約3分の1は、一次療法に対する不応性疾患を有するかまたはR-CHOP後に再発する(Sehn 2005)。第一選択療法に対する応答の後に再
発する患者について、患者のおよそ40~60%は、追加の化学療法で二次応答を達成し得る
。自己幹細胞移植(ASCT)適格患者のための第二選択療法についての標準治療は、リツキシマブおよび併用化学療法、例えば、R-ICE(リツキシマブ、イホスファミド、カルボプラチン、およびエトポシド)ならびにR-DHAP(リツキシマブ、デキサメタゾン、シタラビン、およびシスプラチン)を含み、これらは、各々、約63%の客観的奏効率および約26%の完全奏
効率を有する(Gisselbrecht 2010)。第二選択療法に応答し、移植について十分に適合と
考えられる患者は、高用量化学療法およびASCTでの地固め療法を受け、これは移植された患者の約半分において治癒的である(Gisselbrecht 2010)。ASCTに失敗した患者は、非常
に予後が悪く、治癒的オプションを有さない。
【0134】
縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は、DLBCLと比較して異なる臨床的、病理学的
、および分子的特徴を有する。PMBCLは、胸腺(髄質)B細胞から生じると考えられており、DLBCLと診断された患者のおよそ3%を占める。PMBCLは、典型的に、30歳代の若い成人集団において確認され、僅かに女性優位である。遺伝子発現プロファイリングは、PMBCLにお
ける無秩序な経路はホジキンリンパ腫と重複していることを示唆している。PMBCLの一次
療法は、一般に、領域照射療法有りまたは無しで、リツキシマブを含むアントラサイクリン含有レジメン、例えば、注入用量が調節されたエトポシド、ドキソルビシン、およびシクロホスファミド、ならびにビンクリスチン、プレドニゾン、およびリツキシマブ(DA-EPOCH-R)を含む。
【0135】
B細胞リンパ腫である濾胞性リンパ腫(FL)は、NHLの最も一般的なインドレント(成長が
遅い)形態であり、全てのNHLのおよそ20%~30%を占める。FLを有する一部の患者は、組織学的にDLBCLへ形質転換し(TFL)、これは、よりアグレッシブであり、転帰不良を伴う。DLBCLへの組織学的形質転換は、15年間におよそ3%の年率で生じ、形質転換のリスクはその
後の年で低下し続ける。組織学的形質転換の生物学的な機構は不明である。TFLの一次治
療は、濾胞性リンパ腫についての以前の療法によって影響されるが、一般に、この疾患のアグレッシブコンポーネントを排除するための、リツキシマブを含むアントラサイクリン含有レジメンを含む。
【0136】
再発性/不応性PMBCLおよびTFLについての治療オプションは、DLBCLにおけるものと同様である。これらの疾患の低罹患率を考慮すると、これらの患者集団における大規模な前向き無作為研究は行われていない。化学療法不応性疾患を有する患者は、不応性DLBCLでの
それと同様のまたはより悪い予後を有する。
【0137】
要約すれば、不応性のアグレッシブNHL(例えば、DLBCL、PMBCLおよびTFL)を有する対象は、大きな満たされない医学的必要性を有し、新規の治療でのさらなる研究がこれらの集団において必要とされている。
【0138】
従って、いくつかの態様において、方法はリンパ腫または白血病を治療するために使用することができ、ここで、リンパ腫または白血病はB細胞悪性腫瘍である。B細胞悪性腫瘍の例としては、非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL/CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、FL、辺縁帯リンパ腫(MZL)、節外性(MALTリンパ腫)、節性(単球様B細胞リンパ腫)、脾性、びまん性大細胞型リンパ腫、B細胞慢性リンパ性白血病/リンパ腫、バ
ーキットリンパ腫、およびリンパ芽球性リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、リンパ腫または白血病は、B細胞慢性リンパ性白血病/小細胞型リンパ腫、B細胞性前リンパ性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えば、ワルデンストレームマクログロブリン血症)、脾性辺縁帯リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、形質細胞
腫瘍(例えば、形質細胞骨髄腫(即ち、多発性骨髄腫)、または形質細胞腫)、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫(例えば、MALTリンパ腫)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換した濾胞性リンパ腫(TFL)、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、マントル細胞リン
パ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、エプスタイン-バーウイルス陽性DLBCL、リンパ腫様肉芽腫症、縦隔(胸腺)原発大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)、血管内大細胞型B
細胞リンパ腫、ALK+大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、原発性滲出液リンパ
腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に生じる大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリ
ンパ腫/白血病、T細胞性前リンパ性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、アグレッシ
ブNK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、腸症関連T細胞
リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、皮膚原発未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、Bリンパ芽球性白血病/リンパ腫、再発性遺伝的異常を伴うBリンパ芽球性白血病/リンパ腫、Tリンパ芽球性白血病/リンパ腫、およびホジキンリンパ腫より選択される。いくつかの態様において、がんは1つまたは複数の先行治療
に不応性であり、かつ/または、1つまたは複数の先行治療後に再発したがんである。
【0139】
ある態様において、がんは、濾胞性リンパ腫、形質転換した濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、および縦隔(胸腺)原発大細胞型B細胞リンパ腫より選択される。一つの特定の態様において、がんは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0140】
いくつかの態様において、がんは、化学療法、放射線療法、免疫療法(T細胞療法および/または抗体もしくは抗体-薬物コンジュゲートでの治療を含む)、自己幹細胞移植、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数に不応性であるか、またはこれらの
