(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024124244
(43)【公開日】2024-09-12
(54)【発明の名称】アンテナコイルの静電シールドおよびアンテナユニット
(51)【国際特許分類】
H01Q 19/02 20060101AFI20240905BHJP
H01Q 7/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
H01Q19/02
H01Q7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032256
(22)【出願日】2023-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】307011510
【氏名又は名称】株式会社熊平製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100163186
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 裕吉
(72)【発明者】
【氏名】太田 剛
(72)【発明者】
【氏名】有澤 翼
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020BA02
5J020BC10
5J020BD01
5J020BD04
(57)【要約】
【課題】アンテナコイルに対する静電干渉を防止するための静電シールドを提供する。
【解決手段】静電シールド10Aは、アンテナコイル20の開口面を覆うようにアンテナコイル20に取り付けられ、一端が開放された複数の線状導体11と、一端が複数の線状導体11のそれぞれの他端と接続された複数の抵抗体12と、複数の抵抗体12の他端とアンテナコイル20の一端とを接続するコイル接続線13とを備え、複数の線状導体11が、互いに交差せずにアンテナコイル20の巻線と交差するように配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルの開口面を覆うようにアンテナコイルに取り付けられる静電シールドであって、
一端が開放された複数の線状導体と、
一端が前記複数の線状導体のそれぞれの他端と接続された複数の抵抗体と、
前記複数の抵抗体の他端と前記アンテナコイルの一端とを接続するコイル接続線とを備え、
前記複数の線状導体が、互いに交差せずに前記アンテナコイルの巻線と交差するように配置されている
ことを特徴とする静電シールド。
【請求項2】
前記アンテナコイルは導線が渦巻き状に巻かれたアンテナコイルであり、
前記複数の抵抗体が前記アンテナコイルの最も内側の巻線のさらに内側に配置され、
前記複数の線状導体が前記アンテナコイルの開口面中心から放射状に延びている、請求項1に記載の静電シールド。
【請求項3】
前記複数の抵抗体の一部または全部が前記アンテナコイルの巻線の内側に配置されている、請求項1に記載の静電シールド。
【請求項4】
前記複数の抵抗体の抵抗値が数kないし10数kΩである、請求項1に記載の静電シールド。
【請求項5】
前記複数の線状導体が、隣り合う線状導体との最長間隔が30mm程度以下になるように配置されている、請求項1ないし4のいずれか一つに記載の静電シールド。
【請求項6】
アンテナコイルの開口面を覆うようにアンテナコイルに取り付けられる静電シールドであって、
一端が開放された複数の線状導体と、
前記複数の線状導体の他端と前記アンテナコイルの一端とを接続するコイル接続線とを備え、
前記複数の線状導体が、前記アンテナコイルの開口面中心から互いに交差せずに放射状に延びて前記アンテナコイルの巻線と直交し、かつ、隣り合う線状導体との最長間隔が30mm程度以下になるように配置されている
ことを特徴とする静電シールド。
【請求項7】
アンテナコイルと、
前記アンテナコイルに取り付けられた請求項1または6に記載の静電シールドと、を備えた
アンテナユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナコイルの静電シールドおよびそのような静電シールドを備えたアンテナユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
導線をコイル状あるいは渦巻き状に巻いて構成されるソレノイド型コイルは、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ、WiFi(登録商標)ルーター、Bluetooth(登録商標)デバイス、携帯電話機などの身の回りの無線デバイスのアンテナとして広く用いられている。それ以外にも金属探知機や、核スピン共鳴を利用した核磁気共鳴(NMR:Nuclear Magnetic Resonance)装置、核四極共鳴(NQR:Nuclear Quadrupole Resonance)装置、電子常磁性共鳴装置(EPR:Electron Paramagnetic Resonance)などの各種装置のリーダ部分にソレノイド型のアンテナコイルが使用される。