うちの1つまたは複数に続いて再発したがんである。一つの特定の態様において、がんは
、不応性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0141】
いくつかの態様において、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させた1つまたは複数のT細胞を、対象へ投与することによって、がん
を治療する。ある態様において、1つまたは複数のT細胞を、1つまたは複数のT細胞を対象へ投与する前に洗浄し、AKTインヒビター、外因性IL-7、および/または外因性IL-15を除去する。いくつかの態様において、1つまたは複数のT細胞は、改変CAR細胞または改変TCR細胞を含む。一態様において、改変CAR細胞または改変T細胞は対象中の腫瘍を治療する。
【0142】
キット
インビトロで1つまたは複数のT細胞と接触させるためのAKTインヒビターと外因性IL-7
および外因性IL-15のうちの1つまたは複数とを含むキット、例えば、薬学的キットが、本
発明の範囲内にさらに含まれる。キットは、典型的に、キットの内容物の意図される使用を表示するラベルおよび使用説明書を含む。用語「ラベル」は、キット上にもしくはキットと共に提供されるか、または他の方法でキットに付随する、任意の記述または記録された材料を含む。
【0143】
いくつかの態様において、本発明は、T細胞療法の必要がある対象についてのT細胞療法用の1つまたは複数のT細胞を調製するためのキットを提供し、キットは以下を含む:
(i)AKTインヒビター、
(ii)外因性IL-7、および
(iii)T細胞療法における使用に意図される1つまたは複数のT細胞をAKTインヒビターお
よび外因性IL-7と接触させるための説明書。
【0144】
他の態様において、本発明は、T細胞療法の必要がある対象についてのT細胞療法用の1
つまたは複数のT細胞を調製するためのキットを提供し、キットは以下を含む:
(i)AKTインヒビター、
(ii)外因性IL-15、および
(iii)T細胞療法における使用に意図される1つまたは複数のT細胞をAKTインヒビターお
よび外因性IL-15と接触させるための説明書。
【0145】
他の態様において、本発明は、T細胞療法の必要がある対象についてのT細胞療法用の1
つまたは複数のT細胞を調製するためのキットを提供し、キットは以下を含む:
(i)AKTインヒビター、
(ii)外因性IL-7、
(iii)外因性IL-15、および
(iii)T細胞療法における使用に意図される1つまたは複数のT細胞をAKTインヒビター、
外因性IL-7、および/または外因性IL-15と接触させるための説明書。
【0146】
さらなる限定として解釈されるべきでない以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。本出願の全体にわたって引用される全ての参考文献の内容は、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
【0147】
以下の実施例は、本発明の様々な態様を説明するように意図される。従って、議論される具体的な態様は、本発明の範囲に対する限定と解釈されない。例えば、下記の実施例は抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)を形質導入されたT細胞に関するが、当業者は、本明細書に記載される方法は任意のCARを形質導入されたT細胞へ適用され得ることを理解するだろう。様々な等価物、変更物、および改変物が、発明の範囲から逸脱することなく作られ得ることが、当業者に明らかであり、そのような等価な態様は本明細書に含まれることが理解される。さらに、本開示において引用される全ての参考文献は、あたかも完全に本明細書に記載されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0148】
態様
E1.T細胞療法のためにインビトロでT細胞の成熟または分化を遅らせるまたは阻害するための方法であって、T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が遅延した成熟または分化を示し、かつ/または、ここで、結果として生じるT細胞が、AKTインヒビターの非存在下で培養されたT細胞のT細胞機能と比べて改善されたT細胞機能を
示す、方法。
【0149】
E2.T細胞療法のためにインビトロでT細胞機能を改善するための方法であって、T細胞
療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性イン
ターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つ
とに接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が、AKTインヒビターの非存在下で培養されたT細胞のT細胞機能と比べて改善されたT細胞機能を示す、方法。
【0150】
E3.改善されたT細胞機能が、
(i)増加したT細胞増殖;
(ii)増加したサイトカイン産生;
(iii)増加した細胞溶解活性;および
(iv)(i)~(iii)の任意の組み合わせ
からなる群より選択される、E1またはE2の方法。
【0151】
E4.T細胞療法の前にインビトロでT細胞増殖を増加させるための方法であって、T細胞
療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性イン
ターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つ
とに接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が、AKTインヒビターの非存在下で培養されたT細胞のT細胞増殖と比べて増加したT細胞増殖を示す、方法。
【0152】
E5.T細胞療法の前にインビトロでT細胞サイトカイン産生を増加させるための方法であって、T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が、AKTインヒビ
ターの非存在下で培養されたT細胞のサイトカイン産生と比べて増加したサイトカイン産
生を示す、方法。
【0153】
E6.増加したサイトカイン産生が、(i)増加したインターフェロンガンマ(IFNg)産生、(ii)増加した組織壊死因子アルファ(TNFa)産生、ならびに(iii)増加したIFNgおよびTNFa産生の両方からなる群より選択される、E3またはE5の方法。
【0154】
E7.T細胞療法のためにインビトロでT細胞細胞溶解活性を増加させるための方法であって、T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が、AKTインヒビタ
ーの非存在下で培養されたT細胞のT細胞細胞溶解活性と比べて増加した細胞溶解活性を示す、方法。
【0155】
E8.T細胞療法のためにインビトロでT細胞の成熟または分化を遅らせるまたは阻害するための方法であって、T細胞療法の必要がある対象由来の1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性インターロイキン-7(IL-7)および外因性インターロイキン-15(IL-15)のうちの少なくとも1つとに接触させる工程を含み、ここで、結果として生じるT細胞が遅延した成熟または分化を示す、方法。
【0156】
E9.接触工程が、(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15を含む培地中において1つまたは複数のT細胞を培養する工程を含む、E1~E8のいずれ
かの方法。
【0157】
E10.1つまたは複数のT細胞を外因性インターロイキン-2(IL-2)と接触させない、E1~E9のいずれかの方法。
【0158】
E11.T細胞を洗浄し、AKTインヒビター、外因性IL-7、および/または外因性IL-15を除
去する、E1~E10のいずれかの方法。
【0159】
E12.AKTインヒビターが、A6730、B2311、124018、GSK2110183 (アフレセルチブ)、ペ
リホシン (KRX-0401)、GDC-0068 (イパタセルチブ)、RX-0201、VQD-002、LY294002、A-443654、A-674563、Akti-1、Akti-2、Akti-1/2、AR-42、API-59CJ-OMe、ATI-13148、AZD-5363、エルシルホスホコリン、GSK-2141795 (GSK795)、KP372-1、L-418、NL-71-101、PBI-05204、PIA5、PX-316、SR13668、トリシリビン、GSK 690693 (CAS # 937174-76-0)、FPA 124 (CAS # 902779-59-3)、ミルテホシン、PHT-427 (CAS # 1 191951-57-1)、10-DEBC塩酸塩、AktインヒビターIII、AktインヒビターVIII、MK-2206二塩酸塩(CAS # 1032350-13-2)、SC79、AT7867 (CAS # 857531 -00-1)、CCT128930 (CAS # 885499-61-6)、A-674563 (CAS # 552325-73-2)、AGL 2263、AS-041 164 (5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルメチレン-チアゾリジン-2,4-ジオン)、BML-257 (CAS # 32387-96-5)、XL-418、CAS # 612847-09-3、CAS # 98510-80-6、H-89 (CAS # 127243-85-0)、OXY-1 1 1 A、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、E1~E11のいずれかの方法。
【0160】
E13.AKTインヒビターが、(i) 3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリ
ン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オン;(ii) N,N-ジメチル-1-[4-(6-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-7-イル)フェニル]メ
タ-ナミン;または(iii) 1-{1-[4-(3-フェニルベンゾ[g]キノキサリン-2-イル)ベンジル]ピペリジン-4-イル}-1,-3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オンからなる群より選択
される化合物を含む、E1~E12のいずれかの方法。
【0161】
E14.AKTインヒビターが、(i) 3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリ
ン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オン;(ii) N,N-ジメチル-1-[4-(6-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-7-イル)フェニル]メ
タ-ナミン;または(iii) 1-{1-[4-(3-フェニルベンゾ[g]キノキサリン-2-イル)ベンジル]ピペリジン-4-イル}-1,-3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オンからなる群より選択
される化合物である、E1~E13のいずれかの方法。
【0162】
E15.AKTインヒビターが、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オンである、E1~E14のいずれかの方法。
【0163】
E16.AKTインヒビターが約1 nM~約1 mMの量である、E15の方法。
【0164】
E17.AKTインヒビターが、少なくとも約1 nM、少なくとも約10 nM、少なくとも約50 nM、少なくとも約100 nM、少なくとも約200 nM、少なくとも約300 nM、少なくとも約400 nM、少なくとも約500 nM、少なくとも約1μM、少なくとも約2μM、少なくとも約3μM、少なくとも約4μM、少なくとも約5μM、少なくとも約6μM、少なくとも約7μM、少なくとも約8μM、少なくとも約9μM、少なくとも約10μM、少なくとも約11μM、少なくとも約12μM
、少なくとも約13μM、少なくとも約14μM、少なくとも約15μM、少なくとも約16μM、少なくとも約17μM、少なくとも約18μM、少なくとも約19μM、少なくとも約20μM、少なくとも約25μM、少なくとも約30μM、少なくとも約35μM、少なくとも約40μM、少なくとも約45μM、少なくとも約50μM、少なくとも約60μM、少なくとも約70μM、少なくとも約80μM、少なくとも約90μM、少なくとも約100μM、少なくとも約200μM、少なくとも約300
μM、少なくとも約400μM、少なくとも約500μM、または少なくとも約1 mMからなる群よ
り選択される量である、E15の方法。
【0165】
E18.AKTインヒビターが約8μMの量である、E15の方法。
【0166】
E19.外因性IL-7が約0.001~約500 ng/ml IL-7の量である、E1~E18のいずれかの方法
。
【0167】
E20.外因性IL-7が約1~約10 ng/ml IL-7の量である、E1~E18のいずれかの方法。
【0168】
E21.外因性IL-7が少なくとも約5 ng/ml IL-7の量である、E1~E18のいずれかの方法。
【0169】
E22.外因性IL-15が約0.001~約500 ng/ml IL-15の量である、E1~E21のいずれかの方
法。
【0170】
E23.外因性IL-15が約1~約10 ng/ml IL-15の量である、E1~E21のいずれかの方法。
【0171】
E24.外因性IL-15が少なくとも約5 ng/ml IL-15の量である、E1~E21のいずれかの方法。
【0172】
E25.1つまたは複数のT細胞がCD8を発現する、E1~E24のいずれかの方法。
【0173】
E26.1つまたは複数のT細胞が、腫瘍浸潤リンパ球、細胞傷害性T細胞、CAR T細胞、改
変TCR T細胞、ナチュラルキラーT細胞、および末梢血リンパ球からなる群より選択される、E25の方法。
【0174】
E27.1つまたは複数のT細胞を、抗がん治療の必要がある対象から採取する、E1~E26のいずれかの方法。
【0175】
E28.1つまたは複数のT細胞を、抗がん治療の必要がある対象中の腫瘍から採取する、E27の方法。
【0176】
E29.1つまたは複数のT細胞が、1つまたは複数の腫瘍浸潤白血球(TIL)を含む、E20またはE28の方法。
【0177】
E30.T細胞を活性化させる、E1~E29のいずれかの方法。