【0003】
NQR装置は人体内に秘匿した不正薬物などの検知に使用されることがあり、その場合、NQR装置のアンテナコイルを人体に極めて近づける、あるいは押し当てる必要がある。ところが、人体は水分を多く含む導電性物体であることから、アンテナコイルが人体に近づくと人体がアンテナコイルと静電結合してそれにより生じる変位電流がアンテナコイルを流れる電流を阻害してしまう。人体の動きや血流の拍動などでそのような静電干渉は強弱が変化する。さらに、アンテナコイルと人体間でキャパシタが形成されることでアンテナのLC共振点がずれてしまう。こうした要因が重なるとNQR装置の計測精度が大きく低下してしまう。したがって、NQR装置ではアンテナコイルを静電干渉から十分にシールドすることが重要となる。
【0004】
従来、NQR装置のアンテナコイルについて、同軸ケーブルをコイル状に巻いて芯線でアンテナコイルを形成し、シールド線の一部を切り欠いて接地することでアンテナコイルの静電シールドを実現している(例えば、特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-91327号公報
【特許文献2】特表2003-512592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同軸ケーブルは、中心部に軟銅線の芯線があり、その外側に絶縁体の発泡ポリウレタンがあり、さらにその周りに外部導体のアルミ箔や編組が同心円状に配置され、さらにその外側をシースで被覆した構造をしたアンテナ線である。このため、細い径のものであっても比較的曲げにくく、同軸ケーブルを使って一定程度の小さい径のアンテナコイルを形成することは困難であり、同軸ケーブルではアンテナコイルの設計自由度が制限される。同軸ケーブルではなく自由に曲げられる軟銅線などを使えばアンテナコイルの大きさや形状を自由にすることができるが、そのようなアンテナコイルには静電干渉を防止するための静電シールドが別途必要になる。
【0007】
上記問題に鑑み、本発明は、アンテナコイルに対する静電干渉を防止するための静電シールドおよびそのような静電シールドを備えたアンテナユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従うと、アンテナコイルの開口面を覆うようにアンテナコイルに取り付けられる静電シールドであって、一端が開放された複数の線状導体と、一端が前記複数の線状導体のそれぞれの他端と接続された複数の抵抗体と、前記複数の抵抗体の他端と前記アンテナコイルの一端とを接続するコイル接続線とを備え、前記複数の線状導体が、互いに交差せずに前記アンテナコイルの巻線と交差するように配置されている静電シールドが提供される。
【0009】
前記アンテナコイルは導線が渦巻き状に巻かれたアンテナコイルであり、前記複数の抵抗体が前記アンテナコイルの最も内側の巻線のさらに内側に配置され、前記複数の線状導体が前記アンテナコイルの開口面中心から放射状に延びていてもよい。
【0010】
前記複数の抵抗体の一部または全部が前記アンテナコイルの巻線の内側に配置されていてもよい。
【0011】
具体的には、前記複数の抵抗体の抵抗値が数kないし10数kΩである。
【0012】
前記複数の線状導体が、隣り合う線状導体との最長間隔が30mm程度以下になるように配置されてもよい。
【0013】
本発明の別の局面に従うと、アンテナコイルの開口面を覆うようにアンテナコイルに取り付けられる静電シールドであって、一端が開放された複数の線状導体と、前記複数の線状導体の他端と前記アンテナコイルの一端とを接続するコイル接続線とを備え、前記複数の線状導体が、前記アンテナコイルの開口面中心から互いに交差せずに放射状に延びて前記アンテナコイルの巻線と直交し、かつ、隣り合う線状導体との最長間隔が30mm程度以下になるように配置されている静電シールドが提供される。
【0014】
さらに本発明の別の局面に従うと、アンテナコイルと、前記アンテナコイルに取り付けられた上記の静電シールドとを備えたアンテナユニットが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、シールド線を持たないアンテナコイルに対する静電干渉を防止することができる。このため、アンテナコイルに対する形状および線材の制約がなくなり、アンテナコイルの設計自由度が上がる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る静電シールドの概略図である。
【