【0178】
E31.T細胞の活性化を閉鎖系中において行う、E30の方法。
【0179】
E32.閉鎖系が閉鎖バッグ系を含む、E31の方法。
【0180】
E33.T細胞を増殖させる、E1~E32のいずれかの方法。
【0181】
E34.T細胞をインビトロで増殖させる、E32の方法。
【0182】
E35.T細胞をインビボで増殖させる、E32の方法。
【0183】
E36.1つまたは複数のT細胞をAKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させることが、T細胞のインビボでの持続を延長する、E1~E35のいずれか
の方法。
【0184】
E37.1つまたは複数のT細胞を、AKTインヒビターと、外因性IL-7および外因性IL-15の
うちの少なくとも1つとに接触させることに続いて、結果として生じるT細胞が、未分化ま
たは未熟T細胞の指標となる1つまたは複数の遺伝子を発現する、E1~E36のいずれかの方
法。
【0185】
E38.未分化または未熟T細胞の指標となる1つまたは複数の遺伝子が、CD8、CD45RA、CCR7、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、E37の方法。
【0186】
E39.T細胞をレトロウイルスで形質導入する工程をさらに含む、E1~E38のいずれかの
方法。
【0187】
E40.レトロウイルスが、細胞表面受容体をコードする異種遺伝子を含む、E39の方法。
【0188】
E41.細胞表面受容体が、標的細胞の表面上の抗原に結合することができる、E40の方法。
【0189】
E42.標的細胞が腫瘍細胞である、E41の方法。
【0190】
E43.細胞表面受容体が、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)である、E41
またはE42の方法。
【0191】
E44.細胞表面受容体が、707-AP(707アラニンプロリン)、AFP(アルファ(a)-フェトプロテイン)、ART-4(T4細胞により認識される腺癌抗原)、BAGE(B抗原; b-カテニン/m、b-カテニン/変異型)、BCMA(B細胞成熟抗原)、Bcr-abl(ブレイクポイントクラスター領域-Abelson)、CAIX(カルボニックアンヒドラーゼIX)、CD19(分化クラスター19)、CD20(分化クラス
ター20)、CD22(分化クラスター22)、CD30(分化クラスター30)、CD33(分化クラスター33)
、CD44v7/8(分化クラスター44, エクソン7/8)、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CAP-1(癌胎児抗原ペプチド-1)、CASP-8(カスパーゼ-8)、CDC27m(細胞分裂周期27変異型)、CDK4/m(サイクリン依存性キナーゼ4変異型)、CEA(癌胎児抗原)、CT(癌/精巣(抗原))、Cyp-B(サイクロフィリンB)、DAM(分化抗原メラノーマ)、EGFR(上皮成長因子受容体)、EGFRvIII(上皮成長因子受容体, バリアントIII)、EGP-2(上皮糖タンパク質2)、EGP-40(上皮糖タンパク質40)、Erbb2, 3, 4(赤芽球性白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ-2, -3, 4)、ELF2M(伸長因子2変異型)、ETV6-AML1(Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS)、FBP(葉酸結合タンパク質)、fAchR(胎児アセチルコリン受容体)、G250(糖タンパク質250)、GAGE(G抗原)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、GD3(ジシアロガングリオシド3)、GnT-V(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、Gp100(糖タンパク質100kD)、HAGE(ヘリコーゼ抗原)、HER-2/neu(ヒト表皮受容体-2/神経学的;EGFR2としても公知)、HLA-A(ヒト白血球抗原-A) HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)、HSP70-2M(熱ショックタンパク質70 - 2変異
型)、HST-2(ヒト印環腫瘍-2)、hTERTまたはhTRT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、iCE(腸
カルボキシルエステラーゼ)、IL-13R-a2(インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2)、KIAA0205、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)、κ-軽鎖、LAGE(L抗原)、LDLR/FUT(低密度脂質受容体/GDP-L-フコース:b-D-ガラクトシダーゼ2-a-Lフコシルトランスフェラーゼ)、LeY(ルイスY抗体)、L1CAM(L1細胞接着分子)、MAGE(メラノーマ抗原)、MAGE-A1(メラノーマ関連抗原1)、メソテリン、マウスCMV感染細胞、MART-1/Melan-A(T細胞により認
識されるメラノーマ抗原-1/メラノーマ抗原A)、MC1R(メラノコルチン1受容体)、Myosin/m(ミオシン変異型)、MUC1(ムチン1)、MUM-1, -2, -3(メラノーマユビキタス変異型1, 2, 3)、NA88-A(患者M88のNA cDNAクローン)、NKG2D(ナチュラルキラーグループ2, メンバーD)リガンド、NY-BR-1(ニューヨーク乳房分化抗原1)、NY-ESO-1(ニューヨーク食道扁平上皮
癌-1)、腫瘍胎児抗原(h5T4)、P15(タンパク質15)、p190 minor bcr-abl(190KD bcr-ablのタンパク質)、Pml/RARa(前骨髄球性白血病/レチノイン酸受容体a)、PRAME(メラノーマの
優先的に発現される抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSMA(前立
腺特異的膜抗原)、RAGE(腎臓抗原)、RU1またはRU2(腎臓ユビキタス1または2)、SAGE(肉腫
抗原)、SART-1またはSART-3(腫瘍拒絶扁平上皮抗原1または3)、SSX1, -2, -3, 4(滑膜肉
腫X1, -2, -3, -4)、TAA(腫瘍関連抗原)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TEL/AML1(
転座Ets-ファミリー白血病/急性骨髄性白血病1)、TPI/m(トリオースホスフェートイソメ
ラーゼ変異型)、TRP-1(チロシナーゼ関連タンパク質1、またはgp75)、TRP-2(チロシナー
ゼ関連タンパク質2)、TRP-2/INT2(TRP-2/イントロン2)、VEGF-R2(血管内皮成長因子受容
体2)、WT1(ウィルムス腫瘍遺伝子)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選
択される抗原に結合することができる、E41~E43のいずれかの方法。
【0192】
E45.結果として生じるT細胞をその必要がある対象へ投与する工程をさらに含む、E1~E44のいずれかの方法。
【0193】