図2】
図1の静電シールドを渦巻きコイルに取り付けた例を示す図である。
【
図3】静電シールドによる静電干渉防止の様子を示す模式図である。
【
図4】線状導体の間隔を変えたときのアンテナ出力減衰の変化を示すグラフである。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る静電シールドの概略図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る静電シールドの概略図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に係る静電シールドの概略図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態に係る静電シールドの概略図である。
【
図9】本発明の第6の実施形態に係るアンテナユニットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、図面に描かれた各部材の寸法、細部の詳細形状などは実際のものとは異なることがある。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る静電シールドの概略図である。本実施形態に係る静電シールド10Aは、複数の線状導体11と、複数の抵抗体12と、コイル接続線13とを備え、アンテナコイル20の開口面を覆うようにアンテナコイル20に取り付けられて使用される。アンテナコイル20は、軟銅線などをコイル状あるいは渦巻き状に巻いて構成されるソレノイド型コイルである。便宜のため
図1ではアンテナコイル20を一巻きの円形コイルとして描いているが、アンテナコイル20の巻き数は複数であってもよく、形状も円形以外の楕円形や矩形などでもよい。また、
図2に示したように、アンテナコイル20を渦巻き状のコイルにしてそれに静電シールド10Aを取り付けることもできる。
【0019】
線状導体11と抵抗体12とは一対一のペアになっている。各線状導体11の一端は開放され、他端にペアの抵抗体12の一端が接続されている。
図1の例では線状導体11および抵抗体12のペアは全部で9個ある。
【0020】
線状導体11は一本の細い金属線(例えば、軟銅線)でできた単線でもよいし、複数の細い金属線を撚り合わせた撚り線でもよい。線状導体11の線材は典型的には銅やアルミニウムなどの金属であるが、導電性に優れたものであれば金属以外も使用可能である。また、線状導体11は剥き出しでもよいし、シースで被覆されていてもよい。
【0021】
抵抗体12は、炭素、セラミック、金属合金などでできた高抵抗値の抵抗素子である。この抵抗素子により、アンテナコイル20を流れる電流が作る電場によって線状導体11へ誘起される変位電流を抑制する。一例として、NQR装置のようにアンテナコイルから数kVのパルスが照射されるようなケースでは、抵抗体12の抵抗値を数kないし10数kΩの高い値にすることにより、線状導体11を任意の方法で配置しても、変位電流を十分に抑制することが可能になる。
【0022】
他方、アンテナコイル20と線状導体11を可能な限り直交に配置すれば、アンテナコイル20を流れる電流が作る電場の線状導体11方向へのベクトル成分は十分に小さくなる。この場合、抵抗体12の値によらず、線状導体11に誘起される変位電流も十分小さくすることが可能になる。そのため、アンテナコイル20と線状導体11を厳密に直交するように配置した場合、抵抗体12を除去し、線状導体11とコイル接続線13を直接導通させることが可能になる。
【0023】
抵抗体12はアンテナコイル20の円形開口面の中心部に配置され、そこから各線状導体11が互いに交差せずにアンテナコイル20の巻線と概ね直交に交差するように放射状に延びている。
図2に示した渦巻き状のアンテナコイル20の場合、抵抗体12はアンテナコイル20の円形開口面において最も内側の巻線よりもさらに内側に配置され、各線状導体11は最も内側の巻線から最も外側の巻線までのすべての巻線と概ね直交に交差するように延びている。すなわち、各線状導体11の開放端はアンテナコイル20の最も外側の巻線よりも外側に突出する。
【0024】
図1および
図2の例では同じ長さの線状導体11を等間隔で配置しているが、線状導体11の長さおよび配置間隔は不揃いでもよい。重要なのは隣り合う線状導体11との最長間隔である。具体的には、隣り合う線状導体11との最長間隔が30mm程度以下になるようにする。この理由については後述する。
図1および
図2の例のように線状導体11が放射状に延びている場合は線状導体11の開放端どうしの間隔が隣り合う線状導体11との最長間隔に相当する。
【0025】
以上の通り線状導体11の配置に関して重要な事項は、
1)線状導体11が互いに交差しない、すなわち、インダクタとなるようなループを形成しないこと、