E46.(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させた1つまたは複数のT細胞を、対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要がある対象
中の腫瘍を治療する方法。
【0194】
E47.(i)AKTインヒビターならびに(ii)外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させた1つまたは複数のT細胞を、対象へ投与する工程を含む、T細胞療法の必要がある対象
中の腫瘍のサイズを低減もしくは減少させるかまたは腫瘍の成長を阻害する方法。
【0195】
E48.1つまたは複数のT細胞が外因性IL-2と接触させられたことがない、E46またはE47
の方法。
【0196】
E49.T細胞が、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、CCR7およびCD45ROを発現する、E46~E48のいずれかの方法。
【0197】
E50.T細胞が、AKTインヒビターと、外因性IL-7、外因性IL-15または両方との接触に続いて、CCR7およびCD45RAを発現する、E46~E48のいずれかの方法。
【0198】
E51.T細胞が、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられなかったT細胞によるCCR7、CD45ROおよびCD45RAの発現と比較して、CCR7、CD45RO、CD45RAまたはそれらの任意の組み合わせの増加した発現を示す、E46~E48のいずれかの方
法。
【0199】
E52.T細胞が、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、CD62L、CD28または両方を発現する、E46~E51のいずれかの方法。
【0200】
E53.T細胞が、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15との接触に続いて、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられなかったT細胞によるCD62LおよびCD28の発現と比較して、CD62L、CD28または両方の
増加した発現を示す、E46~E52のいずれかの方法。
【0201】
E54.T細胞が、AKTインヒビターと、外因性IL-7、外因性IL-15または両方との接触に続いて、AKTインヒビターならびに外因性IL-7および/または外因性IL-15と接触させられなかったT細胞によるCD95、IL-7受容体アルファ(IL-7Rα)、CXCR4、TCF7、FOXO1、ID3、BCL6、CD62LおよびCD45RAの発現と比較して、CD95、IL-7受容体アルファ(IL-7Rα)、CXCR4、TCF7、FOXO1、ID3、BCL6、CD62L、CD45RAまたはそれらの任意の組み合わせの増加した発
現を示す、E46~E53のいずれかの方法。
【0202】
E55.1つまたは複数のT細胞をドナーから単離する、E46~E54のいずれかの方法。
【0203】
E56.ドナーが対象である、E55の方法。
【0204】
E57.腫瘍ががんである、E46~E56のいずれかの方法。
【0205】
E58.がんが、骨がん、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮
癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、ファローピウス管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、縦隔原発大細胞
型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)
、形質転換した濾胞性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性または急性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小児期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎軸腫瘍、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T
細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発がん、他のB細胞悪性
腫瘍、およびそれらの任意の組み合わせより選択される、E57の方法。
【0206】
E59.T細胞療法が、改変CAR細胞療法または改変TCR細胞療法を含む、E1~E58のいずれ
かの方法。
【0207】
E60.改変CAR細胞または改変TCR細胞療法が、対象中の腫瘍を治療する、E59の方法。
【実施例0208】
実施例1
ドナーT細胞を、等しい平板培養濃度で10日間、IL-2、IL-7、IL-15、および/またはAKTインヒビターの存在下で培養した。培養されたT細胞のT細胞表現型を、(i)IL-7およびIL-15と比較してのIL-2単独中において7および14日間培養された、ならびに(ii)IL-7、IL-15、およびAKTインヒビターと比較してのIL-7およびIL-15中において培養された、CD4
+ T
細胞およびCD8
+ T細胞について決定した(
図1A~
図1F)。細胞をIL-7およびIL-15の存在下
で増殖させた場合に、より幼若なT細胞への傾向が観察された。特に、有意により高い(p = 0.03, n = 6)パーセントのナイーブおよびTcm細胞 CD4
+が、IL-2処理細胞と比較してIL-7/IL-15処理細胞において観察されたが(
図1A)、より成熟したエフェクターT細胞のパー
セントにおいて差は観察されなかった(
図1B)。この効果は、CD4
+コンパートメント中において長期培養後に維持されなかった(データを示す(data now shown))。同様の効果がCD8
+コンパートメント中において観察され、IL-2処理細胞培養と比較してIL-7/IL-15処理細胞培養において、有意により高い(p = 0.03, n = 6)パーセントのナイーブおよびTcm細胞(
図1C)ならびに有意により低い(p = 0.03, n = 6)パーセントのエフェクターT細胞(
図1D)を伴った。しかしながら、CD4
+コンパートメント中とは異なり、この効果はCD8
+コンパートメント中において長期培養後に観察された(
図1E, p = 0.03, n = 6;および
図1F, p = 0.03, n = 6)。
【0209】
CD4
+およびCD8
+コンパートメントの両方において、AKTインヒビターの添加は、より未
熟なT細胞への傾向をさらに増加させた。7日目に、僅かにより高いパーセントのナイーブおよびTcm CD4
+細胞が、IL-7/IL-15処理細胞と比較してIL-7/IL-15/AKTi処理細胞におい
て観察され(
図2A)、僅かにより低いパーセントのエフェクターT細胞が、IL-7/IL-15処理
細胞と比較してIL-7/IL-15/AKTi処理細胞において観察された(
図2B)。有意差は14日間培
養された細胞において観察されなかった(データを示さず)。しかしながら、CD8
+コンパートメントにおいて7日目に有意差が観察された。特に、7日目に、ナイーブおよびTcm CD4
+細胞のパーセントは、IL-7/IL-15処理細胞と比較してIL-7/IL-15/AKTi処理細胞において
有意により高く(p = 0.03, n = 6)(
図2C)、エフェクターT細胞のパーセントは、IL-7/IL-15処理細胞と比較してIL-7/IL-15/AKTi処理細胞において有意により低かった(p = 0.03, n = 6)(
図2D)。しかしながら、この効果は14日目には観察されなかった(データを示さず)。
【0210】
T細胞をIL-2、IL-7、および/またはIL-15ならびにAKTインヒビターのうちの1つまたは複数と接触させることが形質導入効率に対する効果を有するかどうかを決定するために、3名のドナーから採取されたT細胞を、刺激の2日後に、OriGen PERMALIFE(商標)PL30バ
ッグ中において、クラスI TCRを保有するレトロウイルスで形質導入した。形質導入され
た細胞を、次いで、10日間、(i) IL-2;(ii) IL-2およびAKTインヒビター;(iii) IL-7およびIL-15;ならびに(iv) IL-7、IL-15、およびAKTインヒビターの存在下で培養した。次いで、T細胞を、首尾よい形質導入の指標であるCD3発現および陽性可溶性MHC-四量体染色(Tet
+)について分析した。培養条件による形質導入効率における大きな差は観察されず(
図3A)、培養条件にわたって四量体平均蛍光強度(MFI)において有意差は観察されなかった(
図3B)。
【0211】
実施例2
細胞増殖に対するAKTiインヒビターの効果を様々な条件下で調べた。先ず、ドナー細胞の様々な供給源に対するAKTi培養条件の効果を以下のように評価した。4名の健康なドナ
ーからのアフェレーシスプロダクトを、高密度遠心分離を使用して処理し、末梢血単核細胞(PBMC)を得た(
図4A~4D)。4名のドナーからの細胞をカウントし、OKT3(CD3に対するモ
ノクローナル抗体)を使用して刺激し、そして7~10日間、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正
方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下
で培養した(
図4A~4D)。細胞増殖を各培養条件下での各ドナー細胞株について観察したところ、AKTiは細胞増殖に対してマイナスの影響を有さなかった(
図4A~4D)。
【0212】
次に、クラスI TCRを形質導入された(HPV-E6)PBMCを評価した。3名の健康なドナーからのアフェレーシスプロダクトを、再び高密度遠心分離を使用して処理してPBMCを得、カウントし、そしてOKT3を使用して刺激した。次いで、3名のドナーからの細胞を、IL-2(円)
;IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養した(
図5A~5C)。2日目に、細胞にクラスI TCR(HPV-E6)を形質導入した。細胞増殖を各培養条件下での各ドナー細胞株について観察したところ、AKTiは細胞増殖に対してマイナスの影響を有さなかった(
図5A~5C)。
【0213】
次に、CD4
+/CD8
+ T細胞に対するAKTi培養条件の効果を評価した。3名の健康なドナーからのアフェレーシスプロダクトを、再び高密度遠心分離を使用して処理し、PBMCを得た。次いで、PBMCを抗CD4および抗CD8 Abビーズと共に培養し、CD4
+およびCD8
+細胞を、CLINIMACS(登録商標)システム(Miltenyi Biotec)を使用して選択した。3名のドナーからのCD4
+およびCD8
+細胞をカウントし、OKT3および抗CD28 Abを使用して刺激した。次いで、細
胞を、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);またはIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養した(
図6A~6C)。2日目に、細胞にクラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入した。細胞増殖を各培養条件下での各ドナー細胞株について観察したところ、AKTiは細胞増殖に対してマイナスの影響を有さなかった(
図6A~6C)。
【0214】
次いで、CD4+およびCD+ T細胞を別々に評価した。3名の健康なドナーからのアフェレーシスプロダクトを、再び高密度遠心分離を使用して処理し、PBMCを得た。次いで、PBMCを抗CD4ビーズ(
図7A~7C)または抗CD8ビーズ(
図8A~8C)のいずれかと共に培養し、標的細胞を、CLINIMACS(登録商標)システム(Miltenyi Biotec)を使用して選択した。次いで、3
名のドナーからの細胞をカウントし、そしてOKT3および抗CD28 Abを使用して刺激した。
次いで、細胞を、IL-2(円);IL-2およびAKTi(正方形);IL-7およびIL-15(三角形);また
はIL-7、IL-15、およびAKTi(逆三角形)の存在下で培養した。2日目に、細胞にクラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入した。細胞増殖を各培養条件下での各ドナー細胞株からのCD4
+(
図7A~7C)およびCD8
+(
図8A~8C)細胞について観察したところ、AKTiは細胞増殖に対してマ
イナスの影響を有さなかった。
【0215】
次いで、大製造規模培養中の培養条件の効果を評価した。4名の健康なドナーからのア
フェレーシスプロダクトを、再び高密度遠心分離を使用して処理し、末梢血単核細胞PBMCを得た(
図9A~9D)。次いで、PBMCを抗CD4および抗CD8ビーズと共に培養し、CD4
+/CD8
+細
胞を、CLINIMACS(登録商標)システムを使用して選択した。CD4
+/CD8
+細胞をカウントし、そしてOKT3および抗CD28を使用して刺激した。次いで、細胞を、IL-7およびIL-15(
図9A:円;
図9B~9C:正方形)またはIL-7、IL-15、およびAKTi(
図9A:正方形;
図9B~9C:円)の存在下で、8日間、XURI(商標)Cell Expansion System (GE Healthcare Life Sciences)中において大製造規模で培養した。培養の2日目に、細胞にクラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入した。細胞増殖を各培養条件下での各ドナー細胞株について観察したところ、AKTiは細胞増殖に対してマイナスの影響を有さなかった(
図9A~9D)。
【0216】
実施例3
AKTiの存在下での培養に続いてのT細胞の形質導入効率に対する効果を調べた。以前に
凍結されたドナーT細胞を刺激し、次いで、IL-2、IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;またはIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で10日間培養した。細胞に、T-75組織培養フラス
コ中においてクラスI TCR(HPV-E6)を(
図10)、またはOriGen PERMALIFE(商標)バッグ中
においてクラスII TCR(MAGE-A3)を(
図11A~11F)、刺激後2日目に形質導入した。T細胞形
質導入効率を10日目に抗mTCRb抗体染色によって測定した(
図10および11A~11F)。抗mTCRb染色MFIは、IL-7およびIL-15のみと比べて、IL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で培養さ