2)アンテナコイル20の巻線(渦巻き状のコイルの場合には内側から外側までのすべての巻線)に交差すること、および
3)30mm程度よりも大きな隙間を作らない、すなわち、隣り合う線状導体11との最長間隔を30mm程度以下にすること、
である。
【0026】
抵抗体12の他端はコイル接続線13により互いに接続されてアンテナコイル20の一端に接続される。すなわち、各線状導体11は抵抗体12を介してアンテナコイル20の一端と導通している。なお、コイル接続線13は一本の細い金属線(例えば、軟銅線)でできた単線でもよいし、複数の細い金属線を撚り合わせた撚り線でもよい。コイル接続線13の線材は典型的には銅やアルミニウムなどの金属であるが、導電性に優れたものであれば金属以外も使用可能である。また、コイル接続線13は剥き出しでもよいし、シースで被覆されていてもよい。
【0027】
図1および
図2に示したように、コイル接続線13は、導線を各抵抗体12の他端からアンテナコイル20の円形開口面の中心に向かってまっすぐ延ばして円形開口面中心で一点で接続し、別の導線でその接続点とアンテナコイル20の一端とを接続するようにしてもよいし、各抵抗体12の他端をアンテナコイル20の一端にそれぞれ直接接続するようにしてもよい。コイル接続線13がインダクタとなるようなループを構成しない限り、抵抗体12の他端とアンテナコイル20の一端との配線取り回しは自由にできる。
【0028】
上記構成の静電シールド10Aによると、アンテナコイル20に対する人体などの導電性物体からの静電干渉を防止することができる。
図3は、静電シールド10Aによる静電干渉防止の様子を示す模式図である。
図3は、静電シールド10Aおよびアンテナコイル20を横から見たときの図であり、図の左右方向にアンテナコイル20の巻線が延び、線状導体11の断面が見えている。図中の矢印は電気力線を表す。アンテナコイル20の近くに人体などの導電性物体がある場合、静電シールド10Aがアンテナコイル20と導電性物体との間に位置し、線状導体11の間隔が30mm程度以下であれば、導電性物体はアンテナコイル20と静電結合せずに(図中では静電結合しないことを破線で示した電気力線にバツ印をつけて表している。)線状導体11と静電結合することで、アンテナコイル20に対する導電性物体からの静電干渉を防止することができる。一方、線状導体11の間隔が30mm程度よりも大きいと線状導体11の隙間から導電性物体とアンテナコイル20が静電結合して静電干渉防止の効果が低減してしまう。
【0029】
図4は、隣り合う線状導体11との最長間隔を変えたときのアンテナ出力減衰の変化を示すグラフである。このグラフは、
図1に示した態様のアンテナコイル20および静電シールド10Aとして、直径およそ60cmのアンテナコイルを用意し、静電シールド10Aの線状導体11および抵抗体12としてAWG24リード線および10kΩの抵抗を使用し、線状導体11の本数を変えて線状導体11の最長間隔を変えたときのアンテナ出力強度を実測した結果をプロットしたものである。横軸は隣り合う線状導体11との最長間隔を表す。縦軸はアンテナ出力減衰率を表す。アンテナ出力減衰率γ[%]は、γ=(Ref-Result)/Refで定義され、Refは静電シールド10Aが取り付けられていないときのアンテナコイル20の出力[mV]、Resultは静電シールド10Aが取り付けられたアンテナコイル20を人体に近づけたときのアンテナコイル20の出力[mV]である。減衰率γが負値の場合はアンテナコイル20の出力が増幅したことを意味する。
【0030】
図4のグラフからわかるように、隣り合う線状導体11との最長間隔が31mmのときにアンテナ出力減衰率が最小ピークとなり、最長間隔が31mmよりも大きいとアンテナ出力減衰率は大きくなり、最長間隔が31mm以下だとアンテナ出力減衰率は十分に小さくなる。この実測データから、隣り合う線状導体11との最長間隔は30mm程度以下にすべきと言える。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る静電シールド10Aは、アンテナコイル20の近くの導電性物体からのアンテナコイル20に対する静電干渉を防止することができる。このため、例えば、アンテナコイル20として銅板から切り出すような極低抵抗のコイルを使用できるようになる。また、静電シールド10Aの線状導体11はループを形成しないためインダクタとして働くことはなく、抵抗体12を介してアンテナコイル20の一端と導通しているためキャパシタを形成することもないから、アンテナコイル20のLC共振点に影響を及ぼさない。
【0032】