れた細胞について僅かにより大きな全体的な強度を示すが(
図11Cおよび11F)、AKTiは形質導入効率に対してマイナスの影響を有さなかった(
図10、11A、11B、11D、および11E)。
【0217】
同様の結果が、製造規模で培養されたT細胞について観察された(
図12)。4つの製造規模実行(21、22、および23)からの以前に凍結されたドナーT細胞を、IL-7およびIL-15またはIL-7、IL-15およびAKTiの存在下で、OriGen PERMALIFE(商標)バッグ中において培養し
た。刺激後2日目に、細胞にクラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入した。次いで、細胞をXURI(商標)Bioreactor Cell Expansion System中において増殖させた。T細胞形質導入効率
を抗mTCRb(mC TCR PE)抗体染色によって8日目に決定した。各実行についての各培養条件
についての形質導入されたTCRを発現するCD3
+細胞のパーセントを示す(
図12)。大規模製
造条件下で、IL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で増殖された細胞は、IL-7およびIL-15のみにおいて培養された細胞よりも大きな形質導入効率を有する(
図12)。
【0218】
実施例4
分化状態に対する様々な培養条件の効果を決定するために、3名のドナーからのCD4
+/CD8
+ T細胞にクラスII TCR (MAGE-A3)を形質導入し、IL-2;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;ならびにIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で培養した。次いで、細胞を、分化の初期段階のマーカーであるCD62Lへ向けられた抗体で染色した。CD62L発現に陽性に染まる細胞のパーセントを、ドナー1、2、および3の各々についての各培養条件からの細胞につい
て決定した(それぞれ、
図13A、13B、および13C)。平均蛍光強度(MFI)は、AKTiの存在下で培養された細胞が、AKTiの非存在下で培養された細胞と比較して、陽性細胞の表面上により大きなレベルのCD62Lを有したことを示した(
図13D~13E)。
【0219】
実施例5
T細胞機能に対するAKTiの効果を決定するために、サイトカイン産生およびT細胞増殖を、様々な条件下での培養に続いて評価した。4つの製造規模実行(21、22、および23)から
のT細胞を、IL-2;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;ならびにIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で、OriGen PERMALIFE(商標)バッグ中において培養した。2日目に、T細胞に
クラスII TCR(MAGE-A3)を形質導入し、次いで、IL-7およびIL-15、またはIL-7、IL-15お
よびAKTiの存在下で、XURI(商標)Bioreactor Cell Expansion System中において増殖させた。T細胞を、5.5時間、PMA+イオノマイシン+ブレファルジンA(BrefaldinA)+モネン
シンで刺激した。細胞内フローサイトメトリーは、サイトカインIFNg(
図14A)およびTNFa(
図14B)の産生の産生増加によって証明されたように、AKTiの存在下で培養された細胞について増加したT細胞活性を示した。
【0220】
AKTiがT細胞活性を増加させることをさらに確認するために、2つの製造規模実行(21お
よび22)からのT細胞を上述のように培養し、陽性(H1299、HT1197、およびHT1367)ならび
に陰性(DU145、SK MEL 28、およびSK MEL 5)標的腫瘍細胞株と一晩共培養した。AKTiの存在下で培養された細胞は、試験された各培養条件下でより大きなIFNg産生を示し(
図15)、これは、AKTi培養細胞がAKTiの非存在下で培養された細胞よりも刺激に対する応答についてより大きな効力を有することを示している。
【0221】
同様の結果が、ドナーT細胞の小規模培養について観察された。ドナー1、ドナー2およ
びドナー3からの細胞を刺激し、IL-2;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;またはIL-7、IL-15、およびAKTiの存在下で培養し、そして、上述のように、刺激後2日目にクラスI TCRを形質導入した。T細胞を、腫瘍細胞株(Caski細胞;
図16A)と、または滴定された量のTCR特異的ペプチドがロードされたT2細胞(
図16B~16D)と、一晩共培養した。上記の大規模
製造実験において観察されたように、AKTiの存在下で培養された細胞は、AKTiの非存在下で培養された細胞よりも高いレベルのIFNgを産生した(
図16A~16D)。TCR特異的ペプチド
の滴定は、ほぼ全てのレベルで、AKTi培養条件がより大きなIFNg産生を誘発することを示した。
【0222】
AKTiの存在下での培養に続いて、T細胞増殖も増加することが分かった。ドナー1、ドナー2、およびドナー3からのT細胞に、上述のように、刺激後2日目にクラスII TCRを形質導入した。T細胞をCFSEで染色し、4日間、腫瘍細胞株(陽性対照)と共培養した。増加したT
細胞増殖が、AKTi無しで増殖された細胞と比較して(
図17Aおよび17C)、AKTiの存在下で増殖された細胞において観察された(
図17Bおよび17D)。
図17A~17Dはドナー3からの代表的
なデータを示し、ここで、AKTiの非存在下で培養された細胞(
図17Aおよび17C)についてよりも、IL-2およびAKTi(
図17B)ならびにIL-7、IL-15、およびAKTi(
図17D)において培養さ
れた細胞について、より大きなパーセンテージの細胞が、後期(L)または中期(M)増殖にあると特徴付けられる。
【0223】
増加したT細胞増殖は大規模製造培養条件下でも観察された。2つの大規模製造実行(21
および22)からのT細胞に、上述のように、刺激後2日目にクラスII TCRを形質導入した。T細胞をCFSEで染色し、4日間、陽性腫瘍細胞株または陰性細胞株と共培養した。増加したT細胞増殖が、実行21A/21B(
図18A)および22A/22B(
図18B)の各々について、AKTiの存在の下で増殖された細胞において観察された。
【0224】
実施例6
T細胞の細胞溶解活性に対するAKTiの効果を決定するために、ルシフェラーゼを発現す
る標的細胞を、16~96時間の範囲の期間にわたって、上述のように、様々な培養条件(IL-2単独;IL-2およびAKTi;IL-7およびIL-15;ならびにIL-7、IL-15、およびAKTi)下で増殖させたT細胞と共培養する。次いで、T細胞を、ルシフェラーゼを発現する標的細胞と共培養する。標的細胞生存能力をルシフェラーゼ強度によって測定し、ルシフェラーゼ強度の減少は、T細胞認識および標的特異的死滅を示す。従って、ルシフェラーゼレベルの低減
はT細胞の細胞傷害性の直接的指標である。AKTインヒビターの存在下で培養された細胞は
、AKTインヒビターの非存在下で培養された細胞よりも大きな細胞傷害性を有することが
予想される。
前記AKTインヒビターが、A6730、B2311、124018、アフレセルチブ、ペリホシン、イパタセルチブ、RX-0201、VQD-002、LY294002、A-443654、A-674563、Akti-1、Akti-2、Akti-1/2、AR-42、API-59CJ-OMe、ATI-13148、AZD-5363、エルシルホスホコリン、GSK-2141795、KP372-1、L-418、NL-71-101、PBI-05204、PIA5、PX-316、SR13668、トリシリビン、CAS # 937174-76-0、CAS # 902779-59-3、ミルテホシン、CAS # 1 191951-57-1、10-DEBC塩酸塩、AktインヒビターIII、AktインヒビターVIII、CAS # 1032350-13-2、SC79、CAS # 857531-00-1、CAS # 885499-61-6、CAS # 552325-73-2、AGL 2263、5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イルメチレン-チアゾリジン-2,4-ジオン、CAS # 32387-96-5、XL-418、CAS # 612847-09-3、CAS # 98510-80-6、CAS # 127243-85-0、OXY-111A、3-[1-[[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンゾイミダゾール-2-オン、N,N-ジメチル-1-[4-(6-フェニル-1H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-7-イル)フェニル]メタ-ナミン(metha-namine)、1-{1-[4-(3-フェニルベンゾ[g]キノキサリン-2-イル)ベンジル]ピペリジン-4-イル}-1,-3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オンおよびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
前記AKT阻害剤が3-[1-[4-(7-フェニル-3H-イミダゾ[4,5-g]キノキサリン-6-イル)フェニル]メチル]ピペリジン-4-イル]-1H-ベンズイミダゾール-2-オンである、請求項7に記載の方法。
前記T細胞が、腫瘍浸潤リンパ球、細胞傷害性T細胞、CAR T細胞、改変TCR T細胞、ナチュラルキラーT細胞、末梢血リンパ球、および腫瘍浸潤白血球からなる群より選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
前記TCRまたはCARが、707-AP(707アラニンプロリン)、AFP(アルファ(a)-フェトプロテイン)、ART-4(T4細胞により認識される腺癌抗原)、BAGE(B抗原;b-カテニン/m、b-カテニン/変異型)、BCMA(B細胞成熟抗原)、Bcr-abl(ブレイクポイントクラスター領域-Abelson)、CAIX(カルボニックアンヒドラーゼIX)、CD19(分化クラスター19)、CD20(分化クラスター20)、CD22(分化クラスター22)、CD30(分化クラスター30)、CD33(分化クラスター33)、CD44v7/8(分化クラスター44,エクソン7/8)、CAMEL(メラノーマ上のCTL認識抗原)、CAP-1(癌胎児抗原ペプチド-1)、CASP-8(カスパーゼ-8)、CDC27m(細胞分裂周期27変異型)、CDK4/m(サイクリン依存性キナーゼ4変異型)、CEA(癌胎児抗原)、CT(癌/精巣(抗原))、Cyp-B(サイクロフィリンB)、DAM(分化抗原メラノーマ)、EGFR(上皮成長因子受容体)、EGFRvIII(上皮成長因子受容体,バリアントIII)、EGP-2(上皮糖タンパク質2)、EGP-40(上皮糖タンパク質40)、Erbb2,3,4(赤芽球性白血病ウイルスがん遺伝子ホモログ-2,-3,4)、ELF2M(伸長因子2変異型)、ETV6-AML1(Etsバリアント遺伝子6/急性骨髄性白血病1遺伝子ETS)、FBP(葉酸結合タンパク質)、fAchR(胎児アセチルコリン受容体)、G250(糖タンパク質250)、GAGE(G抗原)、GD2(ジシアロガングリオシド2)、GD3(ジシアロガングリオシド3)、GnT-V(N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV)、Gp100(糖タンパク質100kD)、HAGE(ヘリコーゼ(helicose)抗原)、HER-2/neu(ヒト表皮受容体-2/神経学的;EGFR2としても公知)、HLA-A(ヒト白血球抗原-A)HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)、HSP70-2M(熱ショックタンパク質70- 2変異型)、HST-2(ヒト印環腫瘍-2)、hTERTまたはhTRT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、iCE(腸カルボキシルエステラーゼ)、IL-13R-a2(インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2)、KIAA0205、KDR(キナーゼ挿入ドメイン受容体)、κ-軽鎖、LAGE(L抗原)、LDLR/FUT(低密度脂質受容体/GDP-L-フコース:b-D-ガラクトシダーゼ2-a-Lフコシルトランスフェラーゼ)、LeY(ルイスY抗体)、L1CAM(L1細胞接着分子)、MAGE(メラノーマ抗原)、MAGE-A1(メラノーマ関連抗原1)、MAGE-A3、MAGE-A6、メソテリン、マウスCMV感染細胞、MART-1/Melan-A(T細胞により認識されるメラノーマ抗原-1/メラノーマ抗原A)、MC1R(メラノコルチン1受容体)、Myosin/m(ミオシン変異型)、MUC1(ムチン1)、MUM-1,-2,-3(メラノーマユビキタス変異型1,2,3)、NA88-A(患者M88のNA cDNAクローン)、NKG2D(ナチュラルキラーグループ2, メンバーD)リガンド、NY-BR-1(ニューヨーク乳房分化抗原1)、NY-ESO-1(ニューヨーク食道扁平上皮癌-1)、腫瘍胎児抗原(h5T4)、P15(タンパク質15)、p190 minor bcr-abl(190KD bcr-ablのタンパク質)、Pml/RARa(前骨髄球性白血病/レチノイン酸受容体a)、PRAME(メラノーマの優先的に発現される抗原)、PSA(前立腺特異抗原)、PSCA(前立腺幹細胞抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、RAGE(腎臓抗原)、RU1またはRU2(腎臓ユビキタス1または2)、SAGE(肉腫抗原)、SART-1またはSART-3(腫瘍拒絶扁平上皮抗原1または3)、SSX1,-2,-3,4(滑膜肉腫X1,-2,-3,-4)、TAA(腫瘍関連抗原)、TAG-72(腫瘍関連糖タンパク質72)、TEL/AML1(転座Etsファミリー白血病/急性骨髄性白血病1)、TPI/m(トリオースホスフェートイソメラーゼ変異型)、TRP-1(チロシナーゼ関連タンパク質1、またはgp75)、TRP-2(チロシナーゼ関連タンパク質2)、TRP-2/INT2(TRP-2/イントロン2)、VEGF-R2(血管内皮成長因子受容体2)、WT1(ウィルムス腫瘍遺伝子)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される抗原に結合することができる、請求項11に記載の方法。