また、本実施形態に係る静電シールド10Aは面材でなく線材として構成されているため、表面電流が流れて表面電位にばらつきが生じるようなことがない。アンテナコイル20には電界のばらつきがあり、そのばらつきが原因でアンテナコイル20の開口面の直径方向に電場ができることがある。特に、NQR装置のアンテナコイルには数百ボルトの高電圧が印加されることから、電界のばらつきにより生じる電場はより大きくなる。そして、そのような電場ができると線状導体11に電流が流れて放電してしまうおそれがあるが、線状導体11の一端に高抵抗値の抵抗体12が接続されていることにより線状導体11に流れる電流を十分に抑制することができる。すなわち、線状導体11に電流が流れることなく、各線状導体11の電位はコイル接続線13が接続されたアンテナコイル20の一端と同電位に保たれる。これにより、静電シールド10Aがアンテナコイル20に変位電流を誘起することがなく、装置の計測精度を低下させることがない。
【0033】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る静電シールドの概略図である。本実施形態に係る静電シールド10Bは、抵抗体12をアンテナコイル20の円形開口面の中心からずれた位置に配置し、線状導体11の長さを不揃いにし、線状導体11とアンテナコイル20の巻線との交差が必ずしも直交になっていない構成をしている。ただし、隣り合う線状導体11との最長間隔は30mm程度以下である。このような構成の静電シールド10Bであっても上述した効果が奏される。
【0034】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る静電シールドの概略図である。本実施形態に係る静電シールド10Cは、アンテナコイル20を矩形にし、ごく短い線状導体11をアンテナコイル20の巻線に概ね直交に交差させ、かつ、隣り合う線状導体11との最長間隔が30mm程度以下になるように配置し、抵抗体12をアンテナコイル20の開口面の内側に配置した構成をしている。このような構成の静電シールド10Cであっても上述した効果が奏される。
【0035】
(第4の実施形態)
図7は、本発明の第4の実施形態に係る静電シールドの概略図である。本実施形態に係る静電シールド10Dは、半分の抵抗体12をアンテナコイル20の円形開口面の左外側に縦一列に配置し、残り半分を円形開口面の右外側に縦一列に配置し、隣り合う線状導体11との最長間隔が30mm程度以下になるように線状導体11を並行に配置した構成をしている。このような構成の静電シールド10Dであっても上述した効果が奏される。
【0036】
(第5の実施形態)
図8は、本発明の第5の実施形態に係る静電シールドの概略図である。本実施形態に係る静電シールド10Eは、
図1の静電シールド10Aから抵抗体12を省略したものである。すなわち、線状導体11はアンテナコイル20の開口面中心から互いに交差せずに放射状に延びてアンテナコイル20の巻線と直交し、各線状導体11の一端は開放され、他端はコイル接続線13により互いに接続されてアンテナコイル20の一端に接続される。隣り合う線状導体11との最長間隔は30mm程度以下にされている。このように抵抗体12を省略した構成であっても、線状導体11をアンテナコイル20の巻線と直交させることで、アンテナコイル20の電界のばらつきにより線状導体11に電流が流れてもアンテナコイル20に誘導電流が流れるのを防止することができる。
【0037】
(第6の実施形態)
図9は、本発明の第6の実施形態に係るアンテナユニットの概略図である。本実施形態に係るアンテナユニット100は、
図2に示した静電シールド10Aとアンテナコイル20を一体化したユニットである。アンテナコイル20と複数の線状導体11は円形支持物30に形成された溝に埋め込まれて位置決めされる。円形支持物30の中心部には複数の抵抗体12およびコイル接続線13を配置した基板があり、各抵抗体12と各線状導体11が接続され、コイル接続線13はアンテナコイル20の一端に接続されている。アンテナユニット100のケーブル接続口40に同軸ケーブルが接続されるようになっており、芯線がアンテナコイル20の他端に接続され、シールド線がコイル接続線13に接続される。このような構成のアンテナユニット100を、例えば、NQR装置のリーダ部分に使用されるアンテナコイルとして使用することで、人体などの導電性物体からアンテナコイル20への静電干渉を防止して計測精度を良好に保つことができる。
【0038】
以上説明した各実施形態に係る静電シールドおよびアンテナユニットは、NQR装置に限らず、RFIDタグ、NMR装置、EPR装置、金属探知機などのアンテナコイルに適用することができる。
【0039】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
10A,10B,10C,10D,10E 静電シールド
11 線状導体
12 抵抗体
13 コイル接続線
20 アンテナコイル
100 アンテナユニット